2026 年 7 月 31 日 日 本 銀 行
経済・物価情勢の展望(2026 年7月) 【基本的見解】 1 <概要>
主要指標 — KEY FIGURES
⚫ 先行きのわが国経済を展望すると、2026 年度については、中東情勢の影響を受けた春 先以降の原油価格上昇が下押し要因となるものの、グローバルなAI関連需要の増加に 加え、政府による各種施策や緩和的な金融環境等が経済を下支えすると考えられるため、 わが国経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみられる。2027 年度以 降は、原油高のマイナスの影響が減衰し、所得から支出への前向きな循環メカニズムが 徐々に強まっていくことから、わが国経済は成長率を緩やかに高めていくと考えられる。
⚫ 物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価 格に転嫁する動きが続くもとで、これまでの原油価格上昇が、エネルギーや財を中心に価 格を押し上げるほか、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇や最近 の為替円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026 年度後半以降、2%をはっ きりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される。その後、見通し期間後半には、 原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に向けてプラス幅を縮小していくと考えら れる。この間、人手不足感の強い状況が続くなかで、賃金と物価が相互に参照しながら緩 やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な予想物価上昇率は上昇していくと 見込まれる。こうしたもとで、消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まっていくと予 想され、2026 年度後半から 2027 年度にかけて「物価安定の目標」と概ね整合的な水準 となり、その後も同程度で推移すると考えられる。
⚫ 前回の見通しと比べると、成長率は概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前 年比は、政府による夏場のエネルギー負担緩和策(電気・ガス代)の効果等から、2026 年度が下振れている。
⚫ リスク要因としては様々なものがあるが、当面は、中東情勢が金融・為替市場やわが国 の経済・物価に及ぼす影響をとくに注視する必要がある。このほか、グローバルなAI 関連需要の動向や今後の為替相場の変動が、わが国の経済・物価に及ぼす影響にも留意 が必要である。
⚫ リスクバランスをみると、経済の見通しについては、概ねバランスしている。消費者物 価の見通しについては、上振れリスクの方が大きい。基調的な物価上昇率については、 企業の賃金・価格設定行動が積極化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き 続き上昇していることなどを踏まえると、2%の「物価安定の目標」を超えて上振れて いくリスクがある。こうしたリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼす ことがないよう、十分に留意する必要がある。
1 本基本的見解は、7月 30、31 日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
1 1.わが国の経済・物価の現状
わが国の景気は、中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられるが、 緩やかに回復している。海外経済は、一部に弱めの動きもみられるが、総じて みれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内 の動きを続けている。グローバルなAI関連需要の堅調な増加などを背景に、 企業収益は高水準で推移しており、業況感も良好な水準で推移している。こう したもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。個人消費は、家計マインド に弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。 一方、住宅投資は減少傾向にある。公共投資は横ばい圏内の動きを続けている。 この間、労働需給は、引き締まった状態が続いている。わが国の金融環境は、 緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみ ると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くなか、足もとでは、政府によ るエネルギー負担緩和策の効果などから、1%台半ばとなっている。予想物価 上昇率は、緩やかに上昇している。
2.わが国の経済・物価の中心的な見通し2
(1)経済の中心的な見通し
先行きのわが国経済を展望すると、2026 年度については、中東情勢の影響 を受けた春先以降の原油価格上昇が、交易条件の悪化などを通じて企業収益や 家計の実質所得に対する下押し要因となるものの、グローバルなAI関連需要 の増加や春季労使交渉におけるしっかりとした賃上げの実現に加えて、政府に よる各種施策(エネルギー負担緩和策等)や緩和的な金融環境などが経済を下 支えすると考えられる。こうしたもとで、わが国経済は、伸び率を縮小しつつ も、緩やかな成長を続けるとみられる。 すなわち、企業部門をみると、輸出や生産は、中東情勢の影響を受けつつも、 グローバルなAI関連需要の強さが押し上げ要因として作用することから、当 面は横ばい圏内の動きになると見込まれる。企業収益は、原油価格上昇に伴う
2 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また、先行きの政策運営については、 市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。なお、原油価格(ドバイ原油)に ついては、先物市場の動向などを参考に、1バレル 80 ドル程度を出発点に、見通し期間 の終盤にかけて、70 ドル程度まで下落していくと想定している。
2 交易条件悪化の影響を受けつつも、AI関連需要の強さなどを背景に高水準が 続くとみられる。そうしたもとで、設備投資は、既往案件の受注残を解消する 動きに加え、政府の経済対策や緩和的な金融環境が下支え要因として作用し、 緩やかな増加傾向が続くと考えられる。 家計部門をみると、雇用面では、労働需給は引き締まった状態が続き、名目 賃金は、本年の春季労使交渉の結果などを反映して現状程度の伸びが続くと見 込まれる。個人消費は、賃金の増加や株価上昇による資産効果に加えて、政府 による各種施策を通じた家計への所得移転が下支え要因となるものの、エネル ギーを中心とした物価上昇の影響から、横ばい圏内の動きになるとみられる。 住宅投資は、住宅価格の上昇や人口動態等を反映して、緩やかな減少傾向をた どるとみられる。この間、公共投資は横ばい圏内で推移し、政府消費は、医療・ 介護費の趨勢的な増加や防衛関連支出の増加などを反映し、緩やかに増加して いくと想定している。 2027 年度以降については、原油高のマイナスの影響が減衰し、所得から支 出への前向きな循環メカニズムが徐々に強まっていくことから、わが国経済は 成長率を緩やかに高めていくと考えられる。輸出や生産は、中東情勢の影響が 和らぎ、海外経済の緩やかな成長が続くなか、グローバルなAI関連需要の強 さなどにも支えられ、緩やかに増加していくと考えられる。企業収益は、原油 価格の下落に伴う交易条件の改善や内外需要の増加に支えられて、改善してい くとみられ、そうしたもとで、設備投資は、人手不足対応の省力化投資やAI 関連等の成長分野への能力増強投資に加え、貿易構造やサプライチェーンの変 容に適合するための投資案件なども押し上げ要因となり、増加傾向を維持する と考えられる。雇用・所得環境をみると、労働需給は引き締まった状況が続き、 名目賃金は着実な増加が続くとみられる。これに加え、物価の上昇ペースが 徐々に落ち着いていくと見込まれるなか、個人消費は、緩やかな増加基調に復 していくとみられる。 こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、見通し 期間を通じて概ね不変となっている。 この間、潜在成長率は、政府による各種の施策の後押しなどもあって、デジ タル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、資本ストックの着実な増加
3 などを背景に、小幅のプラスが続くとみられる3。
(2)物価の中心的な見通し
消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価格に転嫁する動 きが続くもとで、これまでの原油価格上昇が、エネルギーや財を中心に価格を 押し上げるほか、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇 や最近の為替円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026 年度後半 以降、2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される。そ の後、見通し期間後半には、原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に 向けてプラス幅を縮小していくと考えられる。 この間、人手不足感の強い状況が続くなかで、賃金と物価が相互に参照しな がら緩やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な予想物価上昇率 は上昇していくと見込まれる。こうしたもとで、消費者物価の基調的な上昇率 は、徐々に高まっていくと予想され、2026 年度後半から 2027 年度にかけて 「物価安定の目標」と概ね整合的な水準となり、その後も同程度で推移すると 考えられる。基調的な物価上昇率が2%に近づいていることを踏まえると、今 後は、 「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、これが2% 程度の水準で定着するかどうかを確認していくことが重要となってくる。 なお、消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格の動向や政府によ る各種施策の影響も受ける。原油価格については、先物市場の動向などを参考 に、見通し期間終盤にかけて緩やかに低下していく前提としているが、中東以 外の地域からの代替調達に伴って輸送コストが増加していることを踏まえる と、わが国の企業が直面する調達価格は、国際市況ほどには低下しないと考え られる。政府による施策については、燃料油補助金などのエネルギー負担緩和 策や教育無償化政策等が行われており、2026 年度の消費者物価の前年比を押 し下げる方向に作用する。 エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食
3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、足もとでは「0%台半ばから後半」 と計算される。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータに左右され るうえ、デジタル化の進展などに伴い生産性や労働供給のトレンドがどのように変化する かといった点を巡る不確実性も高いため、相当の幅をもってみる必要がある。
4 品・エネルギー)の前年比は、これまでの原油価格上昇が財を中心に価格を押 し上げることに加え、半導体価格等の上昇や最近の為替円安が耐久財等の価格 上昇につながることから、2%を超える水準で推移したあと、原油高の影響が 減衰していくもとで、プラス幅を縮小すると見込まれる。 こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、消費者 物価(除く生鮮食品)は、政府による夏場のエネルギー負担緩和策(電気・ガ ス代)の効果等から、2026 年度が下振れているが、消費者物価(除く生鮮食 品・エネルギー)は、見通し期間を通じて概ね不変である。 物価の基調を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状 況を表すマクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも、改善傾向をたどって おり、足もとでは小幅のプラスとなっている。先行きの需給ギャップは、上記 の経済の見通しのもとで、現状程度のプラスが続くと予想される。この間、女 性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的 な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、労働集約的な業種を 中心に企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な 需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかりやすくなっ ているとみられる。 次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、緩やかに上昇している。先行き については、労働需給の引き締まりなどを背景に、企業の積極的な賃金・価格 設定行動が続き、予想物価上昇率は緩やかな上昇が続くと予想される。その水 準は、2026 年度後半から 2027 年度にかけて2%程度となり、その後も同程 度で推移すると考えられる。
3.経済・物価のリスク要因
上記の中心的な経済・物価の見通しに対する上振れないし下振れの可能性 (リスク要因)としては、主に以下の点に注意が必要である。 第1に、中東情勢がわが国経済・物価に及ぼす影響である。中東情勢につい ては、なお不透明な状況が続いているが、原油価格は一頃に比べて下落してお り、前回の展望レポートで指摘したような、経済の大幅な下振れリスクや物価 の大幅な上振れリスクは低下している。とくに、サプライチェーンの大規模な 混乱が生じ、わが国企業の生産活動に大きな影響をもたらすリスクは、中東依
5 存度の高い原材料の代替調達が進展していることもあり、低下している。もっ とも、これまでの原油価格上昇が経済・物価に及ぼす影響については、引き続 き注意が必要である。実体経済面では、原油高に伴う原材料等の価格上昇が、 企業収益や家計の実質所得を想定以上に下押しすることがないか、確認してい く必要がある。物価面では、原油高を起点に企業間取引における価格転嫁がや や速いスピードで進んでおり、これが、今後、消費者段階における幅広い品目 の価格上昇に波及していく可能性が高いと考えられる。これらに加え、中長期 の予想物価上昇率が引き続き上昇していることも踏まえると、消費者物価の基 調的な上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスクがある。 この間、原油価格については、なお振れの大きい展開が続いている。今後の 原油価格の変動がわが国の経済・物価に及ぼす影響については、引き続き留意 が必要である。 第2に、AI関連需要を含む内外の経済・物価動向である。AI関連につい ては、その用途の急速な広がりとともに、グローバルな需要拡大が続いており、 旺盛な設備投資が世界経済を一段と押し上げる可能性がある。一方、投資に見 合った形で収益の拡大が実現しない場合には、資産価格の変動なども伴って、 調整圧力が生じる可能性もある。物価面では、最近の半導体価格の上昇は、関 連する耐久財の価格を押し上げるとみられるほか、企業間取引において、銅な どの素材価格や機械類の価格が上昇していることも踏まえると、今後は、消費 者段階においても、様々な品目の価格上昇につながる可能性がある。こうした AI関連の材料・部品などに対する内外の需要が想定以上に増加した場合には、 価格面での上昇圧力が一段と高まるリスクもある。なお、AI関連需要拡大の 好影響は、これまでのところ、IT関連セクターの収益拡大や株価上昇に伴う 資産効果などを中心に現れている面があるが、今後、AIの利活用による生産 性向上などを通じて、その恩恵が幅広いセクターに広がるか、注意を払う必要 がある。 このほか、米欧を含む各国の財政拡張的な動きなどが、世界経済・物価や金 融市場に及ぼす影響にも留意が必要である。中国経済については、不動産市場 や労働市場における調整圧力が続くなか、先行きの成長ペースを巡る不確実性 は引き続き高いほか、一部の財における供給能力の過剰が世界経済・物価に及 ぼす影響についても注意を払う必要がある。
6 第3に、為替相場の変動がわが国の経済・物価に及ぼす影響である。これに ついては様々な経路が考えられるが、為替円安の進行は、グローバル企業の収 益などにプラスの影響を及ぼす一方、輸入物価の上昇などを通じて、家計の実 質所得を下押しするほか、中小企業などの収益にマイナスに作用する面がある。 また、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替 の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があることや、そうした動き が、予想物価上昇率の変化を通じて基調的な物価上昇率に影響する可能性があ ることにも留意が必要である。この点、原油高等の市況要因に加え、為替円安 の進行から、足もと輸入物価の前年比が大きく上昇していることは、先行き、 耐久財をはじめとした幅広い品目の価格を押し上げる方向に作用すると考え られ、その影響を十分注視する必要がある。 これらのリスクに加え、やや長い目でみたリスク要因としては、わが国を巡 る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える 影響がある。人口動態の構造的な変化等に伴う人手不足感の強まりは、デジタ ル化やAIの利活用などによる省力化投資の動きを加速させる可能性があり、 政府が進めている成長分野への投資増加に向けた取り組みと相俟って、成長期 待や潜在成長率を押し上げることも考えられる。この点、投資の制約要因とし て、人手不足とともに、資材価格の高騰等を指摘する声が多いことを踏まえる と、適切な金融政策運営を通じて物価の安定を実現することは、わが国の成長 投資の拡大を支える観点からも重要である。一方、人手不足下において、資本 と労働の代替が十分に進展しない場合には、供給制約によって成長率が下押し されるリスクがあることには注意が必要である。この間、これまで打ち出され た各国の通商政策はグローバル化の潮流に変化を及ぼしている面があり、今後 の各国の政策の展開次第では、そうした変化が急速に進むことも考えられる。
4.金融政策運営
以上の経済・物価情勢について、 「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」 による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する4。 まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価
4 「物価安定の目標」のもとでの2つの「柱」による点検については、日本銀行「金融政 策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について」(2013 年1月 22 日)参照。
7 (除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きが続くもと で、これまでの原油価格上昇が、エネルギーや財を中心に価格を押し上げるほ か、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇や最近の為替 円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026 年度後半以降、2%を はっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される。その後、見通し 期間後半には、原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に向けてプラス 幅を縮小していくと考えられる。この間、人手不足感の強い状況が続くなかで、 賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持さ れ、中長期的な予想物価上昇率は上昇していくと見込まれる。こうしたもとで、 消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まっていくと予想され、2026 年度 後半から 2027 年度にかけて「物価安定の目標」と概ね整合的な水準となり、 その後も同程度で推移すると考えられる。 政策金利の水準が一頃に比べて上昇しているなかにあっては、金融環境がど のように変化していくかを点検していくことも重要である。この点、実質金利 は短中期ゾーンを中心にマイナスとなっているほか、企業全体の収益性と比較 した金利コストはなお十分に低い状況が続いている。こうしたなか、企業等の 資金需要は増加しており、金融機関の貸出態度も引き続き積極的である。CP・ 社債市場でも良好な発行環境が続いている。これらの動きを踏まえると、わが 国の金融環境は緩和した状態が維持されており、引き続き、経済活動をしっか りとサポートしていくと考えられる。 次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについ て点検する。わが国経済・物価を巡るリスク要因としては様々なものがあるが、 当面は、中東情勢が金融・為替市場やわが国の経済・物価に及ぼす影響をとく に注視する必要がある。このほか、グローバルなAI関連需要の動向や今後の 為替相場の変動が、わが国の経済・物価に及ぼす影響にも留意が必要である。 リスクバランスは、経済の見通しについては、概ねバランスしている。消費者 物価の見通しについては、上振れリスクの方が大きい。前述したとおり、基調 的な物価上昇率が2%に近づいているなか、企業の賃金・価格設定行動が積極 化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き続き上昇していることな どを踏まえると、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上 振れていくリスクがある。こうしたリスクが顕在化し、それがその後の経済に
8 悪影響を及ぼすことがないよう、十分に留意する必要がある。 金融面のリスクについてみると、不動産価格や株価といった資産価格の動向 には引き続き留意が必要であるものの、貸出などの金融仲介活動は円滑に行わ れており、現在の金融活動に大きな不均衡はみられていない。わが国の金融シ ステムは、全体として安定性を維持している。内外の実体経済や国際金融市場 が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えて いることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。そのうえ で、今後の中東情勢やAI関連投資の収益性、海外ノンバンク部門の動向等が、 様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については丁寧にみていく必 要がある。 金融政策運営については、基調的な物価上昇率が2%に近づいているなか、 現在の金融環境が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応 じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことに なると考えている。そのうえで、調整のタイミングやペースについては、中東 情勢やAI関連需要の拡大、為替相場の変動の影響を含め、経済・物価の中心 的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、検討していく方針である。 とくに、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れてい くリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、 基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要に なると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持 続的・安定的な実現という観点から、適切に金融政策を運営していく。
以 上
9 (参考)
2026~2028 年度の政策委員の大勢見通し
――対前年度比、%。なお、< >内は政策委員見通しの中央値。
消費者物価指数 (参考) 実質GDP 消費者物価指数 (除く生鮮食品) (除く生鮮食品・エネルギー)
+0.6 ~ +0.7 +2.3 ~ +2.7 +2.3 ~ +2.6 2026 年度 <+0.6> <+2.5> <+2.5>
+0.4 ~ +0.7 +2.8 ~ +3.0 +2.5 ~ +2.7 4月時点の見通し <+0.5> <+2.8> <+2.6>
+0.7 ~ +0.8 +2.2 ~ +2.5 +2.2 ~ +2.7 2027 年度 <+0.8> <+2.4> <+2.6>
+0.6 ~ +0.8 +2.3 ~ +2.4 +2.6 ~ +2.7 4月時点の見通し <+0.7> <+2.3> <+2.6>
+0.7 ~ +0.8 +2.0 ~ +2.2 +2.1 ~ +2.3 2028 年度 <+0.8> <+2.0> <+2.2>
+0.7 ~ +0.8 +2.0 ~ +2.2 +2.1 ~ +2.4 4月時点の見通し <+0.8> <+2.0> <+2.2>
(注1)「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値 を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限 を意味しない。 (注2)各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込み を参考にして、上記の見通しを作成している。
10 政策委員の経済・物価見通しとリスク評価
(1)実質GDP (前年比、%) (前年比、%) 2.0 2.0
1.5 1.5
1.0 1.0
0.5 0.5
0.0 0.0
-0.5 -0.5 2021 2022 年度 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029
(2)消費者物価指数(除く生鮮食品) (前年比、%) (前年比、%) 3.5 3.5
3.0 3.0
2.5 2.5
2.0 2.0
1.5 1.5
1.0 1.0 2021 2022 年度 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029
(注1)実線は実績値、点線は政策委員見通しの中央値を示す。 (注2) 、△、▼は、各政策委員が最も蓋然性が高いと考える見通しの数値を示すとともに、その形状で 各政策委員が考えるリスクバランスを示している。 は「リスクは概ね上下にバランスしている」、 △は「上振れリスクが大きい」、▼は「下振れリスクが大きい」と各政策委員が考えていることを示し ている。
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FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:経済予測