2026年8月3日 日本銀行
総裁記者会見 ――2026年7月31日(金)午後3時30分から約75分
主要指標 — KEY FIGURES
(問) 本日の金融政策決定会合の内容について、展望レポートの内容を含めてご説明をお 願い致します。
(答) まず最初に、この度の令和 8 年熊本地震によってお亡くなりになられた方々に哀悼 の意を表するとともに、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。一刻も早 い復旧・復興を心よりお祈りしております。私どもとしましては、金融機能の維持 と資金決済の円滑の確保に万全を期すとともに、今回の地震が経済・物価に及ぼす 影響について情報収集と分析に努めているところです。
さて、本日の決定会合では、無担保コールレート・オーバーナイト物を 1.0%程度 で推移するよう促す、という金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定し ました。高田委員は、海外発のディマンドショックによる物価の上振れリスクや海 外の金融環境の転換に即応した機動的な対応が必要な新たな局面に入ったとして、 政策金利を 1.25%程度に引き上げる議案を提出しましたが、反対多数で否決されま した。
本日は、展望レポートを公表しましたので、これに沿って経済・物価の現状と先行 きについてご説明したいと思います。まず、わが国の景気の現状ですが、中東情勢 の影響もあって、一部に弱めの動きもみられますが、緩やかに回復していると判断 しました。先行きを展望しますと、2026 年度については、中東情勢の影響を受けた 春先以降の原油価格上昇が下押し要因となるものの、グローバルなAI関連需要の 増加に加え、政府による各種施策等が経済を下支えすると考えられるため、わが国 経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみています。27 年度以降 は、原油高のマイナスの影響が減衰し、所得から支出への前向きな循環メカニズム が徐々に強まっていくことから、わが国経済は成長率を緩やかに高めていくと考え られます。前回の展望レポートからの比較でみますと、成長率の見通しは概ね不変 です。物価に移りますが、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、賃金上昇の販売 価格への転嫁の動きが続く中、足元では政府によるエネルギー負担緩和策の効果な どから、1%台半ばとなっています。先行きについては、賃金上昇を販売価格に転嫁 する動きが続くもとで、これまでの原油価格上昇がエネルギーや財を中心に価格を 押し上げるほか、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇や最 近の為替円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026 年度後半以降、2% をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想されます。その後、見通し 期間後半には、原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に向けてプラス幅を縮 小していくと考えられます。この間、人手不足感の強い状況が続く中で、賃金と物
1 価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な 予想物価上昇率は上昇していくと見込まれます。こうしたもとで、消費者物価の基 調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、26 年度後半から 27 年度にかけて、 物価安定の目標と概ね整合的な水準となり、その後も同程度で推移すると考えられ ます。前回の展望レポートからの比較でみますと、生鮮食品を除く消費者物価の前 年比は、政府による夏場のエネルギー負担緩和策の効果等から、2026 年度が下振れ ていますが、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価は、見通し期間を通じて概ね 不変です。こうした見通しを巡るリスク要因としては様々なものがありますが、当 面は中東情勢が金融・為替市場やわが国の経済・物価に及ぼす影響を特に注視する 必要があります。このほか、グローバルなAI関連需要の動向や今後の為替相場の 変動が、わが国の経済・物価に及ぼす影響にも留意が必要です。リスクバランスは、 経済の見通しについては概ねバランスしていますが、物価の見通しについては上振 れリスクの方が大きいとみています。基調的な物価上昇率については、企業の賃 金・価格設定行動が積極化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き続き 上昇していることなどを踏まえますと、2%の物価安定の目標を超えて上振れていく リスクがあります。なお、展望レポートについて、高田委員からは、消費者物価は 既に概ね物価安定の目標に達する水準にあることなどを記述する案、田村委員から は、基調的な物価上昇率は、物価安定目標と概ね整合的な水準で推移していること などを記述する案が提出され、それぞれ否決されました。
最後に、今後の金融政策運営についてです。日本銀行としては、基調的な物価上昇 率が 2%に近づいている中、現在の金融環境が緩和的であることを踏まえますと、 経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合い を調整していくことになると考えています。そのうえで、調整のタイミングやペー スについては、中東情勢やAI関連需要の拡大、為替相場の変動の影響を含め、経 済・物価の中心的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら検討していく方 針です。特に、基調的な物価上昇率が 2%の物価安定の目標を超えて上振れていく リスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、基調的 な物価上昇率を 2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になると考えて います。日本銀行は、2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現と いう観点から、適切に金融政策を運営していく方針です。
(問) 金融政策についてお伺い致します。日銀は前回の金融政策決定会合で政策金利を 1.0%程度に引き上げることを決めました。これまでの利上げが日本経済にどのよう な影響を与えているのか、総裁のご見解を教えてください。また、市場では年内の 追加利上げの観測が強まっていますが、今後の利上げについて、経済・物価の動向 も踏まえたうえで、改めてになりますがお考えをお聞かせください。
次に、中央銀行の独立性についてお伺い致します。先日閣議決定された骨太の方針 では、原案の段階で政府が日銀の金融政策を牽制するように読み取れる文言が入り、 円や国債が売られる骨太ショックが起きました。日銀が金融正常化を目指す中で、 緩和的な環境を志向するとされる現在の政権との距離感について、マーケットの信 認の必要性も踏まえたうえで、お考えをお聞かせください。
2 (答) 最初のご質問ですけれども、先月の政策金利引き上げ以降、市場金利が上昇してい ます。それに伴い、市場金利連動型の貸出金利は上昇しています。また、多くの金 融機関は 8 月以降、短期プライムレートや普通預金金利を引き上げることを公表し ています。こうした中、先月の利上げからさほど日数は経過していませんが、これ までのところ、企業等の資金需要は増加を続けており、金融機関の貸出態度も引き 続き積極的です。CP・社債市場でも、良好な発行環境が続いています。このよう に、政策金利引き上げ後も、わが国の金融環境は緩和した状態が維持されていると 認識しています。この間、企業や家計のマインドにも、利上げによる目立った影響 は窺われていませんが、政策変更の影響が、金融環境の変化を通じて、実体経済や 物価に広く波及するまでには相応の時間を要すると考えられます。日本銀行として は、過去の利上げを含めて、企業や家計の行動、経済・物価に及ぼす様々な影響を 丁寧に点検してまいりたいと考えています。今後の利上げに関する部分ですけれど も、日本銀行としては、先ほど申し上げた通り、基調的な物価上昇率が 2%に近づ いている中、現在の金融環境が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融 情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整してい くことになると考えています。そうした調整のタイミングやペースについては、中 東情勢やAI関連需要の拡大、為替相場の変動の影響を含め、経済・物価の中心的 な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、適切に判断していきたいと考え ています。特に、基調的な物価上昇率が 2%の物価安定の目標を超えて上振れてい くリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、基調 的な物価上昇率を 2%程度の水準で安定させていくという観点が重要になると考え ています。現状、基調的な物価上昇率が物価安定の目標である 2%に近づいている ことを踏まえますと、これまで以上に、物価の上振れリスクを意識する必要がある と考えています。こうした認識を持って、次回以降の決定会合において、しっかり と議論してまいりたいと考えています。
二番目のご質問ですが、政府の骨太の方針では、国内投資の強化等を通じて、強い 経済の実現を目指す、そういう政府の経済財政運営の基本方針を示すとともに、物 価安定の実現に向けた日本銀行の金融政策運営に対する期待が表明されたものと認 識しています。私どもとしては、引き続き、自らの判断と責任のもとに、2%の物価 安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して金融政策を運営し、物価の安定を通 じた国民経済の健全な発展に貢献していくつもりでございます。現在、物価の上振 れリスクが高い中にあって、この先、金融緩和度合いの必要な調整が遅れますと、 そうしたリスクが顕在化し、それがその後の景気の下押しや金融資本市場の不安定 化につながる恐れがあります。このため、経済・物価情勢に応じて適切に金融政策 を運営していくことは、物価安定を実現するとともに、政府による物価高対策や成 長分野への投資と相まって、わが国経済の持続的な成長の実現に資するものと考え ています。なお、日々の市場の動きについて具体的にコメントすることは差し控え ますが、一般論として申し上げれば、マーケットにおいて金利等が安定的に形成さ れるためには、物価安定の実現に向けた適切な金融政策運営や、中長期的な財政の 持続可能性に対する市場の信認の維持が重要であると考えています。
3 (問) 退院おめでとうございます。くれぐれもお体ご自愛ください。二問お願いします。 一問目は、先ほどおっしゃった物価の上振れリスクを意識する必要がある、これを 踏まえて次回以降、しっかり政策を議論ということですが、展望レポートでの金融 政策のガイダンスでもあえて中東情勢のほかAIの影響や為替相場の変動の影響と、 物価の上振れリスクに当たる要因を多めに記載していることを考えると、次回以降 も利上げが十分あり得ると、その環境が整う可能性が高いとみていらっしゃるのか。 この点先ほどの発言の確認をお願いします。
二点目は、基調インフレが 2%に近づいていることを踏まえると、定着が重要とい うふうに展望では記載されてますが、定着っていうのは一体どのように測るのか。 一つは賃金と物価のこの循環、来年の春闘、ポイントになると思うんですが、来年 の春闘の帰趨が分かるのはやっぱりちょっと年末にかけてになってしまうと思うの で、そこまで待つ必要があるのか。そもそも定着を考えるうえで来年の春闘ってど れぐらい重要なものなのか。定着についての考え方をお願いします。
(答) まず最初ですけれども、今回、中東情勢に加えて、AI周りそして為替相場の動向 をリスク要因として具体的に指摘したということですが、現状において重要なリス ク要因を、取りあえず大事なもの三つ指摘させて頂いたということです。当然のこ とですが、こうした要因を含めて、経済・物価に影響を与えるような要因を次回以 降、決定会合できちんと分析、議論しつつ政策を決めていくということになります。
それから、二番目の基調的物価の 2%への定着度合いを確認するとしたらどういう ふうにして行うのかという難しいご質問ですけれども、もちろん既に何度もあるい はいろいろなところで申し上げているように、基調的な物価にある程度以上関係す るような指標はかなりたくさんあります。これらはみんな揃って 2%に綺麗になっ てくれれば、それははっきりしているわけですが、そういうことはないでしょうか ら、多くの指標が 2%近傍に近づいてくるかどうかというのが一つのポイントでし ょうし、近づいてくるとしてもその背景にある理由を考えたときに、それが長く続 くものであるかどうかという判断がある程度できるかどうか。それから私の考えで は、その裏側になるかもしれませんが、こっちは多少時間がかかるかもしれません が、いろいろなショックが起こって、例えば、ヘッドラインのインフレ率が上下に 振れる、そういうようなことがあってもわれわれが基調としてみてるようなものは あんまり動かないで 2%前後にいると、こういうことも定着したということの一つ の証左になるということだと思います。ただ余計なことかもしれませんが、完全な 定着を確認しないと政策の方は何も動けないとかそういうことではもちろんないで す。
(問) 先ほど総裁、物価の基調が 2%の目標を上回っていくリスクを以前よりも意識して、 今後、次回以降の会合の議論をしっかりされていくっていうコメントあったと思う んですが、それはやはりこの展望レポートの中でもおっしゃってるように、物価の 上振れリスクは上がってる中で、9 月会合以降も政策調整っていうことについて、
4 排除されていないっていう意味でよろしいのかどうか。それがまず一点です。
あと、市場の中でビハインド・ザ・カーブ懸念っていうのがまだ根強く残っている かと思います。それが円安の要因の一つになっていると思うんですけれども、そう いった市場の見方、ビハインド・ザ・カーブになってしまうリスクについて、総裁 ご自身は今どのようにお考えなっているかお願いします。
(答) 前半は冒頭のご質問でもお答えした通りですけれども、物価の上振れリスクを意識 しつつ、様々な要因を分析、先ほどもお答えしましたけれども、分析しつつ、次回 以降の決定会合においてしっかりと議論してまいるつもりでございます。
ビハインド・ザ・カーブかどうかという二番目のご質問ですけれども、申し上げま したように、あるいはもう少し申し上げますと、基調的な物価上昇率がかなり 2% に近づきつつあるという認識を持っています。そのうえで、それが上振れていくリ スクは無視できない、ある程度はある、しかしそうならないように政策を運営して いくようにしようということでありますので、ビハインド・ザ・カーブにならない ように政策を運営していくという考えでございます。
(問) 私の方から二点質問させて頂きます。まず、政府は 2027 年 4 月から 2 年間、飲食料 品の消費税率を 1%に引き下げる方針です。国民の消費行動を大きく左右する可能 性もありますけれども、わが国の経済・物価にどのような影響が出てくると考えて おられますでしょうか。加えまして、減税の財源をどのように確保するのかが焦点 になりますけれども、財政健全化の取り組みについてどのようなことを期待されて いるか伺えますでしょうか。
続きまして、第二点です。こちら、国債の買入れ方針について伺いたいんですけれ ども、日銀は長期金利が急激に上昇する場合には、機動的に国債買入れの増額など を実施するという方針をかねてから示しておられます。7 月上旬には、いわゆる骨 太ショックのもとで長期金利が一時 2.9%まで上昇しましたけれども、日銀は増額 などは行いませんでした。機動的な買入れはおそらくその市場機能が著しく低下し た場合などかなり限定的な状況で行われるということを想定しておられると推察し ているんですけれども、総裁としまして、具体的に例えばどういった状況になれば 実施することになるというふうに考えておられますでしょうか、以上お願い致しま す。
(答) まず消費税関連ですけれども、2 年間、消費税を来年の 4 月から引き下げることにな った場合の経済・物価への影響ということですけれども、まず食料品の消費税率で すね、若干ヨーロッパで似た例があるというようなことも参考に致しますと、素直 に予想される通りのCPIの変化になるかどうかは必ずしも明らかでない。つまり、 食品価格が消費税率の低下をそのまま反映して動くかどうかのところに、ある程度 の不確実性があるということだと思います。そのうえで、物価自体はある程度そこ
5 だけをとれば下がるということでしょうから、消費者の実質所得にはプラスの影響 がございます。これの消費に与える影響と、それから食品の消費税率が下がるとい う予想、そして、下がってから 2 年後にはまた上がるという予想、これが消費者の 買い控えとか反動という行動を、消費に起こすということなど、非常に複雑で、そ れらを全て総合して、例えば消費への影響を分析していくということになると思い ますが、これから決まっていくとすれば、丁寧に分析していきたいと思いますが、 現時点でどれくらいというようなことが申し上げられる段階にはきておりません。 それから、財源のことについては私どもがコメントをするということは不適切だと 思いますが、中長期的な財政健全化について、政府の方で市場の信認を確保して頂 くことは重要であるというふうに考えています。
国債買入れを機動的に行う場合の条件というのが二番目のご質問だったと思います が、これは具体的に前もって、こうこうこういうときに買入れを機動的に増やしま すということを申し上げるのは不適切な種類の対応、措置であるかと思います。大 まかな点として申し上げられるのは、金利が非常に速いスピードで上昇しているこ と、あるいはおっしゃったように、市場機能に何か深刻な問題が急に発生している とみられる等を総合的に考えつつ、その時々に判断していくということになるかと 思います。
(問) まず一点目が、2%の物価安定の目標を超えて上振れていくリスクがあると先ほどお っしゃいました。こうしたリスクが顕在化するその可能性の大きさについてはどの ようにお考えでしょうか。また、それを踏まえてですね、こうしたリスクがある中 で、日銀がこれまで以上により機動的に利上げの判断をしていく必要性というのは 高まっているというふうにお考えでしょうか。
それから二点目です。足元、企業倒産の件数が増えています。背景にはインフレで すとか、もしかしたら金利の影響もあるかもしれませんけれども、こうした現象に ついては、企業の新陳代謝が進むという意味でポジティブな動きというふうに受け 止めていらっしゃいますでしょうか。以上二点お願いします。
(答) まず、基調物価が 2%を超えて上振れするリスクがあるという場合に、そのリスク は確率何%かというご質問だったと思いますが、それはなかなか定量化するのが難 しいポイントで、残念ながら私どもも今回何%というような定量分析はしておりま せん。ただ、無視できない大きさの可能性があるということです。それと若干関係 があるのは、この経済・物価情勢の展望の中の物価の上振れリスクに印をつけた人 の数とか、中心からずれていても上振れリスクを指摘している人の数とか、そうい う辺りだと思いますが、ただこれは消費者物価指数(除く生鮮[食品])そのものに 関する上振れリスクで、基調物価についての上振れリスクを示した指標ではないと いうことは申し上げておきます。
それから、倒産自体は件数としては増えていますけれども、私どもが分析ないし調 査している範囲では、人手不足あるいは様々なコスト増による倒産、特に中小零細
6 企業でのそれが増えているというふうにみています。利払い費の増大で倒産したと いうケースはあまりないというふうにみています。倒産自体は、倒産する企業ある いはその関係者にとってはすごい大変なことですけれども、そこで例えば働けなく なった方々が、うまく他の企業に回って、自らの能力等を生かせるようになれば、 それは経済にとってプラスになることもあるかと思っております。
(問) 二点お願い致します。まず中東情勢に伴うような経済の下振れリスクが後退する一 方で、中長期的に基調物価の上振れ要因みたいなのが強まっている中で、今回政策 金利を据え置いてですね、利上げの影響が経済・物価に与える影響、これどれぐら いの期間見極めが必要だとお考えでしょうか。今後追加利上げを行ううえで、更に 重視されたり確認されたいデータなどがあったら、条件などを具体的にお聞かせ頂 ければと思います。
もう一点、先ほど総裁も言及されました熊本で発生した地震に関しまして、その地 震の地域経済に与える影響、日本経済全体に与える影響について、今の総裁のお考 えをお聞かせください。
(答) 今後のまず政策運営を考えるうえでも、これまでの利上げの影響をどういうふうに どれくらいの期間みていけばいいのかというご質問だったと思いますけれども、こ れは様々な要因で今月利上げしたからといって、今月、あるいはその次の月くらい にすぐ影響が出るというものではないわけです。長ければ 1 年半とか 2 年かかるよ うなケースもあるというふうに一般論としてそもそも言われていますので、私ども としては、だいぶ前に行った利上げの影響もまだある意味では見続けているという ことかと思います。そういうふうに時間がかかる理由についてはいろいろあります けれども、例えば金利が上がっていってそれが人々の支出行動に影響を与えるとい うところをみる際にも、新規の貸出の条件はわりとすぐ変化するということはあっ ても、残高として残っている貸出それ全体の金利、利払いはすぐに変化するわけで はないわけです。より具体的に、例えば住宅ローンであれば、新規の住宅ローン金 利はすぐといっても数か月かかりますが、動くこともありますけれども、既存の住 宅ローンの金利、変動金利であっても 5 年ルールとか 125%ルールですか、そういう ものがあって、利払い費がそう簡単にはすぐには上がらないということになってい ますので、利払い費が増えて、所得が減って消費が下がるというようなことがある にしても、それには時間がかかるということだと思います。ただそう申し上げたう えで、だいぶ前の住宅ローン契約についてはそういうことが起こり始めてる可能性 があるので、その辺も注意深く今後みていきたいと思います。一つの例に過ぎませ んが。
それから熊本地震の影響についてということですけれども、まだ全体あるいは将来 について、こういう影響が大きく出そうだということが詳しく分かっている段階で はないですけれども、まず金融機能ということで申し上げれば、皆さんご案内のよ うに、銀行の店舗とかATMには休業を余儀なくされたところがかなりございます。 ただ、大まかには決済や現金供給等の金融機能に大きな混乱があるというわけでは
7 ないというふうにみています。私どもも現金の供給をよりスムーズにするために金 融上の措置を金融機関に要請したところです。より広く経済への影響ということで は、例えば過去の熊本地震の影響等も振り返ってみますと、半導体であったり輸送 機械等の工場が集積している地域でもありますので、そこで生産の一時停止の動き がどれくらいあるか、更に停止となる財のサプライチェーンの中における重要性の ようなもの、こういうことで全体の影響がどれぐらい大きなものになるのか、とい うことがかなり左右されてくるかと思います。加えて、道路など物流インフラの被 害もある程度報告されていますので、私ども本支店から引き続き詳しく丁寧にモニ ターしていきたいと思っております。
(問) 二問お伺いします。一点目が、日銀の金融政策と政府方針との整合性についてです。 今回の展望レポートで、適切な金融政策を通じて物価の安定を実現することはわが 国の成長投資の拡大を支える観点からも重要であるという記述があります。これは 物価安定につながる利上げというのが政府の成長戦略に寄与する、あるいは成長投 資を支えるので政権の方針と整合的であると、そういう考え方だと理解してよいの でしょうか。
もう一点は為替についてです。最後のところで、政策調整のタイミング、ペースの ところで為替相場の変動というのが入りました。これは従前より為替動向が物価に 与える影響が強まっている、つまり、利上げ判断に占める為替の比重が高まってい ることを意味するのでしょうか。昨晩、政府・日銀で為替介入があったとの観測が ありまして、また、アメリカのベッセント財務長官は円が過小評価されていて安い という発言をしていると伝わっていますが、植田総裁として現時点で為替相場の変 動を理由に利上げペースを加速させる必要がどの程度あるとお考えでしょうか。
(答) まず政府の財政政策と物価安定の追求との整合性というご質問だったと思いますけ れども、そもそも私どもは日銀法[第]2 条ですか、物価安定を通じて国民経済の健 全な発展に貢献していくということが求められています。そのうえで、当面の政府 の成長分野への投資を促進するような政策との関連ですけれども、先ほども申し上 げたかもしれませんが、例えば物価安定の追求、維持に失敗して、私どもが少し先 になるかもしれませんが、ものすごい急激な利上げを迫られる、物価安定を取り戻 すためにですね、ということになれば、これは先ほど申し上げましたように、名目 金利はものすごく高くなりますし、市場の不安定化につながるかもしれない。これ は健全な成長投資促進にはマイナスであろうというようなことが言えるかと思いま すし、もう少し足元に引きつけて申し上げれば、設備投資等の意思決定に関するヒ アリングをよく実施していますけれども、それで設備投資を進める際の制約になっ ている要因は何かという質問をしますと、金利が高いということはあまり返ってき ませんで、人手不足とか資材の価格が上昇している、ということの方が圧倒的な比 率です。こういうのをみますと、物価安定が投資促進にもある程度重要であるとい うことが言えるかと思います。
あと為替と物価、あるいは金融政策との関連ですけれども、まず為替レート変動の
8 物価に与える影響が最近は以前に比べて少し大きくなっているというようにみえる、 あるいは証拠があるということは何度かお話してきたかと思います。そういう中で、 過去 1 年程度をみてみますと、ある程度の率での円安になっている。そして、大き な背景としましては、先ほど来ご質問もありましたように、基調的な物価が 2%に 近づいてきている。そういう中では、これまでとは違って、上振れリスクは注視し てみないといけないものである。以前は、ちょっと長くなって恐縮ですが、基調物 価が 2[%]をかなり下回っているときは、われわれの予測が間違えて基調物価が上 振れしても、それはそんなにコストが高いものではないということであったわけで す。現在 2[%]に近くなっているところで、上振れ要因が顕現化して、本当に上振 れたとしますと、それは大きなマイナスになる。ですからそういう要因には注意し ないといけないっていう中で、大事なものを三つ考えましょうということで三つ挙 げさせて頂いたわけです。ですので、為替を為替として注目して、リストの中に入 ってるわけではなくて、物価の決定要因の現時点においては大事な一つということ でみているということです。
(問) 今までの利上げの効果・影響に対してお伺いしたいんですけども、もちろんそのタ イムラグがあるということで、それなりの時間はかかるんでしょうけれども、今ま で金利を引き上げてきましたけども、ミクロでみられるけれども、マクロではこれ といった経済活動を制約するような動きっていうのはみられないかと思うんですけ ど、本日も展望レポートの中で言われてた、金利コストはなお十分に低い状態が続 いてるってことになると、今まで金利上げてきたけども、想定する影響がなかなか 出てきてないと。そうすると一方で先ほど言われてた、基調が 2%に近づいてて上 振れリスクを配慮しなければならないということになると、中立金利は分からない ですけどもまだ結構上の方にあるっていう考えもできるかと思うんですけど、そう するとやっぱりその現状からみれば利上げのペースを速める必要性っていうものが あるかと思うんですけども、その辺に関してお伺いしたいんですが、よろしくお願 い致します。
(答) 非常に悩ましいポイントですけれども、利上げを何回か続けてきたけれども、その 効果はあまり出ていないんじゃないかという趣旨のご質問だと思いますけれども、 利上げの効果だけではないですけれども、イールドカーブをみますと、政策金利か らかなり右の方にずれた金利についてはかなり高くなっていて、それの何割かはこ れまでの利上げと連動した動きであるということだと思います。ただ、そう申し上 げたうえで、支出行動に影響が強いのは、例えば 3 年ゾーン辺りの金利であるとか、 そういうことですので、そこは総合的にみなくてはいけないということで、金融環 境の点検をちゃんとやらないといけないということで、これまでの金利の引き上げ の影響をより詳しくみて適切にお伝えしていこうという姿勢で動いています。その うえで、中立金利とどれくらいの距離があるかというのは、これはずっと議論させ て頂いたテーマでして、残念ながら、申し訳ありません、はっきりとこれくらいの 距離があるということを申し上げにくいわけでして、堂々巡りになってしまいます けれども、毎回の利上げの影響、しかも一個一個の影響が、十分出るには時間がか かるということも考慮に入れながら、点検していきたいと思っています。そうした
9 中で、一方に物価情勢をにらみながら、このままでは金融環境が緩和的に過ぎると いうふうに思えば、それは利上げのペースを速めるということも十分あり得るとい うことだと思います。
(問) 一点伺います。長期金利に関して、3 年前、23 年 7 月の会合で、当時のイールドカ ーブ・コントロールを修正し、長期金利の形成は市場に委ねていく意向を、市場の 見方が長期金利に反映する余地を広げるとこの場で考えを伺いました。そこから 3 年が経ちましたけれども、水準はまあまあ上がって結構動くようにもなりましたが、 市場の機能の回復ですとか、そういった市場が発するシグナルのようなものという のは、当初総裁が想定していた姿に近づいているのか、ちょっと正常化の過程では あるんですけれども、現状のご認識を伺えればと思います。
(答) 機能の回復度が当初の期待と比べてどうかというご質問だと思いますが、定量的に、 連続的にみているわけでは必ずしもないので、難しいですけれども、期待通りある 程度回復してきているという言い方ができるかなと思います。取引の量も売買高も 増えてきていますし、もちろん時々値が飛ぶ、金利が大きく動くということもある わけですけれども、金利が急上昇した場合には、ある程度の押し目買いも入るとい う動きもみえていますので、しかも様々なファンダメンタルズの動きと思われるも のをある程度反映して動いているということもあると思いますので、市場機能の回 復度は、完全ではないにしても、ある程度発生している、起こっているというふう に思っております。
(問) AIの需要についてお伺いします。AIの需要増加で、半導体価格の上昇により、 関連耐久財の価格を押し上げるなどと展望レポートなどではされています。AIに よる物価上昇の持続性や、どれほど基調物価に影響を与えるのか、詳しくお考えを 聞かせて頂きたいです。また、AI投資による成果が乏しかったりして、その勢い が減速して景気全体が減速したり下押しする懸念もあるかと思いますが、そのリス クについてどのように評価されていますでしょうか。
(答) 確かにAI関連需要は非常に強くて、メモリー価格も大幅に上がっています。これ は最近の物価上昇、あるいは今後の上振れ要因として注目点の一つであるなという ふうに思っていますが、当然これは全体のAI需要の強さの持続性次第であるとい うふうに思われます。足元、例えば株価等でみますと、今週にかけてですかね、か なりの調整局面があるということもあったりしていますが、私どもがみている設備 投資周りのデータということ、あるいは関連の企業からのヒアリングという辺りを ベースにしますと、設備投資、AI周りの支出の持続性はそこそこあるというふう にみています。その持続性が、物価の上昇が、放っておくと基調物価に影響を与え るかどうかというところに影響してくると思います。ただ、もちろん、皆さん、こ の辺をみている人は、どこかで行き過ぎた、行き過ぎたというと言い過ぎですけれ ども、非常に高い伸びの支出が止まるリスクは何%か念頭に置きつつものをみてい
10 らっしゃるんだと思います。
(問) 先日、高市首相が今後の見通しについてデフレに戻るリスクがまだあるというよう な発言をされましたが、展望をみる限り日銀としては上振れリスクが強いというふ うに認識をしております。総裁ご自身のご意見として、デフレに戻るリスクという のがまだあるのかどうか、その辺りのところを教えて頂ければと思います。
あとすいません、ちょっと二点目で恐縮なんですけども、総裁ご自身のご体調につ いて一言、今どのような状況か教えて頂けると幸いです。
(答) デフレに戻るリスクですけれども、これはおそらく現状がどんな状況であっても、 そのリスクはゼロにはならないんだと思います。何%以下になったと、あるいはど れくらい低くなったかというところで判断するしかないということだと思います。 ですので、デフレに戻るリスクがまだあるかと言われれば、それは可能性はゼロで はないというふうにお答えしますし、前と比べてということになれば、前と比べて そのリスクはある程度低下したというふうになるかと思います。
それから私の体調ですが、ご心配おかけしましたが回復して通常通りの公務を行っ ております。
(問) 今後のリスクへの対応についてお伺いします。経済の見通しはバランスしていると している一方で、物価の見通しは引き続き上振れリスクが大きいと示されています。 欧米の中央銀行も市場の観測では利上げ方向へ向かうのではないかという観測が広 がっている中ですけれども、総裁は日銀が欧米の中央銀行とは異なり、緩和的なポ ジションにとどまった状態で、物価の上振れを点検していること、このこと自体の リスクはどのように受け止めているでしょうか。
(答) 欧米の中央銀行とは当然それぞれ独立に金融政策を決定していますので、私ども、 必ずしも同じサイクルでは動いていません。変化ということで申し上げれば、私ど もはここ暫く利上げの方向にずっと動いてきている。これに対して直近を除いて、 少し前までは欧米は利下げの方向であったということだと思います。ただ足元、中 東情勢等もあって、欧米がまた利上げに、ヨーロッパは若干動きましたし、アメリ カは動くかもしれないと言われているというところだと思います。
(問) 僕もAIについて一点お伺い致します。AIについてはですね、ChatGPTの 登場以降ですね、インターネットの登場であるとかあるいは産業革命以来の大きな 産業転換であるとか、そのような表現されることもございます。総裁はですね、学 者としてもですねこのAIというものの存在が金融政策に与えるインパクトという のは、これまであった歴史上の中でも非常に大きいものであると考えておられます
11 でしょうか。併せまして、展望レポートではですね、投資に見合ったかたちで収益 の拡大が実現しない場合は、資産価格の変動なども伴って調整圧力が生じる可能性 もあるというふうに指摘をされています。ここ最近あのハイパースケーラーのです ね投資などへのですね、採算性の見方がかなり厳しくなっておりますが、ここの調 整圧力っていうのはどのような経済・物価への影響を引き起こす可能性があるのか 教えてください。
(答) これは言うまでもなく、大きな技術上の変化だと思います。そのうえで、金融政策 に関係あるような物価ないしインフレとの関係ということで申し上げれば、まず現 状、設備投資中心にAI周りの支出がすごい増えているということだと思います。 これはそこだけをとれば、物価を上げる方向だと思います。ただし、おっしゃった ように、非常に巨額の設備投資に見合った収益が上げられないということが将来分 かって、それに伴って支出が低下してしまうということであれば、このインフレ圧 力は消えてしまうということだと思います。それは分からないです、そうなるかど うかは。それから、そうでない場合で進行した場合を考えてみますと、当初は支出 が増えるんでインフレ圧力である。あるいは設備投資に伴って株価が上がるんで消 費も増えるかもしれない。株を持ってる人の。しかしだんだん設備投資が設備化し てきて、これが生産性を上げるという方向に働いていきますと、これは物価を押し 下げるということになるかもしれない。それはだいぶ先のことですし、いつそうな るかというのは必ずしもというか、全然今の時点でははっきりしないことです。こ の全体をみながらAIの物価、インフレ、そして金融政策への影響を常に考えてい かないといけないっていうふうにみています。
(問) 長期金利が随分上がってます。日銀はいざとなればですね、機動的に国債を買い入 れるということは表明されてますけれども、かつて黒田日銀時代にはイールドカー ブ・コントロールってやってました。イールドカーブ・コントロール、YCCにつ いては、日銀は失敗だったという総括はしてませんから、おそらく政策の引き出し にはイールドカーブ・コントロールも入ってるんだと思うんですね。ということは、 いざというときにはイールドカーブ・コントロールは再開するということはあるん でしょうか。そもそもイールドカーブ・コントロールという政策は、日銀が長期金 利をコントロールできるという政策だったわけですけれども、植田総裁は中央銀行 に長期金利がコントロールできるとお考えでしょうか。
(答) YCCは、まず日銀含めた中央銀行の道具箱に入ってるかということで申し上げれ ば、それは一般論としては入ってるんだと思います。ただ、私どもが現時点で近い 将来、それを再び使おうというふうには、そういう可能性がかなり高いというふう には思っていないということでございます。そもそも長期金利を中央銀行がある程 度以上コントロールできるかという点に関しては、それはいくらでもいいから買う という覚悟を決めればある程度のコントロールはできるんだと思いますけれども、 それはそれで様々な副作用も引き起こすということだと思います。
12 (問) 退院おめでとうございます。前回ご欠席になっておられますので、前回会合につい てあえて伺わせて頂きたいんですけれども、前回はリモート参加もされず、投票も されていません。一方で政策委員会では執行部による利上げ案というのがですね、 大きな政策決定が行われたんですが、これは総裁がこの作業に加わっておられたん でしょうか。それとも入院されておられて完全に不在の状態だったんでしょうか。 不在だったとすれば、どなたが執行部の中で主導されたんだろうかということです ね。この利上げを主導されたのは誰だったのかということ。それから、会見は内田 さんがなさったわけですけれども、氷見野副総裁も希望はされていたようですけれ ども、これについては総裁の指示で内田さんが会見をされたんでしょうか。
(答) まず、前回の利上げの判断に向けて私が関わったかどうかというところだと思いま すが、もちろん当日は意見を提出しただけですけれども、それに至る準備の段階で、 執行部の中での議論等には当然参加しております。それは具体的にどういうもので あったかは、申し上げられないです。それから、前回の会見を内田副総裁がやった ことの決め方というご質問ですかね。それは前回、確か内田副総裁が答えていた通 りでございまして、政策委員会議長については政策委員会の決定に従って、私がい ないときは氷見野副総裁がまず任に当たるということになっています。それから、 その他の日銀の執行部としての私の仕事については、第一順位として内田副総裁が 当たるっていう内部の順序づけを作ってあります。これは私が着任したときに決め たものです。それに従って記者会見の方は対応したということです。
(問) 先ほど来、物価の基調がですね 2%に近づいてる中では、物価の上振れリスクにで すね、これまで以上に注意を払っていく必要があるのであると、そういう説明をさ れていますが、この状況はですね、従来のように中心的な見通しの実現確度に応じ て利上げをしていく場合と比較しまして、利上げのペースが速まったりですね、利 上げを前倒しする必要性が、リスクがある分だけ高まるというふうに考えてよろし いのか、総裁のご見解をお願いします。
(答) それはリスクが顕現化しそうかどうかということを判断しつつ決める、ということ に帰着すると思いますけれども。
(問) 総裁、今朝発表されました 7 月の都区部CPIについてどうご覧になっていらっし ゃいますでしょうか。ナフサ由来の価格高騰の転嫁っていうのが出てきたというこ とですが、川下への波及というのは現時点で想定の範囲なのかどうか。それから、 基調物価が 2%を上回るリスクというのを考えるうえでは、こういった消費者段階 への指標の反映というよりも、その前段階の市況の変化ですとか輸入物価、企業物 価というところ、こちらをより重視していくということになるんでしょうか、お願 い致します。
13 (答) 私どもはまず、企業物価にはデータ上、既に原材料の価格上昇が反映されている、 これは普通のパススルーに関する考え方からすると、徐々に川下あるいは消費者物 価の方へ転嫁されていくというふうに思いつついろんな見通しを考えたり、あるい はそれより速い動きがちらほらするので、上振れリスクもあるというふうに判断し たりしています。その中で今回の東京CPIですけれども、まだ会議中でしたので 精査する時間がなかったですけれども、先ほどの見通し等の中で、私どもとしては 7 月以降、秋にかけて消費者物価に企業物価の動き等が徐々に反映されてくるとい うふうに考えております。それと整合的な動きだったというふうにまずみています。
(問) 端的にお聞きしますけども、今回の展望レポートの金融政策運営方針の中で、利上 げのタイミングやペースについて論じるコンテクストの中で考慮すべきリスク要因 を一つから三つに増やしてるわけですが、これ素直に読めば利上げのペースが高ま る、速まる可能性があるっていうメッセージを発したというふうに読めるんですが、 そういう解釈で正しいんでしょうか。
(答) それはそうした要因の動き方次第ということだと思います。ただ動く可能性がある ということでリストの中に挙げさせて頂いたということになります。
(問) 今日もですね、総裁から、特に基調的な物価上昇率が 2%を超えて上振れするリス クが顕在化すると、これが無視できないものであると。そして、金融状況が緩和的 であると判断すれば利上げのペースをですね、速めることもあり得るという発言が 出ていて、財政政策と金融政策の整合性について伺いたいんですけれども。政府は 一方で、高市政権になってですね、去年の 21.3 兆円の経済対策、過去最大の今年度 予算、そして補正もですね、全額赤字国債ということで、昨日出てきた概算要求基 準もですね、もはやシーリングと呼べるものはないということを言い、インフレ政 策、拡張的な財政政策を続けてるわけで、日銀が、植田さんがですね、非常にリス クを警戒しながら身構えてるのと違って、政府はですね、拡張的な財政、インフレ 政策を変えていないわけです。先ほど、中長期にですね、政府が財政の信認を市場 で得ることは大事だということはおっしゃってましたけれども、この部分、もう少 しですね、財政政策の調整の必要性はないんでしょうか。もしくは、日銀がそこは もう機動的に利上げのペースを速めるとかですね、日銀ができるツールでやるしか ないということなんでしょうか。
(答) 私どもから財政政策をこういうふうにしろということを政府に向かって申し上げる 立場ではないというふうに認識しております。ただ、拡張的な財政運営というふう におっしゃってるだけではなくて、責任ある積極財政ということで、財政規律にも 一定の配慮はされつつ、政策運営をされていこうということだと思います。
(問)
14 これまでの金利上昇、利上げの影響で、特に企業と個人と分けて、個人のところに ついてお聞きしたいと思います。先ほど例として住宅ローンをお出しになりました けれども、7 月に公表された銀行貸出動向アンケート調査の貸出運営スタンスによ ると、個人向けの運営スタンスDIがマイナスに、私みたところもしかしたら初め てマイナスになっているかもしれません。個人の金利の影響ということでいくと、 日本では変動金利で借りてる割合が非常に高いであるとか、最近物件の高騰もあっ てですね、ローンが長期化している、あるいは夫婦ペアローンで借りてるといった 変化が出てきてると思います。先ほどすぐに影響が出るものではないというお話あ りましたけれども、この辺りの潜在的なリスクについてはどのようにみてらっしゃ いますでしょうか。
(答) ローンの金額が大きいとか、期間が長期化しているということがその借り手の所得 との関係で大丈夫かということは常に注意してみています。それから、最初におっ しゃったローンサーベイのところについては、確かにやや下向きの方向になってい ますが、それが季節的に毎年下がるという傾向がある時期に当たっていますので、 本当にトレンドとして下がる方向になっているのかどうかについては、引き続き注 意深くみていきたいと思っています。
(問) 基調物価が 2%を上振れしていくリスクのところで一つ確認させてください。6 月の 声明文にも上振れのリスクは記載されていたと思いますし、4 月の展望のところに ははっきりとは書いてはいなかったと思うんですが、物価が上振れするリスクにつ いては記載があったと思います。4 月、6 月と基調物価が 2%を超えて上振れするリ スクは徐々に高まってきている、今回の 7 月も含めて高まり続けているのか、今後 も高まっていく可能性が高いとみていらっしゃるのか、そこの見方をちょっと改め て教えてください。
(答) ここ数か月、様々な要因がそういう方向に働いてるとは思いますけれども、特にこ こ 1、2 か月注目しました、あるいは注目してますのは中長期の期待インフレ率とい いますか、これに関する指標がいくつか出まして、皆、底堅いというか、一部はか なり上昇している。これは中長期の期待インフレ率ですから、基調インフレとも密 接な関係を持つということで注目しております。
(問) 先ほどの質疑で総裁は、デフレに戻るリスクは前と比べて低下したがゼロにはなら ないとおっしゃって、リスクがゼロにはならないというのはその通りだと思って伺 っていたんですが、一方で政府は、デフレ脱却を再びそうした状況に戻る見込みが ないことと定義しています。とすると、日本においてデフレ脱却というのは永遠に 訪れないんでしょうか。
(答) これは政府と話してみないと分からないですけれども、政府はそういうふうにおっ
15 しゃる場合も、おそらく、デフレに戻る確率がある程度以下になったということで ご判断されるんだと私は想像しています。
(問) 今回の展望レポート最終ページの政策委員の消費者物価指数の見通しの分布をみる とですね、26 年度、27 年度も、前回の 4 月レポートに比べてかなりばらつきが広が っているようにみえます。27 年度は 2%か 3%に広く分布しているようにみえるんで すけれども、政策委員の方々の物価観に広がりが出てるっていう中で、この要因ど う分析されてますでしょうか。また、MPMの議長を務める植田総裁として政策の 合意を図っていくうえで、大事になっていくことは何だとお考えでしょうか。
関連してなんですけど、前回の決定会合で総裁が投票せずにですね、意見表明にと どめた理由っていうのは何かあるんでしょうか。以上です。
(答) インフレ率見通しの分布が広いということですけれども、その広い分布のかなりの 方々は高めのインフレ率での見通しで、更に上振れリスクも指摘されてるというこ とだと思います。若干名、少し低めのインフレ率見通しを持ってらっしゃる方がい らっしゃるということで、ここにはちょっと違いがあるわけですけれども、そうい う違い、あるいはそういう分布があるということは意識しつつ、次回以降の決定会 合では議論をまとめていきたいとは思います。
それから、前回の決定会合で、何で私が投票しなかったかというご質問だと思いま すけれども、投票するということは参加するということで、これについては、過去 の例はいろいろあって、どういう場合に参加したということになるのか、あるいは 投票の権利があるのかということに関するはっきりしたルールはないんですけれど も、大まかには実質的にきちんと議論に参加したということが条件になるという理 解だと思います。従って、意見表明書を出して、自分は利上げ方向だから利上げで 投票するというのでは駄目で、ほぼ全体の時間きちんと議論にオンラインでもいい ので、できれば 2 日間参加して、それで意見表明し投票するということが必要にな る、というふうに大まかには認識しています。私の体調とか治療の都合でそこはな かなか難しかったということでございます。
以 上
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FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:経済・金融