塗り替えを待つ橋は増え、塗れる職人は減っていく。デジタルツインで塗装の動きを磨き上げ、現場で働く実機ロボットへ
橋を塗るのは、いまも人の手です。
高所の足場に立ち、危険区域に踏み込み、熟練の技で塗料を吹き付ける。その担い手が、いま急速に失われようとしています。
株式会社北都鉄工(本社:石川県金沢市、代表取締役社長:小池田康秀、以下「北都鉄工」)は、この課題の解決に向けた共同研究「フィジカルAIを用いた国土インフラの塗装自動化システム開発に関する研究」が、国土交通省「SBIR建設技術研究開発助成制度」(令和8年度・中小・スタートアップ企業タイプ)の研究課題として採択されたことをお知らせします。共同研究者は、東京のスタートアップ・株式会社Tengun-label(以下「Tengun-label」)です。
本研究課題は、同タイプで新規採択された17課題のひとつであり、交付予定額は7,000千円(700万円)です。研究代表者は、北都鉄工取締役の小池田康徳が務めます。
▸塗り替えるべき橋は増え、塗れる人はいなくなる
日本の橋梁ストックは急速に老朽化が進み、建設後50年以上を経過する橋梁が今後急増していきます。腐食損傷の増加や塗り替え待ちの長期化により、鋼橋を中心とした維持管理は深刻さを増しています。
さらに深刻なのが、担い手の問題です。建設業全体として技能者不足と高齢化が進んでおり、橋梁塗装においても必要な熟練技能が継承されにくくなり、将来的には塗装作業の継続そのものが困難になるリスクが高まっています。
▸職人の技を、デジタルの世界に写し取る
近年のフィジカルAI・デジタルツイン技術の発展により、塗装プロセスを仮想空間上で高精度に再現し、シミュレーション結果を現実空間に反映させることで自動化することは可能だと考えています。
本研究では、デジタルツイン環境上で塗装ロボットの動作最適化と品質確保を図り、低コスト・短期間での開発と、現場適応型の自動塗装の実現を目指します。
期待される効果
塗装計画の策定から施工までのリードタイムを大幅に短縮
現場での作業期間短縮、手戻りの削減、塗装品質の安定化
高所や危険区域での塗布作業における、作業者の安全性確保
▸なぜ、実現できるのか
現場を知るものづくり企業と、最先端のAIを持つスタートアップ
株式会社北都鉄工(研究代表者:取締役・小池田康徳)
1934年創業、石川県金沢市に本社を置く大型鋼構造物メーカー。鋼橋の設計・製造・施工を一貫して担い、橋梁塗装の長寿命化に不可欠な基盤技術を社内に蓄積。近年は供用されている鋼橋の補修工事等も手掛けています。
株式会社Tengun-label(共同研究者)
東京都新宿区に本社を置く、AI・3次元画像処理・センシング・データ解析に特化した技術者集団。デジタルツイン技術の社会実装や3D点群データの解析を手がけ、NVIDIA Omniverseパートナー企業としてフィジカルAI分野の最新技術情報を保有。
橋を知り尽くしたものづくり企業と、点群とAIで現実世界を写し取る技術者集団。
この組み合わせだからこそ、机上の理論で終わらない「現場で動く」自動化システムの実現に
挑めると考えています。
▸事業計画は、地域での産学官連携から生まれた
本研究の事業計画は、突然生まれたものではありません。
その出発点は、金沢市委託事業「TENJO KANAZAWA」を通じた、地域の企業・大学との1年あまりにわたる対話でした。
きっかけは、2025年2月。北都鉄工取締役の小池田康徳は、石川の製造業が集い次の一手を語り合う場「ものづくりOpenMic」の立ち上げに参画しました。同年4月には、第2弾「DX推進・AI活用」の回で、北都鉄工自身の取り組みを事例として発表しました。
転機は2025年秋。TENJO KANAZAWAが大学や企業を相次いで引き合わせるなかで、「橋梁塗装の自動化」という事業テーマが形を成していきました。この過程で紹介されたのが、フィジカルAIの技術を持つTengun-labelであり、産学連携に長けた金沢工業大学でした。
Tengun-labelの本社は、東京にあります。しかし同社は、石川県白山市の金沢工業大学白山麓キャンパスの地方創生研究所のメンバーシッププログラムに参画し、すでに白山市内での活動実績を有していました。求めていた最先端の技術は、遠い場所にあったのではありません。地域の場が、その存在を引き合わせたのです。
そして2026年1〜2月、TENJO KANAZAWAの伴走のもとで事業計画を練り上げ、SBIRへの申請に至り、この度同制度に採択されました。
本研究開発に至るまでの歩み
2025年2月
小池田康徳が「ものづくりOpenMic」の立ち上げに参画
TENJO KANAZAWA/金沢商工会議所/コワーキングスクエア金沢香林坊が主催する、石川の製造業のネクストステップを参加者同士で話し合うシリーズ企画。人財育成、DX・AI活用、商品開発、組織づくりなどをテーマに、地場企業の事例を起点とした交流を重ねている。
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2025年4月
同第2弾「DX推進・AI活用」にて北都鉄工の事例を発表
ものづくりOpenMicにて登壇する小池田康徳
2025年10〜12月
TENJO KANAZAWAが大学・企業等を引き合わせ、「橋梁塗装の自動化」という事業テーマが形になる。協働パートナーとしてTengun-label、産学連携先として金沢工業大学の紹介を受ける
2026年1〜2月
TENJO KANAZAWAの伴走のもと、事業計画を策定しSBIRへ申請
2026年6月
国土交通省SBIR建設技術研究開発助成制度に採択
地域の場が人と技術を引き合わせ、地方発の技術で全国的なインフラ課題の解決に挑む。
本研究の助成制度の採択、そしてスタートそのものが、産学官連携の成果です。
▸実施計画
2026年度(令和8年度)のF/S(調査・分析)では、デジタルツイン環境上に塗装作業を再現するモデルを構築します。続く2027〜2028年度(令和9〜10年度)のR&D(研究開発)では、環境が安定している屋内空間(工場)でのロボットによる自動塗装シミュレーションと、その成果に基づく自律走行ロボットの開発へと展開します。
※今回、国土交通省「SBIR建設技術研究開発助成制度」(令和8年度・中小・スタートアップ企業タイプ)の研究課題として採択されたのは2026年度のF/Sについてです。
▸コメント
株式会社北都鉄工
代表取締役社長 小池田 康秀
私たちは長年、橋をつくり、そして色を塗ってきました。塗装作業は地味ですが橋の寿命を左右する重要な工程です。しかしその技能を持つ職人が年々減り、10年後、20年後に誰がこの国の橋を守るのかという危機感をずっと抱いてきました。
今回、フィジカルAIという最先端の技術に挑むのは、決して流行を追ってのことではありません。職人の技をデジタルの世界に取り込み、次の世代に引き継ぐためなのです。地方のものづくり企業であ
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR TIMES
- 分類:技術