フィリピン南部スリガオ市の公立小学校に通っていたジュン・インパス少年は、家計を助けるため、同級生の宿題の代わりに絵を描き、その報酬としておやつや小銭を得ていた。10人兄弟の家庭で育ち、漁師の父と専業主婦の母を持つ彼にとって、学校に行くための小遣いさえ贅沢なものだったからだ。

「当時は夢を追う余裕などなく、ただ生き延びるために絵を描いていました」とインパス氏は当時を振り返る。映画館の看板絵師としてキャリアをスタートさせた彼は、やがて本格的に芸術家を目指してセブ島へ移住したが、現実は厳しく、画家としての芽が出ない苦渋の時期も経験した。しかし、妻の肖像画が転機となり、枢機卿の肖像画制作などを経て、その卓越した写実性と「平凡な人々の中にある美しさ」を捉える感性が高く評価されるようになった。

その才能は政界にも認められ、ドゥテルテ前大統領、そして現職のマルコス大統領の公式肖像画を手がけるという栄誉に浴した。特にマルコス大統領からは、「架け隔てのない普通の人だった」と親近感を抱いたという。44歳で美術学士号を取得するなど、成功後も貪欲に学び続ける姿勢を崩さない。

現在、インパス氏はセブ島の山林にギャラリーやワークショップスペースを併設した芸術拠点を開設し、芸術を身近なものにする活動を続けている。「普通の人々こそ社会の中で重要である」と語る彼の視線は、今年訪れる予定の台湾の街並みや人々にも向けられている。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:中央社 CNA
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