令和8年7月17日
国土交通白書は、国土交通省の施策全般に関する年次報告として毎年公表しています。今回の白書は、「経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ」をテーマに取り上げています。
国土交通分野のインフラ全般を俯瞰し、更なる経済成長を実現する観点から、行政や民間における生産性の向上に関する様々な取組を取り上げ、インフラと経済社会の課題が同時解決されるような、豊かな未来を展望しています。
本白書の概要は、以下のとおりです。
第I部 経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ
【第1章】ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
第1節 我が国の経済とインフラ
第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
【第2章】国土交通分野における取組と今後の展望
第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
第2節 望ましい未来に向けた展望
第II 部 国土交通行政の動向
国土交通行政の各分野の動向を政策課題ごとに報告
添付資料
報道発表資料 (PDF形式)
資料1:令和8年版国土交通白書 概要 (PDF形式)
資料2:令和8年版国土交通白書 (PDF形式)
お問い合わせ先
国土交通省総合政策局政策課
TEL:03-5253-8111 (内線24217)
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添付資料1 令和8年7月 17 日 令和8年版国土交通白書 総合政策局政策課
「令和8年版国土交通白書」を公表します ~経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ~
国土交通白書は、国土交通省の施策全般に関する年次報告として毎年公表してい ます。今回の白書は、「経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ」をテーマに 取り上げています。 国土交通分野のインフラ全般を俯瞰し、更なる経済成長を実現する観点から、行政 や民間における生産性の向上に関する様々な取組を取り上げ、インフラと経済社会 の課題が同時解決されるような、豊かな未来を展望しています。
本白書の概要は、以下のとおりです。
第Ⅰ部 経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ 【第1章】 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 第1節 我が国の経済とインフラ 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識 【第2章】 国土交通分野における取組と今後の展望 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 第2節 望ましい未来に向けた展望
第Ⅱ部 国土交通行政の動向 国土交通行政の各分野の動向を政策課題ごとに報告
【資料】資料1:令和8年版国土交通白書 概要 資料2:令和8年版国土交通白書
【問い合わせ先】 総合政策局 政策課 四反田、織田、村岡、遠藤、木口 電話 03-5253-8111(内線 24217)、03-5253-8260(直通)
添付資料2 令和8年版国土交通白書 概要
国土交通省 総合政策局 政策課
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism 構成 (第Ⅰ部:経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ)
戦後、我が国は道路や港湾、新幹線、空港などの大規模なインフラ・交通網の整備を推進し、経済成長の 基盤を築き上げた。
構造的な人口減少が進む中、低迷する潜在成長率を克服し、持続的な経済成長を実現するためには、官 民の資本投入量の増加に加え、限られた人材と時間で高い付加価値を生み出せるよう、生産性の向上が 最重要課題となる。
国土交通白書の第Ⅰ部では、「経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ」をテーマとし、経済成長の 観点から、国土交通分野のインフラを俯瞰するとともに、生産性の向上に資する施策や取組を取り上げ、 豊かな未来を展望する。
第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
〇我が国の経済と生産性の向上の重要性を踏まえ、インフラが我が国全体の生産性向上を牽引する上で果たすべき役割と、インフラを 取り巻く課題について述べる。また、国内外の社会資本整備政策について取り上げつつ、インフラに関する国民・事業者の意識を踏まえ、 国土交通分野の取組の方向性について記述する。
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 ※国土交通白書全文は、国土交通省HPに掲載。
〇経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラに関する取組について整理し、 https://www.mlit.go.jp/st 国民生活が豊かになる未来を展望する。 atistics/file000004.html
1 目次
第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
第1節 我が国の経済とインフラ 1 我が国の経済と生産性向上の重要性 2 インフラによる生産性向上に向けた課題 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識 1 海外と比較した我が国の現状 2 政府の政策と国土交通分野に期待される取組 3 経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラに対する国民・事業者の意識
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望
第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 1 成長を加速させるハード・ソフトのインフラへの新規投資 2 生産性を持続・向上させる既存インフラの活用・再構築 3 我が国の潜在力を開花させる新技術等の活用 第2節 望ましい未来に向けた展望 1 国民の願う将来の社会像 2 国民生活が豊かになる明るい未来に向けた展望 2 第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 第1節 我が国の経済とインフラ 1 我が国の経済と生産性向上の重要性 ※1本白書では、国土交通省所管のいわゆる産業・社会の基盤となる物理的な社会資本(施設・設備)だけ でなく、民間事業者等により提供される交通サービスまで含めて、「ハード・ソフトのインフラ」として記述。
我が国の社会資本整備は、戦後の経済社会の発展を支えてきた。社会資本のストック効果には、企業立地や設備投資等の 民間投資を誘発する効果や、移動時間の短縮等により経済活動の生産性を向上させる効果がある。 人口減少下の我が国では、経済成長の三要素のうち、生産年齢人口が減少(労働投入量の減少)し、資本投入量も減少する 中、潜在成長率が低迷。潜在成長率を引き上げ、持続的な経済成長を実現していくためには、ハード・ソフトのインフラ※1が 抱える課題解決を通じ、資本投入量及び全要素生産性※2を上げていくことが重要。 ※2労働又は資本に関する質的な変化。
【GDPと社会資本整備との関係】 【潜在成長率の要素分解と推移】 社会資本整備は、 経済成長の源泉を、労働投入量の増加、資本投入量の増加、 戦後、社会資本投 全要素生産性の向上の三つの生産要素に分解。
成長の要素分解 資額も名目GDP の成長とともに順 潜在成長率 調に伸びてきたが、 1990年代後半以 労働投入量 資本投入量 全要素生産性 降は、投資額が急 資料)国土交通省 激に落ち込み、こ れに伴い名目 我が国の潜在成長率は、1980年代は前年度比4%超で推移 GDPの伸びも縮 していたが、1990 年代以降急速に低下し、2000 年以降は1% 小している。 以下で推移。 資料)内閣府「国民経済計算」、 「社会資本ストック推計データ」より国土交通省作成 (前年度比寄与度%) 潜在成長率とその要素の推移 【社会資本の効果】 5 就業者数 労働時間 生産活動 雇用の 所得増加による 4 社会資本の効果 フロー効果 の創出 誘発 消費の拡大 資本投入量 3 全要素生産性 ストック効果には、 安全・安心効果 ストック効果
潜在成長率 2 移動時間の短縮 ・耐震性の向上、水害リスクの低減 等 等による「生産性 1 の向上効果」と 生産性の向上効果 ・移動時間の短縮、輸送費の低下 0 いった社会の 貨物取扱量の増加 等 ベースの生産性 -1 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 2011 2013 2015 2017 2019 2021 2023 (年度) を高める効果が 生活の質の向上効果 -2 ある。 ・生活環境の改善、アメニティの向上 等 ※資本投入量は一般政府・民間住宅を除いた推計。 資料)国土交通省 資料)内閣府「2025年7-9月期四半期別GDP速報(1次速報)」より国土交通省作成 3 第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 第1節 我が国の経済とインフラ 2 インフラによる生産性向上に向けた課題 【資本投入量】公共投資の抑制傾向が続く中、空港等の国際競争力の確保が課題であり「インフラが成長のボトルネック となる懸念」がある。他方、将来、維持管理・更新費の増加等により新規ストックへの投資抑制の懸念があり、今後、施設 の老朽化が加速する中、「ストックの減耗による機能低下が懸念」される。 【全要素生産性】インバウンド需要の偏在等、社会情勢が変化する中、渋滞等により時間ロスが生じるなど、インフラの効 果的な利活用が不十分。生産性の向上に資するAIへの投資が遅れているなど、「社会情勢の変化に伴う新たなニーズへ の対応」が課題。 【インフラが成長の 【インフラのストックの減耗 【社会情勢の変化に伴う ボトルネックとなる懸念】 による機能低下の懸念】 新たなニーズへの対応】 社会資本ストックの伸びが鈍化する中、 減耗が成長率を押し下げるとともに、 新たなニーズに応じた利活用が不十分。 空港等の国際競争力の確保が課題。 施設の老朽化による機能低下の懸念。 AI・新技術等の導入も遅れている。 主要国空港との国際空港処理能力の比較 建設後50年以上経過する社会資本の割合 民間のAI投資額
2025年3月 ※ 米国 285.88 ロンドン(6) ニューヨーク(3) ヒースロー、スタンステッド、ルートン、 JFK、ニューアーク、ラガーディア 約75% 2030年3月 中国 12.41 ガトウィック、シティ、サウスエンド 359都市 213都市 (国際125、国内88) 2040年3月 英国 5.90 (国際346、国内13) 178 146 約64% 約64% ※ フランス 4.36 124 115 カナダ 4.28 (166) 約54% 約52% インド 4.09 (52) ドイツ 3.89 約42% 約41% 約40% 約40% イスラエル 3.58 総発着回数 総旅客数 約35% 約34% 2.52 250倍 【万回/年】 【百万人/年】 オーストラリア 約28% 約29% 以上 ※総発着回数・総旅客数は 約26% サウジアラビア 2.03 2024年データ 東京(2) (空港数) 成田、羽田 約20% シンガポール 1.82 152都市 (国際106、国内46) 就航都市数 約15% 韓国 1.78 約10% ベルギー 1.20 今後の増加予定分 約7% 100 126 国内 日本 1.11 +17 スウェーデン 0.97 現在の 83 (55) 国際 道路橋 トンネル 河川管理施設 水道管路 下水道管渠 港湾施設 空港処理能力 (橋長2m以上) [約1万2千本][約2万8千施設] [約75万km] [約50万km] [約2万5千施設] ※2025年のデータ 0 100 200 300 400 [約73万橋] ※水道管路、下水道管渠は2024年3月時点 (十億ドル) 最大発着回数 総旅客数 資料)Stanford University Human-Centered Artificial Intelligence(HAI) [ ]:各施設の総数(総延長) 資料)国土交通省 【万回/年】 【百万人/年】 資料)国土交通省 「Inside the AI Index:12 Takeaways from the 2026 Report」より内閣府で作成 4 第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識 欧米諸国では、基幹インフラの整備が経済成長を促し、雇用を創出するために不可欠な存在であるとして、将来を見据え、 新規の成長インフラへの積極投資、既存インフラの再構築等を推進。 我が国においても、「強い経済」の実現に向けて、成長戦略等の策定などを推進。 【欧米諸国における社会資本整備政策】 【政府の政策と国土交通分野に期待される取組】 インフラ10カ年戦略(英国) 日本成長戦略 10年間(2025~35年)で総額7,250億ポンド(約150兆円)以上の資本支出。高速道路 国内投資に徹底的なてこ入れを行うこととしており、AI・ 及び主要幹線道路等への集中投資。 半導体、造船、港湾ロジスティクス、防災・国土強靱化等 への「危機管理投資」や「成長投資」を推進。 インフラ・気候中立のための特別基金(ドイツ) 5,000億ユーロ(約90兆円)規模の特別基金を設立(2025年)。道路、鉄道等のインフ 地域未来戦略 ラ老朽化対策、公共交通網の再構築等を実施。 地域ブロックごとの戦略産業クラスターを全国各地に形 成し、世界をリードする技術・ビジネスを創出するとともに、 コラム:インフラに関する英国・ドイツの投資戦略 地場産業の付加価値向上と販路開拓を強力に支援。 特別基金の資金構造(ドイツ) 英国やドイツでは、インフラへの大規模な投資を再度 活発化。 社会資本整備重点計画及び交通政策基本計画 強靱な国土と力強い経済社会等に向けた社会資本整備 ドイツの特別基金5,000億ユーロのうち3,000億ユーロが、 の推進とあわせて、地域社会、成長型経済等を支える 国土全体の基幹インフラ整備を主導する連邦政府投資枠。 交通施策を推進。
連邦・州・自治体の財政的余地を確保し、交通等の投資 社会資本整備政策と交通政策を「車の両輪」として連携・ ニーズが高い分野への迅速かつ的確な資金投入が可能。 整合を図り、一体的に施策を実行。 資料)ドイツ連邦財務省資料より国土交通省作成
コラム:欧州の成長を牽引する欧州横断輸送ネットワーク(TEN-T) 完成イメージ EU は、1990年代より、欧州横断輸送ネットワーク(TEN-T※)の制度化を推進。重要性の 高い区間を「コアネットワーク」として位置付け、国境をまたぐボトルネックやミッシングリン ※Trans-European Network-Transport クの解消を優先的に推進。
その一つの区間では、全長約18kmの沈埋トンネル建設を通じて、フェリー輸送に依存 している海峡区間を鉄道2線と道路4車線に置き換えるプロジェクトを推進。これにより、 フェリーで約45分を要する区間の所要時間を鉄道約7分・道路約10分に短縮。 資料)Sund & Bælt Holding A/S 5 第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識 3 経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラに対する国民・事業者の意識 【事業者アンケート】 事業者に対して、インフラの整備が、地域経済の発展にどの程度貢献しているかをたずねたところ、「非常に貢献して いる」及び「貢献している」との回答が、8割を超えており、インフラの地域経済への貢献は、日々事業活動を行う事業 者に、幅広く実感されていることがうかがえる。 また、生産性向上のために重要と考える施策は何かをたずねたところ、「生産性が高い基幹インフラ等の拡充・強化」 と「老朽化インフラの更新に合わせた経済的価値創出」が高くなっている。 【(設問)インフラの整備に関する地域経済への貢献】
【(設問)インフラに関して生産性向上のために重要と考える施策】
○事業者アンケート:全国の製造業、建設業、運輸業等の民間事業者へのwebアンケート(回答事業者数:1,163社)(2026年2~3月実施)。 6 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 1 成長を加速させるハード・ソフトのインフラへの新規投資① 速達性と輸送の効率性は、経済成長を牽引する上で必要不可欠。高規格道路網や空港・港湾におけるボトルネックの 解消が必要。 成長のボトルネック解消に向けて、生産性向上を支える強靱で効率的な人流・物流ネットワークの整備に向けたインフラ への投資が重要。
(1)基幹インフラの拡充・強化 【広域経済圏を形成するリニア中央新幹線の整備】 【産業発展・観光立国に資する整備新幹線】 リニア中央新幹線の開業により、一体的な広域経済圏が形成され、 整備新幹線は、移動時間を大幅に 観光客で賑わう福井県立恐竜博物館 生産性の向上や観光・消費の拡大をもたらし、地域活性化や国際 短縮させ、地域相互の交流を促進し、 競争力の強化につながることが期待。 産業発展や観光立国の推進等に対し、 大きな役割を果たす。
2024年3月に開業した北陸新幹線 (金沢・敦賀間)の沿線においても、 観光客の増加や民間投資の拡大など が見られる。 資料)国土交通省 資料)福井県
コラム:つながる街、広がる未来、「大阪湾岸道路西伸部」 コラム:北東アジアの国際ハブ空港として世界との連結性の強化へ! 事業概要図 成田国際空港では、インバウンドの受入れ拡大等に向けて、滑走路の 六甲アイランドやポートアイランドを 延伸・新設等による処理能力の拡大に加え、鉄道や周辺の道路整備 結ぶ延長14.5kmの大阪湾岸道路西 (圏央道)によりアクセス性が向上。 伸部が2016年度に事業化。 機能強化の概要図
本事業により、阪神高速3号神戸線 の混雑の緩和が図られるとともに、 国際コンテナ戦略港湾(阪神港)等 の物流拠点への定時性が確保され、 物流効率化等が期待。 資料)近畿地方整備局浪速国道事務所ほか 資料)成田国際空港㈱ 7 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 1 成長を加速させるハード・ソフトのインフラへの新規投資② 半導体関連等の成長産業が集積しつつある地域では、企業立地の促進等を目的に、インフラ整備を推進。 設備投資等を呼び込む上では、アクセス性だけでなく、事業継続性を確保する安全・安心インフラの構築も重要。 (2)成長産業を支えるインフラ 【地域経済の核となる半導体産業を支えるインフラ整備】 コラム:北海道の多様な産業発展を牽引するインフラの整備 半導体関連企業の大規模な工場等が立地される場合、材料・製品 道央圏の成長産業を支えるインフラ整備 の運搬等に道路は必要不可欠。熊本県では、大型の半導体工場 北海道でも、半導体・デジタル産業等の の進出を契機に、産業の更なる成長を支えるインフラ整備を推進。 成長産業に関する物流効率化や生活 熊本県におけるインフラ整備 環境の向上に資するインフラ整備を推進。
一例として、延長約80kmの「道央圏連絡 道路」は、現在約8割の区間が開通して おり、沿線自治体の工業団地から苫小 牧港や石狩湾新港への所要時間の短縮 など、交流・物流拠点へのアクセス性が 向上。 資料)国土交通省 資料)国土交通省
(3)安全・安心で呼び込む民間投資 【投資を喚起する水害リスクへの対策強化】 コラム:投資ニーズに応える熊本市の戦略 水害対策によって浸水被害を軽減。地域の安全・安心を確保し、 熊本市内の企業立地 企業進出や設備投資などを促進。 ハード面のインフラ整備に加え 一級河川淀川水系寝屋川北部地下河川 整備の概要 て、更なる民間投資のニーズに 的確に応えるために熊本市では、 官民が協力し、企業誘致を促進。
同市は、土地利用転換手続を 迅速化するなど、開発を支援。 また、公募により採択された 民間事業者が用地の取得から 企業誘致、用地の売却等を担う。 資料)熊本市
資料)国土交通省 8 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 2 生産性を持続・向上させる既存インフラの活用・再構築 インフラが果たすべき機能の低下が懸念される中では、経済社会のニーズに合わせて、新設・既存を問わず、インフラを 最大限有効に活用するとともに、地域の将来の姿を踏まえつつ再構築することが求められる。 また、インフラ老朽化が急速に進行する中で、その機能を持続させることができるよう、メンテナンスを戦略的・計画的に 進めていくことも重要。 (1)既存インフラの有効活用(質的改善)と高度化 【産業地域等のアクセス性向上に資するスマートIC】 コラム:複々線化と地下化による輸送力向上とまちづくり 高速道路の有効活用を目的として、スマートICの設置を推進。周辺 小田急線の下北沢駅では、混雑緩和のため、複々線化事業及び連続立 産業のアクセス性向上や物流効率化等を促進。 体交差事業を実施(2019年3月に事業完了)。 スマートICのイメージ図(SA・PA接続型) 本事業が街の価値や魅力を高め、地域活性化に貢献。 地下化・複々線化の断面図 下北沢地区の線路跡地のまちづくり
資料)国土交通省 資料)小田急電鉄㈱
(2)新技術も活用した老朽化対策 【老朽化インフラの再構築と合わせた付加価値創出】 【予防保全に向けた戦略的マネジメント】 地域の将来の姿を見据えて、インフラの集約・再編や優先度に応じた インフラ老朽化の進行や担い手不足等の課題に、効果的・効率的に 維持管理を行い、インフラストックを適正化していく取組が重要。 対応するために、群マネ※やドローン等の新技術活用を推進。 ドローンにより、立入りが困難な環境においても、管路内点検が可能。 コラム:首都高の更新と日本橋のまちづくり 群マネの手引きVer.1(群マネ入門超百科) ※地域インフラ群再生戦略マネジメント 首都高の地下化と再開発のイメージ ドローンによる下水道管路内点検のイメージ 首都高都心環状線は開通から 60年以上が経過し、老朽化が 進行。
老朽化した高架橋の地下化 に合わせた新しいまちづくりを 推進。 資料)首都高速道路㈱ 資料)国土交通省 9 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 3 我が国の潜在力を開花させる新技術等の活用① 近年、自動化技術やAI等、新たな技術も次々と生まれている。生産性向上に向けては、これらの技術を最大限活用し、 地域活力や産業基盤を強化していくことが重要。
(1)デジタルデータ・AI等の活用による地域活力と産業基盤の強化 【地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)】 【自動運転技術の積極的な実装】 ICカードや配車システム等から出力されるモビリティ・データの仕様 自動運転移動サービスの社会実装の取組
の標準化の推進や、バス業務の共同化等、地域交通におけるデジ 自動運転社会の早期 タル活用や標準化を進めるプロジェクトを推進。 実現に向けて、自動運 COMmmmONSにおける標準化プロジェクトの例(輸送資源のフル活用) 転車両の開発・普及の 促進や社会受容性の 国が施設の従業員が多数の送迎車両の運 向上、自動運転を支え 行を簡単に一括管理できる「共同送迎管理 る道路・都市インフラ側 システム」を開発。 福祉施設、旅館、塾など多様な施設が連携 の取組などを推進。 した共同送迎の取組を実現可能。 資料)平塚市 資料)国土交通省
コラム:再び世界の頂点を目指す「造船ロボット」の最前線 コラム:神戸港におけるコンテナターミナルの競争力強化 神戸港では、コンテナ物流の効率化を目的とした新・港湾情報 撓鉄ロボットの稼働状況 ジャパンマリンユナイテッド㈱津 処理システム「CONPAS※」を導入し、コンテナトレーラーのター 事業所では、生産性向上を目的と ミナル滞在時間の短縮を図る。 ※Container Fast Pass
CONPASのイメージ して、撓鉄(ぎょうてつ)※ロボット等 の導入を推進。
撓鉄ロボットが人の作業を代替し、 AIも活用しながら、加熱順序等の シミュレーションも実施。
※鋼板を加熱・冷却し、船体等の滑らかな三次元曲面を 作り出す高度な造船技術のこと 資料)ジャパンマリンユナイテッド㈱ 資料)国土交通省 10 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 3 我が国の潜在力を開花させる新技術等の活用② インフラの新たな活用によって、エネルギー安全保障に貢献していくことが求められている。 新技術等も活用し、我が国の潜在力を開花させる様々な取組を推進。 (2)インフラの新たな活用によるエネルギー安全保障への貢献 【浮体式洋上風力発電の普及促進】 【次世代太陽電池を活用した公共施設やモビリティ】 「第7次エネルギー基本計画※」では、浮体式洋上風力発電等の 国土交通分野では、インフラ空間や建築物を活用したペロブスカイト 再生可能エネルギーの主力電源化を推進。 太陽電池等の設置を促進。 ※2025年2月閣議決定
コラム:潮風から発電、国内初の浮体式洋上風力発電所 コラム:太陽の力を受けて走るモビリティ 風車全景 EV三輪車 五島市福江島の海域で、 国内初の商用浮体式洋上 モビリティ分野では、車載用ペロブスカ 風力発電所である「五島 イト太陽電池の実用化を目指した開発 洋上ウィンドファーム」の も始まり、次世代型の「曲がる太陽電 運転を2026年1月より 池」を搭載したEV三輪車を開発・販売。 開始。 資料)五島フローティングウィンドファーム合同会社 資料)EVジェネシス㈱
【水素実装に向けたシステム構築】 コラム:走りながら充電できる新しいインフラ「走行中無線給電技術」 水素は、発電・輸送・産業といった幅広い分野の脱炭素化に資する 走行中に非接触のまま充電が可能な「走行中給電」の実装を推進。 ことから、2050年カーボンニュートラル実現に向けたカギ。 ㈱デンソーは、性能や耐久性等を評価できる基盤の整備、電動車両の 国土交通分野においても、水素運搬船や港湾における水素等の 開発などを進め、2024年9月、50時間充電停車なしの走行を成功。 受入環境整備、FCV商用車の普及促進など様々な取組を推進。 高速道路上での走行中無線給電技術の実証プロジェクトも発足。 水素実装に向けた取組の例 テストコース 走行中無線給電のイメージ
資料)国土交通省 資料)㈱デンソー 資料)東日本高速道路㈱ 11 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 第2節 望ましい未来に向けた展望 1 国民の願う将来の社会像 【国民意識調査】 国民に対し、インフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来では、どのような移動社会を最も期待するかについて たずねたところ、「多様なモビリティの自動運転機能等の進展により、誰もがシームレスに移動できる社会」や「交通ネット ワークの整備により、国内主要都市間を数時間以内で移動できる社会」の回答が多く、ビジネスや旅行といった長距離移 動における速達性への期待がうかがえる。 また、輸送サービスが自動化・高度化されることで、最も期待するメリットについてたずねたところ、「人手不足の解消・労 働環境の改善」及び「過疎地など交通不便地域のサービス向上」といった輸送サービスの維持などのインフラが抱える課 題の解消と、「コスト削減」及び「時間の短縮」といった経済的な効果の両方を期待する結果となった。
【(設問)インフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来に向けてどのような 【(設問)輸送サービスが自動化・高度化されることで、最も期待するメリット 社会を最も期待するか(移動分野)】 について】
○国民意識調査 (Webアンケート) 回答者総数:国内在住の18歳以上の3,600名 調査期間:2026年3月 12 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 第2節 望ましい未来に向けた展望 2 国民生活が豊かになる明るい未来に向けた展望 リニアの開業等、高度なハード・ソフトのインフラにより生産性が大幅に向上し、ライフスタイルが画期的に変化。 既存の道路空間を活用し、無人化・自動化された新たな物流システム「自動物流道路」や、自動運転技術等により安全・環 境・利便性を向上させた「次世代交通システム」の運用で、持続的にストック効果を発揮。 AI・ロボットや再生可能エネルギーの活用により、「地域や観光の足」の確保や「インフラの老朽化」、「燃料コストの削減」 といったインフラが抱える課題と、「機会損失の削減」や「現場の効率性の底上げ」、「エネルギー自給率の向上」といった 経済社会の課題を同時解決。 【生産性が向上する高度なインフラ】 【再投資による持続可能なインフラ】 リニア中央新幹線や高規格道路等の整備により移動の速達性が 既存インフラへの再投資により持続的にストック効果を発揮。 向上し、これまでよりも広域な新たな経済圏が誕生する。
Zip Infrastructure㈱
(リニア中央新幹線全面開業による新たな経済圏の構築) (自動物流道路) (次世代交通システム)
【インフラと経済社会の課題の同時解決】 コラム:機会損失の削減・現場の生産性向上と成長余力の連鎖的拡大 輸送エネルギーを化石 燃料から再エネに転換 インフラを取り巻く課題 し、全国の再エネポテン の解決により、地域経 シャルを最大限引き出 済の潜在需要の掘り す。 起こしや労働力の補 完が進み、生産性が 「燃料コストの削減」と 向上するなど「成長余 「エネルギーの地産地 力の連鎖的拡大」を実 消」を同時実現。 現。 13 有識者インタビュー①
〇経済学から見た我が国の経済成長に必要な投資とは 滝澤 美帆氏(学習院大学経済学部教授) 我が国経済の現状と課題 ・潜在成長率向上のカギは資本と人への投資 人口減少下における我が国の経済成長に向けた取組 ・新市場の創出が長期的な経済成長につながる 経済成長を牽引するインフラの実現に向けて ・政府の役割は「水先案内人」として方向性を示すこと ・経済全体の生産性向上に寄与するインフラの維持には新技術によって解決を
〇経済成長を支えつつ、社会全体、将来世代のためにインフラ政策をどうするか 小池 淳司氏(神戸大学大学院工学研究科教授) 経済成長を牽引する社会資本の役割・課題 ・現代はインフラの量に加えて質の向上が経済成長につながる 生産性向上に向けたインフラに関する取組の方向性 ・インフラ老朽化対策は国の責務である一方、成長産業にもなり得る 経済成長を牽引するインフラの実現に向けて ・次世代のために-風土・伝統・文化の継承とインフラの役割
〇造船業再生と次世代船舶・海事イノベーションへの期待 清水 悦郎氏(東京海洋大学学術研究院教授) 造船業の再生に向けて ・百年に一度のチャンスを生かして造船業再生と海事産業全体の底上げを 自動運航船等の次世代船舶に関する現在地と課題 ・ゼロエミッション船の課題は「インフラ整備」 次世代船舶や海事イノベーションへの期待 ・担い手不足解消と海洋利用拡大に向けて、自動運航船の活用は必須 次世代船舶や海事イノベーションに関する将来展望 ・海事産業は、次世代人材が大きく活躍できる分野 14 有識者インタビュー② あかり
〇AI等の新技術がもたらす建設業の生産性向上 燈㈱ 野呂 佑希氏(代表取締役社長 兼 CEO) 武田 亮太氏(DX Solution 事業本部 General Manager) 我が国のAI活用の現在地 ・AI導入に関する四つの建設業界特有の課題 生産性向上に向けたAIの活用、役割について ・フィジカルAIが担うべき仕事と、人が担い続けるべき仕事 社会実装に向けた課題について ・AI推進に必要なのは、失敗を許容して挑戦を評価する文化づくり AI等、新技術によって生産性が向上した明るい未来について ・AI等、新技術の普及がもたらすインフラ・交通の未来 写真左:野呂氏、写真右:武田氏
〇国土・歴史に根付き、未来に向けて支え続けるインフラ 市川 紗椰氏(モデル・タレント) 私にとってのハード・ソフトのインフラとは ・インフラを意識すれば、日常が楽しく豊かに インフラは熟練の知恵と技能の蓄積の歴史 ・未来に伝えたい近代化遺産 インフラを未来に残すために ・ローカル線の課題と路線維持のための工夫 インフラがもたらす未来への期待 ・「出かけたくなる」インフラに期待
〇経済成長と社会の成熟に向けた交通インフラの課題 須知 高匡氏(Zip Infrastructure㈱ CEO) 我が国の経済成長および社会の成熟に向けた交通インフラの課題について ・日本独自の課題に対応するイノベーションが不足している 社会実装に向けて ・公平な競争環境の整備が必要 暮らしと社会の将来展望 ・我々のひとつひとつの判断が未来を変える 15
添付資料3 令和8年版
国土交通白書
国 土 交 通 省 目 次
はじめに… ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………… 1
第Ⅰ部 経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ
第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題…………………………… 4 第1節 我が国の経済とインフラ………………………… 4 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識…… 46 1 我が国の経済と生産性向上の重要性… ………… 4 1 海外と比較した我が国の現状… ………………… 46 2 インフラによる生産性向上に向けた 2 政府の政策と国土交通分野に期待される 課題…………………………………………………………… 30 取組…………………………………………………………… 51 3 経済成長を牽引するハード・ソフトの インフラに対する国民・事業者の意識…… 54
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望… ………………………………………………………………… 60 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野に 第2節 望ましい未来に向けた展望… ……………… 111 おける取組… ……………………………………………… 60 1 国民の願う将来の社会像… ……………………… 111 1 成長を加速させるハード・ソフトのイン 2 国民生活が豊かになる明るい未来に向け フラへの新規投資… …………………………………… 60 た展望… …………………………………………………… 119 2 生産性を持続・向上させる既存インフラ の活用・再構築………………………………………… 76 3 我が国の潜在力を開花させる新技術等の 活用…………………………………………………………… 86
I 第Ⅱ部 国土交通行政の動向
第1章 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開… ………………………………………………………… 136 第1節 能登半島地震・豪雨及び東日本大震災 2 我が国の海洋権益の保全… ……………………… 145 からの復旧・復興の現状と対応策… ……… 136 第8節 海洋の安全・秩序の確保…………………… 147 第2節 東日本大震災を教訓とした津波防災 第9節 土地政策の推進… ………………………………… 149 地域づくり… …………………………………………… 136 1 土地政策の動向……………………………………… 149 第3節 国土政策の推進… ………………………………… 137 2 年次報告の実施……………………………………… 150 第4節 社会資本の老朽化対策等…………………… 137 第10節 新たな国と地方、民間との関係の 第5節 社会資本整備の推進… ………………………… 139 構築………………………………………………………… 150 第6節 交通政策の推進… ………………………………… 143 1 官民連携等の推進… ………………………………… 150 1 交通政策基本法に基づく政策展開… ……… 143 第11節 政策評価・事業評価・対話型行政… …… 150 2 年次報告の実施……………………………………… 143 1 政策評価の推進……………………………………… 150 3 「交通空白」の解消等に向けた地域交通の 2 事業評価の実施……………………………………… 151 リ・デザインの全面展開… ……………………… 143 3 国民に開かれた行政運営と対話型行政の 第7節 海洋政策(海洋立国)の推進……………… 144 推進………………………………………………………… 151 1 海洋基本計画の着実な推進…………………… 144
第2章 観光立国の実現と美しい国づくり… …………………………………………………………………………… 152 第1節 観光をめぐる動向………………………………… 152 2 国内交流・アウトバウンドの拡大… ……… 155 1 観光立国の意義……………………………………… 152 3 観光地・観光産業の強靱化…………………… 156 2 年次報告の実施……………………………………… 152 第3節 良好な景観形成等美しい国づくり… …… 156 第2節 観光立国の実現に向けた取組……………… 152 1 良好な景観の形成… ………………………………… 156 1 インバウンドの戦略的な誘客と住民生活 2 自然・歴史や文化を活かした地域 の質の確保との両立………………………………… 152 づくり… …………………………………………………… 158
第3章 地域活性化の推進… ……………………………………………………………………………………………………………… 159 第1節 地域未来戦略の推進に向けた取組… …… 159 5 地域の連携・交流の促進… ……………………… 166 第2節 地域活性化を支える施策の推進… ……… 159 6 地域の移動手段の確保… ………………………… 167 1 地域や民間の自主性・裁量性を高めるた 第3節 民間都市開発等の推進… ……………………… 168 めの取組…………………………………………………… 159 1 民間都市開発の推進………………………………… 168 2 コンパクト・プラス・ネットワークの 第4節 特定地域振興対策の推進…………………… 169 実現に向けた総合的取組… ……………………… 161 1 豪雪地帯対策… ………………………………………… 169 3 地域特性を活かしたまちづくり・基盤 2 離島振興…………………………………………………… 169 整備………………………………………………………… 161 3 奄美群島・小笠原諸島の振興開発… ……… 170 4 広域圏の自立・活性化と地域・国土 4 半島振興…………………………………………………… 170 づくり… …………………………………………………… 165 第5節 北海道総合開発の推進… ……………………… 170
II 1 北海道総合開発計画の推進…………………… 170 2 特色ある地域・文化の振興…………………… 171
第4章 心地よい生活空間の創生………………………………………………………………………………………………… 174 第1節 豊かな住生活の実現… ………………………… 174 2 歩行者・自転車優先の道づくりの推進… 176 1 住生活の安定の確保及び向上の促進… …… 174 第3節 自転車の活用推進………………………………… 177 第2節 快適な生活環境の実現… ……………………… 176 第4節 利便性の高い交通の実現…………………… 177 1 緑豊かな都市環境の形成… ……………………… 176
第5章 競争力のある経済社会の構築… ……………………………………………………………………………………… 179 第1節 交通ネットワークの整備…………………… 179 第3節 産業の活性化……………………………………… 191 1 幹線道路ネットワークの整備… ……………… 179 1 鉄道関連産業の動向と施策…………………… 191 2 幹線鉄道ネットワークの整備… ……………… 180 2 自動車運送事業等の動向と施策……………… 192 3 航空ネットワークの整備… ……………………… 181 3 海事産業の動向と施策… ………………………… 194 4 空港への交通アクセス強化…………………… 185 4 航空産業の動向と施策… ………………………… 198 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進… …… 185 5 貨物利用運送事業の動向と施策の推進… 198 1 物流を取り巻く現状及び課題と物流革新 6 物流拠点関連の動向と施策…………………… 198 の「集中改革期間」………………………………… 185 7 不動産業の動向と施策… ………………………… 199 2 必要な物流機能の維持と物流の持続的 8 公共工事の品質確保………………………………… 202 成長を実現するための施策の推進… ……… 186 9 持続可能な建設産業の構築…………………… 204 3 厳しさを増す国際情勢に対応したサプラ イチェーンの高度化・強靱化… ……………… 189
第6章 安全・安心社会の構築… …………………………………………………………………………………………………… 208 第1節 ユニバーサル社会の実現…………………… 208 第3節 建築物の安全性確保… ………………………… 236 1 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえ 第4節 交通分野における安全対策の強化… …… 237 たバリアフリー化の実現… ……………………… 208 1 運輸事業者における安全管理体制の 2 少子化社会の子育て環境づくり 構築・改善… …………………………………………… 237 (こどもまんなかまちづくり等)… ……… 210 2 鉄軌道交通における安全対策… ……………… 238 3 高齢社会への対応… ………………………………… 211 3 海上交通における安全対策…………………… 240 4 歩行空間における移動支援サービスの 4 航空交通における安全対策…………………… 243 普及・高度化… ………………………………………… 212 5 航空、鉄道、船舶事故等における原因 第2節 自然災害対策……………………………………… 212 究明と事故等防止… ………………………………… 245 1 防災減災が主流となる社会の実現… ……… 212 6 公共交通における事故による被害者・ 2 災害に強い安全な国土づくり・危機管理 家族等への支援……………………………………… 246 に備えた体制の充実強化… ……………………… 214 7 道路交通における安全対策…………………… 246 3 災害に強い交通体系の確保…………………… 234 第5節 危機管理・安全保障対策…………………… 251
III 1 犯罪・テロ対策等の推進… ……………………… 252 4 安全保障と国民の生命・財産の保護… …… 257 2 事故災害への対応体制の確立… ……………… 254 5 重篤な感染症及び影響の大きい家畜伝染 3 海上における治安の確保… ……………………… 256 病対策… …………………………………………………… 258
第7章 美しく良好な環境の保全と創造… ………………………………………………………………………………… 259 第1節 地球温暖化対策の推進… ……………………… 259 2 水の恵みを将来にわたって享受できる 1 地球温暖化対策の実施等… ……………………… 259 社会を目指して……………………………………… 271 2 地球温暖化対策(緩和策)の推進… ……… 259 3 水環境改善への取組………………………………… 272 3 再生可能エネルギー等の利活用の推進… 264 4 水をはぐくむ・水を上手に使う……………… 273 4 地球温暖化対策(適応策)の推進… ……… 265 5 水道の基盤強化……………………………………… 274 第2節 循環型社会の形成促進… ……………………… 266 6 下水道整備の推進による快適な生活の 1 建設リサイクル等の推進… ……………………… 266 実現………………………………………………………… 276 2 循環資源物流システムの構築… ……………… 266 第5節 海洋環境等の保全………………………………… 278 3 自動車・船舶のリサイクル…………………… 267 第6節 大気汚染・騒音の防止等による生活 4 グリーン調達に基づく取組…………………… 267 環境の改善… …………………………………………… 279 5 木材利用の推進……………………………………… 268 1 道路交通環境問題への対応…………………… 279 第3節 豊かで美しい自然環境を保全・再生 2 空港と周辺地域の環境対策…………………… 279 する国土づくり……………………………………… 268 3 鉄道騒音対策… ………………………………………… 279 1 生物多様性の保全のための取組……………… 268 4 ヒートアイランド対策… ………………………… 280 2 豊かで美しい河川環境の形成… ……………… 269 5 シックハウス等への対応… ……………………… 280 3 海岸・沿岸域の環境の整備と保全… ……… 270 6 建設施工における環境対策…………………… 281 4 港湾行政のグリーン化… ………………………… 270 第7節 地球環境の観測・監視・予測……………… 281 5 道路の緑化・自然環境対策等の推進… …… 271 1 地球環境の観測・監視… ………………………… 281 第4節 健全な水循環の維持又は回復……………… 271 2 地球環境の予測・研究… ………………………… 282 1 水循環政策の推進… ………………………………… 271 3 地球規模の測地観測の推進…………………… 283
第8章 戦略的国際展開と国際貢献の強化… …………………………………………………………………………… 284 第1節 インフラシステム海外展開の促進… …… 284 第2節 国際交渉・連携等の推進…………………… 290 1 政府全体の方向性… ………………………………… 284 1 経済連携における取組… ………………………… 290 2 国土交通省における取組… ……………………… 284 2 国際機関等への貢献と戦略的活用… ……… 291 3 国土交通省のインフラシステム海外展開 3 各分野における多国間・二国間国際 に係るアプローチ… ………………………………… 286 交渉・連携の取組… ………………………………… 295 4 各国・地域における取組… ……………………… 287 第3節 国際標準化に向けた取組…………………… 300
第9章 DX 及び技術研究開発の推進… ……………………………………………………………………………………… 303 第1節 DXによる高度化・効率化…………………… 303 1 国土交通行政のDX… ……………………………… 303
IV 第2節 デジタル技術の活用によるイノベー 10 まちづくりDXの推進… …………………………… 310 ションの推進… ………………………………………… 305 11 国土交通データプラットフォーム… ……… 311 1 ITSの推進… ……………………………………………… 305 12 サイバーポートによる港湾のDX… ………… 311 2 自動運転の社会実装の推進…………………… 306 13 道路分野におけるDXの推進…………………… 311 3 地理空間情報を高度に活用する社会の 第3節 技術研究開発の推進… ………………………… 312 実現………………………………………………………… 306 1 技術政策における技術研究開発の位置 4 デジタル・ガバメントの実現… ……………… 307 付けと総合的な推進………………………………… 312 5 公共施設管理用光ファイバ及びその収容 2 公共事業における新技術の活用・普及の 空間等の整備・開放………………………………… 308 推進………………………………………………………… 313 6 水管理・国土保全分野におけるDXの 第4節 建設マネジメント 技術の向上…… 314 (管理) 推進………………………………………………………… 309 1 公共工事における積算技術の充実… ……… 314 7 鉄道分野におけるDXの推進…………………… 309 2 BIM/CIMの取組… …………………………………… 314 8 ビッグデータの活用………………………………… 309 3 事業監理の効率化・高度化…………………… 314 9 気象データを活用したビジネスにおける 第5節 建設機械・機械設備に関する技術 生産性向上の取組… ………………………………… 310 開発等… …………………………………………………… 315
V コラム
我が国の近代化を支えた土木技術… ………………… 12 ■デジタルで人・モノを管理する造船所 ■我が国初の高速道路「名神高速道路」の整備 「デジタルシップヤード」… ………………………… 100 による生産性向上効果… …………………………………… 15 ■再び世界の頂点を目指す「造船ロボット」の ■インフラに関する英国・ドイツの投資戦略…… 47 最前線……………………………………………………………… 101 ■欧州の成長を牽引する欧州横断輸送ネット ■AIで変わる賢いダム運用………………………………… 102 ワーク(TEN-T)……………………………………………… 48 ■AIが見張る水道設備… …………………………………… 103 ■社会経済のニーズに合わせた道路空間の ■神戸港におけるコンテナターミナルの競争力 再構築………………………………………………………………… 49 強化… ……………………………………………………………… 104 ■欧州全体の交通を支えるデータ共有基盤の ■海外で進むAIによる港湾運用………………………… 105 整備… ………………………………………………………………… 50 ■潮風から発電、国内初の浮体式洋上風力 ■リニアのある明るい未来へ、工事進行中… ……… 61 発電所……………………………………………………………… 106 ■整備新幹線の開業効果… …………………………………… 62 ■太陽の力を受けて走るモビリティ… ……………… 108 ■つながる街、広がる未来、「大阪湾岸道路西 ■人と車とエネルギーが流れる「多摩川スカイ 伸部」………………………………………………………………… 63 ブリッジ」… …………………………………………………… 109 ■北東アジアの国際ハブ空港として世界との連 ■走りながら充電できる新しいインフラ「走行 結性の強化へ!… ……………………………………………… 64 中無線給電技術」…………………………………………… 110 ■世界の半導体拠点に向けたインフラ整備… ……… 67 ■インフラ整備でつなぐ半島の恵みと安全・ ■北海道の多様な産業発展を牽引するインフラ 安心… ……………………………………………………………… 121 の整備………………………………………………………………… 69 ■機会損失の削減・現場の生産性向上と成長余 ■AI時代を見据えた電力供給網を支えるインフ 力の連鎖的拡大… …………………………………………… 124 ラ技術………………………………………………………………… 70 ■リニア駅を通じた将来のまちづくり……………… 127 ■世界を舞台に成長を目指す日本企業の挑戦…… 72 ■半導体産業とともに変わるまちの姿……………… 128 ■投資ニーズに応える熊本市の戦略… ………………… 75 ■より生活に寄り添った公共交通機関の実現… 129 ■複々線化と地下化による輸送力向上とまちづ ■様々な目が監視するインフラの未来……………… 131 くり… ………………………………………………………………… 78 ■高機能な道路が提供するより安全でスムーズ ■首都高の更新と日本橋のまちづくり………………… 81 な交通……………………………………………………………… 132 ■官民連携による都心部の機能強化と魅力 ■都市と自然を往復する日常… ………………………… 132 づくり………………………………………………………………… 82 ■社会資本整備のストック効果最大化を推進す ■人流データで観光客の心を動かすプロモー るための支援体制構築… ………………………………… 142 ション………………………………………………………………… 88 ■海洋ドローンに関する将来ビジョンの策定… 145 ■観光消費の拡大に貢献「箱根観光デジタル ■海のデータの総合図書館 海しる マップ」… ………………………………………………………… 89 (海洋状況表示システム)… ………………………… 146 ■観光スポットを周遊、「ぐるりん号」… ………… 91 ■ウポポイでアイヌ文化を体験してみません ■「交通空白」が地方に与える機会損失・国民 か? ~開業5周年を迎えて~… ………………… 172 負担… ………………………………………………………………… 92 ■外国法人等による予報業務に関する規制の ■住民の移動ニーズに応える自動運転バス… ……… 93 強化… ……………………………………………………………… 230 ■島をつなぐ船の自動運転…………………………………… 94 ■防災気象情報の体系整理………………………………… 231 ■次世代航海情報の利活用に向けて… ……………… 242
主要指標 — KEY FIGURES
VI ■『特殊救難隊』発足50周年及びIMO ■i-Construction 2.0 施工のオートメーショ (国際海事機関)勇敢賞表彰状受賞 ン化の主な取組状況… …………………………………… 304 『機動防除隊』発足30周年…………………………… 255 ■宇宙建設革新プロジェクトについて……………… 316 ■上下水道一体での復旧支援… ………………………… 274
インタビュー
経済学から見た我が国の経済成長に必要な投 ■AI等の新技術がもたらす建設業の生産性向上… 97 資とは………………………………………………………………… 16 ■国土・歴史に根付き、未来に向けて支え続け ■経済成長を支えつつ、社会全体、将来世代の るインフラ… …………………………………………………… 117 ためにインフラ政策をどうするか… ………………… 28 ■経済成長と社会の成熟に向けた交通インフラ ■造船業再生と次世代船舶・海事イノベーショ の課題……………………………………………………………… 129 ンへの期待… ……………………………………………………… 52
※本白書に掲載した我が国の地図は、必ずしも、我が国の領土を包括的に示すものではない。
VII 令和8年版 国土交通白書 はじめに
戦後、我が国は道路や港湾、新幹線、空港などの大規模なインフラ・交通網の整備を推進し、経済 成長の基盤を築き上げた。
構造的な人口減少が進む中、低迷する潜在成長率を克服し、持続的な経済成長を実現するためには、 官民の資本投入量の増加に加え、限られた人材と時間で高い付加価値を生み出せるよう、生産性の向 上が最重要課題となる。
今年の国土交通白書の第Ⅰ部では、 「経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラ」をテーマとし、 経済成長の観点から、国土交通分野のインフラを俯瞰するとともに、生産性の向上に資する施策や取 組を取り上げ、豊かな未来を展望する。
具体的には、まずインフラやそれを取り巻く経済社会の状況を整理し、国内外の政策動向や意識調 査の結果を取り上げながら、生産性の向上の観点からインフラに期待される方向性を示している。そ の上で、成長を加速させるインフラへの新規投資、生産性を持続・向上させる既存インフラの活用・ 再構築、我が国の潜在力を開花させる新技術等の活用を三つの柱とし、行政や企業等が進める様々な 取組等を紹介する。さらに、これらを踏まえ、インフラの課題と経済社会の課題が同時解決されるよ うな未来を展望する。
第Ⅱ部では、令和7年度の国土交通行政の各分野の動向を、政策課題ごとに報告する。 第Ⅰ部 経済成長を牽引する ハード・ソフトのインフラ 第1節 我が国の経済とインフラ
1章 Ⅰ ハード・ソフトのインフラの 第 生産性向上に関する現状と課題 第1章
我が国では戦後、ハード・ソフトのインフラ注 1 が飛躍的な発展の基盤となり、高度経済成長期をは ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
じめ、我が国の経済成長を支えてきた。人口減少など社会構造の変化が進む我が国にとって、持続的 な経済成長を目指す上で、生産性の向上が必要不可欠である。 第1章では、我が国の経済と生産性の向上の重要性を踏まえ、インフラが我が国全体の生産性向上 を牽引する上で果たすべき役割と、インフラを取り巻く課題について述べる。また、海外の社会資本 整備政策や我が国政府の政策について取り上げつつ、インフラに関する国民・事業者の意識を踏ま え、国土交通分野の取組の方向性について記述する。
第1節 我が国の経済とインフラ ここでは、我が国の経済状況を概観した上で、交通インフラを含む社会資本注 2 が経済成長に果たし てきた役割や、社会資本整備が将来の経済成長に影響を及ぼす諸要因について整理するとともに、経 済成長の観点から、インフラの現状や生産性向上を果たす上での課題について、データや国内外の動 向を基に整理する。
1 我が国の経済と生産性向上の重要性 我が国の経済状況を概観するとともに、社会資本と経済成長との関係について述べる。
(1)我が国の経済状況 我が国の経済状況を概観するに当たり、経済活動の規模や豊かさを示す代表的な指標である国内総 生産注 3(GDP)の推移から、我が国経済の規模や成長率を見ていくこととする。
①名目 GDP の長期的推移 我が国の物価変動の影響を含めた名目 GDP の長期的な動向を振り返ると、1970 年度以降、およ そ5年ごとに 100 兆円ずつ増加し、1992 年度には 500 兆円を越えた。しかし、1990 年代初頭にい わゆるバブルが崩壊し、1997 年から 1998 年のアジア通貨危機や日本の金融システム危機を経て、 デフレに陥ったこと、2000 年代後半には世界金融危機、2011 年の東日本大震災、さらに 2020 年 には新型コロナウイルス感染症の拡大等、外的ショックにも見舞われたことから、名目 GDP は 30
注1 ハード・ソフトのインフラの定義:本白書では、文中に特段の断りがない限りは、国土交通省所管のいわゆる産業・社 会の基盤となる物理的な社会資本(施設・設備)だけでなく、民間事業者等により提供される交通サービスまで含めて、 「ハード・ソフトのインフラ」として記述する。なお、文中で「インフラ」としている場合も同義である。 注 2 公的機関(一般政府及び公的企業)や民間事業者により整備される物理的な施設・設備であり、道路、港湾、航空、鉄道、 公共賃貸住宅、下水道、廃棄物処理、水道、都市公園、文教施設、治水、治山、海岸、農林漁業、国有林、工業用水道、 庁舎等の施設と関連する設備のこと。 注 3 “ 国内 ” のため、日本企業が海外支店等で生産したモノやサービスの付加価値は含まない。
4 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
年超にわたって 500 兆円台ないしその前後で推移した。この間、賃金・物価がともに据え置かれる 状況が続いてきたが、コロナ禍後の世界的な需要回復や、2022 年2月のロシアによるウクライナ侵 Ⅰ 略に伴う資源・エネルギー価格の高騰を背景とする輸入物価の上昇を起点として、国内物価の上昇が
第1章 始まった。こうしたコストプッシュ型の物価上昇に対し、政府において円滑な価格転嫁と賃上げに 向けた環境整備を推進したこともあって、2024 年の春季労使交渉では 33 年ぶりとなる高い賃上げ 率が実現し、賃金と物価がともに上昇する状況に至った。こうした中、名目 GDP は 2023 年度には
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 600 兆円を超え、過去最高の状況となっている。
図表Ⅰ-1-1-1 我が国の名目GDPと成長率の推移
(兆円) (%) 700 アジア通貨危機 25 名目GDP(左軸) 新型コロナウイルス感染症 642.4 実質成長率(右軸) 名目成長率(右軸) 金融システム危機 東日本大震災 600 バブル崩壊 世界金融危機 20 545.8 554.3 505.8 509.2
500 15
407.5 400 360.0 10
305.6 300 261.7 5
202.6 200 162.4 0
102.8 100 58.6 -5 32.4 9.2
0 -10 1955 1956 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 (年度)
(注)名目GDPは、1979年度(成長率は1980年度)以前は「平成10年度国民経済計算(1990年基準・68SNA)」、1980年度から1993年度まで(成長率は1981年度から1994年度まで) は「支出側GDP系列簡易遡及(2015年基準・08SNA)」、1994年度(成長率は1995年度)以降は「2025年10-12月期四半期別GDP速報(2次速報値)(2020年基準・08SNA)」 による。 なお、1993年度以前の総額の数値については、異なる基準間の数値を接続するための処理を行っている。
資料)内閣府「国民経済計算」より国土交通省作成
②名目・実質 GDP の比較 次に、物価変動の影響を除いた実質 GDP を見ると、1980 年代は名目 GDP とともに堅調に増加し たものの、1990 年代以降、その勢いは名目 GDP とともに緩やかになっている。2020 年の新型コロ ナウイルス感染症の拡大以降、名目 GDP は物価高を背景に増加する一方、実質 GDP は、実質賃金 や購買力の低下により、横ばいの状況が続いた。
国土交通白書 2026 5 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 図表Ⅰ-1-1-2 我が国の名目・実質GDPの比較
(兆円) 第1章
700 642.4
名目 実質 591.7 600 578.2 554.3 552.3 545.8 552.5 547.5 513.0 584.4 505.8 567.7 586.8 543.8 554.3 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
500 519.2 493.8 503.7 500.8 407.5 444.3 400 360.0 392.2 308.2 276.2 348.6 300 305.6 261.7 200
100
0 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 (年度)
(注)名目・実質GDPは1980年度から1993年度までは「支出側GDP系列簡易遡及(2015年基準・08SNA)」、1994年度以降は「2025年10-12月期四半期別GDP 速報(2次速報値)(2020年基準・08SNA)」による。 なお、1993年度以前の総額の数値については、異なる基準間の数値を接続するための処理を行っている。
資料)内閣府「国民経済計算」より国土交通省作成
③ GDP(支出側)及び各需要項目 GDP を 支 出 側 か ら 見 る と、 民 間 最 図表Ⅰ-1-1-3 2024年度名目国内総生産(支出側)の構成 終消費、政府最終消費、総固定資本形 2024年度名目国内総生産642.4兆円 成注 4、在庫変動、輸出入注 5(財貨・サービ 在庫変動 純輸出 スの純輸出)といった需要項目からなっ 0.0 兆円 -5.8 兆円 公的固定資本形成 (0.0%) (-0.9%) ており、我が国では、GDP の約5割超 32.0 兆円 (5.0%) を占める民間最終消費をはじめ、民間企 総固定資本形成
業や一般政府等による投資(総固定資本 民間企業設備 119.2 兆円 形成)が経済の成長を牽引する項目とし (18.6%)
民間最終消費 て、重要な要素となっている。 民間住宅 340.4 兆円 27.6 兆円 (53.0%) (4.3%) 政府最終消費 129.1 兆円 (20.1%)
資料)内閣府「国民経済計算(2024 年度(令和6年度)年次推計) 」より国土 交通省作成
注4 固定資本形成は、民間住宅、民間企業設備、公的固定資本形成の三つの投資から成る。 総 注5 財貨・サービスの純輸出=財貨・サービスの輸出-財貨・サービスの輸入。
6 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
(公的固定資本形成) 公的固定資本形成注 6 は、道路や鉄道などの交通インフラや、人流・物流の拠点となる空港や港湾を Ⅰ 整備することにより、企業の生産性を高め、民間投資を誘発するなど、経済全体の成長基盤を強化す
第1章 る役割がある。公共投資による雇用創出効果など短期的なフロー効果と、整備後に社会資本が機能を 発揮することによる中長期的なストック効果を通じ、経済発展に貢献する。 公的固定資本形成と国の公共事業関係費の推移を見ると、公的固定資本形成の名目値は、1980
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 年代半ばから 90 年代半ばにかけて、累次の経済対策による公共投資の追加支出に伴い増加した後、 1990 年代後半以降は、財政再建の下で減少し、2010 年代初頭には、1980 年代前半の水準に回帰し た。その後、2010 年代後半以降は、防災・減災、国土強靱化の取組や資材価格・人件費の上昇によ り、緩やかな増加傾向が継続している。
図表Ⅰ-1-1-4 公的固定資本形成(名目)と国の公共事業関係費の推移
(兆円) (兆円) 50 25 補正予算(右軸) 当初予算(右軸) 公的固定資本形成(名目)(左軸) 40 20 40.2 31.1 32.0 35.5 30 15
24.7 24.9 20 1.7 10
1.8 1.9 0.1 0.2 0.5 10 9.4 5 6.4 6.1 6.8 6.0 5.7
0 0 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
(年度)
資料)内閣府「国民経済計算」、財務省「一般会計歳出当初予算及び補正予算」より国土交通省作成
(民間企業設備) 民間企業設備は、民間企業の設備投資であり、短期的には需要を生み景気を下支えし、中長期的に は生産能力や生産性を高めることでコスト競争力を強化し、国全体の経済成長に貢献する。 総固定資本形成の中で最もウエイトの大きい民間企業設備の名目値の推移を見ると、1980 年代 は堅調に増加していたが、1990 年初頭のバブル崩壊後、約 30 年にわたって横ばいの状況が続いた。 2020 年度以降は再び増加傾向となり、2024 年度は過去最高を更新している。
注6 内総生産(GDP)の構成要素の一つで、一般政府及び公的企業による公的固定資本ストックの増加に対する投資であ 国 り、①公的住宅の建設への投資、②公的企業の活動上使用する機械設備や建物への投資、③一般政府(国、地方公共団体) が行う公共工事や施設の建設等への投資の三つに分かれる。公共投資の動向を把握する上で有用な指標として利用され ているが、公共投資と異なり、用地費、補償費は含まれない。
国土交通白書 2026 7 第1節 我が国の経済とインフラ
(民間住宅) Ⅰ 民間住宅は、GDP 比約4% 図表Ⅰ-1-1-5 民間企業設備(名目)と民間住宅(名目)の推移 と限定的であるが、建設・不 第1章
(兆円) 119.2
動産だけでなく鉄鋼・窯業な 120
99.9 ど関連産業へ波及し、高い生 100 94.2 96.3
産誘発能力を発揮し、国内需 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
80
要を喚起し景気回復を牽引す 民間企業設備(名目) 75.4 民間住宅(名目) 60 る。 46.2 36.0
民間住宅の名目値の推移を 40 30.3 28.2 27.6 19.8 見ると、1996 年をピークに 18.9 20 22.5
減少していたが、2010 年代 0 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 以降持ち直している。2020 (年度)
年度以降は、資材価格や人件 資料)内閣府「国民経済計算」より国土交通省作成
費の上昇により、増加傾向が 継続している。
(輸出入) 輸出入は、外貨を獲得し、それを原資に国内の設備投資に回して生産力を底上げするというプロセ スにより、経済成長に貢献する。 諸外国との貿易の状況を見ると、1950 年以降、輸出・輸入ともに上昇を続け、1980 年には輸出 入ともに約 30 兆円と拡大した。その後、1981 年から 2010 年までは輸出が輸入を上回る貿易黒字の 状態が続いていたが、2011 年からは輸出が輸入を下回る貿易赤字の状態が長くなっている。
図表Ⅰ-1-1-6 我が国の輸出入総額の推移
(兆円) 120 112.7 輸出 輸入 差引額(輸出-輸入) 100 107.1 68.4 80 67.4
60 68.0 51.7 41.5 60.8 40 32.0 40.9 29.4 33.9 20 10.7 7.0 6.8 7.6 6.6 0.3 1.6 -2.6 0.3 1.5 0.4 0 -5.6 -0.1 -0.2 0.2
-20 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 1950 1951 1952 1953 1954 1955 1956 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
(暦年)
資料)財務省「貿易統計」より国土交通省作成
8 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
(インバウンド需要) インバウンドは、訪日外国人に日本国内でサービスを提供して外貨を獲得できる「サービス輸出」 Ⅰ である。宿泊・飲食・交通にとどまらず、農業や製造業など多様な裾野産業へ波及し、地域での雇用
第1章 創出と経済の好循環を生み出すプロセスにより、経済成長に貢献する。 訪日外国人旅行者数は 2020 年に新型コロナウイルス感染症の拡大により減少したものの、その後、 回復傾向を示し、2025 年に過去最高を更新している。また、2025 年の訪日外国人の旅行消費額は
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 約 9.5 兆円となり、輸出産業のうち、自動車(完成品)に次ぐ大きさとなっている。
図表Ⅰ-1-1-7 インバウンドの状況
(万人) 訪日外国人旅行者数 観光の経済規模(2025年) 4,500 4,268 自動車(完成品) 17.6 4,000 観光(訪日外国人) 9.5 3,687 3,500 3,188 半導体等電子部品 6.6 3,119 半導体等製造装置 4.5 3,000 2,869 鉄鋼 3.9 2,507 2,500 2,404 自動車の部分品 3.7 1,974 2,000 プラスチック 3.4
1,500 1,341 原動機 3.1
733 835 1,036 非鉄金属 2.8 1,000 614 835 861 836 673 679 622 科学光学機器 2.7 521 412 500 383 電気回路等の機器 2.3 25 0 0 5 10 15 20 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025
(暦年) (兆円)
資料)左は日本政府観光局(JNTO)、右は観光庁「インバウンド消費動向調査(旧訪日外国人消費動向調査)」、財務省「貿易統計」に基づき観 光庁作成
これまで GDP の推移を需要側から見てきたが、消費や投資が持続的な経済成長をもたらしたのか を明らかにするためには、需要側からの分析だけでは不十分であり、供給側からも見ていく必要があ る。
④潜在成長率の推移 「成長会計」注 7 の手法を用いて、経済成長に求められる要素を見ていく。 ここでは、 一般に、一国の経済成長は実質 GDP の伸び率で捉えられる。実質 GDP の伸びは、「成長会計」 の手法を用いることで、労働投入量注 8、資本投入量注 9 及び全要素生産性注 10(TFP:Total Factor Productivity)の三つに分解注 11 できる。そして、三つの生産要素の平均的な投入水準から得られる 実質 GDP の伸びを「潜在成長率」という。
注7 済成長の源泉を労働投入量の増加、資本投入量の増加、全要素生産性(TFP)の向上に分け、どの要素の寄与が大き 経 いかを量的に把握する手法。Y:GDP、A:技術水準、K:資本ストック、L:労働量、α:資本分配率、1- α:労働分 配率として、コブ・ダグラス型の生産関数を仮定すると、GDP は Y=AKα L(1- α)と表すことができる。 注8 労 働投入量は、労働時間と就業者数を掛けた値。 注9 公 的企業や民間企業が保有する資本ストックの量。 注 10 「全生産量の伸びから労働投入及び資本投入の寄与分を除いた残差」と定義され、具体的には、技術革新や資源配分の
変化のほか、労働又は資本に関する質的な変化(教育訓練による労働者の能力の向上、最先端の IT 技術を含む設備投 資等)等が含まれる。 注 11 コブ・ダグラス型生産関数の両辺の対数をとり、 時間に関して微分すると Y’/Y=A’/A+αK’/K +(1-α)L’/L +ε(Y’、 A’、K’、L’ はそれぞれ Y、A、K、L を時間に関して微分したもの、εは残差項)となり、GDP 成長率を TFP 上昇率、 労働投入量増加率、資本投入量増加率の三つの要素に分解することができる。
国土交通白書 2026 9 第1節 我が国の経済とインフラ
潜在成長率
労働投入量 資本投入量 全要素生産性
資料)国土交通省 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
潜在成長率は、現在の経済構造を前提にした一国経済の供給力として捉えられ、いわば中期的に持 続可能な経済の成長軌道と言える。したがって、経済成長は、この潜在成長率を高めることに他なら ない。 我が国の潜在成長率 図表Ⅰ-1-1-9 潜在成長率とその要素の推移 の推移を見ると、1980 (前年度比寄与度%)
年 代は前年度比4% 5 就業者数
超で推移していたもの 4 労働時間 資本投入量 の、1990 年 代 以 降 急 全要素生産性 3 潜在成長率 速 に 低 下 し、2000 年 以降は1%以下で推移 2
している。 1
その変化の要因を見 ると労働投入量の寄与 0
度 に つ い て は、 労 働 -1
時間が 1980 年代後半 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 (年度)
以降、マイナスに寄与 資料)内閣府「2025 年 7-9 月期四半期別 GDP 速報(1 次速報)」より国土交通省作成
しており、就業者数が 1990 年代以降、減少し、一時マイナスに寄与していたが、近年はプラスで推移している。これらの 傾向は少子高齢化や働き方改革等が影響していると考えられる。資本投入量注 12 については、1990 年 代以降、その寄与度が減少し、2010 年度前後は一時マイナスに寄与していたが、近年はプラスで低 水準となっている。公的・民間部門ともに国内投資の減少や資本ストックの老朽化等による減耗注 13 が影響していると考えられる。一方、全要素生産性は 1980 年代以降減少したものの、1990 年代以 降横ばいで推移している。 このように、人口減少下では、労働投入量の経済成長への寄与は低下せざるを得なくなる。その結 果、経済成長を維持するためには、残された資本投入量と全要素生産性に頼らざるを得ない。 これらのことから、労働投入量の減少を補い、潜在成長率を伸ばしていくためには、新技術の活用 等により労働や資本の質を高め、生産性向上を図っていくことが不可欠である。
注 12 内閣府推計の資本投入量は、一般政府及び民間住宅を除いた推計。 注 13 道路や港湾等の社会資本が経年劣化や陳腐化によって価値を失うこと。
10 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
(2)社会資本が経済成長に果たしてきた役割 ここでは、GDP と社会資本整備との関係について見た上で、社会資本整備の効果について整理す Ⅰ るとともに、我が国の近代化や高度経済成長期を支えた社会資本の事例を紹介する。
第1章 ① GDP と社会資本整備との関係 我が国の社会資本整備は、戦後の経済社会の発展に対応して行われ、その投資額注 14 も名目 GDP の
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 成長とともに順調に伸びてきた。一方、1990 年代後半以降は、社会資本整備の投資額が急激に落ち 込み、2000 年代後半には 1980 年代と同水準まで減少した。これに伴い、名目 GDP の伸びが大きく 縮小している。
図表Ⅰ-1-1-10 名目GDPと名目社会資本投資額(17部門)の推移
(兆円) (兆円) 600 40
名目GDP(左軸) 名目社会資本投資額(17部門)(右軸) 35 500
30
400 25
300 20
15 200
10
100 5
0 0 1955 1956 1957 1958 1959 1960 1961 1962 1963 1964 1965 1966 1967 1968 1969 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
(年度)
資料)内閣府「国民経済計算」、「社会資本ストック推計データ」より国土交通省作成
②社会資本整備の意義(フロー効果とストック効果) 社会資本の整備効果は、 「フロー効果」と「ストック効果」に分けられる。フロー効果とは、公共 投資により、生産、雇用及び所得等の経済活動が派生的に創出され、経済全体が拡大する短期的な需 要創出効果のことをいう。ストック効果とは、社会資本が整備され、それらが機能することによって 継続的に得られる効果のことをいう。 また、ストック効果には、耐震性の向上や水害リスクの低減といった「安全・安心効果」や、生活 環境の改善やアメニティの向上といった「生活の質の向上効果」のほか、移動時間の短縮等による 「生産性の向上効果」といった社会のベースの生産性を高める効果がある。
注 14 内閣府「社会資本ストック推計データ」にある「道路」、「港湾」、「航空」、「鉄道」、「公共賃貸住宅」、「下水道」 、「廃 棄物処理」、 「水道」、 「都市公園」、 「文教施設」 、「治水」 、「治山」 、「海岸」、「農林漁業」 、 「国有林」、 「工業用水道」、 「庁 舎」の 17 部門の名目投資額合計値。
国土交通白書 2026 11 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 図表Ⅰ-1-1-11 社会資本の効果
所得増加による消費の フロー効果 生産活動の創出 雇用の誘発 拡大 第1章
社会資本 の効果 治水安全度向上・地域経済の発展 人流・物流効率化 (安全・安心、生産性の向上) (生産性の向上効果、安全・安心) 安全・安心効果
・耐震性の向上 ・水害リスクの低減 等 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
旭川放水路の分流部改築により、 東京外かく環状道路(千葉区間)の開通や ストック効果
平成30年7月豪雨の際、浸水被害防止 一部区間の4車線化により、 (想定被害約3,300戸→0戸) (岡山県岡山市) 首都高の渋滞損失時間が約3割減少 港湾の国際競争力強化 インバウンド受入拡大 生産性の向上効果 (生産性の向上) (生産性の向上)
・移動時間の短縮 ・輸送費の低下 ・貨物取扱量の増加 等 港湾機能強化による物流施設面積の増加 国際線のターミナル整備・スポット拡大によ (約110ha→約130ha) さらに大阪湾岸道路 り、新千歳空港の乗降客数が約4.6倍に増加 西伸部の整備により、地域経済の発展が期待 (約80万人(H21)→約370万人(H30)) 官民連携による賑わいの創出 生活環境の改善 (生活の質の向上) (生活の質の向上) 生活の質の向上効果 地上:運動施設
・生活環境の改善 ・アメニティの向上 等 地下:下水処理場 官民が連携しハード・ソフトのリノベーショ 衛生的な住環境を提供する下水処理場の地上部 ンを実施することにより、中央公園周辺エリ を運動施設として利用し、スポーツを通して、 アにおける賑わいを創出(広島県福山市) 地域活性化にも貢献(千葉県船橋市)
資料)国土交通省
Column 我が国の近代化を支えた土木技術 コラム 注 15
我が国には、河川、港湾、トンネル、鉄道、発電所な ルであった。その後、琵琶湖の湖水を京都の鴨川、後に ど多くの近代化遺産がある。近代化遺産には、技術者及 は伏見まで導いた琵琶湖疏水注 1 事業も、京都の産業振興 び先人の苦労や多大な功績とともに、我が国の近代化に と水運を目的とし、日本で初めてトンネル工事に竪坑工 大きく貢献してきた歴史的な意義がある。 法注 2 を採用するなど若手日本人技術者の手による画期的 昭和の高度経済成長期(1955 年~ 70 年代初頭)には、 なプロジェクトであった。これらにより、難工事への自 人やモノの大量輸送を可能にする、高速道路、新幹線、 信とともに、欧州の近代的なトンネル掘削・測量技術と 地下鉄、空港・港湾などが急ピッチで整備されたが、こ 従来の鉱山技術との融合から、構造物の設計・施工技術 れらは、明治期に培われた日本人技術者による難工事の や土木計画のノウハウなどが培われ、その後に続く全国 克服とその技術的な基盤や蓄積がなければ、成し遂げら の幹線道路や鉄道ネットワークの整備、昭和のダム・道 れなかった。 路建設の基礎となった。 我が国では明治以降、治水、砂防、港湾、鉄道等の整 明治期から続く近代化遺産は、単に歴史上のインフラ 備が進められてきたが、例えば、東海道本線の一部とし にとどまらず、我が国の近代化を支えた人々の精神や技 て建設された、京都 - 大津間の逢坂山トンネル(1880 術を、現在と未来へとつなぐ架け橋となっている。 年完成)は日本人技術者の手による初の長大山岳トンネ
注1 琵琶湖疏水関連施設は、近代の土木構造物として初めて、2025 年に国宝として指定された。 注2 地表から垂直に穴(竪坑)を掘り、穴の底部から水平方向にトンネルを掘り進める工法。
注 15 本白書掲載のコラムは、2025 年度に国土交通省が実施した調査・取材によるものである。
12 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
<工事中の逢坂山トンネル西口> <琵琶湖疏水の概要> Ⅰ
第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 第三トンネル東口 第三トンネル東口 第一トンネル西口 第一トンネル西口
資料)土木の歴史(石井一郎著)、写真は、左:日本国有鉄道百年写真史 右:京都市上下水道局
(生産性の向上効果) ストック効果には、高速道路、港湾、空港等の整備によって、企業立地や設備投資等の民間投資を 誘発する効果や、移動時間の短縮、輸送費の低下等によって、経済活動の生産性を向上させ、経済成 長をもたらす効果がある。これらの生産性の向上効果をもたらす社会資本の充実は、企業の立地戦略 や生産性を左右し、それが一国としての経済力につながる。 生産性の向上効果に関しては、米国の Aschauer の 1989 年の論文「政府支出は生産的か」注 16 を端 緒として関心が高まり、世界的に研究が進んでいる。Aschauer の論文では、1950 年以降の米国の 全要素生産性(TFP)の推移が社会資本の純資本(減耗を除いた資本)の伸びと相関を持っている との指摘がなされた。 これまで経済の供給力の Aschauerによる社会資本の生産性の向上効果に関する 図表Ⅰ-1-1-12 研 究 に お い て、 労 働 と 民 研究
間資本を生産要素として 勘案して分析を行うのが 一般的であったのに対し、 Aschauer は、社会資本ス ト ッ ク の 要 素 を 加 え、 そ の相関を明らかにしたもの で、社会資本の生産性の向 上効果を示唆するものとし て注目された。 我が国においても、社会 資本ストックの生産性の向 資料)D.Aschauer(1989)「Is Public Expenditure Productive?」より国土交通省作成 上効果についての複数の既 往研究が存在している。社 会資本1%の増加が、GDP(生産)を何%増加させるかを表す指標として「社会資本の弾力性」が ある。図表Ⅰ -1-1-13 のとおり、社会資本の増加が GDP にプラスに寄与するとの結果が多い。
注 16 Aschauer,D.A.(1989)“Is Public Expenditure Productive?” Journal of Economics, vol.23, pp.177-200.
国土交通白書 2026 13 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 図表Ⅰ-1-1-13 我が国における社会資本の生産性の向上効果に関する研究事例
社会資本の弾力性 社会資本の弾力性 研究者 推計期間 研究者 推計期間 第1章
(弾性値) (弾性値) 1955~1984 0.238~0.408 1975~1985 0.159 岩本(1990) 1955~1970 0.055~0.416 1976~1985 0.065~0.144 1971~1984 0.314~0.396 浅子・坂本(1993) 1976~1984 0.116 竹中・石川(1991) 1955~1985 0.2 1977~1985 0.055 三井・井上(1995) 1956~1989 0.248~0.316 1977~1984 0.177 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
1955~1995 0.296~0.328 奥井(1995) 1965~1980 0.072~0.243 畑農(1998) 1955~1989 0.317~0.324 1966~1993 -0.082 1955~1984 0.316~0.318 1975~1993 0.015 1955~1970 0.203 土居(1998) 1985~1993 0.254 1971~1993 0.079 1966~1974 0.131 1955~1993 0.4623 1975~1984 0.029 吉野・中島・中東(1999) 0.6487~0.8168 1955~1970 塩路(2005) 1980~1995 -0.37~0.122 (限界生産性) 0.0842~0.2246 1971~1993 林(2009) 1999~2004 0.209~0.278 (限界生産性) 三井・竹澤・河内(1995) 1966~1984 0.142~0.214 宮川・川崎・枝村(2013) 1991~2008 1.008 1965 0.053~0.055 Kataoka(2014) 1990~2005 0.090~0.170 1970 -0.116~0.018 大越(2015) 1991~2010 0.065~0.140 奥井(1995) 1975 -0.13~0.034 柳・玉井(2023) 1995~2014 0.338~0.372 1980 -0.049~-0.259
資料)李紅梅(2010)「日本における社会資本の生産力効果に関する文献研究」、林正義(2018)「労働減少社会における社会資本整備」 、柳充志・ 玉井寿樹(2023)「社会資本の生産力効果と最適資本ストック」より国土交通省作成
次に、生産性の向上効果を発揮した具体的な事例を紹介する。
14 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
Column コラム Ⅰ
第1章 我が国初の高速道路「名神高速道路」の整備による生産性向上効果
我が国初の高速道路ネットワークは 1963 年 7 月 16 を牽引し、物流の効率化、観光産業の発展、郊外型ショッ 日に開通した名神高速道路(滋賀県栗東~兵庫県尼崎間 ピングセンター等の新たなライフスタイルを生み出し、
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 71.1km)を皮切りに、モータリゼーションの到来とと 日本の社会構造に大きな影響を与えた。 もに全国に拡大し、今では全国に総延長約 9,200km に 開 通 後 60 年 間 の 経 済 波 及 効 果 注 1 は 累 計 32 兆 円 に も及ぶ高速道路ネットワークが完成、名神高速道路は日 上っており、名神沿線6府県における約5割の工業団地 本の大動脈として機能している。 が名神沿線市町に立地し、工業の製造品出荷額の増加に 高速道路の整備によって、移動時間の短縮による物流 寄与するなど、沿線府県の地域経済に大きく貢献してい の効率化や、企業の立地促進といった生産性向上効果を る。 もたらす。名神高速道路でも、整備後、モータリゼーショ 東海~近畿間の自動車移動量は1日 17 万台で、関東 ンの到来による国内の自動車保有台数の飛躍的な増加 ~東海間に次ぐ全国2位となるなど、名神高速道路は、 も相まって、トラックによる貨物輸送の急増とともに、 高速道路のトップランナーとして、東名高速道路ととも 沿線への企業立地が進み、地域経済に大きなインパクト に、関東~近畿間の自動車移動を支え、日本の東西を結 を与えた。また、高度経済成長期のモータリゼーション び、日本経済の成長を支え続けている。
【高速道路の整備と日本経済の成長】 【高速道路の整備と日本経済の成長】
※利用台数および供用延長は、高速自動車国道の値 全国の経済波及効果︓約7,308億円 全国の経済波及効果︓約7,308億円 うち、名神沿線府県の経済波及効果 うち、名神沿線府県の経済波及効果 約5,737億円 約8割 ( ) 約5,737億円(約8割) 岐阜県 ※利用台数および供用延長は、高速自動車国道の値 岐阜県 ■名神整備による経済波及効果 京都生活圏 (376億円) ■名神整備による経済波及効果 京都生活圏 愛知県尾張 9,000 凡例 35 (376億円) (名古屋以外) 9,000 凡例 ︓生産額変化額(単年) 35 愛知県尾張 生活圏 (名古屋以外) (474億円) 8,000 ︓生産額変化額(単年) ︓累計生産額変化額 生活圏 8,000 ︓累計生産額変化額 30 (474億円) 30 京都府 滋賀県 7,000 7,000 25 京都府 豊中生活圏 滋賀県 6,000 25 (366億円) 豊中生活圏 愛知県 6,000 (366億円) 20 兵庫県 愛知県 5,000 5,000 20 兵庫県 名古屋生活圏 (393億円) 4,000 15 名古屋生活圏 4,000 (393億円) 15 滋賀南部生活圏 3,000 大阪府 (457億円) 3,000 10 滋賀南部生活圏 大阪府 東大阪生活圏 (457億円) 1年あたりの生産額変化額 2,000 名神整備による経済波及効果※ ※ 10 (397億円) (2015年︓約7,308億円) 1年あたりの生産額変化額 2,000 名神整備による経済波及効果 東大阪生活圏 ■︓100億円未満
累計約32兆円 5 (397億円) (2015年︓約7,308億円) ■︓100億~200億円 1,000 60年間で 累計約32兆円 大阪生活圏 ■︓100億円未満 5 堺生活圏 ■︓200億~300億円 1,000 60年間で (556億円) 大阪生活圏 (465億円) ■︓100億円以上 ■︓300 億~200億円 堺生活圏 ■︓200億~300億円 0 0 (556億円) (465億円) ■︓300億円以上 0 1965 1970 1975 1980 ※本資料における経済波及効果とは、企業活動における「生産額変化額」を指し、名神の整備有無による実質生産額の変化額をSCGE(空間的応用一般均衡)モデルに 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2024 0 1965 1970 1975 1980 よって推計した結果を掲載 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2024 ※本資料における経済波及効果とは、企業活動における「生産額変化額」を指し、名神の整備有無による実質生産額の変化額をSCGE(空間的応用一般均衡)モデルに ※SCGEモデルとは、道路整備によって所要時間が短縮され、輸送・移動費用の低下が生じることで、企業や消費者に対してその効果が波及し、各地域の産業にどの程度影 よって推計した結果を掲載 響を与えるかを推計可能とした手法であり、山梨大学・武藤慎一教授の監修のもと算出 資料)NEXCO 中日本・NEXCO 西日本「名神高速道路全線開通 60 年のストック効果の事例」 ※SCGEモデルとは、道路整備によって所要時間が短縮され、輸送・移動費用の低下が生じることで、企業や消費者に対してその効果が波及し、各地域の産業にどの程度影 ※2015年の「生産額変化額」に民間企業資本ストック及び固定資本ストックの2015年比を乗じることで60年間の生産額を算出 響を与えるかを推計可能とした手法であり、山梨大学・武藤慎一教授の監修のもと算出 ※2015年の「生産額変化額」に民間企業資本ストック及び固定資本ストックの2015年比を乗じることで60年間の生産額を算出
注1 ・本資料における経済波及効果とは、企業活動における「生産額変化額」を指し、名神の整備の有無による実 質生産額の変化額を SCGE(空間的応用一般均衡)モデルによって推計した結果を掲載。 ・SCGE モデルとは、道路整備によって所要時間が短縮され、輸送・移動費用の低下が生じることで、企業や 消費者に対してその効果が波及し、各地域の産業にどの程度影響を与えるかを推計可能とした手法であり、 山梨大学・武藤慎一教授の監修の下に算出。 ・2015 年の「生産額変化額」に民間企業資本ストック及び固定資本ストックの 2015 年比を乗じることで 60 年間の生産額を算出。
国土交通白書 2026 15 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ Interview インタビュー 注 17 第1章
経済学から見た我が国の経済成長に必要な投資とは ~学習院大学経済学部教授 滝澤 美帆氏~
経済学がご専門で、社会資本整備審議会・交通政策審 資をしていくことが重要である。また、熊本の TSMC や ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
議会技術分科会の技術部会の委員であり、日本の生産性 北海道のラピダスなど、政府が重要な投資を示すことで、 についての研究等でご活躍されている滝澤氏に、我が国 民間企業にも良い波及効果(スピルオーバー効果注 1)が 経済の現状と課題、人口減少下における経済成長に向け 期待できる。また、GDP を増やすには、民間企業が海 た今後の展望などについて、お話を伺った。 外投資から国内投資に回帰していくことも重要だ。
1. 我が国経済の現状と課題 ③我が国の人への投資が低水準な背景 ①潜在成長率向上のカギは資本と人への投資 新しい設備に投資しても、それを使いこなせる人がい 人口減少下の我が国の潜在成長率を高めるには、労働 なければ生産性は向上しない。日本企業の人への投資は、 力を増やすことには限界があり、今後は資本投入量と全 諸外国と比べて低い水準にある。その背景には、日本企 要素生産性を向上させることが重要である。これまで全 業が仕事を通じた訓練(OJT)を重視してきたことであ 要素生産性が伸びていなかったのは、資源配分の問題で、 り、それは業務の効率化には有効だったが、新しい知識 生産性の高い民間企業への人材移動が進んでいないとい を外から得たり、業務を超えた知識を習得することには うミスアロケーションがあった。また、設備投資をして 不向きであることから、飛躍的な生産性向上にはつなが も、それを使いこなすための人への投資が不足している らなかった。また、人への投資は、ソフトウェアや研究 ことも課題であった。様々な分野で深刻な人手不足が問 開発等の無形資産投資と補完的な関係にあり、本来は両 題となっており、設備投資を増やそうとしても対応でき 方を増やすべきだ。しかし、無形資産の中でも ICT 投資 ないという供給制約が、経済成長のボトルネックとなっ や研究開発投資は「投資」として考えられる一方、人へ ている。技術革新や i-Construction 2.0 等を通じて、こ の投資は「コスト」として認識されやすく、また、短期 うした課題に対応していく必要がある。 的に効果が見えにくいため、 投資が進まなかった。さらに、 転職率が上がる中で、教育訓練しても他社に転職されて ②新しい技術が設備に「体化」され、使いこなすことで しまうので投資しないという、 「過小投資」の問題もある。 生産性が向上する 重要なのは、人への投資は毎年継続しなければならな 経済学では「体化」という考え方がある。これは、新 いという点である。研究によれば、人的資本の償却率は しい技術が機械等の設備に備わることであり、例えば、 年 40%とされる。つまり、100 あった知識のうちの 40 10 年前のパソコンと最新のパソコンでは、処理速度や 程度が 1 年後には古くなり、陳腐化してしまう。継続的 使えるソフトウェアが大きく進化し、最新のパソコンに な投資がなければ、人的資本は蓄積されない。企業によ は新しい技術が「体化」されている。そのような設備を る継続的な人への投資を行うことを促すために、政府が 使いこなすことで生産性が向上すると考えられる。日本 補助することも考えられる。 は過去 30 年間、設備投資が不足していたため、古い設 備を使い続け、生産性が上がらない悪循環に陥っていた。 ④ AI 時代ではリスキリング支援や人材の再配置のため 足下では設備投資が少し増えているが、それも更新の投 の労働の流動化促進が必要 資にとどまっている。新しい技術を体化した設備への投 AI・ロボット等の進展により、5年以内には人手が不 資を進めることで、労働生産性を高めていく必要がある。 要になる職種も出てくると予想される。政府の役割とし 公共投資についても、高度経済成長期に整備したイン ては、そういった職種の人に対して、求められるスキル フラは更新時期を一斉に迎えている状況であり、優先順 や教育を明示し、リスキリングを促すことが考えられる。 位をつけて選択的に新しい技術を体化したインフラに投 また、AI 等によって余剰人員を再配置することは経済上
注1 インフラの整備により、輸送コストの削減等の直接的な効果以外に、周辺地域への企業立地や地価上昇等、広範 囲にもたらされる間接的な経済波及効果のこと。
注 17 本白書掲載のインタビューは、2026 年 2 ~ 4 月に国土交通省が実施した取材によるものであり、記載内容は取材当 時のインタビューに基づくものである。
16 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
有効だ。この時、労働市場の流動化を同時に進めること が重要である。 3. 経済成長を牽引するインフラの実現に向けて ①政府の役割は「水先案内人」として方向性を示すこと Ⅰ
第1章 現在、人手がそれほど必要ないにもかかわらず、規制 現政権では 17 の重点分野注 2 を設定し、官民連携でイ 等で人を動かせないという「見えない失業状態」が発生 ノベーション創出に取り組んでいるが、各分野が非常に している領域がある。これは社会的に大きな損失となっ 広く、優先順位付けが重要となる。政府ができることは、 ているので、そうした分野に関連する規制は緩和してい 「こういう方向でやっていく」というガイダンスを示し、 くべきだ。 補完的な民間投資を引き出す「水先案内人」の役割であ
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 る。例えば今後何年間は長期的にサポートするというこ 2. 人口減少下における我が国の経済成長に向けた取組 とを示すことで、民間企業は今後の見通しを立てやすく ①自動運転・データ活用によりサービスの質に応じた価 なる。また、規制・制度面での見直しも政府の重要な役 格設定を 割である。経済特区では生産性に関して良好なパフォー 自動運転やデータ活用による交通需給の最適化は、人 マンスを示した例があるので、新技術を阻んでいる規制 口減少下における生産性向上にとって極めて重要であ や制度を柔軟に見直すことが、政府の役割である。 る。しかし、自動運転の分野で日本企業は海外から遅れ ている。規制があるならば、特区等を活用して緩和し、 ②技術、人材、国際等、様々な投資を「相互に補完」す 実証実験を行うなどして、日本企業が技術革新に取り組 ることで生産性向上を めるよう、制度面から政府がサポートする必要がある。 研究開発投資と ICT 投資には補完性があり、両方を また、高速道路のダイナミックプライシング(変動料金 行ってこそ生産性が伸びる。一つが欠けると投資全体の 制)はもっと進めるべきだし、混雑時の料金を大幅に上 収益率が下がってしまうので、 「相互に補完」すること げるなど、もっと柔軟に価格差をつけて価格の変化で需 が重要となる。特に日本では、今いる労働力を教育・ト 要がどの程度変化するかを確認することが重要である。 レーニングしていく人材育成を合わせて行っていくこと 米国と比べると、日本の消費者はサービスの質に対す も必要だ。建設現場でも、i-Construction 2.0 などの取 る要求が厳しく、その割に料金負担が小さいため、消費 組を通じて働き方改革を進め、女性や高齢者の活躍も視 者の余剰が大きい財やサービスがある。一方、米国では、 野に入れることが重要である。 良いサービスを受けるためには消費者が高い料金を負担 インフラ・交通分野の国際展開については、政府が標 している。日本でも、人手不足や人件費高騰の流れの中 準化や規格の面で支援することが有効と考えられる。ま で、消費者がこうした状況を理解し始めているので、例 た、優れた技術を持つ企業が海外進出する際、先方国と えば、サービス内容に応じて価格を変えることに対して の交渉をスムーズにしたり、民間企業を束ねたりするな 受け入れられる余地はあると思う。 ど、組織力やマネジメント面でのサポートが期待される。
②新市場の創出が長期的な経済成長につながる ③経済全体の生産性向上に寄与するインフラの維持には 経済成長を促進する方法には大きく二つの考え方があ 新技術によって解決を る。一つは既存産業の中での資源配分の効率化である。 社会資本は経済全体の生産性向上と密接に関係してい もう一つは新しい産業や新市場の創出であり、これらは るが、高度経済成長期に整備したインフラが老朽化し、 長期的な経済成長の道筋を引き上げる効果があるので非 更新をどうしていくかという課題がある。すべてを維持 常に重要である。しかし、過去を振り返ると、日本は必 していくことは財政的に困難と考えられるが、うまく選 ずしも市場開拓をうまくできていなかった。例えば、日 択と集中ができれば生産性向上が期待できる。日本経済 本の大学で開発された重要な技術について、特許申請の の7割を占めるサービス業の生産性向上に、社会資本が 手続きが煩雑で費用もかかるために申請せず、結果的に 寄与しているという研究もある。最先端の技術を導入し 海外の大学が特許を取得し、大きな市場を獲得したとい ていくことが飛躍的な生産性向上につながる可能性があ う事例がある。 る。 国土交通分野でも、特許に関するデータからまだ開拓 整備したインフラを今後維持していくことは人材面や されていない領域を把握するなどした上で、新しい市場 資金面の課題が大変であるが、新しい技術によってそう を自ら作っていくことが必要だろう。また、成長意欲が いった課題がクリアされることを期待している。 ある中小企業やスタートアップ企業に対して、政府が伴 走支援を行い、手厚くサポートすることも重要である。
注2 政府が「「強い経済」を実現する総合経済対策」 (令和7年 11 月 21 日閣議決定)において掲げた「危機管理投資」 ・ 「成長投資」による強い経済の実現に向けた「戦略 17 分野」(AI・半導体、造船、防災・国土強靱化、港湾ロジ スティクス等)の重点投資分野のこと。
国土交通白書 2026 17 第1節 我が国の経済とインフラ
(3)将来の経済成長に影響を及ぼす諸要因と社会資本整備 Ⅰ 将来の経済成長に影響を及ぼす諸要因として、前述の成長会計に基づく潜在成長率の三つの要素 (労働投入量、資本投入量、全要素生産性)について、これまでの傾向や将来の動向をデータに基づ 第1章
き整理する。
①労働に関する要因 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
労働に関する要因として、我が国の総人口や建設業、運輸・郵便業の就業者数及び労働時間の推移 について確認する。
(総人口の長期的推移) 我が国の総人口は、明治期以降毎年平均1%で増加を続けてきたが、2008 年をピークに減少に転 じている。2050 年には総人口が1億人程度まで減少し、2070 年には 9,000 万人を割り込み、高齢 化率は増加すると推計されている。
図表Ⅰ-1-1-14 我が国の総人口の推移と推計 (万人) 13,000 2008年にピーク 12,808万人 (2024年) 12,380万人 12,000 高齢化率22.1% 2050年 11,000 10,469万人 高齢化率 37.1% 10,000 終戦
2070年 9,000 8,700万人 (1945年) 高齢化率 38.7% 8,000 7,199万人
7,000 明治維新
6,000 享保改革
5,000 2120年(中位推計) 江 室 戸 4,973万人 (1868年) 4,000 鎌 町 幕 (1716~45年) 高齢化率 40.4% 倉 幕 府 3,330万人 3,128万人 3,000 幕 府 成 府 成 立 成 立 (1603年) 2,000 立 (1338年)1,227万人 (1185年) 818万人 1,000 750万人
0
(年)
(注)1920 年からは、総務省「国勢調査」、「人口推計年報」、「平成 17 年及び 22 年国勢調査結果による補間補正人口」、国立社会保障・人口問 (出典)国土交通省「日本列島における人口分布の長期時系列分析」(1974年)。 題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」により追加。値は日本の総人口(外国人含む)。 (注)ただし、1920年からは、総務省「国勢調査」、「人口推計年報」、「平成17年及び22年国勢調査結果による補間補正人口」、 資料)国土交通省 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」により追加。値は日本の総人口(外国人含む)。
(建設業、運輸・郵便業における労働力の推移) 国土交通分野の就業者数の推移を見ると、建設業では 1980 年度の約 591 万人から 1990 年代には 約 698 万人まで増加したが、その後、右肩下がりとなり、2024 年度には約 462 万人まで減少してい る。一方、運輸・郵便業では、1980 年度には約 340 万人であり、これまで微増傾向が続き、2024 年度は約 391 万人まで増加している。
18 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
労働時間の推移を見る 図表Ⅰ-1-1-15 建設業、運輸・郵便業における就業者数及び労働時間の推移 と、 建 設 業、 運 輸・ 郵 Ⅰ (万人) (時間) 便業ともにおおむね同
第1章 1,000 2,500 2,273 2,232 様の傾向を示しており、 900 2,071 2,049 1,960 2,219 2,201 1,935 2,000 1980 年 代 は 年 間 2,200 800 698 2,034 2,037 1,895 1,931 700 時間程度であり、横ばい
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 600 1,500 634 501 で 推 移 し て い た。1990 500 591 626 481 462
年代から減少傾向となり 400 1,000 395 402 391 361 382 363 2020 年度には、新型コ 300 340 就業者数(建設業)(左軸) 200 500 ロナウイルス感染症の影 就業者数(運輸・郵便業)(左軸) 労働時間(建設業)(右軸) 100 響で建設業、運輸・郵便 労働時間(運輸・郵便業)(右軸) 0 0 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 (年度) 業ともに、年間 2,000 時 (注)1980~1993年度は平成12年基準、1994~2024年度は令和2年基準
間 を 割 り 込 ん だ。2024 資料)内閣府「国民経済計算」より国土交通省作成 年度は建設業で約 1,931 時間、運輸・郵便業で約 1,935 時間となっている。 建設業における就業者数の減少は、1990 年代から 20 年にわたって民間投資・公共投資双方の減 少が続いたことに加え、技能者の処遇改善が十分に進んでいないことが影響していると考えられる。
②資本に関する要因 次に、資本に関する要因として、公的部門と民間部門に分けて、投資及び資本ストックの蓄積状況 について確認する。
(公共投資と社会資本ストック) 公共投資の動向を把握 図表Ⅰ-1-1-16 公的固定資本形成と公的固定資本ストックの推移 する上で一般的に利用さ (兆円) 公的固定資本形成(実質)(右軸) 公的固定資本ストック(実質)(左軸) (兆円)
れている「公的固定資本 777.7 786.1 800 762.3 80 691.1
形成」注18 と公的固定資本 700 70
583.3
形成により蓄積される「公 600 60
479.0 49.1 500 50 的固定資本ストック」注19 42.5
400 37.7 40
の実質値の推移を見ると、 310.3 27.7 31.1 27.7 300 30 29.2 公的固定資本形成では、 200 20
1980 年代半ばから90 年 100 10
代半ばにかけて増加した 0 0 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
後、1995 年度をピークに (注)公的固定資本ストック(実質)は各年の1-3月期の値(2015年基準値)
減少し、2010 年代初頭に 公的固定資本形成(実質)は年度の値
資料)内閣府「固定資本ストック速報」、「国民経済計算」より国土交通省作成 は、1980 年代前半の水準
注 18 内総生産(GDP)の構成要素の一つで、一般政府及び公的企業による公的固定資本ストックの増加に対する投資で 国 あり、①公的住宅の建設への投資、②公的企業の活動上使用する機械設備や建物への投資、③一般政府(国、地方公 共団体)が行う公共工事や施設の建設等への投資の三つに分かれる。公共投資と異なり、用地費、補償費は含まれない。 注 19 老朽化等による減耗を反映した資本の価値。
国土交通白書 2026 19 第1節 我が国の経済とインフラ
に回帰した。その後は、おおむね横ばいで推移している。 Ⅰ 公的固定資本ストックは 1980 年代から 1990 年代にかけて、公的固定資本形成とともに、増加傾 向を示していたが、2000 年代後半以降は、公的固定資本形成の減少とともに、公的固定資本ストッ 第1章
クの伸びが鈍化している。
(民間設備投資と民間企業設備ストック) ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
次に、民間企業の設備 図表Ⅰ-1-1-17 民間企業設備と民間企業設備ストックの推移 投資の動向を把握する上 (兆円) 民間企業設備(実質)(右軸) 民間企業設備ストック(実質)(左軸) (兆円) で一般的に利用されてい 800 740.4 748.4 160 723.9
る「民間企業設備」注 20 と 687.8 700 140
設備投資により蓄積され 600 120 504.6 104.5
る「民間企業設備ストッ 500 96.4 100 86.0 82.1 注 21 ク」 の実質値の推移を 400 77.6 80 300.0 見ると、民間企業設備で 300 60
は、1980 年 代 は 堅 調 に 38.9 200 40
増 加 し て い た が、1990 100 20
年初頭のバブル崩壊後、 0 0 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 一時的に減少するもの (注)民間企業設備ストック(実質)は各年の1-3月期の値(2015年基準値) 民間企業設備(実質)は年度の値 の、その後、横ばいの状 資料)内閣府「固定資本ストック速報」、「国民経済計算」より国土交通省作成 況 が 続 き、2010 年 代 以 降は緩やかな増加傾向が続いている。 民間企業設備ストックでは、1980 年代から民間企業設備の増加とともに、増加傾向を示していた が、1990 年代後半以降は、民間企業設備が横ばいで推移しており、民間企業設備ストックも微増に とどまっている。
(民間企業の国内・海外投資の動向) 次に、民間企業の資産の推移を見ると、国内の設備投資である「国内投資」は、バブル経済期 (1980 年代から 1990 年代前半)にかけて急拡大し、1990 年代後半には一時的にピークとなったも のの、その後は減少を続け、2012 年度以降は緩やかな増加傾向にある(2024 年度は約 345 兆円)。 一方、 「対外直接投資等」の推移を見ると、1980 年度(約 36 兆円)から一貫して増加を続けており、 2000 年代には、国内投資が低迷する中、ついに国内投資を逆転し、直近では国内投資の倍額近く (2024 年度は約 625 兆円)に達している。 このように、民間企業は、1990 年代の生産年齢人口のピーク以降、バブル崩壊後の経済環境の変 化や我が国経済への成長期待の低下等を背景に、海外に成長の機会を求め、対外投資を中心とした成 長戦略を進めたと見られる。 また、企業に蓄積された利益剰余金等(いわゆる内部留保)の額の推移についても、企業が蓄積し た資金の使途として「対外直接投資等」を増加させたことから、結果として、内部留保も、対外直接
注 20 国内総生産(GDP)の構成要素の一つで、民間企業が生産活動のために導入する機械、 建物(オフィス・工場)、ソフトウェ ア等の有形・無形固定資産への投資額。 注 21 老朽化等による減耗を反映した資本の価値。
20 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
投資等と同様に急増して 図表Ⅰ-1-1-18 民間企業(金融・保険業除く)の資産の推移 いる。 (兆円) Ⅰ 我が国の経済成長に向
第1章 700 国内投資(土地除く有形固定資産) 対外直接投資等(その他投資+株式) 625
けては、民間企業におけ 600 現金・預金 内部留保 有利子負債
る対外直接投資等や内部 509 500 留保の増加の流れを国内
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 投資にも振り向けさせる 400 345
ことが重要であると考え 310 316 305 300
られる。そのために、国 276 194 239 内市場の魅力向上や投資 200
111 環境の整備を促進し、国 106 100
内経済に対する成長機会 36 0 を創出していくことが求 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 (年度)
められる。 (注)内部留保(利益準備金+積立金+繰越利益剰余金)、 有利子負債(社債+金融機関借入金)
資料)財務省「法人企業統計」より国土交通省作成
(民間企業の国内工場立地の動向) 次に、製造業等の工場立地動向の推移を見ると、立地件数・面積とも、バブル景気時の1989 年が ピークであり、現在は、ピーク時と比較して、立地件数は1/6程度、立地面積は1/4程度で推移して いる。近年では、電子部品・デバイスや金属製品等の業種で立地面積が増加しており、AI やデータセン ター等の半導体関連への積極投資やサプライチェーンの見直しによる国内回帰の動きが影響していると 考えられる。
図表Ⅰ-1-1-19 製造業等における工場立地件数・面積の推移
資料)経済産業省「2025 年(1 月~ 12 月)工場立地動向調査結果について」
国土交通白書 2026 21 第1節 我が国の経済とインフラ
(国内設備投資に関する事業者意識) Ⅰ 国土交通省が実施した国民・事業者を対象 新たな国内設備投資の予定について 図表Ⅰ-1-1-20 とした意識調査注 22(以下、国土交通省「国民 (製造業、運輸業) 第1章
意識調査」 、「事業者アンケート」)で、製造 業、運輸業を対象とした新たな国内設備投資 (事業拡大に伴う用地・建物の取得や老朽化 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
に伴う設備の更新)の予定についてたずねた 予定がある ところ、約4割の事業者が「予定がある」と 38.7%
回答している。 予定はない 61.3%
※回答者総数:事業者 675 社(製造業、運輸業)グラフは回答者の比率(単 一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
次に、新たな国内設備投資を行う予定があると回答した事業者にその理由についてたずねたとこ ろ、「労働力不足への対応としての DX 投資」(52.5%)が最も多く、次いで、「地政学リスクの高ま り、経済安全保障の強化、自然災害リスクなどを背景としたサプライチェーンの強化」 (26.1%) 、 「老朽化に伴う設備更新」(18.4%)の順となっており、労働力不足への対応や、経済安全保障・自 然災害リスク等への対応、老朽化に伴う設備更新等、国内投資に対する積極的な意欲がうかがえる。
図表Ⅰ-1-1-21 新たな国内設備投資を行う理由(製造業、運輸業)
労働力不足への対応としてのDX投資 52.5
地政学リスクの高まり、経済安全保障の強化、自然災害リスク 26.1 などを背景としたサプライチェーンの強化
老朽化に伴う設備更新 18.4
GX分野における新たな投資 11.5
AIやデータセンター等半導体関連分野(半導体製品・部素材・ 6.1 製造装置等)の需要増大
Eコマース等による取扱貨物の増加 5.0
その他 10.3
0 10 20 30 40 50 60
(%) ※回答者総数:事業者 261 社(製造業、運輸業)グラフは回答者の比率(複数回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
注 22 2026 年 2 ~ 3 月実施。事業者:全国の製造業、建設業、運輸業、観光業等の民間事業者を対象とした web アンケー ト。(回答事業者数:1,164 社)。国民:全国の個人を対象とした web アンケート(回答者数:3,600 人)。
22 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
また、新たに事業用地等を選定する際に重視する要素についてたずねたところ、「充実した交通 ネットワーク(道路、鉄道等)」(48.4%) 、「災害・老朽化対策に関する安全・安心」 (21.0%)、「空 Ⅰ 港・港湾等、物流拠点へのアクセス」(10.7%)の順に多い結果となり、インフラの充実を重要視す
第1章 る傾向にあることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-1-22 新たに事業活動を展開する上で事業用地等を選定する際に重視する要素(製造業、運輸業)
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 充実した交通ネットワーク(道路、鉄道等) 48.4
災害・老朽化対策に関する安全・安心 21.0
空港・港湾等、物流拠点へのアクセス 10.7
関連産業の立地状況 9.0
広大な面積 4.6
豊富な電力・水資源 0.7
その他 5.5
0 10 20 30 40 50 60 (%) ※回答者総数:事業者 675 社(製造業、運輸業)グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
③全要素生産性に関する要因 ここまで労働又は資本に関する量的な指標を見てきたが、次に労働又は資本に関する質的な指標と して、全要素生産性の動向を確認する。 我が国の全要素生産性の上昇率の推移を見ると、高度経済成長期の 1960 年代には4%前後であっ たが、その後は低下傾向をたどり、近年では1%前後で推移している。
図表Ⅰ-1-1-23 我が国の全要素生産性上昇率の推移 (%) 7 6 5 4 3 2 1 0 -1 -2 -3 -4 1956 1958 1960 1962 1964 1966 1968 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024
(暦年)
資料)日本生産性本部「日本の全要素生産性(TFP)の推移」より国土交通省作成
ここからは、全要素生産性について、「資本の質と労働の質」、「企業活動全般の効率性」、「外部的 経営環境等」の三つの側面から、全要素生産性に影響を与える要因について見ていく。
国土交通白書 2026 23 第1節 我が国の経済とインフラ
(資本の質と労働の質) Ⅰ まず、全要素生産性を向上させるためには、「資本の質と労働の質」を高めることが挙げられる。 資本の質は、生産設備の性能とも言い換えることができる。生産設備の性能の向上は、IoT、ビッグ 第1章
データ、AI 等の新技術の導入のほか、製造現場における設備の改良等からもたらされ、技術進歩が 資本の質を高め、全要素生産性を向上させる。 生産設備の性能の向上に 図表Ⅰ-1-1-24 無形資産投資の国際比較 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
資 す る ICT 投 資 や 研 究 開 発等の無形資産投資につい て国際比較を見ると、我が 国の無形資産投資額は欧米 諸国より伸び悩んでおり、 新しい技術を備えた設備へ の投資が求められる。
(注)実質値、2013 年 =100 資料)内閣官房「日本成長戦略会議基礎資料」
次に、労働の質を高めることにより全要素生産性が向上することも考えられる。例えば、ICT や AI 等の導入は、前述のとおり、資本の質を高めることで全要素生産性を向上させるが、こうした新 技術の導入に加えて教育訓練など人材育成の取組を行うことにより、両者が相まって全要素生産性を 一層高める効果がある。 生産量と生産に使用した労働投入量の比率で生産活動の効率性を示す労働生産性の国際比較を見る と、2024 年の日本の就業者1時間当たり労働生産性は、OECD 加盟 38 カ国中 28 位であり、国際的 にも低い水準となっている。
図表Ⅰ-1-1-25 労働生産性の国際比較
資料)日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2025」
24 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
建設業と運輸・郵便業 図表Ⅰ-1-1-26 経済活動別労働生産性(名目)の推移 のマンアワー当たり名目 (円/人・h) Ⅰ 労働生産性の推移を見
第1章 6,000
5,464 建設業 運輸・郵便業 全産業 ると、建設業では 1980 4,889 5,000 年から 1990 年まで急速 4,454 4,368 4,284 に上昇後、2000 年代に 3,593
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 4,000 3,532 かけて減少傾向を示して 3,439 3,290 3,718 3,417
い た が、2013 年 以 降 再 3,000 2,922 3,299 3,169 2,518 び 上 昇 に 転じ、2024 年 2,060
は3,718円 / 人・hとなっ 2,000 2,005
ている。運輸・郵便業も 1,650
1,000 建設業とおおむね同様の 傾向を示しており、1980 0 年から1990 年代前半か 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 (暦年)
備考:名目労働生産性=経済活動別付加価値の合計/就業者数・労働時間(雇用者)にて算出。 けて上昇し、その後、約 資料)内閣府「国民経済計算」より国土交通省作成 30 年間は横ばいで推移 しており、2020 年、2021 年に新型コロナウイルス感染症の影響で大きく落ち込んだ後、回復し、 2024 年は 4,284 円 / 人・h となっている。全産業と比較して、1990 年代後半以降、建設業、運輸・ 郵便業ともに名目労働生産性が低い状況となっており、建設現場の生産性の向上や物流輸送の効率化 を図る必要がある。
(企業活動全般の効率性) 次に、 「企業活動全般の効率性」が高まることで全要素生産性が向上すると考えられる。多様な人 材の活躍を促すための働き方や雇用制度の見直し等を含む、企業経営のあらゆる面におけるイノベー ションを実現していくことも、全要素生産性の向上につながる。 我が国の製造業と非製 図表Ⅰ-1-1-27 製造業・非製造業の全要素生産性の推移 造業の全要素生産性の推 (1970年=100) 移 を 見 ると、1970 年 以 150 146.0
降の 50 年間で製造業が 107.7 1.46 倍の上昇に対して非 100.0 100 製 造 業 で は 1.08 倍 に と どまっている。また、建 設業、運輸業では 1970 50
年 か ら 2020 年 に か け、 いずれの業種も減少して 製造業 非製造業 0 いる。建設業や運輸業を 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020
(暦年)
はじめとした労働集約型 (注)1970-1994は「JIPデータベース2006」、1995-2020は「JIPデータベース2023」による。
の業務が多い非製造業で 資料)独立行政法人経済産業研究所「JIP データベース」より国土交通省作成
は、ICT 投資の更なる活 用や研究開発の促進等によってイノベーションを実現していくことが必要であると考えられる。
国土交通白書 2026 25 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 図表Ⅰ-1-1-28 建設業・運輸業における全要素生産性の推移 (1970年=100) 建設業(建築業、土木業) (1970年=100) 運輸業(4業種) 第1章
200 200 173 152 134 150 134 150 121 117 100 135 100 93 97 117 100 100 83 92 93 98 90 100 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
104 115 83 78 100 75 77 72 61 50 82 83 46 66 50 19 0 建築業 土木業 鉄道業 道路運送業 水運業 航空運輸業 -22 0 -50 1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020
1970 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 (暦年) (暦年)
(注)1970-1994は「JIPデータベース2006」、1995-2020は「JIPデータベース2023」による。 (注)1970-1994は「JIPデータベース2006」、1995-2020は「JIPデータベース2023」による。
資料)独立行政法人経済産業研究所「JIP データベース」より国土交通省作成
(外部的経営環境等) 企業の立地環境や企業にとっての社会経済情勢等、外部的な要因が全要素生産性に影響を与えると 考えられる。 例えば、企業の立地環境では、ある地域への産業集積に伴う原材料の入手の容易化や政府の規制緩 和策による新たな産業創出等が全要素生産性の向上につながる。 一方、社会経済情勢等により全要素生産性にマイナスの影響を与える要因として、例えば、大規模 な自然災害の発生や国際情勢の緊迫化による需給の不安定化等、外部的な要因が挙げられる。
(ア)自然災害 自然災害については、気候変動に伴い激甚化・頻発化する気象災害や巨大地震等により全国各地で 人的被害に加え、経済的被害をもたらしている。過去 30 年間で発生した大規模災害時の資産等の直 接被害額を見ると、数千億円から数十兆円規模の多大な経済的被害が発生している。これらから、経 済成長の観点からも防災・国土強靱化に向けたインフラの整備が重要となる。
図表Ⅰ-1-1-29 国内の大規模災害における被害額
発生年月 被害額推計 公表機関
阪神・淡路大震災 1995 年 1 月 約 9 兆 6,000 億円 国土庁
平成 16 年(2004 年)新潟県中越地震 2004 年 10 月 約 3 兆円 新潟県
東日本大震災 2011 年 3 月 約 16 兆 9,000 億円 内閣府
平成 28 年(2016 年)熊本地震 2016 年 4 月 約 2.4 ~ 4.6 兆円 内閣府
平成 30 年 7 月豪雨(西日本豪雨) 2018 年 7 月 約 1 兆 2,150 億円 国土交通省
平成 30 年北海道胆振東部地震 2018 年 9 月 約 1,626 億円 北海道
令和元年東日本台風(台風第 19 号) 2019 年 10 月 約 1 兆 8,800 億円 国土交通省
令和 6 年能登半島地震 2024 年 1 月 約 1.1 ~ 2.6 兆円 内閣府
(注)被害額推計は資産等の直接被害の合計値。 資料)内閣府、国土交通省、北海道、新潟県の資料より国土交通省作成
26 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
また、近年、千島海溝地震、日本海溝地震、首都直下地震、南海トラフ地震などの大規模地震の切 迫性が高まりを見せている。とりわけ、2025 年 3 月末に公表された南海トラフ巨大地震の被害想定 Ⅰ では、人的被害(死者)が最大約 29.8 万人、資産等の直接被害が約 224.9 兆円、生産・サービス低
第1章 下による被害を含めた場合の被害額が約 270.3 兆円と推計されている。
図表Ⅰ-1-1-30 大規模地震による被害想定
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 千島海溝・ 東日本大震災 首都直下 南海トラフ 日本海溝沿い (2011 年) 地震※ 2 巨大地震※ 3 の巨大地震※ 1 (実績値) (推計) (推計) (推計) 人的被害 最大 最大 最大 約 2.0 万人 (死者) 約 19.9 万人 約 1.8 万人 約 29.8 万人 資産等の 約 16.9 兆円 約 25.3 兆円 約 45 兆円 約 224.9 兆円 直接被害 生産・サービス 低下による被害 ー 約 31.3 兆円 約 83 兆円 約 270.3 兆円 を含めた場合※ 4
※ 1 (出典) :「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の対策について 報告書」(令和4年3月 22 日中央防災会議 防災対策実行会議日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ) ※ 2 (出典) :「首都直下地震の被害想定と対策について(報告書)」 (令和 7 年 12 月 19 日中央防災会議 防災対策実行会議 首都直下地震対策検討ワーキンググループ) ※ 3 (出典) :「南海トラフ巨大地震対策について(報告書)」(令和7年3月中央防災会議防災対策実行会議南海 トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ) ※ 4 生産・サービス低下による被害については、発災後、1年間を対象に推計している。
資料)「第1次国土強靱化実施中期計画」、「首都直下地震の被害想定と対策について(報告書)」より国土交通省作成
(イ)外部要因による需給の不安定化 外部要因による需給の不安定化も経済的影響をもたらすと考えられる。 新型コロナウイルス感染拡大時には、感染拡大防止のため、旅客需要が大幅に減少し、航空会社や 鉄道・バス会社による減便や運休が相次いで発生した。一方、外出自粛により E コマース等を中心と した物流需要が大幅に増加し、宅配事業者の負担が急増するなど、物流輸送に関して供給側の混乱を 招いた。 また、2026 年2月以降の中東情勢の緊迫化によりエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡を経 由した原油の安定的な調達が困難になり、単なる原油の供給問題にとどまらず、精製・輸送・販売と いったサプライチェーン全体への懸念が広がった。国土交通分野においても、海運、航空、陸上輸送 や建設工事において、燃料油・石油製品に関する価格高騰についての懸念が生じている。燃料油・石 油製品の供給の偏りや流通の目詰まりを解消し、安定供給を確保することが重要となっている。
国土交通白書 2026 27 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ Interview インタビュー 第1章
経済成長を支えつつ、社会全体、将来世代のためにインフラ政策を どうするか ~神戸大学大学院工学研究科教授 小池 淳司氏~
土木計画学がご専門で、産学官連携インフラ戦略推進 可欠なものである。現状では、地方都市の交通渋滞、都 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
プラットフォームのインフラ戦略推進アドバイザリー 市部の通勤の混雑、脆弱な国土の防災対策の面など様々 ボードの委員であり、ストック効果の研究等でご活躍さ なボトルネックを抱えている。人口も経済も成長する時 れている小池氏に、経済成長を牽引する社会資本の役割・ 代ではなく、経済が停滞・成熟する中では、実は、量に 課題、生産性向上に向けた国土交通分野の今後の展望な 加えて質を上げていくという考え方にシフトすることが どについて、お話を伺った。 経済成長につながると考える。今後、世界からの需要や 要望に応えるためにも日本のインフラの質を上げておく 1. 経済成長を牽引する社会資本の役割・課題 ことは非常に重要で、それがうまくマッチすれば、もう ①インフラへの投資は高度経済成長を牽引 一度、高度経済成長が起こる可能性はある。 我が国におけるインフラ整備は、1990 年以前は主に フローの経済効果に着目し、雇用対策として行われてき 2. 生産性向上に向けたインフラに関する取組の方向性 た。そして、60 年代から 80 年代にかけて一貫してイン ①「選択と集中」は東京一極集中と地方衰退を招いた フラを整備し続けたことが、我が国の高度経済成長を支 日本における「選択と集中」の議論には、産業や国土 えたという歴史がある。当然、このインフラ投資がなけ 等の様々な状況を十分に理解できない中で、誰がどう れば高度経済成長は果たせなかったと言える。 やって決めるのか、国民的な議論や合意をどう取るのか 高度経済成長期では、自動車や家電産業が土地や労働 といった視点が決定的に欠けている。効率性や採算性に 力を求め地方で工場を立地し、部品や製品を運ぶ高速 注力し、 科学的根拠の基に行われているように見える「選 道路網や人流のための新幹線等のインフラ整備によって 択と集中」という考え方が流布されることによって、結 人・モノ・情報の伝達がスムーズになった。経済成長と 果として東京の一極集中と地方の衰退を生んでいるので インフラは綿密につながっており、雇用・土地・交通網 はないか。世界では、地方に住み続けることの意味をど がうまく連動し、このストック効果が日本全体の経済成 う考えるか、それとインフラ政策をどう紐付けるか、と 長を牽引した。 いう方向で進んでおり、日本もそのような方向性で考え るべきである。国の将来を左右する国土交通行政が、短 ②産業構造の変化に応じてインフラの役割も変化 期的な利益を求める民間投資のような考え方に陥ること 90 年代以降は、一貫して予算のシーリングによる管 を危惧している。 理、そして、予算が停滞・縮小する中で、インフラのストッ ク効果も徐々に失われてきた。これが今の低成長の要因 ②世界ではインフラの価値を評価するための手法・指標 の一つである。フロー効果は短期的に発現するが、 ストッ が変化してきている ク効果は時間をかけてじわじわと発現してくる。今、イ 英国をはじめ世界各国で、科学的手法の万能性が信じ ンフラを重点投資しても、ストック効果が大きく発現す られてきたが、今ではそれが変わっている。2000 年代 るのは 20 ~ 30 年後になる。したがって、短期的な成 以降、経済が停滞する中で、インフラ整備を科学的根拠 果にとらわれず、長い目で見て、粛々と必要なもの、あ で証明することが世界中で難しくなってきている。 るいは効率が低いものを効率化していく作業は続けてい 英国ではシナリオを立てて、インフラがいかに社会に かなければならない。 貢献できるかによってインフラ投資を評価する動きにな 現在は半導体や AI といった産業が経済の中心に移行し り、オランダでは国家が目指す方向を踏まえてインフラ てきており、インフラの役割も少しずつ変わってきてい 計画を立てている。世の中が不透明になると、インフラ る。また、経済成長を牽引するためのインフラはどうあ の価値を既存の手法で理解・説明することが不可能にな るべきかを考える際、長い目で見て、日本国土はどうあ りつつあり、科学的根拠は当然必要だが、指標がかなり るべきかと連動して、経済成長とインフラの役割を考え 変わってきている。インフラがなければ成長しないのは る必要がある。 当然であり、国民的な議論や合意をどう取るかが今の関 心事になっている。 ③現代はインフラの量に加えて質の向上が経済成長につ ながる ③インフラの本質的目的は社会的包摂 我が国において、インフラが貧弱なために成長のボト インフラや公共投資の第一目的は、社会的な包摂のた ルネックとなっている要因は多々ある。インフラをつく めにある。誰もが安全で安心できる暮らしを作ることが ることですぐに生産性が高まるわけではないが、ボトル 第一で、インフラにより災害リスクを低減することは当 ネックを取り除くという意味で経済成長にとって必要不 然有効な手段で、その追加として民間投資を呼び込むと
28 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
いった話がくる。私たちは雇用がないと生きていけない ため、安全・安心に暮らせる社会のための雇用を作ると インフラ長期計画の廃止と、インフラ選定における科学 的根拠や透明性の確保である。世界でそのようなことを Ⅰ
第1章 いう間接的な意味で産業政策があるべきだ。 やっている国はほとんどない。 国土における政治的課題の一丁目一番地はインフラ政 ④インフラ老朽化対策は国の責務である一方、成長産業 策である。政治とインフラを切り離してうまくできるか にもなり得る というと、うまくいかなかった。ここでの「政治」とは、 インフラ老朽化によって生活の質が低下することは憲 インフラ政策に対する国民的な議論のことで、国民的な
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 法上もあってはならないことで、対策を行わなければな 関心が薄れていることに危惧している。日本国民が日本 らない。一方で、世界に先駆けて人口減少を経験し、ア 国土をどうしたいかということを真剣に議論する場がな ジアの中では早期にインフラを整備した我が国の経験 いのが最大の問題である。 は、アジアをはじめ世界各国に将来的に売り込める新た なビジネスになる。人口減少下での交通マネジメントや ③ヨーロッパでは地方政策が国家的課題 インフラメンテナンス技術において日本は先進的であ ヨーロッパでは、地方をどうするか、地方自治をどう り、そのような技術やノウハウを今後、世界各国にも波 するか、地方の産業をどうするかに関して、多くの有識 及させていくという成長産業としても期待できる。その 者や専門家が議論している。例えば英国では、レベリン 際は、国土交通省が呼びかけ、技術を定型化・標準化し グアップ政策という地方活性化政策があり、エビデンス ていくことが必要である。 ベースの産業政策の議論がある。一方、日本では、地方 の自己責任論ということで、議論されなくなった。その 3. 経済成長を牽引するインフラの実現に向けて ような状況で、海外の手法だけを日本に援用しても決し ①日本の国土全体を見据えてインフラへの投資を考える てうまくいかない。インフラ政策のためには、より具体 べき 的な日本国土像の議論が不可欠である。 インフラ投資には短期のフロー効果、中期のストック 効果があり、目の前の労働力減少の課題に対して産業の ④次世代のために-風土・伝統・文化の継承とインフラ 効率化を図っていくことが期待される。しかし、より長期 の役割 には、インフラは国土構造そのものを変え、私たちの生 インフラ事業は、次世代、すなわち孫や曾孫の世代に 活スタイルや働き方にまで影響する。80 年代以降起こっ 何を残せるかにつながる。東京、名古屋、大阪のような ている東京一極集中も、その結果の一つである。より長 大都市だけが残るのがいいのかというと、そうではない 期で考えれば、インフラ投資は人口減少問題にも影響す と多くの国民が思っている。私たちが住んでいる日本と る。すなわち、インフラ投資に伴って地方に雇用を作り、 は何かを考えたとき、地方には様々な食文化や伝統的な 広い家に住んでもらえれば、人口が増える可能性がある。 もの、そしてそれらを支える農業、漁業、林業などがあり、 もっとも、中期で労働力減少を何とかするということ こういったものこそが日本だとすると、それをいかに維 と、長期で人口減少そのものに取り組むという二つの視 持できるかを考え、国土のあり方の議論をした後に、持 点には、前者を追い続けていると、後者は達成できない 続可能なインフラ政策が議論なされるべきである。目先 といった関係性がある。すなわち、効率の良い都会だけ の生産性や費用便益比の議論で結論付けてはならない。 がつくられ、都会だけが残るような国土は問題である。 一度失われたものは取り返しがつかないという中で、 より長期的な視点で国土全体におけるインフラや交通の どうすれば人が住み続けることができるかを重点に考え あり方を議論することが必要である。 るべきで、豊かな文化を次の世代に残すということを意 識した方が良い。フランスやオランダ、英国では、その ②インフラ政策は国民的課題であり、国民的な議論を 国の風土や伝統、豊かな文化をいかに次世代に残すかと 80 年代から 90 年代のバブルの頃のゼネコン汚職問題 いう議論をした上で、国土交通行政が存在している。将 も一因となり、国民は建設業やインフラと政治を切り離 来世代のために、我が国の風土や伝統、文化をいかに継 すことを望んだ。それによって行われたのが、具体的な 承するのか、国民的な議論が必要な時期が来ている。
前述してきたとおり、人口減少下の我が国において、潜在成長率を引き上げ、持続的な経済成長を 実現していくためには、経済成長の三要素のうち、資本投入量、全要素生産性を上げていくことが重 要である。もっとも、我が国の厳しい財政状況からの制約により、資本投入量を無制限に増やせるも のではない。そこで、国土交通分野では、老朽化インフラの更新や産業の国内回帰等の機会を捉えつ つ、社会情勢の変化をバネにして、ハード・ソフトのインフラの生産性の向上効果を高めるために、 時代に合わせた再構築が必要となっている。
国土交通白書 2026 29 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 2 インフラによる生産性向上に向けた課題 我が国は今後、中長期にわたり続くと予想される人口減少、少子高齢化の下で、いかに持続的な経 第1章
済成長を実現していくかという課題に直面している。 ここでは、前述の潜在成長率の要素分解と変化の要因を踏まえ、資本投入量及び全要素生産性を上 げていく上での課題について述べる。 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
図表Ⅰ-1-1-31 経済成長の観点から見た国土交通分野の課題
潜在成長率
労働投入量 資本投入量 全要素生産性
資本投入量、全要素生産性を上げていく上での課題
①インフラが ②インフラのストック減耗による ③社会情勢の変化に伴う 成長のボトルネックとなる懸念 機能低下の懸念 新たなニーズへの対応
資料)国土交通省
(1)インフラが成長のボトルネックとなる懸念 ここでは、資本投入量を上げていく上での課題として、インフラのネットワークの不連続等、成長 のボトルネックに着目した課題を取り上げる。
①公共投資の抑制による社会資本ストックの伸びの鈍化 前述したとおり、公共 図表Ⅰ-1-1-32 公的固定資本形成と公的固定資本ストックの推移(再掲) 投資の動向を示す「公的 (兆円) 公的固定資本形成(実質)(右軸) 公的固定資本ストック(実質)(左軸) (兆円) 固定資本形成」により蓄 800 762.3 777.7 786.1 80 691.1 積 さ れ る「 公 的 固 定 資 700 70
583.3 本ストック」の伸びは、 600 60
479.0 49.1
2000 年代後半以降の公 500 50 42.5
400 40 共投資の減少とともに、 37.7 310.3 31.1 27.7 27.7 300 30 鈍化している。 29.2
200 20
100 10
0 0 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
(注)公的固定資本ストック(実質)は各年の1-3月期の値(2015年基準値) 公的固定資本形成(実質)は年度の値
資料)内閣府「固定資本ストック速報」、「国民経済計算」より国土交通省作成
30 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
②インフラの未整備区間と国際競争力の低下 我が国のインフラは、これまで着実な整備を進めてきており、例えば 1988 年注 23 との比較では、高 Ⅰ 規格幹線道路、新幹線、空港、下水道等の整備が進んでいる。
第1章 図表Ⅰ-1-1-33 我が国のインフラ整備の変化
現在の高速交通ネットワーク
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 1988年の高速交通ネットワーク 発出先
1988年 2025年 ※1
新幹線 1,832km 2,956km 高規格幹線道路 4,387km 12,307km 空港(滑走路長2,000km以上) 33箇所 66箇所 下水道等(汚水処理人口普及率) 62% ※2 94% ※1 4月1日時点 ※2 1997年時点
2022年9月23日時点
資料)国土交通省
一方、全国で高規格道路の未整備区間が存在しており、「全国新幹線鉄道整備法」に基づく整備新 幹線についても、早期整備に向けた取組を進めているところである。 未整備区間の整備により、広域的なネットワークが形成され、生産性の向上効果等のストック効果 の発揮が期待される。
注 23 前年の 1987 年に国鉄が民営化された。
国土交通白書 2026 31 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 図表Ⅰ-1-1-34 高規格道路ネットワーク図 第1章 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
資料)国土交通省
図表Ⅰ-1-1-35 全国の新幹線鉄道網の整備状況
資料)国土交通省
32 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
(空港の国際競争力の確保) 首都圏空港は、容量面ではアジア諸国の国際空港と比較しても高い水準にあるが、それら国際空港 Ⅰ における戦略的な機能強化が進む中で、更なる国際航空需要の取込みに向けた、欧米主要都市と同水
第1章 準の発着容量確保が課題となっている。そのため、我が国の国際競争力の強化、インバウンドの受入 れ拡大、国際物流ネットワークの構築等の観点から、成田空港の滑走路の新増設等を行う更なる機能 強化を進め、羽田・成田の首都圏空港では年間発着容量約 100 万回の実現を目指している。
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 図表Ⅰ-1-1-36 主要国における発着回数・国際旅客数と我が国の首都圏空港の発着容量(計画)
首都圏空港の発着容量(計画) 成田 羽田 ロンドン(6) ニューヨーク(3) 都市名(空港数) (万回/年) ヒースロー、スタンステッド、ルートン、 JFK、ニューアーク、ラガーディア 対象空港 ガトウィック、シティ、サウスエンド 213都市 就航都市数 約100万回 359都市 (国際125、国内88) 146 (国際、国内) 100 178 124 約83万回 (国際346、国内13) 総発着回数 総旅客数 【万回/年】 【百万人/年】 115 国内 80 約75万回 (166) 50万回 34万回 (52) 国際 60 30万回 東京(2) ソウル(2) シンガポール(1) 上海(2) 40 成田、羽田 仁川、金浦 チャンギ国際 浦東、虹橋 152都市 154都市 145都市 215都市 (国際106、国内46) (国際146、国内8) (国際145、国内0) (国際89、国内126) 125 67 今後の増加予定分 100 126 94 80 20 約45万回 約49万回 約49万回 +17 56 37 (75) (67) 現在の空港処理能力 83 (55) (28) 0 最大発着回数 総旅客数 2020.3まで 2020.3から 成田空港 (出典) ・就航都市数:「OAG時刻表」( 2025年3月30日~4月5日の定期旅客直行便のデータ) C滑走路供用後 【万回/年】 【百万人/年】 ・総発着回数・旅客数 : 「 ACI Annual World Airport Traffic Dataset,2025 Edition 2024 Data」 (注) ・東京の最大発着回数は空港処理能力を示しており、他国の総発着回数は2024年の実績を示している。
資料)国土交通省
(港湾の国際競争力の低下) 諸外国との物流の拠点となる港湾では、アジア諸国にハブ機能が移り、コンテナ取扱個数で大きく 水をあけられている。
アジア主要港におけるコンテナ取扱個数 図表Ⅰ-1-1-37 アジア主要港のコンテナ取扱個数等
【アジア主要港のコンテナ取扱個数】 【世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキング】 青島 (単位:万TEU) 3,078 1990年 2024年(速報) 天津 ― 港 名 取扱量 港 名 取扱量 2,329 釡山 京浜港 ※ 1 シンガポール 522 1 (1) 上海(中国) 5,151 ― 2,440 788 2 香港 510 2 (2) シンガポール 4,112 上海 235 320 3 ロッテルダム 367 3 (3) 寧波-舟山(中国) 3,931 5,151 4 高雄 349 4 (4) 深圳(中国) 3,338 46 阪神港 ※
深圳 5 神戸 260 5 (5) 青島(中国) 3,087 490 広州(中国) 2,607 3,338 6 釡山 235 6 (6) ― 308 7 ロサンゼルス 212 7 (7) 釡山(韓国) 2,440 寧波- 舟山 3,931 8 ハンブルク 197 8 (8) 天津(中国) 2,329 広州 ― 9 ニューヨーク・ニュージャージ 187 9 (9) ドバイ(UAE) 1,554 香港 2,607 ポートクラン 80 1,367 1,440 510 10 基隆 183 10(11) (マレーシア) ポートクラン 11 横浜 165 ……
1,440 港湾取扱コンテナ個数 ……
- シンガポール (単位:万TEU) 4,112 470 45(46) 東京 522 2024年(上段) …
13 東京 156 1990年(下段) 70(68) 横浜 308 …………………
…
※京浜港は東京港・横浜港・川崎港。 阪神港は大阪港・神戸港。 75(72) 神戸 277 …
TEU (twenty-foot equivalent unit): 76(75) 名古屋 276 国際標準規格(ISO規格)の20 フィート・コンテナを1とし、 …
40フィート・コンテナを2として計算する単位。 24 名古屋 90 87(84) 大阪 232 [注] 数値はいずれも外内貿を含む。ランキングにおける( )内は2023年の順位。 ※京浜港・阪神港の順位:2024年(2023年) なお、2024年の海外港湾のコンテナ取扱個数は、速報値である。 京浜港:26位(24位) [出典]CONTAINERISATION INTERNATIONAL Yearbook1993及びLloyd’s List資料、港湾管理者調べより国土交通省港湾局作成。 阪神港:43位(38位)
アジア主要港のコンテナ取扱個数では 1990 年には世界のトップ 10 に神戸港が入って いたが、2024 年では順位を大きく落とし、中国等のアジア主要港が上位を占めている。 資料)国土交通省
国土交通白書 2026 33 第1節 我が国の経済とインフラ
(2)インフラのストックの減耗による機能低下の懸念 Ⅰ 次に、資本投入量を上げていく上で、これまで積み上げてきたインフラの老朽化等によるストック の減耗に着目した課題を取り上げる。ストックの減耗は潜在成長率を押し下げる要因となるととも 第1章
に、老朽化による機能低下の懸念がある。
①維持管理・更新費の増加等による新規ストックへの投資抑制の懸念 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
国土交通省では 2018 年に国 国 土交通省所管分野における社会資本の将来の 図表Ⅰ-1-1-38 土交通省所管分野における社会 維持管理・更新費の推移
資本の将来の維持管理・更新費 の推計を行った。予防保全 注 24 の考え方によるインフラメンテ ナンスの実施を基本として、12 分野(道路、河川・ダム、砂防、 海岸、下水道、港湾、空港、航 路標識、公園、公営住宅、官庁 施設、観測施設)を対象とした 推計の結果においても、長期的 な費用の増加の程度は、20 年 後、30 年後ともに最大で約 1.3 ※推計値は幅を持った値としているため、グラフは最大値を用いて作成。
資料)国土交通省
倍に増加する見込みとなってお 「事後保全注 25」から「予防保全」に転換しても、なお維持管理・更新費の増加は避けられない。 り、 予算が限られている中、既存ストックを維持・更新していくための予算額の割合は年々増加してい くことから、新規ストックへの投資の抑制が懸念される。
②インフラの質の不足 我が国の高速道路は、約4割が 図表Ⅰ-1-1-39 諸外国と比較した高速道路の車線数別延長構成比 「3車線以下」、すなわち暫定2車 線であり、諸外国にも例を見ない 状況となっている。低速車がいて も追い越しができないことによる 速度低下、大規模災害時や事故時 における通行止め、対面通行によ る重大事故の発生等を引き起こし 高速道路の対象) 日本:高規格幹線道路 出典) 日本:国土交通省道路局調べ(2022) 米国:インターステート(Interstate) 米国:FHWA, Highway Performance Monitoring System(2018)
ており、速度低下等による経済的 韓国:Expressway 韓国:国土交通部統計年鑑(2020) フランス:オートルート(Autoroute) フランス:Voies par chaussée sur le réseau routier national(2017) ドイツ:アウトバーン(Autobahn) ドイツ:Manuelle/Temporäre Straßenverkehrszählung (SVZ) Ergebnisse 2021(2021)
損失の解消や防災性、安全性の向 資料)国土交通省
上に不可欠な高速道路の4車線化 の進捗が急がれる。
注 24 施設の機能や性能に不具合が発生する前に修繕等の対策を講じること。 注 25 施設の機能や性能に不具合が生じてから修繕等の対策を講じること。
34 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 図表Ⅰ-1-1-40 高速道路の暫定2車線の事故の様子と死亡事故率
死亡事故率(件/億台キロ ) ※ 0.8
第1章 約4倍 0.6 0.59
0.4 約2倍 0.29 0.2
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 0.15
0 高速道路 高速道路 一般道路 4車線以上 暫定2車線
※ 高速道路:H25-28 高速自動車国道(優良) 一般道路:H25-28 資料)国土交通省
我が国の港湾は、コンテナ取扱 我が国及び海外主要港のコンテナターミナルの 図表Ⅰ-1-1-41 量の増加やコンテナ船の大型化に 岸壁数(水深16m以深) (岸壁数) 伴い、岸壁の狭あい化、荷役ス 40 35 35 ペースの不足による陳腐化が進ん 30 27
でいる。例えば、超大型コンテナ 25 23 23 21 20
船の喫水に対応した水深 16 m以 15 15 12 10 深の岸壁数では、海外主要港と比 5
較してその数が少ない。 0 )
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資料)各港 HP 等(2023 年 9 月時点)より国土交通省作成
③施設の老朽化の進行による管理負担の増加 高度経済成長期以降に集中的に整備された道路橋、トンネル、河川、上下水道、港湾等について、 建設後 50 年以上経過する施設の割合が、今後、加速度的に増加する見込みである。
図表Ⅰ-1-1-42 建設後50年以上経過する社会資本の割合 【建設後50年以上経過する社会資本の割合 】 2025年3月 2030年3月 2040年3月
約75%
約64% 約64%
約54% 約52%
約42% 約41% 約40% 約40% 約35% 約34% 約28% 約29% 約26% 約20% 約15% 約10% 約7%
注1) 注1) 注1) 道路橋 トンネル 注1) 河川管理施設注4) 水道管路注2) 下水道管渠注2) 港湾施設 注3,5) 注3) 注3) (橋長2m以上) [約1万2千本 注3)] [約2万8千施設 ] [約75万km ] [約50万km ] [約2万5千施設 ] [約73万橋 注3)]
注1) 建設後50年以上経過する施設の割合については、建設年度不明の施設数を除いて算出。 注2) 2024年3月時点。 注3) 建設年度不明の施設数を含む。 注4) 国:堰、床止め、閘門、水門、揚水機場、排水機場、樋門・樋管、陸閘、管理橋、浄化施設、その他(立坑、遊水池)、ダム。独立行政法人水資源機構法に規定する特定施設を含む。 都道府県・政令市:堰(ゲート有り)、閘門、水門、樋門・樋管、陸閘等ゲートを有する施設及び揚水機場、排水機場、ダム。 注5) 公共の港湾施設のうち、海上物流に資する主要な施設。
資料)国土交通省
国土交通白書 2026 35 第1節 我が国の経済とインフラ
地方公共団体が管理する橋梁で 図表Ⅰ-1-1-43 老朽化による通行規制の状況 Ⅰ は、老朽化による通行止めや通行車 両の重量規制など、本来のインフラ 第1章
の機能が低下している事例も見られ る。 一方、市区町村の土木部門の職員 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
数は減少したまま回復しておらず、 適切な維持管理体制の確保が喫緊の 課題となっている。
※メインケーブルの破損、主桁 の腐食やコンクリート床版 の剥離により通行規制を実 施している事例 か み ほ うりば し
宮崎県延岡市(上祝子橋) 資料)国土交通省
図表Ⅰ-1-1-44 市区町村における職員数の推移
《市区町村における職員数の推移(市区町村全体、土木部門)※1》 《市区町村における技術系職員数 ※1,※2》
(人) (人) 75万人 5人以下が 110,000 760,000 約5割 740,000 105,000 69万人 0人 720,000 440団体 100,000 700,000 25% 11人以上 95,000 680,000 703団体 660,000 41% 90,000 1~2人 640,000 145団体 85,000 10万5千人 9万人 620,000 8% 3~5人 80,000 600,000 241団体 6~10人 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024
212団体 14% 12% 市区町村における土木部門の職員数(左軸) 市区町村全体の職員数(右軸)
※1:地方公共団体定員管理調査結果(R6.4.1時点)より国土交通省作成。なお、一般行政部門の職員を集計の対象としている。 ※2:技術系職員は土木技師、建築技師として定義。
資料)国土交通省
36 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
(3)社会情勢の変化に伴う新たなニーズへの対応 最後に、全要素生産性を上げていく上で、インバウンドの増加や物流の小口・多頻度化等の社会情 Ⅰ 勢の変化に伴う、輸送の効率化等の新たなニーズに着目した課題を取り上げる。
第1章 ①インフラの効果的な利活用が不十分 道路の都市間移動の速達性を表す 図表Ⅰ-1-1-45 主要な都市間連絡速度(R3年度)
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 都市間連絡速度を見ると、日本の都 市間連絡速度は、約4割の都市間が 60km/h に満たず、平均都市間連絡 速度を比較しても、諸外国に遅れを とっている。 また、我が国における道路ネット ワークのポテンシャルを表す自由走 行速度は、全道路で 61km/h だが、 渋滞などにより時間ロス(約4割) が生じている。これは年間約 370 万 人分の労働時間に相当する。 60km/h以上 60km/h未満 道路を賢く使って、時間ロスを削 <参考>諸外国の平均都市間連絡速度(R3年度) 減し、パフォーマンスを改善してい 日本※ ドイツ フランス イギリス 中国 韓国 くことが求められる。 61km/h 84km/h 88km/h 74km/h 87km/h 77km/h ※日本の都市間連絡速度の算出方法 対象は122都市、235リンク。ETC2.0(R6小型車)の旅行速度データを用いて算出
資料)国土交通省
図表Ⅰ-1-1-46 道路ネットワークのパフォーマンス
資料)国土交通省
国土交通白書 2026 37 第1節 我が国の経済とインフラ
(インバウンド需要の偏在) Ⅰ 2025 年累計の訪日外国人旅行 大都市圏及び地方部における外国人延べ宿泊者数 三 図表Ⅰ-1-1-47 者数は初めて 4,000 万人を突破し の推移 第1章
過去最高となるなど、旺盛な観光 (万・人泊) 20,000 需要が続く中で、外国人延べ宿泊 三大都市圏 地方部 17,787 者数の推移を見ると、三大都市圏 16,446 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
15,000 5,873 が約7割を占めており、観光需要 5,086 (33%) 11,775 (31%) 11,566 が偏在する傾向が引き続き見られ 10,000 3,358 4,309 る。 (37%) (29%)
11,360 11,914 5,000 8,417 (69%) (67%) 7,257 (71%) (63%)
0 2019 2023 2024 2025 (暦年)
※三大都市圏:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県
資料)国土交通省
こうしたことも背景として、観光客が集中する一部の地域や時間帯等によっては、過度な混雑やマ ナー違反等による地域住民の生活への影響や、旅行者の満足度の低下への懸念も生じている。 例えば、観光地のある地方公共団体の調査では、「一部の観光地やその周辺等が混雑して迷惑して いる」、「バスや地下鉄等が混雑して迷惑している」、「道路が渋滞して迷惑している」と回答した市民 の割合が5割以上に上った例が見られる。
図表Ⅰ-1-1-48 観光地における混雑等の状況
(資料)京都市内在住の満18歳以上の市民5,500人対象、令和7年9月24日~10月23日に実施。 資料)京都市「令和 7 年「京都観光に関する市民意識調査」」より国土交通省作成
38 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
(物流の小口・多頻度化) 我が国の輸送貨物件数と貨物1 図表Ⅰ-1-1-49 我が国の輸送貨物件数と貨物1件当たりの重量の推移 Ⅰ 件当たりの重量の推移を見ると、
第1章 (千件) (トン/件) 1985 年から物流件数が増加する 30,000 物流件数(3日間調査)(左軸) 3 貨物1件当たりの重量(トン/件)(右軸) 2.63 一方、貨物1件当たりの重量(ト 25,080 25,000 2.5 ン/件)が減少しており、物流の
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 小口・多頻度化が急速に進行して 20,000 2
いる。 15,000 1.5 11,151 10,000 1
0.83 5,000 0.5
0 0 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2021
資料)国土交通省「全国貨物純流動調査(物流センサス)」より作成
(事業者から見た物流輸送や観光の移動に関する課題) 国土交通省「事業者アンケート」で、事業者(製造業、建設業、運輸業)に対し、現在の物流輸送 に関するインフラ(道路、港湾、空港等の施設)に対して、どのような点が課題と考えられるかたず ねたところ、 「交通渋滞による輸送時間のロス」(57.8%)が最も多く、次いで「災害・事故発生時 等の物流網の脆弱性」(40.1%) 、「地域の物流拠点へのアクセス道路の未整備」(21.6%)の順となっ た。このことから、交通渋滞の解消による移動の効率化や災害・事故時のリダンダンシーの確保、地 域の物流拠点へのアクセス性の改善を求めていることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-1-50 物流輸送に関するインフラの課題について(製造業、建設業、運輸業)
交通渋滞による輸送時間のロス 57.8
災害・事故発生時等の物流網の脆弱性 40.1
地域の物流拠点へのアクセス道路の未整備 21.6
特定のインフラ(港湾・空港など)における混雑や手続きの非効率さ 18.7
トラックターミナルや荷捌き場の不足、環境の不備 15.7
モーダルシフト(トラックから鉄道・海運等への転換)に必要な施設の不足 13.1
その他 3.4
0 10 20 30 40 50 60 70 (%)
※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業)。グラフは回答者の比率(複数回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
また、観光業の事業者に対し、移動に関するインフラ(道路、港湾、空港等の施設)に関して、 どのような点が課題と考えられるかたずねたところ、「観光地周辺の交通渋滞による時間のロス」 (63.9%)が最も多く、次いで「地域の観光地へのアクセス手段の少なさ」(34.4%)、「災害・事故 発生時の移動手段の脆弱性」(29.5%)の順となった。このことから、観光業の事業者も、交通渋滞
国土交通白書 2026 39 第1節 我が国の経済とインフラ
の解消による移動の効率化や観光地へのアクセス性の改善、災害・事故時のリダンダンシーの確保を Ⅰ 求めていることがうかがえる。 第1章
図表Ⅰ-1-1-51 移動に関するインフラの課題について(観光業)
観光地周辺の交通渋滞による時間のロス 63.9 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
地域の観光地へのアクセス手段の少なさ 34.4
災害・事故発生時等の移動手段の脆弱性 29.5
特定のインフラ(鉄道・空港など)における混雑や 23.0 チケット購入等手続きの非効率さ
乗換えの不便さ(空港から鉄道、鉄道からバス等への乗換え) 19.7
その他 6.6
0 10 20 30 40 50 60 70 (%)
※回答者総数:事業者 61 社(観光業)。グラフは回答者の比率(複数回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
②資源・エネルギー価格の上昇がもたらす影響 ここでは、輸送燃料・建設資材価格について取り上げる。
(輸送燃料価格) 我が国では、2022 年のロシアによるウクライナ侵略により、原油・ガス価格が高騰し、加えて円 安が輸入物価を押し上げ、企業間の取引価格や消費者物価の上昇につながった。 輸送燃料価格の推移を 図表Ⅰ-1-1-52 輸送燃料価格の推移 見ると、2000 年代後半 (円/L)
以降、上昇傾向を示して 200 レギュラーガソリン 軽油 LPG C重油 灯油(含ジェット燃料油) 176.8 おり、ロシアによるウク 180
157.1
ライナへの侵略を契機 160 136.4 133.1
に、原油価格の高騰の影 140 117.1 120.1 112.7 120 響を受け、トラック、タ 101.2 100 ク シ ー、 船 舶 等 の 輸 送 81.6 83.4 87.1 87.8
80 燃料である軽油や LPG、 61.1 56.5 79.0 60 ガソリン等の価格は上昇 51.8 38.6
40 28.0 傾向にある。 37.1 20 25.3
0 2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
2021
2022
2023
2024
2025
(注)消費税除く。各年の価格は、各年複数調査日の価格の平均値。
資料)経済産業省「石油製品価格調査・オートガス市況調査」、財務省「貿易統計」、日本内航海運組 合総連合会「内航燃料油価格調査」より国土交通省作成
40 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
(建設資材価格) また、建設資材価格の高騰は 図表Ⅰ-1-1-53 建設資材物価指数の推移 Ⅰ 建設費の上昇につながり、建設
第1章 (2015=100)
分野に多大な影響がある。建設 160 142.1 資材物価指数の推移を見ると、 140
2021 年から、原材料費等の高
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 120 104.5 騰に伴い、建設資材価格は高騰 97.2 95.4 94.4 100.0 100 88.7 し、高止まりしている。 86.4
80
60
40
20
0 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 (暦年)
(注)建設総合・全国平均の値。2015年基準値。
資料)一般財団法人建設物価調査会「建設物価 建設資材物価指数」より国土交通省作成
(再生可能エネルギーの導入目標) エネルギー自給率が低い我が国では、様々な再生可能エネルギー導入拡大施策に取り組んでいる。 2012 年に始まった「FIT 制度(固定価格買取制度)」によって、再生可能エネルギーの導入は大幅に 増加した。 「電源(電気をつくる方法)」における再生可能エネルギーの比率を示した「電源構成比」 では、2011 年度は約 10.4% であったが、2024 年度には約 23.1%と倍以上になった。2030 年度の 電源構成比の目標値では、再生可能エネルギー比率は 36 〜 38%となっている。
図表Ⅰ-1-1-54 2030年度の再エネ導入目標
2011年度 2024年度 2030年新ミックス 再エネの 電源構成比 10.4% 23.1% 36-38% 発電電力量:億kWh (1,131億kWh) (2,286億kWh) (3,360-3,530億kWh) 設備容量:GW 9.9% 14-16%程度 太陽光 0.4% 981億kWh 1,290~1,460億kWh 1.2% 5%程度 風力 0.4% 117億kWh 510億kWh 7.4% 11%程度 水力 7.8% 735億kWh 980億kWh 0.4% 1%程度 地熱 0.2% 39億kWh 110億kWh 4.2% 5%程度 バイオマス 1.5% 414億kWh 470億kWh ※24年度数値は2024年度エネルギー需給実績(確報)より引用 資料)経済産業省
国土交通白書 2026 41 第1節 我が国の経済とインフラ
③新技術や AI の導入の遅れ Ⅰ (我が国政府・民間の AI 関連投資の遅れ) 我が国の AI 投資額を見ると、諸外国と比べ、政府投資、民間投資ともに、大きく差が開いている。 第1章
政府投資は最も投資額が大きい米国の 1/30 以下、民間投資は米国の 1/250 以下となっている。
図表Ⅰ-1-1-55 各国政府・民間のAI関連投資額 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
各国政府のAI関連投資額(2019~2023年の5年間) 民間のAI投資額(2025)
米国 285.88 米国 329 中国 12.41 英国 5.90 中国 133 フランス 4.36 カナダ 4.28 英国 26 インド 4.09 ドイツ 3.89 インド 16 30倍以上 イスラエル 3.58 250倍 オーストラリア 2.52 以上 カナダ 12 サウジアラビア 2.03 シンガポール 1.82 韓国 10 韓国 1.78 ベルギー 1.20 日本 10 日本 1.11 スウェーデン 0.97 0 100 200 300 400 0 100 200 300 400 (十億ドル) (十億ドル)
資料)政府は日本:内閣府「AI 関連予算の推移(平成 29 年度~令和7年度)」、日本以外:AIPRM「AI Statistics 2024」 民間は Stanford University Human-Centered Artificial Intelligence(HAI)「Inside the AI Index:12 Takeaways from the 2026 Report」より内閣府で作成
(建設業・運輸業での AI 等の導入の遅れ) 国土交通省「事業者アンケート」で、建設業、運輸業の事業者に対し、物流や建設等の現場におけ る生産性向上を目的とした AI・ロボット・自動運転技術の導入状況についてたずねたところ、「導入 している」との回答は、AI で約 1 割、ロボット、自動運転技術で 1 割以下となり、 「導入予定はない」 と回答した事業者は、いずれも半数以上となった。 建設業・運輸業では AI・ロボット等の新たな技術の導入が遅れていることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-1-56 AI・ロボット等の導入状況について(建設業、運輸業)
導入している 導入を検討・計画中 導入予定はない
AI 10.5 28.4 61.1
ロボット 4.5 14.1 81.4
自動運転技術 2.6 20.4 77.0
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100(%) ※回答者総数:事業者 980 社(建設業、運輸業)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
42 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
次に、企業規模別の AI・ロボット・自動運転技術の導入状況を見ると、すべての項目で中小企 業注 26 より大企業の方が「導入している」、「導入を検討・計画中」と回答した割合が多い結果となっ Ⅰ た。大企業の方が、新たな技術の導入に積極的な姿勢であることがうかがえる。
第1章 図表Ⅰ-1-1-57 AI・ロボット等の導入状況について(建設業、運輸業 企業規模別) (%) 0 20 40 60 80 100
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 中小企業 7.2 25.1 67.8 (n=810) AI 大企業 26.5 44.1 29.4 (n=170)
中小企業 2.5 11.1 86.4 (n=810) ロボット 大企業 14.1 28.2 57.6 (n=170)
中小企業 1.4 16.5 82.1 (n=810) 自動運転 大企業 8.2 38.8 52.9 (n=170)
導入している 導入を検討・計画中 導入予定はない
※回答者総数:事業者 980 社(建設業、運輸業)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
次に、AI・ロボット・自動運転技術を「すでに導入している」、又は「導入を検討・計画中」と回 答した事業者に、導入による生産性向上に期待することをたずねたところ、「社員がより付加価値の 高い業務への集中」(32.9%)が最も多く、次いで、「作業ミスの削減・品質の安定化」(21.9%)、 「熟練者でなくても一定の作業ができるようになること」(16.0%)が続いた。 AI・ロボット等の新たな技術の導入により、人材の再配置を行い、生産性を高めたい意向がうか がえる。
図表Ⅰ-1-1-58 AI・ロボット等の導入による生産性向上に期待すること(建設業、運輸業)
社員がより付加価値の高い業務への集中 32.9
作業ミスの削減・品質の安定化 21.9
熟練者でなくても一定の作業ができるようになること 16.0
煩雑なタスクや重労働からの解放 14.8
24時間稼働などによる生産量の増加 10.0
新たな商品やサービスの開拓 1.6
その他 2.7
0 5 10 15 20 25 30 35 (%)
※回答者総数:事業者 438 社(建設業、運輸業)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
注 26 小企業基本法の分類に基づき、資本金3億円以下並びに従業員 300 人以下の企業を「中小企業」、それ以外の企業 中 を「大企業」とした。
国土交通白書 2026 43 第1節 我が国の経済とインフラ
次に、AI・ロボット・自動運転技術の導入状況について、いずれも導入予定はないと回答した事 Ⅰ 業者のうち、AI・ロボット・自動運転技術の導入に関して、どのような懸念や課題を感じているか たずねたところ、「導入・運用コストが高い」(35.8%)が最も多く、 「現場が労働集約型の労働環境 第1章
であること」(13.8%)、「従業員が新技術を使いこなせるか不安(スキルギャップ)」(11.8%)の順 となった。 「導入・運用コストが高い」や、「従業員が新技術を使いこなせるか不安(スキルギャップ)」と ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
いった新技術に関する懸念のほか、労働集約型の労働環境といった建設業・運輸業における特有の現 場条件が AI・ロボット等の導入が遅れている一因であることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-1-59 AI・ロボット等の導入に関しての懸念、課題について(建設業、運輸業)
導入・運用コストが高い 35.8
現場が労働集約型の労働環境であること 13.8
従業員が新技術を使いこなせるか不安(スキルギャップ) 11.8
不具合発生時の責任の所在が不明確 9.2
現場が一品受注生産であること 8.7
雇用の減少・仕事が奪われる脅威 6.1
その他 14.6
0 5 10 15 20 25 30 35 40 (%)
※回答者総数:事業者 542 社(建設業、運輸業)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
AI・ロボット等の活用方針及び AI・ロボットを扱う人材への投資についてたずねたところ、活用 方針では「方針を明確に定めていない」(44.7%)が最も多く、「活用する領域を限定して利用する 方針である」(23.3%)、「わからない」(16.0%)、「積極的に活用する方針である」(15.3%)の順と なった。 人材投資については、「全く人材投資していない」(32.9%)、「ほとんど人材投資していない」 (23.3%)で約半数を占める結果となった。 この結果、AI・ロボット等の活用に対し、消極的な姿勢がうかがえる。
44 国土交通白書 2026 第1節 我が国の経済とインフラ
Ⅰ 図表Ⅰ-1-1-60 AI・ロボット等の活用方針について(製造業、建設業、運輸業、観光業等)
方針を明確に定めていない 44.7
第1章 活用する領域を限定して利用する方針である 23.3
積極的に活用する方針である 15.3
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 利用を禁止している 0.8
わからない 16.0
0 10 20 30 40 50 (%) ※回答者総数:事業者 1,164 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
図表Ⅰ-1-1-61 AI・ロボット等の人材投資について(製造業、建設業、運輸業、観光業等)
全く人材投資していない 32.9
ほとんど人材投資していない 23.3
関連する部署の人材には投資している(部署内での勉強会等) 19.4
社員個人に任せている(AI等のリスキリングを促す等) 13.4
全社的に積極的に人材投資している(全社的に研修を行う等) 10.0
その他 1.0
0 5 10 15 20 25 30 35 (%)
※回答者総数:事業者 1,164 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
国土交通白書 2026 45 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
Ⅰ 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識 ここでは、ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する課題等を踏まえ、国内外の政策動向 第1章
や、国土交通分野に関連する動きについて取り上げる。また、実際にインフラを利用して事業活動を 行う民間事業者へのアンケート結果等より、インフラに関する満足度や、期待する施策の方向性等を 記述する。 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
1 海外と比較した我が国の現状 欧米諸国における社会資本整備政策を概観するとともに、欧米諸国及び我が国の GDP 等に関する 状況について述べる。
(1)欧米諸国における社会資本整備政策 欧米諸国では、基幹インフラの整備が経済成長を促し、雇用を創出するために不可欠な存在である として、将来を見据え、新規の成長インフラへの積極投資、既存インフラの再構築等が進められてい る。 図表Ⅰ -1-2-1「G7 各国における社会資本整備計画等の概要」を見ると、例えば、英国では、「イ ンフラ 10 カ年戦略」 (2025 年6月)として、道路、鉄道、社会インフラ(学校・病院等)などを対 象分野に、10 年間で約 7,250 億ポンド(約 150 兆円)の投資を決定している。各国とも、経済成長 を支える等の視点から、国家戦略として、計画的に社会資本整備を進めている。 今後も、生産性向上を図っていくために、我が国においても、経済社会の再構築のための積極的な インフラ投資が求められる。
図表Ⅰ-1-2-1 G7各国における社会資本整備計画等の概要
【米国】インフラ投資雇用法(IIJA) 【英国】インフラ10カ年戦略 策定︓2021年11月 策定︓2025年6月 【対象分野】 道路、鉄道、航空、公共交通、エネルギー、水、環境関連等 【対象分野】 住宅、道路、鉄道、水、エネルギー、学校、病院、デジタル等 【計画期間】 2021年~2026年 【計画期間】 2025年~2035年 【投 資 額】 9,730億ドル(※策定当時の予算総額) 【投 資 額】 7,250億ポンド
【ドイツ】インフラ・気候中立のための特別基金 【カナダ】コミュニティ強化基金 設立︓2025年10月 設立︓2026年4月
【対象分野】 市民保護、交通・エネルギーインフラ、病院、教育・保育・科学、 【対象分野】 住宅関連(水、公共交通、道路等)、教育関連(大学 研究開発、デジタル化、住宅建設、スポーツ等 等)、医療関連(病院等)、コミュニティ関連(公園等)等 【期 間】 2025年~2037年 【期 間】 2026年~2035年 【規 模】 5,000億ユーロ 【規 模】 510億カナダドル
【フランス】モビリティ基本法(LOM) 【イタリア】インフラ・運輸・物流戦略2026 策定︓2019年12月 策定︓2026年4月 【対象分野】 鉄道、道路等 【対象分野】 道路、鉄道、港湾・物流、デジタル化等 【計画期間】 2019年~2037年(現在の支出計画は2027年まで) 【計画期間】 分野により異なる 【投 資 額】 134億ユーロ(2019年~2023年) 【投 資 額】 総額の記載無し(分野ごとに投資額を設定) 143億ユーロ(2023年~2027年)
(出典)各国政府ウェブサイト等を基に作成
資料)国土交通省
46 国土交通白書 2026 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
Column コラム Ⅰ
第1章 インフラに関する英国・ドイツの投資戦略
近年、英国やドイツでは、インフラへの大規模な投資 を設立した。5,000 億ユーロのうち 3,000 億ユーロが、 を再度活発化させている。 国土全体の基幹インフラ整備を主導する連邦政府投資枠
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 2024 年7月に発足した英国労働党政権は「国家再生 となっている。特別基金の設立背景には、数十年にわた の 10 年」を掲げ、 「インフラ 10 カ年戦略」 (2025 年6月) る投資抑制の結果、道路、鉄道等のインフラ老朽化が進 を策定した。「インフラ 10 カ年戦略」は、過去数十年の 行していたことや、信頼性の高い公共交通網の再構築が 投資不足と短期的意思決定を打破し、経済成長、地域格 求められていたことなどが挙げられる。特別基金の設立 差是正、ネットゼロ達成を目指す長期ビジョンである。 により、連邦・州・自治体の財政的余地を確保し、交通 10 年 間(2025 年 ~ 2035 年 ) で、 総 額 7,250 億 ポ ン などの投資ニーズが高い分野への迅速かつ的確な資金投 注1 ド(約 150 兆円 )以上の公的資本支出を確約しており、 入が可能となっている。 産業界に長期的な予見可能性を提示している。重点施策 <特別基金(5,000億ユーロ)の資金構造と の一つとして、 「運輸と接続性の強化」が掲げられており、 三つの柱(ドイツの例)> 戦略的道路網の集中投資等が実施されることとなってい る。 また、英国は、誰にどのような効果がもたらされるの 州・地方自治体支援※3 かをナラティブ(Economic Narrative)として整理し、 (1,000億ユーロ) インフラが社会にいかなる貢献が可能なのかという観点 から、インフラ投資を評価する動きになっている。効果 連邦政府投資枠※1 気候・変革基金※2 の帰着先を明確化した上で、国の戦略と整合した多様な (3,000億ユーロ) (1,000億ユーロ) 便益指標(非貨幣換算指標含む)を用いて評価を行って いる。 一方、ドイツでは、2025 年 10 月、経済強化等を目 指すとともに、インフラ整備を通じて国民生活を向上さ せるため、12 年間で、5,000 億ユーロ(約 90 兆円 注 1) ※1 国土全体の基幹インフラ整備を主導 ※2 2045年の気候中立達成に向けた、脱炭素化等への集中投資 規模の特別基金(インフラ・気候中立のための特別基金) ※3 教育、地域交通など、住民生活に密着したインフラ改修の原資
資料)ドイツ連邦財務省資料より国土交通省作成
注1 為替レートは 2026 年4月1日時点(1ポンド=約 210 円、1ユーロ=約 180 円で換算)。
(2)欧米諸国及び我が国における GDP と社会資本整備 我が国の公共投資の対 GDP 比は、図表Ⅰ -1-2-2「経済規模と比べた公共投資の国際比較(フ ロー)」より、主要先進国全体で見ると、1990 年代後半から 2000 年代前半の間は、高い水準を示し ていたものの、2023 年時点において、その水準は他国並みとなっている。 また、欧米諸国注 1 においては、公共投資額そのものは拡大しているのに対し、我が国のみが投資額 を減少させてきている。 公共投資は、短期的な需要創出効果だけでなく、経済活動の効率性・生産性を上げ、GDP を直接 的・間接的に押し上げる効果が期待されている。GDP について見ても、欧米諸国が拡大傾向にある 中、我が国は横ばいが続いている状況である。
注 1 ここでは、図中に示されるフランス、カナダ、イタリア、ドイツ、英国、米国のことをいう。
国土交通白書 2026 47 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
Ⅰ 図表Ⅰ-1-2-2 経済規模と比べた公共投資の国際比較(フロー)
IG 一般政府の総固定資本形成(IG)※1996年を1.0 一般政府の総固定資本形成(IG)の対GDP比 6 第1章
欧米諸国では社会資 英,5.30 「一般政府の総固定資本形成(対GDP比)を見ると、 5 本整備への投資が拡大 7.0% 日本は、主要先進国に比べて、引き続き高い水準。」 他方、日本は減少 加,4.37 (令和2年10月19日 財政制度等審議会 財政制度分科会) 4 米,3.02 6.0% 3 独,2.68 近年は他のG7諸国 伊,2.59 と同等水準 2 仏,2.54 IG ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
5.0% GDP 1 日,0.61
0
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 4.0%
仏,3.5% 日,3.1% GDP 4 国内総生産(GDP) ※1996年を1.0 3.0% 加,3.1% 欧米諸国ではGDPが拡大 米,3.53 伊,2.7% 3.5 加,3.46 他方、日本は横ばい 独,2.5% 英,3.38 3 英,2.3% 2.0% 米,2.0% 仏,2.30 2.5 独,2.20 2 伊,2.07
1.0% 1.5 日,1.15 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
1 (出典)日本:内閣府「国民経済計算年次推計」を元に作成(年度ベース)。 諸外国:OECD Data Explorer 「National Accounts」等を基に作成(暦年ベース)。 0.5
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 (注)グラフ中、2004年までは旧基準(93SNAベース)、 2005年以降は08SNAベースのIGより研究開発投資(R&D)や防衛関係分を控除。
注 データは 2025 年6月時点 資料)国土交通省
(欧米諸国における社会資本整備等の例) 欧米諸国における社会資本整備の例を見ると、欧州では、複数国にまたがる経済活動を円滑化する観 点から、EUによる域内交通ネットワークの整備が一体的に進められている。例えば、フェリー輸送に依 ちんまい 存している海峡区間が域内交通のボトルネックとなっていることから、沈埋トンネル注 2 の建設を通じて、 鉄道2線と道路4車線に置き換えるなどの、大規模なプロジェクトが進められているものが見られる。
Column 欧州の成長を牽引する欧州横断輸送ネットワーク(TEN-T)(欧州) コラム
EU は、1990 年代より、欧州横断輸送ネットワーク る海峡区間を鉄道2線と道路4車線に置き換えるプロ (Trans-European Network-Transport:TEN-T)の制 ジェクトである。 2030 年代初頭の供用開始を目標に工 度化を進めてきた。TEN-T とは、域内を貫く幹線鉄道・ 事が進められており、フェリーで約 45 分を要するロー 道路・内陸水運・港湾・空港などからなる交通ネットワー ビュ〜プットガルテン間の所要時間を鉄道約7分・道路 クを定めるもので、その中でも特に戦略的重要性の高い 約 10 分に短縮するとともに、ハンブルク〜コペンハー 区間を「コアネットワーク」として位置付け、国境をま ゲン間の鉄道所要時間も現在のおよそ5時間から約 2.5 たぐボトルネックやミッシングリンクの解消を優先的に 時間へと半減させることが見込まれている。 進めてきている。 TEN-T 全体では、2017 〜 2030 年で、TEN-T のコア その一つである「スカンジナビア・地中海回廊」では、 ネットワークが計画通り整備された場合、2030 年の EU フェーマルンベルト固定連絡路(FBFL)やブレンナー 全体の GDP は、TEN-T への追加投資を行わないベース ベーストンネルを、ミッシングリンク解消の核となるプ ライン・シナリオに比べて約 1.6%高くなると見込まれ ロジェクトとして位置付け、鉄道・道路・トンネル等の ている。さらに、2030 年時点の雇用はベースラインよ 整備を組み合わせながら、北欧から地中海までを一体と り約 79.7 万人多く、2017 〜 2030 年を通じた累計で して結ぶ構想を具体化している。 は約 750 万人の雇用効果が生じるとされている。加えて、 FBFL は、デンマーク国有企業による全長約 18km の コアネットワークへ行われる投資については、1ユーロ ちんまい 沈埋トンネル建設を通じて、フェリー輸送に依存してい の投資が平均して約 3.3 ユーロの追加 GDP を生み出す
注2 トンネルをいくつかの区間に分けて陸上でつくり、それを水中に沈めてつなぎ合わせる「沈埋工法」でつくられる。
48 国土交通白書 2026 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
と推計されている。 今後も TEN-T は、2050 年の包括ネットワーク完成に ジタル化を組み込んだスマート回廊への進化とともに、 欧州経済の持続的成長を牽引する基盤としての役割が一 Ⅰ
第1章 向けて整備を着実に進めることとしており、脱炭素・デ 層高まっていくことが期待される。
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 資料)Sund & Bælt Holding A/S
また、米国では、本来のポテンシャルを発揮できていない既存インフラに対する再構築の取組によ り、地域の経済成長につながっているものが見られる。
Column 社会経済のニーズに合わせた道路空間の再構築(米国) コラム
米国東部に位置するニューヨーク州ロチェスター市 本プロジェクトは、周辺の道路よりも路面高の低い6 では、1965 年、市の中心市街地を囲むように、全長約 車線の高速道路を埋め戻して撤去し、地盤レベルを周 4km の環状の高速道路(インナーループ)が完成した。 辺道路にそろえ、活気のある市東部地区と中心市街地を しかし、開通から数十年を経て、インナーループの交通 シームレスにつなぐもので、同時に、幅広い歩道と自転 量が設計時の想定よりもはるかに少なく、本来のポテン 車レーンを備えた大通りを整備し、自転車と歩行者の活 シャルを発揮していないことが明らかになった。それに 動を促進することで、より住みやすく持続可能なコミュ 加え、ロチェスター市の人口が、インナーループ建設前 ニティ形成を目指している。 (1950 年)には約 33 万人であったものの、1990 年に 本プロジェクトの完成により、新たに造成された土地 は約 23 万人に減少しており、インナーループが近隣エ には 500 戸以上の住宅が建築され、商業施設の床面積も リアとの交流を妨げている可能性があった。 約 1.3ha 増加した。また、このエリアの開発投資額とし そこで、開通から 25 年後の 1990 年、ロチェスター市 て約 2.2 億ドルが投入されている。 議会と市民は、インナーループの東側部分の撤去を含む ロチェスター市は、本プロジェクトを、社会経済のニー インフラ再構築のプロジェクトの実施を提唱し、2014 ズに合わせて、インフラを再構築した成功事例とし、東 年 11 月に工事開始、2017 年 12 月に撤去が完了した。 側に続き、北側部分の撤去についても検討を続けている。
<インナーループ東側(埋め戻し前)> <インナーループ東側(埋め戻し後)>
資料)ニューヨーク州ロチェスター市
国土交通白書 2026 49 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
インフラの運用面での高度化を支える各種データ共有基盤の整備についても、例えば、欧州では、 Ⅰ 物流拠点における作業状況と道路・鉄道の運行情報を連携させるなどにより、待機時間や非効率な迂 回を減らし、安定輸送の実現が見込まれているものが見られる。 第1章
Column コラム ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
欧州全体の交通を支えるデータ共有基盤の整備(欧州)
共 通 欧 州 モ ビ リ テ ィ デ ー タ ス ペ ー ス(European 関するプロジェクトの立上げを支援している。 Mobility Data Space:EMDS)は、欧州全域における こうしたデータ共有基盤の整備により、旅客分野では、 交通データへのアクセスと共有の障壁を取り除き、交通 鉄道・バス・都市内モビリティなど複数の交通手段をま 分野の効率化とイノベーションを促し、域内経済の持続 たいだルート案内や、一括での乗車券購入・予約が実現 的な成長を支えることを目的とした共通枠組みである。 しやすくなるとともに、所要時間や乗換接続の見通しも EMDS 構想の背景には、欧州の交通データが抱える断 立てやすくなることが期待される。貨物分野では、港湾・ 片化の問題がある。国・都市・事業者・交通モードごと 物流拠点の作業状況と道路・鉄道の運行情報を連携させ に個別に管理されたデータは、形式やアクセス条件も統 ることで、トラック等の到着時刻の予測精度が高まり、 一されておらず、横断的な共有や活用が難しい状況が続 待機時間や非効率な迂回を減らしながら、安定した輸送 いてきた。近年は、各種プラットフォームの整備等によ の実現が見込まれている。 り、連携の進展も見られるが、欧州委員会は、こうした 今後、欧州委員会及び関係機関は、引き続き、欧州全 断片化を依然として重要課題と認識している。 体の交通を支えるデータ共有基盤と運営ルールを段階的 こうした課題の解決に向け、欧州委員会は、EMDS の に整備し、モビリティ分野を次世代の経済社会を支える 段階的な整備を推進してきた。基盤整備に始まり、実装 重要領域として確立していくことを目指している。 注1 促進、技術調査 に加え、国境をまたいだデータ共有に
注1 EMDS の技術面及びガバナンス面の制度設計に向けた検討等のこと。
50 国土交通白書 2026 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
2 政府の政策と国土交通分野に期待される取組 Ⅰ 我が国においても、「強い経済」の実現に向けて、成長戦略等の策定などが進められている。
第1章 (1)日本成長戦略 「日本成長戦略」(2025 年 11 月に日本成長戦略本部設置)では、我が国に圧倒的に足りない国内
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 「危機管理投資注 3」 投資に徹底的なてこ入れを行うこととしており、 「成長投資注 4」により、世界共通 、 の課題解決に資する製品等を開発し、国内外に提供することで、我が国経済の成長につなげることを 目指すこととしている。 AI・半導体、造船、港湾ロジスティクス、防災・国土強靱化等の 17 の戦略分野について、戦略的 に選定した主要な製品・技術等の「官民投資ロードマップ」を策定し、着実に実行していくこととし ている。また、17 の戦略分野において抽出される課題へ対応し、新技術立国・競争力強化、人材育 成、労働市場改革等の8つの分野横断的課題の解決策を講ずることにより、17 の戦略分野で先陣が 切られる民間企業の国内投資を日本全国に広げる環境を整備していくこととしている。
(2)地域未来戦略 しろ 地方が持つ伸び代を活かし、国民の暮らしと安全を守るため、地域ブロックごとの戦略産業クラス ターを全国各地に形成し、世界をリードする技術・ビジネスを創出するとともに、地場産業の付加価 値向上と販路開拓を強力に支援することとしている。 「地域未来戦略」(2025 年 11 月に地域未来戦略本部設置)では、従来の取組に加え、地域の特性 に応じた地域発のアイデア創出を募り、これまでの地方創生の支援策や税制等の政策ツールを最大限 活用しつつ、大胆な投資促進策と産業用地を含めたインフラ整備とを一体的に講じることとしてい る。
(3)社会資本整備重点計画及び交通政策基本計画 社会資本整備重点計画は、 「社会資本整備重点計画法」に基づき、社会資本整備事業を重点的、効 果的かつ効率的に推進するために策定される計画であり、2026 年1月、2030 年度までを計画期間 とする「第6次社会資本整備重点計画」が閣議決定された。 あわせて、社会資本整備政策と交通政策を「車の両輪」として連携・整合を図り、一体的に施策を 実行する観点から、2026 年1月、同じく 2030 年度までを計画期間とする「第3次交通政策基本計 画」が閣議決定された。 両計画とも、共通のゴールとして「人口減少という危機を好機に変え、一人ひとりが豊かさと安心 を実感できる持続可能な活力ある経済・社会を実現」を掲げ、両計画に共通する視点と相互に関連す る施策が盛り込まれており、関連する施策分野ごとに、指標等を用いて一体的な進捗管理を行うこと としている。
注3 済安全保障、エネルギー・資源安全保障、国土強靱化対策、サイバーセキュリティ等の様々なリスクを最小化する投資。 経 注4 AI・半導体、造船などの先端技術を花開かせる投資。
国土交通白書 2026 51 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
Ⅰ Interview インタビュー 第1章
造船業再生と次世代船舶・海事イノベーションへの期待 ~東京海洋大学学術研究院 教授 清水 悦郎氏~
日本成長戦略会議における「造船ワーキンググループ」 力の設置・維持管理、海底資源探査、海底ケーブル敷設 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
等の構成員であり、造船業の再生や、自動運航船、海洋 など、海の利用ニーズが高まる中で、人材の取合いはさ ドローン等の推進に取り組み、活躍を続けておられる清 らに激化する。船員の就職先も海運会社だけでなく建設 水氏に、次世代船舶や海事イノベーションへの期待等に 会社など多岐にわたってきており、こうした状況におい ついて、お話を伺った。 て、海洋の利用拡大に対応するには、DX・AI・ロボッ ト等の新技術導入は不可欠である。 1. 造船業の再生に向けて ①百年に一度のチャンスを生かして造船業再生と海事産 2. 自動運航船等の次世代船舶に関する現在地と課題 業全体の底上げを ①自動運航船の課題は「システムの簡素化」と「センサ 昨今、特に、2025 年の米国との関税交渉以降、造船業 技術」 への注目が急速に高まり、業界全体が盛り上がっている。 自 動 運 航 船 に つ い て は、 日 本 財 団 が 推 進 し て い る 日本の海事関連団体は以前から「日本の物流・経済を支 「MEGURI2040」プロジェクト等、実証実験について えるのは海運だ」とアピールしてきたが、社会への浸透 は、我が国は世界と同水準の取組を行っている。しかし、 は十分ではなかった。英国の空軍博物館においても、島 開発関係者ではない一般の利用者が使い始めた際の想定 国として「シーレーンの確保が経済の根幹をなす」とい 外の事態への対処、すなわちシステムの簡素化と使いや う展示が子供向けになされており、こうした海事教育が すさの向上が課題として見えてきている。また、センサ 日本ではまだ弱いと感じる。今こそまさに「百年に一度 技術、特に、障害物検知の部分はまだ不十分である。障 のチャンス」であり、造船業の再生を起点として、日本 害物を回避するソフトウェアは整いつつあるが、ベース の海事産業全体への注目を高めていく絶好の機会である。 となる障害物の認知・判断が未成熟である。例えば、自 動車用 LiDAR 注 1 の検知距離は最大1 km 程度だが、全長 ②現場技能者の価値を再評価し、交渉力を持つ人材の育 400m の大型船では1 km 先の障害物を発見しても間に 成を 合わない場合もあり、船種に応じたセンサ性能の要件定 AI・ロボット技術が進展する一方で、米国では、現 義が急務である。 場技能者の価値が見直されている。修繕の際には、異音 の原因を探りながら対処するような高度な判断も求めら ②ゼロエミッション船の課題は「インフラ整備」 れ、こうした技能は AI には代替しにくい。設計やデータ ゼロエミッション船のうち電池推進船は、海外に目を 分析は AI に置き換えられても、最終的に「もの」へ関わ 向けると、ノルウェーの電動フェリー、アムステルダム る現場作業は人間が担わざるを得ない。 の運河観光船、タイの電動水上バスなど、既に当たり前 一方で、機械化できる作業は機械化すべきであり、AI の技術として普及している。この点で日本は遅れている やロボットで置き換えられる部分は積極的に置き換える と言わざるを得ない。 べきである。そのような状況の中で重要なのは、自分の ゼロエミッション船は、アンモニア・水素・LNG・バッ 技術・技能をきちんと言語化し、「自分の能力をいくら テリーなど多様な燃料が議論されているが、最大の課題 で売るか」を交渉できる力を持つことである。言われた はインフラ不足だ。電力・燃料の供給体制は寄港する全 作業をこなすだけでなく、自らの能力を分析してアピー ての港で、整っていなければ運航できないが、現状、横浜・ ルできる人材の育成が今後の課題である。 川崎・神戸港の陸電設備は規模が小さく、実用的ではな い。ノルウェーでは大容量電池(1MWh)を約 20 分で ③人口減少・海洋利用拡大の中で、DX・AI・ロボット 充電可能であり、ハンブルク港では 15MW の電力供給 導入は不可欠 体制を持っている。この点は、日本との差が歴然として 人口減少社会は変えられていない現実であり、洋上風 いる。インフラ整備については行政頼みになりがちだが、
注1 LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザー光を照射し、反射光が戻ってくる時間を基に、対象物ま での距離や形状を高精度に計測するリモートセンシング技術。
52 国土交通白書 2026 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
米国企業がスーパーチャージャー(急速充電設備)を自 社整備したように、業界自らがマーケットを創る気概が ③新技術の規制整備では、メーカーが技術の「守れる線」 を率直に示すことが前提 Ⅰ
第1章 求められる。 新技術の規制整備に当たっては、詳細な仕様規定より も、 「安全を達成するための最低限の要件(守るべき一 ③海は「波・うねり・反射」が加わり、陸上の自動運転 線) 」を示す機能要件型の規制が適切だ。センサ性能等 より技術的難易度が高い の具体的な基準については、メーカーが自社技術で保証
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 自動運航船は陸上の自動運転と比べ、技術的難易度が できる範囲を委員会等の場で明示し、それを基に規制水 格段に高い。第一に、海には車線等の目印がなく、自動 準を設定するという双方向の対話が不可欠である。第三 車のように、精緻なインフラに依拠した走行ができない。 者による認証を条件とする方法も有効だろう。 第二に、船は波で傾くためセンサ精度が大幅に低下し、 行政担当者は数年で異動してしまうため、大学・研究 自動車メーカーとの共同実験でも「船の方がよっぽど自 機関・メーカーが 5 年・10 年単位で規制・規格形成にもっ 動運転が難しい」との評価を得た。第三に、波・うねり とコミットし、エビデンスを継続的に提供する体制を整 の識別が困難であり、うねりは人間なら目視で容易に判 えることが求められる。また、規制以前の問題として、 断できるものの、センサでの識別は難しく、うねりを受 新技術には当然リスクが伴うため、社会受容性の醸成が けて転覆するリスクも高まる。第四に、陸上の構造物が 必要である。実験区域を予め明示して、リスクを承知の 海面に映り込んで物体として誤検知されるなど、海面反 上で、新たな取組を試みる社会的合意形成が求められる。 射によるセンサの誤作動も起こりうる。人間ならば直感 的に識別できる「陸上構造物の反射」を、センサが認識 4. 次世代船舶や海事イノベーションに関する将来展望 するには、まだ大きな技術的ギャップがある。 ①自動化技術が拓く、海の多様な活用~資源・エネル ギー・物流・安全保障~ 3. 次世代船舶や海事イノベーションへの期待 世界情勢の不安定化に伴い、シーレーン確保を含む海 ①担い手不足解消と海洋利用拡大に向けて、自動運航船 の安全保障もますます重要性を増している。自動化・無 の活用は必須 人化技術を活用して、人間の負担を効率的に軽減しなが 担い手不足の解消、離島・沿岸の地域活性化、新たな ら、安全と経済を守ることが求められる。 海洋利用ニーズへの対応、いずれにおいても、より少な 深海 6,000m 級での海底資源採取には自動化技術が不 い人数で安全に運航できる自動運航技術の実用化は不可 可欠であり、洋上風力で発電した電力を水素や他のエネ 欠だ。労働時間の短縮という観点からも有用である。 ルギーに船上で変換して輸送するといった活用も考えら ルール形成においては、日本が国際的プレゼンスを発 れる。また、将来的には、浮体式の洋上プラットフォー 揮する機会でもある。センサ等の要素技術の性能に関す ムとして、海上に工場・発電施設を設置し、不要になれ る標準化・規格化は、IEC(国際電気標準会議)や ISO(国 ば解体して資源としても利用できる。埋立地と異なり自 際標準化機構)で勝負が決まる。メーカーが積極的に国 然環境への影響が少なく、サステナブルな活用形態とも 際標準の取得に向けて動くべきであり、官民連携で ISO いえる。 や IEC の規格策定に関与し、その内容を IMO(国際海事 機関)の文書等に反映させていく戦略が重要である。 ②海事産業は、次世代人材が大きく活躍できる分野 海事産業はイノベーションという観点では遅れている ② AI・ドローンは幅広い海洋分野で活躍 分野で、関わる人が少ない分、次世代の人材にとっては 水中ロボット・ドローンは今や「マリタイムドローン」 チャンスが多く、研究開発や新技術へのチャレンジの余 として一体的に普及が進んでおり、海底レアアース採取、 地は非常に大きい。海流予測の面でも、黒潮の蛇行終息 洋上風力の維持管理、海底ケーブルのメンテナンス、下 を事前に予測できた研究者がほとんどいなかったよう 水道等のインフラ点検など活躍の場は広い。また、津波 に、まだ解明されていない課題が数多く残っており、科 等の被災直後に人や船が立ち入れない地域への先行調査 学者・研究者としても挑戦できる余地が十分残っている。 にも有用だ。AI は、自動運航における障害物認識におい AI・ロボティクス等の最新技術と組み合わせれば、未 て特に不可欠であり、カメラ映像から「これが船」、「こ 開拓の課題に挑む技術者・研究者として大きく活躍でき れがブイ」と識別する作業は、人間以外では AI にしかで る。人が少ない分野だからこそ、一人ひとりの貢献が大 きない。漁業分野においても、捕獲可能サイズや魚の健 きく、やりがいも大きい産業と感じている。 康状態の判定、養殖データの収集・分析による効率化な ど、海での AI 活用の余地は大きく残っている。
国土交通白書 2026 53 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
Ⅰ 3 経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラに対する国民・事業者の意識 我が国の経済成長を牽引する観点から、ハード・ソフトのインフラの整備・運営の方向性を検討す 第1章
るにあたり、国民意識調査に加え、事業者アンケートを実施した注 5。ここでは、その結果を示し、イ ンフラへの満足度や期待する方向性等について紹介していく。 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
(1)インフラの満足度と地域経済に対する貢献への理解度 (インフラの満足度と地域経済に対する貢献への理解度(国民意識調査)) 国土交通省「国民意識調査」において、お住まいの地域におけるインフラの整備状況の満足度注 6 に ついてたずねたところ、満足( 「満足」及び「やや満足」)と回答した人が約5割と、不満(「不満」 及び「やや不満」)と回答した人の約2倍となっており、現在の整備水準は、日常生活を送る上で、 概ね満足と捉えられていることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-2-3 お住まいの地域のインフラの整備状況の満足度
満足 やや満足 どちらでもない やや不満 不満
16.0 32.4 27.6 15.8 8.2
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
また、インフラの整備が、地域経済の発展にどの程度貢献しているかをたずねたところ、「非常に 貢献している」及び「貢献している」と回答した人が約6割となっており、インフラの整備が地域経 済へ貢献していることは、概ね実感されていることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-2-4 インフラの整備に関する地域経済への貢献
非常に貢献している 貢献している どちらとも言えない あまり貢献していない 全く貢献していない
17.1 42.1 29.6 7.1 4.0
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
注5 国民意識調査と事業者アンケートの詳細については、第1章第1節 P22 の脚注参照。 注6 ここでは、インフラ全般(道路、鉄道(新幹線、地下鉄を含む) 、地域公共交通(バス・タクシー)、空港、港湾、河川・ ダム、上下水道、公園等)の整備状況に対する満足度をたずねている。
54 国土交通白書 2026 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
(インフラの満足度と地域経済に対する貢献への理解度(事業者アンケート)) 一方、国土交通省「事業者アンケート」において、インフラの整備状況の満足度についてたずねた Ⅰ ところ、満足( 「満足」及び「やや満足」)と回答した事業者が約3割と、「国民意識調査」と比較し
第1章 て約2割低い結果となり、日々事業活動を行う事業者にとって、その満足度は比較的低いことがうか がえる。
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 図表Ⅰ-1-2-5 事業所のある地域(海外除く)のインフラの整備状況の満足度
満足 やや満足 どちらでもない やや不満 不満
8.6 23.8 26.2 29.8 11.6
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
また、同じく事業者に対して、インフラの整備が、地域経済の発展にどの程度貢献しているかをた ずねたところ、 「非常に貢献している」及び「貢献している」との回答が、8割を超えており、イン フラの地域経済への貢献は、日々事業活動を行う事業者に、幅広く実感されていることがうかがえ る。
図表Ⅰ-1-2-6 インフラの整備に関する地域経済への貢献
非常に貢献している 貢献している どちらとも言えない あまり貢献していない 全く貢献していない
42.5 40.8 12.2 3.9 0.6
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
(2)事業者が重要と考える施策、期待する施策 (生産性向上のために重要と考える施策(事業者アンケート)) 国土交通省「事業者アンケート」において、今後、事業活動を行う上で、インフラに関して、生産 性向上のために重要と考える施策は何かをたずねたところ、「生産性が高い基幹インフラ等の拡充・ 強化」と「老朽化インフラの更新に合わせた経済的価値創出」が高くなっている。生産性を向上させ るために、インフラへの積極的な投資や、老朽化対策を契機とした更新等が求められていることがう かがえる。
国土交通白書 2026 55 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
Ⅰ 図表Ⅰ-1-2-7 インフラに関して生産性向上のために重要と考える施策
生産性が高い基幹インフラ等の拡充・強化 老朽化インフラの更新に合わせた経済的価値創出 第1章
交通状況の見える化と料金施策による渋滞緩和 自動運転技術を活用した人流・物流需要の取込 民間投資の呼び込みと規制(地区計画) の見直し AI・ロボットの活用による生産性の向上 フロンティア領域(深海・宇宙など)の技術開発 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
32.5 27.0 14.5 10.7 9.9 4.8 0.5
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
(整備・強化を期待する物流インフラ(事業者アンケート)) 国土交通省「事業者アンケート」において、今後、物流効率化のために、特に整備・強化を期待す る物流インフラについてたずねたところ、「高速道路網の整備・拡充」と回答した事業者の割合が最 も高くなっている。いわゆる「2024 年問題」で貴重な労働時間の価値も一層高まる中、移動時間の 短縮に資する物流ネットワークの整備・拡充が求められていることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-2-8 今後、物流効率化のために特に整備・強化を期待する物流インフラ
高速道路網の整備・拡充 デジタル・情報通信インフラ(運行管理システム、情報連携プラットフォームなど)の整備 共同配送拠点や物流センターの整備 港湾・空港の機能強化(コンテナターミナルの拡張、自動化など) 鉄道輸送の活用促進 スマートICの設置 休憩施設(サービスエリア等)の拡充 物流倉庫等の自動化 特にない
34.0 15.6 12.5 11.2 8.2 5.0 4.8 3.3 5.5
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
56 国土交通白書 2026 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
(物流インフラの整備による期待(事業者アンケート)) また、国土交通省「事業者アンケート」において、物流インフラの整備によって、どのような物流 Ⅰ 効率化を期待するかをたずねたところ、「トラックドライバーの労働時間短縮・負担軽減」と回答し
第1章 た事業者の割合が最も高くなっている。物流インフラの整備は、単に利便性の向上だけでなく、ト ラックドライバーの担い手不足や長時間労働といった、物流を取り巻く構造的課題への対応として期 待されていることがうかがえる。
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 図表Ⅰ-1-2-9 物流インフラの整備によって、期待される物流効率化
トラックドライバーの労働時間短縮・負担軽減 輸送コストの削減 輸送リードタイムの短縮 サプライチェーン全体の安定化・強靱化 環境負荷(CO2排出量)の低減 積載効率の向上 その他
29. 1 27. 6 20. 0 12. 6 4. 6 4. 3 1.8
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
(3)公共投資に対する国民意識 (公共投資において、特に優先して取り組むべきと考える課題(国民意識調査)) 国土交通省「国民意識調査」において、国や自治体による公共投資(インフラの整備・管理)にお ける特に優先して取り組むべき課題をたずねたところ、「老朽化対策・維持管理」と回答した人の割 合が最も高くなっている。本調査結果からは、特に、既存インフラについて、将来にわたり安全に使 い続けられるかどうかについて、多くの国民が不安を抱いていることがうかがえる。
図表Ⅰ-1-2-10 公共投資において、優先して取り組むべき課題
老朽化対策・維持管理 44.8
自然災害に対する強靱化(防災・減災) 14.0
財源の確保 12.9
新たなインフラの建設 11.0
ICT(情報通信技術)を活用したETCや自動運転等の導入 9.2
持続可能性(グリーンインフラなど)の考慮 7.4
その他 0.7
0 20 40 60 (%) ※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
国土交通白書 2026 57 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
(公共投資において、行政側の視点として重要だと思うもの(国民意識調査)) Ⅰ 同じく、国や自治体による公共投資において、行政側の視点として重要だと思うものは何かをたず ねたところ、 「公共施設の整備から管理・除却までの全体でコストを意識する(ライフサイクルコス 第1章
ト)」と回答した人の割合が高くなっており、限られた財源の中で、建設時のコストだけでなく、維 持管理・除却に至るまでのコストの最適化が求められていることがうかがえる。 ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題
図表Ⅰ-1-2-11 公共投資において、行政側の視点として重要だと思うもの
公共施設の整備から管理・除却までの全体でコストを意識する 47.9 (ライフサイクルコスト)
住民や民間企業など多様な主体と連携する(官民連携) 38.7
データを活用し、交通の円滑化を図る(運用の見える化) 31.7
赤字施設の早期撤退と機能転換を行う(省インフラ) 25.8
AIを活用した公共施設の効率的な運用を行う(新技術の活用) 25.4
その他 1.1
0 20 40 60 (%) ※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(複数回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
(4)公共投資に対する事業者意識 (公共投資において、特に優先して取り組むべきと考える課題(事業者アンケート)) 事業者に対して、国や自治体による公共投資において、特に優先して取り組むべき課題をたずねた ところ、 「老朽化対策・維持管理」と回答した事業者の割合が高くなっている。本アンケート結果か らは、事業活動を行う上で、特に、既存インフラの老朽化に関して多くの事業者が不安を抱いている ことがうかがえる。
図表Ⅰ-1-2-12 公共投資において、優先して取り組むべき課題
老朽化対策・維持管理 70.7
自然災害に対する強靱化(防災・減災) 40.9
新たなインフラの建設 23.2
財源の確保 19.2
ICT(情報通信技術)を活用したETCや自動運転等の導入 17.7
持続可能性(グリーンインフラなど)の考慮 14.3
その他 1.4
0 20 40 60 80 100 (%) ※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(複数回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
58 国土交通白書 2026 第2節 インフラを取り巻く政策と国民意識
(公共投資において、行政側の視点として重要だと思うもの(事業者アンケート)) また、事業者に対して、行政側の視点として重要だと思うものをたずねたところ、「公共施設の整 Ⅰ 備から管理・除却までの全体でコストを意識する(ライフサイクルコスト)」ことや「住民や民間企
第1章 業など多様な主体と連携する(官民連携)」ことを挙げる事業者の割合が高くなっている。「国民意識 調査」でも高い結果となったライフサイクルコストの最適化に加えて、多様な主体と連携する官民連 携をより一層推進することが期待されていることがうかがえる。
ハード・ソフトのインフラの生産性向上に関する現状と課題 図表Ⅰ-1-2-13 公共投資において、行政側の視点として重要だと思うもの
公共施設の整備から管理・除却までの全体でコストを意識 46.9 する(ライフサイクルコスト)
住民や民間企業など多様な主体と連携する(官民連携) 45.5
データを活用し、交通の円滑化を図る(運用の見える化) 31.3
AIを活用した公共施設の効率的な運用を行う(新技術の活用) 23.2
赤字の公共施設の撤退と機能転換を行う(省インフラ) 21.3
その他 1.6
0 20 40 60 (%) ※回答者総数:事業者 1,163 社(製造業、建設業、運輸業、観光業等)。グラフは回答者の比率(複数回答)を示している。 資料)国土交通省「事業者アンケート」
国土交通白書 2026 59 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Ⅰ 第 2章 国土交通分野における取組と 今後の展望 第2章
生産性の向上効果をいかに発揮し、新たな価値を創出するかの観点から、経済成長を牽引するハー ド・ソフトのインフラに関する取組について整理し、国民生活が豊かになる未来を展望する。 国土交通分野における取組と今後の展望
第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組 我が国のハード・ソフトのインフラは、国民生活や社会経済活動を支える基盤であり、経済・生 活・防災等の面で様々な効果を長期にわたって発揮してきている。また、インフラの老朽化が加速度 的に進んでおり、インフラの機能低下が懸念される中、的確な維持管理や更新の重要性が増してい る。さらに、近年、AI や自動運転技術等、新たな技術が急速に進展してきており、これらを効果的 に活用することが求められている。
1 成長を加速させるハード・ソフトのインフラへの新規投資 速達性と輸送の効率性は、経済成長を牽引する上で必要不可欠であるが、高規格道路網には未だ未 整備区間が残っている。また、人流・物流の拠点となる空港・港湾については、アジア諸国の中で、 その地位や国際競争力が相対的に低下したとの指摘がある。 我が国には、成長のボトルネック解消に向けて、生産性向上を支える強靱で効率的な人流・物流 ネットワークの整備に向けたインフラへの投資が重要である。
(1)基幹インフラの拡充・強化 我が国では、経済成長を牽引する基幹インフラへの投資が現在も進められている。新幹線等の基幹 インフラの整備は、地域間・都市間の連結を強化し、大きな経済効果をもたらす。また、空港や港湾 については、国際競争力の強化に向けた機能強化の動きも見られる。
①広域経済圏を形成するリニア中央新幹線の整備 リニア中央新幹線は、新たな新幹線ネットワークとして、「全国新幹線鉄道整備法」に基づき計画 されており、東京を起点、大阪を終点とする新幹線鉄道である。最高速度は 505km/h であり、従来 の新幹線と比べて移動時間が大幅に短縮される。現在は品川〜名古屋間の工事が進行している。
図表Ⅰ-2-1-1 リニア中央新幹線の路線図
資料)国土交通省
60 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(整備による広域経済圏の形成) リニア中央新幹線の開業により、品川~大阪間の移動が約1時間で結ばれる。これにより、これま でにない一体的な広域経済圏が形成され、生産性の向上や観光・消費の拡大をもたらすことで、地域 活性化や国際競争力の強化につながることが期待される。 Ⅰ
Column
第2章 コラム リニアのある明るい未来へ、工事進行中(東海旅客鉄道㈱)
国土交通分野における取組と今後の展望 リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)は、神奈川県相 とリニア開業へ向けた機運醸成を目的とした取組を行っ あいはら 模原市の旧相原高校跡地にて建設中であり、その規模の ている。 大きさから地域の注目を集めている。開業すれば名古屋 工事ヤードの一部を「さがみはらリニアひろば」とし 駅まで約 60 分、品川駅まで約 10 分で移動が可能になり、 て定期的に一般に開放し、現場の見える化を図る取組だ 人や企業の集積による広域交流拠点の形成が期待される。 けでなく、近隣に住む小学生の見学会や広大な工事現場 同駅は延長約 680m、深さ約 30m に及ぶ巨大な地下 を活かした「さがみはらリニアフェスタ 2025」等のイ 構造物でありホーム2面、線路4線を備える予定である。 ベントも実施している。 また、駅より西側を掘り進める直径約 14m のシールド このような取組を通じて、同社は将来、同駅を利用す マシンが 2026 年2月に完成した。 ると見込まれる地域住民へ向けて、 「リニアのある明る 事業主体の東海旅客鉄道㈱(以下、 「JR 東海」)は、工 い未来」を提示している。 事を進める上で、工事ヤード周辺の地域住民の理解促進
<シールドマシン> <さがみはらリニアフェスタ2025の様子>
資料)東海旅客鉄道㈱(JR 東海)
国土交通白書 2026 61 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
②産業発展・観光立国に資する整備新幹線 整備新幹線は、「全国新幹線鉄道整備法」に基づき、1973 年に整備計画が定められた、北海道新 幹線、東北新幹線、北陸新幹線、九州新幹線(鹿児島ルート)、九州新幹線(長崎ルート)の五つの Ⅰ 路線のことであり、順次整備が進められてきた。 整備新幹線は、地域間の移動時間を大幅に短縮させ、地域相互の交流を促進し、我が国の産業の発 第2章
展や観光立国の推進等に対し、大きな役割を果たしてきた。近年では、巨大災害リスクの切迫など、 整備開始当初には考えられていなかった課題への対応としての役割も与えられている。 現在は、北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)、北陸新幹線(敦賀・新大阪間)、九州新幹線(新鳥 国土交通分野における取組と今後の展望
栖・武雄温泉間)の整備に向けた取組を進めている。
Column 整備新幹線の開業効果 コラム
整備新幹線は、まちづくりの進展や人流の活発化、地 など、駅周辺のまちづくりが進められている。 域の活性化など、様々な開業効果をもたらす。 また、2024 年3月に開業した北陸新幹線(金沢・敦 2022 年9月に開業した九州新幹線(武雄温泉・長崎 賀間)の沿線においても、観光客の増加や民間投資の拡 間)の沿線では、その開業に合わせて、まちづくりが進 大などが見られる。福井県内各駅周辺の県外来訪者数が められている。長崎駅周辺では、新幹線開業に合わせて、 新幹線開業前と比較して年間で 15%程度増加している MICE 施設や外資系ホテル等が開業しており、「100 年 ほか、福井県立恐竜博物館等の主要観光地の来訪者も増 に一度の大変革」として、駅周辺の整備が行われている。 加している。また、宿泊施設の整備など民間投資の拡大 その他の沿線各駅においても、商業施設やホテルの開業 の動きも見られる。
<整備が進む長崎駅前> <観光客で賑わう福井県立恐竜博物館>
資料)長崎市 資料)福井県
③国土をシームレスにつなぐ高規格道路ネットワーク 新たな道路ネットワークの整備は、渋滞緩和による移動時間の短縮や輸送コストの低減といった便 益をもたらし、経済成長に寄与することが期待される。 今後、貨物取扱量の増加が想定されるコンテナ港湾の周辺でも、物流の効率化に向けた新たな道路 ネットワークの整備が求められている。例えば、国際的なコンテナ港湾を有する神戸市では、高規格 道路の新設により、コンテナ港湾などの物流拠点への定時性を確保する取組が進められている。
62 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column つながる街、広がる未来、 「大阪湾岸道路西伸部」 コラム (近畿地方整備局、阪神高速道路㈱) Ⅰ 大阪湾岸道路は、大阪湾沿岸地域の既存幹線道路の交 共同で早期開通に向けて事業を進めている。
第2章 通負荷を軽減し、都市環境の改善を図るとともに、大 本事業の整備により、渋滞損失時間が多い阪神高速3 阪湾沿岸諸都市を有機的に連絡して、都市の活力向上に 号神戸線(西宮 JCT ~第二神明接続部)の交通が転換 資することを目的として、神戸淡路鳴門自動車道(垂水 され、混雑の緩和が図られるとともに、国際コンテナ戦 JCT)から関西国際空港(りんくう JCT)までを結ぶ、 略港湾注 1(阪神港)等の物流拠点への定時性が確保され
国土交通分野における取組と今後の展望 延長約 80km の自動車専用道路である。 るなど、物流の効率化が期待される。また、阪神高速3 この大阪湾岸道路の一部として延長 14.5km の大阪湾 号神戸線の老朽化に伴う更新事業や事故発生時の一般道 岸道路西伸部(六甲アイランド北~駒栄)が 2016 年度 への交通集中が緩和されるなどの代替路が確保される。 に事業化された。 さらに、高潮や津波の影響を受けない高規格道路ネット この大阪湾岸道路西伸部が接続するポートアイランド ワークが構築され、陸・海・空の防災施設が機能を発揮し、 は、世界的にも珍しく空港と港が近接しており、神戸空 災害時の交通が確保される。 港では 2025 年から国際チャーター便の運航が開始され 六甲アイランドとポートアイランド間の海上部には、 た。また、神戸医療産業都市として、研究機関や高度専 世界最大級の斜張橋が架かる計画となっており、「みな 門病院等が集積しており、経済の観点からも高いポテン と神戸」にふさわしい、世界に誇れる景観が創出され、 シャルを有している。大阪湾岸道路西伸部は浪速国道事 観光都市としての魅力向上にも寄与することから、地域 務所、神戸港湾事務所、阪神高速道路㈱が連携し、三者 住民からも大きな期待が寄せられている。
<事業概要図> <海上部長大橋(六甲アイランド~ポートアイランド間) 完成イメージ>
完成イメージの構造、デザイン、色彩は現時点での計画であり、 今後変更される可能性がある。 資料)近畿地方整備局浪速国道事務所・神戸港湾事務所、阪神高速道路㈱
注1 国 際コンテナ港湾の競争力強化を目的に、2010 年8月に京浜港(東京・横浜・川崎) 、阪神港(大阪・神戸)を選定。
④国際競争力向上に資する空港・港湾の機能強化 インバウンド獲得の国際競争が激しさを増す中で、我が国では、 「観光立国推進基本計画(第5次)」 (2026 年3月 27 日閣議決定)において、2030 年にインバウンド 6,000 万人、インバウンド消費額 15 兆円を目標に掲げており、今後も増加が見込まれるインバウンド需要に十分応えられるよう空港・ 港湾のキャパシティの拡大など、国際競争力強化に向けた機能強化の取組が進められている。
(空港の機能強化) 我が国の国際航空市場は、インバウンドの増加を追い風に成長を続けてきており、成田国際空港で は、2030 年代初頭から 2040 年代後半には年間発着回数 50 万回、年間旅客数は 7,500 万人に達する と予測されている中で、今後も増大する旅客数や貨物取扱量の需要増への対応が喫緊の課題となって
国土交通白書 2026 63 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
いる。そこで、空港における人流・物流の処理能力向上に向けた空港機能の強化が進められている。
Ⅰ Column コラム 北東アジアの国際ハブ空港として世界との連結性の強化へ!(成田国際空港㈱) 第2章
成田国際空港(以下、「成田空港」)は、我が国最大の いる。 インバウンドのゲートウェイ注 1・我が国最大の貿易港注 2 さらに、この成田空港の更なる機能強化に対応し、圏 であり、東京国際空港(以下、「羽田空港」)とともに首 央道や北千葉道路など成田空港と都内とのアクセス、成 国土交通分野における取組と今後の展望
都圏空港として、我が国の経済成長及び地域の発展を牽 田空港と羽田空港との間の連携強化を考慮した広域道路 引している。一方で、インバウンドの受入れ拡大、国際 ネットワーク整備の検討も進められている。 物流ネットワーク構築や我が国の国際競争力の強化の観 空港周辺では、国際的な産業拠点の形成などエアポー 点からは、世界の主要都市に所在する国際空港と比較し トシティの実現を図るため、成田国際空港㈱と千葉県が て遜色ない処理能力を備えることが重要であり、首都圏 2025 年4月に NRT エリアデザインセンターを設立し、 空港で年間発着容量 100 万回を目指している。 空港周辺地域が目指すべき方向性を検討するための議論 このため、成田空港においては、C 滑走路(3,500m) の出発点として「SORATO NRT(ソラト ナリタ)エア の新設及び B 滑走路の延伸(2,500m から 3,500m へ) ポートシティ構想」を策定している。これを呼び水に、 を行う「更なる機能強化」が進められており、これによ 関係者との議論の活発化、具体的な施策・事業につなげ り年間発着容量を現在の 34 万回から 50 万回への拡大を るための取組を推進することとしている。 目指している。 成田空港の更なる機能強化によって、航空旅客数は年 また、この「更なる機能強化」に加え、今後の旅客需 間約 7,500 万人、貨物取扱量は年間約 300 万トン、空 要に対応するための集約型ワンターミナルを目指した 港内従業員数は約7万人規模に達する。経済波及効果と 旅客ターミナルの整備や、航空貨物需要の増加に対応す しては、全国で約 10 兆 4,160 億円、空港周辺9市町に るための新たな貨物地区の整備に向けた検討を進めてい おいては約2兆 5,478 億円の効果 注 3 が見込まれている る。加えて、鉄道による輸送力増強・利便性向上を図る が、上記で紹介したように、当該事業は単なる空港の拡 ため、成田空港周辺に存する単線区間の複線化や、東京 張事業にとどまらず、関連するプロジェクトの起点にも 都心や新幹線・リニア駅や羽田空港といった地方送客拠 なっている事業であり、実現に向けて着実に歩みを進め 点へのアクセス強化など空港への鉄道アクセスの機能強 ていく必要がある。 化についても、関係機関による検討・調整が進められて <機能強化の概要図>
資料)成田国際空港㈱
注1 法務省 出入国在留管理庁「出入国管理統計」2024 年(年次)。 注2 財務省 貿易統計における「積卸港別貿易額」令和 6 年。 注3 千葉県「成田空港の更なる機能強化と成田空港周辺地域づくりに関する実施プラン(2024 年9月改訂) 」。
64 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(港湾の機能強化) 増大する国内・海外の物流ニーズを安定的に支えるため、海上輸送網の拠点である港湾の機能強化 が進められている。これにより、周辺への産業集積が促進され、地域の雇用と経済を支え、ひいては 国際競争力の向上につながる。例えば、国際物流ターミナルの岸壁や防波堤等の整備によって、工場 Ⅰ やコンビナートの新規立地など民間投資の誘発効果が生まれる。
第2章 図表Ⅰ-2-1-2 港湾整備の効果
舞鶴港 国際物流ターミナル 国際物流ターミナルの整備 敦賀港 国際物流ターミナルの整備 釧路港 国際物流ターミナルの整備
国土交通分野における取組と今後の展望 飼料工場 岸壁(-12m) 約808億円(H1~R17) 約506億円(H8~R3) サイロ 約178億円(H26~H30) 航路・泊地(-14m) 国際物流 防波堤(北) ターミナル 岸壁(-14m)
加工食品工場の増設等 工業用フィルム等製造工場の増設等 飼料工場の新規立地等 岸壁(-14m) 投資額:約1,091億円 バイオマス 国際物流 ターミナル 投資額:約1,196億円 投資額:約187億円 発電所 (H21~R8) (H22~R9) 泊地(-14m) (H27~R6) 和田地区 加工食品工場 雇用創出:約240人 工業用フィルム等 製造工場 雇用創出:約180人 航路・泊地(-14m) 岸壁(-14m) 雇用創出:約50人
水島港 国際物流ターミナル 国際物流ターミナルの整備 小名浜港 国際物流ターミナルの整備 航路(-19m) (防波堤事業に関するものを除く) 約553億円(H29~R15) 東港地区 岸壁(-12m)(耐震) 岸壁(-18m,-16m)(耐震) 約883億円(H20~R2) 航路・泊地(-12m)等 航路(-18m)
岸壁(-14m) 食料コンビナートの新規立地等 最新鋭の石炭火力発電所の建設
食料コンビナート 投資額:約5,384億円 投資額:約3,000億円超 護岸 航路・泊地(-18m) (H29~R3) 航路(-12m) (H31~R10) 雇用創出:約270人 航路・泊地(-16m) 雇用創出:約2,000人 航路・泊地(-14m)等 泊地(-16m) (一日当たりの最大雇用人数)
熊本港 岸壁、防波堤等の整備 茨城港 国際海上コンテナターミナル 岸壁、防波堤等の整備 約354億円(H1~R13) 岸壁(-10m, 約1,493億円(H4~R17) 防波堤(東) 半導体関連企業 -12m,-14m) 波除堤(中央) 岸壁(-14m)(耐震) 半導体関連企業の新規立地等 国際物流ターミナル 建機工場の新規立地等 岸壁(-7.5m)(耐震) 岸壁(-7.5m) 投資額:約4兆3,560億円 岸壁(-12m) 投資額:約3,180億円 航路 (-7.5m) 泊地 (-7.5m) (R3~R10) 須崎港 防波堤の整備 火力発電所 (H18~R7) 防波堤(南) 雇用創出:約5,200人 約472億円(S58~H25) 建機工場 雇用創出:約2,700人 セメント工場 中城湾港 国際物流ターミナルの整備 清水港 国際海上コンテナターミナルの整備 自動車部品 新港地区 約203億円(H4~R11) シリコン工場 セメント工場の設備投資等 加工工場 約258億円(H20~H30) 西防波堤 投資額:約653億円 東防波堤 物流施設 物流倉庫 (H16~R5) 岸壁(-11m) 岸壁(-11m) 物流倉庫の新規立地等 雇用創出:約190人 岸壁(-15m) (耐震) 泊地 (-15m) 産業用ロボット生産工場の新規立地等 (耐震) 投資額:約335億円 2025年6月現在。港湾整備に対応した民間投資と新規雇用の例を記載(なお、主に公表情報 産業用ロボット 投資額:約747億円 生産工場 泊地(-11m) バイオマス発電所 (H29~R5) を元に記載しているため、計上されていない民間投資額、雇用人数もある。一部、将来分を含 防波堤 (H26~R8) む)。港湾管理者資料、新聞報道等より国土交通省港湾局作成。 国際海上コンテナ 建設資材工場 雇用創出:約170人 主要施設のみ記載しているため、整備費には記載していない施設の整備費も含まれる。 ターミナル 雇用創出:約580人
資料)国土交通省
(クルーズ船受入環境の整備) 我が国は、2030 年までに外国クルーズ船等の寄港回数 3,000 回を目標として掲げており、達成す るためには大型船の停泊に対応した岸壁改良やクルーズターミナル等の受入施設の整備を進めるな ど、受入環境の整備が重要である。
国土交通省は、2025 年3月に「クルーズ 図表Ⅰ-2-1-3 鹿児島港に寄港する大型クルーズ船 旅客の受入機能高度化に関するガイドライ ン」注 1 を策定しており、クルーズ旅客の利便 性や安全性の向上を推進している。 鹿児島港では、東アジアを周遊するクルー ズ船の寄港増加及び大型クルーズ船(22 万 トン級)の寄港に対応するため、港湾施設を 整備し、国際競争力、観光交流、広域・地 域間連携等の確保・強化を促進している。 今後も全国の港湾で、大型化するクルー 資料)国土交通省 全長:315.83m
注1 2026 年 3 月改訂。
国土交通白書 2026 65 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
ズ船等の受入環境を整備することにより、クルーズ市場の拡大を推進し、寄港地域の観光消費拡大を 目指すこととしている。
Ⅰ (2)成長産業を支えるインフラ 半導体関連等の成長産業の拠点が集積しつつある地域では、企業立地の促進や既存拠点の強化を目 第2章
的に、周辺の道路や上下水道等のインフラ整備が進められている。また、AI や DX 等の進展に伴い、 データセンターの需要が高まりを見せており、インフラ側(建設、電力、設備)の充実も求められて いる。 国土交通分野における取組と今後の展望
①地域経済の核となる半導体産業を支えるインフラ整備 半導体関連企業の大規模な工場等が立地される場合、多くの従業員・関係者の出入りや、材料・製 品の運搬に道路は必要不可欠である。また、半導体工場では、各工程で洗浄を行うため、大量の水が 使用されることから、下水道等のインフラ整備も重要となる。 熊本県では、大型の半導体工場(JASM 社注 2)の進出を契機に関連企業が集積しており、産業の更 なる成長を支えるインフラ整備が推進されている。
図表Ⅰ-2-1-4 熊本県におけるインフラ整備
( ) 世界最大手半導体メーカー 投資額 約3兆3,750億円 (第一工場・第二工場) 新規雇用者数 約3,400人以上予定 ※投資額:R6.2.24時点、新規雇用者数:R6.7.4時点
おおづにし 大津西IC(仮称)
(至)大分県
注2 J apan Advanced Semiconductor Manufacturing ㈱ (JASM社) は、台湾企業の Taiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC社)と国内企業が出資し、熊本県に設立した半導体製造会社。2024 年に第一工場が稼働、 2027 年に第二工場の稼働を予定。
66 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column コラム 世界の半導体拠点に向けたインフラ整備(九州地方整備局、熊本県) Ⅰ 熊本県の中心部は、加藤清正公が築城した熊本城を中 約 120km の高規格道路であり、大分県・熊本県間の広
第2章 心に城下町が発展した経緯があり、敵の侵入を防ぐため、 域交通ネットワークを形成するとともに、沿線地域の産 あえて見通しづらい曲がりくねった道を整備しており、 業発展や防災機能の向上等を目的とした事業である。全 注1 この名残が現在の県内の渋滞問題 につながっていると 線の開通によって、大分市・熊本市間の移動時間が 95 の説もある。 分短縮されると見込まれており、移動時間の短縮や走行
国土交通分野における取組と今後の展望 このような中で、従来から県内では渋滞解消に向けた 経費の削減、事故の減少により 50 年間で約 1.2 兆円の 道路整備が施されてきたが、半導体企業(JASM 社)の 投資効果が得られると推計されている。また、トマトな 大型工場の立地、また、それに伴う関連企業の集積によ ど農産品の販路拡大や九州唯一の製油所がある大分県か り、更なる交通量の増加が見込まれており、経済活動を らのガソリン輸送の時間短縮など、物流効率化も見込ま 停滞させないためにも渋滞対策は喫緊の課題である。 れる。 現在、整備中の大津熊本道路区間は、半導体企業が集 ●中九州横断道路の整備 積している菊陽町に隣接していることもあり、地域経済 中九州横断道路は、大分市から熊本市に至る計画延長 を支えるインフラとして大きな期待が寄せられている。
<概要図>
資料)国土交通省
注1 熊本市の主要渋滞箇所数及び自動車の平均速度はともに三大都市圏を除く政令指定都市で全国ワースト1位。
国土交通白書 2026 67 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
●熊本県の取組 いる。半導体工場では、製造工程において多くの水を使 熊本県でも、JASM 等が立地するセミコンテクノパー 用するため、使用後の排水を処理するインフラが必要で ク周辺(合志市、菊陽町、大津町)における県道等のイ あり、JASM 第二工場の量産開始に伴い、将来的に既存
Ⅰ ンフラ整備を推進している。JASM 社の進出により、新 注2 の下水処理場の容量不足が見込まれることから、現在、 たに 3,400 人の雇用 が予定されており、また、半導体 新たな下水処理場の整備を進めている。 第2章
関連企業等の集積による周辺道路の渋滞が一層深刻化す <大津植木線多車線化工事の様子> ることが懸念されている。 同県は、「熊本県渋滞解消推進本部」を設置し、道路 施策と公共交通施策を両輪に、セミコンテクノパーク周 国土交通分野における取組と今後の展望
辺を含む、熊本都市圏の渋滞対策に取り組んでいる。 抜本的な渋滞解消に向けて同県は、半導体関連企業が 集積するセミコンテクノパークの南側を通る大津植木線 の多車線化及び中九州横断道路の合志 IC(仮称)に接続 するアクセス道路などの整備を進めている。 大津植木線の多車線化は、交差部3か所を立体交差に するとともに、6車線化も可能な幅員で施工しており、 資料)熊本県 将来的な交通需要増への対応も視野に入れている。大津 植木線の多車線化により、東西への移動の利便性を向上 一連の取組は、半導体等の成長産業の経済活動を支え させる。また、合志 IC(仮称)へのアクセス道路は南北 ており、更には今後の企業立地や設備投資の促進にもつ の移動の円滑化に資する道路であり、企業集積地から中 ながっている。既に周辺では、企業集積の効果として、 九州横断道路へのアクセス性の向上が見込まれ、人流の 税収の増加や地価の上昇が見られており、今後も企業立 円滑化や物流の効率化が期待される。 地に伴うインフラ整備が、経済成長に貢献していくこと さらに、同県は、道路以外のインフラの整備も進めて とされている。
注2 第一工場・第二工場合わせた雇用予定者数。
②地域産業の市場拡大に向けた広域ネットワーク 北海道では、我が国の食料安全保障問題の深刻化、エネルギー・食料品や原材料等の価格高騰、 2050 年カーボンニュートラル実現に向けた取組の一層の加速等、内外の課題に直面している中、次 世代半導体関連産業や大規模データセンター等の進出・集積が始まっている。北海道の基幹産業であ る食や観光だけでなく、これらの産業に係る人流・物流を支え、物流効率化や生活環境の向上に資す る広域ネットワークを構築するため、高規格道路や空港・港湾施設の整備等を進めている。
68 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column コラム 北海道の多様な産業発展を牽引するインフラの整備(北海道開発局) Ⅰ 北海道では、豊富な再生可能エネルギーを活用した 数は増加 (2011 年~ 2024 年で約 80 社増) を続けている。
第2章 注1 GX 関連産業、次世代半導体製造工場(ラピダス社 )の また、「道央圏連絡道路」は、ラピダス社の工場が存 千歳市への進出を契機とした半導体・デジタル産業、豊 する千歳市や、GX 関連産業の集積が進む苫小牧市や石 富な脱炭素電源を活用した AI データセンター、地理的優 狩市等、優れた住・教育環境を有する自治体を経由して 位性を活かした宇宙関連産業等が道内全域に進出・展開 おり、良好な住環境の提供、通勤範囲の拡大等を通じて
国土交通分野における取組と今後の展望 されており、これらの成長産業に関する物流効率化や生 従業者の確保にも貢献することが期待される。さらに、 活環境の向上に資するインフラの整備等を推進している。 道内で生産された野菜や魚介類を出荷している苫小牧港 一例として、国際的な交流・物流拠点として人流・ 東港区では「複合一貫輸送ターミナル整備注 2」も進めら 物流を支える新千歳空港、苫小牧港、石狩湾新港と、札 れており、陸上輸送と海上輸送の連携により、更なる物 幌を中心とする道央地域を半円状で結ぶ延長約 80km の 流の効率化が期待できる。 高規格道路である「道央圏連絡道路」は、現在整備中の 次世代半導体製造工場の本格稼働も控える中、北海道 なんぽろ 長沼町から南幌町間を除いた約8割の区間が開通してお の持続的な成長を牽引する上で、道路・空港・港湾等に り、沿線自治体の工業団地から苫小牧港や石狩湾新港へ より形成される広域ネットワークが果たしていく役割は の所要時間の短縮が見られるといった交流・物流拠点へ 一層重要となっている。 のアクセス性が向上し、沿線自治体の工場団地の立地件
<北海道内の成長産業の形成> <道央圏の成長産業を支えるインフラ整備>
資料)国土交通省
注1 国内主要企業が出資して 2022 年に設立され、日本政府が計画的・戦略的な支援を実施している半導体メーカー。 注2 複合一貫輸送とは、船舶・鉄道・トラック等の種類の異なる二つ以上の輸送手段を用いて、単一運送人の一元的 な管理の下で輸送する運送形態のこと。
③成長産業の電力需要を支えるインフラ整備 AI や自動運転等の普及により、今後、多くの産業でデータ処理量が急増することが予想されてお り、大量のデータを安全・確実に処理・保存するための施設としてデータセンターの役割は、更に重 要となる。 どうどう データセンターには、多くの電力を供給する必要があり、例えば、洞道と呼ばれる電力ケーブルを 収容するトンネルのような電力輸送を支えるインフラの整備によって、データセンターの能力を最大
国土交通白書 2026 69 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
限引き出すことが可能になり、生産力の強化を実現した取組が見られる。
Ⅰ Column コラム AI 時代を見据えた電力供給網を支えるインフラ技術(東京電力パワーグリッド㈱) 第2章
千葉県印西市は、東京都心から約 40km に位置し、強 することで、平均掘進速度 67 ミリ / 分(通常 30 ミリ / 固な地盤による災害リスクの低さ、成田国際空港へのア 分) 、月進 663m/ 月(通常 200m/ 月)を達成するなど、 国土交通分野における取組と今後の展望
クセスの良さ、充実した電力供給網や通信インフラ等、 工期の短縮を実現させた。これらの取組により、3年3ヶ データセンターの立地における好条件を有し、国内外の 月で施工が完了し、千葉印西変電所は予定どおり 2024 IT 企業による大規模データセンターの一大集積地となっ 年6月より運用が開始された。これにより、印西地区へ ている。実際、同市内における全産業売上高のうち、情 の電力供給が 60 万 kW 増強され、データセンター等が 報通信業の売上高は、2016 年の 127 億円から 2021 年 求める大規模な特別高圧電力の安定供給が実現し、更な には 311 億円と約 145%の増加率を誇る。一方で、デー るデータセンター投資への基盤が整備された。 タセンターは多くの電力を消費するため、周辺地域の電 今後、全国で立地が加速することが見込まれるデータ 力需要は急速に増加し、2027 年度の電力需要は 2017 センターだが、その施設の能力を最大限活かすには、周 年度の6倍に達することが見込まれている。 辺インフラの整備が重要となっている。 そこで、東京電力パワーグリッド㈱は、千葉印西変電 <建設中の洞道内部> 所の新設と、既設の新京葉変電所から 275kV の超高圧 を送電するための約 12.3km の電力洞道新設工事を実施 した。 プロジェクトの立ち上げ時点(2020 年)で、数年後 には約3~4倍の電力需要が見込まれていたことから、 早期の整備が求められた。そこで、施工者注 1 は、設計と 施工計画を同時進行することで、通常2年ほど要する準 備期間を1年で完了し、施工においても、トンネルの掘 進に使用する機械に「泥⽔泥⼟複合式シールド」を採用
資料)東京電力パワーグリッド㈱
注1 施工者は千葉印西エリア洞道新設工事共同企業体(大成建設、佐藤工業、大豊建設共同企業体)。
④海外需要を取り込むインフラ海外展開 国内市場だけでなく、新興国を中心とした世界の膨大なインフラ需要を積極的に取り込み、我が国 の経済成長につなげていくために、政府一体となってインフラシステムの海外展開に取り組んでい る。 我が国は、世界に先駆けて人口減少を経験するとともに、高度経済成長期以降、集中的に整備され たインフラの老朽化対策が喫緊の課題となっており、アジアをはじめ世界各国に対して、課題先進国 として、将来的に貢献できるポテンシャルを有している。また、相手国とともに、インフラプロジェ クトに取り組むことで、双方企業の技術の維持向上や新たなノウハウの蓄積、海外企業との競争の中 で起こる生産性向上や技術革新、人材の確保・育成に寄与することになる。 2023 年(令和5年)現在、モビリティ・交通で 8.98 兆円、建設・都市開発で 4.38 兆円を海外か ら受注している。これらを、2030 年(令和 12 年)に、それぞれ 10 兆円、6兆円とすることを目指 して、引き続き取組を進めている。
70 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-5 インフラシステムの海外展開(インフラ受注額)の推移
Ⅰ
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 資料)国土交通省
(台湾高速鉄道車両の追加調達事業) 台湾を縦断する台湾高速鉄道は、海外で初 図表Ⅰ-2-1-6 台湾高速鉄道の車両 めて我が国の新幹線方式を採用し、2007 年 の開業以降、高い安全性や信頼性を維持し ている。2023 年5月、旅客需要の増加を背 景として、本邦企業が、車両の追加調達事 業(鉄道車両 144 両、契約額約 1,240 億円) を受注している。 台湾高速鉄道は、世界的な半導体需要で 急成長する台湾経済を支える重要なインフ ラであり、台湾の実質 GDP は、この約 20 年間で約2倍に増大している。台湾の地で、 資料)国土交通省 我が国の新幹線方式を採用している高速鉄 道が、人々の移動時間を短縮して人流を活 発化させ、より大きな都市圏の形成を促し、経済成長に寄与している。
国土交通白書 2026 71 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column コラム 世界を舞台に成長を目指す日本企業の挑戦(酒井重工業㈱) Ⅰ 1918 年創業の酒井重工業㈱は、ロードローラを国内 ができ、舗装の長寿命化につながることから、ライフサ 第2章
の黎明期より世に送り出し、道路建設機械のパイオニア イクルコストの低減に資するものである。 として、道路建設及び維持補修の両面で道路インフラの また、同社は、単に機械を提供するのではなく、日本 品質向上に寄与してきた。 から技術者を派遣し、現地の技術者や作業者が、自らの 国内はもとより、1935 年のタイへのロードローラ輸 手で機械を操作し、十分な施工が実施できるよう技術移 国土交通分野における取組と今後の展望
出開始以来、北米・インドネシア・中国(上海)に生産・ 転につながるサポートを行っている。 販売拠点を設け、世界 130 か国以上で販売を行うなど、 同社は、道路建設機械という分野において、世界一流 グループ売上の6割近くを海外で稼ぎ出している。 の “ グローバルニッチ ” な企業を目指し、これからも、質 一方、アフリカでは、ある程度道路インフラの整備が の高い道路インフラの提供を通じて、諸外国の人々が健 進んでいる国はあるものの、ほとんどの国において道路 康や幸せを享受することができる社会の構築に向けて今 の整備が物流の伸びに追いつかず、交通量の増大や過積 後もこの取組を進めていく注 2。 載により破損が進行した道路の補修に限られた予算を使 <アフリカでのサポートの様子> 用せざるを得ないという状況から、舗装率が伸びないと いう課題を抱えている。このように交通インフラが脆弱 であることは、経済発展、成長を進める上で大きな障害 となっている。 同社は、アフリカ諸国へ日本政府の ODA(政府開発 援助)を通じて、スタビライザ工法注 1 に関する技術移転 を進めている。スタビライザ工法は、アスファルト乳剤 とセメントを複合的に添加することにより「たわみ性」 と「剛性」を併せ持ったリサイクル路盤を構築すること
資料)酒井重工業㈱
注1 タビライザ工法は、既存の舗装材等を粉砕し安定材を加えて混合、再利用することで、路盤の耐久性向上を図 ス る工法で、資源の建設リサイクルにも資する。 注2 同社は、海外での先導的な活躍が評価され、第1回ジャパンコンストラクション国際賞(国土交通大臣表彰)の 中堅・中小建設企業部門において受賞している。
(3)安全・安心で呼び込む民間投資 安全・安心に資するインフラは、切迫する巨大地震や激甚化・頻発化する気象災害から、国民の生 命と財産を守るだけでなく、経済成長の観点から、災害リスクの低減により、投資リスクを減少さ せ、災害時の経済的被害を軽減させる。工場等の新設など民間企業の設備投資を呼び込む上では、ア クセス性だけでなく、災害時にも事業継続性を確保する安全・安心なインフラが構築されていること もサプライチェーン上、重要である。
①事業の継続性を確保する道路の強靱化 (災害に強い道路ネットワークの機能強化対策) 激甚化・頻発化する災害から速やかな復旧・復興、経済活動の継続を可能とするためには、道路 ネットワークの機能強化が必要となる。発災後おおむね1日以内に緊急車両の通行を確保し、おおむ ね1週間以内に一般車両の通行を確保することを目的として、災害に強い道路ネットワークの機能を 確保するため、高規格道路の未整備区間の整備及び暫定2車線区間の4車線化等が進められている。
72 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(ダブルネットワーク化) あ なん あ き 高知県の阿南安芸自動車道(安芸道路区間)では、直轄国道(現道)より路面高が高い位置に高規 格道路が整備される予定であり、開通することで、津波の影響で直轄国道が浸水した際にも、安全で 確実な移動が可能になる。また、安芸道路の開通により、高速交通ネットワークが実現し、物流の効 Ⅰ 率化や空港等の拠点への利便性が向上する。さらには、ダブルネットワークによって交通が分散さ
第2章 れ、慢性的な交通渋滞の解消も期待されている。
図表Ⅰ-2-1-7 阿南安芸自動車道(安芸道路区間)
国土交通分野における取組と今後の展望 あ き
安芸道路 延長5.8km なんこくあき な は り あき 南国安芸道路 高知県 あきなか 奈半利安芸道路 げいせいにし あきにし (芸西西~安芸西) 安芸中IC やすだ (安田~安芸) あき 安芸市 (仮称) あきにし 安芸西IC (仮称)
あきひがし 安芸東IC 凡 例 (仮称)
事業中 国道55号 津波浸水想定区域
資料)国土交通省
安芸道路との接続が予定されている 図表Ⅰ-2-1-8 産業団地内の企業立地件数の推移 高規格道路の高知東部自動車道(高知 南国道路・南国安芸道路)は、既に一 部開通しており、周辺では企業立地が 促進されている。災害に強い高規格道 路ネットワークが整備されることで、 信頼性とアクセス性が高まり、民間投 資が誘発され、地域経済の活性化につ ながっている。
資料)国土交通省
(高速道路の4車線化) 我が国の高速道路は、諸外国に比べ、未だに暫定2車線区間が多く、対面走行による安全性の低下 や、低速車がいても追い越しができないことによる速度低下に起因する時間信頼性の低下等、多くの課 題を有している。特に、暫定2車線における対面車両の衝突の際には、重大事故となる可能性が高く、 それに伴い、通行止めの時間も長くなり、利用者の移動時間のロスにつながるとされている。 このような中、国土交通省は、暫定2車線区間における走行性や安全性の課題を効率的に解消する ため、時間信頼性の確保や事故防止、ネットワークの代替性確保の観点から、2019 年以降、優先整 備区間(約 880km)を選定し、4車線化を順次事業化している。 4車線化により、圏央道では、通行止めや事故が減少するといった効果が現れている。
国土交通白書 2026 73 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-9 圏央道(つくば牛久IC~牛久阿見IC間、阿見東IC~稲敷IC間)4車線化による効果
円滑な交通の確保
Ⅰ 通行止め回数 ※1 【通行止め要因】 …工事 工事・事故による …事故 通行止めが解消 第2章
つくば牛久IC~牛久阿見IC 阿見東IC~稲敷IC
(回)5 (回)5
4 4
2 国土交通分野における取組と今後の展望
3 3
0 1 0 0 0 4車線化前 4車線化後 4車線化前 4車線化後 4車線化により、通行止めすることなく、 ※1 4車線化に伴う工事通行止めは除く。 集計期間 4車線化前︓令和6年8月30日(金)~ 令和6年12月1日(日) 車線規制による対応が可能に� 4車線化後︓令和7年8月29日(金)~ 令和7年11月30日(日)
重大事故の減少 ■中央分離帯突破事故が解消、総事故件数が約3割減少しました。 ※つくば牛久IC~牛久阿見IC、阿見東IC~稲敷IC間の合計
事故件数の変化※2 中央分離帯突破事故(1件→0件)・その他事故(7件→5件) 中央分離帯突破事故が解消、総事故件数が約3割減 つくば牛久IC 車線減少による 牛久阿見IC 阿見東IC 稲敷IC つくばJCT 江戸崎PA 事故多発地点
4車線化前
車線減少による 事故多発地点
つくば牛久IC 牛久阿見IC 阿見東IC 稲敷IC つくばJCT 江戸崎PA
4車線化後
つくば牛久IC~牛久阿見IC 阿見東IC~稲敷IC ※2 集計期間 4車線化前︓令和6年8月30日(金)~ 令和6年12月1日(日) 4車線化後︓令和7年8月29日(金)~ 令和7年11月30日(日) 令和7年のデータは速報値
資料)東日本高速道路㈱・国土交通省「圏央道4車線化後による交通状況」
②投資を喚起する水害リスクへの対策強化 ひとたび水害が発生すれば、国民の生命・財産が脅かされることに加え、工場の浸水や停電・断水 により、企業の経済活動に直接影響が出るほか、サプライチェーンを通じてその影響がより広域に広 がる。地域の生産性の向上や、民間事業者が安心してかつ計画的に企業進出や設備投資など活発な経 済活動・成長投資を進めることができるよう、水害対策によって、地域の安全・安心を確保すること が重要である。 大阪府の寝屋川流域では、1988 年から、河川・下水道等が連携した浸水被害の軽減に取り組んで いる。地下河川や調節池等の整備を進めており、一部供用済区間が既に効果を発揮している。 2024 年 11 月の豪雨において、調節池等の施設がない場合に想定される約 495ha の内水浸水被害 を軽減しており、浸水被害軽減効果額は約 524 億円と推計されている。また、2024 年度の浸水被害 軽減効果額は年間 3,065 億円とされており、今後も水害に強い地域として経済を支えていくことが見 込まれる。
74 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-10 一級河川淀川水系寝屋川北部地下河川 整備の概要
Ⅰ (
第2章 讃良立坑 )
萱島立坑
(都)北野今市線 (都)都島茨田線 北島立坑
国土交通分野における取組と今後の展望 ポンプ場 貯留施設として供用済 古川取水立坑 2.9km(7万m3貯水) (計画)85㎥/s (将来)250㎥/s 城北立坑 鶴見立坑 門真調節池 計画検討中 2.9km 整備中 1.7km 貯留施設として供用済 内径5.4m (30万m3貯水) (12万m3貯水) 3.7km(13万m3貯水) 都島調節池 鶴見調節池 古川調節池・北島調節池 内径11.5m 外径10.0m、内径9.0m 内径7.5m、内径5.4m 大深度地下使用区間 約3.5km 資料)国土交通省
③土地利用転換の迅速化による産業立地の促進 (開発許可制度の弾力的運用) 企業の立地・設備投資を促すため、例えば、市場アクセス性が高く、災害リスクが低い産業用地の 確保を加速することが重要となる。 企業の進出意欲に対し、市街地再編が図られてもなお用地が確保できない場合もあることから、国 土交通省では、市街化調整区域における開発許可の柔軟化や土地利用転換の迅速化といった自治体と して取り得る措置を、各自治体に周知しており、各自治体において活用されている。
Column 投資ニーズに応える熊本市の戦略(熊本市) コラム
半導体関連産業の進出が進む熊本県では、企業立地を 産業用地整備方針」の策定を行い、2023 年には、産業 支援する道路や下水道といったハード面のインフラ整備 用地の整備を行う民間事業者を公募し、同年に事業者(3 が進められているが、更なる民間投資のニーズに的確に グループ)と協定を締結している。開発の対象となるエ 応えるために熊本市では、官民が協力し、企業誘致を促 リアについては、災害リスクの低さや取引先との近接性 進している。 といった企業ニーズ等をかんがみ選定した。公募により 同市は、大型半導体工場が立地している菊陽町に隣接 採択された民間事業者は用地の取得から企業誘致、用地 しており、企業立地の件数は近年、高水準で推移してい の売却等を、同市は開発に関する特例基準の適用(建ぺ る。一方、同市の都市計画区域における工業系用途地域 い率、容積率、高さの緩和等)や各種許認可の取得に必 面積(準工業地域・工業地域)は、他都市に比べ割合が 要な計画の策定を担っている。選定されたエリアは、土 低く、産業用地に余裕がない状態であった。今後も企業 地開発に規制のある市街化調整区域であり、同市は、土 集積が見込まれる同市内では、民間企業の投資意欲の高 地利用転換手続きを迅速化するなど、 開発を支援している。 まりという好機を逃さぬよう、官民で連携し、企業の立 同市は、今後も官側の各種許認可の取得に係る支援と 地を促すことで地域経済の活性化を進めている。 民間の豊富な知識や経験を活かした企業誘致に取り組 2022 年に、同市は「半導体関連産業の集積に向けた み、地域経済の発展を支えていくこととしている。
国土交通白書 2026 75 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
<熊本市内の企業立地> <産業用地整備事業の概要>
Ⅰ 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望
資料)熊本市
2 生産性を持続・向上させる既存インフラの活用・再構築 インフラが果たすべき機能の低下が懸念される中では、経済社会のニーズに合わせて、新設・既存 を問わず、インフラを最大限有効に活用するとともに、地域の将来の姿を踏まえつつ再構築すること が求められる。 また、インフラ老朽化が急速に進行する中で、その機能を持続させることができるよう、メンテナ ンスを戦略的・計画的に進めていくことも重要となる。
(1)既存インフラの有効活用(質的改善)と高度化 新規で整備するインフラに限らず、既存インフラに関しても、時代や社会の変化に柔軟に対応し て、国民や地域のニーズに合った便益やサービスを効果的・効率的に提供していくことが求められ る。
①産業地域等のアクセス性向上に資するスマート IC 高速道路の有効活用を目的として、スマートインターチェンジ(スマート IC)の新規事業化・準 備段階調査が進められている。2004 年以降、社会実験を経てスマート IC の整備事業制度実施要綱が 策定され、2026 年3月時点で、開通済が 165 か所、事業中が 51 か所、準備段階調査箇所が2か所 となっている。
資料)国土交通省 神坂スマート IC
76 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
スマート IC は、ETC 限定・簡易料金所により、短期間・低コストで開設でき、周辺産業・観光の アクセス改善と地域物流の効率化に資するものであり、料金徴収員を要しない。
図表Ⅰ-2-1-12 松山自動車道「東温スマートIC」の整備効果例 Ⅰ
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 資料)東温市
②交通円滑化と地域の賑わい創出に資する連続立体交差事業 鉄道と道路の交錯部を連続的に立体化し、複数の踏切を一挙に除却する連続立体交差事業は、都市 の分断解消、交通円滑化、防災力向上、沿線まちづくりの高度化に大きな効果を有する。連続立体交 差事業により、高架下などに生じた空間の活用をはじめ、景観形成や駅前広場整備等と一体の取組が 進められている。 高架下の活用等により、駅前広場や自転車駐輪場、公共施設等の整備が進み、新規用地取得を抑え つつ、歩行者空間の拡充や交通結節機能の強化、沿線の賑わい創出が図られている。 1968 年度の制度創設以来、これまでに全国約 170 か所で事業が完了し、約 1,800 か所の踏切を除 却している。
資料)国土交通省
国土交通白書 2026 77 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column コラム 複々線化と地下化による輸送力向上とまちづくり(小田急電鉄㈱) Ⅰ 下北沢駅は、新宿駅・渋谷駅へ約 10 分でアクセスでき、 上記事業完了に伴い、2019 年9月、鉄道跡地の開発 第2章
小田急線と京王線の2路線が乗り入れる利便性の高い 計画である「下北沢地区上部利用計画(下北線路街)」 駅である。戦後の急激な輸送人員の増加により、1980 を決定した。開発計画にあたっては、主体を地域のプレー 年代には小田急線の下北沢駅到着時の乗車率が 200% ヤーに置き、事業者は地域の価値観を重視して支援する を超えていた。混雑緩和のため、1989 年から始まった という「支援型開発」のスタンスを掲げ、街の特性・魅 国土交通分野における取組と今後の展望
10.4km の複々線化事業及び連続立体交差事業は 2018 力を活かした 13 の施設が 2022 年5月までに全面開業 年 3 月に全区間の供用を開始し、その後の付帯工事など した。 を含め 2019 年3月に事業が完了を迎えた。 毎年秋に下北線路街周辺で開催されるアートイベント 複々線化の完成により、朝方ピーク時の列車運行本数 では、約2週間でのべ 50 万人以上が訪れるなど、本事 を 27 本から 36 本に増発することが可能となり、ピーク 業が街の価値や魅力を高め、地域の活性化に貢献してい 時の乗車率はダイヤ改正前後で 192%から 150%台まで る。また、 2025 年 3 月時点の下北沢半径1km の地価(住 低下したほか、町田駅から新宿駅間の所要時間は 49 分 宅地)は、対 2017 年比で約4割上昇しており、世田谷 から 37 分と約 10 分短縮された。また、連続立体交差の 区全体に比べて大きく上昇している。現在も地元自治体 完成により、朝方ピーク1時間に遮断時間が 40 分以上 である世田谷区を中心に、将来の街を見据えた新たなま となる「開かずの踏切」を含む 39 か所の踏切が廃止さ ちづくりが進められている。 れたことで、渋滞緩和に加え、安全性も大きく向上した。
<地下化・複々線化の断面図> <下北沢地区の線路跡地のまちづくり>
資料)小田急電鉄㈱
③道路の整備促進と道路地上地下空間の高度利用を実現する立体道路制度 都市構造が複雑化し、土地の高度利用や産業集積が求められる中、制度改革により、都市機能の向 上と効率的な空間活用の実現に向けた取組が進められている。 立体道路制度は、道路空間と建築物等を立体的に重ねて配置できるようにする法制度であり、限ら れた都市空間の高度利用を可能とするものである。原則、道路区域は上下空間すべてとされており、 建物の建築はできないところ、立体道路として、道路区域を立体的に限定し、上下空間を区域外とす ることで、区域外では建物の建築等が可能となり、土地を有効活用することができる。 本制度は、都市の魅力向上や交通利便性向上を通じ、民間投資を呼び込み、経済成長の基盤強化に 寄与する制度である。
78 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-14 立体道路制度の利点
Ⅰ
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 資料)国土交通省
④グリーンインフラの活用推進 グリーンインフラとは、自然の多様な機能を活用した社会資本であり、将来にわたり持続可能で魅 力ある国土・都市・地域づくりやウェルビーイングの向上に貢献するものである。 2026 年1月、国土交通省は「グリーンインフラ推進戦略 2030」を公表し、2030 年までに「グ リーンインフラ活用が当たり前の社会」の実現を目指している。 グリーンインフラの実装に当たっては、他インフラとの連携・融合の視点が重要であり、自然と人 工物を組み合わせることで効果の向上を図ることや、既存のインフラ整備によって形成された空間 に、自然を取り入れていくことを検討することも有効である。
図表Ⅰ-2-1-15 自然の多様な機能とグリーンインフラの効果
資料)国土交通省
国土交通白書 2026 79 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(2)新技術も活用した老朽化対策 インフラの老朽化に起因する事故の未然防止と、社会経済活動の維持は最優先の課題であり、まず はインフラの安全性確保に万全を期すことが重要である。それと同時に、地域の将来像にふさわしい Ⅰ 適正なインフラストックの形成を図ることも求められている。 また、維持管理・更新費が増大することが見込まれる中、「予防保全型」メンテナンスへの転換を 第2章
加速させるとともに、AI、IoT、ロボット等の新技術の活用を促進し、効果的・効率的なインフラ管 理の実現につなげていく必要がある。 国土交通分野における取組と今後の展望
①老朽化インフラの再構築と合わせた付加価値創出 本格的な人口減少時代が到来した今、インフラ老朽化対策については、あるべき対策を周到に実行 していくことが必要である。地域の将来の姿を見据えて、インフラの集約・再編や優先度に応じた維 持管理を行い、地域構造の変化に応じてインフラストックを適正化していく取組が重要となる。 あわせて、まちの魅力やエリア価値の向上等につなげていくことが重要である。日本橋(東京)周 辺では、老朽化が進行している首都高の高架橋の撤去に合わせ、新たな都市景観を形成するまちづく りが進められている。
図表Ⅰ-2-1-16 地域のニーズや環境変化に対応したインフラの集約・再編
資料)国土交通省
80 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column 首都高の更新と日本橋のまちづくり(首都高速道路㈱) コラム
Ⅰ 日本橋川上空を走る首都高都心環状線は、1964 年の 3.0km から 1.5km へ緩和される見込みである。また、
第2章 東京オリンピックを翌年に控えた 1963 年 12 月 21 日に 日本橋周辺のまちづくりでは、道路トンネルの上部にも 開通し、建設時は既に建物が密集した東京都心部であっ 建物の建設を可能とする立体道路制度を活用し、周辺5 たため、川や道路などの公用地の上空を使用して建設が 地区の再開発により合計約 122ha の施設延床面積が築 行われた。その後、開通から現在まで 60 年以上が経過 造される計画である。加えて、これまで都心環状ルート
国土交通分野における取組と今後の展望 したことによる構造物の高齢化に加え、1 日当たり約 10 と並走していた東京高速道路(KK 線)は、通過交通が 万台の自動車が走行する使用状況にあり、老朽化が進行 新たな都心環状ルートに転換することで、自動車専用道 している。 路としての役割が大きく低下することから廃止、上部空 そこで、2014 年にこの区間も含めた首都高の大規模 間を新たな公共的空間として再生することとしている。 更新計画が策定され、その後、地下ルートで整備するこ 再生に当たっては、ニューヨークの高架鉄道跡地を公園・ とが決定した。一方、2016 年には日本橋周辺で検討が 遊歩道化したハイライン等をモデルにしながら、「世界 進むまちづくりの取組が国家戦略特区の都市再生プロ から注目される観光拠点」を目指し、歩行者中心の公共 ジェクトに追加された。これを機に、国、東京都、 中央区、 的空間としていくこととしている。 首都高速道路㈱は共同で、日本橋周辺のまちづくりと連 日本橋川上空の首都高は、2040 年度に高架橋の撤去 携して首都高の地下化に取り組んでいる。 工事完了が予定されている。撤去が完了することにより、 地下ルートは 2035 年度に完成予定であり、従来より 日本橋に青空を取り戻すとともに、国際金融都市にふさ も路肩が広くなり、車の走行性向上が期待される。地下 わしい品格のある都市景観の形成、歴史や文化を踏まえ 化に合わせて、新たな都心環状ルートを整備する予定で た日本橋の顔づくり、沿道環境の改善など新しいまちづ あり、江戸橋 JCT ~箱崎 JCT 間の渋滞が、最大渋滞長 くりへの効果が期待される。
再開発の計画はイメージである。
資料)首都高速道路㈱
国土交通白書 2026 81 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(官民連携による都市再生) 2002 年に都市再生特別措置法が制定されて以来、都市の再生を通じ、都市機能の高度化と都市の 居住環境の向上が図られてきた。都市の再生の拠点として、都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的 Ⅰ に市街地の整備を推進すべき地域である都市再生緊急整備地域や、その中でも市街地の整備を通じて 都市の国際競争力の強化を図る特定都市再生緊急整備地域が全国で指定され、金融支援や税制特例措 第2章
置等を通じて、官民の連携による都市再生が進められてきた。 これら都市再生の取組の一つである福岡市の「天神ビッグバン」プロジェクトでは、更新期を迎え たビルを耐震性の高い先進的なビルへ建て替えるよう民間事業者に対する誘導施策を講じるととも 国土交通分野における取組と今後の展望
に、水辺や緑・文化芸術・歴史などの魅力に磨きをかけ、多くの市民や企業から選ばれるまちを目指 している。
Column コラム 官民連携による都心部の機能強化と魅力づくり(福岡市)
商業や業務などの都市機能が集積する福岡市の天神地 航空法における高さ制限のエリア単位での特例承認が認 区では 2015 年に「天神ビッグバン」が始動し、規制緩 められた。これにより、天神明治通り地区は約 67m か 和を活用したビルの建替えや、それに伴うまちのアップ ら最大約 115m へ、旧大名小学校跡地は約 76m から最 デートが進んでいる。航空法の高さ制限の特例承認や容 大約 115m へ、天神1丁目地区では約 65m から最大約 積率の緩和によって、2026 年までに、更新期を迎えた 96m まで高層化が可能となった。また、地区計画により、 ものを含む約 90 棟のビルが耐震性の高い先進的なビル 様々なまちづくりの取組(国際競争力や環境、安全安心、 へ建て替えられる予定である。これにより、新たな空間 魅力の向上など)を行うことで、容積率が 800%から最 や雇用、税収を生み出すとともに、建替えにあわせ、水 大 1,550%まで緩和可能となった。 辺や緑、文化芸術、歴史などが持つ魅力にさらに磨きを このほか、都市再生特別措置法に基づく特定都市再生 かけ、多様な個性や豊かさを感じられる、多くの市民や 緊急整備地域に指定されており、金融支援・税制支援を 企業から選ばれるまちづくりに取り組んでいる。 活用した民間都市開発事業や官民連携による公共性の高 天神地区は、福岡空港が近く、それまで航空法により い基盤整備に取り組みながら、国際競争力の強化に資す 建物の高さが制限されていたが、国家戦略特区により、 る都市機能の中枢拠点の形成を目指している。
<建替え事例(ONE FUKUOKA BLDG.)> <天神ビッグバンエリア及び特定都市再生緊急整備地域>
資料)福岡市
82 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
一方、地方部を中心に人口減少が進む中、若者の地方離れの深刻化などによる担い手不足により、 地方都市等の生活サービス機能の維持が危ぶまれている。地域に民間投資を積極的に呼び込み、歴史 や文化、景観といった固有の魅力を生かし、個性ある都市空間を実現することが重要である注 3。 Ⅰ ②予防保全に向けた戦略的インフラマネジメント
第2章 インフラ老朽化が加速度的に進行する中、あらかじめ定期的に点検・診断を実施する「予防保全 型」メンテナンスへの転換を推進し、安全確保とともに、インフラ管理に要するトータルコストの縮 減と予算の平準化を図っていくことが重要である。
国土交通分野における取組と今後の展望 また、国際的にも、AI による劣化予測や、IoT センサによるリアルタイム監視が標準化されつつ ある中、我が国においても、点検・調査等において、新技術を積極的に導入し、予防保全を推進して いくことが求められている。
(予防保全への転換) 予防保全とは、施設に不具合が発生してからではなく、あらかじめ定期的に点検・診断を実施し、 施設の機能や性能に不具合が発生する前に修繕等の対策を講じることである。「第 1 次国土強靱化実 施中期計画」(2025 年6月6日閣議決定)においても、「予防保全型メンテナンスへの早期転換」が 掲げられており、予防保全への転換が強力に推進されている。 予防保全への転換により、事後保全と比較して、トータルコストが縮減することが見込まれてお り、増加が予想される維持管理・更新費を抑えていくことが重要である。
図表Ⅰ-2-1-17 事後保全と予防保全のメンテナンスサイクル
資料)国土交通省
注3 土交通省では、2026 年中の施行を目途に、 国 「都市再生特別措置法」について、「地域の稼ぐ力の強化や、まちの魅力 向上を通じ、地域に民間投資を呼び込み、個性ある都市空間を実現する」ことを目的に、立地適正化計画の都市機能誘 導区域に特定業務施設等の誘導を位置付け、建築物のリノベーションや活用等のための区域制度の創設、民間事業者の 公共貢献を促進するための協定制度の創設、エリアマネジメント活動に関する計画制度の創設、金融支援・税制特例措 置の前提となる民間都市再生事業計画の大臣認定の申請期限の延長などを内容とする改正案を、第 221 回特別国会に 提出した(2026 年5月に成立)。
国土交通白書 2026 83 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)の推進) 自治体の技術系職員が限られる中で、的確な 「群マネの手引きVer.1
図表Ⅰ-2-1-18 インフラメンテナンスを確保するため、複数自 (群マネ入門超百科)」のイメージ
Ⅰ 治体のインフラや複数分野のインフラを「群」 として捉え、効果的・効率的にマネジメントし 第2章
ていく「地域インフラ群再生戦略マネジメント (群マネ) 」を推進している。 2025 年 10 月、国土交通省は、群マネの全 国土交通分野における取組と今後の展望
国展開に向けて「群マネの手引き Ver.1(群マ ネ入門超百科)」を公表した。本手引きは、群 マネの類型や先行事例、実施プロセス、計画策 定の考え方等を解説することで、導入検討から 実践までをサポートしている。
資料)国土交通省
(ロボット等を活用したメンテナビリティの確保) インフラ老朽化の進行や担い手不足等の課題に、効果的・効率的に対応するためには、ドローンや ロボット等の新技術の活用が不可欠である。 下水道は延長約 50 万 km に及ぶ広範なストックであり、硫化水素中毒等のリスクも伴うことから、 人ができる限り管路に入らず、安全に点検・調査を行えるよう、ドローンやロボットを活用し、無人 化・省力化に向けた自動化技術の高度化や点検方法等の充実を図り、点検・調査を実施していくこと が求められる注 4。
資料)国土交通省
注4 025 年1月、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を踏まえ実施された「全国特別重点調査」において、下水道管路 2 は調査延長(対象 5,332km)のうち、2026 年2月末時点で、緊急度Ⅰ(原則1年以内に速やかな対策を要するもの) の要対策延長は 201km、空洞が 96 か所確認されている。
84 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(AI を活用した異常検知システム) インフラメンテナンスの高度化・効率化に向けては、AI を活用した取組も進められている。河川 機械設備注 5 については、気候変動による水害の激甚化や担い手不足に対応するため、AI・デジタル 技術を活用し、産官学連携による技術開発を進めている。 Ⅰ 具体的には、河川機械設備にセンサを設置し、運転時に発生する振動等のデータを収集する状態監
第2章 視や、AI を活用した異常検知システムの研究・開発を実施している。 本システムの開発により、設備に発生している異常や、故障の発生予兆を検知することで、施設点 検や機器更新に関する時期や間隔が適正化されることが期待されている。
国土交通分野における取組と今後の展望 図表Ⅰ-2-1-20 AI異常検知システムのイメージ
資料)国土交通省
(AI を活用した港湾構造物の維持管理) 海上に建設される港湾構造物は、塩害等による劣化が著しく、中でも桟橋上部工の下面は普段、人 が目にすることがないため、気付かないうちに劣化が進行してしまう場合がある。 そこで、対象構造物の形状を忠実に 3D モデル化する技術に加え、AI で劣化度を部材ごとに自動判 定する技術、地震時に劣化が進行している箇所のコンクリートはどう損傷するか等を AI で判定する 技術、将来の経年劣化を予測する技術の構築が進められている。 このような取組は、ライフサイクルコストの低減や、桟橋の長寿命化に資するものと考えられる。 また、災害耐力の低下を防ぐことも期待される。
資料)五洋建設㈱
注5 台風・集中豪雨等が発生した際に、支川の水を本川に強制排水することにより内水被害を防ぐための設備。
国土交通白書 2026 85 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
3 我が国の潜在力を開花させる新技術等の活用 近年、デジタル化社会への進展が急速に進み、自動化技術や AI 等、新たな技術も次々と生まれて Ⅰ いる。生産性向上に向けては、これらの技術を最大限活用し、地域活力や産業基盤を強化していくこ とが重要である。また、インフラの新たな活用によって、エネルギー安全保障に貢献していくことが 第2章
求められている。 前述したインフラの新規投資や再構築等に関する取組だけでなく、新技術等も活用し、我が国の潜 在力を開花させる様々な取組が推進されている。 国土交通分野における取組と今後の展望
(1)デジタルデータ・AI 等の活用による地域活力と産業基盤の強化 デジタルデータや自動化技術等の効果的な活用を通じて、道路利用者の利便性向上や観光消費の拡 大、更には、単なる移動手段の確保にとどまらない「交通空白」の解消に向けた取組等が進められて いる。また、AI を活用した効率的なインフラの管理・運用等に関する取組等も見られる注 6。これらは、 地域活力や産業基盤の強化につながるものである。
クロスロード ①道路システムの DX「xROAD」の推進 国土交通省は、xROAD(道路システムの DX に関する取組の総称)を推進しており、この中で、 AI や ICT 等の新技術の導入による維持管理作業や調査の省力化・高度化、ETC の利用促進等による 道路利用者の利便性の向上に取り組んでいる。 2025 年、xROAD の取組の一環として「道路データプラットフォーム」を一般公開した。交通量 データ注 7、ETC2.0 の平均旅行速度データ注 8、道路の指定・特定状況、全国道路施設点検データ等を統 合・可視化することで、道路管理の高度化を図るとともに、道路管理者に限らず誰もがデータを活用 可能な環境の構築を目指している。今後も、民間での利活用やオープンイノベーションの促進に向 け、道路関係データのオープン化を順次進めていく。
資料)国土交通省
注6 A I を含む新技術の活用においては、技術の限界を正しく認識し、意思決定の最終責任は人が負うことに留意すべきである。 注 7 全国約 2,600 か所で観測される交通量を最速 30 分前からリアルタイムで公開している。 注 8 全国の道路約 20 万 km の平均旅行速度データが毎月更新され、最長1年分公開している。
86 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
②交通行動変容を促す変動料金制の導入 道路交通分野においては、インフラの潜在力を活かし、賢く利用していくために、交通インフラだ けでなく道路利用者等のデータも活用して、需要サイドと連携することが重要である。東京湾アク アラインでは、土日・祝日の特定の時間帯に交通量が集中するために、激しい混雑が発生していた。 Ⅰ 渋滞の緩和と需要の平準化を目的として、2023 年7月より、特定の時間帯の割引料金を変動させる
第2章 ETC 時間帯別料金(変動料金制)の社会実験を実施している。 社会実験の結果注 9 より、ETC 時間帯別料金実施の前後の交通状況について見ると、時間帯別交通 量(上り線)では、料金を引き上げている時間帯の交通量は減少し、料金を引き下げている時間帯は
国土交通分野における取組と今後の展望 増加している。また、渋滞緩和の指標である最大損失時間注 10 の減少も確認されたことから、混雑の 緩和等に一定の効果が認められている注 11。
図表Ⅰ-2-1-23 東京湾アクアライン(上り線)の交通状況について(2025.4~2025.12)
資料)国土交通省
③観光需要を取り込むためのデータ分析・利活用 我が国の観光産業は、観光立国の実現に向けて、インバウンド等の需要を取り込み、経済の発展を リードする戦略産業として、更なる成長が求められている。 「観光立国推進基本計画(第5次)」においては、「観光の持続的な発展」、「消費額拡大」、「地方誘 客促進」 、「観光と交通・まちづくりの連携強化」、「新技術の活用・本格展開」を施策の方向性として 位置付け、インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立等に取り組むこととしてい る。 今後も更なる増加が見込まれる観光需要に対して、観光地を中心に、人の移動に関するデータや AI
注9 こでは、2025 年4月から 2025 年 12 月の期間の結果を示す。 こ 注 10 道路利用者が通常の走行時と比べて、渋滞によって失う所要時間の最大値のこと。 注 11 なお、東京湾アクアラインでは、引き続き交通量を見える化し、需要サイドの行動変容を促す効果を継続的に分析・ 評価していくこととしている。
国土交通白書 2026 87 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
オンデマンド交通等を活用した取組が進められており、観光需要を確実に取り込む取組が見られる。
(移動の分析・可視化による観光消費拡大) Ⅰ 観光業者や鉄道事業者の取組の中には、インバウンド等の移動の分析、可視化を行い、データに基 づいた効果的な誘客に資する観光プロモーションにより、訪問者の快適な滞在を実現させているもの 第2章
も見られる。
Column コラム 国土交通分野における取組と今後の展望
人流データで観光客の心を動かすプロモーション(㈱ unerry・出雲市)
インバウンドが増加する中、観光や鉄道の事業者側で テゴリ別の行動嗜好などを分析し、インバウンド向け広 は、旅行客が「どこからどこへ回遊し、どのようなコン 告やサービス設計の根拠となるデータを提供している。 テンツに関心を示しているのか」といった行動実態を駅・ 一方、出雲市では、国内観光客を主な対象としつつ、同 エリア・施設レベルで十分に把握できておらず、データ 社の人流データを活用して、過去の来訪経験者や神社仏 に基づくターゲティングや施策効果の検証が課題となっ 閣の訪問経験者といった出雲観光に関心がありそうな人 ている。 を抽出し、対象を絞ってオンライン広告による観光プロ そこで、㈱ unerry はインバウンドの移動の分析・可 モーションを実施した。広告配信後、出雲市に来訪した 視化、広告配信、効果測定を一体的に行えるインバウン 観光客を計測したところ、観光客1人当たりの来訪獲得 ドマーケティングサービスの提供を開始した。このイン 単価を前年から約 55%改善し、より小さなコストで誘 バウンドマーケティングサービスでは、国籍別の主要な 客することに成功している。 訪問ルートやエリア別滞在実態、施設単位での来訪状況 同社は今後も、インバウンドマーケティングサービス や興味・関心の分析を可能とし、人流データに基づくサー を交通事業者や地方公共団体をはじめ、小売業・観光業 ビスの高度化を進めている。 など幅広い団体・企業における重要なマーケティング基 鉄道事業者との連携では、駅・路線ごとのインバウン 盤として位置付け、これらの事業者への提供・活用範囲 ド利用の特徴や、主要観光スポットを含む周遊傾向、カ の拡大を進めていくこととしている。
<人流データ分析の例> <出雲市の観光プロモーションの例>
例えば浅草エリアでは、国内居住者は、浅草寺周辺に集まり、訪日 外国人は西側のかっぱ橋道具街(プロの料理人も訪れ、調理器具等 が豊富な街)まで一帯に広く訪問する傾向。
資料) ㈱ unerry、出雲市
88 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
これまでは、大規模なトリップ調査や通行量カウントといった手法に頼らざるを得なかった人流の 把握について、データを活用することで、より精度高く、リアルタイムに近い形で取得が可能になっ ている。 観光や交通に関する人流データが統合的に可視化されることで、需要の分散と周遊性の向上が図ら Ⅰ れ、観光地の消費拡大に貢献しているものも見られる。
第2章 Column コラム
国土交通分野における取組と今後の展望 観光消費の拡大に貢献「箱根観光デジタルマップ」 (箱根 DMO(一般財団法人箱根町観光協会))
神奈川県の南西部に位置する箱根町は、人口約1万人 箱根町の観光戦略では、観光経済消費額注 3 は、2017 規模でありながら、首都圏からのアクセスの良さ等を背 年時点では約 2,900 億円だったところ、箱根 DMO の推 景に年間約 2,000 万人(2024 年)の観光客が訪れる日 計によると、2024 年における箱根町の観光消費額は約 本有数の温泉観光地である。一方で、こうした高い需要 3,300 億円に達しているとされている。箱根町の観光消 は、休日を中心に、交通渋滞や駐車場・飲食店の混雑を 費拡大に合わせて、本マップの普及も進んできている。 恒常化させ、観光客の満足度や住民生活への影響が課題 本マップは、つくって終わりではなく、使ってもらえ となっていた。 るよう取組が進められている。箱根 DMO を中心として、 このような課題に対し、箱根 DMO 注 1(一般財団法人箱 本マップで蓄積された観光・交通データを活用し、周遊 根町観光協会)は「箱根観光デジタルマップ注 2」を中核と ルート提案の高度化等により、周遊性向上・消費拡大を した観光 DX を進め、観光・交通データの統合的な可視 図るとともに、防災情報等の掲載を通じて、平時・有事 化を通じて、 需要分散と周遊性向上を図っている。本マッ の双方で機能する地域プラットフォームとして、今後実 プでは、観光スポットや飲食店の待ち状況の情報に加え、 装を検討していく予定である。 混雑状況や渋滞予測情報等を一体的に提供している。
資料)箱根 DMO
注1 箱 根 DMO は、観光庁が設立した日本版 DMO(観光地域づくり法人、Destination Management / Marketing Organization の略)の仕組みを活用し、2018 年4月に発足、同年 12 月に観光庁より登録 DMO の認定を受 けた法人。 注 2 2023 年 11 月のリリースを経て、2024 年 1 月に本格稼働。 注 3 観光消費によって生じた、地域内産業への波及効果を含む。
国土交通白書 2026 89 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(三次元人流データ活用によるまちづくりの高度化) 従来の人流データは平面的な分布の把握にとどまっていたのに対し、近年は、高さ方向の測位技術 の発達により、緯度・経度に加えて高さ情報を持った「三次元人流データ」の取得が可能となり、都 Ⅰ 市空間での人の動きを立体的に分析できるようになっている。 この三次元人流データは、地下街・地上・駅ビル内等、高さ方向の動きを把握できるため、高度利 第2章
用が進む都市部の交通結節点における混雑の把握や回遊行動の分析精度の向上に大きく貢献してい る。 また、都市や建築の三次元モデル(3D 都市モデル注 12 や建築 BIM)の活用と合わせることにより、 国土交通分野における取組と今後の展望
三次元の回遊行動把握によるエリア活性化、歩行者動線の改善、大規模商業施設内における消費者・ 利用者ニーズの把握等に活用されている。
図表Ⅰ-2-1-24 3次元人流データの活用例
資料)国土交通省
(AI オンデマンド交通) AI オンデマンド交通は、利用者 図表Ⅰ-2-1-25 AIオンデマンド交通のイメージ からの事前予約に応じてルートや 時刻を柔軟に設定して最適配車を 行うシステムである。定時定路線 のバス等と比較して、待ち時間も 短く、効率的な移動ができるため、 周遊性の向上による観光消費の拡 大が見込まれる。 一部地域では、インバウンド等 資料)国土交通省
の観光消費の拡大や地域交通の運 行効率の向上を目的として、AI オンデマンド交通を導入した例が見られる。
注 12 Project PLATEAU により整備される、都市空間の地物及び属性を都市スケールで三次元的に再現したデータ。
90 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column 観光スポットを周遊、「ぐるりん号」(長野県大町市) コラム
Ⅰ 長野県大町市は、北アルプス山麓に位置し、立山黒部 と大幅な時間短縮が実現し、1 日券利用者の半数以上が
第2章 アルペンルートの玄関口として、年間約 260 万人の観光 3 回以上(最大は 5 回)の乗車をするなど、利用者にとっ 客が訪れる自然豊かな観光都市である。 ての利便性が大きく向上したことから、更なる観光消費 同市では、インバウンド宿泊者数が 2021 年の 139 人 の拡大や運行効率の向上など、多面的な効果が期待され から 2023 年の 4 万人超へ急増していることなどを背景 ている。
国土交通分野における取組と今後の展望 に、観光客の二次交通を確保し、市内観光地の周遊性を 今後は、運行結果とデータ分析を踏まえ、市全体の公 高めることを目的として、観光周遊バス「信濃大町ぐる 共交通ネットワークの再編や効率化を検討していく予定 りん号」(定時定路線)を導入していた。しかし、平均 である。また、将来的な広域連携の可能性も期待されて 待ち時間約 40 分、1 日で訪問できる観光スポット数が 1 おり、観光と日常の両面を支える持続可能な地域交通体 ~ 2 か所にとどまるなど、周遊性や利便性に課題を抱え 系の構築と、北アルプスエリア全体の経済活性化に資す ていた。 ることが見込まれている。 そ こ で 同 市 で は、 平 均 待 ち 時 間 を 13.5 分( 従 来 比 <市内を走るぐるりん号> 26.5 分短縮)に削減できる等のシミュレーション結果 を踏まえ、2025 年度からぐるりん号を需要応答型の AI オンデマンド交通へ移行することを決定した。 ウェブサイト及び専用スマートフォンアプリは多言 語(日本語・英語等)で案内され、キャッシュレス決済 にも対応することで、インバウンドを含む多様な利用者 にとって利用しやすいサービスとなるよう設計されてお り、国際観光地としての受入基盤強化にもつながってい る。運行初年度は、460 人が利用し、平均待ち時間は4 分(36 分短縮)、平均乗車時間は 11.2 分(25.8 分短縮)
資料)大町市
コ モ ン ズ ④地域交通 DX 推進プロジェクト「COMmmmONS 注 13」 我が国の地域公共交通では、地域住民や来訪者の利用を促進するため、デジタル技術を活用した モビリティサービスの高度化を目指しており、MaaS(Mobility as a Service)アプリなど様々な 取組が進められている。MaaS アプリや配車アプリの開発、デジタル・チケッティング(交通キャッ シュレス)の導入等、地域交通に関するデジタル施策は、これまでも各提供主体の下で進められてき たが、業務モデルやシステムが独自に構築されてきた結果、それぞれのサービスやデータが連携して いない「個別最適化」の課題が生じている。地域交通の持続可能性も懸念され、「交通空白」に関す る議論も進められている中、交通サービスの利便性向上や産業構造の強靱化等の観点から、これらの デジタル施策の相互連携をより深める必要がある。 地域交通 DX 推進プロジェクト「COMmmmONS」は、地域交通におけるデジタル技術の活用を、 地域交通の持続可能性、利便性、生産性向上という価値にコミットするエコシステムとして再構築す るため、「サービス」、 「データ」、 「マネジメント」、「ビジネスプロセス」の四つの観点から、デジタ ル活用を一体的に進める取組としてスタートしている。 例えば、IC カードや配車システム等から出力されるモビリティ・データの仕様の標準化の推進や、 バス業務の共同化、タクシー運行管理業務の共同化等、標準モデルの開発等の取組が進められている。
注 13 Code for Moblity Common Society の略。地域交通におけるデジタル活用や標準化を進めるプロジェクトのこと。
国土交通白書 2026 91 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-26 COMmmmONSにおける標準化プロジェクトの例
Ⅰ 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望
資料)国土交通省
「交通空白」は、移動手段の不足だけでなく、社会経済全体に、目に見えない形で機会損失や国民 負担を及ぼすものである。「交通空白」解消に向けた取組により、これらの「見えない壁」を打破し、 個人や地域の成長力を掘り起こしていくことが重要である。
Column 「交通空白」が地方に与える機会損失・国民負担 コラム
我が国は、人口減少・少子高齢化や担い手不足の拡大 「交通空白」解消に向けた取組は、単なる移動手段の など複合的な課題に直面しており、これらは相互に影響 確保にとどまらず、これらの「見えない壁」を打破し、 し「負の連鎖」を形成している。特に、地方では生活サー 個人や地域が本来持つ成長力を掘り起こし、地域の将来 ビスの維持が困難となり、暮らしの質の低下を招いてい を切り拓く、 我が国の成長戦略の一翼を担うものである。 るが、この構造の根底にあるのが、移動手段の確保が困 難な「交通空白」の課題である。移動手段の不足は、通 < 「交通空白」は地域と個人の成長を阻む“見えない壁”> 学や通院、就労、消費、観光など様々な生活行動を制約 し、社会経済全体に、目に見えない形で「機会損失」や「国 民負担」を及ぼしている。中でも、地域公共交通の不足 による家族送迎の増加は、現役世代、特に女性の可処分 時間を奪い、就業機会の制約や所得低下、消費の低迷に つながる。また、地域経済の担い手不足やインバウンド をはじめとする観光機会の逸失、さらには、外出機会の 減少によるフレイル化(高齢による虚弱化)等の健康悪 化やそれに伴う社会全体の医療・介護負担の増大、子ど もの将来の可能性の喪失など、多面的な影響が生じてい る。
資料)国土交通省
92 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
⑤自動運転技術の積極的な実装 自動運転技術は、移動に関わる人手不足や安全性の向上など複数の社会的課題を同時に解決し得る 可能性を有しており、将来の交通体系を支える基盤技術として期待されている。また、自動運転の普 及は、産業構造や人々の暮らし・生活に広範な影響を及ぼすことが見込まれている。 Ⅰ 国土交通省は、2026 年1月に「国土交通省自動運転社会実現本部」を立ち上げ、自動運転社会の
第2章 早期実現に向けて、その推進・連携体制を強化するとともに、自動運転車両の開発・普及の促進や社 会受容性の向上、自動運転を支える道路・都市インフラ側の取組などを強力に進めている。具体的に は、自動運転レベル4注 14・レベル2 ++ 注 15 事業用車両等の社会実装支援、自動運転レベル2 ++ 車両
国土交通分野における取組と今後の展望 の優良認定制度の創設による開発・普及の促進、インフラからの支援や道路の適切な利活用に向けた 取組、国際基準策定に係る議論の主導、運輸安全委員会における事故原因究明体制の構築等、あらゆ る施策に取り組んでいる。
平塚市における自動運転移動サービス 図表Ⅰ-2-1-27 (無人自動運転移動サービスの事業化推進) の社会実装の取組
ドライバー不足解消や地域における移動 手段の確保のため、地方自治体による自動 運転の社会実装に向けた取組を支援してい る。一人が複数車両の運行を遠隔監視する などの先進的な取組や優良事例として横展 開できる事業を重点的に支援するとともに、 デジタル庁など他省庁とも連携することに 資料)平塚市 より、自動運転の事業化を推進している。
Column 住民の移動ニーズに応える自動運転バス(長野県塩尻市) コラム
長野県塩尻市では、人口減少や少子高齢化が進む中、 ルートを拡大してレベル2による通年運行を開始してい 市街地だけではなく農村地域の暮らしも維持すること る。 で、 「まちなかの便利な生活」と「農山村地域のゆとり 今後は、安全かつ安定的な運行を行うために、車両の のある生活」を両立する「コンパクトシティ・プラス・ 行動計画や予測にも AI を活用した走行技術の検証を行う ネットワーク」の都市構造の構築を目指している。一方 予定である。また、市が推進するテレワーク拠点「KADO」 で、高齢化による慢性的なドライバー不足に直面してお による地域人材の活用により、高精度三次元地図の整備 り、将来にわたって持続的なサービスを提供するための などデジタル基盤の構築を内製化している点も、本取組 抜本的な対策が急務となっている。 の特徴である。 このような中、地域課題解決のために 2020 年度より このような取組を通じて、地域の移動課題の解決や住 自動運転バスの実証事業を実施している。2025 年1月 民生活の質の向上を図り、 「次世代交通がもたらす誰も からは、JR 塩尻駅と塩尻市役所を結ぶルートでレベル4 が安心して便利に暮らせる地域社会」への変革を進めて 運行を開始したほか、同年5月からは、市内中心部での いる。
注 14 特定条件下における完全自動運転。特定条件下においてシステムがすべての運転タスクを実施。 注 15 レベル 2++ 車とは、AI 技術を活用した高度な運転支援機能を搭載した車両のことをいう。
国土交通白書 2026 93 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(離島・沿岸地域の交通需要を満たす自動運航船) 我が国は、離島が多く、そこで暮らす住民の移動手段として、船舶は重要な役割を担っている。一 方、定期運航便の本数が少ない離島では、島外への移動可能な時間が限定される。 Ⅰ このような中で、一部地域では、離島住民のレジャーや観光客の離島への移動ニーズに応えるべ く、定期運航便が対応していない深夜や早朝に、自動運航船による輸送サービスの実証実験が実施さ 第2章
れている。
Column コラム 国土交通分野における取組と今後の展望
島をつなぐ船の自動運転(広島県大崎上島町)
瀬戸内海に位置する広島県大崎上島町では、フェリー るとともに、瀬戸内の島しょ部における島外からの来訪 が日中のみ運航し、早朝・夜間の移動手段が存在しない 者の周遊性を向上させる。 ことに加え、二次離島・生野島では生活協同組合ひろし 今後、大崎上島町は運航データ等を踏まえ、24 時間 まの宅配サービスがコスト制約から展開できないなど、 に近い海上交通ネットワークの構築と本格導入のあり方 交通・物流の制約が地域生活と経済活動のボトルネック を検討するとしており、瀬戸内エリア全体で高まる観光 となっていた。 需要と島しょ部の二次・三次交通を結び付けることで、 こうした課題を背景に、国の「スマートアイランド推 地域内での観光消費の拡大と物流の持続可能な発展を図 進実証調査業務」として、大崎上島町・竹原市間の自律 ることが期待されている。 航行オンデマンド水上タクシーと貨客混載サービスの導 <自動運航船> 入・実証が進められてきた。 2025 年1~3月に実施されたスマート海上バス「ゆ き姫」の試験運航では、夜間・早朝便の総利用者数が 80 人となり、月を追うごとに利用者が増加し、金曜日 に利用が集中する傾向がみられ、実需が確認された。利 用者アンケートでは「満足」「やや満足」が9割超、「不 満」はゼロで、本格導入時の利用意向も8割超と高い需 要が示された。生協ひろしまとの連携による生野島全世 帯対象の宅配サービスでは全配送日で注文が発生し、 「暮 らしが楽になった」等の声が得られ、買い物負担軽減と 生活利便性向上が実現している。こうした夜間・早朝の 移動手段と宅配サービスの整備は、島民の暮らしを支え
資料)大崎上島町
(輸送力強化に資する自動運転トラック) 国土交通省では、高速道路における自動運転レベル4トラックの社会実装を目指し、2025 年3月 から、新東名高速道路において路車協調システムによる自動運転トラックの公道走行の実証実験を実 施している。2026 年は、新東名高速道路での実証結果等を踏まえ、合流長が短いなど、より厳しい 道路構造を有する東北自動車道(佐野 SA~大谷 PA)における実証実験を予定している。
94 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-28 路車協調システム
Ⅰ
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 資料)国土交通省
また、自動運転トラックの実装により、一人が複数の車両を遠隔監視する「1対 N」運行が可能に なると、労働生産性の向上により、担い手の処遇改善や自動運転技術への投資に向けた原資の創出が 期待される注 16。 今後も引き続き自動運転トラックの導入やシステム開発を支援し、早期の社会実装を目指すことと している。
図表Ⅰ-2-1-29 自動運転トラックの遠隔監視
資料)国土交通省
⑥自動化技術の飛躍的進化 工事現場や物流倉庫、造船所といった地域の「現場」においても、自動化が進められている。人の 代替や作業効率の向上による更なる生産性向上を目指し、AI やデータの活用による自動化の深化が 進んでいる。
注 16 えば、2050 年までの人口減少 2,100 万人(約 17%減少)に単純比例すると、商用車(バス、タクシー、トラッ 例 ク)のドライバーは約 20 万人減少するが、 自動運転等で生産性が向上して現在の事業規模を維持できれば、ドライバー 1人当たりの人件費を 500 万円と仮定した場合、事業者において人件費減少分に相当する年間1兆円が活用できる投 資余力が生まれることになる。
国土交通白書 2026 95 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(建設現場の更なる省人化・省力化に資する取組(i-Construction 2.0)) 我 が 国 の 建 設 業 が 直 面 す る 将 来 の 担 い 手 不 足 や 生 産 性 向 上 の 課 題 を 踏 ま え、 策 定 さ れ た i-Construction の下で、ICT 等を活用した建設現場の省人化・省力化が進められてきたところ、更 Ⅰ なる生産性向上に向けて、新たな技術を活用した i-Construction 2.0 注 17 を推進している。 設計段階においては、構造物の設計データを標準化することで、AI などのシステムによる数量の自 第2章
動判読が可能になるなどデータ活用の効率化が図られる。一部では、標準化された三次元モデルのデー タから算出される数量を、積算システムに自動入力する「BIM/CIM 積算」の試行が始まっている。 国土交通分野における取組と今後の展望
図表Ⅰ-2-1-30 砂防堰堤におけるBIM/CIM積算の試行
資料)国土交通省
また、施工段階においては、AI カメラやデータを用いた建設機械の稼働状況把握や、建設機械に AI やセンサを組み込み、人が認識・判断している作業の補完・代替することなど、建設現場におけ るあらゆる活動をデータにより可視化し、建設現場の最適化を目指す取組を推進している。 さらに、維持管理の段階においては、設備の維持管理における省人化及び効率化を図るとともに、 平時、災害時に遠隔で機器障害状況の把握、迅速な復旧を可能とするため、リモートメンテナンスを 推進している。離島等に所在する電気通信設備にセンサを設置し、温度・振動・異常音等のデータを 収集・蓄積・解析することで、遠隔からでも設備の状態把握が可能となる。また、異常が見られた際 には、遠隔操作ロボット等によるメンテナンスを実施することで迅速な措置につながることが期待さ れる。
図表Ⅰ-2-1-31 リモートメンテナンス
資料)国土交通省
注 17 国土交通省では、AI・ロボットを含む様々な技術を活用することにより、2040 年度までに建設現場の省人化を少な くとも3割、生産性を 1.5 倍にすることを目指す取組「i-Construction 2.0」を公表した(2024 年 4 月)。
96 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Interview AI 等の新技術がもたらす建設業の生産性向上 インタビュー あかり 燈㈱ 野呂 佑希氏(代表取締役社長 兼 CEO) Ⅰ 武田 亮太氏(DX Solution 事業本部 General Manager)
第2章 野呂 佑希氏 武田 亮太氏
AI 技術は、社会課題の解決と構造変革をもたらし、成 全、 資材管理などの定型的かつ膨大な業務が多く存在し、 熟した産業を成長させる可能性をもつイノベーションで こうした領域は AI の力が発揮されやすい。一方で設計に
国土交通分野における取組と今後の展望 ある。日本最先端の AI の研究開発を社内で行い、建設・ ついては、法規制への対応やデザインなど創造的な側面 製造・物流分野などにサービスを提供している燈㈱代表 も多いため、実用レベルでの自動化に到達するまでには の野呂氏と DX Solution 事業本部 General Manager の 一定の時間が必要と考えている。 武田氏に我が国における AI 活用の現状と社会実装に向け 施工管理については、写真・画像データの活用が抜本 た課題等、お話を伺った。 的な生産性向上のカギになると見ている。これまで工事 写真台帳に記録として残されるに過ぎなかった現場写真 1. 我が国の AI 活用の現在地 だが、精度が年々向上している画像認識 AI の活用により、 ① AI 活用の現状と課題 その活用の幅は大きく広がってきている。 AI 活用をめぐるフェーズは現在、「AI を使って何がで 施工計画においても、資材の配置、工程の順序、スペー きるか」を模索(概念実証)する段階を終え、一部の先 スのやりくりのシミュレーションなどに有効である。さ 進的な企業や大企業を中心に、AI の現場導入(社会実装 らに、出来高データが自動で集計され、請求業務まで一 の初期段階)まで進んできている。一方で、米国や中国 気通貫で処理できるようになれば、施工管理の構造その と比較すると、全社的な業務プロセスの統合や破壊的な ものが大きく変わる可能性がある。 イノベーションにつながるようなレベルには達していな い。AI 活用の課題としては、第一にフェーズ、部門、企 ②フィジカル AI が担うべき仕事と、人が担い続けるべき 業ごとのデータの分断・サイロ化であり、第二に、失敗 仕事 を許容できない文化があるのではないか。 重労働や危険作業、定期的な巡視等はフィジカル AI が 代替していくべきである。その上で、人が行う価値ある ② AI 導入に関する四つの建設業界特有の課題 仕事としては、①不確実性への対応、②合意形成、③問 建設業界への AI 導入には、業界特有の課題として、大 いを立てる力、④領域を横断する力、の四つであると考 きく四点あると考えている。 えている。 第一に、建設現場は地形や気候、周辺環境が案件ごと 現場での突発的事象に臨機応変に対応するには、人間 に異なる一品受注生産であるため、同じ AI モデルをその の判断が必要であり、発注者や協力業者、さらには近隣 まま適用しにくいという点である。 住民など多様なステークホルダーとのコミュニケーショ 第二に、熟練職人の経験や勘といった暗黙知をデータ ンを通じて物事を進める力は、人間のコアな価値領域で として取り込む必要がある点である。また、粉塵や天候 あると認識している。また、AI は与えられたタスクを解 変化、不安定な足場というロボットや IoT 機器を導入す くことには長けている一方、「何を解くべきか」を定義 る上での物理的な課題も存在している。 することは難しい。AI でカバーできるコンテキストには 第三に、意匠・設計・構造などの細かな分業体制により、 限界があるため、複数領域を横断して現場の意思決定に 全体最適が困難である点である。昨今需要が高まるデー 落とし込む役割は、今後も人間が担い続ける必要がある タセンターなどでは設計プロセスが従来と異なることも と考えている。 あり、従来の分業体制のままでは難しいと考えている。 第四に、重層下請構造により、1社だけではシステム ③技能労働者の価値はさらに高まる をアップデートしづらいという点が挙げられる。 米国で起こっているような「ブルーカラービリオネア」 (AI がホワイトカラーの仕事を奪っていると言われる一 2. 生産性向上に向けた AI の活用、役割について 方で、職人的な技術が必要なブルーカラーの収入が上昇 ①写真・画像データの AI 活用が、定型的かつ膨大な業務 している現象)は、日本でも起きる可能性は高い。知識・ の効率化に効果を発揮する 経験が要求され、複雑な物理作業を完遂できる技能労働 施工計画・施工管理には、写真記録、出来高管理、安 者の価値は今後も上昇するとみている。
国土交通白書 2026 97 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
一方で、ホワイトカラーが価値を失うとは考えていな 域であり、民間企業が単独でリスクを取るには投資や予 い。経験と AI 技術の双方を兼ね備え、新しい建設業の姿 算面で不安もあるため、国主導で進めてもらえるならば、 をデザインできる人材にとっては、AI 時代はチャンスと 我々としても手を挙げやすくなる。
Ⅰ なると考えている。 また、その際の支援のあり方も重要だと感じている。 人件費補助を中心とした形は、我々のようなテクノロ 第2章
3. 社会実装に向けた課題について ジーを産業に実装していく事業体には必ずしも適合しな ①技術の進歩に即した法律等のアップデートが必要 い面がある。売上を立てながら実現していくことが前提 経済成長に資するイノベーションを促進するという観 となるため、その形に合った支援スキームが整備されれ 点では、技術の進化スピードに対して法律のアップデー ば、スタートアップを含む民間からの参入も増えるので 国土交通分野における取組と今後の展望
トが追いついていないと考えている。特定の技術や手段 はないか。 などの仕様を細かく規定するのではなく、安全性に基づ いた性能規定を進めていくのは一つの手段ではないか。 4. AI 等、新技術によって生産性が向上した明る 事故等に対する責任の所在を明確にしつつ、実証実験 い未来について を奨励していくことも有効だと考えている。また、紙を ① AI 等、新技術の普及がもたらすインフラ・交通の未来 ベースにした手続きといった既存慣習を積極的に棚卸し これまで専門家にしかできなかったことが、日常のイ し、制度をアップデートしていくことも重要なポイント ンフラに組み込まれていくという転換が起こるのではな だと感じている。 いかと予想している。現在、技術者が数年に一度行って いる橋梁やトンネルの点検を、道路を走る車のドライブ ② AI 推進に必要なのは、失敗を許容して挑戦を評価する レコーダーやスマートフォンのカメラにより「毎日点検」 文化づくり されることが実現されるのではないか。これは、点検頻 新たな技術を適切に使いこなせる人材を育てるために 度が劇的に上がるだけにとどまらず、都市の三次元モデ は、AI に関する知識と自社の業務の双方に精通した人材 ルが常にリアルタイムで更新されるようなデジタルツイ の育成が重要だ。事業者には、AI ツールを自主的に活用 ンを実現させることもできると予想される。 できる環境を整え、さらにノウハウや成功事例を共有し 交通分野では、自動運転や MaaS の普及によって自動 て刺激し合う環境作りや、AI に不慣れな人材でも置き去 化や渋滞解消が進んでいくと考えられる。そのためには りにしない仕組みづくりが必要である。 データが継続的に集まる仕組みをいかに設計するかがカ そして、試行錯誤の中でアイデアは生まれてくるため、 ギとなる。 社員が試行錯誤してアイデアを生み出せる環境を醸成す ることが重要である。 ②地方へのインパクトはより大きなものに AI は都市部との距離やスキルの差を埋める手段ともな ③国主導のデータ標準化、データ統合基盤の整備を期待 り得る。例えば、地方にいながら都市部のプロジェクト すでに PLATEAU や全国道路施設点検データベース、 に遠隔で関わることや、熟練者が不足している地方の現 水防災オープンデータ提供サービスなど、国では多くの 場を、AI を通じて都市部からサポートすることも期待さ 情報を公開しているが、さらに画像や点群、映像といっ れる。 た非構造データが、AI の学習においては不可欠だ。ひび 自動運転に関しても、 公共交通が衰退している地方は、 割れや変状について画像と、その画像と劣化度が紐付け 人流が少なく、自動運転を導入しやすい環境であり、ラ られる形で公開されれば、予知保全技術の促進に大きく ストワンマイルの移動手段として有効になり得る。さら 貢献するだろう。 に、橋や道路、上下水道などの老朽化対応が大きな課題 また、現状ガス・水道・電気・通信事業者が分散して となっている地方自治体にとって、AI による補修優先箇 管理している埋設物に関するデータを国として標準化 所の自動判定や、予算配分の意思決定支援は、都市部と し、統合できる基盤が整備されれば、地中を探査する技 同等の品質維持を可能にすると考えている。 術と組み合わせて活用の可能性が広がると期待している。 こうした各種インフラ面の整備は、医療・教育・行政 工事写真や予知保全の分野について、民間の市民開発 といったサービスのリモート化にも連鎖的につながって や民間での開発に任せるだけでなく、国のプロジェクト いき、やがて国土交通分野にとどまらず、社会全体に効 として進めていくことも一つの選択肢ではないかと考え 果が波及していくことが期待される。 ている。これらは大きなイノベーションが求められる領
98 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(物流分野の更なる省人化・省力化) 物流分野では、2024 年度に約 14%の輸送力不足が生じるとされていたが、官民の取組の成果によ りおおむね克服し、物流の機能を維持する一方で、物流革新の「集中改革期間」と位置付けられる 2030 年度までに、更に深刻化する担い手不足等に対応し、物流機能を維持するための施策の具体化・ Ⅰ 深度化が必要である。
第2章 このような中で、国土交通省では、物流について新たな価値を創造するサービスとして捉え直 し、より上質で魅力ある産業へと転換させるため、2026 年 3 月に「総合物流施策大綱(2026 年度~ 2030 年度)」を策定し、徹底的な物流効率化や物流 DX 等に取り組むこととしている。
国土交通分野における取組と今後の展望 (AI 等を活用した物流効率化) AI 等の新技術の開発と実用化を踏まえ、 図表Ⅰ-2-1-32 AI等を活用した配車・運行計画の最適化 物流分野のイノベーションの実現に向け て、企業横断的な輸配送データを扱い、多 数の荷主・物流事業者が関わる集配送の マッチングや配車・運行計画の最適化など の先進性・革新性の高いユースケースの創 出を行う取組を推進している。また、EC 資料)国土交通省 市場や冷凍食品市場の拡大に伴う、輸送・ 保管需要の増大に対応するため、無人荷役 機器や無人搬送機(AGV) 、自動倉庫等を活用した作業の効率化が見られる。
(自動点呼ロボット) 自動車運送事業者は、乗務前後のドライバーに対して原則対面での点呼業務が法令で定められてい るが、2025 年の法改正により「対面と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法」 として ICT 等の活用による遠隔点呼や、ロボットを活用した自動点呼も認められている。これによ り対面での点呼という労働集約型の働き方が解消され、点呼執行者の業務効率化、生産性の向上が見 込まれる。
資料)㈱ナブアシスト
国土交通白書 2026 99 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(造船業における AI・ロボット等を活用した取組) 四方を海に囲まれている我が国において、貿易量の 99%以上を担う海上輸送は、国民生活・経済 活動を支える重要な役割を担っている。造船業は、その海上輸送に必要な船舶を安定的に供給してお Ⅰ り、経済安全保障の観点からも重要な産業である。一方で、我が国の造船業は、近年、中国・韓国造 船業との厳しい競争の中で建造能力が縮小してきており、国内船主の需要を十分に受け止め切れてい 第2章
ない状況である。 今後、ゼロエミッション船をはじめとする次世代船舶の需要の増大も見込まれているところ、造船 業の再生に向け、DX や AI・ロボット技術を駆使した建造プロセス全体の生産性向上が求められて 国土交通分野における取組と今後の展望
いる。
Column コラム デジタルで人・モノを管理する造船所「デジタルシップヤード」 (国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所)
我が国は、かつて新造船受注量世界シェアの約 50% その一環として、バーチャル空間上で造船作業を精密 を占める世界最大の造船国であったが、近年は国際競争 に再現する「建造シミュレータ」の開発や、設計から造 の激化により建造量は減少傾向にあり、2019 年の 1,600 船までの一貫したデータ連携・標準化に関する研究開発 万総トンから 2024 年には 900 万総トンへと減少してい を行っている。建造シミュレータの実用化により、作業 る。また、造船業では、鋼材・資材の高騰や、人材不足 員の配置計画、コストの算定の正確性が向上するほか、 等の要因が指摘されているほか、造船所で蓄積されてい 作業の支援システムにより作業が効率化し、建造にかか る図面等の設計資産や実績データが体系的に整理されて る期間が短縮され、さらに、設計データ、建造工程、品 いないため、建造までの納期やコストの見積りが困難で 質管理をすべて数値的に管理することにより、納期、品 あるといった課題を抱えている。 質、 コストが計画通り達成されることが期待されている。 そこで、海事・海洋技術に関する中核的研究機関とし 造船が成長戦略の 17 分野の一つに位置付けられ、 て、海上交通の安全及び効率の向上のための研究等に取 2026 年においては、 「研究開発と Society 5.0 との橋渡 り組む国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所海 しプログラム(BRIDGE)」を活用し、AI の活用による 上技術安全研究所は、すべてが数値表現され、すべてが 次世代造船所の実現に資する技術開発を推進しており、 計画通りに完結する造船所を目指す「デジタルシップ 建造シミュレーションの開発を継続・拡大するとともに、 ヤード」構想を掲げ、造船作業の様々な場面に発生する 民間企業等と連携しデジタルシップヤードに資する造船 あいまいさを排除(デジタル化)するための研究開発を AI ロボットの開発を進めることとしている。 行っている。
<建造シミュレーション>
資料)国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所海上技術安全研究所
100 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
また、造船の工程は、船体の鋼板加工・組立から、完成した船体を水上(海)に浮かべる「進水」、 ぎ そう 船体にエンジンやパイプ等の各種装備を取り付ける「艤装」まで多岐にわたり、熟練の技術・技能を 必要とする。造船の技術・技能者の高齢化や若年者不足が顕在化する中、将来にわたり高品質な船を 建造するため、技術・技能の維持(技術伝承)が求められている。 ぎょうてつ Ⅰ また、造船の工程の中でも非常に重要であり、高度な技術である「 撓 鉄」について、AI やロボッ
第2章 トも活用した技術伝承が進められている。
Column コラム
国土交通分野における取組と今後の展望 再び世界の頂点を目指す「造船ロボット」の最前線 (ジャパンマリンユナイテッド㈱)
近年、造船所では、担い手不足や技術伝承の課題が顕 対応困難であった狭あい箇所の溶接にも「小型・可搬ロ 在化しており、今後、新造船の需要増大も見込まれる中、 ボット」を開発・運用して、自動化をさらに進めている。 生産性向上に資する取組が求められている。 同社は、AI・ロボット等の導入によって、更なる生産 大型バルクキャリア、大型タンカー等を多数建造し、 性向上を図るだけでなく、 造船業は「きつい、 汚い、危険」 我が国の造船業界をリードするジャパンマリンユナイ の3 K のイメージが根強い中、人が働きやすい環境をつ ぎょう テッド㈱津事業所では、生産性向上を目的として、 撓 くり、建造量の拡大に向けて、人材の確保・育成を行っ てつ 鉄ロボット等の導入が進められている。撓鉄とは、鋼板 ていくこととしている。 を加熱・冷却し、熱膨張と収縮を利用して、船体等の滑 <撓鉄ロボットの稼働状況> らかな三次元曲面を作り出す高度な造船技術である。撓 鉄ロボットは2台で1人分の作業を代替し、AI も活用し ながら、「鋼板のどの位置を、どれくらいの入熱で、ど の順序で加熱すればよいか」シミュレーションも行って いる。一般に、一人前の撓鉄技術者と認められるまで、 おおむね 10 年程度の実務経験を要するとされていると ころ、撓鉄ロボットによる仕上がり精度は、熟練の技術 者に遜色ない水準に達しつつある。 また、自社で開発している「大組立溶接ロボット」は 1 人のオペレーターで 8 台以上を順次操作し、作業効率 を大幅に向上させており、「大組立溶接ロボット」では
資料)ジャパンマリンユナイテッド㈱
国土交通白書 2026 101 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
⑦ AI・新技術によるパフォーマンス向上 生産性向上に向けては、自動化だけではなく、AI・新技術の活用によって、インフラのパフォー マンスを向上させていくことが重要である。例えば、ダムの運用や水道管の漏水探査等に AI を活用 Ⅰ することで、効率的なインフラの管理・運用を進める取組が見られる。 第2章
(AI を活用したダム最適運用) 水力発電は、再生可能エネルギーの中でも、設備の寿命が長く、100 年以上稼働している発電所も 存在している。一方で、設備保護のため、余裕を持った安全率(設備余力)の設定がされており、最 国土交通分野における取組と今後の展望
大限の活用に至っていない状況である。このような中、AI を活用し、ダムの最適な運用による効率 化を図ることで、生産性を向上させていく取組が推進されている。
Column AI で変わる賢いダム運用(北陸電力㈱) コラム
水力発電は、天候の影響を受けにくく安定した発電が 認された。2021 年度からは、浅井田ダムを含む五つの 可能で、制御性にも優れているほか、適切な維持管理に ダムに適用範囲を拡大し、五つのダム全体で検証したと より長期間利用できる点が特長である。一方、気候変動 ころ、水系全体で、発電量として年間約 1,500 万 kWh に伴う洪水調整への対応ニーズの高まりや、クリーンエ 程度の発電量増加が見込まれることが確認されている。 ネルギーとしての注目が増す中で、ダム運用は一層複雑 今後、同社は、ダム最適運用システムを引き続き活用 化している。このため、AI を活用した高度な判断・意思 していくとともに、クリーンエネルギーである水力発電 決定に加え、専門的な技術の継承が求められている。 の電力量増加に向けて継続的に取り組んでいくこととし 北陸電力㈱では、降雨実績や降雨予測等を基に、33 ている。 時間先までのダムへの流入量を高精度で予測する「流入 <ダム最適運用システムのイメージ> 量予測 AI」と、それから得られたダムへの流入量を基 に、ダム・発電所のゲート放流のタイミングを運用上定 められた規則を守りつつ提案する「ダム最適運用システ ム AI」とを運用している。 2019 年に、浅井田ダム(岐阜県)において実施され た実証実験では、流入量の予測精度が従来に比べて大幅 に向上し、予測結果を活用しダム運用を最適化すること で、無駄な放流をなくして早期にダム水位を回復させ、 年間約 500 万 kWh の発電電力量が見込まれることが確
資料)北陸電力㈱
(AI を活用した水道事業の効率化(有収率の向上)) 浄水場等から送出された水量のうち、料金を徴収できなかった水量である無収水量を削減すること で有収率が向上する。無収水量が生じる要因としては、水道管の漏水等が挙げられる。 AI の活用による漏水調査等のスクリーニング技術により、効率的に維持・管理を行うことで無収 水量を削減し、水道事業の効率化を図る取組が見られる。
102 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
Column AI が見張る水道設備(㈱日立システムズ) コラム
Ⅰ 水道事業においては、事故発生の未然防止や早期復旧 軽減し、メンテナンス作業が効率化することが期待され
第2章 対応を通じての水の安定供給が求められているが、一方 る。 で、給水人口の減少による水道事業の経営悪化や人手不 同社は、2025 年に兵庫県内の水道事業体において水 足、設備維持・管理の難しさといった課題を抱えており、 道管の劣化要因と漏水発生の可能性を AI で分析する実証 水道設備のメンテナンス作業における効率化や精度向上 実験も実施しており、今後、水道設備における AI 分析の
国土交通分野における取組と今後の展望 が急務となっている。 高度化、拡大化に取り組むとともに、水道 DX の研究開 そこで㈱日立システムズは、水道事業者の水運用の効 発を進め、高品質な水道事業の実現を目指している。 率化と安定供給の両立をサポートする「CYDEEN 水イ <AI分析・可視化のイメージ> ンフラ監視サービス」のオプションとして、「AI 異常検 知サービス」の提供を 2025 年5月より開始した。 水インフラ監視サービスは住民の生活圏に近い配水管 に設置したセンサにより、水圧、流量、水質、水位を監 視し一元的に管理する機能をもつ。「AI 異常検知サービ ス」は、さらに正常時に取り得る水圧や流量等の基準値 を AI が生成し、比較・分析まで行うことで、リアルタイ ムの水圧等のデータが、生成された基準値からどの程度 逸脱しているかを可視化し、配水状態の微細な変化を捉 えることで異常を検知することを可能とする。当サービ スにより、漏水や事故による突発的かつ長時間の断水な どの影響が減少し、さらに水道局員の復旧作業の負担を
資料)㈱日立システムズ
国土交通白書 2026 103 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(港湾分野における技術活用) 港湾では、 「ヒトを支援する AI ターミナル」の取組やサイバーポートの活用により生産性の向上を 図り、港湾ロジスティクスの強化に取り組んでいる。 Ⅰ 一部の港湾では、遠隔操作技術やサイバーポートの導入によって、荷役作業時間の短縮や手続きの 電子化が進んでおり、コンテナターミナルのゲート前混雑の解消やコンテナトレーラーのターミナル 第2章
滞在時間の短縮を図るシステムの導入も進められている。
Column コラム 国土交通分野における取組と今後の展望
神戸港におけるコンテナターミナルの競争力強化 (近畿地方整備局港湾空港部)
神戸港における外貿コンテナ取扱貨物量は、増減を繰 テナへの積込み、コンテナターミナルへの移動」を一貫 り返しつつ近年は回復傾向にあるコンテナ需要に対応す して実施する上屋の整備など、港湾荷役設備の遠隔化や るため、AI や IoT 技術を組み合わせた AI ターミナルの取 高度化を実施し、労働環境の改善と生産性向上の取組を 組を進め、良好な労働環境の整備と生産性の向上を目指 進めている。 している。 その他、GX の面では、水素・アンモニア等の受入環 神戸港では、コンテナ物流の効率化を目的とした新・ 境の整備等を図るカーボンニュートラルポート(CNP) 港 湾 情 報 処 理 シ ス テ ム「CONPAS(Container Fast 形成推進の一環として、一部の RTG のディーゼルエンジ Pass)」を導入し、搬出入の予約によるトレーラー到着 ン発電機を水素エンジン発電機に換装し、2025 年4月 時間の平準化、搬出入情報の事前確認によるコンテナ から6月の間に世界初の現地での稼働実証を実施したと ターミナルのゲートトラブルの回避、ゲートでの PS カー ころであり、本実証を踏まえ、国土交通省港湾局にて「水 注1 ド のタッチと同時に専用携帯端末にトレーラーのター 素を燃料とする荷役機械の導入ガイドライン」の作成を ミナル内の行き先を表示させることによるゲート処理時 進めている。 間の短縮などにより、コンテナトレーラーのターミナル 国土交通省港湾局、港湾管理者(神戸市)、港湾運営 滞在時間の短縮を図っている。 会社等が密に連携し、関係者が一体となって、神戸港の 遠隔操作 RTG 注 2 の導入に係る補助事業を通じて、 また、 発展に取り組んでいる。 港湾労働者の労働環境の改善や「大型貨物の梱包、コン
資料)国土交通省
注1 国際埠頭施設への立入確認を円滑に行うために国土交通省が発行する身分証明書。 注2 タイヤ式門型クレーン(Rubber Tired Gantry crane)。
104 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
一方、諸外国では、港湾全体を対象に AI を活用した運用最適化を図る取組も見られるところ、我 が国においても、国内の港湾の特徴に適した形で、更なる技術の活用による港湾ロジスティクスの強 化が期待される。 Ⅰ
Column
第2章 コラム 海外で進む AI による港湾運用(オランダ)
国土交通分野における取組と今後の展望 ロッテルダム港は、42km にわたる港湾エリアを有す タ等を組み合わせることにより得られる潮位、潮汐流、 る欧州最大の港湾である。2024 年には年間約 2 万 8 千 塩分濃度、風速、風向、視程等の情報のほか、船舶や貨 隻の外航船が寄港しており、同港の管理・運営・開発は 物に関するデータを基に、AI が到着予定時刻や停泊中 Port of Rotterdam Authority(以下、 「ロッテルダム の荷役作業・給油等のタイムスケジュールを生成する。 港湾局」)が担っている。 スケジュールはリアルタイムで更新され、もし変更や遅 港湾に向かう船舶は、着岸して貨物の積み下ろしに使 延等が発生した場合でも対応可能となっている。こうし 用する場所(バース)が使用できるようになるまで海上 た取組により港湾の利用率が向上し、船舶の待機時間 で(長い場合は数日間)待機する場合がある。その際に が 20%削減されることが確認されている。同プラット 船舶から排出される CO2 等の有害物質の削減のため、 フォームは 2020 年現在、50 以上の組織で利用され、 2017 年にロッテルダム港湾局は、港へ航行したコンテ 10 万回以上の寄港をサポートしている。 ナ船のすべての動きを分析した。その結果、入港する船 今 後 は、 欧 州 の 他 の 港 湾 や オ ラ ン ダ 政 府、EU、 舶に対し、より早く、より正確な入港可能時刻を連絡す NATO と協力し、自律型の無人システムの構築に向け、 ることで、有害物質の排出を削減できることが明らかに 開発を進めていくこととしている。 なり、さらに、港湾の運用効率化にも貢献することが明 らかになった。 <PortXchange SynchronizerのCGイメージ> そこで、ロッテルダム港湾局は、船舶の寄港を可能な限 り正確に計画するための寄港最適化プラットフォームと して、2018 年に船舶・ターミナル計画プラットフォーム 「Pronto」を立ち上げた。現在、同プラットフォームは ロッテルダム港湾局が 2019 年に設立した PortXchange Products BV により、 “PortXchange Synchronizer” (ポー トエクスチェンジ・シンクロナイザー)という名称で提供 されている。 PortXchange Synchronizer は、 港 湾 に 設 置 さ れ た 44 個のセンサ、多数の予測システム、気象・天文デー
資料)PortXchange Products BV
国土交通白書 2026 105 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
(2)インフラの新たな活用によるエネルギー安全保障への貢献 経済安全保障や脱炭素を巡る動向を踏まえ、エネルギー・重要鉱物の自律性向上(自給率向上・調 達多角化)や、モビリティ・インフラ分野の事業性向上、日本経済の成長力向上を同時追求する「三 Ⅰ 方よし」に向けた取組が推進されている。陸海空や地域・まちの移動体とインフラを活用するモビリ ティ・エネリンク構想(仮称)は、Create、Connect、Consume(つくる、つなぐ、つかう)の 第2章
“ 3 C” で、エネルギーの自律性向上に貢献するものである。
①浮体式洋上風力発電の普及促進 国土交通分野における取組と今後の展望
「第7次エネルギー基本計画」(2025 年2月 18 日閣議決定)では、再生可能エネルギーの主力電 源化を進めることとしており、洋上風力発電は 2030 年までに 10GW、2040 年までに浮体式を含め 30 〜 45GW の案件形成を目指すとされ、さらに、「洋上風力産業ビジョン(第2次)」では、2040 年までに 15GW 以上の浮体式洋上風力発電の案件を形成する目標が設定されている。 2025 年 11 月から、国土交通省は、浮体式洋上風力発電の海上施工等に関する官民 WG で整理し た海上施工シナリオ等を踏まえ、浮体式の大量導入に向けて港湾機能や港湾の施設規模等について検 討するため、「洋上風力発電の導入促進に向けた港湾のあり方に関する検討会」を開催している。
Column 潮風から発電、国内初の浮体式洋上風力発電所 コラム
(五島フローティングウィンドファーム合同会社・五島市)
我が国は、エネルギー供給の多くを化石燃料の輸入に 島市福江島の崎山漁港の沖合約7 km の海域で、複数基 依存しており、エネルギー安全保障と脱炭素を両立する を設置する商用浮体式洋上風力として国内初となる「五 観点から、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、 島洋上ウィンドファーム」の商用運転を 2026 年 1 月よ 地域との共生等を図りながら、最大限の導入を図る必要 り開始した。 「五島洋上ウィンドファーム」では、洋上 がある。また、DX や GX の進展による電力需要増加が に8基の風車(2,100kW ×8基)が設置されている。 見込まれる中、それに見合った脱炭素電源を十分確保で 発電された電力は、五島市内の一般家庭や企業などに届 きるかが、我が国の経済成長や産業競争力を左右する状 けられ、五島市の再生可能エネルギーによる発電量は電 況にある。 力需要の 80% まで増加する見込みである。五島市の試 その中で、洋上風力発電は、「第7次エネルギー基本 算では、 浮体式洋上風力発電を更に広域に導入した場合、 計画」において、再生可能エネルギーの主力電源化に向 年間想定発電量で約 63,600GWh のポテンシャルを有 けた「切り札」と位置付けられている。しかし、我が国 しており、これは五島市の年間電力消費量の約 400 倍に は遠浅の海域が少なく、欧州等で洋上風力発電の主な設 当たる。 置方法となっている「着床式」の構造物を設置できる場 浮体式洋上風力発電は、今後も環境への負荷が少ない 所には限りがある。 新たな発電施設としてカーボンニュートラルへの貢献 かば しま そこで、長崎県五島市椛 島沖では、2010 ~ 2015 年 だけでなく、新たなエネルギー資源や安定した電力供給 度に実施された環境省実証事業において、浮体式洋上風 ツールとして、エネルギー安全保障の面においても貢献 力発電施設(はえんかぜ)の設置に成功した。その後、 していくことが期待されている。 注1 五島フローティングウィンドファーム合同会社 が、五
注1 戸田建設㈱を代表企業として構成された特別目的会社(SPC) 。
106 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
<風車設置場所> <風車全景>
Ⅰ
第2章 資料)五島フローティンウィンドファーム合同会社
国土交通分野における取組と今後の展望 ②次世代太陽電池を活用した公共施設やモビリティ 再生可能エネルギーのうち、次世代太陽電池として開発が進むフィルム型のペロブスカイト太陽電 池注 18 やカルコパイライト太陽電池注 19 は、軽量かつ柔軟という特性を持つ太陽電池である。国土交通 分野では、インフラ空間や建築物を活用したペロブスカイト太陽電池の設置が促進されている。 また、ペロブスカイト太陽電池とカルコパ ンデム型ペロブスカイト太陽電池の タ 図表Ⅰ-2-1-34 イライト太陽電池のそれぞれの利点を踏ま 公共施設での屋外実証
え、両者を組み合わせ、積層構造(タンデ ム構造)にすることで、高効率で軽量・フ レキシブルかつ耐久性のある次世代太陽電 池の実現が期待される。この次世代型タン デム太陽電池の社会実装に向けて、既存の 公共施設での実証実験が始まっている。 さいたま市役所本庁では、ペロブスカイ ト太陽電池とシリコン太陽電池を組み合わ 資料)さいたま市 せたタンデム型ペロブスカイト太陽電池を 搭載した独立電源システムの実証事業が開始されている。 さらに、神奈川県では、2026 年から、国内で初めてカルコパイライトの次世代型タンデム太陽電 池を設置する実証実験を順次開始している。実証実験では、県保有施設(信号機、県庁渡り廊下等) に設置し、太陽光の角度等の変化による発電量への影響や曲面に設置した場合の劣化状況、将来的な 用途を検証することとしている。
注 18 晶構造を利用した薄膜型太陽電池。低温プロセスで製造できるため大幅なコスト削減が見込まれ、軽量で柔軟なモ 結 ジュール化が可能。シリコンでは難しい建材一体型(BIPV)への応用が進み、色調や透過性の調整にも優れ、デザイ ン性と高効率を両立できる点が特徴。 注 19 化合物半導体を用いた薄膜型太陽電池。従来のシリコン太陽電池に比べて軽量で柔軟なモジュールを製造でき、建物 の壁面や曲面など、設置場所の自由度が高く、耐久性や長期安定性にも優れている。
国土交通白書 2026 107 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-35 地方公共団体保有施設を活用した実証実験
Ⅰ 第2章
資料)神奈川県 国土交通分野における取組と今後の展望
これら次世代太陽電池の特性を活かした EV モビリティの導入も進んでおり、モビリティのエネル ギー転換も進められている。
Column 太陽の力を受けて走るモビリティ(EV ジェネシス㈱) コラム
日本国内では太陽光発電の導入拡大が進み、平地面積 の実用化を目指した開発も始まっている。㈱ EV ジェネ 当たりの設備容量は主要国の中で最大級(2021 年度: シスは、次世代型の「曲がる太陽電池」を搭載した EV 514kW/km²)となっている一方、従来型の太陽光パネ 三輪車を開発・販売している。 ル設置のための適地が大幅に不足している状況にある。 太陽電池については、これまでの屋根や平地を中心に こうした中、ペロブスカイト太陽電池、カルコパイライ 普及が進んできたが、次世代型太陽電池は従来の太陽電 ト太陽電池等の次世代型太陽電池は、軽量・柔軟という 池と比較し、景観への影響が小さく、また、軽量である 特徴を生かし、従来太陽電池の設置が困難であった、建 ことから、建物の窓や壁面、車載等での需要が広がると 物の壁面・曲面、重量物の設置が困難な屋根、車両等の 見込まれており、我が国が目標として掲げている 2050 場所にも導入が可能なことから、再生可能エネルギーの 年カーボンニュートラルの実現に貢献することが期待さ 導入拡大と地域共生を両立するものとして期待されてい れる。 る。ペロブスカイト太陽電池等の次世代型太陽電池の需 <EV三輪車> 要創出に関しては、自治体を含めた公共部門や環境価値 を高く評価する企業からの導入が期待される。 こうした背景を踏まえ、公共施設への導入例として、 札幌市役所本庁舎では、ペロブスカイト太陽電池を用い た BIPV(建材一体型太陽光発電)内窓の発電性能の検 証等を目的とした実証が開始されている。また、愛知県 庁では、ペロブスカイト太陽電池の発電量や経年劣化等 の検証を行う実証事業が開始されている。 モビリティ分野では、車載用ペロブスカイト太陽電池
資料)EV ジェネシス㈱
③水素実装に向けたシステム構築 水素は、発電・輸送・産業といった幅広い分野の脱炭素化に資することから、2050 年カーボン ニュートラル実現に向けたカギである。また、多様な資源から製造できるため、我が国のエネルギー 供給・調達リスクの低減に資するエネルギーである。 国土交通分野においても水素実装に向け、水素運搬船や港湾における水素等の受入環境整備、 FCV 商用車の普及促進など様々な取組が進められている。
108 国土交通白書 2026 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
図表Ⅰ-2-1-36 水素実装に向けた取組の例
Ⅰ
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 資料)国土交通省
水素供給網の確保に向けて、神奈川県川崎市では、インフラ地下空間を利用した水素の供給が検討 されている。
Column コラム 人と車とエネルギーが流れる「多摩川スカイブリッジ」(川崎市)
川崎市は、羽田空港に隣接するとともに、川崎港や鉄 る大師橋の全体交通量が約3割減少、うち大型車が約4 鋼・非鉄金属を中心とした日本最大級のコンビナートで 割減少したことにより、大師橋の混雑状況が大幅に改善 ある京浜臨海部を擁しており、交通・産業・国際の観点 した。また、川崎市~東京都大田区間のリダンダンシー から、重要な位置に立地している。また、京浜臨海部には、 が確保され、防災性が向上、川崎臨海部から羽田空港ま 国内水素需要の約1 /10 が集積していることに加え東京 での平均所要時間が、約 14 分から約3分に短縮された。 都港湾臨海エリア全体で年間 12 万トンの需要があるこ 加えて、羽田連絡道路の内部には、将来的な東京方面 とが予測されており、広域的な水素供給の構築が検討さ への水素供給を見込んだ直径 20cm の水素配管用スペー れている。 スが設置されている。川崎臨海部から羽田空港エリアへ このような中、羽田連絡道路(以下、 「多摩川スカイブ の水素供給が検討されており、2050 年のカーボンニュー リッジ」 )は、神奈川県川崎市と東京都大田区羽田空港を トラル実現に向けて、交通の輸送力の発揮のみではなく、 つなぐ新しい橋として、 2022 年3月に開通した。開通後、 国内の経済活動を支える新たなエネルギーインフラとし 約6か月の効果として、多摩川スカイブリッジと併走す ての活躍も期待される。
<川崎臨海部の概況> <水素配管スペース>
資料)川崎市
国土交通白書 2026 109 第1節 生産性向上に向けた国土交通分野における取組
④走行中給電 現在、我が国では、EV 商用車の導入支援や走行中給電システムの実装が進められている。走行中 給電とは、EV の充電スポットが限られるなどの課題があることから、道路から非接触で充電を行う Ⅰ ものである。
Column 第2章
コラム 走りながら充電できる新しいインフラ「走行中無線給電技術」 (㈱デンソー・東日本高速道路㈱) 国土交通分野における取組と今後の展望
環境へ配慮するため、化石燃料を使用しない EV トラッ で走行が可能な区間や路線バスの走行ルートに設置する ク等の商用運行が進んでいるが、トラック等大型車両の ことで、多数の対応車両に対して効率よく電力を供給し、 EV 化は搭載する電池の重量が重く貨物の積載量が同型 充電のための停車を必要とせず、 長距離走行が可能となる。 の化石燃料車両より小さくなる、充電スポットが限られ このような中、㈱デンソーは、大型の実証実験設備を るなど課題が存在する。 独自に構築し、 性能や耐久性等を評価できる基盤を整備、 こうした課題を解決すべく、道路から非接触で車両に 電気を受け取る「受電コイル」を搭載した電動車両の開 給電を行う、走行中無線給電(DWPT)の研究が進めら 発などを進め、2024 年 9 月、50 時間充電停車なしの走 れている。例えば高速道路のような、交通量が多く高速 行を成功させた。
<運転の様子> <テストコース>
資料)㈱デンソー
また、東日本高速道路㈱では、先述した㈱デンソーに 性や保守性等、実装に向けた様々な課題を検証する予定 加え、自動車メーカー、建設会社、大学と協働し、実際 である。機器や埋設のコスト低減、法令整備など克服す の高速道路上での走行中無線給電技術の実証を日本で初 べき課題もあるが、技術の高度化とともにこれらが解決 めて行う「館山プロジェクト」を発足させた。2027 年 されることで、搭載電池量の低減による軽量化や積載量 度以降に複数回の実施を予定する実証実験では、館山自 増加が実現し、商用車の BEV 化 /FCEV 化を大きく後押 動車道君津 PA 付近の本線部約 300m の区間において、 しするものと見込まれる。持続可能な物流システムの実 参画事業者が開発した複数の走行中無線給電システムに 現に向けた重要なインフラ技術の一つとして、今後の普 ついて、埋設時の仕様や舗装への影響、走行路面の安全 及が期待される。
資料)東日本高速道路㈱(NEXCO 東日本)
110 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
第2節 望ましい未来に向けた展望 前節において、我が国の経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラに関する取組を整理した。 ここでは、今後の社会の望ましい姿についての国民の意識調査や、有識者の意見を踏まえつつ、経 Ⅰ 済成長を牽引する未来のプロジェクトや技術等を紹介し、わたしたちの暮らしや社会を展望する。
第2章 1 国民の願う将来の社会像
国土交通分野における取組と今後の展望 (1)将来の社会に対する国民意識の動向 ①将来の働き方について 国土交通省「国民意識調査」において、インフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来社 会では、どのような働き方を最も期待するかについてたずねたところ、全年代では、「ミスや事故が 技術で予防される、安全・安心な職場環境」の割合が最も高く(34.8%)、次いで、「仕事でのスト レスや不安がなくなり、働きがい・幸福感を実感できる社会」(23.5%)の順となり、AI・ロボット、 ドローン等、新たな技術・イノベーションが、過酷・危険な作業を代替し、安全・安心な職場環境が 守られることを重視する結果となった。 年代別でみると、10・20 代においては「仕事でのストレスや不安がなくなり、働きがい・幸福感 を実感できる社会」の割合が最も高く、年代が上がるにつれ低くなる結果となった。一方、「高齢者・ 障害者でも技術で能力をサポートし、働き続けられる社会」の回答は、年代が上がるにつれ高くなる 結果となった。さらに、10・20 代から 40 代においては、「働く「場所・時間」が進化し、時間や場 所を自分で設計できる社会」が、50 代以降の年代より高い結果となり、ライフイベントを意識する 機会を重視する結果となった。
図表Ⅰ-2-2-1 インフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来に向けてどのような社会を最も期待する か(働き方分野)
働く「場所・時間」が進化し、時間や場所を自分で設計できる社会 ミスや事故が技術で予防される、安全・安心な職場環境 複数分野の技術が組み合わさり、キャリア形成、スキルアップが多様化される社会 高齢者・障害者でも技術で能力をサポートし、働き続けられる社会 仕事でのストレスや不安がなくなり、働きがい・幸福感を実感できる社会
全年代 14.6 34.8 11.2 15.8 23.5
10・20代 16.5 28.2 13.0 9.8 32.5
30代 19.3 34.5 9.5 7.5 29.2
40代 16.7 35.3 9.8 13.5 24.7
50代 13.3 35.3 11.2 16.5 23.7
60代 11.0 41.0 10.7 21.0 16.3
70代 11.0 34.7 13.2 26.5 14.7
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
国土交通白書 2026 111 第2節 望ましい未来に向けた展望
②将来の暮らしについて 国土交通省「国民意識調査」において、インフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来社 会では、どのような暮らしを最も期待するかについてたずねたところ、全年代では、「地方・過疎地 Ⅰ 域でも生活利便性が確保される社会」 (27.2%)、「災害・老朽化リスク管理が高度化し、災害・事故 から人命・暮らしが守られる社会」(26.8%)、「公共交通が充実、発展し、生活圏が広がり、交流や 第2章
消費行動が活発化する社会」 (22.1%)の順に回答が多く、これらの三つの選択肢で、全体の約8割 という結果となった。 年代別で見ると、比較的若い世代については、「公共交通が充実、発展し、生活圏が広がり、交流 国土交通分野における取組と今後の展望
や消費行動が活発化する社会」、 「地域の歴史や伝統を残し、日本固有の文化が維持される社会」の回 答が多くなっており、経済成長や生活圏の拡大だけでなく、日本固有の文化を残していきたいという 意向が高いことがうかがえる。
イ ンフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来に向けてどのような社会を 図表Ⅰ-2-2-2 最も期待するか(暮らし分野)
災害・老朽化リスク管理が高度化し、災害・事故から人命・暮らしが守られる社会 公共交通が充実、発展し、生活圏が広がり、交流や消費行動が活発化する社会 地方・過疎地域でも生活利便性が確保される社会 環境に優しい交通が普及し、持続可能で快適に暮らせる社会 地域の歴史や伝統を残し、日本固有の文化が維持される社会
全年代 26.8 22.1 27.2 14.4 9.5
10・20代 20.2 23.7 25.2 13.7 17.3
30代 25.7 24.5 24.8 11.8 13.2
40代 27.0 24.5 24.8 16.0 7.7
50代 25.5 22.7 26.8 15.5 9.5
60代 31.5 19.3 31.0 13.3 4.8
70代 30.8 18.2 30.7 15.8 4.5
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
③将来の移動について 国土交通省「国民意識調査」において、インフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来 において、どのような移動社会を最も期待するかについてたずねたところ、10 代・20 代から 40 代 までについては、「交通ネットワークの整備により、国内主要都市間を数時間以内で移動できる社会」 の回答が最も多く、ビジネスや旅行といった長距離移動における速達性への期待を意識したと見られ る。 一方で、50 代から 70 代については「多様なモビリティの自動運転機能等の進展により、誰もが
112 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
シームレスに移動できる社会」の回答が多く、60 代から 70 代では「リアルタイムの交通情報によ り、遅延・渋滞を回避してスムーズに移動できる社会」の回答が増える傾向が見られ、日常生活での スムーズな移動への期待を意識したと見られる。 また、10・20 代では、他の年代と比較して「ドローンや空飛ぶクルマなど、新たな移動手段が利 Ⅰ 用できる社会」(18.0%)の回答比率が高く、若年層ほど選択肢に例示された航空分野における新た
第2章 な移動手段に対する関心、未来への期待が高い傾向にあることがわかる。
インフラの整備や技術・イノベーションが発展した未来に向けてどのような社会を 図表Ⅰ-2-2-3 最も期待するか(移動分野)
国土交通分野における取組と今後の展望 多様なモビリティの自動運転機能等の進展により、誰もがシームレスに移動できる社会 交通ネットワークの整備により、国内主要都市間を数時間以内で移動できる社会 MaaSなど統合型サービスにより、ワンストップで最適な移動ルートを選択できる社会 リアルタイムの交通情報により、遅延・渋滞を回避してスムーズに移動できる社会 移動中も快適に過ごせ、時間を有効活用できる社会 ドローンや空飛ぶクルマなど、新たな移動手段が利用できる社会 その他
全年代 22.1 21.1 6.1 21.1 18.3 9.8 1.5
10・20代 16.5 22.7 6.3 16.5 18.3 18.0 1.7
30代 20.0 23.0 6.5 18.2 19.2 12.0 1.2
40代 20.0 22.8 8.2 20.0 19.8 8.3 0.8
50代 23.7 20.3 6.2 20.2 20.0 7.8 1.8
60代 26.3 20.2 5.2 25.5 16.0 4.8 2.0
70代 26.2 17.8 4.0 26.5 16.2 8.0 1.3
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
(2)AI や新技術に対する国民の意識 (AI に対する国民の意識) 国土交通省「国民意識調査」において、AI の活用が社会に与える影響についてたずねたところ、 「大きくプラスになる」 、「ある程度プラスになる」が半数を超え、「ある程度マイナスになる」、「マイ ナスになる」を大きく超えた。一方、 「プラスともマイナスともいえない」が 36.6%存在しており、 AI の活用に関して、明確な評価の判断がつかない傾向も見られた。 また、年代別の回答状況では、「大きくプラスになる」の回答については大きな差はないものの、 60 代、70 代による「ある程度プラスになる」が 50%を超えており、一方で、10・20 代については、 36.7%と最も低い結果となった。さらに、10・20 代について、「ある程度マイナスになる」、「大き くマイナスになる」の回答比率については、他の年代区分のなかで最も高く、AI に対して、より厳 しい判断をしていることが判明した。
国土交通白書 2026 113 第2節 望ましい未来に向けた展望
図表Ⅰ-2-2-4 AIが社会に与える影響について
大きくプラスになる ある程度プラスになる プラスともマイナスとも言えない ある程度マイナスになる
Ⅰ 大きくマイナスになる 第2章
全年代 11.7 44.2 36.6 5.0 2.4
10・20代 11.8 36.7 38.3 7.3 5.8
30代 10.7 40.3 40.5 6.2 2.3 国土交通分野における取組と今後の展望
40代 12.2 40.0 40.3 5.3 2.2
50代 11.7 42.2 37.3 6.3 2.5
60代 11.8 50.5 33.3 3.2 1.2 70代 12.2 55.5 30.0 1.8 0.5 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
(輸送サービスの自動化・高度化に対する国民意識) 国土交通省「国民意識調査」において、「自動運転(レベル4以上)」や「ドローン配送」等の輸送 サービスの自動化・高度化について、どの程度関心があるかたずねたところ、全年代では「非常に関 心がある」 、「ある程度関心がある」の合計が 50%を超える結果となった。 年代別に見ると、比較的若い世代ほど「全く関心が無い」の割合が高く、また、「非常に関心があ る」の割合も高く、関心の度合いがばらつく結果となった。
図表Ⅰ-2-2-5 「自動運転(レベル4以上) 」や「ドローン配送」といった輸送サービスの自動化・高度化について、 どの程度関心があるか
非常に関心がある ある程度関心がある あまり関心がない 全く関心がない
全年代 11.7 43.2 32.2 12.9
10・20代 14.2 38.5 26.7 20.7
30代 13 40.8 29 17.2
40代 13.3 41.3 32.8 12.5
50代 10.5 43.2 34.7 11.7
60代 9 49.5 32.8 8.7
70代 10 45.7 37.3 7
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
114 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
続いて、輸送サービスが自動化・高度化されることで、最も期待するメリットをたずねたところ、 全年代では「人手不足の解消・労働環境の改善」、「過疎地など交通不便地域のサービス向上」といっ た、輸送サービスの維持に関わる回答を合わせると全体の 50%弱を占める結果となり、また、「コス ト削減」や「時間の短縮」等の経済的な効果に関する回答が残る 50%強を占める結果となった。 Ⅰ 年代別に見ると、年代が上がるにつれ輸送サービスの維持に関する回答の割合が高くなる一方、年
第2章 代が下がるにつれ経済的な効果や効率性を重視する回答が高くなる傾向となった。
図表Ⅰ-2-2-6 輸送サービスが自動化・高度化されることで、最も期待するメリットについて
国土交通分野における取組と今後の展望 人手不足の解消・労働環境の改善 過疎地など交通不便地域のサービス向上 コスト削減 時間の短縮 交通事故の削減・安全性向上 交通渋滞の低減 環境負荷の低減(排ガス削減など) その他
全年代 37.3 11.3 25.8 11.1 5.3 5.8 2.6 0.9 10・20代 27.8 10.5 28.3 15.7 6.3 7.2 3 1.2 30代 33.2 11.3 30.5 11 6 5 2 1 40代 37.5 8 30.5 10 6.3 5.3 2.2 0.2 50代 36.8 11.8 25 11.2 5.5 5.5 2.8 1.3 60代 44.2 11.2 23.5 8.3 3.3 6.3 2.2 1 70代 44.3 14.7 16.8 10.2 4.5 5.3 3.3 0.8 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
続いて、どのような自動化・高度化されたサービスがあれば、利用したいかについてたずねたとこ ろ、「自動運転の公共バス・シャトルバス」(43.0%)が最も多く、「荷物配送の速達性が向上する AI や自動運転を活用した物流輸送」 (37.6%)、「自動運転の乗用車(自家用・タクシー)」(32.8%)の 順となり、人流・物流を問わず、新技術への期待が確認された。
図表Ⅰ-2-2-7 どのような自動化・高度化されたサービスを利用したいか
自動運転の公共バス・シャトルバス 43.0
荷物配送の速達性が向上するAI 37.6 や自動運転を活用した物流輸送
自動運転の乗用車(自家用・タクシー) 32.8
ドローンによる小口配送(医薬品、日用品) 31.6
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(単一回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
国土交通白書 2026 115 第2節 望ましい未来に向けた展望
国土交通省「国民意識調査」において、輸送サービスの自動化・高度化が実用化された場合に、ど のような点に不安を感じるかたずねたところ、「事故が発生した場合の責任の所在」が 63.2%、「誤 動作などへの不信感」及び「システム障害・サイバー攻撃のリスク」がそれぞれ約 50% となり、自 Ⅰ 動化・高度化により生じる未知のリスクを不安視する結果となった。 第2章
図表Ⅰ-2-2-8 輸送サービスの自動化・高度化に関して、どのような点に不安や懸念を感じる点
事故が発生した場合の責任の所在 63.2
誤動作などへの不信感 52.3 国土交通分野における取組と今後の展望
システム障害・サイバー攻撃のリスク 48.0
高齢者や障害者などへの配慮不足 21.5
プライバシーの侵害(移動データの収集など) 21.3
サービス導入に伴う失業者の発生 12.5
特に懸念はない 11.5
0 10 20 30 40 50 60 70 (%)
※回答者総数:国民 3,600 人(国内在住の 18 歳以上)。グラフは回答者の比率(複数回答)を示している。 資料)国土交通省「国民意識調査」
116 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
Interview 国土・歴史に根付き、未来に向けて支え続けるインフラ インタビュー
~モデル・タレント 市川 紗椰氏~ Ⅰ
第2章 人気ファッションモデル・タレントの市川紗椰さんは、 が街を作っているのか、そういった何とも言えない、言 大の鉄道好きで、鉄道に関連した番組、イベント、書籍 語化できない「路線らしさ」というのは、海外ではあま などでも多才ぶりを見せている。その市川さんに、私た り感じることはない。鉄道会社が、沿線を街ごとデザイ ちの生活や産業の基盤であり、日本の経済や社会を支え ンしている感じが面白い。
国土交通分野における取組と今後の展望 るハード・ソフトのインフラについて、 ご自身の視点から、 日頃感じていることや今後の課題など、お話を伺った。 2. インフラは熟練の知恵と技能の蓄積の歴史 ①未来に伝えたい近代化遺産 1. 私にとってのハード・ソフトのインフラとは JR 山手線で、49 年ぶりの新駅となった高輪ゲートウェ ①インフラを意識すれば、日常が楽しく豊かに イ駅の開業と並行して、周辺の再開発が進む品川・高輪 私たちが享受している、当たり前と思える日常、便利 エリアで、偶然発見された高輪築堤は、明治まもなく、 で安全な暮らし-それらを、道路、鉄道や橋などのイン 日本初の鉄道開業時に、海上に線路を敷くために建設さ フラが、普段その存在を意識させず、いつも支えてくれ れたインフラ遺構だ。石積みの構造で、見た目も可愛ら ている。 しい。「鉄道は陸上のもの」という概念を覆し、海の上 鉄道好きの私は、鉄道や車で移動するとき、車窓の流 に線路をつくるという発想には驚かされるし、ロマンを れる景色、電車が奏でる走行音などを感じながら、長時 感じさせる。英国の近代的な鉄道技術と、日本の築城技 間の移動でも、移動自体を楽しめている。意識を少しだ 術を応用した現場力とでつくられたハイブリッドとし けインフラにも向けて、「楽しめる視点」が加わると、 て、未来にも残したい近代化遺産だと思う。 億劫だなと思える時間も、精神的な豊かさが少しだけプ ラスされた特別なものに変わって、少し得している気分 ②昭和 100 年を紡ぐ交通インフラ になる。 生きたインフラ遺構といえるのは、東京のど真ん中を 走る東京メトロ銀座線だ。昭和まもなく浅草・上野間が ②インフラ・交通の層を感じる 開業した日本初の地下鉄というだけあって、大都会の地 東京は、世界の大都市と比べても本当に移動がしやす 下浅く、営業を続けながら、延伸工事などを積み重ねて い。それは、これまでのインフラや交通ネットワークの 渋谷までつながった路線には、駅やトンネルの壁などに 蓄積があるから。鉄道網の充実やダイヤの緊密性、環状 当時を偲ばせるものが残っている。 線や東西の道路、そして安全に通れる小道まで残されて 渋谷に近づくと、その名の通り「谷」なので急に地上 いて、世界から見てもとても恵まれている。 に顔を出す。最初地下鉄が上がっているのかと思ったが、 興味深いのは、東京が層になっているところだ。鉄道、 街の方が下がっている。今の渋谷のターミナルはとても 首都高などが立体的に配置されていて、モノレールが 未来的で、そこへシームレスにつながる銀座線は、とて 走っていたり、地下は地下鉄が幾層にも通っていたり、 も魅力的だ。途中の新橋駅は、今でこそキャパオーバー バスや自転車も含め、他の街にはない多様な交通手段が の駅ホームの小ささだが、当時の技術、予算でできた規 共存している。 模感を伝えるもので、トンネルが小さい分、車両もちょっ と小ぶりになっている。新型車両のデザインも、車体カ ③国土をつなぎ、地域をデザインする ラーはしっかり黄色のまま、席の仕切りや車両間の貫通 日本の鉄道は、正確性、安全性そして清潔感は世界で 扉が透明な強化ガラスになっていたり、上の荷物棚も透 もトップだと思う。鉄道会社は分かれているとはいえ、 明アクリルにしたり、その柄は、沿線にあるハチ公や雷 国土が一つの線路でつながっていることの素晴らしさ 門をモチーフにしたデザインだったりと、小さいながら は、これまで東西南北、鉄道の最果てを訪れた経験から に開放感と、地域や人を考えた演出がされている。 実感している。 また、鉄道会社によってそれぞれカラーがあり、車両 ③琵琶湖疏水が伝える文明開化の思想 の種類もいろいろあり、中央線っぽいとか、阪急っぽい、 琵琶湖疏水のトンネルもとても素敵だと思う。琵琶湖 東武っぽいとか、その街が鉄道を作っているのか、鉄道 疏水は、文明開化の思想が可視化されているような水路
国土交通白書 2026 117 第2節 望ましい未来に向けた展望
で、当時の土木技術と都市計画と電力の複合体だと思っ なシステム、例えばサブスクリプション(サブスク)が ている。それが今、観光地となって、京都再興にかけた あればいいのにと思う。例えば JR 北海道のサブスクで、 若き技術者たちの情熱を伝えている。第三トンネルの東 1回払ったら乗り放題にする。実際にはそんなに乗らな
Ⅰ 口は城門のようで、シンプルに削ぎ落とせるのに装飾に いけれども、行った時に便利になるから、いつ行っても も個性があり、威厳を感じる。鉄道が山を切り開いて通 何度でも乗れます、というサービスにすると、もっと乗 第2章
るのは今では当たり前かもしれないが、当時はいかに画 る機会が増えるのではないかと思う。 期的だったのかと思いを馳せてしまう遺構だ。 4. インフラがもたらす未来への期待 3. インフラを未来に残すために ①リニア中央新幹線が変える鉄道の旅 国土交通分野における取組と今後の展望
①事故が起こる前に対策を 建設が進むリニア中央新幹線は、最高時速 500km の 日本は、戦後の復興から、高度経済成長期の集中投資 超高速の輸送インフラだ。地下や山岳部を通過するため、 を経て、今はインフラ・交通ネットワークが最も進んだ トンネルは品川・名古屋間の 86%を占める。 国として高く評価されている。一方で、これらが一斉に 車窓の景色を見ながら会話したり、 写真に収めたりと、 老朽化が進んでいくという現実にも直面している。 ゆったりと過ごせるのが、鉄道の旅の楽しみとすれば、 交通インフラ関連の仕事をしている方と話すと、よく リニアは、旅の価値に変化をもたらすものだ。車窓の景 聞かれるのが、 「今が本当に大事な時期だ」ということ。 色は楽しめないかも知れないが、目的地に早く着けば、 事故があってからでは遅いのは、みなさん、分かってい 現地で過ごせる時間が増えて、それはそれで素晴らしい る一方で、何もまだ起こってないところに予防保全の投 旅といえる。新幹線よりも速達性があり、乗車時間が短 資をするのを理解してもらうのが難しい。何か壊れる前 くなっても、そういう楽しい空間が生まれるのではない に再投資しましょう、ということを繰り返し発信して、 かと期待している。航空機では、景色が見えなくても、 理解してもらうしかないと思う。引き続きインフラの予 座席モニター画面にフライトマップで現在地が表示され 防保全は頑張ってほしいし、ドローンや AI、ロボットの るから、それを見ている乗客も結構多い印象だ。リニア 実装が進み、現場の人の安全にもつながるのはすごくあ でも、画面上のアイコンの動きで、リアルに速さや場所 りがたいことだと思う。 を実感できるものがあればいいと思う。乗車前の心躍る 気持ちも含め、娯楽性やエンタメ性があってリニアを楽 ②ローカル線の課題と路線維持のための工夫 しめるのではないか。 地方のローカル線の維持問題は難しい。地元民ではな いので軽々しく、 「なくして欲しくない」とは言えない。 ②「出かけたくなる」インフラに期待 ただ、鉄道は移動手段であると同時に医療、教育、観光 いつでもどこでも、インターネットやスマートフォン などの基盤であり、1日数人しか乗ってなくてもその人 で何でも情報が手に入る時代だが、日本には、現地に出 の生活がそれによって成立しているので、地域全体の持 かけないと魅力が分からないことが多い。現地に足を運 続性とつながってくる。それと同時に、維持コストの高 べば、新たな魅力に出会えるだけでなく、自分だけが感 さの問題もあるのだろう。 じ取れるささやかな魅力を発見でき、そこでの交流も生 ただ、人が乗らないからと列車本数を減らすことで、 まれてくる。 さらに利用者数を減らし、それによってさらに本数を減 AI の進歩の速さには、いつも驚かされているが、自動 らす、という悪循環になっている路線は絶対あると思う。 運転技術の進展も速い。自動運転タクシーが、鉄道駅か 岐阜・富山を結ぶ JR 高山本線のように、利用者数が減っ ら先の交通が止まってしまっている地方と連携していけ ていたにもかかわらずあえて本数を増やしたところ、利 ると良いと思うが、実現もそこまで来ていると感じてい 用者が増えたという事例もある。乗りたくても電車が来 る。決して遠出でなくても良いので、みんながもっと出 ないから乗れない人もいる、というアプローチで考えて かけやすくなり、出かけることで人の交流がもっと生ま みるのも選択肢としてあると思う。 れるような、そのようなインフラの開発をこれからも期 また、もっと利用してもらって路線を維持するために、 待したい。 観光で来る交流人口が定期的に来て地域に関われるよう
118 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
2 国民生活が豊かになる明るい未来に向けた展望 ここでは、「 1 国民の願う将来の社会像」における意識調査から得られた、将来の社会に対する 国民意識を基に、未来投資が実現する次世代の社会像やライフスタイルの変化等について展望する。 Ⅰ
第2章 (1)未来投資が実現する次世代社会 国民一人ひとりの日常が豊かになる未来へ向けて、ハード・ソフトのインフラ投資を加速させるこ とにより、生産性が大幅に向上し、新たな経済圏の形成や物流の最適化が進むとともに、人やモノの
国土交通分野における取組と今後の展望 移動がシームレスになるなど、利便性も大きく向上する。さらに、多機能化・多様化された次世代の インフラへの投資が拠点機能を強化する。さらに、新たなポテンシャルを有する分野の成長を後押し することも期待される。 他方、既存インフラに対しては、再投資や活用の高度化等によって持続的にストック効果を発揮す ることが肝要である。 加えて、新技術の社会実装を、社会受容性の醸成とともに加速させ、インフラと経済社会の課題を 同時に解決していくことも重要である。
①生産性が向上する高度なインフラ (新たな経済圏の誕生) リニア中央新幹線や高規格道路等の整備により移動の速達性が向上し、これまでよりも広域な新た な経済圏が誕生する。 リニア中央新幹線により東京~大阪間が 67 分で結ばれ生活圏が拡大し、中間駅では、これまで日 帰りが困難であった東西へのレジャーや出張が可能になる。
図表Ⅰ-2-2-9 リニア中央新幹線開業による移動の変化
資料)国土交通省
国土交通白書 2026 119 第2節 望ましい未来に向けた展望
(フィジカルインターネット注 1 による物流革新) 物流全体の最適化に資するフィジカルインターネットの実現には以下の6項目を連動させながら進 めることが重要である。 Ⅰ 1・2.輸送機器や物流の結節点となる物流拠点の自動化・機械化とその進展による装置産業化注 2 第2章
3.サプライチェーンの垂直統合 4.ハード・ソフトの標準化・シェアリングを通じた水平連携 5.スタートアップ企業等も含めた幅広い事業者の参画とシームレスなデータ連携を可能とする物 流・商流データのプラットフォーム 国土交通分野における取組と今後の展望
6.その公平性・開放性の確保や費用と利益のシェアリングルール等の確立に向けたガバナンス
国土交通省は、フィジカルインターネットによって、時間や距離、費用等の制約から個人・企業・ 地域の活力と創造性を解放し、価値を創出するイノベーティブな社会の実現に向けた取組を推進して いる。
図表Ⅰ-2-2-10 フィジカルインターネットの実現に向けた取組の推進
資料)国土交通省
(インフラの多機能化・多様化) 既存の市街地等への影響、地下空間利用の広がりなどを踏まえ、道路、河川、まちづくりの複合的 な観点を早期から取り込んで、インフラの整備・活用を進めることにより、相乗的な効果や新たな価 値の創造が期待される。 次世代に向けた拠点施設においては、地方創生・観光を加速する拠点を目指し、地域の賑わい創 出、防災機能や自動運転も見据えた交通ハブ機能の強化を推進している。
注1 有回線ではなく共通の回線によって、通信を効率的に実現しているインターネット通信の考え方を物流(フィジカル) 占 に適用した新しい物流の仕組み。 注2 標準化や自動化を高度に進めることにより、複数の企業によるオープンな共同利用を可能とする新たな物流インフラへ と転換すること。
120 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
Ⅰ
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 資料)国土交通省
Column コラム インフラ整備でつなぐ半島の恵みと安全・安心(伊豆市ほか)
観光産業が地域経済を支える静岡県の伊豆地域注 1 で スペースを確保したほか、 平時にはレストランや展望台、 は、伊豆半島ジオパークや温泉、海水浴場施設といった 地域物産品の販売所として、海水浴で訪れた人の9割が 資源を活かした観光戦略や、ワサビや金目鯛等の特産品 利用するなど、観光客や地域住民で賑わいを見せている。 の販路拡大等に取り組んでいる。一方で、救難・救護活 当地を初めて訪れる観光客も含め、日常的な施設利用そ 動や物資供給に不可欠な道路網の整備や港湾施設の老朽 のものが「津波避難訓練」となって、地域住民や観光客 化対策といった半島の孤立防止策の強化も推進している。 の日常的な防災意識を高める効果が期待されている。伊 伊豆市では、土肥地区などで、丁寧に住民合意を重ね 豆市は、こうした取組により、観光・産業の魅力を高め ながら、観光・環境・防災をバランス良く進める「観光 つつ、災害に強い安全・安心な地域構造への転換を目指 防災まちづくり」の計画(『伊豆市 “ 海と共に生きる ” 観 している。 光防災まちづくり推進計画』)を策定し、観光活性化と また、隣接する地方公共団体でも、伊豆市と同様、津 の両立を図りつつ、防災公園の整備や、我が国初の「海 波防災地域づくり推進計画に基づき、住民理解を重ねな のまち安全創出エリア」(津波災害特別警戒区域(オレ がら、安全・安心の住みよいまちづくりに向けた取組を ンジゾーン))指定といった津波避難対策の強化を進め 進めている。観光等の産業を守るため、防潮堤のかさ上 てきた。 げや水門の設置等のインフラ整備と避難対策を組み合わ このような中、駿河湾に面し、海水浴場や「世界一の せた多重防御による津波に強いまちづくりを推進してい 花時計」で有名な伊豆市松原公園内には 2024 年7月、 る。 防災と観光の機能を高度に融合させた、我が国初の津波 さらに、静岡県は、伊豆縦貫自動車道(背骨道路)に 避難複合施設「テラッセオレンジトイ」が竣工した。最 接続し、半島の東西へ伸びる道路(肋骨道路)の整備も 大想定の 10m の津波高を超える3階(海抜 14m)及び 順次進めており、災害時のリダンダンシーの確保、半島 4階部分に災害時には 1,200 人が避難することが可能な 全体の強靱な道路ネットワークの構築に取り組んでいる。
注1 伊豆地域の年間観光交流客数は 3,967 万人であり、静岡県全体の 28%を占める(2024 年度) 。
国土交通白書 2026 121 第2節 望ましい未来に向けた展望
<テラッセオレンジトイ> <特産品を活かしたレストランメニュー>
Ⅰ 第2章 国土交通分野における取組と今後の展望
資料)伊豆市
(新たなポテンシャルを有する海洋空間における技術開発) 海洋空間における資源開発は、途上国の経済発展等を背景としたエネルギー需要の増加により、中 長期的には拡大すると見込まれ、その目的に応じて、様々な特殊船舶や海洋構造物が用いられてい る。この分野への挑戦は、造船業や海運業などの我が国の海事産業に高い波及効果をもたらすことが 期待されている。 国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、航行型 AUV(自律型無人探査機)「うら しま」で深度 8,000m まで潜航可能となるよう改造を行った注 3。
図表Ⅰ-2-2-12 深海探査の現状
資料)文部科学省「深海・海溝域の探査・採取プラットフォームの構築に向けたタスクフォース報告書」(令和8年4月)
注3 行型 AUV は、機能的特徴から HOV(有人潜水調査船)や ROV(遠隔操作型無人探査機)が得意とする試料採取な 航 どの調査・作業を代替することは困難である。水深 6,000m 以深での調査・作業が可能な我が国の探査機は、現状「し んかい 6500」のみという状況である。
122 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
②再投資による持続可能なインフラ (自動物流道路) 社会全体としての労働力不足が懸念される中、 図表Ⅰ-2-2-13 自動物流道路 物流分野においては将来的な貨物輸送に従事する Ⅰ トラックドライバーの不足、カーボンニュート
第2章 ラルへの対応などが課題である。特に近年では、 EC サイトや個人間取引など小口かつ多頻度の取 引が増加しており、将来的な物流の停滞も懸念さ
国土交通分野における取組と今後の展望 れている。 このような中で、国土交通省では、既存の道路 空間に物流専用のスペースを設け、クリーンエネ ルギーを電源とする無人化・自動化された輸送手 資料)国土交通省 段によって荷物を運ぶ新たな物流システムである 「自動物流道路」の検討を進めており、輸送力の 向上、ドライバーの待ち時間の削減等による物流の効率化に加えて、環境負荷の軽減が期待される。 2025 年度には一定条件下で自動、無人で荷物を運ぶという自動物流道路のコンセプトの確認を実施 し、引き続き 2027 年度までの新東名高速道路の建設中区間での実験実施、2030 年代半ばまでの第 一期区間運用開始に向け、検討を進めていく。
(次世代交通システムの導入) 次世代交通システムは、AI や自動 図表Ⅰ-2-2-14 都市型ロープウェイの実験フィールドの様子 運転技術等により、安全・環境・利便 性を向上させる新たな移動手段や仕組 みであり、既存の道路空間等を活用 し、渋滞緩和等を目指した自走式の都 市型ロープウェイの開発が進められて いる。
資料)ZipInfrastructure㈱
③インフラと経済社会の課題の同時解決 新技術が実装された社会では、自動運転等による公共交通が充実し、送迎負担の軽減といった機会 損失等の削減と、可処分時間の増加による消費活動の活発化といった伸び代の連鎖的拡大を同時に実 現しており、我が国の活力が向上していく。また、普及が進む自動運転車が EV 化し、再生可能エネ ルギーと組み合わさることで地域経済への貢献も果たしていく。
国土交通白書 2026 123 第2節 望ましい未来に向けた展望
Column コラム 機会損失の削減・現場の生産性向上と成長余力の連鎖的拡大 Ⅰ 交通空白による高齢者・子育て世帯の送迎負担は、移 られていたであろう「成長余力」は、これまで取りこぼ 第2章
動手段の制約を通じて就業や消費等の機会損失を生んで されてきたものが、「移動の制約」の解消や省人化技術 いる。こうした「移動の制約」を解消することは、地域 の進展によって、成長余力が顕在化するだけでなく、イ 経済の潜在需要を掘り起こす上で、重要な施策でもある。 ンフラをとりまく課題が解決される。また、就業機会の 一方、生産性の向上に向けては、インフラの維持管理 創出や観光消費の拡大、現場の効率性の底上げといった 国土交通分野における取組と今後の展望
においては、メンテナンスを担う技術者等の人材や予算 経済社会の課題解決にもつながり、それがまた、更なる が限られたり、物流の現場においては、深刻なドライバー 成長余力の創出へと連鎖的に拡大していく。 不足や長時間労働、長い待機時間、そして倉庫内が人手 望ましい未来の実現に向けて、インフラと経済社会の に大きく依存したりといったことが、大きな課題とも 課題の同時解決には、新たな技術によるイノベーション なっている。 が何より重要である。また、官民が連携して新たな技術・ こうした課題を乗り越え、未来の社会においては、自 イノベーションの実装に向けた法整備、開発支援、実証 動運転等の公共交通の充実によって移動手段が確保され 実験等を推進するとともに、安全性を高め一般人の抱く た結果、機会損失が削減され、また、ロボット・AI 等の リスクや不安の解消を図り、社会受容性を醸成しつつ、 省人化技術の実装が進むことによって労働力の補完が進 取り組んでいくことが求められる。 み、生産性の向上が達成される。このように、本来は得
資料)国土交通省
(完全自動運転が普及した未来) 完全自動運転が普及し、運転作業から解放されること、運転者を必要としないことで車両数を需要 に合わせてより柔軟に配備できるようになることで、安全性と利便性が向上する。 地方の鉄道やバス等の公共交通機関が少ない地域においては、様々な機会損失が生じてしまってい ることが指摘されている。例えば、子供の登校、高齢者の通院といった送迎を家族が担うことが多い 中で、子供や高齢者のみで乗り降りを完結し安全に登校や通院を行うことができるようになる。送迎 から解放された家族の可処分時間が増えることで、就労を継続することが可能となり生産性が向上す ることが期待される。 また、夜間の飲食、観光、エンターテインメントといった、いわゆる「ナイトタイムエコノミー」 が活性化することが予想される。これまで、代行運転やハンドルキーパーの確保といった、安全に帰 宅するためのコストをより安価に完全自動運転車両が担うことができるようになることで、仲間内の 宴会や、寺社仏閣でのお祭りや縁日など時間を気にせず堪能することができるようになることが予想
124 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
される。 都市部では、自家用車の利用においてまちなかでの駐車が不要となる可能性も考えられる。こうし た観点で駐車スペースが賑わいの空間へと転換されることにより、居心地がよく歩きたくなる都市空 間の創出が期待される。また、現在も走行しているアドトラックが自動運転車両となることで、人件 Ⅰ 費が不要となることから、より様々な場所で運用されるようになることが予想される。
国土交通分野における取組と今後の展望 資料)国土交通省
(空の移動革命の実現に向けて) 次世代モビリティとしての空飛ぶク 図表Ⅰ-2-2-16 空飛ぶクルマ ルマは、都市圏での移動においては、 渋滞に影響されない迅速かつ快適な サービスとしての利用が見込まれる一 方、山間部等においては、日々の移動 や救命救急の手段としての活用が期待 される。また、空飛ぶクルマの 2050 年の世界市場規模は約 184 兆円と予 想されており、航空産業における新興 市場として注目されている。 資料)©SkyDrive
このような空飛ぶクルマを取り巻 く世界の情勢に乗り遅れないよう、社会実装に向けた投資やイノベーションの促進が重要である。 大阪・関西万博においてデモフライトやモックアップ展示が行われたところであるが、引き続き、 2026 年 3 月に官民協議会において改訂した「空の移動革命に向けたロードマップ」に従って、2027 年 /2028 年の商用運航開始を目指して制度整備や社会受容性向上の取組等を進めていく。
国土交通白書 2026 125 第2節 望ましい未来に向けた展望
(フィジカル AI・ロボティクスによる現場の革新) 世界では、言葉や論理を扱う生成 AI だ 図表Ⅰ-2-2-17 稼働時点検・巡視(設備の状態把握) けでなく、現実世界で実際に作業を行う Ⅰ フィジカル AI の技術も進歩している。 フィジカル AI とは、現実世界で動く製 第2章
品やデバイスに搭載され、センサ等による センシングを通じて物理環境の情報を取込 み、AI モデルによる処理を経て、設定さ 国土交通分野における取組と今後の展望
れた目的を達成する自律的又は半自律的な AI である。現実世界に対して直接的な働 きかけ(移動、操作、加工など)を行うこ とを特徴としており、複雑な環境における 資料)国立研究開発法人土木研究所
判断や作業の高度化が期待されている。 国内でも、国土交通分野では、インフラの点検において、フィジカル AI の導入が検討されており、 実現すれば効率的な作業による生産性の向上が見込まれる。また、建設現場や物流倉庫では、固定さ れたプログラムによる作業を遂行するロボットの導入は進んでいるが、AI を搭載した自律的なロボッ トの開発・導入は例が少なく、今後の活用が期待されている。
(地産地消型エネルギー社会の実現) EV 化が容易であるとされる商用車においては、エネルギーを化石燃料から太陽光等の再生可能エ ネルギー電力に転換することにより、日本各地における再エネ発電のポテンシャルを最大限引き出 す。これにより、ラストマイル物流・人流の燃料コストを削減し、更には我が国のエネルギー自給率 を向上させる。また、EV 商用車は、再エネの地産地消やカーボンニュートラルへの貢献等の効果も 発揮する。
図表Ⅰ-2-2-18 商用車のEV化と再エネの活用
資料)国土交通省
126 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
(2)未来のわたしたちのライフスタイル 将来の我が国では、経済成長につながる施策や新技術によって様々なサービスが新たに普及し、ラ イフスタイルの大きな変化が予想される。まちづくりや身近な公共交通含め、我が国の将来予想につ いて言及する。 Ⅰ
第2章 ①インフラの整備とともに進むまちづくり リニア中央新幹線の沿線の新駅周辺や、半導体関連企業の進出を支えるためのインフラ整備が進む 地域では、今後の経済成長や人口流入による発展を見込んだまちづくりが計画されており、地域住民
国土交通分野における取組と今後の展望 や訪問者にとって更に魅力的なまちの創造が期待される。
Column リニア駅を通じた将来のまちづくり(相模原市) コラム
リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の新設が進めら 有するとともに、まちの発展に合わせた様々なトライア れている神奈川県相模原市では、新駅の開業を見据えて、 ルを実践し、新たな魅力を創造する「広域交流ゾーン」、 新駅に隣接する橋本駅南口周辺で約 13.7ha の土地区画 ものづくり産業の更なる発展や新たな技術創造を牽引す 整理事業を UR 施行で実施しており、JR 橋本駅の隣駅で る「ものづくり産業交流ゾーン」に分類しており、また、 ある JR 相模原駅周辺のまちづくりと併せて、首都圏南 緑あふれる開放的な歩行者空間の形成も検討している。 西部の広域交流拠点を目指している。 さらに、同市は、都市機能の集積だけでなく、駅周辺の 同市は、2023 年に「相模原市リニア駅周辺まちづく インフラ整備も進めており、圏央道相模原インターチェ りガイドライン」を策定し、橋本のまちの将来像、コン ンジとのアクセス道路の整備にも取り組むこととしてい セプト、土地利用についてまとめている。橋本エリアは る。こうした取組の効果として、企業の集積や観光振興 元々、ものづくり産業が集積した地域であり、この地域 が期待されている。 の特性等を鑑み、橋本駅前の土地利用の考え方として、 同市によると、橋本駅南口周辺の整備後(まちびらき 区画整理対象の駅前エリアを四つのゾーンに分類してい 後)、市内の経済波及効果は年間約 1,806 億円、市の税 る。具体的には、駅を起点としたまちの利便性向上やま 収効果は年間約 36 億円を見込んでいるという。 ち全体へ賑わいを広げる「駅まち一体牽引ゾーン」、複 このような経済成長を牽引するインフラの基盤整備が、 合的な都市機能により、働きやすさ、住みやすさ、過ご まちづくりへの機運を高め、更に魅力のある地域の創出 しやすさを兼ね備えたライフスタイルを実現する「複合 につながっていくかも知れない。 都市機能ゾーン」、交流・発信機能や交通結節機能等を
資料)相模原市
国土交通白書 2026 127 第2節 望ましい未来に向けた展望
Column 半導体産業とともに変わるまちの姿(菊陽町) コラム
Ⅰ 熊本県菊陽町では、近年で、半導体関連企業が集積し 等を検討しており、半導体企業集積地にふさわしい先進 第2章
ており、雇用の創出、地価の上昇や税収の増加等、経済 的なまちづくりを目指している。 成長が著しい地域である。 区画整理事業に先駆けて整備されていた「くまモン 同町は、今後の経済発展や人口増加への対応、さらに アーバンスポーツパーク」は、2026 年4月に開業して は鉄道の利便性向上に向けて、鉄道の新駅を設置すると おり、スケートボード等の世界大会が可能な施設である。 国土交通分野における取組と今後の展望
ともに、公園拡張整備(アーバンスポーツパーク等)や 大会開催時には多くの交流人口の流入が見込まれてお 大規模な土地区画整理事業等、駅を中心とした市街地整 り、賑わいの創出や地域消費の拡大が期待される。 備に取り組んでいる。 また、 「知の集積エリア」に大学等の教育機関が立地 市街地整備では、JR 原水駅周辺の「職住近接エリア」 することとなれば、大学が少ない県内南部の進学希望者 を中心にマンションや住宅地、商業施設等の生活基盤の の受け皿となり、県外への若者の流出が防ぐ効果が見込 整備を推進することとしている。また、新駅や総合運動 まれる。さらには、同町内の大学を卒業した後に、半導 公園周辺の「賑わいエリア」には、駅前広場や商業施設、 体関連企業に就職するといった人材の好循環も期待され ホテル、マンション等の立地を進め、新たな賑わいの創 ている。 出を図っていくこととしている。さらに、「知の集積エ このように同町の市街地整備は、町内の人口増加への リア」では、大学のキャンパスや専門学校、研究機関や 対応や地域の魅力の創出だけでなく、県内全体の発展に 企業が共同で利用するマルチテナントの設置、観光にも つながる取組であり、経済成長が進むまちの未来のモデ 資する半導体ミュージアムの整備、自動運転バスの導入 ルになり得るかも知れない。
資料)菊陽町
② 2050 年のわたしたちの暮らし ここでは、ハード・ソフトのインフラの発展とともに新技術が受容され、普及・浸透した未来の社 会における、わたしたちのライフスタイルについて予想する。
(担い手不足を省人化技術により代替する社会) タクシー、バス、鉄道等、様々な公共交通機関において、完全自動運転が実現することにより、運 転作業から解放されると同時に、より安全に、かつ、より効率的な輸送が実現する。
128 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
Column より生活に寄り添った公共交通機関の実現 コラム
Ⅰ 運転者の担い手不足が、完全自動運転によって解消さ また、都市部においては、人流データの蓄積・分析・
第2章 れることで、より柔軟に生活に寄り添った公共交通が実 活用がさらに進み、大規模イベントや鉄道の車両トラブ 現することが予想される。例えば、地方では完全自動運 ルなどによる運転見合わせといった際の、一時的に増え 転の超小型自動車を需要に合わせ配備することで、目的 る旅客に対して、自動運転車両による続行便を設定し、 地への輸送やバスや鉄道等の乗り換え地点への移動を利 混雑に対応するといったことが可能となる。
国土交通分野における取組と今後の展望 用者の好きなタイミングで手配することが可能となる。
Interview 経済成長と社会の成熟に向けた交通インフラの課題 インタビュー
~ Zip Infrastructure ㈱ CEO 須知 高匡氏~
ZipInfrastructure ㈱の CEO として次世代の公共交通 設での検証が不可欠である。Zippar の開発においても、 システムである自走型ロープウェイ「Zippar」の開発に コンクリート基礎や杭基礎を大規模に設置できる場所を 取り組み、活躍されている須知氏に我が国の経済成長と 見つけることに非常に苦労した。大企業であれば工場の 社会の成熟に向けた交通インフラの課題について、経営 一角を利用できるが、スタートアップ企業にとってはそ 者・開発者の立場からお話を伺った。 ういった場所を探すことが大きな障壁となっている。 過去の事例として、2005 年(愛知万博)から運行し 1. 我が国の経済成長および社会の成熟に向けた たリニモ(HSST)も、開発時には川崎の東扇島で不等 交通インフラの課題について 沈下期間の 2 年間だけ実験場所を借りるなど、同様の困 ①日本独自の課題に対応するイノベーションが不足して 難に直面していた。我々は現在、南相馬市の協力により いる 実験線を確保できているが、今後は北海道の暴風雪環境 我が国の交通インフラにおける最も深刻な課題は、イ や沖縄の強風・塩害環境での実験も必要となる可能性が ノベーションの不足である。キックボードや自動運転な ある。スタートアップ企業が大規模施設の一角を借りら ど、海外で成功した技術を後追いで導入する傾向が強く、 れる仕組みがあれば、 技術革新がより進むと考えられる。 日本独自の課題、特に深刻化する人手不足などに対する 独自のイノベーションと、それを促進するための支援が 2. 社会実装に向けて 不十分である。結果として、交通分野で言えば運転手不 ①多様なプレイヤーとの協調や地域連携が重要 足などの根本的な課題が解決されないまま放置されてい 次世代交通システムの実現には、ゼネコン、デベロッ る状況にある。 パー、需要調査コンサルタント、車両メーカー、技術系 課題を解決するためには、無人の自動運転が必要だと 商社など、多岐にわたる分野との協調が不可欠で、「協 考えている。小規模地域であればグリーンスローモビリ 調しない分野がない」と言えるほど、幅広い連携が必要 ティやその無人化が有効だろう。また、人口が数万人規 となる。 模になると、自動運転バスや路面電車の自動運転化も考 地域との連携も重要で、我々は福島県内で調達できる えられるが、実装は当初のペースで進んでおらず、今後 部品は優先的に県内製を使用している。また、大企業か も難しいと思われるので、無人の専用空間を走る交通シ らスタートアップ企業への出向も、双方にとって大きな ステムが必要だと考えている。 利益があり、Zippar でも出向者を受け入れている。こ のような大企業とスタートアップ企業の人材交流は、今 ②スタートアップ企業が直面する実験施設確保の困難さ 後さらに推進すべきと考えている。 次世代交通システムのハードウェア開発には、実験施
国土交通白書 2026 129 第2節 望ましい未来に向けた展望
②実需に基づいた支援方法のあり方 や、一度失敗した人たちが新しいチャレンジをする時に イノベーションの創出において重要なのは、実際に必 応援することが重要である。失敗を糧として次なる成功 要とされているものに対して支援を行うことである。そ に向かっていく、このサイクルを促進する仕組みが、イ
Ⅰ の際、無尽蔵に補助をするのではなく、例えば次世代交 ノベーションの創出には不可欠である。 通システムの需要調査を行う際に自治体が半分を補助し 第2章
たり、開発費も全額補助ではなく、自分たちでファンド ⑥新技術の社会実装の成功には責任者の明確化が必要 や企業から調達した上でその残りを補助する、といった 新技術の社会実装において最も重要なのは、しっかり 形で、実際にニーズがあって金融マーケットから評価さ と責任を取って推進する人が明確に存在するかという点 れているものに対して追加の補助を行うことが重要では である。スタートアップでは、代表者が自らの私財を投 国土交通分野における取組と今後の展望
ないか。こういったやり方により、真に市場が求めるイ じて会社を設立し、成功すれば金銭的な成功を得る一方、 ノベーションが促進されるものと考えられる。 失敗すればそれを失うというリスクを負っている。この ような仕組みは正常な仕組みであり、健全なイノベー ③公平な競争環境の整備が必要 ションの基盤となる。一方、官民連携の下、様々な主体 次世代交通システムを開発する際の課題は、補助金制 が参加する一部の大型プロジェクトについては、責任者 度である。既存の路面電車やモノレールには前例がある が明確になっていないことが懸念される。また、公務員 が、次世代交通システムには前例がないため、どの程度 的な給与体系や報酬体系の中では適切なインセンティブ の補助が受けられるのかが2~3年間も決まらない状況 設計が難しいという課題があるが、そうであれば民間に が続いている。次世代交通システムが必ず補助の対象に 任せるという選択肢も検討すべきである。 なるようにしてほしいと言っているわけではなく、あく 新幹線建設における国鉄の十河総裁のように、責任者 までも平等な条件で、次世代交通システムもこの補助の が強い覚悟を持って「本当にやるぞ」と推進したからこ 対象になる、と言ってもらうだけで、同じ土俵には並ぶ。 そ成功した事例もある。過去のプロジェクトの成否を見 このように、国には既存のシステムと同じように比較さ ても、責任者がしっかりと取り組むことが、イノベーショ れる環境を整えてほしい。 ンの実現には不可欠である。 また、Zippar のようなシステムは、同じ移動であっ ても私有地内で完結するか、公道を移動するかなどに 3. 暮らしと社会の将来展望 よって異なる法規制が適用される可能性があるので、二 ①広義の自動運転による無人交通の早期実現を 重三重の開発負担が生じている。一つの基準を通過した 日本の交通インフラの未来において重要なのは自動運 ら他の用途にも転用できるような柔軟性があれば、開発 転であることは間違いないと思う。ここでの自動運転と が加速するので、そういった柔軟性が必要と考えられる。 は、自動車に限らず、鉄道、次世代交通システムなど、 あらゆる交通手段における無人化を指す「広義」の自動 ④「協調」によりともに開発を 運転である。人口減少に伴い、バスの運転手や交通機関 自治体や国民には、次世代交通システムを一緒に作り を動かす人員が不足していく中で、公共交通を持続可能 上げていくという「協調」の姿勢を期待したい。開発途 なものにするためには、 自動運転・無人化が不可欠である。 中であることを認めてもらった上で、ニーズや希望を反 時速が5~ 10 キロと遅くても、完全無人で運転でき 映しながら共に作り上げていくことができれば、より良 る環境を早期に実現することが重要だ。これにより、中 いシステムが実現できる。早期の完成を求めるだけでな 学生・高校生の通学問題や、地方での夜間の移動手段不 く、開発プロセスへの参加という視点が重要である。 足といった課題が解決できる。レベル4の自動運転や遠 隔運転を組み合わせながら、低速でも完全無人の交通手 ⑤失敗の知見を次の成功につなげる仕組みが必要 段を早期に実現することが、地方の活力を取り戻す鍵と イノベーションの創出には、 「失敗を前提として次の なる。 成功に向かっていく」という視点が非常に重要である。 例えば、広島で運行していたスカイレールは、30 年ほ ②安全性のためには専用空間交通システムが必要 どで廃線となったが、その知見や車両が Zippar の開発 人口が数万人規模の地域では、 輸送密度が上がるため、 に活かされている。Zippar は実際にスカイレールの車 専用空間を走行する交通システムが必要となる。安全性 両を受領し、そこから多くを学んでいる。 の観点からは、交通システムの二極化が進むと予想され 商業的には「失敗」したプロジェクトであっても、蓄 る。自動運転車両が、歩行者と平面交差する場所では、 積された技術や経験は、新しい企業の血肉となる。その 死亡事故にならない程度の低速度走行に制限される一 ためには、文献や開発資料をしっかりと残していくこと 方、専用空間では高速走行を可能とする。年間 3,000 人
130 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
以上が自動車事故で亡くなっている現状を重く受け止 また、自動運転は新たなサービスを生み出す一方、既 め、自動運転化により事故をゼロに近づけていく必要が 存のサービスを変化させる。都心の駐車場需要は減少す あるし、自動運転という責任主体の個人からシステムへ る一方で、広告トラック需要の増加や道路上の商業施設 の意向を考えると必然的にそうなると考えられる。専用 の登場など、新しいビジネスモデルが登場する可能性が Ⅰ 空間を走行する交通(鉄道等)では既に年間数件レベル ある。こうした変化は政策にも大きな影響を与えるため、
第2章 の事故率を実現しており、このような安全な公共交通へ 長期的な視点での検討が必要である。 の需要が高まっていくと考えられる。 専用空間を走行する交通システムは、Zippar のよう ④我々のひとつひとつの判断が未来を変える なロープウェイ方式、細い高架道路を走るシステム、地 経済成長は、我々のような民間の開発者や行政も含め
国土交通分野における取組と今後の展望 下の専用トンネルなど、世界的に様々な専用空間交通が て、様々なプレイヤーがひとつひとつ努力を重ねること 開発されているが、日本では地震により諸外国に比べ土 で達成される。その際に重要なのは、「今あなたが作っ 木構造物が大規模になることを考慮すると、ロープウェ ている一つの回答や一つの解釈で、 実際に世界は変わる」 イ方式が最適と考えられる。 ということを理解することだと思う。 例えば高速バスのフルフラット座席は、寝台座席が1 ③ 2050 年の公共交通ビジョン 車両につき1席までという回答により、長年もの間社会 自動運転のよいところは、運転手の人件費が不要とな 実装がされなかった。その後、上下二段式フルフラット るため車両数を増やすことができ、高頻度運行が実現で シートの発明や試作車が車検を通過したこともきっかけ きることだ。待ち時間が短縮されれば、 「車ではなくバ で有識者会議が始まり、ガイドラインが策定された。ひ スでいい」という選択が広がる。専用空間で高速・高頻 とつひとつの回答やひとつひとつの打ち合わせが世界を 度に運行する自動運転の公共交通が各地に展開され、安 変えていくこともある。規則は重要だが、国民の幸せの 全で利便性の高い移動手段として定着していくだろうと ために何がベストかという視点を持ち、関係者が一緒に いう観点で私は、2050 年の公共交通は明るいと考えて 切磋琢磨していくことが、日本の経済成長につながると いる。 考えている。
(最新技術で効率化された社会) 将来の社会では、最新技術が普及することにより、生活の中で走行する自動車がインフラの観測を 同時に行うなど、高度に効率化が図られている。また、道路やその付属設備に設置させる AI カメラ 等が観測した混雑情報等を自動運転車両に伝えることにより、利用者にとって最適なルートでの移動 を実現する。
Column 様々な目が監視するインフラの未来 コラム
先述した完全自動運転の実現には、高度な AI による 測されたポットホールや落下物等は速やかに道路管理者 判断とともに安価かつ高性能な各種センサが不可欠であ に通報され、道路管理者は AI から修繕にかかる各種助言 る。そのため、完全自動運転が実現した未来では、自動 を受け修繕を指示、迅速かつ効率的なインフラの維持が 運転中は常に高性能なセンサによって、インフラを観測 実現する。 していることになる。自動運転車両が走行する中で、観
国土交通白書 2026 131 第2節 望ましい未来に向けた展望
Column 高機能な道路が提供するより安全でスムーズな交通 コラム
Ⅰ 市街地や交通量の多い道路の要所に AI カメラ等モニタ ている場合に、その状況を AI カメラで観測し、その情報 第2章
リング装置が設置され、常に交通状況を把握することで、 が共有されることにより、自動運転車両に対して、迂回 よりスムーズな交通が期待できる。例えば、車両トラブ 路を選択するよう促す、進入を禁止するといった交通量 ルや大型イベント開催によって、一時的に交通が集中し の調整ができるようになり、 渋滞の抑制、 軽減につながる。 国土交通分野における取組と今後の展望
(未来の暮らし) ここでは、経済成長を牽引するハード・ソフトのインフラが日常の風景や人々の暮らしに溶け込 み、豊かに彩る未来の情景を描写する。
Column 都市と自然を往復する日常 コラム
都市の会社に勤めながらも、私たちは緑豊かな地域で の帰省計画を立てている。AI オンデマンド交通、飛行 暮らしている。朝は鳥のさえずりで目覚める。窓を開け 機、更には空飛ぶクルマまで、すべてが一つのプラット 放つと澄んだ空気が部屋を満たす。胸いっぱいに吸い込 フォームで予約可能だ。予約ウェブサイトには、家族構 む。今日の朝は鮮やかだ。私はデスクに向かった。通勤 成やこれまでの旅行履歴を基にした観光スポットの提案 ラッシュとは無縁で、基本は自宅のワークスペースから が表示されている。同じ観光地域でも、 「インバウンド テレワーク。ここにはオフィスとほとんど変わらない環 向け」、「国内旅行者向け」といったようにウェブサイト 境が整っている。 上でエリアが可視化されており、目的に応じた選択がし 週に一度、対面でのコミュニケーションが必要な日は やすい。 リニアに乗って日帰りで都市のオフィスへ出社する。自 レジャー施設に到着すると、賑わいを見せる広大な敷 宅から最寄りのリニア駅まで自動運転タクシーが運んで 地が広がっていた。ここはかつての高速道路の跡地だと くれる。ドア・ツー・ドアの移動は驚くほどスムーズだ。 いう。老朽化したインフラは地下へと再構築され、地上 以前の長距離移動が今では「短い小旅行」程度の感覚に は人のための空間へと再生し、賑わっている。 変わっている。 帰り際、職場へのお土産を購入したが、当面出社の予 子どもの小学校、習い事への送迎は地域を循環する 定はない。そこで配送方法を「オフィス受取・タイミン EV 自動運転バスに任せている。バスは個々の通学時間 グ最適化」に設定する。自動物流道路を使い、オフィス に最適化され、親のスマートデバイスには乗車・降車の に人がいるタイミングに合わせて届けてもらえるのだ。 通知が届く。このバスを動かすエネルギーは近くのハイ 荷物が人の都合に合わせて移動する、そんな時代になっ ブリッドダムから供給され、再生可能エネルギーを地産 ている。 地消している。地域でつくられた電気を地域で使う、そ 帰路の高速道路では、隣を走る大型の自動運転トラッ んな循環が当たり前になった。 クがインターチェンジ直結の物流施設へと滑り込んで ある休日、家族で少し遠くのレジャー施設へ出かけた。 いった。道路と物流拠点がシームレスにつながり、物の 出発前に AI が渋滞予測を行い、最適なルートを提示して 流れはより効率的に進んでいる。 くれる。道路はダブルネットワーク化されており、万が 少し寄り道をして海へ向かうと、港には大型クルーズ 一の混雑や事故があってもスムーズに迂回できるため、 船が停泊していた。下船した海外からの旅行者と地元の 所要時間のばらつきはほとんどない。今日は自動運転車 住民が交流し、屋台やイベントを楽しんでいる。地域と 両をレンタルした。移動そのものも楽しみの一つだ。 世界が直接つながり、消費と交流が同時に生まれる。こ 運転から解放された移動時間は「可処分時間」になる。 うしたインバウンドは地方にも波及し、経済成長の裾野 車内で子どもの宿題を一緒に確認する。夫は隣で、お盆 を大きく広げている。
132 国土交通白書 2026 第2節 望ましい未来に向けた展望
都会と田舎、仕事と暮らし、移動と滞在。それぞれの し前まで「未来」と呼ばれていた景色は、もうすでに、 境界がやわらかくなったこの時代、私たちは場所に縛ら 私たちの暮らしの中に溶け込んでいる。 れず、自分たちらしい日常を選び取っている。ほんの少
Ⅰ
第2章 国土交通分野における取組と今後の展望 ※イメージを Copilot(生成 AI)で作成。
国土交通白書 2026 133 第Ⅱ部 国土交通行政の動向 第1節 能登半島地震・豪雨及び東日本大震災からの復旧・復興の現状と対応策
1章 Ⅱ 時代の要請にこたえた 第 国土交通行政の展開 第1章
第1節 能登半島地震・豪雨及び東日本大震災からの復旧・復興の現状と対応策 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
能登半島地震・豪雨からの復旧・復興につい 他方で、福島の原子力災害の被災地域では、 ては、被災者の方々の暮らしとなりわいの再生 復興・再生が「本格的に始まった」ばかりの地 を支える大前提は、インフラの復旧やまちの復 域もあり、未だ不自由な生活を強いられている 興にあるとの考えに立ち、できる限り具体的な 多くの被災者の方々もいる。「第3期復興・創 見通しを明らかにしながら、地元の声にも耳を 生期間」となる令和8年度からの5年間は、国 傾けて、各種事業に取り組んできた。その結 土交通省にとっても、住民の帰還等に必要なイ 果、二次災害に直結するような切迫した被災箇 ンフラ整備を強力に推進すべき重要な期間であ 所の応急対策はすべて終了し、インフラの機能 る。このため、避難指示の解除を目指して除染 回復対策、本復旧などが順調に進捗している。 を進める区域について、除染に合わせた復旧を 東日本大震災の地震・津波による被災地域に 着実に進めるとともに、復興の拠点となる市街 ついては、基幹インフラの復旧・整備や復興ま 地の整備や観光振興についても、地域と一体と ちづくり等の復興事業に全力で取り組んできた なって着実に取り組む。 結果、復興の総仕上げの段階に入っている。
第2節 東日本大震災を教訓とした津波防災地域づくり 東日本大震災を契機として平成 23 年 12 月に また、東日本大震災被災地では、24 地区の 制定された「津波防災地域づくりに関する法 「一団地の津波防災拠点市街地形成施設」が都 律」に基づき、各地で津波防災の取組が進めら 市計画決定される(令和7年3月末時点)な れており、令和8年3月末時点で、最大クラス ど、同法を活用した復興の取組も進められてい の津波に対応した津波浸水想定の設定(40 都 る。国土交通省は、関係部局で構成される支援 道府県) 、警戒避難体制を整備するための津波 チームを設置して地方公共団体によるこれらの 災害警戒区域の指定(31 道府県)、さらに、津 取組に係る支援を実施しており、今後も国民の 波災害特別警戒区域の指定(静岡県伊豆市)、 命を守るための津波防災地域づくりを積極的に 津波防災地域づくりの総合的な推進計画の作成 推進していく。 (24 市町)が行われている。
【関連リンク】 「令和6年能登半島地震から2年」の復旧・復興状況と今後の見通し~被災者の方々の暮らしとなりわいの再生に向けて~ URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo01_hh_000071.html
【関連リンク】 東日本大震災からの復旧 ・ 復興に向けた取組 URL:https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002322.html
136 国土交通白書 2026 第3節 国土政策の推進
第3節 国土政策の推進 Ⅱ 国土形成計画は、総合的かつ長期的な国土づ 年6月に取りまとめられた報告書を踏まえ、施
第1章 くりの方向性を示すものである。第三次国土形 策を進めることとしている。 成計画(令和5年7月閣議決定)では、我が国 国土利用計画(全国計画)は、国土の利用に が直面するリスクと構造的な変化を踏まえ、地 関する基本的な方向を示すものである。第六次
時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 方に軸足を置いたビジョンとして、目指す国土 国土利用計画(全国計画)(令和5年7月閣議 の姿に「新時代に地域力をつなぐ国土」を掲 決定)では、人口減少や高齢化等の国土利用を げ、そのための国土構造の基本構想として、広 めぐる基本的条件の変化と課題を踏まえ、 「地 域レベルにおいては、広域圏の自立的発展と日 域全体の利益を実現する最適な国土利用・管 本海側・太平洋側二面活用等の広域圏内・広域 理」、「土地本来の災害リスクを踏まえた賢い国 圏間の連結強化を図る「全国的な回廊ネット 土利用・管理」、「健全な生態系の確保によりつ ワーク」や、リニア中央新幹線等により三大 ながる国土利用・管理」等を基本方針とし、持 都市圏を結ぶ「日本中央回廊」の形成等から、 続可能で自然と共生した国土利用・管理を目指 「シームレスな拠点連結型国土」の構築を図る すこととしている。 ことにより、地域の魅力を高め、地方への人の また、同計画では、特に、中山間地域や都市 流れの創出・拡大を図ることとしている。ま の縁辺部において、人口減少により、従来と同 た、国土の刷新に向けた4つの重点テーマとし 様に労力や費用をかけて土地を管理し続けるこ て、「デジタルとリアルが融合した地域生活圏 とは困難になることが想定されることから、地 の形成」 、「持続可能な産業への構造転換」、「グ 域の目指すべき将来像を見据えた上で、優先的 リーン国土の創造」、 「人口減少下の国土利用・ に維持したい農地をはじめとする土地を明確化 管理」を掲げるとともに、これを支える横断 し、粗放的な管理や最小限の管理を導入するな 的な重点テーマとして、「国土基盤の高質化」、 ど、地域の合意形成に基づき、管理方法の転換 「地域を支える人材の確保・育成」 を位置付け、 等を図る「国土の管理構想」を全国で進めるこ 相互に連携しながら相乗効果を発揮できるよう ととしている。 に、統合的に取り組むこととしている。 国土形成計画(全国計画)を基本とする国土 計画の実装に当たっては、二地域居住の促進 形成計画(広域地方計画)については、それぞ や地域生活圏の形成をはじめ、計画が描く将来 れの地域の個性や強みを活かして自律的に発展 ビジョンを国民全体で共有していくとともに、 する圏域づくりにつながるよう、新たな計画策 関係省庁とも緊密に連携しながら推進してい 定を進めており、令和7年 10 月に時点の検討 く。地域生活圏の形成に当たっては、国土審議 の成果を取りまとめた「中間とりまとめ(案)」 会推進部会の下に設置した有識者から構成され を各圏域広域地方計画協議会にて公表した。今 る「地域生活圏専門委員会」において、令和7 後、計画の策定・推進に取り組んでいく。
第4節 社会資本の老朽化対策等 (1)社会資本の老朽化対策 において発生した下水道管路破損に起因する道 我が国においては、高度経済成長期以降に集 路陥没事故も踏まえ、インフラの老朽化は喫緊 中的に整備されたインフラの老朽化が加速度的 の課題であり、インフラの機能を確保し、国民 に進行している。令和7年1月に埼玉県八潮市 の安全・安心を守るため、トータルコストの縮
国土交通白書 2026 137 第4節 社会資本の老朽化対策等
減・平準化等を図りつつ、計画的なインフラの ことを踏まえ、社会資本整備審議会・交通政策 Ⅱ 維持管理・更新を進める必要がある。 審議会の下に新たに「インフラマネジメント戦 このため、平成 25 年 11 月、政府全体の取組 略小委員会」を設置し、具体の議論を開始し 第1章
として、計画的な維持管理・更新等の方向性を た。 示す基本的な計画である「インフラ長寿命化基 本計画」が取りまとめられた。 (2)地域インフラ群再生戦略マネジメントの 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
この基本計画に基づき、国土交通省が管理・ 推進 所管するインフラの維持管理・更新等を着実に 平成 25 年を「社会資本メンテナンス元年」 推進するための中長期的な取組の方向性を明ら として位置付け、メンテナンスサイクルの確立 かにする計画である「国土交通省インフラ長寿 等、様々な取組を行ってきた。平成 30 年には、 命化計画(行動計画)」を平成 26 年 5 月に策定 国土交通省所管分野における社会資本の将来の し、メンテナンスサイクルの核となる個別施設 維持管理・更新費の推計を行い、将来、維持管 ごとの長寿命化計画の策定促進や、施設の健全 理・更新費の増加は避けられないものの、 「事 性を把握する点検の着実な実施、新技術の開 後保全」から「予防保全」に転換することによ 発・普及に合わせた点検要領の改定、地方公共 り、今後 30 年間の累計で約3割縮減できる見 団体への技術的・財政的支援等を実践してき 込みを示した。このことから、今後、予防保全 た。 への転換を進めることにより費用の縮減・平準 令和3年6月には行動計画を改定し、損傷が 化を図り、持続的・効率的なインフラメンテナ 軽微な段階で補修を行う「予防保全型」のイン ンスを推進することが重要である。 フラメンテナンスへの早期転換に向け、新技術 しかし、多くの地方公共団体では、適切な維 等を最大限活用して確実かつ効率的に点検・診 持管理を進める上で体制面・予算面に課題を抱 断等を実施し、緊急度に応じて修繕等の加速化 えている。こうした課題に対応するため、複数 を図ってきた。 自治体のインフラや複数分野のインフラを「群」 さらに、八潮市の道路陥没事故を受けて設置 としてとらえ、効率的・効果的にマネジメント された有識者委員会において、インフラ全般の を行う「地域インフラ群再生戦略マネジメント マネジメントについて「見える化」の徹底やメ (群マネ)」を推進していく必要がある。令和 7 リハリの取組等が必要であるとの提言を受けた 年 10 月には、先行事例におけるノウハウ等を
【関連リンク】 建設後 50 年以上経過する社会資本の割合 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/_pdf/50year_percentage.pdf
【関連リンク】 令和4年 12 月社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会 提言本文 URL:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001574054.pdf
【関連リンク】 地域インフラ群再生戦略マネジメント計画策定手法検討会・実施手法検討会 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/03activity/03_02_06.html
【関連リンク】 群マネモデル地域への支援 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/03activity/03_02_07.html
【関連リンク】 群マネ特設 HP URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/gunmane.html
138 国土交通白書 2026 第5節 社会資本整備の推進
参考とした「群マネの手引き Ver.1」を公表し 理大臣賞の授与等が、8年1月 20 日に首相官 たところであり、群マネの全国展開に向けて取 邸にて行われた。 Ⅱ り組んでいく。 さらに、人員体制が脆弱な自治体に対して、
第1章 新技術導入をはじめとする維持管理業務のノウ (3)インフラメンテナンスに関する理念の普 ハウを助言するため、産学官アドバイザーの派 及と新技術等の導入促進 遣や新技術の試行サポート等によるプッシュ型
時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 社会インフラの維持管理における理念の普及 の自治体支援を目指し、人材バンクやワンス や、業務効率を飛躍的に高めるための新技術の トップ窓口を担う事務局機能の構築の検討を進 社会実装を進める。 めている。 具体的には、産学官民が一丸となって総力戦 また、道路分野においては、道路行政の技術 でメンテナンスに取り組むプラットフォームで 開発ニーズを踏まえた新技術について、研究開 ある「インフラメンテナンス国民会議」におい 発から現場への活用まで積極的に推進してい て、地方フォーラムや令和4年に設立された る。具体的には、道路分野に携わる広範な研究 「インフラメンテナンス市区町村長会議」と連 者の技術研究開発を支援する新道路技術会議に 携を図りながら、インフラメンテナンスの理念 おいて、行政ニーズに応じた研究を中心に支援 の普及・課題解決に向けたシンポジウム・セミ し、その中でも活用が期待される研究開発等に ナーの開催や、自治体等が抱える技術的な課題 ついては、新技術導入促進計画に位置付け、必 (ニーズ)と民間企業等が保有する技術(シー 要な技術基準類の整備を迅速化するなど、現場 ズ)のマッチング等、インフラメンテナンスの 実装を推進していく。橋梁・トンネル等につい 技術導入を支援するイベントを全国で実施して て、点検支援技術性能カタログの充実等の取組 いる。 により、新技術活用を推進し点検業務の効率 また、国内のインフラメンテナンスに係る優 化・高度化を図る。また、橋梁、トンネル等の れた取組や技術開発を表彰することで、メンテ 点検・修繕等への新技術等の活用に対し、道路 ナンス産業の活性化を図ることを目的に「イン メンテナンス事業補助制度において優先的に支 フラメンテナンス大賞」を実施しており、令和 援する。 7年度は、極めて顕著な功績へ贈られる内閣総
第5節 社会資本整備の推進 社会資本整備重点計画は、「社会資本整備重 を「車の両輪」として連携・整合を図り、相互 点計画法」に基づき、社会資本整備事業を重点 の取組の相乗効果が得られるよう、第3次交通 的、効果的かつ効率的に推進するために策定す 政策基本計画と一体的に策定した。具体的に る計画である。令和8年1月に閣議決定された は、社会資本整備分野と交通分野で関連する施 第6次計画では、社会資本整備政策と交通政策 策を相互に盛り込むとともに、「人口減少とい
【関連リンク】 インフラメンテナンス国民会議 URL:https://jcim.jp/
【関連リンク】 インフラメンテナンス大賞 - インフラメンテナンス情報 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/03activity/03_award.html
国土交通白書 2026 139 第5節 社会資本整備の推進
う危機を好機に変える」という共通のゴールを 地方ブロックにおける社会資本整備重点計画 Ⅱ 掲げている。また、社会資本整備を通じて重点 に掲載したインフラ整備事業については、その 的に対応すべき社会課題とその解決を通じて目 将来の見通しをより分かりやすく提示し、民間 第1章
指す社会の姿を掲げ、そこからバックキャスト 投資の誘発等を通じた社会資本のストック効果 して 12 年度までの計画期間に達成すべき4つ の更なる発現を促進するため、国土交通省の の重点目標(「活力のある持続可能な地域社会 ウェブサイトで「インフラみらいマップ」とし 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
の形成」 、「強靱な国土が支える持続的で力強い て、事業の概要、完成時期、事業効果等を地図 経済社会」、 「インフラ分野が先導するグリーン 上に可視化している。 社会の実現」 、「戦略的・計画的な社会資本整備 加えて、気候変動に伴い激甚化・頻発化する を支える基盤の強化」)を設定し、着実に計画 気象災害や切迫する南海トラフ地震をはじめと を推進していく。具体的には、人口減少の危機 する巨大地震等から国民の生命・財産・暮らし に真正面から取り組むため、インフラ整備と交 を守り、国家・社会の重要な機能を維持するた 通政策の連携の下、生活サービスの維持に必要 め、これまでの災害等の教訓を踏まえつつ、国 な集積と移動の足が確保された地域づくりに取 土強靱化施策の更なる加速化・深化を図る必要 り組むこと、埼玉県八潮市の道路陥没事故を踏 がある。このような中、政府は、国土強靱化基 まえた、老朽インフラ対策の充実・強化や、地 本計画に基づく施策の実施に関する中期的な計 域の将来像に即したインフラ老朽化対策等を推 画として、令和7年6月に「第1次国土強靱化 進すること、地方公共団体や建設業等のインフ 実施中期計画」を閣議決定したところである。 ラを支える担い手の確保・育成について、イン 本計画は、8年度から 12 年度までの5年間を フラ整備と一体をなすものとして推進すること 計画期間とし、実施すべき国土強靱化施策の内 としている。 容及び目標等を定めている。 また、第6次 社会資本整備重点計画 における 国土交通省としては、この実施中期計画にお 重点目標を達成するため、本計画に基づき、各 いて、推進が特に必要となる施策として、流域 地方の特性、将来像や整備水準に応じて重点 治水対策(河川、砂防、下水道、海岸)や陸海 的、効率的、効果的に整備するための計画とし 空の交通ネットワークの連携強化、進行するイ て、地方ブロックにおける社会資本整備重点計 ンフラ老朽化への対応として上下水道施設の戦 画を策定し、その実施状況を把握していくこと 略的維持管理・更新等を位置付けているところ としている。 であり、これらの取組を着実に進めていく。
【関連リンク】 国土交通省における国土強靱化の取組を広報するウェブサイト URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/kyojinka/
【関連リンク】 インフラみらいマップ URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/inframiraimap/
140 国土交通白書 2026 第5節 社会資本整備の推進
図表Ⅱ-1-5-1 第6次社会資本整備重点計画【概要】 Ⅱ
第1章 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 図表Ⅱ-1-5-2 第1次国土強靱化実施中期計画【概要】
国土交通白書 2026 141 第5節 社会資本整備の推進
Ⅱ Column コラム 第1章
社会資本整備のストック効果最大化を推進するための支援体制構築
社会資本(インフラ)は、地域の豊かさを支える基盤 (英語名略称:SPIVE、 スパイブ) 」を設立しました。ストッ です。このインフラを活用し、その効果を最大化するた ク効果の分析方法や効果最大化の検討方法等を学ぶ研修 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
めには、ストック効果の適切な分析と、効果を高める取 の開催や、ストック効果分析に対する技術的助言等を行 組の継続的な実践を推進することが重要です。 う支援体制の構築等を通じて、地方公共団体等における 令和7年6月、国土交通省は、社会資本整備のストッ インフラのストック効果最大化の取組を支援していきま ク効果最大化を推進するために産学官の関係者を参画者 す。 とする「産学官連携インフラ戦略推進プラットフォーム
【関連リンク】 産官学連携インフラ戦略推進プラットフォーム(SPIVE) URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/infra/spive/
142 国土交通白書 2026 第6節 交通政策の推進
第6節 交通政策の推進 Ⅱ
第1章 1 交通政策基本法に基づく政策展開 「交通政策基本法」に基づき、令和8年1月 現」、B「成長型経済を支える、交通ネットワー に閣議決定された「第3次交通政策基本計画」 ク・システムの実現」、C「持続可能で安全・
時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 は、「第6次社会資本整備重点計画」と一体的 安心な社会を支える、強くしなやかな交通基盤 に策定され、7年度から 12 年度までの基本的 の実現」、D「デジタル・新技術の力を活かし な方針、施策の目標、施策等について定めてい た時代や環境の変化に応じた交通サービスの進 る。具体的には、基本的方針として、A「地域 化」の4つの柱を掲げている。 社会を支える、地域課題に適応した交通の実
2 年次報告の実施 交通政策白書は、交通政策基本計画の着実な に報告するものであり、令和7年版交通政策白 推進を図るため、 「交通政策基本法」に基づき、 書は、令和7年5月に閣議決定・国会報告し 交通の動向並びに政府が交通に関して講じた施 た。 策及び講じようとする施策について、毎年国会
3 「交通空白」の解消等に向けた地域交通のリ・デザインの全面展開 地方の「暮らし」と「安全」を守る基盤とい の具体例として運輸局による首長等訪問を継続 える地域交通は、買い物・医療・教育等、日常 して実施した。令和7年5月以降、約 400 自 生活に不可欠なサービスへのアクセスという重 治体を訪問し、お困りごとをお伺いした上で 要な役割を担っているものの、人口減少や高齢 「交通空白」解消に向けた事例の共有等、地域 化等による長期的な需要の減少や運転者不足等 の実情に寄り添った伴走支援を行った。 に伴い、大変厳しい事業環境となっている。 地方公共団体の地域公共交通担当者向け こうした全国各地の「交通空白」の解消等に に、有用な支援ツールや情報を提供する地域 向けて、令和7年 5 月に「 「交通空白」解消に 交 通 の た め の ポ ー タ ル サ イ ト「MOBILITY 向けた取組方針 2025」を策定し、7年度から UPDATE PORTAL」を令和8年3月に本公 9年度までを「交通空白解消・集中対策期間」 開した。さらに、様々なデータの使い方の解説 と定め、「交通空白」解消に向けた取組を推進 が記載されている「アップデートガイダンス」 した。 の提供、自治体職員向けに年3回程度開催され 「地域の足」、 「観光の足」確保に向けた取組 る国土交通大学校での研修を実施するなど、自
【関連リンク】 公共交通政策 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/index.html
【関連データ】 地域交通の現状 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
国土交通白書 2026 143 第7節 海洋政策(海洋立国)の推進
治体等の交通担当者向けに制度・事例等に係る かけて、対面によるマッチング・イベントを全 Ⅱ 情報・知見の提供を行った。 国6都市で開催した。また、「交通空白」解消 また、「交通空白」の早期解消・持続可能な に向けて他地域にも横展開しうる先進的な実証 第1章
地域交通の実現に向け、地域の暮らしと一体と 事業、「パイロット・プロジェクト」について して捉え地域の多様な関係者が連携して行う は、計 30 件の取組を公表・展開した。 「共創型交通」 、「交通空白」の早期解消に向け さらに、サービスの共同化・協業化や地域全 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
た地域の取組の立ち上げのほか、地域の公共交 体でのデータ活用など、連携・協働による「交 通のリ・デザインを加速化する「モビリティ支 通空白」解消等のリ・デザインの全面展開を進 援人材の育成・確保」、複数の交通サービスを めるため、事業者間のサービス連携やデータ活 まとめ、その利用データの地域での利活用等に 用の優良事例(ベストプラクティス)を創出す つなげる「地域交通 DX の推進」の取組に対し るとともに、その成果を基にシステム連携や て、約 500 件の支援を実施した。 データ仕様、業務プロセスなどを標準化し、そ 加えて、「交通空白」解消・官民連携プラッ の横展開を推進する地域交通 DX 推進プロジェ トフォームにおいては、 「交通空白」に係るお クト「COMmmmONS 注 1」を令和7年4月に 困りごとを抱える自治体、交通事業者と、様々 始動し、複数の施設送迎車両の運行計画立案や な技術・ノウハウを持つ幅広い分野の企業・団 運行管理等を行うための共同配車管理システム 体を結びつけることで、全国規模で「交通空 の開発とオープンソース化等に取り組んだ。 白」解消に向けた連携・協働体制を構築する取 共同化・協業化、地方公共団体の体制強化等 組を進めている。令和6年 11 月の立ち上げ以 を図るための新たな制度的枠組みの構築に向け 来、着実に会員数が増加し、7年度末までに、 て、2025 年6月より、交通政策審議会地域公 過半数の市区町村を含め 1,644 の団体が参画し 共交通部会で審議を行い、同年 12 月に「とり ている。官民連携プラットフォームの具体的な まとめ」が公表された。これを踏まえ、2026 活動として、「交通空白」解消に資するサービ 年3月に、「地域公共交通の活性化及び再生 ス等を提供する企業等をまとめたマッチング・ に関する法律」(平成 19 年法律第 59 号。以下 カタログの作成、企業検索等が可能な特設サイ 「地域交通法」という。)の改正案を国会に提出 トの開設、「交通空白」解消に向けたピッチ・ した。 イベントの開催のほか、7年 10 月から 12 月に
第7節 海洋政策(海洋立国)の推進
1 海洋基本計画の着実な推進 四方を海に囲まれている我が国では、海洋の 定された「海洋開発等重点戦略」の下、関係機 平和的かつ積極的な開発及び利用と海洋環境の 関が連携し、海洋政策を推進しているところで 保全と調和を図る新たな海洋立国の実現を目指 ある。 して制定された「海洋基本法」に基づき、令和 国土交通省においても、上記基本計画及び重 5年4月に閣議決定された「第4期海洋基本計 点戦略に基づき、総合的な海洋の安全保障の観 画」、6年4月に総合海洋政策本部において決 点から、海上保安能力の強化、旅客船の安全・
注 1 Code for Moblity Common Society の略。地域交通におけるデジタル活用や標準化を進めるプロジェクトのこと。
144 国土交通白書 2026 第7節 海洋政策(海洋立国)の推進
安心な運航の確保、離島の保全等、また、持続 型無人ボート)や AUV(自律型無人潜水機)、 可能な海洋の構築の観点から、洋上風力発電の ROV(遠隔操作型無人潜水機)等の「海洋ド Ⅱ 導入促進、ゼロエミッション船の開発等の各種 ローン」の社会実装、北極海航路の利活用に関
第1章 施策に取り組んでいる。そのほか、着実に推 する調査、沿岸域の総合管理と持続可能な開発 進すべき施策として、海上輸送の確保や海洋 に関する国際協調等、各般の施策を推進してい 人材の育成等に取り組むとともに、ASV(小 る。
時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 Column 海洋ドローンに関する将来ビジョンの策定 コラム
令和8年3月、海洋ドローンの普及と産業化に向けた 連携が不可欠です。国土交通省では、実海域における長 産学官協議会による検討結果を提言書として公表し、そ 期間の効果検証や利用環境の整備、ノウハウ支援を含め の中で、海洋ドローンの将来ビジョンを策定しました。 た地域ニーズに応じた導入・利活用モデル構築等を通じ 海洋ドローンが我が国の海における社会経済活動を支え て、海洋ドローンの更なる社会実装に取り組みます。 る基盤的ツールとなるためには、地域の海の関係者間の
【関連リンク】 次世代海洋モビリティビジョン URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/ocean_policy/content/001993351.pdf
【関連リンク】 海における次世代モビリティに関する産学官協議会 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/ocean_policy/seamobi.html
2 我が国の海洋権益の保全 (1)領海及び排他的経済水域における海洋調 を戦略的かつ継続的に実施している。 査の推進及び海洋情報の一元化 また、海洋情報の所在を一元的に収集・管 我が国の領海及び排他的経済水域には、調査 理・提供する「海洋情報クリアリングハウス」 データの不足している海域が存在しており、海 を運用している。さらに、政府関係機関等が保 上保安庁では、この海域において、海底地形、 有する様々な海洋情報を地図上に重ね合わせて 地殻構造、底質及び低潮線等の海洋調査を重点 表示できるウェブサービス「海洋状況表示シス 的に実施し、船舶交通の安全や我が国の海洋権 テム(海しる)」を構築し、平成 31 年4月から 益の確保、海洋開発等に資する基礎情報の整備 運用を開始した。
国土交通白書 2026 145 第7節 海洋政策(海洋立国)の推進
Ⅱ Column コラム 第1章
海のデータの総合図書館 海しる(海洋状況表示システム)
「海しる」はウェブブラウザ上で、様々な海洋に関す しる」を通じて海上安全、海洋開発、環境保全、水産等 る地理空間情報を一元的に閲覧することができる情報 の分野を横断したデータの共有・連携が可能となり、海 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
サービスです。政府機関等が保有する 250 項目以上の海 洋教育といった新たな分野での利用シーンの拡大にもつ のデータを地図上に重ねて見ることができます。また、 ながっています。今後も「海のデータの総合図書館」と 「海しる」上で見るだけでなく、外部のアプリやシステ して、様々な分野の利用者のニーズに応えられるよう、 ムがデータを直接扱えるよう API を公開しています。 「海 掲載情報の充実や機能強化を進めていきます。
【関連リンク】 海しる URL:https://www.msil.go.jp/
(2)大陸棚の限界画定に向けた取組 画定に向けた対応を行っている。 国連海洋法条約に基づき我が国が平成 20 年 11 月に「大陸棚限界委員会」へ大陸棚の延長 (3)沖ノ鳥島の保全、低潮線の保全及び活動 を申請した。24 年4月に同委員会から我が国 拠点の整備等 の国土面積の約8割に当たる4海域について大 ①沖ノ鳥島の保全・管理 陸棚の延長が認められる勧告を受領し、1 海域 沖ノ鳥島は、我が国最南端の領土であり、国 については勧告が先送りされた。これを受け、 土面積を上回る約 40 万 km2 の排他的経済水域 大陸棚の延長が認められた海域のうち、四国海 の基礎となる極めて重要な島であることから、 盆海域及び沖大東海嶺南方海域を我が国の大 基礎データの観測・蓄積や護岸等の点検、補修 陸棚とするよう 26 年 10 月に政令で定めた。ま 等を行うほか、観測拠点施設の更新等を行い管 た、関係国である米国との調整が進捗し、令和 理体制の強化を図っている。 6年7月には小笠原海台海域の大部分を我が国 の大陸棚とするよう同政令を改正した。 ②低潮線の保全 引き続き、関係国との調整が必要となる海域 「排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用 及び勧告が先送りされた海域について、海上保 の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整 安庁では、内閣府総合海洋政策推進事務局の総 備等に関する法律(低潮線保全法) 」等に基づ 合調整の下、関係省庁と連携し、大陸棚の限界 き、排他的経済水域等の外縁を根拠付ける低潮
146 国土交通白書 2026 第8節 海洋の安全・秩序の確保
線の保全が必要な海域として 185 の低潮線保 ③特定離島(南鳥島・沖ノ鳥島)における活動 全区域を政令で指定し、掘削等の行為規制を実 拠点の整備・管理 Ⅱ 施している。また、防災ヘリコプターや船舶等 「低潮線保全法」等に基づき、本土から遠隔
第1章 による巡視や衛星画像等を用いた低潮線及びそ の地にある南鳥島・沖ノ鳥島において、排他的 の周辺の状況の調査を行い、排他的経済水域及 経済水域及び大陸棚の保全及び利用に関する活 び大陸棚の基礎となる低潮線の保全を図るとと 動拠点として、船舶の係留、停泊、荷さばき等
時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 もに、保全を確実かつ効率的に実施していくた が可能となる港湾の施設の整備とともに、国に めに、低潮線に関する各種情報を適切に管理し よる港湾の管理を実施している。 ている。
第8節 海洋の安全・秩序の確保 (1)近年の現況 尖閣諸島周辺海域においては、ほぼ毎日、中 図表Ⅱ-1-8-1 領海警備を行う巡視船 国海警局に所属する船舶による活動が確認さ れ、領海侵入する事案も発生しており、令和7 年には、尖閣諸島周辺の接続水域での中国海警 局に所属する船舶の年間確認日数が過去最多を 更新したことに加え、6年 11 月から7年 10 月 にかけて、接続水域における連続確認日数も過 去最長となった。また、7年3月には領海侵入 時間も過去最長を更新したほか、中国海警局に 所属する船舶が領海に侵入し、日本漁船等に近 づこうとする事案も繰り返し発生するなど、情 勢は依然として予断を許さない状況となってい を許さない状況が続いており、海上保安庁で る。また、中国海警局に所属する船舶の大型 は、同海域で操業する日本漁船の安全確保を最 化、武装化が確認されており、中国の動向を引 優先とし、関係省庁と連携しつつ、これら外国 き続き注視していく必要がある。海上保安庁で 漁船に対して退去警告を行うなど、厳正に対応 は、現場海域に巡視船を配備するなど、我が国 している。 の領土・領海を断固として守り抜くという方針 の下、冷静に、かつ、毅然として対応を続けて (2)海上保安能力強化の推進 いる。 海上保安庁では、我が国周辺海域を取り巻く また、東シナ海等の我が国排他的経済水域等 情勢が一層厳しさを増していることを踏まえ、 においては、外国海洋調査船による我が国の事 令和4年 12 月に決定された「海上保安能力強 前の同意を得ない調査活動等も確認されてお 化に関する方針」に基づき、巡視船・航空機等 り、海上保安庁では、関係機関と連携しつつ、 の大幅な増強整備等に加え、無操縦者航空機等 巡視船・航空機による監視警戒等、その時々の の新技術の積極的活用、防衛省・自衛隊、警 状況に応じて適切に対応している。 察、外国海上保安機関等の国内外の関係機関と さらに、大和堆周辺海域では、外国漁船によ の連携・協力の強化、人材の確保・育成、職場 る違法操業が確認されるなど、依然として予断 環境の改善や処遇の向上等の取組を推進するこ
国土交通白書 2026 147 第8節 海洋の安全・秩序の確保
とにより、海上保安業務に必要な能力を一層強 なお、令和7年度は、大型巡視船4隻、中型 Ⅱ 化しているところである。7年 12 月に開催さ ヘリコプター1機が就役したほか、長時間の航 れた「海上保安能力強化に関する関係閣僚会 続性能と高い監視能力を有する無操縦者航空機 第1章
議」においても、これらの取組を一層進めてい 2 機が就役した。 くことが確認された。 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
図表Ⅱ-1-8-2 令 和7年度に就役した無操縦者航空機 図表Ⅱ-1-8-3 海上保安能力強化に関する関係閣僚 会議で発言する高市総理大臣
(3) 「自由で開かれたインド太平洋」の実現に 下、平成 12 年から北太平洋海上保安フォーラ 向けて ム(NPCGF)、16 年からアジア海上保安機関 我が国は「自由で開かれたインド太平洋」 長官級会合(HACGAM)のほか、29 年から (FOIP:Free and Open Indo-Pacific)の実 世界海上保安機関長官級会合(CGGS)を日 現に向け、①法の支配、航行の自由、自由貿 本の主導で開催し、海上保安機関間の連携・協 易等の普及・定着、②経済的繁栄の追求(連 力を積極的に推進している。令和7年度は、中 結性、EPA や投資協定を含む経済連携強化)、 国で開催された第 25 回 NPCGF、オーストラ ③平和と安定の確保(海上法執行能力の向上、 リアで開催された第 21 回 HACGAM、イタリ 人道支援、災害救援、海賊対策等での協力)の アで開催された第4回 CGGS に参加し、「法の 3点を「三本柱の施策」と定め、地域全体の平 支配に基づく海洋秩序維持の重要性」を各国海 和と繁栄を確保するため、各種取組を推進して 上保安機関等と共有した。ミニラテラルに関し いる。 ては、日米豪印(QUAD)海上保安機関によ 海上保安庁では、この「自由で開かれたイン るシップオブザーバーミッション、日米比海上 ド太平洋」の実現に向け、多国間、二国間及び 保安機関による合同訓練、日米韓海上保安機 3か国以上の協力枠組みであるミニラテラル 関による合同セミナー及び机上訓練を通じた の連携・協力を強化するとともに、シーレー ASEAN への能力向上支援といった取組を積極 ン沿岸国等の海上保安機関の能力向上を支援 的に実施した。 し、年々深化・多様化する国際業務に適切に対 二国間の連携については、覚書や協定の締結 応する体制を構築している。多国間の連携・協 による協力枠組みに基づき、長官級会合や合同 力に関しては、グローバル化あるいはボーダレ 訓練等の取組を実施した。 ス化する傾向にある国際犯罪や、大規模化する また、増加する諸外国からの海上保安能力向 事故や災害、環境汚染について、各国で連携し 上支援の要望に応えるため、平成 29 年に発足 て対応していくことが重要であるという認識の した能力向上支援の専従部門である「海上保安
148 国土交通白書 2026 第9節 土地政策の推進
庁 MCT(Mobile Cooperation Team)」を、 実施したほか、各国海上保安機関等の職員を日 令和7年度末までに、23 か国へ合計 159 回派 本に招へいして各種研修を実施するなど、各国 Ⅱ 遣、8か国1機関に 28 回のオンライン研修を の海上保安能力向上を支援した。
第1章 第9節 土地政策の推進
時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 1 土地政策の動向 人口減少等に伴い、相続件数の増加、土地の 図った。 利用ニーズの低下と所有意識の希薄化が進行し 令和7年4月に適正管理や利活用が課題とな ており、不動産登記簿等の公簿情報等を参照し る空き地の対処法について「空き地の適正管理 ても所有者の全部又は一部が直ちに判明せず、 及び利活用に関するガイドライン」を作成し、 又は判明しても所有者に連絡がつかず、円滑な 公表した。 土地利用や事業実施の支障となる土地、いわゆ また、「国土利用計画法施行規則」(昭和 49 る所有者不明土地や、適正な利用・管理が行わ 年総理府令第 72 号)を改正し、事後届出の届 れず草木の繁茂や害虫の発生等、周辺の地域に 出事項について、権利取得者が個人の場合には 悪影響を与える管理不全土地の増加が懸念され その国籍等を、法人の場合にはその設立準拠法 ている。 国を追加した(令和7年7月施行)。さらに、 これらの課題に対し、平成 30 年に所有者不 法人が権利取得者となる場合におけるその代表 明土地等対策の推進のための関係閣僚会議が立 者の国籍等を追加した(8年4月施行)。 ち上げられ、同年の「所有者不明土地の利用の 地籍調査は、市町村等が土地の境界、面積、 円滑化等に関する特別措置法」(平成 30 年法律 所有者等を調査し明確にすることにより、災害 第 49 号。以下「所有者不明土地法」という。) からの迅速な復旧・復興やインフラ整備の円滑 の制定、土地に関する基本理念として土地の適 化等のほか、所有者不明土地の発生抑制等に貢 正な「管理」に関する土地所有者等の「責務」 献するものであり、第7次国土調査事業十箇 や、所有者不明土地の円滑な利用及び管理の確 年計画(令和2〜 11 年度)に基づき推進して 保に関する規定を追加した令和2年の「土地基 いる。同計画の始期となる2年には、 「国土調 本法」(平成元年法律第 84 号)の改正、3年の 査法」 (昭和 26 年法律第 180 号)等を改正し、 民事基本法制の総合的な見直し、4年の「所有 地籍調査の円滑化・効率化に資する調査手続・ 者不明土地法」の改正等、政府一丸となって所 調査手法を導入した。さらに、6年の同計画の 有者不明土地等に対する取組を進めてきた。 中間見直しでは、現地調査等の通知に無反応な こうした所有者不明土地等対策のための制度 所有者等がいる場合の調査手続の導入やリモー の整備が進捗したことを踏まえ、地域における トセンシングデータの適用エリアの拡大等を行 取組を支援するモデル事業等を通じて得られた い、計画期間後期における地籍調査の加速化に 知見の横展開等により、制度の円滑な運用を 取り組んでいる。
【関連リンク】 人口減少時代における土地政策の推進~所有者不明土地等対策~ URL:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000099.html
国土交通白書 2026 149 第10節 新たな国と地方、民間との関係の構築
Ⅱ 2 年次報告の実施 土地白書は、「土地基本法」の規定に基づき、 に政府が土地に関して講じた基本的施策、7年 第1章
毎年国会に報告するものである。令和7年版土 度に政府が土地に関して講じようとする基本的 地白書では、令和6年度の不動産市場等の動向 施策を取りまとめ、7年5月に閣議決定・国会 や、民間投資を活かした地域の活性化、6年度 報告した。 時代の要請にこたえた国土交通行政の展開
第 10 節 新たな国と地方、民間との関係の構築
1 官民連携等の推進 官民連携事業(PPP/PFI)の案件形成を推 るとともに、先導的・モデル的な官民連携事業 進するため、地方公共団体等への PPP/PFI の について調査検討を行う地方公共団体を支援し 普及啓発や案件形成支援を実施している。 た。また、地方ブロックごとに設置されている 令和7年度は、民間提案に基づく新たな官民 「地方ブロックプラットフォーム」において、 連携のモデルとなる手法の導入を推進するた 首長会議の開催、案件形成に向けた官民対話、 め、地方公共団体のニーズと合致した優良な提 ノウハウの習得のための研修、官民交流のため 案を行った民間事業者による調査検討を実施す のマッチングイベント等を開催した。
第 11 節 政策評価・事業評価・対話型行政
1 政策評価の推進 「行政機関が行う政策の評価に関する法律」 題、規制及び租税特別措置等の政策評価を政策 に基づく「国土交通省政策評価基本計画」によ の特性に応じた政策評価の方式として実施して り、①各施策の達成状況を定期的に測定・評価 おり、その結果を予算要求や新規施策等の立案 する政策チェックアップ、②特定テーマに絞り へ反映させている。また、「独立行政法人通則 込み詳細な分析を行う政策レビューの2つを基 法」に基づき、所管 15 独立行政法人の業務実 本的な政策評価の方式として実施している。令 績の評価を、「中央省庁等改革基本法」に基づ 和7年度は、①は 44 施策目標と 116 業績指標 き、実施庁である気象庁及び海上保安庁の実績 について、②は3テーマについて評価を実施し 評価を実施している。 た。加えて、個別公共事業、個別研究開発課
【関連リンク】 令和7年版土地白書 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000006.html
【関連リンク】 国土交通省 総合政策局 社会資本整備政策課ウェブサイト URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kanminrenkei/index.html
【関連リンク】 国土交通省の政策評価 URL:http://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/hyouka/index.html
150 国土交通白書 2026 第11節 政策評価・事業評価・対話型行政
2 事業評価の実施 Ⅱ 個別の公共事業について、事業の効率性及び 用対効果分析のバックデータも含め、評価結果
第1章 実施過程における透明性の一層の向上を図るた の経緯が分かるように整理した事業評価カルテ め、新規事業採択時評価、再評価及び完了後の を作成し、インターネットで公表している。ま 事後評価による一貫した事業評価体系を構築し た、新規事業採択時評価の前段階における国土
時代の要請にこたえた国土交通行政の展開 ている。 交通省独自の取組として、直轄事業等におい 直轄事業等の評価結果については、新規採択 て、計画段階評価を実施している。 時・再評価時・完了後の事後評価時における費
3 国民に開かれた行政運営と対話型行政の推進 (1)国土交通ホットラインステーション (2)消費者等に対する情報提供 国民生活に極めて密接に関わる国土交通行政 従来の行政による監督に加え、消費者等によ の推進に当たっては、国民からの意見・要望等 る適切な選択及び市場による監視を通じた安 を幅広く把握し、国民に直結した行政を展開 全・安心の確保を図ることを目的に、住宅等の することが重要である。このため、 「国土交通 建築物や公共交通機関に関する事業者等の過去 ホットラインステーション」を開設しており、 の行政処分等の履歴を集約した「ネガティブ情 月平均約 1,900 件の意見等が寄せられている。 報等検索サイト」を国土交通省ウェブサイト上 に公開している。
国土交通白書 2026 151 第1節 観光をめぐる動向
Ⅱ 第 2章 観光立国の実現と美しい国づくり 第2章
第1節 観光をめぐる動向
1 観光立国の意義 観光立国の実現と美しい国づくり
観光は、少子高齢化・人口減少が進む我が国 地域住民と観光客双方の満足度の向上を図りな において、国内外との交流人口・関係人口の拡 がら、日本の魅力・活力を次世代にも持続的に 大を通じて地域活性化を可能にし、地域経済・ 継承・発展させていく観光の実現に向けて、引 日本経済の発展をリードする戦略産業である。 き続き、政府一丸となって取り組む。
2 年次報告の実施 観光白書は観光立国推進基本法(平成 18 年 じようとする施策について、毎年国会に報告し 法律第 117 号)第8条第1項及び第2項の規 ているものであり、令和7年版観光白書は、令 定に基づき、観光の状況及び政府が観光立国の 和7年5月に閣議決定・国会報告した。 実現に関して講じた施策並びに観光に関して講
第2節 観光立国の実現に向けた取組 観光立国の実現に向け、中長期的視点に立っ 光の持続的な発展」、「消費額拡大」、「地方誘客 て講ずべき様々な施策を盛り込んだ「明日の日 促進」 、「観光と交通・まちづくりとの連携強 本を支える観光ビジョン」や、四次にわたって 化」及び「新技術の活用・本格展開」を軸とし 策定してきた観光立国推進基本計画等に基づ て、インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の き、政府一丸となって観光施策を推進してきた 質の確保との両立、国内交流・アウトバウンド ところである。 拡大、観光地・観光産業の強靱化に取り組んで 今般策定された新たな観光立国推進基本計画 いく。 (令和8年3月 27 日閣議決定)も踏まえ、「観
1 インバウンドの戦略的な誘客と住民生活の質の確保との両立 (1)混雑・マナー違反等の個別課題への対応 れ、また、一部の場所・時間帯によっては、過 力強い観光需要を背景に、依然として都市部 度の混雑やマナー違反により、住民生活に支障 を中心とした地域への観光客の偏在傾向が見ら が及んでおり、その対応が急務となっている。
【関連リンク】 「令和6年度観光の状況」及び「令和7年度観光施策」 (観光白書)について URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00041.html
152 国土交通白書 2026 第2節 観光立国の実現に向けた取組
このため、令和5年 10 月に観光立国推進閣僚 また、訪日外国人の移動の実態(利用交通機 会議において決定した「オーバーツーリズムの 関や周遊ルート等)を把握し、周遊ルートの 未然防止・抑制に向けた対策パッケージ」に基 分析や戦略的なプロモーション施策の企画立 づき、観光客向けの移動手段などの受入環境の 案・見直しに活用できる訪日外国人流動データ Ⅱ 整備・増強、混雑状況の可視化などによる需要 (FF-Data)を公表した。
第2章 の分散・平準化、マナー違反行為の抑制をはじ め、各地域の実情に応じた意欲的な取組を総合 ③訪日旅行での高付加価値旅行者の誘致促進 的に支援した。 観光による地方創生や訪日外国人旅行者の旅
観光立国の実現と美しい国づくり 行消費額の拡大を目指し、消費単価の高い高付 (2)地方誘客の推進による需要分散 加価値旅行者の誘致促進に取り組む全国 14 の ①観光地域づくり法人(DMO)を核とする観 モデル観光地に対して、各地域のマスタープラ 光地経営 ンに基づくコンテンツの磨き上げやプロモー 観光地域のマネジメント及びマーケティング ション等の取組を支援している。 を担う観光地域づくり法人(DMO)を司令塔 とする観光地域づくりを推進するため、令和8 ④戦略的な訪日プロモーション 年4月1日時点で 350 団体(登録 DMO が 326 令和7年における訪日外国人旅行者数は過去 団体、候補 DMO が 24 団体)を登録するとと 最高となったところであるが、「明日の日本を もに、観光地域づくり法人に対する各種情報提 支える観光ビジョン」(平成 28 年 3 月 30 日策 供や観光地域づくり法人の体制強化の取組に対 定)で掲げる令和 12 年までに訪日外国人旅行 する支援を行った。 者数 6,000 万人の目標達成を見据え、日本政府 観光局を通じ、ウェブサイト・SNS、旅行会 ②地域周遊・長期滞在の促進 社やインフルエンサー等を活用し、インバウン 地方部での滞在の増加に資する取組をより一 ド市場の多様化に向けて戦略的な訪日プロモー 層推進していく必要があることから、旅行者の ションを実施している。 地域周遊・長期滞在を持続可能なあり方で促進 するため、調査、戦略策定、滞在コンテンツの ⑤観光資源の磨き上げ 充実、受入環境の整備、旅行商品の流通環境の 訪日外国人旅行消費額の向上や地方誘客の促 整備、プロモーション等、地域が一体となって 進に向け、地域固有の歴史・自然・食・文化等 行う取組を支援した。また、これら取組に対す の地域資源を活用した観光コンテンツの造成・ る助言をするため、地域への専門家派遣を支援 磨き上げ等を行った。 した。
【関連リンク】 観光地域づくり法人(DMO) URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/dmo/index.html
【関連リンク】 訪日旅行での高付加価値旅行者の誘致促進 URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/inbound_kaifuku/kofukakachi.html
【関連リンク】 【関連リンク】 日本政府観光局(JNTO)HP 日本政府観光局(JNTO)グローバルサイト HP URL:https://www.jnto.go.jp/ URL:https://www.japan.travel/en/
国土交通白書 2026 153 第2節 観光立国の実現に向けた取組
⑥サイクリング環境向上によるサイクルツーリ ⑧快適な旅を実現する環境の整備 ズム等の推進 バスタプロジェクトの全国展開を推進してい インバウンド効果を全国へ拡大するために、 る。その際、多様な交通モード間の接続を強化 Ⅱ サイクルツーリズムの推進や自転車を活用した し、MaaS 等の新たなモビリティサービスにも 観光地域づくりは有望であるものの、サイクリ 対応可能な施設としている。 第2章
ストの受入環境や走行環境の整備は不十分な状 「道の駅」において、観光等、更なる地方創 況である。このため、官民連携による先進的な 生に向けた取組を官民の力を合わせて実施して サイクリング環境の整備を目指すモデルルート いる。訪日外国人旅行者をはじめ、すべての利 観光立国の実現と美しい国づくり
を設定し、関係者等で構成される協議会におい 用者にわかりやすい道案内を実現するため、観 て、走行環境整備、受入環境整備、魅力づく 光地と連携した道路案内標識の改善等に取り組 り、情報発信に取り組んでいる。 んでいる。 また、国内外のサイクリストの誘客を図るた 高速道路会社等において、地域振興や観光振 め、日本を代表し、世界に誇り得るサイクル 興のため、周辺地域や観光関係事業者等と連携 ルートを国が指定する「ナショナルサイクル し、一定の期間及びエリア内の高速道路が乗 ルート制度」を創設し、令和元年 11 月につく り降り自由となる観光周遊パス注 1 を販売してい ば霞ヶ浦りんりんロード、ビワイチ、しまなみ る。 海道サイクリングロード、3年5月にトカプチ 400、太平洋岸自転車道、富山湾岸サイクリン ⑨クルーズの持続的な成長に向けた取組 グコースをナショナルサイクルルートとして指 「持続可能な観光」、「消費額拡大」 、「地方誘 定した。 客促進」の基本方針や目標を掲げた「観光立国 推進基本計画(令和5年3月 31 日閣議決定) 」 ⑦ MICE 誘致の促進 に基づく訪日クルーズ本格回復への取組を進め MICE の更なる誘致・開催に向け意欲的な地 た結果、2025 年(1 月~ 12 月)速報時点では 方都市に対する専門家の支援プログラムや誘致 「訪日クルーズ旅客 176.6 万人」 、「外国クルー ノウハウの提供、海外 MICE イベント等への ズ船の寄港回数 2,352 回」、「外国クルーズ船が 出展支援を行った。また、MICE 開催ニーズの 寄港する港湾数 93 港」となった。具体的には、 変化に対応するため MICE 施設の受入環境の 港湾管理者等が実施するクルーズ船受入機能強 整備を推進するとともに、ユニークベニュー 化やクルーズ船寄港促進に資する取組等ハー の活用等、MICE 開催地としての魅力向上のた ド・ソフト両面からの支援に加え、 「全国ク めの実証事業を実施した。さらに、MICE の総 ルーズ活性化会議」等と連携したシンポジウム 消費額等の算出、MICE 施設におけるコンセッ や市民向けのイベント、海外船社とのクルーズ ション導入に向けた支援に取り組んだ。 セミナー等を実施した。また、7年7月に「日
【関連リンク】 サイクルツーリズムの推進 モデルルート | GOOD CYCLE JAPAN | 国土交通省 URL:https://www.mlit.go.jp/road/bicycleuse/good-cycle-japan/model_route/
【関連リンク】 ナショナルサイクルルート | GOOD CYCLE JAPAN | 国土交通省 URL:https://www.mlit.go.jp/road/bicycleuse/good-cycle-japan/national_cycle_route/
注1 観 光周遊パスは、従来平均約3割であるところ、令和4年 11 月からは、平日のみの利用を対象として合計で約4割お 得となる拡充措置を実施している。
154 国土交通白書 2026 第2節 観光立国の実現に向けた取組
本のクルーズ市場の持続的発展へ向けた有識者 また、観光客の大型手荷物による公共交通機 検討会」において、12 年までに日本人のクルー 関等の混雑等の課題の解決に向けて、日本政府 ズ人口 100 万人を目指すとともに、新規のク 観光局と連携して、手ぶら観光のウェブサイト ルーズ旅客数や日本発着クルーズにおける外国 を活用して手ぶら観光カウンター認知度向上を Ⅱ 人旅客数の着実な増加を目指す旨の取りまとめ 図るとともに、手ぶら観光カウンターを 18 件
第2章 を実施した。 新たに認定した。
⑩快適な公共交通機関等の利用環境の実現 ⑪ストレスフリーな観光の推進
観光立国の実現と美しい国づくり 「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際 観光地や公共交通機関等における多言語対 観光の振興に関する法律(国際観光振興法)」 応、無料公衆無線 LAN 環境、公衆トイレの洋 に基づき実施している外国人観光旅客利便増進 式化・高機能化、多様な移動手段の整備等に対 措置については、令和7年4月に同措置を講ず する支援を行った。また、外国人旅行者向け消 べき区間等として、鉄道 249 区間・バス 265 費税免税制度について、地方部免税店数の拡大 区間・旅客船 36 区間・旅客船ターミナル 3 港・ も含めた利用促進や、「リファンド方式」への エアライン 17 事業者・空港ビル 64 空港を指定 移行に向けた必要な情報の周知広報等に取り組 しており、公共交通事業者等から外国人観光旅 んでいる。さらに「道の駅」について、外国人 客利便増進実施計画が提出され、交通サービス 観光案内所の JNTO 認定取得や多言語表示の インバウンド対応支援事業等を活用して取組を 整備等のインバウンド対応を促進し、地域のイ 進めている。 ンバウンドの受入拠点とする取組を推進した。
2 国内交流・アウトバウンドの拡大 (1)新たな交流市場・観光資源の創出 リズム等の滞在コンテンツの充実・強化や国内 地域との新たな関係構築の推進や、反復継続 外へのプロモーション等の取組に対して支援を 的な来訪の促進を通じて関係人口の創出を図る 行っている。 「第2のふるさとづくり」を、個人及び企業の また、ALPS 処理水の海洋放出による風評へ 2方向で促進し、新たな交流市場の開拓に向け の対策として、海の魅力を高めるブルーツーリ てモデル実証を実施した。 ズムの推進を目的として、海水浴場等の受入環 境整備やプロモーションの実施等の取組に対し (2)ユニバーサルツーリズムの促進 て支援を行っている。 高齢者等の旅行需要を喚起するため、ユニ バーサルツーリズムの促進に向けた調査検討等 (4)アウトバウンドの促進 を行った。さらに、宿泊施設等のバリアフリー 令和7年の出国日本人数は、約 1,473 万人と 化に必要な施設整備等を支援した。 なり、コロナ禍以降年々回復傾向にある。観光 庁ではアウトバウンドの促進に向けて、旅行会 (3)東日本大震災からの観光復興 社と学校等が連携した教育的な付加価値の高い 福島県では教育旅行や外国人のべ宿泊者数の プログラム開発を通じた海外教育旅行の促進 回復に課題が残ることから、同県における観光 や、政府観光局等と連携した普及啓発を実施し 復興を最大限に促進するため、同県が実施する ている。 風評被害対策及び震災復興に資するホープツー
国土交通白書 2026 155 第3節 良好な景観形成等美しい国づくり
3 観光地・観光産業の強靱化 (1)観光 DX の推進 て、登録行政庁である都道府県等とも連携して Ⅱ 先進的な技術の活用を図りながら観光分野の 制度周知を図り、同年4月1日時点で 3,243 社 DX を推進することにより、旅行者の利便性向 の登録がなされている。 第2章
上及び周遊促進、観光産業の生産性向上、観光 また、「住宅宿泊事業法」に基づく住宅宿泊 地経営の高度化等に向けた取組を行った。 事業の届出住宅数は、令和8年3月 13 日時点 で 39,575 件となった。7年度は、住宅宿泊事 観光立国の実現と美しい国づくり
(2)観光地・観光産業の担い手の確保 業などの民泊について、「外国人の受入れ・秩 観光庁では、観光産業における人材不足の解 序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」等 消に向けて、外国人材の活用(ジョブフェア の議論を踏まえて関係省庁と連携し、各種民泊 等)も含めた国内外の人材の採用活動支援、宿 の適切な運営の確保に向けた取組を実施した。 泊施設における省人化のための設備投資支援や 取組事例の展開といった取組を実施した。 (4)急患等にも十分対応できる外国人患者受 入体制の充実 (3)観光関係の規制・制度の適切な運用及び 外国人患者を受け入れる医療機関について、 民泊サービスへの対応 令和7年度に 2,721(うち都道府県が指定する 平成 30 年1月に施行された「通訳案内士法 「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」 及び旅行業法の一部を改正する法律」に基づき は 2,013)の医療機関をリスト化し、情報発信 導入された地域通訳案内士制度について、市 を行うとともに、多言語案内機能等の整備に対 町村及び都道府県とも連携して育成を推進し、 する支援を行った。また、引き続き外国人旅行 令和7年4月1日時点で 42 地域にて導入し、 者が医療費の不安なく治療が受けられるよう 4,031 名が登録されている。 に、旅行保険への加入を促進した。 また、旅行サービス手配業の登録制度につい
第3節 良好な景観形成等美しい国づくり
1 良好な景観の形成 (1)景観法等を活用したまちづくりの推進 形成の取組が推進されている。また、 「屋外広 「景観法」に基づく景観行政団体は令和8年 告物法」に基づく条例を制定している景観行政 3月末時点で 828 団体に増加し、景観計画は 団体は、同年4月1日時点で 237 団体に増加 683 団体で策定、景観計画に基づく重点的な取 し、総合的な景観まちづくりが進められてい 組は 432 団体で進められるなど、良好な景観 る。
【関連リンク】 外国人患者を受け入れる医療機関の情報 URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/topics08_00031.html
【関連リンク】 景観まちづくり URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/townscape/toshi_townscape_tk_000021.html
156 国土交通白書 2026 第3節 良好な景観形成等美しい国づくり
(2)無電柱化の推進 (4)水辺空間等の整備の推進 良好な景観の形成や観光振興等の観点から、 地域の景観、歴史、文化、観光基盤等の「資 新設電柱の抑制、低コスト手法の普及、事業期 源」や地域の創意に富んだ「知恵」を活かし、 間の短縮等により、無電柱化推進計画に基づき 市町村、民間事業者及び地元住民と河川管理者 Ⅱ 無電柱化を推進している。 の連携の下、河川空間とまち空間が融合した良
第2章 好な空間の形成を目指す「かわまちづくり」、 「日本風景街道」の推進 (3) 河川空間をオープン化する「河川敷地占用許可 多様な主体による協働の下、道を中心に、地 準則の緩和措置」や更なる規制緩和に向けた社
観光立国の実現と美しい国づくり 域資源を活かした景観美化や修景等を進め、観 会実験「RIVASITE」、ダムを活用した水源地 光立国の実現や地域の活性化に寄与することを 域活性化を図る「水源地域ビジョン」、広く一 目的に「日本風景街道」を推進している。令和 般に向けて川の価値を見いだす機会を提供する 8年3月末現在 149 ルートが日本風景街道と 「ミズベリングプロジェクト」等により、水辺 して登録されており、「道の駅」との連携を図 空間を活用した賑わいの創出を推進している。 りつつ、道路を活用した美しい景観形成や地域 また、下水処理水のせせらぎ水路としての活 の魅力向上に資する活動を支援している。 用等を推進し、水辺の再生・創出に取り組んで いる。さらに、汚水処理の適切な実施により、 良好な水環境を保全・創出している。
図表Ⅱ-2-3-1 かわまちづくり(北海道砂川市、静岡県伊豆の国市)
(北海道砂川市) (静岡県伊豆の国市)
脱・電柱社会 キーワードは低コスト化! 動 画 URL:https://www.youtube.com/watch?v=w0sJdcjKIh4
国土交通白書 2026 157 第3節 良好な景観形成等美しい国づくり
2 自然・歴史や文化を活かした地域づくり (1)我 が国固有の文化的資産の保存・活用等 法)」に基づき、100 市町(令和8年 3 月 31 日 Ⅱ に資する国営公園等の整備 現在)の歴史的風致維持向上計画を認定し、計 我が国固有の優れた文化的資産の保存及び活 画に基づく取組を支援している。また、良好な 第2章
用等を図るため、国営公園等(22 か所)の整 景観や歴史的風致の形成を推進するため、景 備及び維持管理を行っている。令和7年度に 観・歴史資源となる建造物の改修等の支援を は、首里城正殿の復元整備工事等を実施した。 行った。 観光立国の実現と美しい国づくり
(2)歴史的な公共建造物等の保存・活用 (4)グリーンインフラの活用推進 地域のまちづくりに寄与するために、長く地 グリーンインフラ(自然の多様な機能を活用 域に親しまれてきた歴史的な官庁施設の保存・ した社会資本)の活用推進により、将来にわた 活用を推進している。歴史的砂防関係施設(令 り持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくり 和7年 12 月 31 日現在、重要文化財3件、登録 及びウェルビーイング向上を目指す。令和7年 有形文化財 218 件)については、土砂災害を 度は、グリーンインフラの導入を目指す地域を 防止する施設及びその周辺環境一帯を地域の観 対象に技術的・財政的支援を行うとともに、企 光資源として位置付け、環境整備を行うなどの 業によるグリーンインフラ関連技術の地域実証 取組を推進している。 を支援した。さらに、グリーンインフラ官民連 携プラットフォームの活動を通じて、グリーン (3)歴史文化を活かしたまちづくりの推進 インフラの社会実装に取り組んだほか、8年1 地域の歴史や伝統文化を活かしたまちづくり 月にはグリーンインフラの更なる実装に向けた 「地域における歴史的風致の を推進するため、 全体の方向性を提示するため、「グリーンイン 維持及び向上に関する法律(歴史まちづくり フラ推進戦略 2030」を策定・公表した。
【関連リンク】 国営公園 URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_kokuei.html
【関連リンク】 首里城公園 URL:https://oki-park.jp/shurijo/fukkou/
【関連リンク】 ~我が国の歴史的な砂防施設を紹介します~ URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/sabo01_fr_000014.html
【関連リンク】 歴史まちづくり URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/rekimachi/toshi_history_tk_000010.html
【関連リンク】 グリーンインフラ官民連携プラットフォーム URL:https://gi-platform.com/
【関連リンク】 グリーンインフラ推進戦略 2030 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000017.html
158 国土交通白書 2026 第1節 地域未来戦略の推進に向けた取組
第 3章 地域活性化の推進
第1節 地域未来戦略の推進に向けた取組 Ⅱ
第3章 平成 26 年に「地方創生」を開始して以降、 じて地域経済の縮小が懸念されている。 急速な少子高齢化や人口減少に対応し、東京圏 そのため、政府としては、 「地域未来戦略」 への人口の過度の集中を是正し、将来にわたっ を推進し、地方が持つ伸び代をいかすことで、
地域活性化の推進 て活力ある日本社会を維持していくため、地域 国民の暮らしと安全を守り、地方に活力を取り における就業機会の創出、出産・子育て支援、 戻すため、これまでの地方創生の取組に加え 生活必需サービスの維持・確保、移住支援等、 て、「強い経済」の実現に重点を置いて、世界 全国各地で地方創生に向けた様々な取組が行わ をリードする成長分野のクラスター、地域発の れてきた。 クラスターを全国各地に形成して、地方から日 しかし、人口減少や東京一極集中の流れを変 本を成長軌道に押し上げていくこととされてい えるまでには至っていない。また、我が国全体 る。国土交通省としても、従来からの地方創生 にとって地方部の経済成長が重要である一方 の取組に加え、「地域未来戦略」の推進に向け、 で、地方部では人口減少に伴う消費の減少を通 施策の推進・充実を図る。
第2節 地域活性化を支える施策の推進
1 地域や民間の自主性・裁量性を高めるための取組 (1)地方における地方創生・地域活性化の取 施における伴走支援を行うなど、地方公共団体 組支援 の自主性と創意工夫に基づく独自の取組を後押 令和7年度補正予算において「地域未来交付 ししている。 金」が創設され、1,000 億円が計上された。8 そのほか、地域の発展及び持続可能性の向上 年度予算においても 1,600 億円が計上されてい を図ることを目的に、創意工夫を活かした自主 る。本交付金は、従来の地方創生に資する取 的な優れた地域づくり活動に対し、各団体と協 組のみならず、地方の暮らしの安定を実現し、 働し「地域づくり表彰(国土交通大臣賞等)」 「強い経済」を構築するため、地方公共団体に を昭和 59 年度より実施している。42 回目とな よる産業クラスター計画や地場産業の成長戦略 る令和7年度は、全国より 32 件の推薦があり、 が、真に地方の活力を最大化することにつなが 計 10 件を表彰した。 るような取組等を支援することとされている。 また、全国各地の個性的で魅力ある地域づく 国土交通省としても、地方公共団体に対し、 りに向けた取組を一層推進するため、社会イン 本交付金を活用した案件形成の支援や、事業実 フラと関わりのある地域活性化の取組を「手づ
【関連リンク】 網走市・塩尻市・今治市の地域づくり3団体が「国土交通大臣賞」を受賞 ~「新時代に地域力をつなぐ国土」 を体現する 10 団体を令和7年度「地域づくり表彰」受賞団体に決定~ URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001969364.pdf
国土交通白書 2026 159 第2節 地域活性化を支える施策の推進
くり郷土賞(国土交通大臣表彰)」として昭和 さらに、まちなかにおける道路、公園、広場、 61 年度より表彰している。40 回目となる令和 沿道建物等の官民空間の一体的な利活用等によ 7年度は 10 件(一般部門 10 件)が同賞を受賞 る「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創 した。 出を推進するため、「都市再生特別措置法」等 に基づき、引き続き法律・予算・税制のパッ
Ⅱ (2)民間のノウハウ・資金の活用促進 ケージで支援した。 地域に民間投資を呼び込み、地域活性化を図 加えて、首都高速道路日本橋地区の地下化の 第3章
るため、国土交通大臣認定を受けた優良な民間 取組では、老朽化対策のみならず、その機能向 都市開発事業等に対し、一般財団法人民間都市 上を図るとともに、日本橋川周辺の水辺空間の 開発推進機構による出資等の支援を行った。あ 再生や都心のビジネス拠点の整備等の民間再開 地域活性化の推進
わせて、同機構が地域金融機関や地方公共団体 発プロジェクトと連携している。あわせて、地 等との間で設立するまちづくりファンドを通じ 域の賑わい・交流の場の創出や道路の質の維 て、一定のエリア内において連鎖的に行われる 持・向上を図るため、立体道路制度等を活用し リノベーション事業、クラウドファンディング た官民連携による取組を推進している。 や寄付(ふるさと納税含む)を活用した事業を 出資等により支援した。 (3)スモールコンセッションの推進 また、まちの魅力・活力の維持・向上を通じ スモールコンセッション注 1 の推進のため、官 た地域参加型の持続可能なまちづくりの実現と 学金等の多様な関係者が参加・連携する「ス 定着を図るため、先進的に民間まちづくり活動 モールコンセッションプラットフォーム」にお を行う団体が、活動を行う中で一定の収益を継 いて、スモールコンセッションの機運醸成・理 続的に得ることができるノウハウ等を、これか 解促進のためのイベント等の開催や、課題の共 ら活動に取り組もうとする他団体に水平展開す 有や解決策の検討を行うワーキンググループの るための普及啓発や、官民連携によるエリアマ 設置等を通じて、全国的な普及・啓発を図った。 ネジメント活動等、エリア価値向上の取組をよ また、地方公共団体におけるスモールコンセッ り一層推進するため先進的な取組等に対する支 ションの形成を推進するため、プロジェクトの 援を行った。 構想の策定を支援する専門家の派遣を行った。
【関連リンク】 国土交通省「地域づくり表彰」ウェブサイト URL:https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/crd_chisei_tk_000020.html
【関連リンク】 手づくり郷土賞 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/tedukuri/index.html
【関連リンク】 官民連携まちづくりポータルサイト URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_machi_tk_000047.html
【関連リンク】 スモールコンセッションプラットフォーム URL:https://www.mlit.go.jp/smcn/
注1 廃 校等の空き施設や地方公共団体が所有する古民家等の空き家の活用について、民間事業者の創意工夫を最大限にいか した小規模なPPP/PFI事業を行うことにより、地域課題の解決やエリア価値の向上につなげる取組。
160 国土交通白書 2026 第2節 地域活性化を支える施策の推進
2 コンパクト・プラス・ネットワークの実現に向けた総合的取組 都市のコンパクト化と公共交通網の再構築を また、こうした市町村の取組が、医療・福 はじめとする都市の周辺等の交通ネットワーク 祉、住宅、公共施設再編、国公有財産の最適利 形成は、居住や都市機能の集積を図ることによ 用等のまちづくりに関わる様々な関係施策との り、住民の生活利便性の維持・向上、サービス 連携による総合的な取組として推進されるよ Ⅱ 産業の生産性の向上等による地域経済の活性 う、関係府省庁で構成する「コンパクト・プラ
第3章 化、行政サービスの効率化等による行政コスト ス・ネットワーク形成支援チーム」(事務局: の削減等の具体的な行政目的を実現するための 国土交通省)を通じ、現場ニーズに即した支援 有効な政策手段であり、中長期的な視野をもっ 施策の充実、モデル都市の形成・横展開、取組
地域活性化の推進 て継続的に取り組む必要がある。 成果の「見える化」等に取り組んでいる。 コンパクト・プラス・ネットワークの実現に さらに、頻発・激甚化する自然災害に対応し 向けた市町村の取組を促進するため、経済的イ た安全なまちづくりを推進するため、災害ハ ンセンティブによって居住と都市機能の立地誘 ザードエリアにおける開発抑制、災害ハザード 導を進める「立地適正化計画制度」を創設し エリアからの移転の促進、立地適正化計画と防 た。令和7年 12 月末時点において、立地適正 災との連携強化を進めるとともに、まちづくり 化計画の作成については、947 市町村が具体的 の将来像の実現に必要な都市の骨格となる基幹 な取組を行っており、そのうち、650 市町村が 的な公共交通軸を形成し、そのような公共交通 立地適正化計画を作成・公表済みとなった。地 軸で結ばれる拠点内の回遊性や滞在快適性を向 域公共交通計画については、7年度末におい 上させ、持続可能な多極連携型のまちづくりの て、1,244 件が公表済みとなった。 取組を推進していく。
3 地域特性を活かしたまちづくり・基盤整備 (1)民間投資誘発効果の高い都市計画道路の は、様々な交通施設が集中し、大勢の人が集ま 緊急整備 るため、都市再生の核として高い利便性と可能 市街地における都市計画道路の整備は、沿道 性を有する。 の建替え等を誘発することで、都市再生に大き このため、品川駅や神戸三宮駅、虎ノ門ヒル な役割を果たしている。このため、残りわずか ズ駅等の交通結節点及びその周辺において、直 な用地買収が事業進捗の隘路となっている路線 轄道路事業、又は社会資本整備総合交付金や国 について、地方公共団体(事業主体)が一定期 際競争拠点都市整備事業、都市・地域交通戦略 間内の完了を公表する取組(完了期間宣言路線 推進事業、鉄道駅総合改善事業等の活用によ (令和7年4月現在 55 事業主体132 路線) )を通 り、交通機関相互の乗換え利便性の向上や鉄道 じ、事業効果の早期発現に努めている。 等により分断された市街地の一体化、駅機能の 改善等を実施し、都市交通の円滑化や交通拠点 (2)交通結節点の整備 としての機能強化等を推進している。 鉄道駅やバスターミナル等の交通結節点に
【関連リンク】 品川駅西口駅前広場の将来イメージ URL:https://www.ktr.mlit.go.jp/toukoku/toukoku00018.html
国土交通白書 2026 161 第2節 地域活性化を支える施策の推進
(3)交通モード間の接続(モーダルコネクト) 促進に必要な整備等、地域の特色ある取組のた の強化 めに真に必要なインフラへの集中投資を、全国 バスタ新宿をはじめとする集約型公共交通 のニーズを総合的に勘案しながら行い、地域の ターミナル『バスタプロジェクト』について、 雇用拡大・経済の活性化を支える施策を推進し 官民連携を強化しながら戦略的に展開して、多 ている。
Ⅱ 様な交通モードが選択可能で利用しやすい環境 を創出し、人とモノの流れの促進や生産性の向 ①空港整備 第3章
上、地域の活性化や災害対応の強化等のため、 国内外の各地を結ぶ航空ネットワークは、地 バスを中心とした交通モード間の接続(モーダ 域における観光振興や企業の経済活動を支え、 ルコネクト)の強化を推進している。 地域活性化に大きな効果がある。アジア等の世 地域活性化の推進
また、バスタ整備の推進に向け、令和2年に 界経済の成長を我が国に取り込み、経済成長の 道路法を改正し、運送事業者専用の停留施設 呼び水となる役割が航空に期待される中、我が (特定車両停留施設)を道路附属物に位置付け 国全体の国際競争力や空港後背地域の地域競争 るとともに、施設運営に民間のノウハウを導入 力強化のため、国際貨物輸送の拠点機能向上や するコンセッションの活用を可能とした。 空港ターミナル地域再編による利便性向上等を 令和7年度は、品川駅、近鉄四日市駅、神戸 図っている。 三宮駅をはじめとする全国7か所で事業を推進 するとともに、15 か所で交通拠点における機 ②港湾整備 能強化の必要性等の調査を推進した。 四方を海に囲まれている我が国においては、 このほか、カーシェアリングやシェアサイク 海外との貿易の大部分を海上輸送が担ってお ルといった新たな交通モードについて、道路空 り、国内においても、地域間の物流・交流等に 間を有効活用しながら、公共交通との連携を強 海上輸送が重要な役割を担っている。こうした 化させる取組を推進している。東京都や大阪府 中で、港湾インフラは海外との貿易の玄関口で においては、駅周辺にカーシェアリングステー あるとともに、企業活動の場として日本の産業 ション等を設置し、公共交通の利用促進の可能 を支えている。物流効率化等による我が国の産 性を検証する社会実験を実施している。今後 業の国際競争力の強化、雇用と所得の維持・創 は、この社会実験の結果を踏まえながら、道路 出を図るため、地域の基幹産業を支える港湾に 空間の有効活用による道路利用者の利便性向上 おいて、国際物流ターミナルの整備等を行って に向けた検討を進めていく。 いる。
(4)企業立地を呼び込む広域的な基盤整備等 ③鉄道整備 各地域が国際競争力の高い成長型産業を呼び 全国に張り巡らされた幹線鉄道網は、旅客・ 込み集積させることは、東アジアにおける競 貨物輸送の大動脈としてブロック間・地域間の 争・連携及び地域活性化の観点から大きな効果 交流を促進するとともに、産業立地を促し、地 がある。このため、空港、港湾、鉄道や高規格 域経済を活性化させることで、地域の暮らしに 道路ネットワーク、半導体等の大規模な生産拠 活力を与えている。特に全国一元的なサービス 点整備を支える周辺インフラ、地域の産業立地 を提供する貨物鉄道輸送は、ネット・ゼロの実
【関連リンク】 バスタプロジェクト URL:https://www.mlit.go.jp/road/busterminal/
162 国土交通白書 2026 第2節 地域活性化を支える施策の推進
現やトラックドライバー不足の中で、環境に優 促進のため、関係機関が連携の上、進捗状況に しく効率の高い大量輸送手段として大きな役割 応じた支援を実施している。 が期待されている。 ③官民連携による道路管理の充実 ④道路整備 道路の管理は、これまでも地域の方々と協働 迅速かつ円滑な物流の実現等により国際競争 しながらボランティア・サポート・プログラ Ⅱ 力を強化するとともに、地域活性化の観点から ム(VSP)等により民間団体等の協力を得て
第3章 高規格道路等の幹線道路ネットワークの形成を 進めている。さらに「道路法」により指定され 進めている。 た道路協力団体は、地域の魅力向上のための道 路の美化活動やイベント等を実施し、オープン
地域活性化の推進 (5)地域に密着した各種事業・制度の推進 カフェ等の収益活動により、道路管理の充実を ①道の駅 図っている。なお、道路協力団体が行う道路に 「道の駅」は道路の沿線にあり、駐車場、ト 関する工事や道路占用の手続について、業務内 イレ等の「休憩機能」 、道路情報や地域情報の 容の範囲において柔軟化しており、令和8年3 「情報発信機能」、地域と道路利用者や地域間の 月末までに直轄国道において 42 団体を指定し 交流を促進する「地域の連携機能」の3つを併 ている。 せ持つ施設で、令和8年3月末時点 1,231 駅が 登録されている。 ④「かわまちづくり」支援制度 近年、地元の名物や観光資源を活かして、多 河口から水源地まで様々な姿を見せる河川と くの人々を迎え、地域の雇用創出や経済の活性 それにつながるまちを活性化するため、地域の 化、住民サービスの向上にも貢献するなど、全 景観、歴史、文化、観光基盤等の「資源」や地 国各地で「道の駅」を地域活性化の拠点とする 域の創意に富んだ「知恵」を活かし、市町村、 だけではなく、災害時の防災拠点としての活用 民間事業者及び地元住民と河川管理者の連携の や子育て応援施設の整備等の取組も進展して 下、「かわまちづくり」計画を作成し、河川空 いる。「地方創生・観光を加速する拠点」及び 間とまち空間が融合した良好な空間形成を推進 「ネットワーク化で活力ある地域デザインにも している。令和7年8月末までに 303 か所が 貢献」というコンセプトの実現に向けて、「ま 「かわまちづくり」支援制度に登録している。 ち」と「道の駅」が一体で戦略的に連携する取 組を推進していく注 2。 ⑤地域住民等の参加による地域特性に応じた河 川管理 ②高速道路の休憩施設の活用による拠点の作成 河川環境に関する専門的知識や豊かな川づく 高速道路利用者だけの使用を前提とした「高 りに熱意を有する人を河川環境保全モニターと 速道路の休憩施設」は、近年、ウェルカムゲー して委嘱し、河川環境の保全、創出及び秩序あ トやハイウェイオアシス等により、沿道地域へ る利用のための啓発活動等をきめ細かく行って の開放による地域活性化が図られており、その いる。
【関連リンク】 道の駅 URL:https://www.mlit.go.jp/road/Michi-no-Eki/index.html
注2 令 和元年の『「道の駅」第3ステージの提言』に示されたもので、令和2年からを「道の駅」第3ステージとして位置 付けている。
国土交通白書 2026 163 第2節 地域活性化を支える施策の推進
また、河川に接する機会が多く、河川愛護に 近年では、クルーズ船寄港時のおもてなし 関心を有する人を河川愛護モニターとして委嘱 等、港湾の多様化するニーズに対応するため、 し、河川へのごみの不法投棄や河川施設の異常 官民連携による港湾の管理等を促進するなどの といった河川管理に関する情報の把握及び河川 目的で、港湾管理者が適正な民間団体等を指定 管理者への連絡や河川愛護思想の普及啓発に努 する「港湾協力団体」制度を活用し、みなとを
Ⅱ めている。 核とした地域の更なる活性化を図ることとして いる(令和8年3月 31 日時点、45 団体)。 第3章
⑥海岸における地域の特色を活かした取組への また、令和4年 12 月には、港湾緑地等にお 支援 いて収益施設の整備とそこから得られる収益を 海岸利用を活性化し、観光資源としての魅力 還元して緑地等のリニューアルを行う民間事業 地域活性化の推進
を向上させることを目的に、砂浜確保のための 者に対し、緑地等の貸付けを可能とする港湾環 養浜や海岸保全施設等の整備を行う海岸環境整 境整備計画制度(みなと緑地 PPP)を創設し、 備事業の支援を行っている。海岸保全に資する 官民連携によるみなとの賑わい空間を創出する 清掃、植栽、希少な動植物の保護、防災・環境 こととしており、8年3月 31 日時点で6件認 教育等の様々な活動を自発的に行う法人・団体 定されている。 を海岸協力団体に指定することにより、地域と の連携強化を図り、地域の実情に応じた海岸管 ⑧プレジャーボートの利用振興 理の充実を推進しており、令和7年6月時点で ボートの利用振興や市場拡大を目的に、既存 25 団体が指定されている。 のマリーナや漁港等の施設を活用して、誰で も、気軽に、安心して楽しめる施設として「海 ⑦港湾を核とした地域振興 の駅」の設置を推進しており、令和8年3月末 地域住民の交流や観光の振興を通じた地域の 時点で 179 駅が登録されている。 活性化に資する「みなと」を核としたまちづく りを促進するため、住民参加による地域振興の (6)地籍整備の積極的な推進 取組が継続的に行われる施設を国土交通省港湾 災害後の迅速な復旧・復興、インフラ整備の 局長が申請に基づき「みなとオアシス」として 円滑化等に資する地籍整備を円滑かつ迅速に推 登録している(令和8年 3 月 31 日時点、170 進するため、「第7次国土調査事業十箇年計画 か所)。 (令和2年5月 26 日閣議決定)」に基づき、地 「みなとオアシス」は、 「みなとオアシス全国 籍調査を行う市町村等への財政支援のほか、新 協議会」等が主催する「みなとオアシス Sea 級 たな調査手続や効率的な調査手法の活用促進、 グルメ全国大会」等の様々な活動を通じ、地域 国が実施する基本調査による先進的・効率的な の賑わい創出に寄与している。 調査手法の事例の蓄積・普及、地籍調査以外の
【関連リンク】 「みなとオアシス」の概要 URL:https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk1_000001.html
【関連リンク】 「みなと緑地 PPP」の概要 URL:https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk4_000061_2.html
【関連リンク】 海の駅 URL:https://www.umi-eki.jp/
164 国土交通白書 2026 第2節 地域活性化を支える施策の推進
測量成果の活用を推進している。 8年度中に完了することを目指して、関係者と また、能登半島地震に伴う液状化被害によ 連携して被災市町の地籍調査事業の支援に取り り、地盤が水平方向に移動する「側方流動」が 組んでいる。 生じた結果、土地境界と現況にずれが生じてお り、住宅再建や土地取引に支障を生じうると (7)大深度地下の利用 いった課題につながることが懸念されている。 東京メトロ南北線延伸(品川・白金高輪間) Ⅱ このため、令和7年9月には、国・関係自治体 に係る大深度地下空間の利用調整を行うための
第3章 等で構成するプロジェクトチームにおいて「土 大深度地下使用協議会を開催したほか、近畿圏 地境界再確定加速化プラン」を策定し、地籍調 における大深度地下空間の利用状況に関する情 査事業による境界再確定に向けた調査を最短で 報の提供に向けた環境を整備した。
地域活性化の推進 4 広域圏の自立・活性化と地域・国土づくり (1)新時代に地域力をつなぐ国土・地域づくり ③連携中枢都市圏等による活力ある経済・生活 ①広域的地域活性化のための基盤整備の推進 圏の形成 自立的な広域圏の形成に向け、広域にわたる 地方圏の政令指定都市・中核市等を中心とす 活発な人の往来又は物資の流通を通じた地域 る一定規模以上の人口・経済を擁する都市圏に の活性化を図るため、令和7年度においては、 おいては、経済成長のけん引、高次都市機能の 40 府県が、2~4府県ごとに協働して 35 の共 集積・強化及び生活関連機能サービスの向上の 通目標を掲げ、のべ 83 の府県別の広域的地域 実現を目指す「連携中枢都市圏」の形成を促 活性化基盤整備計画を作成しており、同計画に 進しており、令和7年4月1日時点で合わせ 基づくハード・ソフト事業に対して、交付金を て 38 圏域が形成されている。国土交通省では、 交付した。 地域公共交通確保維持改善事業等について、連 携中枢都市圏で策定された都市圏ビジョンに基 ②官民連携による地域活性化のための基盤整備 づき実施される事業に対して一定程度配慮する 推進支援事業 などの支援を行っている。 官民が連携して策定した広域的な地域戦略に 資する事業について、民間の意思決定のタイミ (2)地域の拠点形成の促進等 ングに合わせ、機を逸することなく基盤整備の 「多極分散型国土形成促進法」に基づく業務 構想段階から事業実施段階への円滑かつ速やか 核都市において、引き続き、業務施設の立地や な移行を図るため、令和7年度においては、地 諸機能の集積の核として円滑に整備が実施され 方公共団体が行う概略設計や PPP/PFI 導入可 るよう、必要な協力を行っている。さらに、 「関 能性検討といった事業化に向けた検討に対し 西文化学術研究都市建設促進法」等に基づき、 て、16 件の支援を行った。 世界トップクラスの研究開発型イノベーション 拠点の形成を目指すため、地元関係機関等と連 携し、関西文化学術研究都市の建設を推進して いる。特に令和7年度においては、地元関係機
【関連リンク】 大深度地下利用 URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/daisindo/index.html
国土交通白書 2026 165 第2節 地域活性化を支える施策の推進
関や地元自治体、関係省庁等による検討体制の いはんな学研都市 第 5 期ステージプラン〜ポス 下、8年度からの10 年間のビジョンである「け ト万博シティけいはんな〜」が策定された。
5 地域の連携・交流の促進
Ⅱ (1)地域を支える生活幹線ネットワークの形成 る。さらに、地域や多様な民間事業者から構成 医療や教育等の都市機能を有する中心地域へ される「全国二地域居住等促進官民連携プラッ 第3章
の安全で快適な移動を実現するため、日常の暮 トフォーム」では、更なる課題の解決に向けた らしを支える道路網の整備や現道拡幅等による 具体的方策に関する議論のほか、官民連携を促 隘路の解消を支援している。また、合併市町村 すマッチングイベント等を行っている。 地域活性化の推進
の一体化を促進するため、合併市町村内の中心 地や公共施設等の拠点を結ぶ道路、橋梁等の整 (4)図柄ナンバーの導入について 備について、社会資本整備総合交付金等により 地域・観光振興の促進を目的に「走る広告 推進している。 塔」として、平成 30 年 10 月に導入した図柄ナ ンバープレート(地方版)について、令和7年 (2)都市と農山漁村の交流の推進 5月に新たに第4弾として5地域で交付を開始 高規格道路等の整備による広域的な交流・連 した。地方版の導入要件の緩和、新たなモノ 携軸の形成、農山村地域、都市の近郊等におけ トーン基調の全国版の導入、既存の地方版及び る優良な住宅の建設を促進するための住宅・宅 全国版のフルカラーへの一本化、寄付金の使途 地供給、交流の拠点となる港湾の整備等を実施 の見直し等を柱とする「図柄入りナンバープ している。 レート等に関する検討会」の中間取りまとめを 同年6月に行った。 (3)二地域居住の促進 大 阪・ 関 西 万 博 特 別 仕 様 ナ ン バ ー プ レ ー 二地域居住を促進するための「広域的地域活 トについて、令和7年 12 月に交付を終了し、 性化のための基盤整備に関する法律の一部を 累 計 約 21 万 件 の 申 込 み が な さ れ た。 ま た、 改正する法律」が、令和6年 11 月に施行され GREEN × EXPO 2027(2027 年 国 際 園 芸 博 た。これを基に、市区町村による「特定居住促 覧会)特別仕様ナンバープレートについては、 進計画」の策定を後押しするとともに、二地域 「GREEN × EXPO 2027」の開催機運の醸成 居住者と地域をつなぐ「特定居住支援法人」の を図ることを目的に、7年7月から全国で交付 育成・確保等を進めている。また、二地域居住 を開始した。申込時には寄付が可能であり、集 の促進に必要な「住まい」「なりわい」「コミュ まった寄付金は GREEN × EXPO 2027 の開催 ニティ」に係る環境整備を支援するとともに、 に関連した交通サービスの充実等に充てられる モデルとなる取組への支援・横展開を行ってい 予定である。
図表Ⅱ-3-2-1 GREEN × EXPO 2027 特別仕様ナンバープレート
166 国土交通白書 2026 第2節 地域活性化を支える施策の推進
6 地域の移動手段の確保 (1)地域の生活交通の確保・維持・改善 よう、地域をまたがる地域間幹線バスや地域内 地域交通は買い物、医療、教育といった日常 のバス交通・デマンド交通等の運行に対する支 生活に不可欠なサービスを支えているほか、イ 援を実施するとともに、バス車両の更新への支 ンバウンドの地方誘客を促す観点からも大変重 援を引き続き行う。また、キャッシュレス化の Ⅱ 要であり、まさに「地方の「暮らし」と「安全」 推進等、バス事業者における DX 化等の経営効
第3章 を守る基盤」である。 率化・経営力強化を図る取組等に対して支援を このため、地域公共交通確保維持改善事業に 行い、利便性・生産性・持続可能性が向上する おいて、多様な関係者の連携により、地方バス 形で地域交通の再構築を促進した。
地域活性化の推進 路線、離島航路・航空路等の生活交通の確保・ 維持を図るとともに、地域鉄道の安全性向上に (3)地域の自家用車・ドライバーの活用 資する設備の整備、バリアフリー化等、快適で 地域交通における「担い手」や「移動の足」 安全な公共交通の構築に向けた取組を支援して 不足への対応のため、地域の自家用車・ドライ いる。 バーを活用した日本版ライドシェアを令和5年 また、全国各地における喫緊の課題である 度に創設した。また、雨天・酷暑、イベント関 「交通空白」を解消するため、国土交通省「交 係時における時期・時間帯や車両数の拡大のほ 通空白」解消本部において、令和 7 年 5 月に定 か、地方部においては電話・現金支払いによる められた「 「交通空白」解消に向けた取組方針 利用を可能とする等、地域の実情やニーズを踏 2025」に基づき、地方運輸局等による自治体 まえ、累次のバージョンアップを行った。 や交通事業者に対する伴走支援や、パイロッ これにより、令和5年と導入後の6年以降の ト・プロジェクトの推進、民間企業の技術やノ 配車アプリのマッチング率を月ごとに比較する ウハウを生かした連携の推進といった国による と、多くの時間帯で大幅に改善された。 総合的な後押しにより、「地域の足」 「観光の また、タクシー事業者以外の者であるバス・ 足」の確保を強力に進めた。 鉄道事業者による日本版ライドシェア事業のあ りかたに関して、ドライバー・車両等の安全・ (2)地域バス路線への補助 安心の確保の観点から課題の有無を確認するた 地域の需要規模や人口特性に応じた最適な生 めのトライアルを行っている。 活交通ネットワークの確保・維持が可能となる
【関連リンク】 地域の関係者による連携・協働のカタログ URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/content/001745860.pdf
【関連リンク】 地域のモビリティ確保支援 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/seisakutokatsu_soukou_tk_000001.html
【関連リンク】 総合交通メールマガジン URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/seisakutokatsu_soukou_tk_000005.html
【関連リンク】 地域公共交通確保維持改善事業 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000041.html
国土交通白書 2026 167 第3節 民間都市開発等の推進
(4)地域鉄道の活性化、安全確保等への支援 いる。 中小民鉄や第三セクターが運営する地域鉄道 は、通勤や通学の足として沿線住民の暮らしを (6)離島との交通への支援 支えるとともに、観光等地域間の交流を支える 離島航路は、離島住民が日常生活を行う上で 基幹的な公共交通として、重要な役割を果たし 必要不可欠な交通手段である。令和6年度は
Ⅱ ているが、その経営は極めて厳しい状況にあ 276 航路で輸送人員需要は 39 百万人(ここ5 る。このため、鉄道施設総合安全対策事業費補 年で約5%減少)となっているが、その多くは 第3章
助や地域公共交通確保維持改善事業等及び税制 本土より深刻な人口減少、高齢化により、航路 特例により、安全設備の整備等に対して支援し の運営は極めて厳しい状況である。このため、 ている。 唯一かつ赤字が見込まれる航路に対し、地域公 地域活性化の推進
共交通確保維持改善事業により、運営費への補 (5)地方航空路線の維持・活性化 助、離島住民向け運賃割引への補助、運航効率 地域航空を持続可能なものとするため、国土 のよい船舶建造への補助を行っている(8 年 交通省では有識者からなる研究会等において検 3月末現在の補助対象航路:127 航路)。 討を行い、その結果、令和元年 10 月に九州の 離島航空路については、地域の医療の確保を 地域航空3社(天草エアライン、オリエンタル はじめ、離島の生活を支えるのに欠かせない交 エアブリッジ、日本エアコミューター)及び大 通手段であることから、安定的な輸送の確保を 手航空2社(全日本空輸、日本航空)が「地 図るため、離島に就航する航空運送事業者に対 域航空サービスアライアンス有限責任事業組 して、総合的な支援(予算:機体購入費補助、 合」を設立し、様々な協業の取組を進めた。5 運航費補助等 公租公課:着陸料の軽減、航空 年 10 月には上記5社が同組合を発展させ、新 機燃料税の軽減措置等)を講じている。なお、 たに「地域航空サービスアライアンス協議会」 令和7年度の離島航空路線の数は 62 路線、う (EAS Alliance)を設立し、地域航空における ち国庫補助対象は 20 路線となっている。 協業が一層効果的なものとなるよう取り組んで
第3節 民間都市開発等の推進
1 民間都市開発の推進 (1)特定都市再生緊急整備地域制度等による 地の整備を強力に推進し、海外から企業・人等 民間都市開発の推進 を呼び込むことができるような魅力ある都市拠 都市の再生の拠点として都市開発事業等を通 点を形成することが、重要な課題になってい じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべ る。このため、特に都市の国際競争力の強化 き地域として、全国 55 地域(令和8年3月末 を図る地域として、15 地域(8年3月末時点) 時点)が「都市再生緊急整備地域」に政令指定 が「特定都市再生緊急整備地域」に政令指定さ され、各地域で様々な都市開発事業が着々と進 れ、多くの地域において、官民連携による協議 行している。また、昨今の成長が著しいアジア 会により整備計画が作成されている。整備計画 諸国の都市と比較し、我が国都市の国際競争力 に基づき、地域の拠点や基盤となる都市拠点イ が相対的に低下している中、国全体の成長をけ ンフラの整備を重点的かつ集中的に支援する補 ん引する大都市について、官民が連携して市街 助制度として、国際競争拠点都市整備事業を設
168 国土交通白書 2026 第4節 特定地域振興対策の推進
けている。 金融支援(メザニン支援事業)や税制上の特例 措置が講じられている。 (2)都市再生事業に対する支援措置の適用状況 ①都市再生特別地区の都市計画決定 (3)大街区化の推進 既存の用途地域等に基づく規制を適用除外と 我が国の主要都市中心部の多くは、戦災復興 した上で、自由度の高い新たな都市計画を定め 土地区画整理事業等により街区が形成されてお Ⅱ る「都市再生特別地区」は、令和7年 12 月末 り、現在の土地利用や交通基盤、防災機能に対
第3章 現在で 135 地区の都市計画決定がなされ、う するニーズ等に対して、街区の規模や区画道路 ち 96 地区が民間事業者等の提案によるものと の構造が十分には対応できていない。大都市の なっている。 国際競争力の強化や地方都市の活性化、今日の
地域活性化の推進 土地利用ニーズを踏まえた土地の有効高度利用 ②民間都市再生事業計画の認定 等を図るため、複数の街区に細分化された土地 国土交通大臣認定(令和8年3月末現在 176 を集約し、敷地の一体的利用と公共施設の再編 件)を受けた民間都市再生事業計画について を推進している。 は、一般財団法人民間都市開発推進機構による
第4節 特定地域振興対策の推進
1 豪雪地帯対策 豪雪地帯は、「豪雪地帯対策特別措置法」に 備、除排雪の担い手の確保及び親雪・利雪の取 基づき、全国で 532 市町村が指定され、国土 組の促進等の対策を推進している。特に、除排 の 51%に及ぶ広大な面積を占めており、毎年 雪時の死傷事故が多発していることを踏まえ の恒常的な降積雪によって住民の生活水準の向 「豪雪地帯安全確保緊急対策交付金」により、 上や産業の発展が阻害されてきた。このため、 将来を見据えた戦略的な方針の策定と持続可能 同法及び「豪雪地帯対策基本計画」に基づき、 な除排雪体制の整備等に取り組む自治体を支援 交通の確保、生活環境・国土保全関連施設の整 している。
2 離島振興 「離島振興法」に基づき、都道県が策定した による雇用拡大等の定住促進、観光の推進等に 離島振興計画による離島振興事業を支援するた よる交流の拡大促進等の取組への支援を行って め、公共事業予算の一括計上に加え、「離島活 いる。また、「離島広域活性化事業」により、 性化交付金」により、離島における産業の育成 移住者受入れのための空き家の改修、シェアオ
【関連リンク】 都市再生緊急整備地域 URL:https://www.chisou.go.jp/tiiki/toshisaisei/kinkyuseibi_list/index.html
【関連リンク】 民間都市再生事業計画に係る支援措置 URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/crd_machi_tk_000016.html
国土交通白書 2026 169 第5節 北海道総合開発の推進
フィスや交流施設の整備、安全な定住環境のた の課題解決に役立てる「スマートアイランド」 めの避難施設の整備等への支援を行っている。 の実現に向けて取り組んでいるほか、離島と都 加えて、地方公共団体や民間企業等が連携する 市との交流事業「アイランダー」を開催してい 「スマートアイランド推進プラットフォーム」 る。 を通じて、ICT やドローン等の新技術を離島
Ⅱ 3 奄美群島・小笠原諸島の振興開発 第3章
世界自然遺産に登録された自然環境をはじめ 持続可能な発展や移住・定住の促進を図るた とする様々な魅力を有する奄美群島や小笠原諸 め、社会資本整備や、地域の特性に応じた産業 地域活性化の推進
島について、令和6年に延長・改正された「奄 振興、環境保全及び観光・交流促進等の取組を 美群島振興開発特別措置法」 、「小笠原諸島振興 支援している。 開発特別措置法」に基づき、両地域の自立的で
4 半島振興 令和7年3月に延長・改正した「半島振興 行っている。 法」に基づき、道府県が作成した半島振興計画 また、半島への誘客促進、半島産品の認知度 による半島振興施策を支援するため、半島振 向上、販路拡大等のための官民連携体制構築に 興対策実施地域(7年4月現在 23 地域(22 道 必要な実証調査を行うとともに、「半島税制」 府県 194 市町村))を対象として、「半島振興 による産業の振興等や、半島循環道路等の整備 広域連携促進事業」により、半島地域における を図っている。さらに、半島振興対策実施地域 資源や特性を活かした交流・定住促進、産業振 の振興を図るための半島振興基本方針を令和7 興、防災・物流強化に資する取組への補助を 年7月2日に初めて策定した。
第5節 北海道総合開発の推進
1 北海道総合開発計画の推進 (1)北海道総合開発計画について 固め、北海道の価値を更に高めていくこととし 我が国は、北海道の豊富な資源や広大な国土 ている。 を利用し、国全体の安定と発展に寄与するた め、明治2年の開拓使設置以降、特別な開発政 (2)第9期北海道総合開発計画の推進 策の下、積極的に北海道開発を推進してきた。 第9期北海道総合開発計画は、次に掲げる2 「第9期北海道総合開発計画」では、新型コ つの目標達成に向け、官民共創の取組等を通じ ロナウイルス感染症の拡大や 2050 年カーボン た諸施策を進めている。 ニュートラルに向けた国の政策展開、さらには ウクライナ情勢等を背景とした食料安全保障問 ①我が国の豊かな暮らしを支える北海道~食料 題の顕在化等、我が国を取り巻く状況の変化を 安全保障、観光立国、ゼロカーボン北海道 受け、北海道が我が国に貢献するための土台を 他で代替できない北海道の価値を最大化する
170 国土交通白書 2026 第5節 北海道総合開発の推進
ため、食料安全保障を支える農林水産業・食関 ②北海道の価値を生み出す北海道型地域構造~ 連産業の持続的な発展、観光立国を先導する世 生産空間注 3 の維持・発展と強靱な国土づくり 界トップクラスの観光地域づくり、地球温暖化 北海道の価値を生み出す生産空間の定住環境 対策を先導するゼロカーボン北海道の実現、地 を維持するため、デジタルの活用による生産空 域の強みを活かした成長産業の形成、自然共生 間の維持・発展、多様で豊かな地域社会の形 社会・循環型社会の形成等に向けた取組を進め 成、北海道型地域構造を支え世界を見据えた人 Ⅱ ている。 流・物流ネットワークの形成、生産空間を守り
第3章 安全・安心に住み続けられる強靱な国土づくり の取組を進めている。
地域活性化の推進 2 特色ある地域・文化の振興 (1)アイヌ文化の振興等 と共生してきたアイヌ文化に触れることを通じ 先住民族であるアイヌの人々の誇りが尊重さ た理解促進を図っているほか、「アイヌの人々 れる社会の実現に向け、アイヌ文化の復興等の の誇りが尊重される社会を実現するための施策 拠点であるウポポイ(民族共生象徴空間)につ の推進に関する法律」 (平成 31 年法律第 16 号) いて、令和6年3月に策定した「ウポポイ誘客 に基づき、アイヌの伝統等に関する知識の普及 促進戦略」に基づき、地域と連携したイベント 啓発を推進している。 や国内外への情報発信等の施策を実施し、自然
【関連リンク】 第9期北海道総合開発計画について URL:https://www.mlit.go.jp/hkb/hkb_tk7_000112.html
【関連リンク】 アイヌ文化と出会う旅 ウポポイ(民族共生象徴空間) URL:https://www.youtube.com/watch?v=X18o6t6QBDk URL:https://ainu-upopoy.jp/ 動 画
【関連リンク】 ウポポイ誘客促進戦略 URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/hok01_hh_000062.html
注3 主 として農業・漁業に係る生産の場(特に市街地ではない領域)を指す。生産空間は、生産のみならず、観光、脱炭素 化に資する森林資源、豊富な再生可能エネルギー導入ポテンシャル、そのほか多面的・公益的機能を提供し、北海道の 価値を生み出している。
国土交通白書 2026 171 第5節 北海道総合開発の推進
Column ウポポイでアイヌ文化を体験してみませんか? コラム ~開業5周年を迎えて~
北海道白老町のウポポイは、博物館や公園等から構 ウポポイでは、弓矢体験や伝承活動が盛んな地域と
Ⅱ 成されるアイヌの歴史・文化を学び伝えるナショナル センターとして、令和2年7月に開業しました。7年 の連携イベント等多様なプログラムを展開しており、 令和8年にはアイヌ文化を題材にした遊具の設置や、 第3章
には、大阪・関西万博での伝統的アイヌ舞踊の披露や アイヌの伝統料理を楽しめる飲食店がリニューアルさ 開業5周年記念式典の開催、アイヌの伝統芸能と歌舞 れる等さらにアイヌ文化を楽しく学ぶことができます。 伎のコラボなど多彩な取組を実施し、多くの方々にア ぜひウポポイでアイヌ文化を体験してみてはいかが イヌ文化に触れていただきました。 でしょうか。 地域活性化の推進
EXPO2025 大阪・関西万博において 狩猟の作法や技術を学べる弓矢体験 伝統的なアイヌ舞踊を披露
令和8年春にオープン予定の大型遊具の完成予想図 (左側:舟をイメージしたもの、右側:サケをイメージしたもの)
【関連リンク】 【関連リンク】 国土交通省 アイヌ関連施策 国立アイヌ民族博物館 URL:https://www.mlit.go.jp/hkb/hkb_fr1_000001.html URL:https://nam.go.jp/
【関連リンク】 内閣官房アイヌ総合政策室 URL:https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/ainusuishin/index.html
172 国土交通白書 2026 第5節 北海道総合開発の推進
(2)北方領土隣接地域の安定振興 北海道知事が作成した「第9期北方領土隣接地 領土問題により望ましい地域社会の発展が阻 域の振興及び住民の生活の安定に関する計画」 注4 害されている北方領土隣接地域 では「北方領 の下、魅力ある地域社会の形成のために必要な 土問題等の解決の促進のための特別措置に関す 施策を総合的に推進している。 る法律」に基づき、関係市町の長の意見を聴き
Ⅱ
第3章 地域活性化の推進
【関連リンク】 北方領土隣接地域の振興及び住民の生活の安定に関する施策 URL:https://www.mlit.go.jp/hkb/hoppo.html
注4 根室市、別海町、中標津町、標津町、羅臼町(1市4町)。
国土交通白書 2026 173 第1節 豊かな住生活の実現
第 4章 心地よい生活空間の創生
第1節 豊かな住生活の実現
Ⅱ 1 住生活の安定の確保及び向上の促進 第4章
(1)目標と基本的施策 対応可能な住宅地の形成、⑨頻発 ・ 激甚化する 令和8年3月、8年度から 17 年度を計画期 災害に対応した安全な住環境の整備、 「住まい 間とする新たな住生活基本計画(全国計画)を を支えるプレイヤー」の視点から⑩担い手の確 閣議決定した。住宅政策の基礎となる将来の人 保・育成や海外展開等を通じた住生活産業の発 心地よい生活空間の創生
口・世帯数等の推計値が示されている 32 年に 展、⑪国と地方における住宅行政の役割の明確 おいて、人口・世帯数の減少と単身世帯の増 化と推進体制の整備という 11 の目標を位置付 加、既成住宅地等における相続住宅の大量発 けており、当面 10 年間の施策の方向性を示し 生、生産年齢人口の減少等が見込まれることを ている。 踏まえ、これらの変化とそこから導かれる住生 今後、本計画に基づき、住生活の安定の確保 活の姿を「住まうヒト」 、「住まうモノ」、「住ま 及び向上の促進に関する施策を総合的かつ計画 いを支えるプレイヤー」の3つの視点に整理し 的に推進していく。 た。 「住まうヒト」の視点から①人生 100 年時代 マンションは、国民の1割以上が居住する重 を見据え、高齢者が孤立せず、希望する住生活 要な居住形態である一方で、建物と区分所有者 を実現できる環境整備、②若年世帯や子育て世 の「2つの老い」が進行し、外壁等剝落の危険 帯が希望する住まいを確保できる社会の実現、 や集会決議の困難化などの課題が顕在化してお ③住宅確保要配慮者が安心して暮らせる居住環 り、今後、老朽化マンションの急増と、区分所 境・居住支援体制の整備、④過度な負担なく希 有者の高齢化の進行により、ますます深刻化す 望する住生活を実現できる環境整備、「住まう るものと考えられる。 モノ」の視点から⑤多世代にわたり活用される こうした状況を踏まえ、令和7年5月に成立 住宅ストックの形成、⑥住宅ストックの性能や した「老朽化マンション等の管理及び再生の円 利用価値が市場で適正に評価され、循環するシ 滑化等を図るための建物の区分所有等に関する ステムの構築、⑦住宅の誕生から終末まで切れ 法律等の一部を改正する法律(改正マンション 目のない適切な管理・再生・活用・除却の一体 関係法) 」(令和7年法律第 47 号)では、マン 的推進、⑧持続可能で多様なライフスタイルに ションの新築から再生までのライフサイクル全
【関連リンク】 住生活基本計画(全国計画) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000032.html
【関連リンク】 マンション管理・再生ポータルサイト https://www.mansion-info.mlit.go.jp/
174 国土交通白書 2026 第1節 豊かな住生活の実現
体を見通して、その管理や再生の円滑化等を図 の技術基準を定め、物件検査を行うことで住宅 ることとしている。 の質の確保を図るとともに、耐震性、省エネル 具体的には、①新築時から管理計画に基づい ギー性、バリアフリー性及び耐久性・可変性の て適正な管理を行うことを可能とするなど、管 4つの性能のうち、いずれか一定の基準を満た 理の円滑化等の推進、②建物・敷地の一括売却 した住宅の取得に係る融資金利を引き下げる や建物更新等による再生について、建替えと同 【フラット 35】S や、こどもの人数等に応じて 様に、多数決決議で行うことを可能とするな 融資金利を引き下げる【フラット 35】子育て ど、再生の円滑化等の推進、③区分所有者等か プラス等を実施している。 らの相談対応や合意形成の支援を行う民間団体 また、同機構は、高齢者が安心して暮らすこ Ⅱ
第4章 の登録制度を創設するなど、地域で管理組合を とができる住まいを確保するため、住宅融資保 支援する体制の充実等の措置を講じている。 険業務や証券化支援業務の枠組みを活用したリ 令和8年4月の改正マンション関係法の円滑 バースモーゲージ注 1 型住宅ローンの供給の支援 な施行に向けては、マンション標準管理規約の (【リ・バース 60】)を行っている。
心地よい生活空間の創生 改正、基本方針の改正、地方公共団体向けのガ イドライン等の整備等を行ったほか、全 47 都 ②住宅税制 道府県での全国説明会の開催等による改正内容 令和8年度税制改正において、住宅ローン控 の周知・広報等に取り組んでいる。 除については、2050 年カーボンニュートラル 改正マンション関係法の施行により、マン の実現に貢献するとともに、世帯構成の変化等 ションにおける良好な居住環境の確保や、老朽 を踏まえ、幅広い住まいの選択肢を提供するた 化マンションの損壊等からの国民の生命、財産 め、適用期限を5年間延長した上で、省エネ性 の保護等が図られるよう、マンションの管理や 能等の高い既存住宅に係る借入限度額や控除期 再生の取組等の一層の促進に努めていく。 間を拡充し、40㎡台の既存住宅を新たに支援 対象に追加することとした。また、令和 10 年 (2)施策の総合的かつ計画的な推進 以降、一定のハザードエリア内の新築住宅を適 ①住宅金融 用対象外とする立地要件を追加した。そのほ 消費者が、市場を通じて適切に住宅を選択・ か、新築住宅に係る固定資産税の減額措置をは 確保するためには、金利や家賃等に関する理 じめとする7年度末までに適用期限を迎える特 解を深め、変動型や固定型といった多様な住宅 例措置について、適用期限を延長するととも ローンが安定的に供給されることが重要である。 に、一部の税制について、床面積要件の緩和や 民間金融機関による相対的に低利な全期間固 立地要件の追加を行うこととした。 定金利型住宅ローンの供給を支援するため、独 立行政法人住宅金融支援機構では証券化支援業 ③住生活リテラシー 務(【フラット 35】)を行っている。証券化支 消費者が各ライフステージに応じた最適な住 援業務の対象となる住宅については、耐久性等 まい方を選択するためには住生活に関するリテ
【関連リンク】 いま身につけよう住まいの判断力 住まリテ https://www.mlit.go.jp/sumai_literacy_pf/
注1 所 有する住宅及び土地を担保に融資を受け、毎月利息のみを支払い、利用者(高齢者等)が死亡したとき等に、担保不 動産の処分等によって元金を一括して返済する住宅ローン商品。住宅金融支援機構の住宅融資保険業務や証券化支援業 務の枠組み制度を活用する場合は、住宅の建設・購入等に関する融資に限られる。
国土交通白書 2026 175 第2節 快適な生活環境の実現
ラシーを高めることが重要である。官民連携に 断力 住まリテ」ウェブサイトを令和7年に公 よる「住生活リテラシー・プラットフォーム」 開し、さまざまな情報提供を行っている。 の取組の一環で「いま身につけよう住まいの判
第2節 快適な生活環境の実現
1 緑豊かな都市環境の形成 Ⅱ 令和6年度末現在の都市公園等整備状況は、 1人当たり都市公園等面積は約 11.0m2 となっ 第4章
115,917 か 所、 約 131,243ha と な っ て お り、 ている。
2 歩行者・自転車優先の道づくりの推進 心地よい生活空間の創生
①人優先の安全・安心な歩行空間の形成 様化する道路へのニーズに対応するため、道路 安全・安心な社会の実現を図るためには、歩 空間の柔軟な利活用等による「人中心の道路空 行者の安全を確保し、人優先の安全・安心な歩 間」の実現に取り組んでいる。 行空間を形成することが重要である。幹線道路 等において安全性を一層高めつつ自動車交通を ④わかりやすい道案内の推進 生活道路から転換するとともに、生活道路にお 地図を用いた案内標識(地図標識)を交通結 いて速度抑制や通過交通の進入抑制を図る面的 節点や観光地へ設置するなど、訪日外国人等の 対策等を実施することにより、人優先の安全・ 公共交通機関の乗換えやまちあるき等の支援を 安心な歩行空間の形成を推進している。 進めている。
②安全で快適な自転車利用環境の創出 ⑤柔軟な道路管理制度の構築 自転車対歩行者の交通事故件数は近年増加傾 自動車交通の一層の円滑化と安全に加え、安 向にあり、また、電動キックボード等の新たな 全な歩行空間としての機能や地域の賑わい・交 モビリティの普及も進みつつあることから安全 流の場としての機能等の道路が有する多様な機 で快適な自転車等の通行空間の整備が一層求め 能を発揮し、沿道住民等のニーズに即した柔軟 られている。このため、警察庁と共同で「安全 な道路管理ができるよう、(ア)指定市以外の で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を 市町村による国道又は都道府県道の歩道の新設 踏まえた通行空間の整備や自転車の交通ルール 等の特例、(イ)市町村による歩行安全改築の の啓発を進めている。 要請制度、 (ウ)NPO 等が設置する並木、街 灯等に係る道路占用の特例、(エ)道路と沿道 ③多様なニーズに応える道路空間の実現 施設を一体的に管理するための道路外利便施設 歩行者利便増進道路(ほこみち)制度の占用 の管理の特例、(オ)道路協力団体が設置する 特例を活用し、賑わいのある道路空間の構築を 施設等に係る道路占用の特例、(カ)道を活用 推進している。また、社会情勢の変化に伴い多 した地域活動における道路占用許可の弾力的な
【関連リンク】 都市公園データベース URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/park/toshi_parkgreen_tk_000156.html
176 国土交通白書 2026 第3節 自転車の活用推進
運用等を実施している。
第3節 自転車の活用推進 自転車は、身近な交通手段であり、環境への また、国民の健康増進に向けて、事業者等に 負荷の低減、災害時における移動手段の確保、 対して自転車通勤導入を促すとともに「自転車 国民の健康の増進、交通の混雑の緩和等に資す 通勤推進企業」宣言プロジェクトを展開し、自 るものである。また、自転車は環境にやさしい 転車通勤に積極的に取り組む事業者等を認定し モビリティであるとともに、サイクリングを通 ている。 Ⅱ
第4章 じた健康づくりや余暇の充実等、人々の行動を 観光地域づくりについては、サイクルツーリ 広げ、地域とのふれあいや仲間とのつながりを ズムの推進に向けて、サイクリング環境の整備 取り持つコミュニケーションツールでもある。 や世界に誇るナショナルサイクルルートの磨き そのため、国では、官民が一体となって、自転 上げ等に取り組むほか、サイクルトレイン・サ
心地よい生活空間の創生 車の活用の推進に向けて、都市環境、国民の健 イクルバスの導入を促進している。 康増進、観光地域づくり、安全・安心といった さらに、安全・安心について、警察と連携し 各種の分野において施策を進めている。 て整備形態に合わせた通行ルールの周知や交通 良好な都市環境の形成のため、歩行者、自転 安全の啓発を行うほか、自転車損害賠償責任保 車及び自動車が適切に分離された自転車通行空 険等への加入を義務付ける条例の制定を促進し 間や駐輪場の計画的な整備に取り組んでいるほ ている。また、災害時における人々の移動や輸 か、シェアサイクルの導入、地域公共交通と自 送の手段として自転車の活用を図っている。 転車との連携等を推進している。
第4節 利便性の高い交通の実現 (1)都市・地域における総合交通戦略の推進 を策定(令和8年3月現在 129 都市で策定・ 安全で円滑な交通が確保された集約型のまち 策定中)し、関係者がそれぞれの責任の下、施 づくりを実現するためには、自転車、鉄道、バ 策・事業を実行する仕組みを構築することが必 ス等の輸送モード別、事業者別ではなく、利用 要である。国は、同戦略に基づき実施される 者の立場でモードを横断的にとらえる必要があ LRT 注 2 等の整備等、交通事業とまちづくりが る。このため、地方公共団体が公共交通事業者 連携した総合的かつ戦略的な交通施策の推進を 等の関係者からなる協議会を設立し、協議会に 支援することとしている。 おいて目指すべき都市・地域の将来像と提供す べき交通サービス等を明確にした上で、必要と (2)公共交通の利用環境改善に向けた取組 なる交通施策やまちづくり施策、実施プログラ 地域公共交通の利用環境改善や訪日外国人旅 ム等を内容とする「都市・地域総合交通戦略」 行者の受入環境整備を促進するために、LRT、
【関連リンク】 GOODCYCLEJAPAN URL:https://www.mlit.go.jp/road/bicycleuse/good-cycle-japan/index.html
注2 Light Rail Transit の略で、低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適 性等の面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システム。
国土交通白書 2026 177 第4節 利便性の高い交通の実現
BRT、キャッシュレス決済手段の導入等を支 環境負荷の軽減、中心市街地の活性化の観点か 援している。 ら公共交通機関への利用転換を促進するため、 LRT 等の整備を推進している。令和7年度は、 (3)都市鉄道ネットワークの充実 各都市において都市モノレール等の延伸事業や 令和3年7月に取りまとめられた交通政策審 路面電車のバリアフリー化が進められるなど、 議会答申「東京圏における今後の地下鉄ネット 公共交通ネットワークの整備等が進められてい ワークのあり方等について」を踏まえ、東京メ る。 トロ有楽町線(豊洲~住吉)及び南北線(品川 Ⅱ ~白金高輪)の延伸について、引き続き推進し (5)バス・タクシーの利便性の向上 第4章
ていく。また、6年 10 月に上場した東京メト 人口減少により利用者も減少する中、バス・ ロについては、利用者サービスの向上等を図る タクシーを積極的に利用してもらうためには、 ための完全民営化の促進等に向け、関係者とも 利便性の向上が重要であり、バスの位置情報を 連携して必要な取組を推進する。 提供するバスロケーションシステム、円滑な乗 心地よい生活空間の創生
東京圏においては、多摩都市モノレール(上 降を可能とするキャッシュレス決済等のシステ 北台駅~(仮称)No.7 駅(箱根ケ崎駅付近)) ム導入や、電気自動車の導入等によるクリーン が令和7年5月に、新空港線(東急蒲田駅~蒲 かつ快適な利用環境の提供を促進している。 田新駅(仮称))が同年 10 月に事業化された。 また、高齢者や障害者、大きな荷物を持った 大阪圏においては、なにわ筋線の整備を引き続 外国人旅行者等も含め、誰もが利用しやすいバ き推進していく。このほか、7年8月、広島電 ス・タクシーの利用環境を整備するため、地域 鉄の駅前大橋ルートが開業し、広島駅と中心市 公共交通確保維持改善事業補助金や税制特例等 街地との間のアクセス利便性が向上した。 を活用し、ノンステップバス・ユニバーサルデ また、ポストコロナ時代のテレワークをはじ ザインタクシー・福祉タクシー等の導入を促進 めとする新たな働き方の進展などの社会情勢の している。 変化や鉄道の利用実態を踏まえ、企業や利用者 さらに、令和5年 10 月に取りまとめられた の理解の下、分散乗車・混雑緩和等の方策を促 「オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向け 進する。また、鉄道事業者だけの混雑緩和対策 た対策パッケージ」に基づいて、複数アプリの では効果が限定的であることから、企業や利用 導入促進によるタクシーの実車率の向上、連節 者等を含めた社会全体における混雑回避に向け バスやジャンボタクシー等、輸送力の大きな車 た行動変容を促していく。 両導入の支援や観光スポットへの急行バスの導 入による混雑緩和等に取り組んでいるほか、地 (4)都 市モノレール・新交通システム・LRT 方の観光地へのゲートウェイとなる地方空港や の整備 駅等の利用環境の刷新に資する取組を支援し、 少子高齢化に対応した交通弱者のモビリティ 二次交通手段等へのアクセス性の向上を促進し の確保を図るとともに、都市内交通の円滑化、 ている。
178 国土交通白書 2026 第1節 交通ネットワークの整備
第 5章 競争力のある経済社会の構築
第1節 交通ネットワークの整備
1 幹線道路ネットワークの整備 (1)幹線道路ネットワークの整備 国民生活の質や安全の向上にも大きく貢献して 幹線道路の整備は、昭和 29 年に策定された きた。 Ⅱ 「第1次道路整備五箇年計画」以来、現在に至 一方で、全国においては未だ高速道路等の幹
第5章 るまで着実に進められてきた。例えば、高速道 線道路ネットワークが繋がっていない地域があ 路等の幹線道路ネットワークの整備は、高速道 ることから、計画的に整備を推進していく。 路のインターチェンジ周辺での工場の立地を促 また、令和5年 10 月 31 日に社会資本整備審
競争力のある経済社会の構築 すなど、地域経済の活性化に大きく寄与すると 議会道路分科会国土幹線道路部会が取りまとめ ともに、地方部における広域的な医療サービス た「高規格道路ネットワークのあり方 中間と の享受、災害等で幹線道路が途絶した場合の広 りまとめ」及び、国土交通省道路局として今後 域的な迂回ルートの確保等が可能となるなど、 取り組む具体的な政策を取りまとめた
図表Ⅱ-5-1-1 高規格道路ネットワーク図 高規格道路ネットワーク図 (令和7年度新規開通箇所を旗揚げ 令和6年度末時点のネットワーク図に、 ) 稚内 下北半島縦貫道路 むつ南バイパス 5km
北海道縦貫自動車道に並行 一般国道40号 音威子府バイパス 19km 下北半島縦貫道路 横浜北バイパス 2km 横浜南バイパス 7km 名寄北
留萌 鰺ヶ沢 紋別 日本海沿岸東北自動車道に並行 旭川 一般国道7号 比布 二ツ井今泉道路 5km 青森 鷹栖 深川 浪岡 大鰐弘前 網走 倶知安 小坂 小樽 大館南 能代東 黒松内 札幌 岩見沢 八戸 北見東 東北中央自動車道に並行 千歳恵庭 一般国道13号 横堀道路 4km 安代 苫小牧東 秋田中央 本別 河辺 室蘭 帯広 日本海沿岸東北自動車道に並行 盛岡 江差 一般国道7号 遊佐象潟道路 7km 横手 花巻 宮古中央 函館 釧路 北上 日高自動車道 中央 根室 酒田中央 日高厚賀~新冠 9km 上信自動車道 水沢 浦河 広尾 渋川西バイパス 2km 鶴岡 釜石 新庄 一関
村上瀬波温泉 気仙沼中央 古川 輪島 山形 富谷 許田 新潟中央 仙台宮城 利府 石巻 山陰自動車道に並行 長岡 河南 西原 村田 那覇 一般国道9号 米沢中央 三隅・益田道路 15km ※1 七尾 那覇空港 琵琶湖西縦貫道路 桑折 境港 小松拡幅 2km 金沢西 高岡 会津若松 福島 魚津 上越 相馬 出雲
松江中央
米子
宍道 小松 小矢部 富山 郡山 高津
北条 砺波 六日町 萩
浜田 福井北 長野 西九州自動車道 鳥取 武生 白河中央 松浦~平戸 8km 更埴 舞鶴東
千代田 豊岡出石 広島北 高山 沼田 那須 下関 太田桐生
山口 三次東 飛騨 福岡
落合 栃木都賀
綾部 白鳥 唐津
津山 敦賀 清見 上田菅平 佐久小諸 いわき 岩国
広島 福知山 宇都宮 足利
北九州 山口南 北房 松本 若宮 宇部 福 前橋 高屋 山 宍粟 徳山東
尾道 西 岡谷 佐世保中央 伊万里中 佐賀 倉敷 岡山 佐用 春日 高崎 大和 友部
本巣 大山崎
阿賀 長浜 大野神戸 岩舟 大津
鳥栖 山陽姫路東
播磨 美濃関 藤岡 小名浜道路 8km 加古川北
武雄 彦根 伊那 三木 吉川 養老 可児御嵩 長坂 久喜 久留米 中津 今治 神戸 草津 米原 飯田 白岡 境古河 新居浜
土岐 双葉 茨城町 高松中央 山本 鶴ヶ島 日田 水戸南 大津 城陽
坂出 大月
日出 松山 甲府昭和 新四日市 つくば 長崎 いよ小松 川之江東 四日市 大分 大洲 亀山西 豊田東 八王子 豊田 亀山
洲本 河口湖 大栄 川之江 鳴門 熊本環状道路 熊本 井川池田 御殿場
泉佐野 郡山下ツ道 関 池上工区 5km 嘉島 徳島 和歌山 上野東 豊川 新清水 海老名 宇和島 高知 津 佐伯 朝日 阿南 五條 浜松いなさ 伊勢原 八代 勢和多気 清水 海老名南 須崎中央 安芸西 三ヶ日 沼津 木更津 茂原長南 伊勢 静岡 浜松 木更津南 延岡 人吉 南紀田辺 えびの 四万十 尾鷲北 凡 例 薩摩川内水引 下田 館山 小林 新宮 加治木 東海環状自動車道 倉敷福山道路 四国横断自動車道 本巣~大野神戸 7km 三遠南信自動車道 供用中 鹿児島 都城 清武 阿南~小松島南 3km 笠岡バイパス 3km ※2 東栄~鳳来峡 7km 6車線 4車線 2車線 宮崎
東播磨道 事業中 鹿屋串良 日南東郷 東播磨道北工区 4km 奈良中部熊野道路 注1. ※1 大規模橋梁工事等が順調に進捗した場合 高取バイパス 2km 注2. ※2 大規模橋梁工事・軟弱地盤対策工事等が順調に進捗した場合 調査中 注3. 事業中区間のIC、JCT名称には仮称を含む 大隅縦貫道 注4. 首都圏、中部圏、近畿圏、札幌、仙台、広島、北九州、福岡都市圏については、 令和 7 年度 一部の路線を図示していない 新規開通区間 吾平道路 4km
国土交通白書 2026 179 第1節 交通ネットワークの整備
「WISENET2050・政策集」の下、取組を進 である。 める。 ②賢い料金 (2)道路のネットワークの機能を最大限発揮 平成 28 年4月及び令和4年4月に首都圏で、 する取組の推進 平成 29 年6月及び令和6年6月に近畿圏で、 生産性の向上による経済成長の実現や交通安 令和3年5月からは中京圏で新たな高速道路料 全確保の観点から、必要なネットワークの整備 金を導入し、外側の環状道路への交通の転換 と合わせ、局所的・面的な渋滞対策等により、 や、都心流入の分散化等の効果が発揮されてい ネットワークの階層に応じた道路のサービスレ る。 ベル向上を図り、道路ネットワーク全体の機能 Ⅱ を最大限に発揮する取組を推進している。特 ③賢い投資 に、平成 27 年8月より本格的な導入が開始さ 今あるネットワークの効果を、最小コストで 第5章
れた ETC2.0 がその取組を支えている。 最大限発揮させる取組として、上り坂やトンネ ル等の構造上の要因で、速度の低下や交通の集 ①道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮 中が発生する箇所を、ETC2.0 等により収集し 競争力のある経済社会の構築
する取組を支える ETC2.0 たきめ細かい旅行速度データや加減速データ等 ETC2.0 とは、全国の高速道路上に約 1,800 のビッグデータにより特定し、効果的に対策す か所設置された路側機と走行車両が双方向で情 るピンポイント渋滞対策を実施している。これ 報通信を行うことにより、これまでの ETC と まで、関越自動車道の大泉 JCT 付近等 14 か所 比べて、 (ア)大量の情報の送受信が可能とな で、既存の道路幅員の中で、付加車線等を設置 る、(イ)IC の出入り情報だけでなく、経路情 する運用を開始している。現在、関越自動車道 報の把握が可能となるなど、格段と進化した機 の高坂 SA 付近等 13 か所で、ピンポイント渋 能を有し、ITS 推進に大きく寄与するシステム 滞対策を実施している。
2 幹線鉄道ネットワークの整備 (1)新幹線鉄道の整備 わゆる整備新幹線については、平成9年 10 月 新幹線は、我が国の基幹的な高速輸送体系で の北陸新幹線(高崎・長野間)の開業を皮切り あり、地域間の移動時間を大幅に短縮させ、地 に、これまで東北新幹線、九州新幹線、北陸新 域社会の振興や経済活性化に大きな効果をもた 幹線、北海道新幹線が開業しており、北海道新 らす。また、新幹線は安全(昭和 39 年の東海 幹線(新函館北斗・札幌間)、北陸新幹線(敦 道新幹線の開業以来、鉄道事業者の過失による 賀・新大阪間)及び九州新幹線(新鳥栖・武雄 乗客の死亡事故はゼロ)かつ環境にもやさしい 温泉間)の着実な整備に向けた取組を進めてい (鉄道の CO2 排出原単位(g-CO2 / 人キロ)は る。 航空機の 1/5、自家用車の 1/6)という優れた 北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)につい 特性を持っている。「全国新幹線鉄道整備法」 ては、令和7年 12 月、独立行政法人鉄道建設・ に基づき、48 年に整備計画が定められた、い 運輸施設整備支援機構より、その時点の想定で
【関連リンク】 WISENET(ワイズネット)2050・政策集 URL:https://www.mlit.go.jp/road/wisenet_policies/
180 国土交通白書 2026 第1節 交通ネットワークの整備
は、事業費が最大 1.2 兆円増加するおそれがあ 線鉄道ネットワークについて、各地域の実情を ると報告された。この報告を受けて、 「北海道 踏まえ、方向性も含めた検討を行うため、幹線 新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する 鉄道の高機能化に係る技術的課題の整理や基本 有識者会議」を開催し、改めて事業費の精査を 計画路線に係るケーススタディ等、更なる取組 進めている。引き続き、沿線自治体等の関係者 を進める。 の理解と協力を得て、着実な整備に努める。青 リニア中央新幹線については、東京・名古屋・ 函共用走行区間における高速走行については、 大阪の三大都市圏を一つの圏域とする「日本中 貨物列車の走行が少ない特定時期に、青函トン 央回廊」を形成し、日本経済を牽引するととも ネル内において、新幹線と貨物列車の走行時間 に、東海道新幹線とのダブルネットワークによ 帯を区分し、新幹線の時速 260km 走行を実施 るリダンダンシーの確保を図るものである。 するなど、取組を進めている。 現在、国土交通大臣が認可した「中央新幹線 Ⅱ 北陸新幹線(敦賀・新大阪間)については、 品川・名古屋間工事実施計画」に従い、JR 東
第5章 一日も早い全線開業に向けて、沿線地域の理解 海において、品川・名古屋間の早期開業に向 促進等が図られるよう、鉄道・運輸機構ととも け、工事を進めているところである。このう に、丁寧かつ着実に取り組む。 ち、未着工の静岡工区については、「リニア中
競争力のある経済社会の構築 九州新幹線(新鳥栖・武雄温泉間)について 央新幹線静岡工区モニタリング会議」を通じ は、今後も関係者との協議を進める。 て、事業主体である JR 東海の対策状況を継続 また、交通政策審議会の下に「今後の整備新 的に確認するとともに、静岡県と JR 東海の協 幹線の貸付のあり方に関する小委員会」を設置 議に国土交通省も入って一層の対話を促進する し、開業から 30 年間収受することとされてい こと等により、令和8年3月に静岡県が静岡工 る整備新幹線の貸付料のそれ以降の取扱い等を 区の着工の条件として示している「対話を要す 含め、今後の整備新幹線の貸付のあり方につい る事項」28 項目の対話が完了した。引き続き、 ての議論を進めている。 名古屋・大阪間も含め、全線開業に向け、関係 基本計画路線については、「全国新幹線鉄道 自治体や JR 東海と連携して、環境整備を進め 整備法」に基づき、全国で計 11 路線が位置付 る。 けられている。こうした基本計画路線を含む幹
3 航空ネットワークの整備 (1)航空ネットワークの拡充 える重要な交通手段である国内航空ネットワー 国内航空は、高単価のビジネス需要の減少、 クの維持のため、国内線事業の構造改革に向け 物価高・円安による費用の増加等を背景に、 た検討を進めている。具体的には、有識者会議 「実質赤字」であるほど厳しい事業環境となっ を立ち上げ、航空会社間での協調の取組、競争 ている。そこで国土交通省では、国民生活を支 環境のありかた等について議論を行っている。
【関連リンク】 全国の新幹線鉄道網の現状 URL:https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001732043.pdf
【関連リンク】 国内航空のあり方に関する有識者会議 URL:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk4_000021.html
国土交通白書 2026 181 第1節 交通ネットワークの整備
①首都圏空港の機能強化等 地域の更なる騒音負担軽減に向けた取組を進め 訪日外国人旅行者の受入拡大、我が国の国際 る。また、空港アクセス鉄道の基盤施設整備、 競争力の強化等の観点から、首都圏空港(東京 国内線・国際線間の乗継利便性向上のための旅 国際空港(羽田空港)、成田国際空港(成田空 客ターミナルの再編・拡充、旧整備場地区の再 港))の機能強化は必要不可欠であり、両空港 編整備等を実施している。成田空港において で年間約 100 万回の発着容量とするための取 は、地域との共生・共栄の考え方の下、B 滑走 組を進めているところである。 路の延伸及び C 滑走路新設等の年間発着容量 具体的には、羽田空港において、令和2年3 を 50 万回に拡大する「更なる機能強化」を進 月から新飛行経路の運用を開始し、国際線の発 めるとともに、旅客取扱施設や貨物取扱施設、 着容量を年間約4万回拡大しているところであ 鉄道アクセスの機能強化についても検討を進め Ⅱ り、引き続き、騒音対策・落下物対策や、地域 ている。 への丁寧な情報提供に努めるとともに、経路下 第5章
図表Ⅱ-5-1-2 羽田空港の概要 図表Ⅱ-5-1-3 成田空港の概要 競争力のある経済社会の構築
②関西国際空港・中部国際空港の機能強化 内線保安検査場の拡張や8年3月の国際線商業 関西国際空港については国、地元自治体、経 エリアの拡張など第1旅客ターミナルの改修事 済界、運営会社等の関係者が一体となった機能 業を推進している。 強化を進めている。具体的には、年間発着回数 30 万回の実現に向けて令和7年3月から新飛 ③地方空港の機能強化 行経路の運用を開始し、同年における発着回数 北九州空港においては、国際貨物輸送の拠 は過去最高を記録した。また、運営権者による 点機能向上を図るため、屋久島空港において 民間の創意工夫を生かした機能強化として、新 は、首都圏からの直行便の就航による交流人口 国際線保安検査場のオープン等の第1ターミナ の更なる拡大等を図るため、それぞれ滑走路延 ルの改修事業を推進した。引き続き、国際線商 長事業を実施している。また、那覇空港におい 業エリアの拡張等の第1ターミナル改修事業等 ては、空港の利便性向上を図るため、国際線 を進める。 ターミナル地域再編事業を、新千歳空港におい 中部国際空港については、現滑走路の大規模 ては、航空機や除雪車両の混雑緩和等を図るた 補修時における継続的な空港運用及び完全 24 め、誘導路複線化等を実施している。 時間運用の実現等を目的とした代替滑走路の整 そのほかの地方空港においては、航空機の増 備を推進している。また、令和7年 10 月の国 便や新規就航等に対応するため、エプロンの拡
182 国土交通白書 2026 第1節 交通ネットワークの整備
張やターミナル地域の整備等を実施している。 とも産学官の一層の連携のもと、航空大学校に また、航空機の安全運航を確保するため、老 おける操縦士の着実な養成、航空業界における 朽化が進んでいる施設について予防保全型の維 女性活躍推進に向けた検討及びリソースの有効 持管理を踏まえた空港の老朽化対策を実施する 活用等に資する資格や養成に係る制度の見直し とともに、地震災害時における空港機能の確保 等に取り組む。 を図るため、滑走路等の耐震対策を進めてい る。 (2)空港運営の充実・効率化 ①空港経営改革の推進 ④航空自由化の戦略的推進による我が国の国際 国管理空港等において、「民間の能力を活用 航空網の拡充 した国管理空港等の運営等に関する法律(民活 国際航空網の拡充を図るため、我が国では航 空港運営法)」を活用し、地域の実情を踏まえ Ⅱ 空自由化(オープンスカイ)注 1 を推進している。 つつ民間の能力の活用や航空系事業と非航空系
第5章 我が国を発着する国際旅客定期便数は、成田空 事業の一体的経営等を通じた空港経営改革を推 港における二国間輸送を自由化の対象に追加し 進し、空港を活用した内外の交流人口拡大等に 注2 た平成 22 年時点においては 2,649 便 / 週 で よる地域活性化を図っていくこととしている。
競争力のある経済社会の構築 あったが、令和7年 10 月末時点は 5,679 便 / 具体的には、平成 27 年 1 月に但馬空港、28 年 週となり、2倍強に増加した。 7 月に仙台空港、30 年 4 月に高松空港、神戸空 港、同年7月に鳥取空港、31 年 4 月に福岡空 ⑤航空機操縦士等の養成・確保 港、静岡空港、南紀白浜空港、令和 2 年 4 月に 我が国の航空業界においては、操縦士・整備 熊本空港、同年 6 月より順次北海道内 7 空港、 士共に 50 代を中心とした年齢構成のピークが 3 年 7 月に広島空港の運営委託が開始された。 あり、将来の大量退職が見込まれている。操縦 士等が航空会社において第一線で活躍するまで ② LCC の持続的な成長に向けた取組 には長い時間を要することから、今後の航空需 平成 24 年3月に本邦初となる LCC が就航し 要の増加に対応するためには、中長期的な視点 た。それ以降、令和7年冬ダイヤ当初計画時 で計画的に操縦士等の養成・確保のための取組 点で、ピーチ・アビエーションは国内 23 路線 を継続する必要がある。 及び国際 15 路線、ジェットスター・ジャパン このため、令和6年2月に学識経験者及び関 は国内 18 路線及び国際6路線、スプリング・ 係団体等からなる「航空整備士・操縦士の人材 ジャパンは国内9路線(貨物専用路線も含む) 確保・活用に関する検討会」を設置し、7年3 及び国際4路線、ジップエアトーキョーは国際 月には、「最終とりまとめ」を公表した。今後 10 路線へネットワークを展開している。
【関連リンク】 航空整備士・操縦士の人材確保・活用に関する検討会 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk5_000146.html
【関連リンク】 我が国の LCC 旅客数の推移等 URL:https://www.mlit.go.jp/koku/content/002008937.pdf
注1 航 空会社の新規参入や増便、航空会社間の競争促進による運賃低下等のサービス水準の向上を図るため、国際航空輸送 における企業数、路線及び便数に係る制約を2か国間で相互に撤廃すること。厳しい容量制約を背景として、羽田空港 を自由化の対象外とするなど一部制約が残る。 注 2 各年の夏期スケジュールの第1週目の事業計画便数(期首時点での数値、往復で1便とカウント)。
国土交通白書 2026 183 第1節 交通ネットワークの整備
政府は、国内各地域における、LCC を含む ンドリングや保安検査といった空港業務の体制 国際線就航を通じた訪日外国人旅行客の増大や 強化や、航空燃料供給不足への対応を実施して 国内観光の拡大等、新たな需要を創出するた いる。空港業務については、5年6月に公表し め、空港の受入環境整備、空港経営改革及び着 た有識者会議の中間とりまとめを踏まえ、人材 陸料軽減措置等の取組を実施している。 確保や職場環境改善等を推進し、人員体制は感 染症拡大前の水準まで回復している。航空燃料 ③ビジネスジェットの受入推進 供給不足については、経済産業省と合同で6年 ビジネスジェットとは、数人から十数人程度 6月に設置した官民タスクフォースにおいて同 を定員とする小型の航空機であり、利用者のス 年7月に取りまとめた「航空燃料供給不足に対 ケジュールに応じた時間設定や、プライバシー する行動計画」に基づき取組を進めた。また、 Ⅱ が確保されるため搭乗中に商談等が可能となる 東京国際空港以外の国管理空港(コンセッショ など、時間価値の高いビジネスマン等が利用の ン空港を除く)・共用空港について、国際線の 第5章
対象となっている。 着陸料の軽減措置を講じている。 欧米では既にビジネスジェットがグローバル な企業活動の手段となっている中、我が国にお (3)航空交通システムの整備 競争力のある経済社会の構築
いても経済のグローバル化に伴い、従来より、 長期的な航空交通需要の増加やニーズの多 東京国際空港・成田国際空港を中心に、アジア 様化に対応するとともに、国際民間航空機関 地域における経済成長の取り込みの観点から、 (ICAO)や欧米等の動向も踏まえた世界的に ビジネスジェットの振興は重要な課題であった 相互運用性のある航空交通システムの実現のた が、近年は高付加価値旅行者の取り込み等イン め、「将来の航空交通システムに関する長期ビ バウンド拡大の観点からも重要性が増してい ジョン(CARATS) 」を産学官の航空関係者に る。そこで、我が国ではビジネス需要や高付加 より策定し、航空交通量の増大に対応するとと 価値旅行者の観光需要等に応えるべく、ビジネ もに、安全性や利便性の向上に取り組んでき スジェットの利用環境の改善を図っている。例 た。そのような中、航空需要の増大、脱炭素化 えば、東京国際空港のビジネスジェット専用 に向けた社会的要請の高まり、デジタル技術 ゲートについて、令和 7 年 10 月より国内線旅 の進化等の状況変化に的確に対応するべく令 客も利用可能とし、併せてターミナル周辺の乗 和 22 年を目標年次とする CARATS2040 を7 機・降機用スポットの運用変更を行うなど、ビ 年 6 月に策定した。安全・安心対策の強化はも ジネスジェットの利用環境改善を着実に進めて とより、軌道ベース運用(TBO)や持続可能 いる。 な航空輸送の実現を目指すとともに、空域の有 効活用やレジリエンスの強化に取り組み、国際 ④地方空港における国際線の就航促進 的な連携・協力の下、安全を最優先に利便性の 増大するインバウンド需要に適切に対応し、 高い持続可能な航空交通システムを構築してい 政府目標である令和 12 年訪日外国人旅行者数 く。 6,000 万人達成に向けては、主要空港のみなら ず地方誘客・地方分散が重要である。そのた (4)航空インフラの海外展開の戦略的推進 め、航空機の運航にとって不可欠なグランドハ アジア・太平洋地域における航空市場は今後
【関連リンク】 グランドハンドリングの体制強化 URL:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr5_000059.html
184 国土交通白書 2026
【関連リンク】 我が国主要航空会社の整備士の年齢構成 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
も成長が見込まれる。このため、同地域の航空 ハーン国際空港の拡張に向けた協力準備調査に ネットワークの強化に貢献するとともに、各国 参画した。また、本邦企業がケニア政府や関係 の成長を我が国に積極的に取り込むべく、我が 機関に対して行ったジョモ・ケニヤッタ国際空 国企業による海外空港整備・運営への参画及び 港の拡張及び運営に係るコンセプト提案を後押 我が国企業が強みを有する個別技術の海外空港 しした。加えて、タイ及びマレーシア等におい への展開を推進している。 て、我が国企業が有する技術を紹介する航空技 令和7年度は、モンゴルにおいて、チンギス 術セミナーを開催した。
4 空港への交通アクセス強化 空港への鉄道アクセスの更なる改善のため、 本羽田空港アクセス線及び京急空港線引上線の Ⅱ 国際拠点空港等へのアクセス線の整備等に向け 鉄道基盤施設整備を引き続き実施している。そ
第5章 た取組を推進している。 して、京急品川駅において、引き続き空港アク 東京圏では、平成 28 年4月に取りまとめら セス乗換駅等の利便性向上やバリアフリー化の れた交通政策審議会答申「東京圏における今後 推進を図った。また、新空港線(東急蒲田駅〜
競争力のある経済社会の構築 の都市鉄道のあり方について」を踏まえ、羽田 蒲田新駅(仮称))について、7年 10 月に事業 空港と多方面とを結ぶ JR 東日本の羽田空港ア 化された。さらに、成田空港アクセス鉄道につ クセス線については令和5年3月に工事の施行 いては、関係者との意見交換を重ね、引き続 の認可を行い、JR 東日本が同年6月に工事に き、複線化や新線整備(複々線化)等による更 着手した。羽田空港発着列車の増発のための京 なる輸送力増強や速達性向上等に向けた検討を 急空港線羽田空港第1・第2ターミナル駅引上 進め、事業化に向けた取組を進める。 線(京急空港線引上線)については4年3月に 大阪圏では、関西国際空港と新大阪駅・大阪 鉄道施設の変更を認可した。加えて、羽田空港 都心部とのアクセス改善に向けて、なにわ筋線 内においては、空港整備事業として、JR 東日 の整備を引き続き推進していく。
第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
1 物流を取り巻く現状及び課題と物流革新の「集中改革期間」 物流は、国民生活や経済活動などを支える重 引環境の適正化に向けた取組が不可欠となる。 要なインフラであるが、令和6年4月から、ト このため、物流の効率化に向けた新モーダル ラックドライバーに時間外労働の上限を定める シフトや中継輸送、ラストマイル配送の効率 規制が適用され、何も対策を講じなければ物流 化、自動運転トラックの導入、改正物流法やト に停滞を生じかねない、いわゆる物流の「2024 ラック適正化2法等による商慣行の見直し、荷 年問題」に直面していた。 主・消費者の行動変容に向けた先進的な取組の この物流の「2024 年問題」については、様々 支援等の取組の強化を図っている。 な取組の成果により、令和6年度を越えても物 こうした中で、政府においては、令和 12 年 流の機能が維持できている一方で、担い手不足 度までの期間を物流革新の「集中改革期間」と が深刻化する中で、必要な物流の機能を維持し 位置付け、8年3月に、「総合物流施策大綱 ていくためには、今後も物流の生産性向上や取 (2026 年度〜 2030 年度)」(8年3月 31 日閣
国土交通白書 2026 185 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
議決定)を策定した。 善、4.物流に携わる多様な関係者の連携・協 同大綱においては、1.サービスの供給制約 力による物流標準化と物流 DX・GX の推進、 に対応するための徹底的な物流効率化、2.物 5.厳しさを増す国際情勢や自然災害等に対応 流全体の最適化に向けた商慣行の見直しや したサプライチェーンの高度化・強靱化といっ 荷主・消費者の行動変容、産業構造の転換、 た政策を推進していくこととしており、本大綱 3.持続可能な物流サービスの提供に向けた に記載された内容を踏まえ、物流革新に向けた 物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改 取組の着実な推進を図っていく。
2 必要な物流機能の維持と物流の持続的成長を実現するための施策の推進 Ⅱ 令和 12 年度までの物流革新の「集中改革期 懇談会」の下に設置された「モーダルシフト推 間」においては、従来にない対策を抜本的かつ 進・標準化分科会」における令和6年 11 月の 第5章
計画的に講じることにより、将来にわたって物 取りまとめを踏まえ、限られた輸送資源の中で 流の持続可能性を確保していくとともに、我が 陸・海・空のあらゆる輸送モードを総動員する 国の成長エンジンや公共性の高いサービスとし 「新モーダルシフト」を強力に推進していく。 競争力のある経済社会の構築
ての物流のポテンシャルを最大限に引き出すこ とが求められる。このためには、中長期的に物 (2)地域間物流の効率化 流の機能を維持していく基盤づくりとして、物 複合一貫輸送等の推進に向け、港湾・貨物駅 流の構造改革や生産性向上、担い手の確保・育 等の物流結節点の整備等を進めている。貨物鉄 成などを早急に進める必要がある。また、物 道輸送については、輸送力増強や災害対応の機 流を起点とした新たな投資やイノベーション、 能強化に向けて、大型コンテナに対応したコン 価値創造の源泉となる物流標準化や物流 DX・ テナホームの拡幅や、代行輸送の拠点となる貨 GX の推進にも取り組むことが求められる。 物駅の施設整備等について支援を実施してい る。また、船舶大型化等に応じた複合一貫輸送 (1)新モーダルシフト等の推進 ターミナルの整備や次世代高規格ユニットロー トラック輸送の変容に伴うトラックドライ ドターミナルの形成に向けた「内航フェリー・ バー不足に対応するためには、従来からの鉄 RORO 船ターミナルにおけるシャーシ・コン 道・海運へのモーダルシフトの取組をより一層 テナ位置管理等システム導入ガイドライン」の 強化する必要がある。 作成、支援制度の拡充等の取組を推進してい このため、関係者が連携した物流の総合化・ る。 効率化に関する幅広い取組を支援することを旨 とした「物流効率化法」に基づき、運行経費等 (3)地域のラストマイル配送等の持続可能な 補助の支援や税制特例措置等を講じるととも 提供の維持・確保 に、大型コンテナ導入等に係る支援を行った。 我が国の物流については、1件当たりの平均 また、ダブル連結トラック、自動運転トラッ 貨物量、貨物総量が減少している中で、物流件 ク、航空機、新幹線といった多様な輸送モード 数は増加しており、物流の小口化・多頻度化が の活用に加え、一定の荷量の確保に向けた地域 進行しているほか、宅配便取扱実績も年々増加 の産業政策・地域政策等との連携や地域の物流 を続けている。これらの背景にはEコマース市 ネットワークの再構築を進めていくことも重要 場の急成長があるが、この傾向が継続すること である。こうした認識の下、「官民物流標準化 で、ラストマイル配送を担う宅配便ドライバー
186 国土交通白書 2026 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
の負担がさらに増加することが懸念されてい 置義務条例の参考)を改正して、共同住宅への る。 荷さばき駐車施設の附置に係る規定を追加し、 このような中、国土交通省においては、自宅 地方公共団体に通知するとともに、その旨周知 の宅配ボックスへの配達や自宅玄関前等の指定 を行った。 場所への配達、駅・公共施設等の宅配ロッカー への配達等の多様な受取方法の普及に向けて、 (4)物流上重要な道路ネットワークの戦略的 Eコマース事業者や宅配事業者、自治体等と連 な整備・活用 携しながら、 「再配達削減 PR 月間」等を通じ 国内輸送の約9割を担う貨物自動車による輸 た消費者への呼びかけ等を行った。 送における効率的な物流ネットワークの構築は また、令和7年 11 月に公表された「ラスト 極めて重要であり、三大都市圏環状道路や空 マイル配送等に向けた検討会」提言の中で、今 港・港湾へのアクセス道路等の整備を進めてい Ⅱ 後の取組の方向性として、宅配ボックス・宅配 る。平常時・災害時を問わない安定的な輸送を
第5章 ロッカー、いわゆる置き配等の多様な受取方法 確保するため、国土交通大臣が物流上重要な道 の普及・浸透、輸送サービス水準の維持と宅配 路輸送網を「重要物流道路」として指定し、ト 事業者の負担軽減を図るための共同配送・貨客 ラックの大型化に対応した道路構造の強化や災
競争力のある経済社会の構築 混載等の取組の推進、ドローン等の新たな輸送 害時の道路の啓開・復旧の迅速化等の機能強化 手段の活用等が盛り込まれたことを踏まえ、地 及び重点支援を実施しており、令和4年4月1 域にとって不可欠な輸送力の確保や物流サービ 日からは、調査中、事業中区間を重要物流道路 スの持続可能な提供等を実現するための取組を に追加指定している。また、重要物流道路のう 早急に進めていく。 ち国際海上コンテナ車(40ft 背高)の通行に ドローン配送については、過疎地域、離島、 道路構造等の観点から支障のない区間を、特車 山間部といった輸送密度が低い地域で飲料、食 許可不要区間として追加指定している。 料品、日用品・医薬品、新聞等の配達を行うビ ま た、 車 両 運 行 管 理 支 援 サ ー ビ ス 等 の、 ジネスの社会実装が進展している。国土交通省 ETC2.0 を活用した取組を推進しているほか、 では、関係省庁と連携し、過疎地域等における 特殊車両が即時に通行できる特殊車両通行確認 ドローン物流の実用化に係る計画策定や機体・ 制度の利用拡大を促進しており、交差点等の個 設備等の導入に対する支援を行ってきた。 別協議箇所の削減等による確認制度の利用促進 また、荷さばきを目的とした路上駐車を抑制 を行った。 し、道路交通の円滑化及び都市内物流の効率化 さらに、トラックドライバーの拘束時間短縮 のため、商業施設等の用途の建築物の新築等の のため、中継輸送拠点として「コネクトパーキ 際に駐車場法に基づく条例で荷さばき駐車施設 ング宮島」、「コネクトパーキング岡山・早島」 の附置を義務付ける規定を置くよう地方公共団 の事業を行っている。 体に促しており、令和7年3月末現在で、90 また、1台で大型トラック2台分の輸送が可 都市において適用されている。近年の電子商取 能な「ダブル連結トラック」を平成 31 年1月 引の増加等に伴う住宅への宅配便需要の増加 より本格導入し、令和6年9月には対象路線を や、共同住宅の高層化及びセキュリティの向上 拡充し、7年3月には確認制度の対象とするな 等により、配送効率の低下や長時間の路上駐車 ど、利用を促進する。物流危機への対応や温室 をせざるを得ない状況となっていることを踏ま 効果ガス削減に向けて、新たな物流システムと えて、7年3月に標準駐車場条例(駐車場法に なる自動物流道路について、2030 年代半ばま 基づき、地方公共団体が定めることができる附 でに東京―大阪間の一部を先行ルートとして運
国土交通白書 2026 187 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
用開始することを目指し、検討を進めていく。 (6)物流標準化や物流 DX の推進 加えて、高速道路と民間施設を直結する民間 物流機能を将来にわたって適切に発揮させる 施設直結スマート IC 制度の活用を推進すると ためには、物流に携わる多様な関係者の連携・ ともに、引き続き、スマート IC の整備を進め 協力により、これまで「競争領域」とされる部 るなど、既存の道路ネットワークの有効活用・ 分の多かった物流の「協調領域」を積極的に拡 機能強化を図っていく。 大する方向で捉え直し、公正な競争を確保する 必要があることにも留意しながら、サプライ (5)物流全体の最適化に向けた商慣行の見直 チェーン全体の可視化・最適化や物流の生産性 しや産業構造の転換と労働環境の改善 と付加価値の抜本的向上につなげていく必要が 少子高齢化や人口減少を背景として、物流分 ある。 Ⅱ 野においても、特にトラック業界、内航海運業 また、物流の担い手不足が深刻化する中にお 界を中心として高齢化が進んでおり、大量退職 いて、物流の機能と高度なサービスを維持する 第5章
や、生産年齢人口の減少に伴う人材確保が困難 ためには、物流現場における AI・デジタル技 になることへの対応が引き続き必要となる。 術等のテクノロジーや自動化・機械化機器等の トラック運送事業については、「標準的運賃」 更なる活用を進めていくことも重要である。 競争力のある経済社会の構築
の周知・浸透に引き続き取り組むとともに、令 個社や業種分野を超えた共同化や物流施設の 和6年 11 月に改組を行ったトラック・物流G 自動化・機械化等に向けたユニットロード化、 メンによる荷主・元請事業者への監視体制を強 一貫パレチゼーション等を実現するためのパ 化していく。加えて、トラック運送業における レット標準化については、「官民物流標準化懇 多重取引構造の是正に向けて、6年8月に立ち 談会パレット標準化推進分科会」において取り 上げた「トラック運送業における多重下請構造 まとめられた標準的なパレットの規格と運用や 検討会」において、過度な多重取引構造の是正 その推進方策等を踏まえ、「標準仕様パレット」 に向けた対応策を検討を行った。 の導入を促進している。また、物流データの標 休憩施設の駐車マス不足解消や使いやすさの 準形式を定めた「物流情報標準ガイドライン」 改善に向けた取組として、令和5年 12 月に高 の活用促進を図るため、「物流情報標準ガイド 速道路機構及び高速道路会社が取りまとめた整 ライン」を活用した共同輸配送等の取組を支援 備方針に基づき、休憩施設の駐車マス数の拡充 している。 等の対策を推進する。 物流 DX に向けては、中小物流事業者におけ 内航海運業については、令和3年5月に成立 る自動化機器やトラック予約受付システム等 した「海事産業の基盤強化のための海上運送法 の導入を支援したほか、民間事業者間の港湾 等の一部を改正する法律」に基づく、労務管理 物流手続きを電子化・効率化する「サイバー 責任者等による船員の労務管理の適正化や、オ ポート」について、商流・金流分野のプラット ペレーターに対する船員の労働時間を考慮した フォームとの連携機能を拡充するなどの機能改 運航計画の作成義務等を通じて、船員の働き方 善と利用拡大を進めてきた。 改革を推進するほか、7年6月に「海技人材の 確保のあり方に関する検討会」の取りまとめで 示された快適な海上労働環境形成の促進に資す る仕組みとして、指針を作成・公表し、新たな 仕組みが適切に運用されるよう取り組んでい く。
188 国土交通白書 2026 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
3 厳しさを増す国際情勢に対応したサプライチェーンの高度化・強靱化 令和 12 年度までの物流革新の「集中改革期 大に、より一層取り組む必要があるほか、主要 間」においては、物流のポテンシャルを最大限 な資源・エネルギー等の輸入の効率化・安定化 に引き出すため、国際社会との連携強化や有事 に向けて取り組む必要がある。 に的確に対応するためのサプライチェーンの高 また、このような取組とともに、引き続き、 度化・強靱化も不可欠である。 国際・国内一体となった効率的な海上輸送ネッ トワークを実現するための取組を推進するとと (1)国際競争力の強化に向けた航空物流機能 もに、施策の更なる充実・深化を図ることとし の高度化 ている。 我が国の国際航空貨物輸送については、今後 国際基幹航路の我が国への寄港を維持・拡大 Ⅱ も伸びが期待されるアジア発着貨物を積極的に することにより、企業の立地環境を向上させ、
第5章 取り込むため、成田国際空港の B 滑走路の延伸 我が国経済・産業の国際競争力を強化するた 及び C 滑走路新設等により年間発着容量を 50 め、国際コンテナ戦略港湾である京浜港・阪神 万回に拡大する「更なる機能強化」や貨物取扱 港に、国内外から貨物を集約する「集貨」 、港
競争力のある経済社会の構築 施設等の機能強化についての検討、関西国際空 湾背後への産業集積による「創貨」 、大水深コ 港における年間発着回数 30 万回の実現を目指 ンテナターミナル等の整備の推進等によるコス した機能強化等、中部国際空港の完全 24 時間 トや利便性の面での「競争力強化」の3本柱の 運用の実現や安定的な輸送機能の確保に向けた 施策を進めている。その際、国際競争力強化に 代替滑走路整備、長距離国際貨物機の定期便就 も資する港湾の脱炭素化や港湾におけるデジタ 航を可能にする北九州空港の拠点機能の向上等 ル・トランスフォーメーション等の取組を進め を進めている。 ている。 「集貨」については、既存ストックを最大限 (2)国際コンテナ戦略港湾政策の推進等 に活用しつつ、集貨を促進するため、国際コン 経済のグローバル化が進展する中、世界的な テナ戦略港湾において、複数のターミナル間に 海上輸送量は年々増加してきており、大量一括 おける国際基幹航路と国内外のフィーダー輸送 輸送による海上輸送の効率化の観点から、コン 網等との円滑な接続・積み替え等に資するター テナ及びバルク貨物輸送船舶の大型化等が進展 ミナルの一体利用に向けた機能強化を推進して している。 いる。また、日本の港湾を経由せずに第三国間 コンテナ貨物については、日本の港湾は、釜 で輸出入されている外国貨物の、国際コンテナ 山港や上海港といったアジア主要港に比較して 戦略港湾経由の輸送ルートへの転換を図る(国 相対的に貨物量が少ないこと等により、船舶の 際トランシップ貨物の集貨)ため、物流手続の 大型化が進む、北米・欧州等と日本とを結ぶ国 円滑化について関係機関と連携した取組も推進 際基幹航路の寄港数が減少傾向にある。 している。 また、バルク貨物については大型船への対応 「創貨」については、多様な物流ニーズに対 が遅れており、相対的に不利な事業環境による 応するロジスティクス・ハブを形成し、新たな 国内立地産業の競争力低下等が懸念されてい 貨物需要を創出するため、流通加工機能を有す る。 る物流施設のコンテナターミナル近傍への立地 このような状況を踏まえ、サプライチェーン の促進を図った。 「競争力強化」については、 の安定化等に向けて、国際基幹航路の維持・拡 国際基幹航路に就航する大型船の入港を可能と
国土交通白書 2026 189 第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
するため、国際コンテナ戦略港湾において、国 中、我が国の物流産業の持続的成長に向けて、 際標準の水深、広さを有するコンテナターミナ 幅広い分野の物流事業者の積極的な海外展開を ル等の整備を推進している。 進め、アジアをはじめとする海外市場での収益 さらに、「競争力強化」の一環として、コン 拡大を図る。しかし、我が国の物流システムの テナターミナルにおける生産性向上や労働環境 アジア地域への展開に当たっては、相手国の制 改善につながる新たな技術開発を推進するとと 度上・慣習上等の課題が存在している。 もに、コンテナターミナルゲート前の混雑解消 このため、物流パイロット事業、政府間での 等を目的としたシステムである「CONPAS」 政策対話、㈱海外交通・都市開発事業支援機 の導入やゲートの高度化に対する取組への支 構(JOIN)による物流関連インフラ整備への 援、また、遠隔操作 RTG の導入に対する支援 資金支援、人材育成事業、コールドチェーン物 Ⅱ を行うなど、「ヒトを支援する AI ターミナル」 流サービスに関する国際規格の普及推進等を通 の実現に向けた取組を推進している。 じ、官民連携により物流システムの海外展開に 第5章
加えて、国全体として安定的かつ効率的な資 向けた環境整備を図っている。 源・エネルギー・食糧の海上輸送網の形成を図 るため、大型船に対応した港湾機能の確保や企 (5)国際物流機能強化に資するその他の施策 競争力のある経済社会の構築
業間連携により共同輸送を促進する国際バルク 大都市圏における国際物流の結節地域である 戦略港湾政策を推進しており、徳山下松港、水 国際港湾等周辺及び物流・産業の拠点である港 島港、志布志港において岸壁等の整備を進めて 湾において物流拠点及び物流施設の整備・再整 いる。 備を推進することにより、大規模災害時におけ る防災機能の向上を図りつつ、都市環境の改善 (3)農林水産物・食品の輸出拡大に向けた物 と合わせて国際競争力の強化及び効率的な物流 流の改善 網の形成を図る。 令和 12 年に農林水産物食品の輸出額5兆円 国際物流については、国際的な地政学リスク 等の目標達成に向けて、関係省庁の連携の下、 の高まりによる様々なサプライチェーンの途絶 産地から空港・港湾までの最適な輸送ルートや リスクを踏まえ、我が国企業にとって多様な輸 集荷・保管体制の構築、輸出拠点となる港湾に 送オプションを確保し、強靱なサプライチェー おける温度・衛生管理が可能な荷さばき施設の ンの構築を図るため、従来の輸送手段・ルート 整備への支援等に取り組むとともに、我が国の を代替又は補完する輸送手段・ルートについて 高品質なコールドチェーン物流サービスに関す 実態調査や実証輸送を実施するとともに、これ る国際規格の普及を図る。 らの成果の幅広い共有や新規ルートの利用に向 けた協議等の場となる官民コンソーシアムを運 (4)我が国物流システムの海外展開の推進 営し、関係事業者における平時から備えや意識 サプライチェーンのグローバル化が深化する 醸成、相互連携を促す。
190 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
第3節 産業の活性化
1 鉄道関連産業の動向と施策 (1)鉄道事業の概況 た。さらに、外国人材の適正な活用を図るた 鉄道の旅客輸送量は、1980 年代後半にかけ め、特定技能制度への「駅・車両清掃区分」の て大きく伸び、近年は人ベース、人キロベース 追加や令和9年4月施行の育成就労制度に関す ともに緩やかな増加傾向にあったが、令和2年 る事項等について、鉄道分野の運用方針を8年 度以降は新型コロナウイルス感染症の影響によ 1月に閣議決定するなど、引き続き取組を推進 り、減少している。4年度時点の旅客輸送量は する。 コロナ禍前の元年と比べて、約8割程度まで回 Ⅱ 復している。 ② JR の完全民営化に向けた取組
第5章 令和4年度の鉄道の旅客輸送量は、人ベース かつての国鉄は、公社制度の下、全国一元的 では対元年度比約 17%減の約 210 億人、人キ な組織であったため、適切な経営管理や地域の ロベースでは対元年度比約 19%減の約 3,528 実情に即した運営がなされなかったこと等か
競争力のある経済社会の構築 億人キロとなっている。全国に 218 社ある事 ら、巨額の長期債務を抱え経営が破綻した。こ 業者をカテゴリ別に分けて旅客輸送量を見る のため、昭和 62 年4月に国鉄を分割民営化し、 と、人ベースでは、都市部に通勤路線等を多く 鉄道事業の再生が行われたところである。 持つ大手民鉄(16 社)や JR(6社)がそれぞ 令和7年4月には、JR 各社の発足から 38 年 れ約4割前後で多く、次に地方交通(175 社)、 を迎えた。国鉄の分割民営化によって、効率的 都市部で地下鉄や路面電車を運営する公営(11 で責任のある経営ができる体制が整えられた結 社)である。一方、人キロベースでは、新幹線 果、全体として鉄道サービスの信頼性や快適性 をはじめ幹線輸送網を有する JR が6割を超え、 が格段に向上し、経営面でも、JR 東日本、JR 大手民鉄の約 2 倍となっている。 西日本及び JR 東海に続いて JR 九州も完全民営 化されるなど、国鉄改革の所期の目的を果たし (2)鉄道事業 つつある。一方で、JR 北海道、JR 四国及び JR ①鉄道分野の事業基盤強化に向けた取組 貨物については、未だ上場が可能となるような 人材不足に対応し、特に経営の厳しい地域鉄 安定的利益を計上できる段階には至っていない 道におけるコスト削減等を図るため、既設の保 ため、国としても、設備投資に対する助成や無 安装置を活用した低コストな自動運転システム 利子貸付け等、経営自立に向けた様々な支援を の開発、鉄道線路内のまくらぎ交換作業等の省 行ってきた。しかしながら、JR 北海道及び JR 力化を目的とした汎用双腕ロボットバックホウ 四国については、地域の人口減少や他の交通手 の開発、携帯情報端末を活用した地域鉄道の軌 段の発達、新型コロナウイルス後の利用者の行 道状態評価システムの開発等、鉄道分野におけ 動変容等により、その経営環境はより一層厳 る生産性向上に資する取組を推進する。 しさを増している。また、JR 貨物については、 また、担い手確保のため、鉄道の運賃水準の 近年は経常黒字を計上している年度もあるもの 算定根拠となる収入原価算定要領について、賃 の、災害等の影響を受けやすいなど安定的な事 金上昇を適切に運賃に反映できるよう人件費の 業運営にはなお課題が残されている。 算定方法等の見直しや、動力車操縦者試験の受 こうした背景を踏まえ、JR 北海道、JR 四国 験資格の見直し(年齢要件の引下げ)等を行っ 及び JR 貨物に対しては、令和3年の改正日本
国土交通白書 2026 191 第3節 産業の活性化
国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法 向け 19.9%減少、輸出向け 8.2%増加であった。 律等に基づき、省力化・省人化に資する設備投 また、鉄道車両部品(動力発生装置、台車 資のための出資等の経営自立に向けた支援を実 等)の生産金額は 3,929 億円(前年度比 0.5% 施している。 増) 、信号保安装置(列車自動制御装置用品、 電気連動装置等)の生産金額は 1,502 億円(前 (3)鉄道関連製造業 年度比 10.8%増)となっている。 鉄道新造車両の生産金額は、受注状況によっ 車両メーカー等は、鉄道事業者と連携し、高 て波があるが、令和6年度の生産金額は 1,855 速化、安全性・快適性等の向上、低騒音・バリ 億円(1,309 両)であった。生産金額の構成 アフリーといった様々な社会的ニーズを満たす 比は国内向け 77.5%(1,438 億円)、輸出向け 車両の開発を進めている。 Ⅱ 22.5%(417 億円)であり、前年度比は国内 第5章
2 自動車運送事業等の動向と施策 (1)旅客自動車運送事業 者が負担する第二種運転免許取得費用、人材確 競争力のある経済社会の構築
バス事業(乗合・貸切)、タクシー事業につ 保セミナーの開催経費や PR 資料の作成等の広 いては、新型コロナウイルス感染症の拡大等に 報業務等に加え、新たに女性用控え室等の整備 より、輸送人員・運送収入が大きく減少し、依 経費についても補助対象としており、不足する 然としてコロナ禍前の水準に戻っていないとこ 人員を事業者が確保するために必要な支援を行 ろである。 うこととしている。 こうした中で、バスの運転者については、令 また、自動車運送事業の給与水準は他産業に 和元年度から4年度において約 2.4 万人が減少 比べて低く、職業としての魅力を高めるために した。一方で、直近の動向として、4年度か も賃金を上げていくことが重要である。 ら5年度において約 10.8 万人から約 11.4 万人 そこで、乗合バスについては、令和5年度ま へと増加に転じている。また、タクシーの運転 でに、人件費の算出方法の見直しや地方運輸局 者については、同期間において約5万人減少し への認可権限の大幅な委任と申請書類の簡素化 たが、直近では、4 年度から 5 年度において約 による審査の迅速化を行い、事業者による賃上 21.5 万人から約 21.7 万人へと増加している。 げ等の労働条件改善を目的とした積極的な運賃 しかしながら、両者とも元年度比の水準までは 改定の実施を促し、2年4月以降7年末まで 戻っておらず、バス・タクシー運転者の確保 に、126 事業者で運賃改定がされた。 は、依然として地域住民や観光客の移動手段確 また、タクシーについては、令和6年 12 月 保の観点から喫緊の課題である。 に運賃ブロックを見直したことにより、定期的 こうした運転者不足を解消するため、令和6 な改定を可能としており、2年4月以降7年度 年度補正予算に引き続き、7年度補正予算にお 末までに 101 地域で運賃改定を実施し、賃金 いて、第二種運転免許取得支援を含む人材確保 引上げに向けた取組を進めている。 支援を実施することとした。具体的には、事業 また、貸切バスについても、運転者の賃金水
【関連データ】・乗合バスの輸送人員、営業収入の推移 ・貸切バス事業の概況 ・タクシー事業の現状 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
192 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
準を全産業平均に引き上げることを目的とし いては、我が国の国民生活や経済活動を支える て、令和7年9月に新運賃の公示を行い、同年 重要な社会インフラである一方、他産業と比較 11 月までに順次開始したところであり、引き して、長時間労働・低賃金の傾向にあり、担い 続き、運転者の賃上げ等の進捗状況を着実に把 手不足が課題となっている。こうした中、ト 握していく。 ラックドライバーの労働条件を改善し、トラッ こうした取組により、バス運転者の平均年間 ク運送業界を魅力ある職場とすることが喫緊の 給与は令和4年の 399 万円から6年には 463 課題となっており、賃上げの原資となる適正運 万円に増加し、タクシー運転者の平均年間給与 賃の確保や、トラックドライバーへの負荷の軽 は4年の 361 万円から6年には 418 万円に増 減につながる物流の効率化が重要である。この 加した。このような賃金の引上げの状況が継続 ため、 「標準的運賃」の周知・浸透や、荷主等 するよう、引き続き必要な支援をしていく。 に対するトラック・物流 G メンの是正指導に Ⅱ 他方、無許可営業である「白タク」行為や営 より、適正な運賃を収受できる環境を整備する
第5章 業所のみでの運送の引受けが可能なハイヤーに とともに、令和8年4月に全面施行された「流 よる「客引き」等の行為は、道路運送法(昭和 通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律 26 年法律第 183 号)違反であり、旅客に対す 及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法
競争力のある経済社会の構築 る安全・安心の確保の観点から問題があること 律」(令和6年法律第 23 号)や、8年1月より から、警察等の関係機関と連携して、主要な空 改正法が施行された「製造委託等に係る中小受 港や観光地等において、啓発活動、現地調査、 託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に 指導等を行っている。安全・安心な二次交通を 関する法律」(昭和 31 年法律第 120 号)に基 確保するため、引き続き、関係機関と連携して づき、関係省庁等とも連携しながら、取引環境 取組を強化し、違反事実が確認されれば厳正に の適正化や構造的な賃上げ環境の整備を進めて 対処していく。 いる。加えて、トラック運送事業の適正化やド ライバーの賃上げを目的として、7年6月に成 (2)自動車運転代行業 立した「貨物自動車運送事業法の一部を改正す 自動車運転代行業は、飲酒時の代替交通手段 る法律」(令和7年法律第 60 号)及び「貨物自 として活用されており、令和7年 12 月末現在、 動車運送事業の適正化のための体制の整備等の 総事業者数 7,381 者となっている。これまで、 推進に関する法律」(令和7年法律第 61 号)の 自動車運転代行業の健全化及び利用者の利便 施行に向けた準備を着実に進め、トラックドラ 性・安心感の向上を図るための施策等を推進し イバーの更なる賃上げや労働環境の改善を目指 ている。自動車運転代行関係団体と今後の運転 していく。 代行業の適正化について意見交換を実施した。 (4)自動車運送事業等の担い手確保・育成 (3)貨物自動車運送事業(トラック事業) ヒト・モノの輸送を担っている自動車運送事 トラック事業者数は長期にわたり増加してい 業等は、日本経済及び地域の移動手段として重 たが、平成 20 年度以降はほぼ横ばいで推移し 要な社会基盤産業であり、深刻化する担い手不 ており、足下では約 63,000 者となっている。 足は、解決すべき喫緊の課題である。 中小企業が 99%を占めるトラック運送業につ 自動車運送事業においては、職場環境改善に
【関連データ】 トラック事業者数の推移 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
国土交通白書 2026 193 第3節 産業の活性化
向けた各事業者の取組を「見える化」するため 透、大型・けん引運転免許取得支援等に取り組 の運転者職場環境良好度認証制度の普及を推進 んでいる。このほか、令和6年3月、特定技能 しているほか、業種別に様々な対策に取り組ん 制度の対象分野に自動車運送業分野等、4分野 でいる。バス・タクシーについては、賃金引上 を新たに追加することが閣議決定されたことを げ実現に向けた運賃改定の円滑な実施や第二種 受け、特定技能外国人の受入れを進めている。 運転免許取得支援の実施等により、人材確保に 自動車整備事業については、「自動車整備の高 取り組んでいる。トラックについては、荷主や 度化に対応する人材確保に係る検討 WG」を 消費者等も巻き込んだ「ホワイト物流」推進運 設置し、産学官が連携して人材確保・育成に取 動や賃金引上げに向けた標準的運賃の周知・浸 り組んでいる。
Ⅱ 3 海事産業の動向と施策 第5章
(1)海事産業群の強靱化 105 件(107 隻)注 3 をそれぞれ認定した。認定 四面を海に囲まれる我が国には、海運業、造 事業者に対しては、税制特例及び政府系金融機 船・舶用工業、船員を中核分野に、船舶貸渡 関からの長期・低利融資等の措置が必要に応じ 競争力のある経済社会の構築
業、港湾関連業等、金融保険、教育機関など関 て講じられている。 連分野の集積した「海事産業群」が形成されて また、船員の働き方改革を推進するため、船 いる。国際競争の激化等により、中核分野のい 員の労務管理の適正化等に取り組むとともに、 ずれが欠けても「海事産業群」全体の維持が困 「海技人材の確保のあり方に関する検討会」の 難となり、経済・国民生活・経済安全保障等に 取りまとめで示された快適な海上労働環境形成 大きな影響が生じる。環境技術・自動運航技術 の促進に資する仕組みの導入等の対応策の具体 を新たな競争力の源として、各種施策ととも 化を進めるほか、引き続き内航海運業の取引環 に、海事産業群の強靱化を図る必要がある。 境の改善や生産性向上に取り組んでいく。 造船・海運分野の競争力強化に向け、令和3 年5月に成立した「海事産業の基盤強化のため (2)造船・舶用工業 の海上運送法等の一部を改正する法律」に基づ ①造船・舶用工業の現状 き、各種支援を行っている。 貿易を海上輸送に依存している我が国におい 具体的には、造船・舶用事業者が生産性向 て、造船・舶用工業は、経済安全保障上不可欠 上等に取り組む「事業基盤強化計画」につい であるとともに、地域経済・雇用に貢献してい 注3 て 48 件(67 社) 、事業基盤強化計画の認定を る。また、我が国の艦艇・巡視船はすべて国内 受けた造船事業者が建造し、安全・低環境負荷 で建造・修繕されており、造船・舶用工業は我 で船員の省力化に資する高品質な船舶を海運事 が国の安全保障を支える重要な産業である。 業者が導入する「特定船舶導入計画」について 高市政権が立ち上げた日本成長戦略本部の
【関連リンク】 「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律案」を閣議決定 URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji01_hh_000512.html
【関連リンク】 事業基盤強化計画・特定船舶導入計画(海事産業強化法) URL:https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk5_000068.html
注3 各計画の認定制度が開始されて以降の累計。
194 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
下、「造船」が「危機管理投資」・「成長投資」 7年度からは、造船業がオーダーメイドで船舶 の戦略分野の一つとして位置付けられた。ま を供給する産業であることを踏まえ、1隻ごと た、令和7年 10 月末のトランプ大統領来日時 の構造の違いへの柔軟な対応を可能とする AI に、ラトニック商務長官との間で日米造船協力 造船ロボット等の開発にも着手する。 に関する覚書が締結される等、日米関係におい 人材の確保・育成に関しては、船舶産業の魅 ても造船の重要性が高まっている。 力の向上・発信及び新燃料船に対応する専門人 こうした状況を踏まえ、令和 7 年度補正予算 材の育成促進に向け、産学官による検討等を進 において、我が国の造船能力を抜本的に向上さ めている。 せる設備投資・研究開発等を支援するための造 また、外国人材の多能工化に対応するため、 船業再生基金が造成されており、今後 10 年で 令和元年度より開始された「特定技能制度」に 総計 3,500 億円規模の支援の実施を目指すこと ついて、6年3月に造船・舶用工業分野の業務 Ⅱ としている。 区分注 4 の再編を行い、外国人材が従事可能な作
第5章 また、令和7年末には、この基金をはじめと 業範囲を拡大したほか、現在の「技能実習制 する総合的な施策の絵姿を示した「造船業再生 度」に替わるものとして、9年4月から「育成 ロードマップ」を策定した。 就労制度」の運用が開始される予定のところ、
競争力のある経済社会の構築 こうした動きも踏まえつつ、引き続き、巡回指 ②造船・舶用工業の国際競争力強化のための取組 導の実施等により、外国人材の適正な受入れを 今後の世界の造船市場においては、新造船の 進めていく。 建造需要が更に拡大すると見込まれており、そ 経済安全保障の観点からは、 「経済施策を一 の中では、水素、アンモニア等を燃料とするゼ 体的に講ずることによる安全保障の確保の推進 ロエミッション船等の需要への対応が必要とな に関する法律」に基づき、サプライチェーン強 る。一方で、我が国の人口減少に伴い、人手不 靱化の取組を支援している船舶用機関(エンジ 足が深刻化している。そのため、我が国船舶産 ン)・航海用具(ソナー)・推進器(プロペラ) 業においては、生産性の向上及び人材の確保・ の安定供給確保を図ったことに加え、令和 7 年 育成等を推進する必要があるほか、我が国にお に、新たに「船体」を支援対象に追加し、造船 ける安定的な海上輸送の確保という経済安全保 業再生基金を造成した。 障上の課題にも対応していく必要がある。 また、関係府省庁と連携し、同法に基づく ゼロエミッション船等の需要への対応につい 「 経 済 安 全 保 障 重 要 技 術 育 成 プ ロ グ ラ ム(K ては、令和6年度に引き続き、環境省等と連携 Program)」において採択された「デジタル技 し、ゼロエミッション船等の国内生産体制の整 術を用いた高性能次世代船舶開発技術」を通じ 備支援を行っている。 て、船舶の開発・設計・建造の効率や船舶の性 生産性の向上については、造船・舶用工業の 能を革新的に高める技術(バーチャルエンジニ デジタル・トランスフォーメーション(DX) アリング技術)の研究開発支援に取り組んでい に関する技術開発等への支援を行っている。令 る。 和7年度は、ロボット等により複雑な製造工程 加えて、激しい国際競争が繰り広げられる造 を自動化する技術(DX オートメーション技術) 船分野において公正な競争条件を確保するた の技術開発・実証等への支援を行った。また、 め、 我 が 国 は、 経 済 協 力 開 発 機 構(OECD)
注4 接、塗装、鉄工、仕上げ、機械加工、電気機器組立ての6業務区分から、造船、舶用機械、舶用電気電子機器の3業 溶 務区分へ見直された。
国土交通白書 2026 195 第3節 産業の活性化
造船委員会において、コストを船価に適切に反 和6年度の国内旅客船事業の輸送需要は約 75 映させるための船価モニタリングや市場歪曲的 百万人(5年度比約2%増)であるが、燃油価 な公的支援の抑制に取り組んでいるほか、船舶 格高騰等も相まって、経営環境は厳しい状況に 注5 関連の公的輸出信用アレンジメント の改定の ある。このため、独立行政法人鉄道建設・運輸 議論を通じて環境に配慮した船舶の輸出促進に 施設整備支援機構の船舶共有建造制度や税制特 向けても取り組んでいる。 例措置により省エネ性能の高い船舶の建造等を 促進している。さらに、海運へのモーダルシフ (3)海上輸送産業 トを一層推進するため、モーダルシフトに最も ①外航海運 貢献度の高かったと認められる事業者を表彰す 外航海運は、経済安全保障の確保に重要な役 る「海運モーダルシフト大賞」を元年度に創設 Ⅱ 割を果たしていることから、我が国の管轄権・ し、表彰を実施している。 保護の対象である日本船舶・日本人船員を確保 第5章
することは極めて重要である。この課題に対 ③内航海運 処するため、「海上運送法」に基づき、日本船 令和6年度の内航海運の輸送量は 1,531 億ト 舶・船員確保計画の認定を受けた本邦対外船舶 ンキロであり、国内貨物輸送の約4割、産業基 競争力のある経済社会の構築
運航事業者が確保する日本船舶等(航海命令発 礎物資輸送の約8割を担っており、モーダルシ 令時に日本籍化が可能である外国船舶(準日本 フトの受け皿としても重要である。 注6 船舶)を含む)について、トン数標準税制 を 一方で、内航船舶は、船齢が法定耐用年数 適用し、安定的な海上輸送の早期確保を図って (14 年)以上の船舶が全体の約7割を占めてい いる。 る。また、内航船員は 50 歳以上が4割以上を さらに、令和5年4月に成立した「海上運送 占めているものの、近年、若年船員が増加傾 法等の一部を改正する法律」にて外航船舶確保 向であり、定着促進が課題となっている。さ 等計画の認定制度が創設された。当該認定計画 らに、内航海運業者の 99.7%が経営基盤の脆 に基づき導入する一定の船舶について、特別 弱な中小企業であり、寡占化された荷主業界の 償却率を最大 32%まで引き上げることにより、 下、専属化・系列化が固定化しているという業 外航船舶の日本船主による計画的な導入・確保 界構造になっており、こうした状況の改善が課 を促進している。 題である。 これらの課題や環境の変化に対応するため、 ②国内旅客船事業 令和4年4月に施行された改正内航海運業法で 国内旅客船事業は地域住民の移動や生活物資 は、内航海運業に係る契約の書面交付の義務 の輸送手段として重要な役割を担う一方、令 化、「荷主に対する勧告・公表制度」 、「船舶管
【関連データ】 国内旅客船事業者数及び旅客輸送人員の推移 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
【関連リンク】 造船業再生ロードマップの策定(令和 7 年 12 月 26 日公表) URL: https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk5_000090.html
注 5 政府系金融機関による船舶輸出への融資の金利や償還期間等に関する国際的なルール。 注6 毎 年の利益に応じた法人税額の算出に代わり、船舶のトン数に応じた一定のみなし利益に基づいて法人税額を算出する 税制。世界の主要海運国においては、同様の税制が導入されている。
196 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
理業の登録制度」等を創設し、例えば、船舶 の確保・育成に取り組んでいる。内航船員につ 管理業者については、363 社(令和7年度末現 いて、船員教育機関を卒業していない者を対象 在)まで増加した。また、荷主業界と内航海運 とした短期養成課程の支援や船員を計画的に雇 業界との連携強化を図る場である「安定・効率 用して育成する事業者への支援等、若手船員確 輸送協議会」等の開催に加え、7年度は適正な 保に取り組んでおり、業界関係者の努力も相 運賃・用船料等算出の「標準的な考え方」を策 まって、若手船員の割合は増加傾向にある。 定・公表し、合わせて「内航海運業者と荷主と 一方、厳しい労働環境等を背景に若手船員の の連携強化のためのガイドライン」を改定し 定着が課題となっていることから、船員の働き て、「標準的な考え方」を反映するなど、取引 方改革の実現に取り組んでいるほか、快適な海 環境の改善や生産性向上等に取り組んでいる。 上労働環境形成の促進に資する仕組みとして、 指針を作成・公表し、新たな仕組みが適切に運 Ⅱ ④港湾運送事業 用されるよう取り組んでいく。
第5章 港湾運送事業は、海上輸送と陸上輸送の結節 点として、我が国の経済や国民の生活を支える (5)海洋産業 重要な役割を果たしている。令和7年3月末現 浮体式洋上風力発電の導入拡大に向け、設置
競争力のある経済社会の構築 在、 「港湾運送事業法」の対象となる全国 93 港 や維持管理に用いる船舶が適切に確保されるよ の指定港における一般港湾運送事業等の事業者 う、これらの船舶に必要な艤装品のサプライ 数は 842 者(前年度より 4 者減)となっており、 チェーン構築に当たってのボトルネックの把握 6年度の船舶積卸量は、全国で 13 億 4,700 万 等の調査を行っている。 トン(前年度比 0.3%増)となっている。 また、近年、港湾運送事業においても生産年 (6)海事思想普及、海事振興の推進 齢人口の減少等を背景とした担い手不足の実態 海洋立国である我が国において、国民の海洋 にかんがみ、令和7年6月に公表した「港湾労 に対する理解や関心の増進や、暮らしや経済を 働者不足対策等アクションプラン 2025」に基 支える海事産業の認知度向上は、安定的な海上 づき、港湾運送の魅力発信、適正取引推進のた 輸送及びそれを支える人材の確保のために重要 めのガイドラインの策定等を通じた取引環境改 な取組である。このため、国土交通省は、海事 善、安全性向上・労働環境の改善に向けた取組 関連団体等と連携して、海事振興事業及び海洋 を推進している。 教育事業を全国で展開している。令和7年度 には、海事振興事業として「海の日記念行事 (4)船員 2025」を開催し、海や船にまつわる各種ブー 船員の確保・育成は我が国経済の発展や国民 スの展示やステージイベント等を行った。ま 生活の維持・向上に必要不可欠であり、国土交 た、海洋教育事業では、児童・生徒・教員・保 通省では、 独立行政法人海技教育機構(JMETS) 護者に対し、出前講座や体験型学習等の場を提 をはじめとする船員教育機関と連携し、質の高 供することで、海洋や海事産業の理解増進を い船員を育成している。外航船員について、経 図った。 済安全保障等の観点から、一定数の日本人船員
国土交通白書 2026 197 第3節 産業の活性化
4 航空産業の動向と施策 航空産業を取り巻く状況は、LCC の路線拡 航空会社の輸送実績についてみると、3年度 充や訪日外国人の増加等もあり、航空旅客数は 以降は回復傾向にあり、6年度の国内旅客は 国内・国際ともに7年連続で増加していた。令 10,877 万人(前年度比 3.8%増) 、国際旅客は 和2年2月以降、新型コロナウイルス感染症の 2,116 万人(前年度比 19.8%増)となってい 影響により旅客数は大幅に減少したが、我が国 る。
5 貨物利用運送事業の動向と施策の推進 Ⅱ 貨物利用運送事業は、運送事業者の行うト の実現の必要性も踏まえ、従来のトラック輸送 ラックや船舶、鉄道、航空の運送を利用するこ から鉄道や船舶へのモーダルシフトに加えて、 第5章
とで、多様な利用者のニーズに対応した貨物の 航空物流における定期便の空きスペース等の活 運送サービスの提供を行っている。近年は、荷 用等、多様な輸送モードを活用した「新モーダ 主企業のグローバル化に伴い、荷主企業のニー ルシフト」を推進することとされており、貨物 競争力のある経済社会の構築
ズを踏まえた国際輸送に関する貨物利用運送事 利用運送事業への参入がますます進展すること 業への関心が高まっている。国際貿易の重要性 が見込まれることから、国土交通省では監査等 が一層高まり、その迅速性が求められる一方 を通じて事業者のコンプライアンスの徹底を図 で、輸送の安全確保も重要である。加えて、ト るなど、安全で確実な物流サービスの確保に取 ラックの輸送力不足や、2050 年ネット・ゼロ り組んでいる。
6 物流拠点関連の動向と施策 (1)物流拠点の動向と施策 通業務施設の整備に対する支援や、物流拠点の 物流拠点が担う役割は、物資の保管、仕分け DX 化・GX 化を図る取組に対する支援、非常 等の荷さばき、流通加工等のほか、付随して物 用電源設備等の導入に対する支援を行ってきて 流従事者の休憩環境の提供や、地域における災 いるとともに、本年、物資の流通の効率化に関 害物資拠点としての役割等、多様化している。 する法律の一部を改正する法律案を国会に提出 EC 等の需要拡大に伴い、物流拠点の所管面 し、成立後、中継輸送の推進に必要な施設の整 積の 1 社平均は、令和5年時点で、平成 25 年 備に対する税制特例措置等の支援を行うことと と比較して 26%増加するなど急激に拡大し、 している。 賃貸型の物流拠点の整備の供給が進む一方で、 また、令和8年1月には、特定技能制度・育 人手不足が課題となっているほか、既存の営業 成就労制度において、「物流倉庫」分野が新た 倉庫や公共トラックターミナルは、老朽化の進 に追加され、倉庫業者等や貨物自動車運送事業 展に直面している。 者を対象に、一定の条件下で外国人材の受入れ それらの現状を踏まえ、国土交通省では、物 が認められることとなり、協議会の設置等によ 資の流通の効率化に関する法律に基づく特定流 り、人材の受入開始に向けた業界の準備を後押
【関連リンク】 航空輸送統計調査 URL:https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00600360&metadata=1&data=1
198 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
ししている。 くりを後押ししている。また、トラックを含め たサプライチェーン全体の取引適正化を進める (2)倉庫業の動向と施策 べく、 「トラック・物流 G メン」により、倉庫 倉 庫 業 は、 物 資 の 保 管 に よ り、 サ プ ラ イ 業者からの情報収集を行っている。 チェーンにおける結節点として機能すること で、市民生活や経済活動を支えている。近年 (3)トラックターミナル事業の動向と施策 は、保管業務に加えて、庫内での検品、値付け トラックターミナル事業は、 「貨物自動車運 や包装等の流通加工業務を実施する拠点も増加 送事業法」に基づく特別積合せ貨物運送事業者 している。 に対し、その営業拠点を安定的に提供すること 一方で、倉庫業は、営業を行う上での生命線 で、我が国経済の屋台骨たる、トラックによる たる倉庫それ自体の老朽化の進展に直面してい 幹線物流を下支えしている。施設の老朽化が課 Ⅱ る。建築費や労務費が上昇する中、寄託者から 題となっていることから、「物資の流通の効率
第5章 受け取る保管料の水準は上がっておらず、寄託 化に関する法律」に基づき、財政投融資による 者への価格転嫁が課題となっている。そのた 支援を可能としており、この支援を活用して、 め、国土交通省においては、令和8年1月に標 令和7年4月に、日本自動車ターミナル㈱板橋
競争力のある経済社会の構築 準倉庫寄託約款・標準冷蔵倉庫寄託約款を改正 トラックターミナル新3・4・7号棟が竣工し し、附帯料金の明確化などを規定することによ た。 り、倉庫業者が適正な対価を収受できる環境づ
7 不動産業の動向と施策 (1)不動産業をめぐる動向 備され、転入者が多い地域では、堅調な住宅需 ①不動産業の動向 要に支えられ、地価上昇が継続している。 不動産業は、全産業の売上高の 3.5%、法人 商業地では、主要都市において、店舗・ホテ 数の 12.9%(令和6年度)を占める重要な産 ル等の需要が堅調であり、オフィスについても 業の一つである。 空室率の低下傾向や賃料の上昇傾向によって収 益性が向上していることから、地価上昇が継続 ②地価の動向 している。特にインバウンドが増加した観光地 令和8年地価公示(令和8年1月1日時点) 等では、旺盛な店舗・ホテル需要を背景に、高 によると、全国の地価動向は、全用途平均・住 い地価上昇が継続している。また、再開発事業 宅地・商業地のいずれも5年連続で上昇し、全 等が進展している地域では、利便性や賑わいの 用途平均・商業地は上昇幅が拡大したが、住宅 向上への期待感から、高い地価上昇が継続して 地は前年と同じ上昇幅となった。 おり、マンション需要との競合が見られる地域 住宅地では、住宅需要は引き続き堅調であり、 でも、高い地価上昇が継続している。 地価上昇が継続している。東京圏・大阪圏等の 大手半導体メーカーの工場が進出した地域で 中心部のマンション需要が旺盛な地域では、高 は、関連企業も含めた従業員向けの住宅需要の い地価上昇が継続している。リゾート地域等で ほか、関連企業の工場用地や事務所・ホテル・ は、別荘・コンドミニアムや移住者、従業員向 店舗の需要も引き続き堅調であり、住宅地、商 け住宅の旺盛な需要を背景に、高い地価上昇が 業地、工業地ともに、高い地価上昇が継続して 継続している。また、子育てしやすい環境が整 いる。
国土交通白書 2026 199 第3節 産業の活性化
③既存住宅流通の動向 (3)市場の活性化のための環境整備 既存住宅の流通市場については、指定流通機 ①不動産投資市場の現状 構(レインズ)における令和6年度の成約件数 我が国における不動産の資産額は、令和6年 が 20.5 万件(前年度比 12.2%増)となった。 末現在で約 3,399 兆円となっている注 7。 国 土 交 通 省 で は、 令 和 12 年 ま で に リ ー ト (2)不動産業の現状 等注 8 の資産総額を約 40 兆円にするという目標 宅地建物取引に係る消費者利益の保護と流通 を設定しているところ、不動産投資市場の中 の円滑化を図るため、「宅地建物取引業法」の 心的存在である J リートについては、8年3月 的確な運用に努めている。令和6年度末におい 末現在、58 銘柄が東京証券取引所に上場され て、宅地建物取引業者数は 132,291 業者であ ており、対象不動産の総額は約 24.5 兆円、私 Ⅱ る。 募リートと不動産特定共同事業を合わせて約 国土交通省及び都道府県は、関係機関と連携 34.1 兆円注 9 となっている。 第5章
しながら苦情・紛争の未然防止に努めるととも J リート市場全体の値動きを示す東証 REIT に、同法に違反した業者には、厳正な監督処分 指数は、令和7年4月に 1,600 ポイント台で底 を行っており、令和6年度の監督処分件数は を打ったのちに上昇に転じ、同年 11 月に 2,000 競争力のある経済社会の構築
147 件(免許取消 99 件、業務停止 16 件、指示 ポイントを超えるまで緩やかに上昇を継続し 32 件)となっている。 た。同年 12 月以降 2,000 ポイント前後を推移 不動産管理業については、マンション管理 した。また、J リートにおける7年度の1年間 業、住宅宿泊管理業及び賃貸住宅管理業それぞ における資産取得額は、約 1.4 兆円となった。 れについて法令に基づく登録制度を設け、適正 な業務運営の確保に向けた措置を講じている。 ②不動産特定共同事業の推進 マンション管理業については、「老朽化マン 不動産特定共同事業の意義・活用のメリット ション等の管理及び再生の円滑化等を図るため や好事例等をまとめた「不動産特定共同事業 の建物の区分所有等に関する法律等の一部を改 (FTK)の利活用促進ハンドブック」を更新・ 正する法律(令和7年法律第 47 号) 」により、 周知したほか、一般投資家向けの情報開示等の 管理業者が管理組合の管理者を兼ねる場合に利 ありかたを検討するため、令和7年3月に学識 益相反の懸念があるため、自己取引等に係る区 経験者及び関係団体等からなる「一般投資家の 分所有者への事前説明を義務化するなどの措置 参加拡大を踏まえた不動産特定共同事業のあ を講じるとともに、標準契約書等の整備を行っ り方についての検討会」を設置し、同年 8 月に た。また、住宅宿泊管理業については、登録実 は、「中間整理」を公表した。また、地域にお 務講習制度の運用等を通じた地方部の担い手確 ける不動産特定共同事業の普及促進に向けたセ 保や、立入検査等の実施を行った。賃貸住宅管 ミナーやウェビナー、ネットワーク形成のため 理業については、令和7年度に有識者会議を通 の会議の開催等、民間の資金・アイデアを活用 じて業務のありかたや制度の普及促進に加え、 した老朽・遊休不動産の再生の推進に向けた取 今後の課題整理を行った。 組を実施した。
注7 国民経済計算をもとに建物、構築物及び土地の資産額を合計。 注8 J リート、私募リート、不動産特定共同事業。 注9 不動産特定共同事業については、令和6年度末時点の数値を使用。
200 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
③ ESG 投資等による良好な不動産の形成促進 ごとに公表している(令和8年3月末現在の提 我が国不動産への ESG 投資を促進するため、 供件数は、約 576 万件)。 不動産 ESG 投資関連情報の充実に向けたガイ ダンスの普及啓発を行うとともに、改修時期を (ウ)不動産価格指数 迎えた中小ビルについて、社会課題に対応する 国際通貨基金(IMF)等の国際機関が作成し ことによりバリューアップを図る改修事例等の た基準に基づき、「不動産価格指数(住宅)」を 調査を行った。また、環境不動産等の良質な不 毎月、 「不動産価格指数(商業用不動産・試験 動産の形成を促進するため、耐震・環境不動産 運用)」を四半期ごとに公表している。 形成促進事業においては、令和7年度には約 89.6 億円の出資を決定した。 (エ)既存住宅販売量指数 建物の売買を原因とした所有権移転登記個数 Ⅱ ④不動産に係る情報の環境整備 を基に、個人が購入した既存住宅の販売量に係
第5章 国土交通省では、不動産市場の透明化、不動 る動向を指数化した「既存住宅販売量指数(試 産取引の円滑化・活性化等を図るため、以下の 験運用)」を毎月公表している。 とおり、不動産に係る情報を公表している。
競争力のある経済社会の構築 (オ)法人取引量指数 (ア)不動産情報ライブラリ 建物の売買を原因とした所有権移転登記件数 地価公示等の価格情報、防災情報、都市計画 を基に、法人が購入した既存建物の取引量に係 情報、周辺施設情報等の不動産に関するオープ る動向を指数化した「法人取引量指数(試験運 ンデータを利用者のニーズに応じて地図上に分 用)」を毎月公表している。 かりやすく表示する WebGIS システムを令和 6年4月1日より公開している(7年度末時点 (カ)新築マンションの取引実態把握 累計 PV 数:28,126,130 回)。掲載情報の一部 近年のマンションの取引実態を把握するた については、API 連携で民間事業者等へ提供し め、三大都市圏及び地方四市の新築マンション ており、不動産取引の円滑化に寄与している。 における短期売買(購入後1年以内の売買)の 今後は、不動産取引の活性化や防災・まちづく 状況、国外に住所がある者による取得の状況に り等に資するシステムとするために、ユーザー ついて調査を行うとともに、都心6区の新築マ ニーズを踏まえながら、掲載コンテンツの充実 ンションにおける価格帯別の短期売買及び取得 や検索機能の向上など利便性向上に向けた取組 の状況についても併せて分析し、令和7年 11 を行う。 月に結果を公表した。
(イ)不動産取引価格情報 ⑤市場の活性化のための環境整備 全国の不動産の取引価格等の調査を行ってい 既存住宅の流通促進を図るため、建物状況調 る。調査によって得られた情報は、個別の物件 査(インスペクション)や、「安心R住宅」制 が特定できないよう配慮した上で、国土交通省 度等を通じ、消費者が安心して既存住宅を取引 ウェブサイト(不動産情報ライブラリ)で、取 できる市場環境の整備を推進している。さら 引された不動産の所在、面積、価格等を四半期 に、不動産業への後押しを通じた空き家・空き
【関連リンク】 不動産情報ライブラリ URL:https://www.reinfolib.mlit.go.jp/
国土交通白書 2026 201 第3節 産業の活性化
地の流通・利活用に向けて公表した「不動産業 した。 による空き家対策推進プログラム」の実装を加 このほか、低未利用地の適切な利用・管理を 速化させ、不動産取引に関するノウハウを有す 促進するための特例措置、土地の所有権移転登 る不動産業が、地域とともに新しい価値を創造 記等に係る登録免許税の特例措置、土地等の譲 していくことを図るとともに、 「全国版空き家・ 渡益に対する追加課税制度(重課)の停止措 空き地バンク」の活用促進を通じて、空き家等 置、相続税等納税猶予農地を公共事業用地とし の取引を促進している。 て譲渡した者に対する利子税の免除特例措置に 加えて、「宅地建物取引業法」改正(令和4 ついても、それぞれ適用期限を延長した。 年)により可能となった不動産取引における書 面の電磁的方法による提供等に関し、不動産取 ⑦「不動産 ID」の活用による不動産関連情報 Ⅱ 引契約に伴う各種業務や関連手続へのデジタル の連携・活用促進 技術の導入・活用に係る実証事業や実態把握の 我が国の不動産は、一意に識別・特定する 第5章
実施等、不動産取引のオンライン化に係る環境 番号がなく、DX や情報連携のボトルネックと 整備を行った。 なっている。不動産 ID は、全国の不動産それ ぞれに番号を付与して不動産を一意に特定する 競争力のある経済社会の構築
⑥土地税制の活用 ものであり、キーとして用いることにより、各 令和8年度税制改正においては、長期保有土 不動産情報の連携等をスムーズに行うことを可 地等に係る事業用資産の買換え等の場合の課税 能とするものである。令和6年度より、建物に の特例措置について、対象となる買換資産につ 関する不動産 ID については、日本郵便株式会 いて一部見直しの上、適用期限を3年間延長し 社の保有する住所データを用いて生成すること た。また、優良住宅地の造成等のために土地等 を検討しており、9年度中の先行整備地域にお を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例に ける一部試験運用の開始を目指して検討を進め ついては、対象事業を一部見直し、一部事業に ている。 ついて立地に係る要件(地すべり防止区域等に 所在する土地等の譲渡を対象外とする)を追加 ⑧不動産鑑定評価の信頼性の向上 するとともに、都市計画区域内における一定の 不動産市場を支える制度インフラである不動 一団の住宅又は中高層耐火共同住宅の建設の用 産鑑定評価の信頼性を更に向上させるため、不 に供するための土地等の譲渡について、建築費 動産鑑定業者に対する立入検査等を内容とする 単価上限額要件を引き上げた上で、3年間延長 鑑定評価モニタリングを引き続き実施した。
8 公共工事の品質確保 国土交通省では、「公共工事の品質確保の促 (1)発注者責務を果たすための取組 進に関する法律(公共工事品確法)」 、「公共工 「第三次・担い手3法」の成立を受け、令和 事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 6年 12 月には、「公共工事の入札及び契約の適 (入札契約適正化法) 」、「建設業法」を改正する 正化を図るための措置に関する指針(適正化指 「第三次・担い手3法」が令和6年6月に成立 針)」及び「公共工事の品質確保の促進に関す したことを踏まえて、市町村をはじめとするす る施策を総合的に推進するための基本的な方 べての公共工事の発注者が具体的な取組を進め 針」の改正が閣議決定された。また、7年2月 るよう求めている。 には、「発注関係事務の運用に関する指針」が
202 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
改正された。国土交通省では、これらの指針を 準」においては、時間外労働規制を遵守した適 踏まえた発注関係事務の適切な運用に向けて 正な工期設定や、猛暑日を作業不能日として考 様々な取組を行っている。また、各発注者にお 慮すること等が明記された。また、近年の過酷 いて発注関係事務が適切に実施されているかに な猛暑を踏まえ、受注者が施工の時期、時間や ついて、毎年、「入札契約適正化法等に基づく 方法を柔軟に選択できるよう、工期の設定等に 実態調査」等を行い、その結果を公表するとと ついて支援する取組を「建設工事における猛暑 もに、これらの結果を「見える化」した「適正 対策サポートパッケージ」として取りまとめ 化マップ」を作成している。 た。これらを踏まえ、週休2日の確保や猛暑対 策の実施等、工期の適正化に向けて発注者等に ①地域の実情等を踏まえた発注 働きかけを行っている。 国土交通省では、直轄工事の発注に当たり、 Ⅱ 地域の実情を踏まえ、競争参加資格や発注規模 ④施工時期の平準化
第5章 を適切に設定し、計画的に発注を行いつつ、企 繰越明許費や国庫債務負担行為の適切な活用 業や技術者の技術力を評価する総合評価落札方 により、翌年度にわたる工期設定等の取組につ 式の活用をはじめとして、多様な入札契約方式 いて国土交通省の事業において実施するととも
競争力のある経済社会の構築 を適切に選択している。また、地方公共団体等 に、地方公共団体における平準化の進捗・取組 の公共発注者に対しても、地域の実情に応じた 状況を把握・公表する「見える化」等により、 適切な規模での発注について働きかけている。 平準化の促進を図っている。
②適正な予定価格の設定 ⑤ダンピング対策 公共工事の品質確保と担い手の育成・確保に ダンピング受注は建設業の健全な発達を阻害 必要な適正な利潤の確保のため、国土交通省直 することから、地方公共団体に対して低入札価 轄工事では、予定価格の設定に当たっては、適 格調査制度及び最低制限価格制度の適切な活用 切に作成された仕様書及び設計図書に基づき、 や、調査基準価格及び最低制限価格の見直しに 賃金の上昇や資機材価格の高騰等を含む市場に よりダンピング対策の実効性の確保をするよ おける労務・資材等の最新の実勢価格を適切に う、あらゆる機会を通じて求めてきた。この結 反映しており、地方公共団体に対しても適正な 果、令和元年 11 月時点で 95 団体あった未導入 予定価格の設定について様々な機会を通じて働 団体は、7年6月時点で 58 団体まで減少した。 きかけを行っている。また、公共建築工事積算 また、各市区町村における工事・業務に関する 基準とその運用に係る各種取組を取りまとめ ダンピング対策の取組状況を把握・公表する た「営繕積算方式」活用マニュアルを令和8年 「見える化」等により、取組の適切な見直しを 3月に改訂するなど、積算に係る最新の各種基 求めている。 準・マニュアル類の整備・周知にも努めてい る。 ⑥適切な設計変更 国土交通省直轄工事では、設計図書に施工条 ③適正な工期設定 件を適切に明示するとともに、必要があると認 国土交通省では、直轄工事において適正な工 められたときは、適切に設計図書を変更してい 期を設定するための具体的かつ定量的な工期設 る。また、「入札契約適正化法」において、資 定指針を策定している。また、令和6年3月に 機材の高騰時等における受注者からの請負契約 中央建設業審議会が改定した「工期に関する基 の変更の申し出に対し、発注者が誠実に協議に
国土交通白書 2026 203 第3節 産業の活性化
応じることが義務とされたほか、「適正化指針」 方公共工事契約業務連絡協議会」等を通じて、 において、「設計変更ガイドライン」の策定・ 情報共有を実施し、発注者間の一層の連携に努 公表及びこれに基づいた適正な手続の実施に努 めている。また、都道府県公共工事契約連絡協 めることが明記された。これらを踏まえ、地方 議会との更なる連携体制の強化を通じて、市町 公共団体に対して適切な設計変更が実施される 村等に対して直接入札制度の改善の働きかけを よう、様々な機会を通じて働きかけを行ってい 行っている。 る。 (3)受発注者間の意思疎通の緊密化等 (2)発注者間の連携・支援 「第1次国土強靱化実施中期計画」等による 国土交通省では、公共工事の品質確保等に資 公共工事の円滑な施工確保を図るため、地域の Ⅱ する各種取組について、 「地域発注者協議会」、 受発注者間の連携・意思疎通を促している。 「国土交通省公共工事等発注機関連絡会」、「地 第5章
9 持続可能な建設産業の構築 競争力のある経済社会の構築
(1)建設産業を取り巻く現状と課題 ある。建設業就業者数は近年、横ばいで推移し 建設産業は、社会資本の整備を支える不可欠 ているが、今後、高齢者の大量離職が見込まれ の存在であり、都市再生や地方創生等、我が国 ており、建設産業が地域の守り手として持続的 の活力ある未来を築く上で大きな役割を果たす に役割を果たしていくためには、令和6年度か とともに、震災復興、防災・減災、老朽化対策 らの時間外労働規制の適用も踏まえた働き方改 等、「地域の守り手」としても極めて重要な役 革を含め、引き続き、将来の担い手の確保・育 割を担っている。一方、建設業の現場では担い 成に取り組んでいくことが重要である。 手の高齢化が進んでおり、将来的な担い手の確 このため、長時間労働の是正を図るととも 保が課題となっており、処遇改善、働き方改革 に、賃金引上げに向けた取組や建設キャリア の推進、生産性向上等を推進するための取組を アップシステムの活用等による処遇改善、「建 進めていく必要がある。 設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関 する法律」等に基づく安全衛生経費の適切な支 (2)建設産業の担い手確保・育成 払いに向けた取組の推進に加え、教育訓練の着 建設産業は、多くの「人」で成り立つ産業で 実な実施による円滑な技能承継に取り組む。ま
【関連リンク】 地方公共団体の入札契約適正化の取組状況「見える化」まとめ URL:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/nyukei-portal/
【関連リンク】 「発注関係事務の運用に関する指針」改正の概要 URL:https://www.mlit.go.jp/tec/content/001860708.pdf
【関連リンク】 『営繕積算方式』活用マニュアルの普及・促進について https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000009.html
【関連リンク】 「建設工事における猛暑対策サポートパッケージ」について https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001275.html
204 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
た、将来の労働力人口の減少を踏まえ、建設プ 野における特定技能の在留資格に係る制度の運 ロセス全体における ICT 活用、インフラ分野 用に関する方針及び育成就労に係る制度の運 全体の DX、技術者制度の合理化、重層下請構 用に関する方針」が閣議決定されたところであ 造の改善、書類作成等の現場管理の効率化等に る。今後の育成就労制度の施行も見据え、外国 よる生産性の向上も図っていく。 人材の円滑・適正な受入れや育成に引き続き取 また、現下の建設資材の高騰等を反映した請 り組むことで建設業の担い手の確保を図る。 負代金や工期の設定が図られるよう、取組を進 めていく。 (3)建設キャリアアップシステムの推進 これらの取組を制度面から強化するため、担 建設産業における中長期的な担い手の確保・ い手確保に向けた処遇改善、資材高騰による労 育成を図るためには、技能労働者がキャリアパ 務費へのしわ寄せ防止、働き方改革と生産性 スや処遇について将来の見通しを持ちながら、 Ⅱ の向上を大きな柱に、 「持続可能な建設業」の 働きがいや希望をもって働くことができる環境
第5章 実現に向け、令和6年6月に建設業法等を改 を構築し、業界全体として人材への投資や賃金 正し、7年 12 月に全面施行したところである。 設定が適切に行われる好循環を生み出すことが 加えて、改正建設業法により、中央建設業審議 重要である。
競争力のある経済社会の構築 会が建設工事の労務費に関する基準を作成・勧 このため、担い手の技能・経験の見える化 告できることとされたことを踏まえ、7年 12 や適正な能力評価を業界横断的に進めるため 月2日に「労務費に関する基準」が中央建設業 の建設キャリアアップシステム(CCUS)に 審議会から勧告された。これにより、適正な労 ついて、建設産業の持続的な発展のための業界 務費が、公共工事・民間工事にかかわらず、受 共通の制度インフラとして普及を促進するとと 発注者間、元請-下請間、下請間のすべての段 もに、更なる処遇改善等のメリットを技能労働 階において確保され、技能者に適正な賃金とし 者が実感できる環境づくりを目指す。具体的に て支払われることを図る制度的な枠組みが確立 は、令和6年度からの3か年を「メリット拡大 することとなる。 フェーズ」と位置付け、官民一体となって取り こうした取組を官民一体となって推進し、建 組む施策をまとめた「CCUS 利用拡大に向け 設業への入職を促進し、誇りを持って仕事に打 た3か年計画」を6年7月に公表したところで ち込めるような環境整備に取り組んでいく。 あり、同計画に基づき、取組を進めている。計 また、将来的に生産性向上や国内人材確保 画スタートから約 2 年、CCUS レベルに応じ の取組を行ってもなお不足すると考えられる労 た賃金・手当制度の拡大、CCUS のスマート 働力を、外国人材の受入れによって中長期的に フォンアプリ「建キャリ」の提供を開始し、技 確保する必要がある。令和元年度より特定技能 能者が自らの就業履歴をいつでも簡単に閲覧で (建設分野)の在留資格で外国人材を受け入れ きる環境を整備、CCUS に蓄積される就業履 ており、現在は 51,122 人(7年 12 月末時点) 歴情報が建退共の電子申請サイトに自動共有さ が在留している。また、技能実習制度に替わる れる機能の提供を開始し、建退共に係る業務を 新たな制度として、9年度より、人材の育成及 効率化できる仕組みを整える等、同計画は順調 び人材の確保を目的とした育成就労制度が施行 に進んでいる。今後は、同計画を進めるととも される予定となっており、8年1月に「建設分 に、施策が着実に定着するよう努め処遇改善や
【関連データ】 建設投資、許可業者及び就業者数の推移 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
国土交通白書 2026 205 第3節 産業の活性化
業務効率化のメリット拡大を図る。 おいても引き続き実施することとした。
(4)公正な競争基盤の確立 ③建設産業の担い手確保に向けた女性・若者の 技術力・施工力・経営力に優れた建設業者が 入職・定着の促進事業 成長していく環境を整備する上で、建設業者の 他産業を上回る高齢化が進行する建設業に 法令遵守の徹底をはじめとする公正な競争基盤 とって将来の担い手確保が喫緊の課題であり、 の確立が重要である。 多様な人材が入職し、かつ、働き続けられる業 そのため、従前より下請取引等実態調査や立 界とする取組が必要である。 入検査等の実施、建設工事の請負契約を巡るト こうした問題意識を踏まえつつ、令和 7 年 3 ラブル等の相談窓口である「建設業取引適正化 月策定された「建設産業における女性活躍・定 Ⅱ センター」の設置、 「建設業取引適正化推進期 着促進に向けた実行計画」に基づき、すべての 間」の取組、また請負代金や工期等の契約内容 人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産 第5章
に関する調査等により、発注者・元請・下請間 業の実現を目指し、官民をあげて取組を進めて の取引の適正化に取り組んでいる。 いく。 競争力のある経済社会の構築
(5)建設企業の支援施策 (6)建設関連業の振興 ①地域建設業経営強化融資制度 社会資本整備・管理を行う上で、工事の上流 地域建設業経営強化融資制度は、元請建設企 に当たる測量や調査設計の品質確保が重要であ 業が工事請負代金債権を担保に融資事業者(事 ることから、令和元年6月の改正で新たに、広 業協同組合等)から工事の出来高に応じて融資 く公共工事品確法の対象として位置付けられた を受けることを可能とすることにより、元請建 ところであり、建設業だけでなく、建設関連業 設企業の資金繰りの円滑化を推進するものであ (測量業、建設コンサルタント、地質調査業) る。本制度では、融資事業者が融資を行うに当 も重要な役割が求められている。 たって金融機関から借り入れる転貸融資資金に 国土交通省では、建設関連業全体の登録業者 対して債務保証を付すことにより、融資資金の 情報を毎月、その情報を基にした業種ごとの経 確保と調達金利等の軽減を図っている。 営状況の分析を翌年度末に公表しており、また 関連団体と協力し就職前の学生を対象に建設関 ②下請債権保全支援事業 連業の説明会を開催するなど、建設関連業の健 下請債権保全支援事業は、ファクタリング会 全な発展と登録制度の有効な活用に努めてい 注 10 社 が、下請建設企業等が元請建設企業に対 る。 して有する工事請負代金等債権の支払保証又は また、昨今の履行期限平準化の取組や設計技 買取を行う場合に、保証、買取時における下請 術者単価の上昇等を踏まえた価格転嫁対策を強 建設企業等の保証料、買取料負担を軽減すると 化するため、令和8年度以降に国土交通省が新 ともに、保証債務履行時等のファクタリング会 規契約する建設コンサルタント業務等からスラ 社の損失の一部を補償することにより、下請建 イド制度(業務スライド)の試行を導入する。 設企業等の資金繰りの改善、連鎖倒産の防止を 図る事業である。なお、本事業は令和8年度に
注 10 他人が有する売掛債権の保証や債権の買取りを行い、その債権の回収を行う金融事業会社のこと。現在、銀行子会社系、 前払保証会社系、リース会社系等8社のファクタリング会社が、当事業を運営している。
206 国土交通白書 2026 第3節 産業の活性化
(7)建設機械の現状と建設生産技術の発展 小現場の省人化を目的として、ICT 建設機械 我が国における主要建設機械の保有台数は、 等認定制度による普及促進とともに、効果等を 令和5年度で約 109 万台であり、建設機械の 把握するための省人化建設機械(チルトロー 購入台数における業種別シェアは、建設機械器 テータ)試行工事を7年度より開始した。 具賃貸業が約 42%、建設業が約 24%となって おり、建設業とともに、建設機械器具賃貸業が (8)建設工事における紛争処理 欠かせないものとなっている。i-Construction 建設工事の請負契約に関する紛争を迅速に処 2.0 の取組の一環として、ICT 施工の普及促進 理するため、建設工事紛争審査会において紛争 を推進しており、三次元データを活用した建設 処理手続を行っている。令和6年度の申請実績 機械の自動制御等により高精度かつ効率的な施 は、中央建設工事紛争審査会では 32 件(仲裁 工を実現する MC/MG 技術等の ICT 建設機械 7 件、調停 21 件、あっせん4件)、都道府県建 Ⅱ の積極的な活用に取り組んでいる。また、チル 設工事紛争審査会では 77 件(仲裁 12 件、調停
第5章 トローテータを活用した施工による小規模・狭 52 件、あっせん 13 件)である。
競争力のある経済社会の構築
【関連リンク】 建設施工・建設機械:ICT 建設機械等認定制度 - 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000050.html
【関連リンク】 省人化建設機械(チルトローテータ)の効果等の調査 - 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/page/kanbo08_hy_000082.html
国土交通白書 2026 207 第1節 ユニバーサル社会の実現
第 6章 安全・安心社会の構築
第1節 ユニバーサル社会の実現
1 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー化の実現 「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」 いては同基準への適合努力義務を課すととも というユニバーサルデザインの考え方を踏まえ に、その職員に対し、バリアフリー化を図るた た「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進 めに必要な教育訓練を行うよう努力義務を定め Ⅱ に関する法律(バリアフリー法)」に基づき、 ている。また、一定の要件を満たす公共交通事 旅客施設等(旅客施設、車両等、道路、路外駐 業者等に対して、施設整備、旅客支援等を盛り 第6章
車場、都市公園、建築物等)の新設等の際の 込んだハード・ソフト取組計画の毎年度報告・ 「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の旅 公表を義務付ける制度等により、ハード・ソフ 客施設等に対する適合努力義務を定めるととも ト対策を一体的に推進している。さらに、旅客 安全・安心社会の構築
に、この「バリアフリー法」に基づいたバリア 船ターミナル、鉄道駅等の旅客施設のバリアフ フリー整備目標を策定し、ハード・ソフト両面 リー化やノンステップバス、リフト付きバス、 での一層のバリアフリー化に取り組んでいる。 福祉タクシー等の車両の導入等に対する支援措 第3次バリアフリー整備目標が令和7年度まで 置を実施している。 を目標期間としていることから、8年度以降の また、鉄道における精神障害者割引につい 新たな整備目標の策定に向けて、6年5月から て、鉄道事業者に対して導入の働きかけを行っ 障害当事者団体や有識者等が参画する検討会を た結果、令和7年4月に JR 旅客会社及び大手 開催した。第3次バリアフリー整備目標の達成 民鉄全社等での導入が実現した。 状況や策定時からの社会経済情勢の変化、障害 当事者団体等や有識者等から提出された意見を (2)居住・生活環境のバリアフリー化 踏まえつつ検討を行い、7年6月に最終とりま ①住宅・建築物のバリアフリー化 とめを公表し、基本方針を改正して8年度から 高齢者、障害者等が地域の中で安全・安心で の5年間を目標期間とする新たなバリアフリー 快適な住生活を営むことができるよう、一定の 整備目標を策定した(8年4月施行)。 バリアフリー性を満たした住宅を取得する際 の独立行政法人住宅金融支援機構の【フラッ (1)公共交通機関のバリアフリー化 ト 35】S における融資金利の引下げ、バリア 「バリアフリー法」に基づき、公共交通事業 フリー改修工事に対する支援等によって住宅の 者等に対して、旅客施設の新設・大規模な改良 バリアフリー化を促進しているほか、公営住宅 及び車両等の新規導入の際に公共交通移動等円 や建替え事業によって新たに供給する都市再生 滑化基準への適合を義務付け、既存施設につ 機構賃貸住宅については、バリアフリー化を標
【関連データ】 公共交通機関のバリアフリー化の現状 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
208 国土交通白書 2026 第1節 ユニバーサル社会の実現
準仕様とするとともに、令和6年6月には賃貸 の整備や歩道の段差・傾斜・勾配の改善、踏切 の共同住宅を主な対象とした「障害者の居住に 道におけるバリアフリー対策、無電柱化、視覚 も対応した住宅の設計ハンドブック」を策定し 障害者誘導用ブロックの整備等による歩行空間 た。 のユニバーサルデザイン化を推進している。 また、公共施設や店舗等については、「バリ アフリー法」に基づく建築物移動等円滑化基準 ③都市公園等におけるバリアフリー化 への適合義務付け制度や容積率の特例措置のほ 都市公園等において、出入口や園路の段差解 か、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮 消、高齢者や障害者等が利用しやすいトイレの した建築設計標準」の周知等を通じてバリアフ 設置等のバリアフリー化を推進するため、 「バ リー化を促進している。窓口業務を行う官署が リアフリー法」に基づく基準やガイドラインを 入居する官庁施設について、建築物移動等円滑 定めるとともに、それに基づく公園施設の整備 化誘導基準に規定された整備水準の確保等によ を支援している。 り、高齢者、障害者等を含むすべての人が、安 Ⅱ 全に、安心して、円滑かつ快適に利用できる施 (3)ジェンダー主流化の推進
第6章 設を目指した整備を推進する。 日常生活と密接に関係する国土交通分野に 令和6年には建築物移動等円滑化基準及び建 おいて、ジェンダー平等の視点を取り入れる 築物移動等円滑化誘導基準のうち、「車椅子使 「ジェンダー主流化」注 1 を推進するため、令和7
安全・安心社会の構築 用者用便房」、 「車椅子使用者用客席」及び「車 年5月に国土交通大臣を本部長とする「ジェン 椅子使用者用駐車施設」の設置数に係る基準を ダー主流化推進本部」を立ち上げ、関連する取 改正し、7年6月より施行した。 組を推進している。また官民連携として、同年 10 月から「国土交通ジェンダーネットワーク ②歩行空間のバリアフリー化 会議」を開催し、民間企業から 20 名強集まり 駅、官公庁施設、病院等を結ぶ道路や駅前広 国土交通省職員も含めて女性活躍推進等につい 場等において、高齢者・障害者をはじめとする て意見交換・交流を進めている。 誰もが安心して通行できるよう、幅の広い歩道
図表Ⅱ-6-1-1 国土交通ジェンダーネットワーク会議
【関連リンク】 建築物におけるバリアフリーについて URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000049.html
注1 あ らゆる分野でのジェンダー平等を達成するため、すべての政策、施策及び事業について、ジェンダーの視点を取り込 むこと。(第6次男女共同参画基本計画 令和8年3月 13 日閣議決定)
国土交通白書 2026 209 第1節 ユニバーサル社会の実現
図表Ⅱ-6-1-2 産業別 女性就業者数比率
60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 全産業
道路旅客運送業
鉄道業
建設業
水運業
道路貨物運送業
自動車整備業
倉庫業
不動産業
航空運輸業
宿泊業 Ⅱ 1990年 2000年 2010年 2020年 第6章
2 少子化社会の子育て環境づくり(こどもまんなかまちづくり等) 安全・安心社会の構築
こどもや子育て世帯が安心・快適に日常生活 一体的整備に対して、地方公共団体を通じて支 を送ることができるよう、こどもや子育て世帯 援しているほか、こどもの安全確保や、親の孤 の目線や、住宅を起点とした「近隣地域」と 立・孤独防止に資する共同住宅の整備や子育て いった視点に立ち、子育てを住まいと周辺環境 世帯に適した住宅・居住環境を確保するため、 の観点から支援する「こどもまんなかまちづく 高齢者等が有する比較的広い住宅を子育て世帯 り」を進めるとともに、こどもや子育て当事者 等向けの賃貸住宅として活用する取組を支援し を社会全体で支える機運を醸成するための取組 ている。 を実施している。 ②テレワークの推進 (1)仕事と育児との両立の支援 令和7年6月 13 日に閣議決定された「デジ ①子育て世帯に適した住宅確保等の支援 タル社会の実現に向けた重点計画」(以下、「重 子育てにやさしい住まいの拡充に向けて、子 点計画」)等において、テレワークの推進が位 育て環境の優れた公営住宅等や、子育て世帯に 置付けられている。テレワークは、働き方を変 向けた民間の空き家等の活用を進めるととも えるだけでなく、人々の日常生活における時間 に、全期間固定金利の住宅ローン【フラット の使い方に大きな変化をもたらすものであり、 35】におけるこどもの人数に応じた金利引下 その更なる導入・定着は不可欠である。 げ、入居や生活に関する相談等を行う居住支援 国土交通省では、総務省、厚生労働省、経済 法人への支援等、住宅支援の強化に取り組んで 産業省とともにテレワーク関係4省をはじめと いる。 する関係府省庁や関係団体からなる「テレワー また、公的賃貸住宅と子育て支援施設等との ク月間実行委員会」において、 毎 年 11 月 を
【関連 URL】 ジェンダー主流化に向けた取組 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000355.html
210 国土交通白書 2026 第1節 ユニバーサル社会の実現
「テレワーク月間」と定め、テレワークの普及 (3)高 速道路のサービスエリアや「道の駅」 促進に向けた広報等を集中的に実施しており、 における子育て応援 周知ポスターやチラシによる PR のほか、テレ 全国の高速道路のサービスエリア及び「道の ワーク関連イベントの開催等を行った。 駅」における子育て応援施設の整備等を推進す また、新たな働き方・住まい方への対応とし る。 て、職住近接・一体の生活圏の形成に向け、テ レワーク拠点整備等の推進を行ったほか、テレ (4)子育てにやさしい移動支援に関する取組 ワークによる働き方の実態やテレワーク人口の 公共交通機関における子連れの方等への優先 定量的な把握を行った。 的な取扱いに関する取組として、鉄道・バス車 内におけるベビーカー利用に適したフリース (2)こどもがのびのびと安全に成長できる環 ペース、駅構内における乳幼児用設備やこども 境づくり 用トイレ等の設置を促進している。タクシーに 「こどもまんなかまちづくり」を加速化させ おいても、(一社)全国子育てタクシー協会に Ⅱ る観点から、こどもの遊び場の確保や、親同 よる子育てタクシードライバーの研修・育成に
第6章 士・地域住民との交流機会の創出に資する都市 取り組んでいる。また、公共交通機関・商業施 公園の整備を推進している。また、こどもをは 設におけるベビーカーの利用環境改善を図るた じめとした公園利用者の安全・安心を確保する め、ベビーカー使用者及び周囲の利用者に対
安全・安心社会の構築 ため、「都市公園における遊具の安全確保に関 し、お互いの理解促進や協力を求めるベビー する指針(改訂第3版) 」等の指針について周 カー利用に関するキャンペーンを実施してい 知を行うとともに、地方公共団体における公園 る。 施設の改築等を支援している。
3 高齢社会への対応 (1)高齢者等が安心して暮らせる生活環境の 公共団体の住宅・福祉部局、居住支援法人、不 整備 動産関係団体、福祉関係団体等で構成される居 高齢者、障害者、低額所得者を含む住宅確保 住支援協議会の設置を促進すること等により、 要配慮者の住まいの確保に向けて、公営住宅の 住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援 計画的な建替え等やストック改善を推進すると 体制の整備をより一層推進している。さらに、 ともに、住宅確保要配慮者の入居を拒まない サービス付き高齢者向け住宅の整備や、先導的 セーフティネット登録住宅(令和7年度末時点 な高齢者等向けの住まいづくり・まちづくり及 で 960,737 戸登録)の活用を進め、地方公共 び高齢者や子育て世帯等の生活支援施設等を導 団体のニーズに応じて家賃低廉化等の支援を 入する市街地再開発事業等に関する取組等を支 行っている。また、「住宅確保要配慮者に対す 援している。 る賃貸住宅の供給の促進に関する法律」等に基 づき、居住支援法人等が入居中サポートを行う (2)高齢社会に対応した輸送サービスの提供 賃貸住宅(居住サポート住宅)の供給や、地方 高齢化が進展する我が国では、高齢者、障害
【関連リンク】 子育て支援の取組について URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/sosei_barrierfree_tk_000092.html
国土交通白書 2026 211 第2節 自然災害対策
者等の自立した日常生活や社会参加の機会を確 にするため、地域公共交通確保維持改善事業補 保し、すべての人々が安心して生活することが 助金や税制特例等を活用し、ノンステップバ できるユニバーサル社会の実現が求められてお ス・ユニバーサルデザインタクシー・福祉タク り、高齢者や障害のある人等の輸送をより便利 シー等の導入を促進している。
4 歩行空間における移動支援サービスの普及・高度化 移動支援サービスの普及・高度化に向けて、 様な主体の参画によるデータ整備プラット 令和7年7月に歩行空間ネットワークデータや フォームの試行運用開始に向けて、現地実証等 バリアフリー施設等データなどのオープンデー の対応を行った。そのほか、施策普及のための タ化・利活用促進に向けて「歩行空間の移動支 広報の取組の一環として、8年1月に第3回 援に係るデータのオープンデータ化・利活用促 「歩行空間 DX 研究会シンポジウム」を開催し Ⅱ 進ワーキンググループ」を設置した。また、多 た。 第6章
第2節 自然災害対策 我が国の国土は、気象、地形、地質等が極め 土砂災害のほか、青森県東方沖を震源とする最 安全・安心社会の構築
て厳しい状況下にあり、毎年のように地震、津 大震度6強の地震等、全国各地で様々な災害が 波、風水害・土砂災害等の自然災害が発生して 発生した。また、気候変動の影響による水害・ いる。令和7年度も8月に九州・北陸地方を中 土砂災害の激甚化・頻発化、大規模地震の発生 心に被害が発生した大雨や、10 月に伊豆諸島 等も懸念されることから、自然災害対策の重要 に接近した台風第 22・23 号による浸水被害・ 性はますます高まっている。
1 防災減災が主流となる社会の実現 (1)総力戦で挑む防災・減災プロジェクト 災、国土強靱化等の取組を更に強化する必要が 近年、毎年のように全国各地で地震災害や水 ある。 災害、火山災害等あらゆる自然災害が頻発し、 こうした状況を踏まえ、これまでの災害を教 甚大な被害が発生しており、今後も気候変動の 訓とし、あらゆる自然災害に対し、国土交通省 影響によって水災害の更なる激甚化・頻発化が として総力を挙げて防災・減災に取り組むべ 懸念される中、国民の命と暮らしを守り、我が く、国土交通大臣を本部長とする「国土交通省 国の経済成長を確保するためには、防災・減 防災・減災対策本部」を設置した。「国民目線」
【関連リンク】 住宅セーフティネット制度~誰もが安心して暮らせる社会を目指して~ URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html
【関連リンク】 歩行空間ナビ・プロジェクト - ほこナビ - URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/soukou/sogoseisaku_soukou_mn_000002.html
【関連リンク】 総力戦で挑む防災・減災プロジェクト URL:https://www.mlit.go.jp/river/bousai/bousai-gensaiproject/bousai-gensaiproject.html
212 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
と「連携」をキーワードとして施策の検討を進 (ア)気候変動を踏まえた計画の見直し め、令和2年7月に「総力戦で挑む防災・減災 河川・下水道分野では、計画的に事前防災対 プロジェクト」として主要 10 施策を取りまと 策を進めるために、気候変動の影響による将来 めた。 の降雨量の増加等を踏まえた治水計画への見直 令和3年度以降も、毎年度特に強化すべき しを順次進めている。 テーマを設定し、プロジェクトを取りまとめて 海岸分野では、平均海面水位の上昇や台風の おり、プロジェクトの PDCA サイクルを回し 強大化等を踏まえ、「海岸保全基本方針」の変 ながら、施策の実行に必要な予算要求や制度改 更(令和2年)や海岸保全施設の技術上の基準 正を行い、プロジェクトに盛り込んだ防災・減 の見直し(3年)を実施した。これを受け、各 災対策を着実に推進するとともに災害対応等を 都道府県において海岸保全基本計画の見直しを 踏まえ、プロジェクトの充実・強化を図るなど、 実施し、気候変動を踏まえた海岸保全への転換 継続的に取組を推進し、施策の進捗状況等を踏 を図っていく。 まえ、防災業務計画等への反映を図っている。 また、砂防分野では、土砂災害発生数の増加 Ⅱ また、令和7年度プロジェクトでは、「災害 等の課題・解決の方向性をまとめた「気候変動
第6章 対応力強化のための体制強化と多様な主体との を踏まえた砂防技術検討会令和5年度版とりま 連携の推進」をテーマとし国土交通省としての とめ」を受け、これに基づいた適応策を検討し 体制強化及び多様な主体との連携の推進、そし ている。
安全・安心社会の構築 てそれらを支える情報収集・共有・提供体制の 強化により、国土交通分野全体での災害対応力 (イ)流域治水の加速化・深化 強化を図るべく、特に充実・強化すべき施策を 河川管理者等が主体となって行う治水事業等 取りまとめた。引き続き、災害対応を踏まえ、 を強力に推進するとともに、あらゆる関係者が プロジェクトについて不断の見直しや改善を行 協働して、流域全体でハード・ソフト一体と い、防災・減災に関する取組の更なる充実・強 なった対策を総動員する「流域治水」を推進す 化を図っていく。 る。流域治水では、集水域と河川区域のみなら ず、氾濫域も含めて一つの流域として捉え、地 「流域治水」 (2)気候変動を踏まえた水災害対策 域の特性に応じ、①氾濫をできるだけ防ぐ・減 の推進 らすための対策に加えて、②被害対象を減少さ 気候変動による災害の激甚化・頻発化を踏ま せるための対策や、③被害の軽減、早期復旧・ え、これに対応した治水計画への見直しを行う 復興のための対策をハード・ソフト一体で総合 とともに、施設管理者が主体となって行う河 的、かつ、多層的に進めることとしている。 川、ダム、砂防、下水道等の事前防災対策を加 具体的には、各水系で重点的に実施する治 速させることに加え、あらゆる関係者が協働し 水対策の全体像を取りまとめた「流域治水プロ て、流域全体で「流域治水」の加速化・深化を ジェクト」について、気候変動の影響による降 図る。 雨量の増大を踏まえ、気候変動を踏まえた目標
【関連リンク】 気候変動を踏まえた治水計画のあり方 提言 改訂版【概要】 URL:https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/pdf/r0304/00_gaiyou.pdf
【関連リンク】 「流域治水」の基本的な考え方 URL:https://www.mlit.go.jp/river/kasen/suisin/pdf/01_kangaekata.pdf
国土交通白書 2026 213 第2節 自然災害対策
への見直しに加え、目標とする治水安全度の早 特に、「国土交通省南海トラフ巨大地震対策 期確保に向けてハード・ソフト両面の対策を充 計画」は令和8年1月に改定し、7年7月の 実させた「流域治水プロジェクト 2.0」に、全 「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」(中央 国 109 の1級水系で令和6年度までに更新を 防災会議決定)の変更等を踏まえ、津波や建物 行った。引き続き、堤防整備や河道掘削、ダム、 倒壊等による直接死を減らす「命を守る」対策 遊水地、砂防堰堤などの整備に加え、既存治水 に加え、災害関連死を防止する「命をつなぐ」 施設の能力向上、雨水貯留浸透施設の整備を 対策について取り組んでいる。 通じた流域における貯留・浸透機能の向上、災 害リスクを踏まえたまちづくりや住まい方の工 (4)複合災害への備えの強化 夫、わかりやすい避難情報の提供など、あらゆ 令和6年1月に発生した能登半島地震からの る関係者による、様々な手法を活用した、ハー 復旧・復興の途上にあった被災地では、同年9 ド・ソフト両面の対策の充実を図っていく。 月に発生した記録的な豪雨により、再度、甚大 Ⅱ な被害が発生した。 (3)大規模地震への対応 南海トラフ地震等の大規模地震の発生が切迫 第6章
南海トラフ地震については、令和7年9月に していること、気候変動による水害・土砂災害 地震調査研究推進本部が発表した、「今後 30 年 の発生頻度が高まっていることを踏まえると、 以内にマグニチュード8~9クラスの地震が発 先発の自然災害の影響が残っている状態で後発 安全・安心社会の構築
生する確率が 60 ~ 90%程度以上」と評価さ の自然災害が発生することで、単発の災害に比 れる(令和8年1月1日現在)など、大規模地 べて大きな被害が発生する「複合災害」は、今 震の発生が切迫している状態である。 後、その発生頻度が高まっていくことが想定さ 切迫する大規模地震に対し国土交通省では、 れる。 「応急活動計画」と「発生に備え戦略的に推進 そのため、能登半島での地震、大雨を教訓 する対策」の2本柱で構成される「国土交通省 として、複合災害への備え等を強化するべく、 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策計画」、 「能登半島での地震・大雨を踏まえた水害・土 「国土交通省首都直下地震対策計画」及び「国 砂災害対策検討会」を令和7年1月に設置し、 土交通省南海トラフ巨大地震対策計画」につい 複合災害等による被害を効果的・効率的に防 て、近年の地震における知見等を踏まえ、適宜 止、軽減させるための手法等について検討を進 計画を見直しながら、地震防災対策を推進して め、同年6月に提言をとりまとめた。 いる。
2 災害に強い安全な国土づくり・危機管理に備えた体制の充実強化 (1)水災害対策 り低い低平地に位置しており、洪水氾濫に対す 我が国の大都市の多くは洪水時の河川水位よ る潜在的な危険性が極めて高い。これまで、洪
【関連リンク】 国土交通省における南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策 URL:https://www.mlit.go.jp/river/bousai/earthquake/index.html
【関連リンク】 能登半島での地震・大雨を踏まえた水害・土砂災害対策検討会 https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/kentoukai/noto_kentoukai/index.html
214 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
水を安全に流下させるための河道拡幅、築堤、 治水対策の一つとして河川の地下空間の活用 ダムの整備等の治水対策により、治水安全度は は有効な対策となり得るが、活用状況は限定的 着実に向上してきている。しかしながら、令和 であることから、効率的な整備や維持管理に向 7年も、8月に九州・北陸地方を中心に被害が け、最新の技術的知見を集積することを目的 発生した大雨や、10 月に伊豆諸島に接近した に、「浸水被害軽減に向けた地下空間活用勉強 台風第 22・23 号等による浸水被害・土砂災害 会」を設置し、令和6年6月に「浸水被害軽減 が発生しており、近年毎年のように水災害が発 に向けた地下空間活用のあり方」に関する提言 生している。今後の気候変動の影響による水災 が取りまとめられた。 害の頻発化・激甚化も踏まえ、河川・ダム・下 引き続き、提言を踏まえ、施工、維持管理も 水道の整備等を加速するとともに、流域全体を 踏まえた基準類の充実等を図るとともに地下空 俯瞰し、国・都道府県・市町村、地元企業や住 間を活用した治水対策を推進していく。 民等あらゆる関係者が協働してハード・ソフト 対策に取り組む「流域治水」の取組を強力に推 ③水害の再度災害防止対策 Ⅱ 進する必要がある。 激甚な水害の発生や床上浸水の頻発により、
第6章 人命被害や国民生活に大きな支障が生じた地域 ①計画的に実施する治水対策 等について、再度災害の防止を図るため、河川 気候変動等に伴う水害の激甚化・頻発化を踏 の流下能力を向上させるための河道掘削や築堤
安全・安心社会の構築 まえて、事前防災対策を計画的に実施すること 等を短期集中的に実施するなどの対応を行って が重要である。このため、築堤、河道掘削、遊 いる。 水地、放水路、ダム等の整備を計画的に推進し ている。そのうち、既存ストックの有効活用と ④流域の特性等を踏まえた様々な治水対策 して、ダムの貯水容量を増加させるためのかさ (ア)流域関係者が連携した流域での取組 上げや放流設備の増設による機能向上等のダム 集水域においては、公共に加え、民間による 再生、大雨が見込まれる場合に利水容量の一部 雨水貯留浸透施設の整備促進や水田に降った雨 を事前に放流して空き容量を確保する事前放流 を一時的に貯留する取組(「田んぼダム」 )、た 等に取り組んでいる。 め池の活用、また特定都市河川流域における貯 また、首都圏・近畿圏のゼロメートル地帯等 留機能保全区域の指定等により流域での貯留を においては、まちづくりと一体で高規格堤防を 強化し、河川への雨水の流出を抑制することで 整備している。高規格堤防は幅を広くなだらか 氾濫をできるだけ防ぐ・減らすための対策を推 な勾配で整備することで堤防の決壊を防ぐとと 進する。また、氾濫域における土地利用や住ま もに、高台の避難場所としての機能や良好な住 い方についての対応も重要である。例えば、災 環境・都市空間が提供されるなど多様な効果の 害危険区域の指定や、特定都市河川流域におけ 発揮が期待される。 る浸水被害防止区域の指定等により、災害リス クを抱えた地域において発災前の段階からより ②地下空間を活用した治水対策の推進 安全なエリアへの住居や施設の移転、人口動態 気候変動の影響による水害の激甚化・頻発化 や土地利用等を踏まえた居住誘導、立地適正化 に対応するため、全国の水系で河川整備基本方 計画の防災指針に基づく居住の安全性強化等の 針等の見直しを進めているが、新たな河道掘削 防災対策を推進し、安全なまちづくりを促進し 等の治水対策は、地形条件、社会的影響等から ていく。 一定の限界があることも想定される。
国土交通白書 2026 215 第2節 自然災害対策
(イ)内水対策 村長が施設管理者等に対して必要な助言・勧告 近年、計画規模を上回る局地的な大雨等の多 を行うことができる制度が創設された。国土交 発や、都市化の進展による雨水流出量の増加 通省としては、水災害の防止・軽減を図るた 等、内水氾濫の被害リスクが増大している。こ め、こうした自衛水防の取組を推進している。 のため、河道掘削等の水位を下げる取組や、雨 水幹線やポンプ施設等の下水道整備をはじめ、 ⑦洪水時の予報・警報の発表や河川情報の提供 雨水流出抑制対策等のハード対策の加速化に加 国土交通大臣又は都道府県知事は、流域面積 え、特定都市河川制度を活用した浸水リスクが が大きい河川で洪水によって国民経済上重大又 高い区域における土地利用・住まい方の工夫、 は相当な損害が生じるおそれのある河川を洪水 内水ハザードマップの作成、止水板や土のうの 予報河川として指定し、気象庁長官と共同して 設置等のソフト対策の充実により、流域のあら 水位又は流量を示した洪水予報を発表してい ゆる関係者が一体となった総合的な浸水対策を る。令和5年5月 31 日に公布された「気象業 Ⅱ 推進している。 務法及び水防法の一部を改正する法律」によ り、国から都道府県に対して都道府県管理河川 第6章
⑤水防体制の強化 の水位予測情報を提供する仕組みが構築され、 水防管理団体等と連携し、出水期前に洪水に 都道府県管理河川でもバックウォーターを考慮 対しリスクの高い区間の共同点検を実施すると した長時間先の水位予測情報の活用が可能とな 安全・安心社会の構築
ともに、水防技術講習会、水防演習等を実施 ることにより、新たな洪水予報河川の指定促 し、水防技術の普及を図るなど、水害による被 進、洪水予報の早期化が期待される。また、洪 害を最小限にするための水防体制の強化に向け 水予報河川以外の主要な河川を水位周知河川と た支援を行っている。 して指定し、洪水時に氾濫危険水位(洪水特別 また、市町村地域防災計画に位置付けられた 警戒水位)への到達情報を発表している。7年 浸水想定区域内の地下街等(建設予定・建設中 3月末現在、洪水予報河川は 436 河川、水位 のものを含む)、要配慮者利用施設、大規模工 周知河川は 1,813 河川が指定されている。さら 場等における避難確保・浸水防止計画作成等の に、国が管理する洪水予報河川を対象に洪水情 取組を支援している。 報のプッシュ型配信も行っている。このような 河川を対象にした情報のほか、洪水によって災 ⑥自衛水防の取組の推進 害が起こるおそれがある場合に、国土交通省令 市町村地域防災計画に定められた社会福祉施 で定める予報区を対象に気象庁は警報等を発表 設、学校、医療施設等の要配慮者利用施設につ している。 いては、 「水防法」及び「土砂災害警戒区域等 また、令和 7 年 12 月の水防法改正により、 における土砂災害防止対策の推進に関する法 氾濫の発生による著しい危険が切迫し、命の危 律」(以下、「土砂災害防止法」という。)によ 険から直ちに身の安全を確保することが必要な り、当該施設管理者等に洪水・土砂災害等に対 緊急的な状況下における河川管理者等による氾 する避難確保計画の作成及び避難訓練の実施が 濫等の通報が明確に規定された。この河川管理 義務付けられている。また、令和3年の「水防 者等が行う迅速な通報が水防管理者や市町村長 法」及び「土砂災害防止法」の改正により、要 による緊急安全確保措置の指示等に的確に活用 配慮者利用施設における避難の実効性確保のた されることにより、住民の安全確保に向けた対 め、避難確保計画や避難訓練の結果を市町村長 応強化を図っている。 へ報告することを義務付け、報告を受けた市町 雨量観測については、適切な施設管理や防災
216 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
活動等に役立てるために、高分解能・高頻度に ⑧水害リスク情報の充実 集中豪雨や局地的な大雨を的確に把握できる国 令和3年の「水防法」改正により、住宅等の 土交通省 XRAIN(高性能レーダー雨量計ネッ 防護対象のあるすべての一級・二級河川につい トワーク)での観測を行っており、インター て、想定最大規模の降雨に対応した洪水浸水想 ネット上でもほぼリアルタイムにレーダー雨量 定区域の指定・公表の対象に追加された。 情報の提供を行っている。 都道府県が実施する洪水浸水想定区域の指 また、国管理河川においては、災害の切迫感 定・公表及び市町村が実施する洪水ハザード をわかりやすく伝えるため、雨量や観測水位を マップの作成・公表について、防災・安全交付 基に、河川の上下流連続的な水位を推定し、堤 金により支援している。 防等の高さとの比較により危険度を表示する、 洪水浸水想定区域については、すべての洪水 洪水の危険度分布(水害リスクライン)を公表 予報河川及び水位周知河川で指定・公表済み している。また、洪水予報河川以外の河川を対 であり、それ以外の住宅等の防護対象のある一 象に、河川の上流域の降雨が地表面や地中を 級・二級河川(以下「中小河川」という。 )の Ⅱ 注2 通って河川を流れ下る流量を指数化し、過去の 約 79% において指定・公表済みである。洪水
第6章 災害時の指数値と比較して洪水危険度を表した ハザードマップ(想定最大規模の降雨)につい 「洪水キキクル」を公表しており、これらの洪 ては、中小河川の洪水浸水想定区域が指定され 水危険度を気象庁ウェブサイトにおいて一体的 ている市区町村の約 67%注 3 で作成済みである。
安全・安心社会の構築 に表示している。なお、この「洪水キキクル」 ハザードマップは、住民の避難に役立つこと においても、危険度が上昇したときに、希望者 が期待されており、ハザードマップを見なが 向けのプッシュ型通知を民間事業者と協力して ら、避難先の確認や避難準備をするなど、住民 実施している。 一人ひとりが取るべき行動を時系列で整理す 河川の水位やカメラ画像、洪水予報、水防警 る「マイ・タイムライン」の作成支援を行って 報等の河川情報や、河川の水位に影響を及ぼす いる。その一方で、情報の理解には一定のハー 雨量等の気象データや気象警報等の発表状況に ドルがあるとともに、利用者の多様な特性に対 ついては、国土交通省「川の防災情報」ウェブ 応する必要があるため、ハザードマップのユニ サイトより、リアルタイムで河川管理者、市町 バーサルデザインに関する検討会を行い「わか 村、住民等に提供を行っており、洪水時の警戒 る・伝わる」ハザードマップのありかたにつ や避難等に役立てられている。 いて報告書を取りまとめ、公表するとともに、 また、河川の水位等の河川情報をデータ配信 「水害ハザードマップ作成の手引き」を改定し、 し、民間企業によりウェブサイトやアプリを通 市町村へ周知している。この取組の一環として じて配信する等、メディア等と連携した防災情 「重ねるハザードマップ」のウェブサイトを改 報の発信を推進するとともに、アプリ等を活用 良し、誰でも簡単に災害リスクと災害時に取る して離れて暮らす家族の住む地域の防災情報を べき行動が分かるよう公開している。 プッシュ型で入手し、直接電話をかけて避難を また、浸水範囲と浸水頻度の関係をわかりや 呼びかける「逃げなきゃコール」等により、住 すく図示した「水害リスクマップ(浸水頻度 民の適切な避難行動等を支援する取組の高度化 図)」について外水に加え内水も考慮したもの を図っている。 の整備を推進し、水害リスク情報の充実を図り、
注2 令和7年7月末現在。 注3 令和7年7月末現在(洪水浸水想定区域が指定されている河川が存在する市区町村において、1河川以上の浸水想定区 域図に対応したハザードマップを公表している市区町村数) 。
国土交通白書 2026 217 第2節 自然災害対策
防災・減災のための土地利用等の促進を図る。 つつ、主要な河川構造物については長寿命化計 さらに、このような水害リスク情報等の提供 画を策定し、計画的に施設の修繕や更新等を行 を通じて、民間企業における「気候関連財務情 うこととしている。あわせて、長寿命化のために 報開示タスクフォース」(TCFD)への対応等 必要な技術開発等を進めている。また、中小河 の気候変動リスク開示の取組を支援する。 川についても適切に維持管理が実施されるよう、 維持管理に関する技術基準等の検討を都道府県 ⑨災害伝承の取組 等と連携して進めているほか、各地方整備局等 水災害から命を守り、被害を最小化にするた に相談窓口を設け、技術支援等を行っている。 めには、住民一人ひとりが水災害リスクを「自 分事」として考え、主体的な避難行動や防災行 ⑪河川における不法係留船対策 動をとることが重要であるとの観点から、「地 河川において不法係留船は、河川管理上の支 域で発生した災害の状況をわかりやすく伝える 障(河川工事実施の支障、洪水時の流下阻害、 Ⅱ 施設」や「災害の教訓を伝承する語り部といっ 河川管理施設の損傷、燃料漏出による水質汚 た活動」等を内閣府防災担当大臣及び国土交通 濁、河川利用の支障等)となるため、その所有 第6章
大臣が認定する「NIPPON 防災資産」につい 者等に対し、適法な係留・保管施設への移動を て、令和7年 12 月に第2回認定として、10 件 指導するとともに、必要に応じて所有者に代わ (優良認定:6件、認定:4件)を新たに認定 り行政代執行等を実施して、不法係留船の解消 安全・安心社会の構築
した。本認定制度を通じ、各地域において、過 に取り組んでいる。 去の災害の教訓や今後の備えに対する理解を深 なお、これまでの放置艇対策を踏まえ、令和 めてもらうことで、水害リスクの自分事化を図 6年3月に「三水域(港湾・河川・漁港)にお るとともに、地域の防災力の更なる向上につな けるプレジャーボートの適正な管理を推進する げていく。 ための今後の放置艇対策の方向性」を策定し、 取組を推進しているところである。 ⑩河川の戦略的な維持管理について 樋門、水門、排水機場等の河川管理施設が洪 ⑫道路における洪水・冠水対策 水時等に所要の機能を発揮できるよう、施設の 道路においては、近年の豪雨被害を踏まえ、 状態を把握し、適切な維持管理を行う必要があ 渡河部の橋梁や河川に隣接する道路構造物の流 る。河川整備の推進により管理対象施設が増加 失防止対策を行うとともに、各道路管理者、警 してきたことに加え、今後はそれら施設の老朽 察、消防等とアンダーパス等の冠水危険箇所に 化が加速的に進行する中、「河川法」では、管 関する情報を共有し、情報連絡及び通行止め体 理者が、施設の点検を適切な頻度で行うことや 制を構築するとともに、冠水の警報装置や監視 施設を良好な状態に保つように維持・修繕する 施設の整備、ウェブサイト注 4 による冠水危険箇 ことが明確化されている。 所の公開等を推進している。 このことから、河川管理施設等の維持管理は、 機能に支障が生じてから対策を行う従来の事後 ⑬上下水道の耐水化等 保全型から、点検等により状態を把握して適切 水道では、近年頻発する豪雨等に伴い発生す な時期に対策を行う予防保全型への転換を図り る浸水被害に対してや、給水停止すると影響が
注 4 「道路防災情報ウェブマップ」ウェブサイト:
https://www.mlit.go.jp/road/bosai/doro_bosaijoho_webmap/index.html
218 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
大きい重要性の高い浄水場に防水扉の整備を図 を待たずに断水が解消され、水害等の災害時の るなど、大規模かつ長期的な断水のリスクを軽 断水対応としての有効性が示された。 減させる対策を実施している。また、国土強靱 下水道では、令和元年東日本台風や令和2年 化実施中期計画に浸水災害対策の指標を設定 7月豪雨において、河川からの氾濫や内水氾濫 し、浸水対策の加速化を進めるとともに、浸水 の発生により、下水処理場、ポンプ場の浸水に への備え等を盛り込んだ危機管理対策マニュア 伴う機能停止等の被害が発生したことを踏ま ル策定指針を公表することで、水道事業者等に え、耐水化を検討する上での浸水深の設定方法 対する技術的支援を実施している。 や効果的・効率的な対策手法等を通知するとと また、令和7年台風第 22 号においては、東 もに、耐水化計画に基づき、早期にポンプ設備 京都八丈町で土砂崩れによる導水管の破損等が 等の耐水化を目指すとともに、浸水への備えを 発生し、最大約 4,100 戸が断水したが、可搬式 盛り込むなどの BCP(業務継続計画)の見直 浄水施設を活用することにより、導水管の復旧 しを実施している。 Ⅱ (2)土砂災害対策
第6章 「いのち」と・「くらし」・「産業・なりわい」を守る土砂災害対 図表Ⅱ-6-2-1 我が国は、平地が少な 策の推進 く急峻な地形と脆弱な地 質が広く分布しており、
安全・安心社会の構築 さらに経済の発展・人口 の増加に伴い、丘陵地や 山麓斜面にまで宅地開発 等が進展している。土砂 災害が発生するおそれが ある箇所は令和7年3月 末時点で約 70 万か所存 在することが明らかにさ れており、多くの人々が 土砂災害の危険にさらさ れている。豪雨や地震等 に伴う土砂災害は、過去 10 年(平成 27 年〜令和6年)の平均で、1年 震・9 月 20 日からの大雨等を踏まえ、従来の 間に 1,524 件発生しており、それ以前の 10 年 砂防関係施設整備による事前防災対策や、土砂 (平成 17 年〜平成 26 年)に比べておよそ 1.5 災害警戒区域等の指定及び標識の設置等による 倍の発生件数となっている。7年は 578 件と 土砂災害リスクに関する周知に加えて、林野部 例年の 3 分の 1 程度にとどまったが、岩手県大 局と連携した流域流木対策や、防災まちづくり 船渡市等における林野火災や、霧島連山の新燃 の計画と一体的に実施する土砂災害対策、道路 岳で噴火活動が活発化するなど豪雨や地震のみ や上下水道施設等の公共インフラ・ライフライ ならず様々な要因により土砂災害が発生するお ン保全対策、地域を支える「産業・なりわい」 それがあった。 を保全する土砂災害対策等、関係部局と連携し 今後の気候変動に伴う降雨の増加による土砂 た効果的・効率的な土砂災害対策を推進してい 災害の頻発化・激甚化や令和6年能登半島地 る。
国土交通白書 2026 219 第2節 自然災害対策
①根幹的な土砂災害防止施設の整備 ことができる制度とすることで、施設利用者の 近年の大規模な土砂災害では、人命だけでな 円滑かつ迅速な避難の確保が図られるよう支援 く道路やライフライン等の公共インフラが被災 を行っている。 し、応急対策や生活再建に時間を要する事例が 多数生じている。土石流や土砂・洪水氾濫等の ④市街地に隣接する山麓斜面における土砂災害 大規模な土砂災害から、人命はもちろん地域の 対策 社会・経済活動を支える公共インフラ・ライフ 山麓斜面に市街地が接している都市におい ライン、地域を支える「産業・なりわい」を保 て、土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都 全するため、土砂災害防止施設の整備を推進し 市環境と景観を保全・創出するために、市街地 ている。 に隣接する山麓斜面にグリーンベルトとして一 連の樹林帯の形成を図っている。 ②土砂災害発生地域における緊急的な土砂災害 Ⅱ 対策 ⑤道路の法面・盛土の土砂災害防止対策 土砂災害により人命被害や国民の生活に大き 高度化された点検手法等により把握した災害リ 第6章
な支障が生じた地域において、安全・安心を確 スク等に対し、法面・盛土対策を実施している。 保し、社会経済の活力を維持・増進していくた また、令和6年能登半島地震を踏まえた盛土 め、再度災害防止を目的とした土砂災害防止施 対策を実施している。 安全・安心社会の構築
設の集中的な整備を推進している。 ⑥地域防災力向上に資する土砂災害対策 ③要配慮者の円滑かつ迅速な避難の確保 土砂災害リスクが高い地域において、地域社 自力避難が困難な高齢者や幼児等は、日本の 会の維持・発展を図るため、人命を守るととも 人口の約3割(総務省統計局『人口推計(2024 に、避難場所や避難路、役場等の地域防災上重 年(令和6年)10 月1日現在)』より算出)に 要な役割を果たす施設を保全する土砂災害防止 もかかわらず過去 20 年間の土砂災害による死 施設の整備を推進している。また、リスク情報 者行方不明者の約半分を占めている。このため の提示等、避難体制の充実・強化に係る取組 「土砂災害防止法」に基づき、土砂災害警戒区 や、「ダイナミック SABO プロジェクト」によ 域内に位置する要配慮者利用施設のうち、市町 り砂防を活用した防災啓発・地域活性化の取組 村地域防災計画に名称及び所在地等を定められ に対して支援している。 た施設の管理者等に対し避難確保計画の作成及 び計画に基づく訓練の実施・報告を義務付けて ⑦土砂災害警戒区域等の指定等による土砂災害 いる。また、それらの報告を受けた市町村長が 対策の推進 施設管理者等に対して必要な助言・勧告を行う 「土砂災害防止法」に基づき、土砂災害が発
【関連リンク】 砂防関係施設と警戒避難の効果事例 URL:https://www.mlit.go.jp/river/sabo/shisetsu_kouka/koukajirei/index.html
【関連データ】 土砂災害による死者・行方不明者に占める高齢者、幼児等の割合(平成 18 年~令和7年) URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
【関連リンク】 ダイナミック SABO プロジェクト URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/dynamic_sabo.html
220 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
生するおそれがある土地の区域を明らかにする ため、今後の基礎調査においてより詳細な地形 ため、法に基づく基礎調査を行い、土砂災害に 図データを用いることとした。さらに、土砂災 より住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそ 害警戒区域等の認知度向上を図るため、標識の れのある区域を土砂災害警戒区域に、建築物に 設置等の取組を推進している。 損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害 土砂災害警戒区域においては、市町村地域防 が生ずるおそれのある区域を土砂災害特別警戒 災計画に避難場所、避難経路等に関する事項を 区域に指定している。土砂災害警戒区域にかか 定めるなどにより警戒避難体制の整備を図ると る基礎調査は令和元年度末までに一通り完了 ともに、土砂災害特別警戒区域においては、一 し、それらの箇所については3年度末までに区 定の開発行為の制限、建築物の構造規制等を図 域指定をおおむね完了している。また、近年の るなどのソフト対策を講じている。また、警戒 土砂災害の発生状況等を踏まえた社会資本整備 避難体制の整備やハザードマップの作成のため 審議会からの答申を受け、2年8月に土砂災害 のガイドラインや事例集を示し、市町村におけ 対策基本指針を変更し、土砂災害警戒区域等の る土砂災害に対する取組を促進している。 Ⅱ 指定基準を満たす箇所の抽出精度を向上させる
安全・安心社会の構築 ⑧大規模な土砂災害への対応 の連携強化を推進するほか、このような大規模 河道閉塞や火山噴火に伴う土石流等のおそれ な土砂災害のおそれを早期に把握するため、人 がある場合には、 「土砂災害防止法」に基づく 工衛星の活用を行っている。 緊急調査を行い、被害が想定される土地の区域 及び時期の情報を市町村へ提供している。ま ⑨土砂災害警戒情報の発表 た、緊急調査を含め災害対応力の強化を図るた 大雨による土砂災害発生の危険度が高まった めの検討を進めるとともに、訓練や関係機関と ときに、市町村長が警戒レベル4避難指示を発
【関連リンク】 警戒避難体制の構築 URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/keikaihinan.html
【関連リンク】 土砂災害警戒情報・土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布) URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/doshakeikai.html
【関連リンク】 土砂災害警戒情報 URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/sabo_ken_link.html
国土交通白書 2026 221 第2節 自然災害対策
令する際の判断や住民の自主避難の参考となる ため、「火山砂防ハザードマップ(火山ハザー 情報を対象となる市町村等を特定し、土砂災害 ドマップのうち、土砂災害に関するもの) 」を 警戒情報(令和8年5月下旬からレベル4土砂 整備することにより、火山防災協議会における 災害危険警報に名称を統一予定)として都道府 一連の警戒避難体制の検討を支援している。 県と気象庁が共同で作成・発表している。さら 火山噴火の際に噴火前後の比較による迅速な に、都道府県知事に対しては、土砂災害警戒情 状況把握を可能とするため、測量用航空機に搭 報の関係市町村長への通知及び一般への周知を 載した SAR 観測機器を用いて、全国の活動的 義務付けており、情報伝達体制の確立を図って な火山を対象とした周期的な観測を実施してい いる。また、土砂災害警戒情報を補足する情報 る。 として、土砂災害発生の危険度をより詳細に示 また、火山噴火リアルタイムハザードマップ した土砂災害危険度情報等を提供している。 システムの整備を行い、浅間山や富士山をはじ めとした 16 火山を対象に運用するなど(令和 Ⅱ (3)火山災害対策 7年度末時点)、噴火時に自治体を支援する取 ①活発な火山活動に伴う土砂災害への対策 組を推進している。 第6章
火山噴火活動に伴い発生する火山泥流や降灰 後の降雨による土石流等に備え、被害を防止・ ②活発な火山活動に伴う降灰対策 軽減する砂防堰堤や導流堤等の整備を進めてい 道路においては、噴火に伴う路上への降灰が 安全・安心社会の構築
る。また、継続的かつ大量の土砂流出により適 交通の支障になるなど、社会的影響が大きいこ 正に機能を確保することが著しく困難な施設 とから、路面清掃車による迅速かつ的確な除灰 は、除石等を行い機能の確保を図っている。 作業を行うための体制整備を推進している。 火山噴火活動に伴う土砂災害は、大規模とな るおそれがあるとともに、あらかじめ噴火位置 ③気象庁における取組 や規模を正確に予測することが困難であること 火山噴火災害の防止と軽減のため、全国 111 から、被害が大きくなる傾向にある。このた の活火山について、火山活動の監視を行い、噴 め、活発な火山活動等があり噴火に伴う土砂災 火警報等の迅速かつ的確な発表に努めている。 害のおそれがある 50 火山を対象として、事前 そのうち 51 火山については、観測施設を整備 の施設整備とともに噴火状況に応じた機動的な し、24 時間体制で火山活動を監視している(常 対応によって被害を軽減するため「火山噴火緊 時観測火山)。 急減災対策砂防計画」の策定、及び訓練等を通 また、平成 26 年9月の御嶽山の噴火災害を じ見直しを進めている。また、「活動火山対策 踏まえた「活動火山対策特別措置法」の改正等 特別措置法」においては、火山防災協議会の構 による火山防災協議会の必須構成員として、警 成員となる都道府県及び地方整備局等の砂防部 戒避難体制の整備に必要な事項である噴火警戒 局が、噴火に伴う土砂災害の観点から火山ハ レベルについて、常時観測火山のうち 49 火山 ザードマップの検討を行うこととなった。その で運用するとともに改善を進めている。
【関連リンク】 火山噴火緊急減災対策砂防計画の策定状況 URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/kazan_kinkyugensai_all.pdf
【関連リンク】 火山の監視 URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/intro/gyomu/index92.html
222 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
④海上保安庁における取組 向上する研究や、それらの観測データの解析結 南方諸島及び南西諸島の海域火山について、 果から火山活動のメカニズムを解明する研究を 航空機による変色水等の観測を行い、航行船舶 行っている。 に情報を提供している。また、海域火山の活動 状況を把握するための基礎資料とするため、測 (4)高潮・侵食等対策 量船による海底地形の調査を行っている。 ①高潮・高波対策の推進 令和7年9月1日に、硫黄島の西岸で噴火が 頻発する高潮や高波による災害等から人命や 発生した。海上保安庁では翌2日に航空機によ 財産を守るため、海岸堤防の整備等のハード対 る観測を実施して噴火状況を確認するととも 策を行うとともに、「水防法」に基づく水位周 に、航行船舶への情報提供として航行警報を発 知海岸及び高潮浸水想定区域の指定等のソフト 出した。海上保安庁では、今後も海域火山観測 対策を推進しており、令和3年には高潮浸水想 を実施していく。 定区域の指定対象を拡大し、浸水リスク情報の 空白域を解消するために、「水防法」が改正さ Ⅱ ⑤国土地理院における取組 れた。この「水防法」改正を踏まえ、高潮浸水
第6章 (ア)火山活動観測・監視体制の強化 想定区域図作成の手引きを改定した。8年3月 全国の活動的な火山において、電子基準点 末までに 31 都道府県で高潮浸水想定区域図が 注5 (GNSS 連続観測施設)や可搬型 GNSS 連続 公表されている。
安全・安心社会の構築 観測装置(REGMOS)等による GNSS 連続観 また、港湾において、官民の関係者が気候変 測を実施し、地殻の三次元的な監視を行って 動への適応水準や適応時期に係る共通の目標等 いる。さらに、他機関の GNSS 観測データを を定めるとともに、協定等に基づきハード・ソ 合わせた統合解析や、陸域観測技術衛星2号 フト一体の各種施策を進める「協働防護」につ 「だいち2号」(ALOS-2)及び先進レーダ衛星 いて、令和7年に「港湾法」を改正し、協働防 「だいち4号」 (ALOS-4)のデータを使用した 護協議会や協働防護計画等の制度的枠組みを構 注6 SAR 干渉解析 により、火山周辺の地殻変動を 築した。計画作成に係る予算補助や民有港湾施 より詳細に監視している。 設への税制特例措置、ガイドライン等の技術面 の支援も含め、取組を推進する。 (イ)火山周辺の地理空間情報の整備 火山特有の地形等を詳細に表した火山基本図 ②海岸侵食対策の推進 や火山の地形分類を表した火山土地条件図の整 様々な要因により全国各地で海岸侵食が生じ 備・更新を行っている。 ていることから、離岸堤・突堤等の整備や養浜 等に加え、河川、海岸、港湾、漁港の各管理者 (ウ)火山噴火等に伴う自然災害に関する研究等 間で連携したサンドバイパス注 7 やサンドリサイ GNSS や干渉 SAR 等の観測と解析の精度を クル等注 8 の侵食対策を進めている。
【関連リンク】 日本列島の地殻変動 URL:https://www.gsi.go.jp/kanshi/
注 5 Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム。 注 6 人工衛星で宇宙から地球表面の変動を監視する技術。 注7 海 岸の構造物によって砂の移動が断たれた場合に、上手側に堆積した土砂を、下手側海岸に輸送・供給し、砂浜を復元 する工法。 注 8 流れの下手側の海岸に堆積した土砂を、侵食を受けている上手側の海岸に戻し、砂浜を復元する工法。
国土交通白書 2026 223 第2節 自然災害対策
③高潮にかかる防災気象情報の提供 の構築等のソフト対策を推進している。水門・ 気象庁では、高潮による災害のおそれがある 陸閘等については、「海岸法」において操作規 場合には高潮特別警報、高潮警報、高潮注意 則の策定を義務付けており、 「津波・高潮対策 報を発表して警戒・注意を呼びかけるととも における水門・陸閘等管理システムガイドライ に、高潮にかかる防災気象情報の改善を進めて ン」により、現場操作員の安全の確保を最優先 いる。台風や発達した低気圧等の接近に伴う高 した上で、津波・高潮等の発生時に水門等の操 潮災害では、潮位が上昇する前に風が強まり屋 作を確実に実施できる管理体制の構築を図って 外への立退き避難が困難な状況となることがあ いる。 り、暴風が吹き始める前に避難を完了すること 港湾の津波対策においては、大規模津波発生 が重要である。このため、警戒レベル4避難指 時にも港湾機能を維持するため、「粘り強い構 示を発令する目安となる高潮警報について、暴 造」の防波堤の整備や航路啓開訓練、大規模災 風が吹き始める時間帯も考慮して十分なリード 害発生後における緊急物資輸送等のための海上 Ⅱ タイムを確保して発表する運用をしている。 支援ネットワークの形成等、防災・減災対策を また、令和7年 12 月の気象業務法及び水防 推進している。また、津波防災等の分野で顕著 第6章
法の改正を受け、高潮により国民経済上重大な な功績を挙げた方々を表彰する「濱口梧陵国際 損害を生ずるおそれがあるものとして国土交通 賞」授賞式を開催し、津波防災に係る普及啓発 大臣が指定した海岸において、国土交通大臣・ 活動を行っている。 安全・安心社会の構築
気象庁長官・都道府県知事が共同して、波の打 道路の津波対策においては、高規格道路の未 上げの要素を加味した指定海岸高潮予報の運用 整備区間の整備及び4車線化、高規格道路と直 を8年5月下旬に開始した。 轄国道とのダブルネットワーク化等による道路 ネットワークの機能強化対策を進め、津波の発 (5)津波対策 生に対して代替路となる経路の確保を推進して ①津波対策の推進 いるほか、緊急時の一時的な避難場所を確保す 南海トラフ巨大地震等による大規模な津波災 るため、直轄国道の高架区間等を避難場所等と 害に備え、最大クラスの津波に対しては「津波 して活用するための緊急避難施設の整備を実施 防災地域づくりに関する法律」に基づき、ハー し、防災機能の強化を図っている。 ドとソフトの施策を組み合わせた多重防御によ 空港の津波対策においては、津波被災の可能 る対策を進めており、津波浸水想定の設定、ハ 性のある空港において、津波被災後に早期に緊 ザードマップの作成、津波災害警戒区域等の指 急物資・人員の輸送拠点機能を確保するため 定、推進計画の作成、避難計画の立案等におい の、地震・津波に対応する避難計画・早期復旧 て地方公共団体を支援している。 計画を策定し、計画に基づき避難訓練等の取組 また、地方公共団体の津波防災地域づくりに や関係機関との協力体制構築等の取組を推進し 関する取組を支援する相談窓口を国に設け、ワ ている。 ンストップで相談・提案を行う体制を構築して 鉄道の津波対策においては、南海トラフ巨大 いる。 地震等による最大クラスの津波からの避難の基 海岸の津波対策においては、堤防の損傷等を 本的な考え方(素早い避難が最も有効かつ重要 軽減する機能を発揮する粘り強い構造の海岸堤 な対策であること等)を踏まえた津波発生時に 防等の整備や耐震化、水門・陸閘等の統廃合や おける鉄道旅客の安全確保への対応方針と具体 自動化・遠隔操作化等のハード対策を行うとと 例等を取りまとめており、鉄道事業者における もに、水門・陸閘等の安全かつ確実な操作体制 取組を推進している。
224 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
その他、切迫する巨大地震・津波等に備え、 等を通じて、地方公共団体が実施する避難場 津波浸水リスクの高い地域等において、河川堤 所・避難経路等の整備を支援している。 防のかさ上げ、液状化対策、復興まちづくりの ための事前準備等を推進している。 ④避難地となる防災公園等の整備 立地適正化計画に定める防災指針等において ②津波に係る防災情報の提供 津波又は風水害からの避難地としての機能を確 津波による災害の防止・軽減を図るため、気 保することが位置付けられた防災公園等の整備 象庁は、全国の地震活動を 24 時間体制で監視 を推進している。 し、津波警報、津波情報等の迅速かつ的確な発 表に努めている。また、気象庁や関係機関が運 ⑤官庁施設における津波対策 用する海底津波計、GPS 波浪計及び沿岸の津 「津波対策の推進に関する法律」(平成 23 年 波観測点のデータを監視し、津波警報の更新や 法律第 77 号)の制定を受け、「大津波等を想 津波情報等に活用している。令和7年度には、 定した官庁施設の機能確保の在り方について」 Ⅱ 国立研究開発法人防災科学技術研究所が高知県 (平成 25 年2月社会資本整備審議会答申)にお
第6章 沖から日向灘に整備した「南海トラフ海底地震 いて、津波襲来時における人命の安全確保、防 津波観測網(N-net)」の沿岸システムの津波 災拠点としての機能維持と行政機能の早期回復 観測データを 7 年 11 月から活用開始するとと を図ることを目標とし、ソフト対策(避難計画
安全・安心社会の構築 もに、8年3月には、気象庁が新たに 9 地点に の策定等)とハード対策(改修等)の一体的な 整備した巨大津波観測計による津波の観測を開 実施により津波防災機能強化を図る考え方が示 始し、津波警報等の更新、津波情報の発表の迅 された。同答申を踏まえ、官庁施設を運用管理 速化や精度向上を図った。 する機関と連携しつつ、官庁施設の総合的かつ また、聴覚障害者や遊泳中の人等への情報伝 効果的な津波対策を推進している。 達手段として「津波フラッグ(赤と白の格子模 様の旗)」の全国的な周知・普及を推進してい (6)地震対策 る。 ①住宅・建築物の耐震・安全性の向上 船舶の津波対策に役立てるため、海上保安庁 令和 17 年までに耐震性が不十分な住宅を、 は、海底地形データの提供を行い、自治体等に 12 年までに耐震性が不十分な要緊急安全確認 よる津波浸水想定の設定や津波ハザードマップ 大規模建築物を、それぞれおおむね解消とする の作成を支援している。 目標等を掲げ、 「建築物の耐震改修の促進に関 する法律」に基づく、耐震診断の義務付けのほ ③津波避難対策 か、地方公共団体と連携し、耐震化に向けた普 将来、南海トラフ巨大地震をはじめとする巨 及啓発、耐震診断・耐震改修等に要する費用の 大地震の発生による津波被害が懸念されること 補助、税制優遇、融資等による支援を行ってい から、都市計画の基礎的なデータを活用した避 る。ブロック塀等については、所有者等に向け 難施設等の適正な配置を行うための方法を取り た安全点検チェックポイントの周知を行うとと まとめた技術的な指針を平成 25 年6月に策定 もに、耐震診断や除却・改修等に要する費用へ し、公表するとともに、都市防災総合推進事業 の支援等により、安全確保の推進を図っている。
【関連リンク】 令和 6 年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会 URL:https://www.nilim.go.jp/lab/hbg/iinkai/notohantouzisinniinnkai/notoiinkai.html
国土交通白書 2026 225 第2節 自然災害対策
令和6年能登半島地震による被害の発生を受 する狭あい道路の拡幅等のハード対策及び感震 けて、6年2月に建築構造の専門家等からなる ブレーカーの設置や防災マップの作成、訓練の 「令和6年能登半島地震における建築物構造被 実施等の地域防災力の向上に資するソフト対策 害の原因分析を行う委員会」を国立研究開発法 を推進している。 人建築研究所とともに設置し、被害の特徴と要 因の分析を行うとともに、対策の方向性を示し ⑤オープンスペースの確保 た最終とりまとめを7年 12 月に公表した。 防災機能の向上により安全で安心できる都市 づくりを図るため、地震災害時の復旧・復興拠 ②宅地耐震化の推進 点や物資の中継基地等となる防災拠点、市街地 大地震等による盛土造成地の滑動崩落や宅地 火災等から避難者の生命を保護する避難地等と の液状化による被害を防ぐため、宅地耐震化推 して機能する防災公園等の整備を推進してい 進事業により地方公共団体が実施する変動予測 る。また、防災公園と周辺市街地の整備改善を Ⅱ 調査を支援するとともに、宅地の安全性確保に 一体的に実施する防災公園街区整備事業を実施 向けた対策工事を支援している。 している。 第6章
③被災地における宅地の危険度判定の実施 ⑥防災拠点等となる官庁施設の整備の推進 大地震等により被災した宅地における二次災 官庁施設については、災害応急対策活動の拠 安全・安心社会の構築
害を防止し、住民の安全確保を図るため、被災 点としての機能を確保するとともに人命の安全 後に迅速かつ的確に宅地の危険度判定を実施で を確保する必要があることから、官庁施設の耐 きるよう、都道府県・政令市から構成される被 震基準を満足する割合を 100%とすることを目 災宅地危険度判定連絡協議会と協力して体制整 標とし、所要の耐震性能を満たしていない官庁 備を図っている。 施設について、耐震改修等による耐震化を推進 している。また、地方公共団体をはじめとする ④密集市街地の整備改善 様々な関係者との連携の下、大規模災害の発生 防災・居住環境上の課題を抱えている密集 に備え、防災拠点等となる官庁施設の整備を推 市街地の早急な整備改善は喫緊の課題であり、 進している。 「地震時等に著しく危険な密集市街地(危険密 集市街地)」(約 1,347ha、令和6年度末)に ⑦公共施設等の耐震性向上 ついて 12 年度までに最低限の安全性を確保し、 河川事業においては、いわゆるレベル2地震 おおむね解消することとしている。 動においても堤防、水門等の河川構造物が果た この実現に向け、防災街区整備事業、住宅市 すべき機能を確保するため、耐震照査を実施す 街地総合整備事業、都市防災総合推進事業等に るとともに、必要な対策を推進している。 より、幹線道路沿道建築物の不燃化による延焼 道路事業においては、地震による被災時に円 遮断機能と避難路機能が一体となった都市の骨 滑な救急・救援活動、緊急物資の輸送、復旧活 格防災軸(防災環境軸)の形成や避難地となる 動に不可欠な緊急輸送を確保するため、緊急 防災公園の整備、老朽建築物の除却と合わせた 輸送道路上の橋梁及び同道路をまたぐ跨道橋、 耐火建築物等への建替え、避難や消防活動に資 ロッキング橋脚橋梁の耐震補強対策や無電柱化
【関連リンク】 密集市街地の整備改善について URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001997781.pdf
226 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
を実施している。 施設に接続する水道・下水道の管路等につい 海岸事業においては、ゼロメートル地帯等に て、令和6年度補正予算より、水道における耐 おいて地震により堤防等が損傷し、大規模な浸 震化の取組を加速する自治体を支援対象に追加 水が生じないよう、また、南海トラフ地震等に したほか、補助率を1 / 4から1 / 3へ引き上 おいて、津波到達前に堤防等の機能が損なわれ げるとともに、令和7年度予算より、上下水道 ないよう、施設の機能や背後地の重要度等を考 システムの「急所」に関する個別補助制度を創 慮して、耐震対策を推進している。 設すること等により、上下水道一体の耐震化を 港湾事業においては、災害時に陸上輸送機能 計画的・集中的に進めている。 が低下した場合でも、必要となる緊急物資輸送 令和 7 年 12 月 8 日に青森県沖に発生した地 を実施できるようにするとともに、国民生活や 震においては、八戸市(を含む 1 市 6 町)に給 産業活動に必要な港湾物流機能を維持するた 水している八戸圏域水道企業団は、管路の耐震 め、耐震強化岸壁の整備及び臨港道路の耐震化 化に積極的に取り組んできており、八戸市で震 等を推進している。 度 6 強が観測されたものの、八戸市での断水は Ⅱ 空港事業においては、地震発生後における緊 生じなかった。
第6章 急物資等輸送拠点としての機能確保、航空ネッ トワークの維持及び背後圏経済活動の継続性確 ⑧大規模地震に対する土砂災害対策 保と首都機能維持に必要となる滑走路等の耐震 南海トラフ地震等の大規模地震に備え、防災
安全・安心社会の構築 対策を実施している。 拠点や重要交通網等への影響、孤立集落の発 鉄道事業においては、首都直下地震や南海ト 生が想定される土砂災害警戒区域等において、 ラフ地震等の大規模地震に備え、地震時におけ ハード・ソフト一体となった総合的な土砂災害 る、鉄道ネットワークの維持や鉄道利用者の安 対策を推進している。 全確保等を図るため、主要駅や高架橋等の鉄道 また、大規模地震発生後は、関係機関と連携 施設の耐震対策を推進している。また、令和4 を図り、災害状況等を迅速に把握するととも 年3月に発生した福島県沖を震源とする地震に に、応急対策を的確に実施することが重要であ よる東北新幹線の脱線及び施設被害を契機に立 る。このため、人工衛星等を活用した状況把握 ち上げた検証委員会の中間とりまとめを踏ま の迅速化や関係機関等と実践的な訓練を行うな え、地震に対する更なる安全性の向上に向けた ど危機管理体制の強化を図っている。 対策を推進するため、5 年3月に「特定鉄道等 施設に係る耐震補強に関する省令」等を改正 ⑨気象庁における取組 し、新幹線鉄道については7年度、新幹線鉄道 地震による災害の防止・軽減を図るため、全 以外については9年度までに前倒しする形で、 国の地震活動及び南海トラフ沿いの地殻変動を 優先的に耐震補強を進めている。 24 時間体制で監視し、緊急地震速報、地震情 上下水道事業においては、地震時においても 報、長周期地震動に関する情報、南海トラフ地 上下水道が果たすべき役割を確保するため、重 震に関連する情報、北海道・三陸沖後発地震注 要な上下水道施設の耐震化を図る「防災」と、 意情報等の迅速かつ的確な発表に努めている。 被災を想定して被害の最小化を図る「減災」を 令和7年度には、「南海トラフ海底地震津波 組み合わせた総合的な地震対策を推進してい 観測網(N-net)」沖合システムの地震観測デー る。上下水道施設の耐震化にあたっては、令和 タを7年 10 月から、沿岸システムの地震観測 6年能登半島地震の教訓を踏まえ、浄水場や下 データを8年3月から活用開始し、緊急地震速 水処理場等の「急所施設」や、避難所等の重要 報の発表の迅速化や精度向上を図った。
国土交通白書 2026 227 第2節 自然災害対策
そのほか、トカラ列島近海の地震活動等に対 報と震度を組み合わせて解析し、災害時におけ して地震情報等を適切に発表するとともに、令 る迅速な情報の提供に関する研究開発及び評価 和7年 12 月8日の青森県東方沖の地震に対し を行っている。さらに、観測・研究に携わる機 て北海道・三陸沖後発地震注意情報等を適時・ 関が参加し、地殻活動(地震活動・地殻変動 適切に発表した。また、1925 年に兵庫県北部 等)のモニタリング結果と地震発生の予知・予 で発生した北但馬地震から 100 年等、節目を 測に関わる研究についての情報交換とそれらに 捉えて、各種情報や地震・津波への備えについ 基づく学術的な検討を行う地震予知連絡会を運 て普及啓発を推進した。 営している。
⑩海上保安庁における取組 ⑫帰宅困難者対策 巨大地震発生メカニズムの解明のため、海溝 大都市において大規模地震が発生した場合、 型巨大地震の発生が将来予想されている南海ト 都市機能が麻痺し多数の帰宅困難者が発生する Ⅱ ラフ等の太平洋側海域において、海底地殻変動 ことが予想されることから、人口・都市機能が 観測を実施し、想定震源域におけるプレート境 集積した地域における滞在者等の安全確保の 第6章
界の固着状態の把握に努めている。これまでの ため、平成 24 年に都市再生安全確保計画制度 観測で南海トラフの強固着域の沖側における を創設し、都市再生緊急整備地域(全国 55 地 「ゆっくりすべり」の検出及び東北地方太平洋 域:令和8年3月末現在)において、都市再生 安全・安心社会の構築
沖地震後の経時的な地殻変動メカニズムの理解 安全確保計画の作成や、都市再生安全確保施設 に貢献している。 に関する協定の締結、各種規制緩和等により、 官民の連携による都市の防災性の向上を図って ⑪国土地理院における取組 いる。また、主要駅周辺等も補助対象地域とし (ア)地殻変動観測・監視体制の強化 ている都市安全確保促進事業により、都市再 全国及び南海トラフ沿いの地域等において、 生安全確保計画等の作成や計画に基づくソフ 電子基準点等約1,300 点によるGNSS 連続観測、 ト・ハードの取組を総合的に支援している。加 陸域観測技術衛星2号「だいち2号」 (ALOS-2) えて、帰宅困難者等への対応能力を都市機能と 及び先進レーダ衛星「だいち4号」 (ALOS-4) して事前に確保するため、「災害時拠点強靱化 の観測データを使用した SAR 干渉解析、水準 緊急促進事業(住宅・建築物防災力緊急促進事 測量等による地殻変動の監視を強化している。 業)」により、受入拠点の整備を支援している。
(イ)防災地理情報の整備 ⑬災害時の業務継続機能の確保 主要な活断層が存在する地域や、人口や社会 大都市の業務中枢拠点において、世界水準の インフラが集中している地域を対象に、活断層 ビジネス機能・居住機能を集積し、国際的な投 の位置情報及び土地の自然条件等に関する防災 資と人材を呼び込むためには、大都市の災害に 地理情報を整備・更新している。 対する脆弱性を克服していくことが必要であ る。このため、災害に対する対応力の強化とし (ウ)地震に伴う自然災害に関する研究等 て、災害時の業務継続に必要なエネルギーの安 GNSS、干渉 SAR、水準測量等の測地観測 定供給が確保される業務継続地区の構築を行う 成果から、地震の発生メカニズムを解明すると ため、エネルギー面的ネットワークの整備を推 ともに、観測と解析の精度を向上する研究を 進している。 行っている。また、国土の基本的な地理空間情
228 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
⑭地下街の安心安全対策 戒や注意を呼びかけている。5日先までに警報 都市内の重要な公共的空間である地下街は、 級の大雪が予想されているときには、 「早期注意 大規模地震等災害発生時に利用者等の混乱が懸 情報(警報級の可能性) 」を発表して注意を呼び 念されるとともに、施設の老朽化も進んでいる かけ、冬型の気圧配置により日本海側で数日間 ことから、「地下街の安心避難対策ガイドライ 降雪が持続するようなときなどで精度良く予測 ン」を策定し、利用者等の安心避難のための防 が可能な場合には 48 時間先からの24 時間予想 災対策を推進している。 降雪量を情報発表して、早めの対策を呼びかけ ている。社会的影響の大きい災害が起こるおそ (7)雪害対策 れのあるときには、そのおおむね3~6時間前に ①冬期道路交通の確保(雪寒事業) 「大雪警報」を発表して警戒を呼びかけ、短時間 冬 期 の 道 路 交 通 確 保 の た め、 道 路 管 理 者 に顕著な降雪が観測され今後も継続すると見込 と関 係 機 関 で 構 築し た 情 報 連 絡 本 部 等 で 策 まれる場合には、 「顕著な大雪に関する気象情報」 定したタイムラインに基づき、出控え等の行 を発表し大雪への一層の警戒を呼びかけている。 Ⅱ 動変容を促すとともに、躊躇なく並行する高 加えて、積雪の深さと降雪量について 24 時
第6章 速 道 路 と国 道 の 同 時 通 行 止 めを 含 む 予 防 的 間前の状況から6時間先までの面的な分布を一 な 通 行 止 め や 集 中 除 雪 等 を 実 施 し、 早 期 開 体的に確認できる、「今後の雪(降雪短時間予 放に努める。また、立ち往生等の発生が懸念 報)」を気象庁ウェブサイトで公開しており、
安全・安心社会の構築 され る 箇 所 の 事 前 把 握 や 消 融 雪 施 設 等 の 整 外出予定の変更や迂回経路の選択等の行動判断 備、 除 雪 機 械 の 確 保 や 適 切 な 配 置、AI 技 術 を支援する資料となっている。 を活用したカメラ画像の解析による交通障害 自 動 検 知 の 推 進 や、 通 行 止 め が 長 時 間 見 込 (8)防災情報の高度化 まれる際は乗員保護を実施することとしている。 ①防災情報の集約 さらに、関係機関及び民間企業との災害時にお 「国土交通省防災情報提供センター」注 9 では、 ける協定の締結等の推進、地方公共団体への除 国民が防災情報を容易に入手・活用できるよ 雪機械貸与や連携除雪を実施している。 う、保有する雨量等の情報を集約・提供してい るほか、災害対応や防災に関する情報がワンス ②豪雪地帯における雪崩災害対策 トップで入手できるよう公開している。 全国には、約 21,000 か所の雪崩危険箇所が あり、集落における雪崩災害から人命を保護す ②ハザードマップの整備 るため、雪崩防止施設の整備を推進している。 災害発生時に住民が適切な避難行動をとれる よう、市町村によるハザードマップの作成及び ③大雪に関する防災気象情報の提供 住民への周知・活用を促進するとともに、防災 気象庁では大雪による災害の防止や交通障害 に役立つ様々なリスク情報や全国の各種ハザー 等の雪による社会的な混乱を軽減するために、 ドマップを検索閲覧できるハザードマップポー 警報・注意報や気象情報等を発表し段階的に警 タルサイト注 10 を整備し、公開している。
【関連データ】 ハザードマップの整備状況 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
注 9 「国土交通省防災情報提供センター」ウェブサイト:https://www.mlit.go.jp/saigai/bosaijoho/ 注 10 「ハザードマップポータルサイト」:https://disaportal.gsi.go.jp/
国土交通白書 2026 229 第2節 自然災害対策
③防災気象情報の改善 報の運用を目指し、システム改修や関係機関等 気象庁では、気象災害を防止・軽減するため への事前周知等、各種準備を進めた。 に、気象に関する警報や気象情報等を発表し段 新たな防災気象情報では、河川氾濫、大雨、 階的に警戒や注意を呼びかけるとともに、実際 土砂災害、高潮に関する情報について、避難情 にどこで危険度が高まっているかリアルタイム 報の5段階の警戒レベルに対応し、避難の判断 で予測し地図上で確認できるキキクル等を提供 をしやすくするため、情報名称に警戒レベルの している。また、国土交通省や都道府県と共同 数字を付けて発表するなどの改善が図られる。 で土砂災害警戒情報、指定河川洪水予報を発表 また、河川氾濫の危険性を住民へ迅速かつ確実 している。 に伝えるため、レベル5氾濫特別警報を新たに 近年の豪雨等の自然災害の頻発化・激甚化を 実施するほか、前述の指定海岸高潮予報を新た 背景として、地方公共団体や住民等の防災対応 に実施する。加えて、線状降水帯による大雨の の判断に資する、より明確で、きめ細かな情報 半日程度前からの呼びかけの運用を継続的に行 Ⅱ のニーズが高まっていることを踏まえ、防災気 うとともに、線状降水帯発生の2〜3時間前を 象情報全体の体系整理について検討を進め、気 目標に発表する気象防災速報(線状降水帯直前 第6章
象業務法及び水防法の一部を改正するととも 予測)を運用する。 に、令和8年5月下旬からの新たな防災気象情
Column 安全・安心社会の構築
コラム 外国法人等による予報業務に関する規制の強化
我が国では、技術的な裏付けのない予報が流通する 外国法人等も国内事業者と同様に責任の所在を明確に ことによる被害を防ぐため、事業者等が予報業務を行 するよう、国内代表者等の指定を義務付ける仕組み等 う場合に許可を必要としています。 を整備しました。さらに、許可を受けずに予報業務を しかし近年、情報通信技術の進展により、外国法人 行う外国法人等について、利用者保護の観点から事業 が無許可のまま国内に向けて気象情報を提供する事例 者名等を公表できるようにしました。 が見受けられます。 これらの措置により、国内に流通する情報の技術的 このため、本許可制度を定める気象業務法を改正し、 裏付けを担保し、国民の安全・安心の確保に努めます。
230 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
Column 防災気象情報の体系整理 コラム
大雨警報等の防災気象情報の再構築に向け、情報体 い情報名称案、②現象ごとの情報発表基準の考え方の 系の整理や個々の情報の見直し・改善方策、情報の 統一、③関係機関が協力した情報発表、④新たな技術 より一層の活用に向けた取組等について検討を行うた を活用した情報の高度化等が議論されました。議論の め、気象庁と国土交通省水管理・国土保全局が共同で、 結果、各警戒レベルに一つの情報を位置付けることと 学識者、報道関係者等を構成員とする「防災気象情報 なりました。情報名称については、住民アンケートを に関する検討会」(以下、「検討会」)を令和4年1月 実施の上、相当する警戒レベルを連想しやすい名称と から開催し、6年6月に検討の成果が取りまとめられ なるよう、 社会に定着した「特別警報」 「警報」 「注意報」 ました。 のワードを活かしつつ名称の「横並び」を揃える形を 検討会では、住民の自主的な避難行動の参考となる 基本とする案が示されました。 「警戒レベル相当情報」の整理を中心に議論が行われ このような検討会の取りまとめを受けた新たな防災 ました。現行の警戒レベル相当情報には、大雨や洪水、 気象情報について、気象庁及び国土交通省水管理・国 Ⅱ 土砂災害、及び高潮に関する情報がありますが、これ 土保全局では、これまで必要な準備を進めてきており、
第6章 らには、情報名称がわかりにくい、同じ現象を対象と 令和8年度5月下旬から運用を開始しています。加え した情報でも相当する警戒レベルによって発表主体や て、利用者が情報の意味合いを適切に理解できるよう、 発表基準が異なる、といった課題がありました。 周知広報活動についても着実に進めてまいります。 検討会ではこのような課題を踏まえ、①わかりやす
安全・安心社会の構築 新たな警報等の一覧表 河川氾濫 大 雨 土砂災害 高 潮 警戒レベル レベル5 レベル5 レベル5 レベル5 5相当 氾濫特別警報 大雨特別警報 土砂災害特別警報 高潮特別警報
警戒レベル レベル4 レベル4 レベル4 レベル4 4相当 氾濫危険警報 大雨危険警報 土砂災害危険警報 高潮危険警報
警戒レベル レベル3 レベル3 レベル3 レベル3 3相当 氾濫警報 大雨警報 土砂災害警報 高潮警報
警戒レベル レベル2 レベル2 レベル2 レベル2 2 氾濫注意報 大雨注意報 土砂災害注意報 高潮注意報 警戒レベル 早期注意情報 1
【関連リンク】 防災気象情報に関する検討会 URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/shingikai/kentoukai/bousaikishoujouhou/bousaikishoujouhou_kentoukai.html
【関連リンク】 新たな防災気象情報の特設ページ URL:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/index.html
(9)危機管理体制の強化 収集・共有体制を強化するなど、災害対応力の 自然災害への対処として、災害に結びつく 向上を図っている。 おそれのある自然現象の予測、迅速な情報収 集、災害時の施設点検・応急復旧、海上におけ ① TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)によ る救助活動、被災自治体の支援等の初動対応体 る災害対応 制を構築するとともに、災害対応の更なる迅速 令和7年度はこれまで 17 の災害に対して、 化・高度化を図るため、 「統合災害情報システ のべ約 3,000 人・日の TEC-FORCE の派遣を ム(DiMAPS)」等を用いて災害初動期の情報 行っている。
国土交通白書 2026 231 第2節 自然災害対策
このうち、8 月 6 日からの大雨では、熊本県 ロ回線と光ファイバを用いた信頼性の高い情 や鹿児島県等で土砂崩れや浸水等の被害が発生 報通信ネットワーク整備に加え、災害現場か し、被災自治体へ TEC-FORCE を派遣したほ らの情報収集体制を強化するために衛星通信 か、台風第 22 号、23 号では、土砂崩れや倒木 回線を活用した通信機器や臨時回線を構築可 等による道路寸断、断水、停電が発生したた 能な i-RAS、公共 BB といった通信機器も全国 め、東京都八丈町等へ TEC-FORCE を派遣し に配備し、機動性の高い運用体制を整えてい た。 る。また、大規模災害が発生した場合、全国の これらの災害においては、被害拡大防止のた 地方整備局等に配備している災害対策用ヘリコ めに排水ポンプ車による湛水排除を行ったほ プター、移動型衛星通信設備(Car-SAT)、衛 か、被災自治体の被害状況や支援ニーズの把握 星通信車、排水ポンプ車、照明車、対策本部車 のためのリエゾンや JETT(JMA Emergency 等の災害対策用機械を迅速に派遣できる体制を Task Team:気象庁防災対応支援チーム)等 とっており、令和7年度に発生した災害時にお Ⅱ の派遣、支援ニーズに応じた散水車(給水装置 いてこれらの災害対策用機械を現地へ派遣し、 付)による給水支援や照明車による避難所への 復旧活動の支援等を行った。 第6章
電源支援等、防災ヘリコプター等による広域被 災状況調査やドローン等を活用した効率的な被 ④実践的・広域的な防災訓練の実施 災状況調査等を実施し、被災地の早期の復旧を 「水防月間」 (5月、北海道は6月)におい 安全・安心社会の構築
支援した。 て、全国9か所にて各地域の特性に応じた総合 さらに、大規模広域災害時にも自治体等を迅 水防演習を実施し、水防技術の向上・伝承及び 速かつ的確に応援できるよう、TEC-FORCE 水防団の士気高揚を図るとともに、幅広い主体 の増強と行政機関・民間企業・学識者などの専 の参加による地域社会全体の防災意識の向上、 門性を持った多様な主体との更なる連携強化に 災害対処能力の更なる向上を図った。 よる新たな応援体制の構築を進めるとともに、 「防災の日」(9月1日)には、首都直下地震 TEC-FORCE 等が使用する資機材の充実等に を想定した国土交通省緊急災害対策本部運営訓 より、災害支援体制・機能を拡充・強化に取り 練を実施したほか、地方整備局等において自治 組んだ。 体との TV 会議等による情報伝達訓練等を実施 し、大規模地震への対応力の向上を図った。 ②業務継続体制の確保 首都直下地震発生時等に防災対策業務を遅滞 ⑤海上保安庁による災害対策 なく実施するとともに、業務停止が社会経済活 海上保安庁では、組織力・機動力を活かし、 動に重大な影響を及ぼす業務の継続性を確保す 海上で発生した災害のほか、陸域で発生した災 ることを目的に、令和6年 12 月に国土交通省 害に対しても巡視船艇・航空機や特殊救難隊等 業務継続計画(第5版)を策定した。これらを を出動させ、人命救助や被害状況調査を実施す 踏まえ、業務の継続体制確保に向け、首都直下 るとともに、被災地域の状況やニーズに合わせ 地震を想定した職員非常参集訓練等を毎年実施 情報発信を行いつつ、被災者支援を実施してい している。 る。 令和7年も自然災害による被害が各地にもた ③災害に備えた情報通信システム・機械等の配備 らされ、行方不明者の捜索のほか、航行警報や 災害時の情報通信体制を確保するため、本 海の安全情報による情報提供、給水支援による 省、地方整備局、関係機関等の間で、マイク 被災者支援を実施した。
232 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
図表Ⅱ-6-2-3 海上保安庁による災害対応の状況
⑥地方整備局及び北海道開発局の体制の確保 により支援している。 国土交通省の現場を支える地方整備局及び北 Ⅱ 海道開発局は、災害からの復旧・復興や新たな (11)公共土木施設の災害復旧等
第6章 社会資本整備等に努めてきたところであり、近 令和7年の国土交通省所管公共土木施設(河 年の激甚化・頻発化する自然災害やインフラ老 川、砂防、道路、海岸、水道、下水道、公園、 朽化対策に対応する中で、その役割や地域から 港湾等)の被害は、「令和7年8月6日から
安全・安心社会の構築 の期待も大きくなっている。 の大雨」や「令和7年台風第 22 号、第 23 号」 一方で、地方整備局等については、避難につ 等、全国的に災害が頻発したことにより令和 8 ながる迅速な情報提供や災害発生時の機敏な初 年 3 月末時点で約 2,339 億円(5,567 か所)と 動対応等、国民の命と暮らしを守るための的確 報告されている。 な対応を行う上で多くの課題に直面している。 これらの自然災害による被害について、被災 こうした中、数多くの自然災害からの復旧・ 直後から現地に TEC-FORCE を派遣し、被災 復興や、防災・減災、国土強靱化への取組等に 調査等を実施したほか、災害復旧や改良復旧の 対応するため、地方整備局等に必要な体制を確 計画立案を支援するため、本省防災課の職員や 保していく。 技術専門家を派遣し、復旧方針、工法等の技術 的助言等、被災自治体への支援を実施している。 (10)ICT を活用した施設管理体制の充実強化 大規模災害時においては、災害時に急増する 危機に備えるため、ICT を活用した公共施 業務を円滑に遂行することが困難な状況となる 設管理体制の充実強化を図っている。具体的に ため、様々な災害査定の効率化(机上査定限度 は、インターネット等を活用した防災情報の提 額の引上げ、設計図書の簡素化等)やデジタル 供等、安全な道路利用のための対策を進めてい 技術の活用により、被災地域における迅速な災 るほか、排水機場等の河川管理施設や下水処理 害復旧に向け取り組んだ。 場・ポンプ場等の遠隔監視・操作、河川の流況 また、災害復旧においては、原形復旧のみな や火山地域等の遠隔監視を実施するなど、管理 らず、再度災害を防止するため、施設の機能を の高度化を図っている。 強化する改良復旧の観点から取り組んでいる。 さらに、津波・高潮等による災害に対して、 さらに、砂防堰堤等が土石流を捕捉した場合 水門・陸閘等を安全かつ迅速、確実に閉鎖する において、災害復旧事業として緊急的な除石が ため、衛星通信等を利用した水門・陸閘等の自 可能な制度に拡充することにより、砂防堰堤等 動化、遠隔操作化について、防災・安全交付金 の機能の早期復旧に努めている。加えて、地方
国土交通白書 2026 233 第2節 自然災害対策
公共団体からの要請に基づき、直轄権限代行に (建設工事から発生する土の搬出先の明確化等) より災害復旧事業を支援している。 盛土等に伴う災害防止を促進するため、盛土 このほか、自然災害等により被災した地域や 等の行為に関する規制(盛土規制法)と合わせ 防災・減災対策を図る必要の生じた地域等 90 て、建設発生土の搬入・搬出プロセスに着目 地区において、緊急的かつ機動的に防災・減災 し、必要な対策を講ずる。具体的には、工事の 対策等強化事業推進費を配分し、住民等の安 発注段階で建設発生土の搬出先を指定するなど 全・安心の確保を図っている。 指定利用等を進めるとともに、「資源有効利用 促進法」等に基づく計画制度を強化し元請業者 (12)盛土による災害防止に向けた取組 の最終搬出先までの確認を義務付け、ストック 盛土等を行う土地の用途やその目的にかかわ ヤード運営事業者登録制度により実効性の向上 らず、危険な盛土等を全国一律の基準で包括的 を図っている。 に規制する「宅地造成及び特定盛土等規制法」 引き続き、制度の浸透・徹底が図られるよ Ⅱ (昭和 36 年法律第 191 号)の円滑な運用のた う、元請業者や登録ストックヤード運営事業者 め、基礎調査実施要領や盛土等の安全対策、不 等に対し、制度浸透状況の調査や制度周知等に 第6章
適切な盛土等の対策についてまとめたガイドラ 取り組む。 イン等の内容周知に加え、地方公共団体への必 要な助言や情報提供等を行った。 (13)災害危険住宅移転等 安全・安心社会の構築
引き続き、地方公共団体が行う盛土等に伴う 自然災害の発生した地域又は災害のおそれの 災害の防止のための基礎調査や、危険な盛土等 ある区域内の住居について、防災集団移転促進 に対する安全性把握調査、安全対策の取組を支 事業や、がけ地近接等危険住宅移転事業により 援するなど、盛土等による災害の防止に向けて 移転を促進している。 取り組む。
3 災害に強い交通体系の確保 (1)多重性・代替性の確保等 4車線化、高規格道路と代替機能を発揮する直 風水害・土砂災害・地震・津波・噴火・豪 轄国道とのダブルネットワークの強化、災害時 雪・原子力災害等が発生した直後から、救命・ の道路閉塞を防ぐ無電柱化等を推進し、災害に 救助活動等が迅速に行われ、社会経済活動が機 強い道路ネットワークの構築を進め、鉄道・港 能不全に陥ることなく、また、制御不能な二 湾・空港等の施設の耐災化、地震を想定した代 次災害を発生させないこと等を目指し、高規格 替海上輸送に関する訓練の実施や緊急輸送体制 道路の未整備区間の整備及び暫定2車線区間の の確立を図ることにより多重性・代替性を確保
【関連リンク】 防災集団移転促進事業の概要 URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001609106.pdf
【関連リンク】令和6年1月8日プレスリリース 「水道施設の早期復旧を支援するため地方整備局等の職員を被災地に派遣」 URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo13_hh_000549.html
【関連リンク】令和6年1月5日プレスリリース 「水道施設の早期復旧を支援するため職員を被災地に派遣」 URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo13_hh_000548.html
234 国土交通白書 2026 第2節 自然災害対策
するとともに、利用者の安全確保に努めている。 所、SA・PA 146 か所を指定した。令和6年 能登半島地震においては、防災拠点自動車駐車 (2)道路防災対策 場に指定されている道の駅「千枚田ポケット 大規模災害時の救急救命活動や復旧支援活動 パーク」の駐車場の一部で道路法に基づく一般 を支えるため、災害に強い国土幹線道路ネット 利用の制限を行い、道路復旧作業に活用した。 ワークの構築、レーザープロファイラ等を活用 このほか、地方公共団体のニーズを踏まえ した土砂災害等の危険箇所の把握及び防災対策 た、津波や洪水による浸水から避難するため、 や、令和6年能登半島地震を踏まえた盛土対策 道路の高架区間等の活用が可能な箇所におい (法面・盛土対策等) 、震災対策(耐震補強等) 、 て、避難階段等の整備を推進している。また、 雪寒対策(防雪施設の整備等) 、道路施設への 津波被害を軽減するための対策の一つとして、 防災機能強化(道の駅及び SA・PA の防災機能 標識柱等へ海抜表示シートを設置し、道路利用 の付加、避難路・避難階段の整備)等を進める。 者への海抜情報の提供を推進している。 大規模災害に備えた道路啓開計画の実効性を Ⅱ 高めるため、令和7年4月に改正された「道 (3)無電柱化の推進
第6章 路法」(昭和 27 年法律第 180 号)等に基づき、 道路の防災性の向上や安全で快適な通行空間 地震・津波災害については、7年度内に、全国 の確保、良好な景観の形成、観光振興の観点か のブロックごとに道路啓開計画を策定するとと ら、無電柱化推進計画に基づき無電柱化を推進
安全・安心社会の構築 もに、令和8年度は、都道府県単位で道路啓開 しており、新技術・新工法の導入促進によるコ 計画を策定する。また、火山災害等について スト縮減や設計・施工・関係者調整等を一体的 も、順次、ブロック単位の道路啓開計画を策定 に実施する包括委託等によるスピードアップに する。加えて、多くの関係機関の協力の下で、 取り組んでいる。そのほか、すべての緊急輸送 道路啓開計画に位置付けられた実践的な啓開訓 道路において新設電柱の占用制限を指定し、既 練を実施する。 設電柱の占用禁止や沿道届出勧告制度について さらに、発災時には、道路管理用カメラ等に も導入を進めている。 よる状況把握や官民のプローブデータ等も活用 これまでの取組や課題を整理するとともに、 した「通れるマップ」により関係機関に通行可 有識者等の意見も踏まえ、無電柱化を一層加速 否情報の共有・提供を実施している。 できるよう令和8年度からの無電柱化推進計画 令和6年能登半島地震においては、防災道の の策定を進めている。 駅「のと里山空港」 (石川県輪島市)が支援物 資の集配拠点や道路啓開活動の拠点として機能 (4)各交通機関等における防災対策 したほか、停電や断水状況下でも使用可能な防 空港については、平成 30 年の台風第 21 号や 災用コンテナ型トイレを防災道の駅「うきは」 北海道胆振東部地震や令和元年房総半島台風に (福岡県うきは市)より被災地へ派遣するなど、 より空港機能やアクセス機能が喪失し、多くの 「道の駅」が防災拠点としての役割を果たした。 滞留者が発生したことを踏まえ、このような大 この教訓を踏まえ、 「防災道の駅」における防 規模自然災害による多様なリスクに対し、アク 災用コンテナ型トイレの配備等を推進している。 セス事業者を含めた関係機関が一体となって対 また、令和8年3月までに、近年の自然災害 応する「統括的災害マネジメント」の実現によ の頻発化・激甚化を踏まえ、災害時に防災拠点 る自然災害に強い空港づくりを目指している。 としての利用以外の禁止・制限等が可能となる そのため、耐震対策や浸水対策等のハード対 防災拠点自動車駐車場として、道の駅 389 か 策に加え、ソフト対策として「統括的災害マネ
国土交通白書 2026 235 第3節 建築物の安全性確保
ジメント」の考え方を踏まえ、各空港で策定さ でも港湾機能を維持するため、関係機関と連携 注 11 れた空港 BCP に基づき、災害時の対応を行 し、地方港湾を含めた港湾 BCP の策定やそれ うとともに、訓練の実施等による空港 BCP の に基づく防災訓練の実施、衛星・ドローン・カ 実効性強化に取り組んでいる。 メラ等を活用した港湾における災害関連情報の 鉄道については、激甚化・頻発化する自然災 収集・集積の高度化等、災害対応力強化に取り 害に対応するため、鉄道事業者等が実施する鉄 組んでいる。 道施設の豪雨・浸水・耐震・老朽化等の対策に ついて支援を行っている。このうち豪雨対策で (5)大規模自然災害等に備えた緊急物資輸送 は、貨物鉄道ネットワークの維持の観点も考慮 の体制強化等 した対策を推進している。また、北海道と本州 首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の広域 間の円滑かつ安定的な人流・物流の確保におい かつ大規模な災害が発生し、物流システムが寸 て重要な役割を担う青函トンネルについて、開 断された場合、国民生活や経済活動へ甚大かつ Ⅱ 通以来 30 年以上が経過していることを踏まえ、 広域的な影響が生じることが想定される。被災 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 者の生活の維持のためには、必要な支援物資を 第6章
が実施する老朽化等の対策を支援している。 確実・迅速に届けることが重要であることか こうしたハード対策に加え、ソフト対策とし ら、災害時における円滑な支援物資物流を実現 て、風水害・雪害等からの鉄道の安全確保を図 するため、引き続き、地方ブロックごとに国、 安全・安心社会の構築
るため、トンネル、落石覆い等の災害防止設備 地方公共団体、物流事業者団体等の関係者が参 の点検、除雪体制の整備、計画運休等の実施等 画する協議会等の開催、物流専門家の派遣を含 が適切に行われるよう、必要な対応を講じてい む地方公共団体、物流事業者団体等との災害時 る。 協力協定の締結の促進、「ラストマイルにおけ なお、被災した鉄道に対しては、「鉄道軌道 る支援物資輸送・拠点開設・運営ハンドブッ 整備法」に基づく災害復旧事業費補助等による ク」の活用促進に向けた周知、新たな民間物資 財政支援や、独立行政法人鉄道建設・運輸施設 拠点のリストアップの促進を行った。また、災 整備支援機構の RAIL-FORCE の派遣等を通じ 害時のサプライチェーンの確保と災害対応能力 た技術的支援などにより、早期復旧を図ってい 強化のために倉庫事業者や物流不動産開発事業 る。港湾については、令和6年能登半島地震の 者等が行う非常用電源設備の導入や、ラストマ 教訓を踏まえ、災害時の海上からの円滑な輸送 イルにおける円滑な支援物資輸送体制の構築・ のため、災害時の海上支援ネットワークの形成 強化を促すために地方公共団体と物流事業者等 のための防災拠点機能の確保を進めており、港 の官民が連携して行う支援物資輸送訓練に対し 湾施設の耐震化の更なる推進や、大規模災害時 ての支援を行っている。
第3節 建築物の安全性確保 (1)建築分野の持続性の確保 気候変動による災害激甚化等への対応など、広 ストック活用社会の到来、深刻化する担い手 範な課題への対応が急務である。建築に関わる 不足への対応、新技術等による新たな可能性、 多様な関係者ごとの目線を踏まえ、建築に関わ
注 11 空港全体としての機能保持及び早期復旧に向けた目標時間や関係機関の役割分担等を明確化した空港の事業継続計画 (A2(Advanced/Airport)-BCP) 。
236 国土交通白書 2026 第4節 交通分野における安全対策の強化
るすべての関係者が共通認識を持てるよう、建 和4年 12 月に「直通階段が一つの建築物等向 築分野全体の方向性を示すべく、令和 7 年 4 月 けの火災安全改修ガイドライン」を策定すると より建築分野の中長期ビジョンに関する議論を ともに、5年度より建築物の火災安全改修に係 進めている。8 年 1 月には中間的な取りまとめ る支援制度を新たに設けるなど、既存建築物の を行い、目指す社会像の実現に向けて、国民・ 火災安全対策の推進に取り組んでいる。また、 産学官の関係者の役割分担や連携も含めた取組 4年6月公布の改正建築基準法が7年4月に施 事項として、①建築物・市街地(モノ)のあり 行され、省エネ化に伴い重量化している建築物 方、②建築を支える担い手(ヒト)、③建築を の構造安全性を確保するために、木造2階建て 支える環境・仕組み(社会)の3つの視点ごと 住宅等の構造審査が始まった。 に整理を行うこととした。今後は、9 年春頃に 建築分野の中長期的なビジョンの取りまとめに (3)昇降機や遊戯施設の安全性の確保 向けた議論を継続する。 昇降機(エレベーター、エスカレーター)や 遊戯施設の事故原因究明のための調査並びに地 Ⅱ (2)住宅・建築物の安全性の確保 方公共団体及び地方整備局職員を対象とした安
第6章 構造・防火安全性等が確保されたストック形 全・事故対策研修を引き続き行うとともに、昇 成、既存ストックの有効活用等の観点から、建 降機の適切な維持管理に関する指針等の積極的 築基準及び関係規定等の適切な運用及び見直し な活用及び既設エレベーターへの戸開走行保護
安全・安心社会の構築 に継続的に取り組んでいる。 装置の設置の促進等についての周知を行い、安 具体的には、近年のビル火災等を踏まえ、令 全性の確保に向けた取組を引き続き進める。
第4節 交通分野における安全対策の強化
1 運輸事業者における安全管理体制の構築・改善 「運輸安全マネジメント制度」は、運輸事業 輸送の安全の確保に係る取組や自然災害、テロ、 者に安全統括管理者の選任と安全管理規程の作 感染症への対応状況を評価するとともに、集約 成を義務付け、経営トップのリーダーシップの した先進事例等の知見を事業者間で共有した。 下、会社全体が一体となった安全管理体制を構 また、同制度への理解を深めるため、国が運 築することを促し、国土交通省が運輸安全マネ 輸事業者を対象に実施する運輸安全マネジメン ジメント評価(運輸事業者の取組状況を確認 トセミナーについては、令和7年度において し、必要な助言等を行うもの)を行う制度であ 3,466 人が受講した。加えて、中小事業者に対 り、JR 西日本福知山線列車脱線事故等の教訓 する同制度の一層の普及・啓発等を図るため、 を基に、平成 18 年 10 月に導入されたものであ 平成 25 年7月に創設した認定セミナー制度 る。 (民間機関等が実施する運輸安全マネジメント 令和7年度においては、運輸安全マネジメン セミナーを国土交通省が認定する制度)に関し ト評価を、のべ 262 者(鉄道 43 者、自動車 83 ては、令和7年度において 5,527 人がセミナー 者、海運 126 者、航空 10 者)に対して実施し、 を受講した。そのほか、運輸事業の安全に関す
【関連リンク】 脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第 69 号)について URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_shoenehou_kijunhou.html
国土交通白書 2026 237 第4節 交通分野における安全対策の強化
るシンポジウム等も実施した。 令和5年3月に策定した「小型旅客船事業者に さらに、知床遊覧船事故を受け、小型旅客船 対する運輸安全マネジメント評価の実施方法に 事業者に対し、運輸安全マネジメントの取組の ついて」に基づき、経営トップの交代があった 強化を通じ、経営トップの安全意識の底上げ・ 事業者や重大な事故を発生させ又は行政処分を 向上を図ることや、効果的な評価実施のため国 受けた事業者等の評価を優先するとともに、9 の体制強化を図ることが急務となっている。特 年度末までにすべての事業者の評価を実施して に、小型旅客船不定期航路事業者に対しては、 おり、7年度は 21 者に対して実施した。
図表Ⅱ-6-4-1 運輸安全マネジメント制度の概要
運 輸 安 全 マネ ジ メ ン ト 制 度 の 概 要
運輸安全マネジメント制度の内容 ACT PLAN Ⅱ 運輸事業者 各事業法に基づき、以下の義務づけ CHECK DO 第6章
①安全管理規程の作成 ②安全統括管理者(役員以上)の選任 経営トップのリーダーシップの下、自主的な安全管理体制を構築・運営
<安全管理体制の主な内容> ①安全方針の策定・周知②安全重点施策の策定、見直し③教育・訓練の実施 など、全14項目にわたる。 安全・安心社会の構築
評価 国土交通省 啓発
運輸安全マネジメント評価 本省・地方運輸局の評価チームが事業者に赴き、輸送の安全に関する取組状況を確認し、 継続的改善に向けて評価を実施 セミナー、シンポジウムの実施 全国各地で中小事業者を中心に普及・啓発を実施し、事業者の自主的な取組みを促進
2 鉄軌道交通における安全対策 鉄軌道交通における運転事故件数は、自動列 監査等を通じた実行状況の確認や、監査結果等 車停止装置(ATS)等の運転保安設備の整備 のフィードバックによる更なる対策の実施を通 や踏切対策の推進等を行ってきた結果、長期的 じて、鉄軌道の安全性の向上を促している。 には減少傾向にあるが、ひとたび列車の衝突や また、鉄軌道事業者に対し、計画的に保安監 脱線等が発生すると、多数の死傷者を生じるお 査を実施するほか、重大な事故等の発生等の際 それがあることから、引き続き安全対策の推進 にも臨時で保安監査を行うなど、メリハリの効 が必要である。 いたより効果的な保安監査を実施するなどし て、保安監査の充実を図っている。 (1)鉄軌道の安全性の向上 過去の事故等を踏まえて、必要な基準を制定 (2)踏切対策の推進 するなどの対策を実施し、これを鉄軌道事業者 都市部を中心とした「開かずの踏切」注 12 等は、 が着実に実行するよう指導するとともに、保安 踏切事故や慢性的な交通渋滞等の原因となり、
注 12 列車の運行本数が多い時間帯において、踏切遮断時間が 40 分/時以上となる踏切。
238 国土交通白書 2026 第4節 交通分野における安全対策の強化
早急な対策が求められている。このため、道路 者の安全性向上を図ることを目的に、ホームか 管理者と鉄道事業者が連携し、 「踏切道改良促 らの転落等を防止するホームドアの整備を促進 進法」及び「第 12 次交通安全基本計画」に基 しており、「交通政策基本計画」(令和3年5月 づき、立体交差化、歩道拡幅等の構造改良、横 28 日閣議決定)及び「移動等の円滑化の促進 断歩道橋等の歩行者等立体横断施設の整備、特 に関する基本方針」(2年 12 月 25 日)におい 定道路等を優先とした踏切道におけるバリアフ て、7年度までに、全体で 3,000 番線、うち平 リー対策、踏切遮断機等の踏切保安設備の整 均利用者数が 10 万人 / 日以上の駅で 800 番線 備、第4種踏切道等の統廃合等により踏切事故 を整備することを目標としてきた。6年度末時 の防止及び交通の円滑化に努めている。 点において、駅全体で 2,830 番線、うち平均利 踏切対策は、 「踏切道改良促進法」に基づき、 用者数が 10 万人 / 日以上の駅で 621 番線が整 改良すべき踏切道を指定し、指定した踏切道を 備された。8年度からは、新たな整備目標とし はじめ、課題のある踏切道については、地方踏 て、12 年度までに、全体で 4,000 番線、うち 切道改良協議会等を適宜開催し、道路管理者と 平均利用者数が 10 万人 / 日以上の駅で 900 番 Ⅱ 鉄道事業者が、地域の実情に応じた踏切対策の 線を整備することとしており、この目標の達成
第6章 一層の推進を図っている。 に向け、都市部では鉄道駅バリアフリー料金制 また、災害時の管理方法の指定制度に基づ 度(8年3月末時点で 14 社が活用)など利用 き、災害時の管理の方法を定めるべき踏切道を 者の薄く広い負担も得た施設整備、地方部では
安全・安心社会の構築 指定し、指定した踏切道については、道路管理 予算措置による重点的支援を活用しながら、全 者と鉄道事業者が、災害時に長時間遮断が生じ 国の鉄道駅のバリアフリー化を推進していくこ ないよう、連絡体制や優先開放の手順等の管理 ととしている。 方法の策定に向けた協議を行い、定期訓練等の 図表Ⅱ-6-4-2 ホームドア 取組を推進している。さらに、道路管理者と鉄 道事業者が連携して作成・公表している「踏切 道安全通行カルテ」を更新し、踏切対策の「見 える化」を進めている。 引き続き、改良すべき踏切道を国土交通大臣 が機動的に指定し、総合的かつ一体的な踏切対 策を推進する。また、災害時の管理の方法を定 めるべき踏切道については、道路啓開計画に位 置付けられた道路啓開ルート上の踏切について も、優先して開放する踏切として指定を進め る。あわせて、改良後の踏切対策の評価によ り、着実なフォローアップを実施する。加え (4)鉄道施設の戦略的な維持管理・更新 て、指定された改良すべき踏切道以外について 鉄道の橋梁やトンネル等の老朽化が進んでお も、第4種踏切道を横断する歩行者の安全対策 り、これらの鉄道施設を適切に維持管理するこ の観点から、安全対策を簡易かつ効果的に実施 とが課題となっている。鉄道利用者の安全確保 できる設備の導入を推進する。 及び鉄道の安全・安定輸送の確保を図るため、 地域の人口減少が進み経営環境が厳しさを増す (3)ホームドアの整備促進 地方の鉄道事業者に対して、鉄道事業の継続性 視覚障害者等をはじめとしたすべての駅利用 等を確認した上で、将来的な維持管理費用を低
国土交通白書 2026 239 第4節 交通分野における安全対策の強化
減し長寿命化に資する鉄道施設の改良・補強を メンテナンス実現に向け、鉄道事業者の技術力 支援するとともに、広域的・戦略的なインフラ 向上、業務体制の再構築を推進している。
3 海上交通における安全対策 (1)船舶の安全性の向上及び船舶航行の安全 や、小型船舶操縦者の資格・遵守事項について 確保 定め、人的な面から船舶航行の安全を確保する ①知床遊覧船事故を受けた安全・安心対策 とともに、運航労務監理官による監査を通じ 令和4年4月に発生した知床遊覧船事故を受 て、関係法令の遵守状況等の確認を行い、関係 け、国土交通省では、このような痛ましい事故 法令に違反していることが判明した事業者等に が二度と起きることがないよう、改正海上運送 対して、行政処分等を行うことにより再発防止 法に基づき、船員の資質向上や監査の強化など を図っている。令和7年4月からは、旅客船の Ⅱ の対策を行うとともに、8年4月からは安全統 安全確保に役立つ情報を分かりやすく届ける 括管理者・運航管理者の資格者証保有者からの メールマガジン「うみマガ」を発行している。 第6章
選任が義務化されるなど、その対策を着実に進 また、小型船舶の安全確保のため、小型船舶操 めている。利用者が安心して乗船できるよう、 縦者が遵守すべき事項として、酒酔い等操縦 各対策の進捗に応じフォローアップも行ってい の禁止、危険操縦の禁止、ライフジャケットの 安全・安心社会の構築
くことにより、引き続き、旅客船の安全・安心 着用等を義務付けており、これらについて、小 対策に万全を期していく。 型船舶乗船者を中心に規制内容の説明やリーフ レットの配布を行うなどの周知・啓発を図ると ②船舶の安全性の向上 ともに、違反者への再教育講習を行っている。 船舶の安全に関しては、国際海事機関(IMO) また、「水先法」に基づき、水先人免許の資 を中心に国際的な基準が定められており、我が 格を定め、水先業務の適正かつ円滑な遂行を確 国は IMO における議論に積極的に参画してい 保することにより、船舶交通の安全を図るとと る。また、我が国で航行する船舶の安全を確 もに、水先人の安定的な確保・育成に向けた施 保するため、日本籍船に対する船舶検査を実 策を推進している。 施し、国際基準等への適合性を確認している。 海難審判所では、職務上の故意又は過失に ヒューマンエラーの防止による海上安全の向上 よって海難を発生させた海技士、小型船舶操縦 や船員の労働環境改善が期待される自動運航船 士及び水先人等に対して「海難審判法」に基づ については、令和 12 年頃までの本格的な商用 く調査、審判を実施しており、令和7年には 運航の実現を目指し、7年6月には安全基準・ 218 件の裁決を行い、海技士、小型船舶操縦士 検査方法を策定するなど国内制度の検討・整備 及び水先人等計 293 名に対する業務停止(1 を進めるとともに、IMO における国際ルール から2か月)及び戒告の懲戒を行うなど、海難 策定作業を主導している。 の発生防止に努めている。 海上保安庁では、5年ごとに取り組むべき海 ③船舶航行の安全確保 上安全行政の方向性と具体的施策を「交通ビ 船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準 ジョン」として位置付けており、令和5年3月 に関する国際条約(STCW 条約)に準拠した に策定された「第5次交通ビジョン」に基づき 「船員法」及び「船舶職員及び小型船舶操縦者 各種施策を推進している。 法」に基づき、船員に必要な資格・教育訓練等 令和7年における船舶事故の特徴として、船
240 国土交通白書 2026 第4節 交通分野における安全対策の強化
舶種類別では、プレジャーボート、漁船、貨物 「海上交通安全法等の一部を改正する法律」に 船の順で船舶事故隻数が多く、プレジャーボー 基づき、台風接近時においても、大型船等の一 トの船舶事故隻数は約5割を占めている。ま 定の船舶に対する、湾外等の安全な海域への避 た、プレジャーボートの船舶事故について事故 難等の勧告制度やバーチャル AIS(Automatic 種類別でみると、運航不能(機関故障)が最も Identification System: 船 舶 自 動 識 別 装 置 ) 多く発生しており、プレジャーボートの船舶事 航路標識の緊急表示制度を運用するなどして、 故全体の約3割を占めている。 船舶交通の安全確保に努めている。 このため、海上保安庁では、プレジャーボー また、来島海峡航路西側海域において、令和 トの機関故障対策として、海事局等の関係機関 3年及び5年に死者・行方不明者を伴う船舶同 と連携し海難防止講習会や訪船指導等のあらゆ 士の衝突事故が相次いで発生したことから、同 る機会を通じて、発航前検査のみでなく、整備 種事故の再発防止の徹底を図るため、6年7月 事業者等による定期的な点検整備の実施及び から来島海峡航路西口の入出航に係る経路を指 ユーザーによる整備記録の管理を呼び掛けてい 定するとともに安芸灘南航路第四号灯浮標を廃 Ⅱ る。 止した。引き続き、同海域における安全対策を
第6章 また近年、カヌー、SUP、ミニボート等の 推進していく。 マリンレジャーが盛んになっており、海上活動 海 図 に つ い て は、 電 子 海 図 情 報 表 示 装 置 が多様化・活発化している状況を踏まえ、関係 (ECDIS)の普及に伴い、重要性の増した電子
安全・安心社会の構築 機関と連携したユーザーに対する現場指導、販 海図の更なる充実を図っている。このほか、航 売店等と連携した事故防止に係る周知・啓発活 路、港湾施設、潮汐等に関する情報を水路書誌 動を実施している。 として刊行するとともに、水路通報、航行警報 このほか、各アクティビティを安全に楽しむ 等により最新の情報提供を行っている。 ための知識及び技術等を掲載している総合安全 航路標識については、海水の浸入を防止する 情報サイト「ウォーターセーフティガイド」の 対策及び電源喪失時における予備電源設備の整 充実を図るとともに、近年増加傾向にある外国 備等、船舶交通の環境及びニーズに応じた効果 人の事故についても、ウォーターセーフティガ 的かつ効率的な整備を行っており、令和7年度 イド外国語リーフレット作成等の安全対策を実 に 479 か所の改良・改修を実施した。 施している。 我が国にとって輸入原油の9割以上が通航す 加えて「海の安全情報」では、避難勧告等の る極めて重要な海上輸送路であるマラッカ・シ 緊急情報、全国各地の灯台等で観測した気象現 ンガポール海峡については、船舶の航行安全確 況等の海難防止に資する情報を海事関係者から 保が重要であり、沿岸国及び利用国による「協 注 13 マリンレジャー愛好者まで幅広く提供している。 力メカニズム」 の下、我が国として航行援助 注 14 平成 30 年9月の台風 21 号の影響により発生 施設基金 への資金拠出等の協力を行ってい した関西国際空港連絡橋への船舶衝突事故を受 る。今後も官民連携して同海峡の航行安全・環 け、走錨事故対策のために、令和5年度までに 境保全対策に積極的に協力していく。 大阪湾北部海域の監視及び情報提供体制の強化 を完了したほか、令和3年7月に施行された
注 13 連海洋法条約第 43 条に基づき沿岸国と海峡利用国の協力を世界で初めて具体化したもので、協力フォーラム、プ 国 ロジェクト調整委員会及び航行援助施設基金委員会の3要素で構成されている。 注 14 マラッカ・シンガポール海峡に設置されている灯台等の航行援助施設の代替又は修繕等に要する経費を賄うために創 設された基金。
国土交通白書 2026 241 第4節 交通分野における安全対策の強化
Column 次世代航海情報の利活用に向けて コラム
近年、海洋分野でも DX が進んでいます。 ス(海洋ダイナミックマップ)の研究開発を進めてお 海洋分野の DX を支えるべく、国際水路機関は、電 り、海上保安庁が提供する航海情報への期待が高まっ 子海図にリアルタイムデータを含む様々なデータを重 ています。海上保安庁は令和6年度より同協会の連絡 畳できる次世代航海情報の新規格「S-100 シリーズ」 会に参加し、関係機関との連携・調整を行っており、 を開発しています。国内でも(一財)日本船舶技術研 国内・国際動向を踏まえつつ、次世代航海情報の提供 究協会及び産官学の団体が、(公財)日本財団の助成に を目指して海洋分野の DX に貢献します。 より内航船の無人化・省人化に資する航海情報サービ
Ⅱ 第6章 安全・安心社会の構築
次世代航海情報では、電子海図上に様々な情報を重ね合わせることが可能
(2)乗船者の安全対策の推進 このため、海上保安庁では、海での痛ましい 乗船者の事故における死者・行方不明者の 事故を起こさないために①ライフジャケットの うち約 4.5 割は海中転落によるものである。乗 常時着用、②防水パック入り携帯電話等の連絡 船時に限らず海で活動する際には、ライフジャ 手段の確保、③ 118 番・NET118 の活用という ケットを着用していることが重要であり、万 「自己救命策 3 つの基本」のほか「家族や友人・ が一落水した際には速やかに救助要請を行うこ 関係者への目的地等の連絡」について講習会や とが必要である。小型船舶(漁船・プレジャー メディア等を活用して周知・啓発を行っている。 ボート等)からの海中転落による乗船者の死亡 率は、ライフジャケット非着用者が着用者の約 (3)救助・救急体制の強化 4倍と高く、ライフジャケットの着用が海中転 海上保安庁では、迅速かつ的確な救助・救 落事故からの生還に大きく寄与していることが 急活動を行うため、緊急通報用電話番号「118 分かる。また、緊急通報用電話番号 118 番への 番」・聴覚や発話に障害を持つ方を対象とした 早期通報に加え、携帯電話の GPS 機能を「ON」 「NET118」・通報者がスマートフォンを使用 にしていることで、緊急通報位置情報通知シス し、現場の状況を映像でリアルタイムに伝える テムにより遭難位置を早期に把握することがで ことができる機能等を有した「Live118」の運 き、救助に要する時間の短縮につながる。 用を行っているほか、「海上における遭難及び
242 国土交通白書 2026 第4節 交通分野における安全対策の強化
安全に関する世界的な制度(GMDSS)」によ 救急救命士及び救急員が実施する救急救命処置 り、24 時間体制で海難情報の受付を行うなど、 等の質を医学的・管理的観点から保障するメ 事故発生情報の早期把握に努めている。また、 ディカルコントロール体制の強化、巡視船艇・ 海上において発生した海難や人身事故に適切に 航空機の高機能化、関係機関及び民間救助組織 対応するため、特殊救難隊、機動救難士、潜水 との連携を推進するなど、救助・救急体制の充 士等の救助技術・能力の向上を図るとともに、 実・強化を図っている。
4 航空交通における安全対策 (1)航空の安全対策の強化 含む厳正かつ体系的な立入監査を的確に実施し ①航空安全プログラム(SSP) ている。また、外国航空会社に対しても、日本 国土交通省航空局は、航空事故等を継続的に に乗り入れる航空機に対する立入検査等によ 低減するために国際民間航空条約第 19 附属書 り、航空機の運航及び機体の安全性について監 Ⅱ に従い、航空安全プログラム(SSP)を定め、 視している。
第6章 平成 26 年から実施しており、関係省庁や航空 航空機からの落下物対策については、平成 業務提供者と協力して安全に関する法令及び規 30 年3月に策定した「落下物対策総合パッケー 定類の策定、安全情報の収集、分析及び共有、 ジ」に基づき、本邦航空会社及び日本に乗り入
安全・安心社会の構築 監査及び検査活動、安全文化に係る啓発活動を れる外国航空会社に対して「落下物防止対策基 行っている。また、我が国の航空の安全上の課 準」の内容の実施を義務付けるとともに、航空 題を特定し、これに対処するための具体的取組 会社からの部品欠落に係る報告制度の運用、原 等を取りまとめた、我が国における航空安全実 因究明の結果を踏まえた航空会社への情報共有 施計画(NASP)の策定に向けた検討を行った。 や上記基準への対策追加等を実施している。引 そのほか、報告が義務付けられていない航空 き続き「落下物対策総合パッケージ」に盛り込 の安全情報の収集のため、平成 26 年より航空 まれた対策を関係者とともに着実かつ強力に実 安全情報自発報告制度(VOICES)を運用し 施していく。 ており、航空の安全性向上に向けた提言が得ら 平成 30 年10 月末以降、本邦航空会社の航空 れている。 従事者の飲酒に係る不適切事案が相次いで発生 したことを踏まえ、平成 31年1月から令和元年 ②航空輸送安全対策 7月にかけて厳格な飲酒基準を策定し、こうし 本邦航空会社において、航空機に起因する た基準が適切に遵守されるよう、監査等を通じ 乗客の死亡事故は昭和 61 年以降発生していな て指導・監督を実施してきたところである。しか 注 15 い が、安全上のトラブルに適切に対応する しながら、最近においても運航乗務員等の飲酒 ため、会社における安全管理体制の強化を図 に係る不適切事案が発生していることから、ア り、予防的安全対策を推進するとともに、事業 ルコール検査体制の強化、アルコール教育の適 参入時・事業拡張時の事前審査及び抜き打ちを 切な実施及び組織的な飲酒傾向の把握等が図ら
【関連リンク】 航空安全プログラム(SSP)について URL:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk2_000005.html
注 15 客 席数が 100 又は最大離陸重量が5万キログラムを超える航空機を使用して航空運送事業を経営する本邦航空運送事 業者に係る事故に限る。
国土交通白書 2026 243 第4節 交通分野における安全対策の強化
れるよう、引き続き指導・監督を実施していく。 和7年の大阪・関西万博で空飛ぶクルマのデモ フライトを実施した。また、万博後の社会実装 ③航空機等の安全性審査 に向け、「空の移動革命に向けた官民協議会」 国土交通省では、米国・欧州の航空当局等と において8年3月に「空の移動革命に向けた 密接に連携するとともに、安全性審査を担当す ロードマップ」を改訂し、9 年 /10 年から一部 る職員の能力維持・向上等を図ることにより、 地域での商用運航開始を目指すことを明確化し 「空飛ぶクルマ」を含む国産及び輸入航空機の た。引き続き、ロードマップに基づき、社会受 安全・環境基準への適合性の審査を適切かつ円 容性の向上、多様な機体や高度な運航(自動・ 滑に実施している。また、無人航空機につい 自律飛行、高密度運航)等への対応、離着陸場 て、産業界及び諸外国の動向を踏まえた基準の の普及等を進めるために、官民一体となって取 策定や、機体の審査等を実施している。 組を進めていく。 また、小型無操縦者航空機については、山間 Ⅱ ④無人航空機等の安全対策 地や災害時における物資輸送等への幅広い活用 無人航空機については、「航空法」において、 が期待されるため、早期実装に向けて当該機体 第6章
飛行のための許可・承認制度、機体登録制度、 の開発促進及び運航実現に必要となる基準等の レベル4飛行実現のための機体認証制度や操縦 整備を進めていく。 者技能証明制度等の基本的なルールを定めてい 安全・安心社会の構築
る。更なる無人航空機を活用した事業の拡大に ⑤小型航空機の安全対策 向けては、安全性を確保しつつ、採算性や効率 平成 28 年 12 月に有識者や関係団体等から構 性を高めていくことが重要であるところ、操 成される「小型航空機等に係る安全推進委員 縦者の数より多い複数の無人航空機の同時運 会」を立ち上げ、「新技術の活用」 、「操縦士に 航(多数機同時運航)の普及拡大に向け、「無 対する指導監督の強化」及び「安全情報の発信 人航空機の多数機同時運航を安全に行うための 強化」の三つの柱で、安全対策を推進している ガイドライン」 (第一版)を令和7年3月に策 ほか、令和7年の航空法等の一部改正に基づき 定した。今後は新技術の活用も含めた機体数の 操縦者のヒューマンエラー防止を目的として技 上限拡大等に向け、必要な環境整備等を進めて 能発揮訓練の修了が求められるようになること いく。また、より高度かつ高密度な運航を実現 を通じ、滑走路への誤進入等の危険な事態の発 するための、無人航空機の運航管理システム 生防止に取り組んでいる。 (UTM)の段階的導入を行っていく。 「空飛ぶクルマ」については世界各国で機体 (2)安全な航空交通のための航空保安システ 開発の取組が進められているが、我が国におい ムの構築 ても、都市部での送迎サービスや離島や山間部 「羽田空港航空機衝突事故対策検討委員会」 での移動手段、災害時の救急搬送等の活用を期 の中間取りまとめを踏まえ、滑走路誤進入に係 待し、世界に先駆けた実現を目指している。令 る安全・安心対策を順次に講じる。また、将来
【関連リンク】 安全対策|羽田空港のこれから URL:https://www.mlit.go.jp/koku/haneda/report/safety/01/
【関連データ】 本邦航空会社の事故件数及び発生率 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
244 国土交通白書 2026 第4節 交通分野における安全対策の強化
的な航空需要の増加も踏まえたデジタル技術等 化、航空交通管理の高度化に向けた調査・研究 の活用による滑走路誤進入検知システムの強 を推進していく。
5 航空、鉄道、船舶事故等における原因究明と事故等防止 運輸安全委員会は、独立性の高い専門の調査 ること等を勧告した(7年 10 月公表注 17)。 機関として、航空・鉄道・船舶の事故及びイン 船舶事故等では、令和6年7月、北海道苫小 シデント(事故等)の調査により原因を究明 牧市苫小牧港で、旅客フェリーが消波ブロック し、国土交通大臣等に再発防止及び被害の軽減 に衝突した事案について、船長が正確な船位を に向けた施策等の実施を求めている。 把握しておらず、進路を誤認して変針を遅らせ 令和7年度中、調査対象となる事故等は、航 たほか、安全管理に関する社内ルールを遵守し 空 28 件、鉄道16 件、船舶 620 件発生した。ま ていなかったなどの複合的な要因により発生し た、同年度中、航空 34 件、鉄道 7 件、船舶 627 たことを明らかにした。また、再発防止を目的 Ⅱ 件の調査報告書を公表した。 とし、船舶事故調査官が事業者に向けた出前講
第6章 座を実施した(7年4月公表注 18)。 ①令和7年度中に調査報告書を公表した主な事案 航空事故等では、令和5年1月、中部国際空 ②事故等防止に関する普及啓発活動
安全・安心社会の構築 港で、旅客機が着陸後、脱出スライドを使用し 事故等の再発防止に係る安全提言や各種統計 て乗客を降機させた際に乗客数名が重軽傷を に基づく分析及び参考にすべき事故事例をまと 負った事案について、乗客のスライド滑降が正 めた「運輸安全委員会ダイジェスト」等を発 しい姿勢で行われなかったために発生したこと 行しており、また安全啓発のための特集ペー を明らかにした。その再発防止策として、各航 ジ注 19 をウェブサイト上で作成、公開している。 空運送事業者において、「乗客に対してスライ 船舶事故等調査報告書については、地図上から ド滑降時にとるべき姿勢を確実に周知するとと 検索できる「船舶事故ハザードマップ」注 20(モ もに、地上援助者の要請を確実に行うことが重 バイル端末対応)や船舶の機関故障部位から検 注 16 要である」と提言した(7 年 4 月公表 )。 索できる「機関故障検索システム」注 21 を公開し 鉄道事故等では、令和6年 10 月、千葉県で ている。 列車が右曲線を走行中に脱線した事案につい て、曲線中の軌間変位が大きく不良まくらぎが ③デジタル技術の活用 連続しており、それらを定期検査で把握してい 多様な交通分野で情報化・自動化等が進んで たが必要な補修ができていなかったことなどに おり、また次世代モビリティの実用化が計画さ より発生したことを明らかにした。この事案の れている中、より適確な事故調査・原因究明を 再発防止を図るため、当該事業者に対し、適切 行うため、最新技術に関する情報を調査・研究 に軌道変位の管理・補修ができる体制を構築す し、事故等調査能力の強化を推進する。
注 16 報告書 https://jtsb.mlit.go.jp/aircraft/rep-acci/AA2025-4-1-JA14JJ.pdf 注 17 報告書 https://jtsb.mlit.go.jp/railway/rep-acci/RA2025-5-1.pdf 注 18 報告書 https://jtsb.mlit.go.jp/ship/rep-acci/2025/MA2025-4-2_2024tk0005.pdf 注 19 安全へのツール http://jtsb.mlit.go.jp/bunseki.html 注 20 船舶事故ハザードマップ https://jtsb.mlit.go.jp/hazardmap.html 注 21 機関故障検索システム https://jtsb.mlit.go.jp/hazardmap/etss/ 小型船舶機関故障検索システム https://jtsb.mlit.go.jp/hazardmap/s_etss/
国土交通白書 2026 245 第4節 交通分野における安全対策の強化
また、ドローン、3D スキャン装置、CT ス するなど、今後も新たな調査手法の導入により キャン装置等を活用し、より多様な事故現場又 科学的かつ客観的な解析能力の強化を推進す は事故対象物品に対して高精度なデータを取得 る。
6 公共交通における事故による被害者・家族等への支援 令和7年度においても、公共交通事故発生 フォーラムの開催、公共交通事業者による被害 時には、被害者等へ相談窓口を周知するととも 者等支援計画の策定の働きかけ等を行っている。 に被害者等からの相談を聞き取って適切な機関 平成 28 年に発生した軽井沢スキーバス事故 を紹介し、平時には、支援に当たる職員に対す や令和4年に発生した知床遊覧船事故について る教育訓練の実施、外部の関係機関とのネッ は被害者等との意見交換会や情報提供の場を設 トワークの構築、公共交通事故被害者等支援 けるなどの支援を継続して実施している。 Ⅱ 第6章
7 道路交通における安全対策 令和7年の交通事故死者数は、2,547 人で前 「ゾーン 30 プラス」として設定し、人優先の安 年比 116 人、4.4% の減少で、統計が残る昭和 全・安心な通行空間の整備を推進している。 安全・安心社会の構築
23 年以降最少となった。しかし、交通事故死 具体的には、警察と道路管理者は検討段階か 者の約半数が歩行中・自転車乗用中で、その約 ら緊密に連携して、最高速度 30 キロメートル 半数が自宅から 500m 以内の身近な場所で発生 毎時の区域規制と物理的デバイスとの適切な組 するなど依然として厳しい状況である。このた 合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域 め、更なる交通事故の削減を目指し、警察庁等 を「ゾーン 30 プラス」として設定し、ハンプ と連携して各種対策を実施している。 や狭さくの設置等による車両の速度抑制対策や 通過交通の進入抑制対策、外周幹線道路の交通 (1)道路の交通安全対策 を円滑化するための交差点改良等を推進してい ①ビッグデータ等を活用した幹線道路・生活道 る。これらの交通安全対策の立案等に当たって 路の交通安全対策の推進 は、急減速や速度超過等の潜在的な危険箇所を 道路の機能分化を推進することで自動車交通 見える化するため、ビッグデータ等の活用を推 を安全性の高い高速道路等へ転換させるととも 進している。また、世代別の事故特性を踏ま に、幹線道路については、安全性を一層高める え、データや新技術を活用し、中高生の自転車 ために都道府県公安委員会と連携した「事故危 通学中の事故対策や、高齢者の横断中の事故対 険箇所」の対策や「事故ゼロプラン(事故危険 策、積雪地域での冬期の通学路対策等の交通安 」により、効果的・効率的 区間重点解消作戦) 全対策を強化している。 に事故対策を推進している。 一方、生活道路については、車両の速度抑制 ②通学路等の交通安全対策の推進 や通過交通進入抑制による安全な歩行空間の 通学路や未就学児を中心にこどもが日常的に 確保等を目的として、警察庁と国土交通省は、 集団で移動する経路における交通安全を確保す
【関連データ】 交通事故件数及び死傷者数等の推移 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
246 国土交通白書 2026 第4節 交通分野における安全対策の強化
るため、 「通学路交通安全プログラム」等に基 性確保の観点から選定した優先整備区間の中か づく定期的な合同点検の実施や対策の改善・充 ら財源確保状況も踏まえ、計画的に4車線化等 実等の継続的な取組を支援するとともに、道路 を実施していく。また、正面衝突事故防止対策 交通実態に応じ、学校、教育委員会、警察、保 として、土工部及び中小橋においては令和4年 育所等対象施設、その所管機関、道路管理者等 度にワイヤロープ設置が概成しており、長大 の関係機関が連携し、ハード・ソフトの両面か 橋及びトンネル区間においては、車両の逸脱 ら必要な対策を推進しており、 「通学路交通安 防止性能等を満たす区画柵を全国 79 か所(約 全プログラム」に位置付けられた交通安全対策 31km)の実道で3年度より試行設置し、効果 事業への支援を重点的に実施している。 検証を推進していく。 また、令和元年に発生した園児等の死傷事故 また、高速道路での逆走事故対策として、逆 を受け決定された「未就学児等及び高齢運転者 走車に対して強く衝撃を与えるような段差や突 の交通安全緊急対策」 (元年6月 18 日関係閣僚 起物を路面上に設ける物理的対策等を実施する 会議決定)に基づき行われた緊急安全点検の結 とともに、高速道路に設置されている道路管理 Ⅱ 果を踏まえた交通安全対策事業への支援も重点 用カメラの画像から AI 技術により逆走車両を
第6章 的に実施している。 検知し、カーナビやスマートフォンを通じて、 さらに、令和3年6月に発生した下校中の小 逆走車及び周囲の順走車に対して逆走情報を通 学生の死傷事故を受け決定された「通学路等に 知する技術の開発等を推進する。
安全・安心社会の構築 おける交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係 る緊急対策」(3年8月4日関係閣僚会議決定) (2)安全で安心な道路サービスを提供する計 に基づき通学路合同点検を実施し、この結果を 画的な道路施設の管理 踏まえ、学校、教育委員会、警察、道路管理者 全国には道路橋が約 73 万橋、道路トンネル 等の関係者が連携し、ハード・ソフトの両面か が約 1 万本存在し、高度経済成長期に集中的に ら必要な対策を推進している。また、こどもの 整備した橋梁やトンネルは、今後急速に高齢化 安全性を更に高めるべく、小学校周辺のゾーン を迎える。こうした状況を踏まえ、平成 26 年 30 内にある通学路に着目し、事故の状況、交 より、全国の橋やトンネル等について、国が定 通規制、自動車走行速度などのデータ分析・評 める統一的な基準により、5 年に 1 度の頻度で 価を基に、ゾーン 30 プラスの導入などの面的 点検を行っている。平成 31 年度から令和5年 な対策を、警察や学校、地域などとも連携して 度までに実施した橋梁、トンネル等の二巡目点 実施する。 検の結果、橋梁では次回点検までに措置を講ず べきものが全国に約6万橋存在する。このう ③高速道路の安全性、信頼性や使いやすさを向 ち、地方公共団体管理の橋梁では修繕が完了し 上する取組 たものが約 32%(令和6年度末時点)にとど 令和元年9月に策定した「高速道路における まることから、「道路メンテナンス事業補助制 安全・安心基本計画」等を踏まえ、利用者視点 度」により計画的かつ集中的に支援している。 の下、新技術等を活用しつつ、高速道路の安全 今後、地方公共団体が計画的にメンテナンス 性、信頼性や使いやすさを向上する取組を計画 を図られるよう、具体的な対策内容を盛り込ん 的に推進していく。 だ長寿命化修繕計画の策定・公表を促す職員の 具体的には、暫定2車線区間における走行性 技術力向上に向けた研修の充実等による支援を や安全性の課題を効率的に解消するため、時間 実施するとともに、緊急的な対応が必要かつ高 信頼性の確保や事故防止、ネットワークの代替 度な技術力を要する施設については直轄診断・
国土交通白書 2026 247 第4節 交通分野における安全対策の強化
修繕代行による支援を実施する。さらに、高速 義務付ける改正(流通業務の統合化及び効率化 道路の老朽化に対応するため、大規模更新・修 の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法 繕事業を計画的に進めているほか、跨線橋の計 の一部を改正する法律(令和6年法律第 23 号) ) 画的な維持及び修繕が図られるよう、あらかじ を令和6年に行ったほか、荷主や元請運送事業 め鉄道事業者等との協議により、跨線橋の維持 者等の関係者を交えた「貨物軽自動車運送事業 又は修繕の方法を定め、第三者被害の予防及び 適正化協議会」において、輸送の安全に関する 鉄道の安全性確保等に取り組んでいる。 情報共有や意見交換を引き続き実施している。
(3)バスの重大事故を受けた安全対策の実施 ②運輸安全マネジメントを通じた安全体質の確立 平成 28 年1月に発生した軽井沢スキーバス 平成 18 年 10 月より導入した「運輸安全マネ 事故を踏まえ、同年6月に「軽井沢スキーバス ジメント制度」により、事業者が社内一丸と 事故対策検討委員会」において取りまとめた 85 なった安全管理体制を構築・改善し、国がその Ⅱ 項目に及ぶ「安全・安心な貸切バスの運行を実 実施状況を確認する運輸安全マネジメント評価 現するための総合的な対策」を着実に実施して を、令和7年度は自動車運送事業者 83 者に対 第6章
きた。令和8年度から、 「軽井沢スキーバス事故 して実施した。特に、平成 29 年7月の運輸審 対策フォローアップ会議」に代えて貸切バスの 議会の答申を踏まえ、令和3年度までにすべて 安全対策に係る協議会を設置し、貸切バス全体 の貸切バス事業者について評価を終了した。そ 安全・安心社会の構築
について更なる安全対策の協議を行っていく。 の後、新規許可を受けた貸切バス事業者や一定 規模以上の貸切バス事業者について優先的に評 (4)事業用自動車の安全プラン等に基づく安 価を実施している。 全対策の推進 事業用自動車の交通事故については、令和 (5)自動車の総合的な安全対策 8年3月に策定した「事業用自動車総合安全 ①今後の車両安全対策の検討 プラン 2030」に基づき、12 年までに事業用 第 11 次交通安全基本計画(計画年度:令和 自動車の事故による 24 時間死者数を 225 人以 3~7年度)を踏まえ、交通政策審議会陸上交 下、重症者数を 1,740 人以下、人身事故件数を 通分科会自動車部会において、今後の車両の安 16,500 件以下、飲酒運転を 0 件とする事故削 全対策のあり方、車両の安全対策による事故削 減目標の達成に向けて関係者が一丸となって各 減目標等について審議され、3年6月に報告書 種取組を進めていく。 が取りまとめられた。報告書では「歩行者・自 転車等利用者の安全確保」、「自動車乗員の安全 ①業態ごとの事故発生傾向、主要な要因等を踏 確保」、「社会的背景を踏まえて重視すべき重大 まえた事故防止対策 事故の防止」及び「自動運転関連技術の活用・ 輸送の安全の確保を図るため、トラック・バ 適正利用促進」を今後の車両安全対策の柱とす ス・タクシーの業態ごとの特徴的な事故傾向を踏 るとともに、12 年までに、車両安全対策によ まえた事故防止の取組について評価し、更なる り、年間の 30 日以内交通事故死者数を 1,200 事故削減に向け、必要に応じて見直しを行う等、 人削減、重傷者数を 11,000 人削減するとの目 フォローアップを実施している。トラックの中で 標が掲げられた。また、高齢運転者の事故防止 も事業用軽貨物自動車の死亡重傷事故件数が増 対策として、ペダルの踏み間違い等、運転操作 加していることを踏まえ、貨物軽自動車運送事業 ミス等に起因する高齢運転者による事故が発生 者に対し、貨物軽自動車安全管理者の選任等を していることや、高齢化の進展により運転者
248 国土交通白書 2026 第4節 交通分野における安全対策の強化
の高齢化が今後も加速していくことを踏まえ、 イバー異常時対応システム作動時の車外への報 「安全運転サポート車(サポカー)」の普及促進 知性改善のためのガイドライン改訂に向けた検 に取り組む等により、先進的な安全技術を搭載 討等を行った。 した自動車の性能向上と普及促進に取り組ん だ。さらに、ペダル踏み間違い時加速抑制装置 ④自動車アセスメントによる安全情報の提供 については、国際基準化を踏まえ7年6月に道 安全な自動車及びチャイルドシートの開発や 路運送車両の保安基準等を改正し、乗用車につ ユーザーによる選択を促すため、これらの安全 いて、障害物の手前で停止中に誤ってアクセル 性能を評価し結果を公表している。令和7年 を踏み込んだときに急発進や急加速を抑制する 度は、8車種について、衝突安全性能、予防 装置の搭載を義務付けた。加えて、8年1月に 安全性能等の評価に取り組み、「自動車安全性 は、停止中だけでなくクリープ走行中にも作動 能 2025」として結果を公表した。なお、6 年 することとする要件強化を行うなど、保安基準 度より新たに交差点に対応した衝突被害軽減ブ の拡充・強化を行った。 レーキ及び新しいオフセット前面衝突(相手車 Ⅱ への加害性を考慮した対向車との部分衝突)に
第6章 ②安全基準等の拡充・強化 ついて、評価を開始した。 自動車の安全性の向上を図るため、国連の自 動車基準調和世界フォーラム(WP.29)にお ⑤自動運転の実現に向けた取組
安全・安心社会の構築 いて日本が副議長を担うなど議論を主導してい より高度な自動運転の国連基準について、令 る。特に、電気自動車等のバッテリーが異常発 和8年6月の合意を目指し、7年度において 熱を生じた場合においても乗員を保護するため も、国連 WP.29 傘下の自動運転システム専門 の要件について、日本の提案に基づき、国際基 家会議で日本は共同議長を務め、WP.29 にお 準の改正が合意された。これを受け、令和7年 ける議論を官民をあげて主導した。 9月に道路運送車両の保安基準等の改正を行っ また、自動運転機能等の故障による事故を防 た。引き続き、自動車の安全性向上に向けて、 ぐため、令和6年 10 月から自動車の電子的な 更なる安全基準の拡充・強化を図っていく。 検査(OBD 検査)を実施している。 加えて、将来の L4 車両に繋がる L2++ 車両 ③先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・ の開発が進められているところ、L2++ 車両に 普及の促進 ついて、一定の安全性や運転支援機能を有す 産学官の連携により、先進技術を搭載した自 ることを国が性能認定する「優良認定制度」を 動車の開発と普及を促進し、交通事故削減を目 2026 年中を目途に創設し、社会受容性の向上 指す「先進安全自動車(ASV)推進プロジェ を図るとともに、自動車ユーザーが安全性の高 クト」では、令和 3 年度から7年度の5年間に いシステムを搭載した車両を選択しやすい環境 わたる第7期 ASV 推進検討会において「自動 を整備することにより、事故削減に効果的な 運転の高度化に向けた ASV の更なる推進」を L2++ 車両の普及を促進する。 基本テーマに掲げ、7年度は、誰もが使用する 技術となった ASV の正しい理解・利用の徹底 ⑥自動車型式指定制度 と効果的な普及を図るための動画の作成、ドラ 自動車型式指定制度においては、自動車の保
【関連リンク】 自動車の型式指定制度等の概要 URL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001610987.pdf
国土交通白書 2026 249 第4節 交通分野における安全対策の強化
安基準への適合性審査を独立行政法人自動車技 ある自動車について、独立行政法人自動車技術 術総合機構交通安全環境研究所と連携して実施 総合機構交通安全環境研究所において技術的検 するとともに、国土交通省において生産過程に 証を行い、自動車製作者等への確認・指導を おける品質管理体制の審査を行うことにより、 行っている。 自動車の安全・環境性の確保を図っている。 また、収集した不具合情報や事故・火災情報 また、複数の自動車メーカー等において明ら 等を公表し、ユーザー等への注意喚起が必要な かとなった認証不正事案に対応するため、令和 事案や適切な使用及び保守管理、不具合発生時 6年 12 月に外部有識者を含めた検討会で取り の適切な対応について、ユーザーへの情報提供 まとめられた再発防止策を踏まえ、自動車メー を実施している。令和7年度は、運転支援シス カー等における内部統制の強化のための制度見 テムの特性等についての啓発動画を公表して注 直しを実施した。 意喚起を行うとともに、冬季の冬用タイヤや チェーンの適切な使用を促すため、季節に合わ Ⅱ ⑦リコールの迅速かつ着実な実施・ユーザー等 せた報道発表や X(旧 Twitter)を通じてユー への注意喚起 ザー等への注意喚起を行っている。 第6章
設計・製造過程における問題を原因とした自 動車の事故・トラブルを未然に防止するため、 ⑧自動車の整備・検査の高度化 リコール制度を運用し、自動車製作者等から届 自動車に搭載される先進安全技術の進化に伴 安全・安心社会の構築
出された情報について、ウェブサイト等を通じ い高度化する自動車整備技術に対応するため、 て発信している。令和6年度のリコール届出件 令和2年4月に特定整備制度を導入するととも 数は 337 件、対象台数は 7,564,968 台であっ に、「自動車整備技術の高度化検討会」を開催 た。 し、高度な整備に必要な情報や機器及びこれら この制度の的確な運用のため、不具合情報等 を使いこなす自動車整備士の確保・育成に関す について、自動車製作者等及びユーザーからの る制度等の検討を行っている。7年度は、自動 収集に努めるとともに、安全・環境性に疑義の 車特定整備事業者の「困りごと」の実態調査、
【関連リンク】 車の異常を連ラクダ!自動車のリコール・不具合情報サイト URL:https://www.mlit.go.jp/RJ/
【関連リンク】 令和6年度の自動車不具合情報について URL:https://renrakuda.mlit.go.jp/renrakuda/common/data/r6-defects.pdf
【動画】 電動車等の特性を理解して運転しましょう~電動車を運転するときの注意点をビデオで解説します~ 動 画 URL:https://youtu.be/b6xSocRravE
【関連リンク】 自動車整備技術の高度化検討会 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk9_000023.html
【関連リンク】 【改訂版】自動車整備士等の働きやすい・働きがいのある職場づくりに向けたガイドライン(令和7年6月) https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001895713.pdf
【関連リンク】 自動車の電子的な検査(OBD 検査)について URL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_OBD.html
250 国土交通白書 2026 第5節 危機管理・安全保障対策
整備マニュアル等の提供環境の改善及びスキャ 所等の活動を推進するため、研修や実務必携の ンツールの高機能化に関する取組を行うととも 発刊を通じて相談員の対応能力の向上を図ると に、人材確保・育成に資する職場環境づくりに ともに、関係者間での連絡調整・情報共有のた ついてのガイドラインの改訂等を行った。 めの会議やウェブサイトで相談活動の周知を行 また、自動運転機能等の先進安全技術の機能 うなど、地域における相談活動を支援してい 確認を行うため、令和6年 10 月から自動車の る。これにより、交通事故被害者等の福祉の向 電子的な検査(OBD 検査)を実施している。 上に寄与している。
(6)被害者支援 (7)機械式立体駐車場の安全対策 ①自動車損害賠償保障制度による被害者保護 機械式駐車装置の安全性に関する基準につい 自動車損害賠償保障制度では、クルマ社会の て、国際的な機械安全の考え方に基づく質的向 支え合いの考えに基づき、自賠責保険の保険金 上と多様な機械式駐車装置に適用するための標 支払いとともに、ひき逃げ・無保険車事故によ 準化を図るため、平成 29 年5月に JIS 規格を Ⅱ る被害者の救済(保障事業)や、重度後遺障害 制定しており、令和5年5月に更なる安全性向
第6章 者への介護料の支給や療護施設の設置・運営等 上を図るため、ワイヤーロープの強度及び安定 (被害者保護増進等事業)を実施している。今 性に関する基準等について一部改正した。 後も「被害者保護増進等事業に関する検討会」 また、平成 29 年 12 月の社会資本整備審議会
安全・安心社会の構築 を通じた施策の効果検証等を踏まえ、被害者支 「都市計画基本問題小委員会都市施設ワーキン 援等の更なる充実に取り組むとともに、自動車 ググループ」取りまとめを踏まえ、平成 30 年 事故被害者への情報提供の充実、自動車損害賠 7月に策定した「機械式駐車設備の適切な維持 償保障制度に係る自動車ユーザーの理解促進に 管理に関する指針」について、近年、機器等の も取り組み、安全・安心なクルマ社会を実現し 交換が適切に実施されなかったことによる機械 ていく。 式駐車設備の事故が発生している状況を踏ま え、令和3年9月に指針の一部見直しを行って ②交通事故相談活動の推進 おり、機械式駐車装置設置後の点検等による安 地方公共団体に設置されている交通事故相談 全確保を推進している。
第5節 危機管理・安全保障対策 鉄道、航空機等における多数の死傷者を伴う 安庁の特殊部隊である特殊救難隊・機動防除隊 事故や船舶からの油、危険・有害物質流出事故 等の出動体制の確保、防災資機材や救助資機材 等の事故災害が発生した場合には、国土交通省 の整備等を行うとともに、合同訓練等を実施 に災害対策本部を設置し、迅速かつ的確な情報 し、関係機関等との連携強化を図っている。ま の収集・集約、関係行政機関等との災害応急対 た、油等防除に必要な沿岸海域環境保全情報を 策が実施できるよう体制整備を行っている。海 整備し、海洋状況表示システム(海しる)を通 上における事故災害への対応については、巡視 じて提供している。 船艇・航空機・大型浚渫兼油回収船や、海上保
国土交通白書 2026 251 第5節 危機管理・安全保障対策
1 犯罪・テロ対策等の推進 (1)各 国との連携による危機管理・安全保障 律」に基づき、海上自衛隊の護衛艦により、ア 対策 デン湾において通航船舶の護衛を行うと同時 ①セキュリティに関する国際的な取組 に、P-3C 哨戒機による警戒監視活動を行って 主要国首脳会議(G7) 、国際海事機関(IMO) 、 いる。国土交通省においては、船社等からの護 国際民間航空機関(ICAO)、アジア太平洋経 衛申請の窓口及び護衛対象船舶の選定を担うほ 済協力(APEC)等の国際機関・フォーラムに か、一定の要件を満たす日本船舶において民間 おける交通セキュリティ分野の会合やプロジェ 武装警備員による乗船警備を可能とする「海賊 クトに参加し、我が国のセキュリティ対策に活 多発海域における日本船舶の警備に関する特別 かすとともに、国際的な連携・調和に向けた取 措置法」の運用を適切に行い、日本船舶の航行 組を進めている。平成 18 年に創設された「陸 安全の確保に万全を期していく。 Ⅱ 上交通セキュリティ国際ワーキンググループ 海上保安庁においては、ソマリア沖・アデン (IWGLTS) 」には、現在 16 か国以上が参加し 湾における海賊対処のために派遣された護衛艦 第6章
ており、陸上交通のセキュリティ対策に関する に、海賊行為があった場合の司法警察活動を行 枠組みとして、更なる発展が見込まれているほ うため海上保安官を同乗させ、海上自衛官とと か、日米、日 EU といった二国間会議も活用し、 もに海賊行為の監視、情報収集等を行ってい 安全・安心社会の構築
国内の保安向上、国際貢献に努めている。 る。また、同周辺海域沿岸国の海上保安機関と の間で海賊の護送に関する訓練等を実施してい ②海賊対策 る。 国際海事局(IMB)によると、令和7年に 東南アジア周辺海域等においては、巡視船や おける海賊及び武装強盗事案の発生件数は 137 航空機を派遣し、公海上でのしょう戒のほか、 件であり、地域別では、ソマリア周辺海域が5 寄港国海上保安機関等と連携訓練や意見・情報 件、西アフリカ(ギニア湾)が 21 件及び東南 交換を行うなど連携・協力関係の推進に取り組 アジア海域が 95 件、その他 16 件となっている。 んでいる。 平成 20 年以降、ソマリア周辺海域において 凶悪な海賊事案が急増したが、各国海軍等によ ③中東地域における対応 る海賊対処活動、商船側によるベスト・マネジ 我が国は輸入原油の9割以上を中東地域に依 メント・プラクティス・マリタイム・セキュリ 存しており、中東地域における船舶の安全確保 注 22 ティ(BMP-MS) に基づく自衛措置の実施、 は必要不可欠である。しかしながら、中東地域 商船の民間武装警備員の乗船等国際社会の取組 においては、高い緊張状態が継続しており、令 により、近年は低い水準で推移していた。しか 和 5 年 11 月 19 日には、紅海において、我が国 しながら、令和6年1月以降同海域で海賊事案 海運事業者が運航する船舶が「拿捕」される事 注 23 が続発するようになり、商船の航行にとって予 案 が発生した。 断を許さない状況が続いている。 また、令和8年2月には、イスラエル及び米 このような状況の下、我が国としては、「海 国とイランとの間の攻撃の応酬によりホルムズ 賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法 海峡が実質的に封鎖され、日本関係船舶がペル
注 22 国際海運会議所等海運団体により作成されたソマリア海賊による被害を防止し又は最小化するための自衛措置(海賊 行為の回避措置、船内の避難区画(シタデル)の整備等)を定めたもの。 注 23 令和7年1月 22 日、乗組員 25 名は約 14 ヶ月ぶりに解放された。
252 国土交通白書 2026 第5節 危機管理・安全保障対策
シャ湾内に留め置かれる事案が発生した。 いて利用者に周知するよう鉄軌道事業者に対し 我が国としては、令和7年 11 月に閣議決定 て指導するなど、鉄道におけるテロ対策の推進 にて一部変更した「中東地域における日本関係 に取り組んでいる。 船舶の安全確保に関する政府の取組について」 を踏まえ、引き続き、更なる外交努力や航行安 ②船舶・港湾におけるテロ対策の推進 全対策の徹底、自衛隊による情報収集活動を行 「国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確 い、我が国関係船舶の航行安全の確保に万全を 保等に関する法律」に基づく国際航海船舶から 期していく。 の船舶保安情報の確認、保安規程の承認・船舶 検査、国際港湾施設の保安規程の承認、入港船 (2)公共交通機関等におけるテロ対策の徹底・ 舶に関する規制、国際航海船舶・国際港湾施設 強化 に対する立入検査及びポートステートコント 国際的なテロの脅威は極めて深刻な状況であ ロール(PSC)を通じて、保安の確保に取り り、公共交通機関や重要インフラにおけるテロ 組んでいる。 Ⅱ 対策の取組を進めることは重要な課題である。
第6章 令和9年3月からの国際園芸博覧会の開催を見 ③航空におけるテロ対策の推進 据え、国土交通省では、所管の分野において 国際民間航空条約に規定される国際標準や航 ハード・ソフトの両面からテロ対策を強化する 空法に基づき策定している危害行為防止基本方
安全・安心社会の構築 など、引き続き、関係省庁と連携しつつ、取組 針等に従って、関係者と連携を図りながら、航 を進める。 空保安対策を推進している。具体的には、各空 港において、車両及び人の侵入防止対策として ①鉄道におけるテロ対策の推進 フェンス等にセンサを設置するなど、侵入が 令和3年 10 月に発生した京王線車内傷害事 あった場合の迅速な対応を可能とする対策を講 件等を受けて同年 12 月に取りまとめた対応策 じているほか、先進的な保安検査機器の導入を 等を踏まえ、 「車内非常用設備等の表示に関す 促進するなど航空保安検査の高度化を図ってい るガイドライン」に基づき表示された非常通報 る。 装置等の活用や車内への危険物の持込みの制限 加えて、令和 2 年 7 月に「重要施設の周辺地 について、利用者への呼びかけを継続すること 域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に で、鉄道の安全安心の確保に取り組んでいる。 関する法律」に基づき8空港注 24 を対象空港と また、他人に危害を及ぼすおそれのある行為等 して指定し、当該空港周辺での小型無人機等の を抑止する効果を高めるため、 「鉄道運輸規程 飛行を禁止するとともに、これに違反して飛行 及び軌道運輸規程」を5年 10 月に改正し、新 する小型無人機等に対する退去命令や飛行妨害 幹線や利用者の多い在来線等の新造車両を対象 等の措置を警察官等により行うことができるよ に車内防犯カメラの設置を義務付けたところで う体制整備を行っている。また、上記8空港以 あるが、その設置率は大手民鉄で約6割に達し 外の空港についても、同年 9 月より、空港の機 ており、今後とも普及促進に取り組んでいく。 能を確保する観点から、空港の設置者に対し、 さらに、大阪・関西万博の開催に先立つ7年 2 空港周辺における無人航空機の飛行等の行為に 月に「鉄道テロへの対応ガイドライン」を一部 関し、行為が禁止されていることの周知や場周 改正し、列車内への危険品持込規制の内容につ 警備の一環としての巡視の実施、違反行為が確
注 24 新千歳空港、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、大阪国際空港、関西国際空港、福岡空港、那覇空港。
国土交通白書 2026 253 第5節 危機管理・安全保障対策
認された場合の連絡体制の構築等を義務付け、 等を確実かつ迅速に行うため、出入管理情報シ 空港の設置者においてこれらの実施のための体 ステムを導入し、平成 27 年1月より本格運用 制整備を行っている。 を開始しているほか、CONPAS(新・港湾情 報システム)における入場受付にも PS(Port ④自動車におけるテロ対策の推進 Security)カードを活用することでゲート処理 車内の点検、営業所・車庫内外における巡回 時間の短縮を図っている。また、感染症が流行 強化、警備要員等の主要バス乗降場への派遣、 した際においても、港湾物流事業を継続する必 防犯カメラの設置、不審者・不審物発見時の警 要があるため、セキュリティを確保しつつ本人 察への通報や協力体制の整備等、テロの未然防 確認及び所属確認等を非接触に行えるよう出入 止対策を推進している。さらに、バスジャック 管理情報システムの改修を進めている。 対応訓練の実施等についても推進している。 さらに、令和5年7月の名古屋港のコンテナ ターミナルに対するサイバー攻撃事案を受け、 Ⅱ ⑤重要施設等におけるテロ対策の推進 港湾の情報セキュリティ対策等の強化を図るた 河川関係施設等では、河川・砂防・海岸等の め、港湾運送事業法、サイバーセキュリティ基 第6章
点検・巡視時における不審物等への特段の注 本法及び経済安全保障推進法の観点から制度的 意、ダム管理庁舎及び堤体監査廊等の出入口の 措置を講じたほか、港湾運送事業者等のサイ 施錠強化等を行っている。道路関係施設では、 バーセキュリティ対応能力の向上に係る支援に 安全・安心社会の構築
道路、橋梁下、共同溝、休憩施設等の巡回・点 取り組んでいる。 検時における不審物等への特段の注意、工事用 資機材の盗難防止・紛失等の管理強化を行って (4)サイバーセキュリティ対策 いる。都市公園関係施設では国営公園におけ 近年、民間企業へのサプライチェーン・リス る、巡回警備の強化、貼り紙掲示等による注意 クを突いた攻撃やゼロデイ攻撃を含め、サイ 喚起等を行っている。 バーセキュリティに対する脅威が増大している。 国土交通省においては、所管する独立行政法 (3)物流におけるセキュリティと効率化の両立 人や重要インフラ事業者、更には交通・運輸分 航空貨物に対する保安体制については、荷主 野におけるサイバーセキュリティの情報共有 から航空機搭載まで一貫して航空貨物を保護す 等を行う交通 ISAC 等とともにサイバーセキュ ることを目的に、ICAO の国際基準に基づき制 リティ対策の強化に取り組んでおり、国家サ 注 25 定された KS/RA 制度 を運用している。 イバー統括室(NCO)等との連携の下、サイ また、主要港のコンテナターミナルにおいて バー攻撃への対処態勢の充実・強化等の取組を は、トラック運転手等の本人確認及び所属確認 推進している。
2 事故災害への対応体制の確立 海上における船舶の海難に伴って発生する油 償責任、船舶所有者に対する保険者との保障契 等の汚染や難破物除去等の損害に関し、船舶油 約締結義務が課せられており、地方運輸局等に 濁等損害賠償保障法により、船舶所有者等の賠 おいて、保障契約証明書の交付、入港予定の外
注 25 航 空機搭載前までに、特定荷主(Known Shipper)、特定航空貨物利用運送事業者又は特定航空運送代理店業者 (Regulated Agent)又は航空会社においてすべての航空貨物の安全性を確認する制度。
254 国土交通白書 2026 第5節 危機管理・安全保障対策
航船舶から通報される保障契約情報の確認によ に対する補償を行うなどの国際的な枠組みであ り、無保険船舶の排除を行うとともに、船舶の る国際油濁補償基金(IOPCF)において、我 海難等からの被害者保護を図り、海上輸送の健 が国は主要拠出国として、基金の運営をリード 全な発達に寄与している。 し、世界各地で発生する油濁損害対応に大きく また、タンカーの事故により油濁損害が発生 貢献している。 した際、船舶所有者等の賠償責任を超える被害
Column コラム 『特殊救難隊』発足 50 周年及び IMO(国際海事機関)勇敢賞表彰状受賞 『機動防除隊』発足 30 周年
令和7年度、海上保安庁の海難救助のスペシャリス トである特殊救難隊が発足 50 周年、海上防災のスペ た転覆した押船からの救助事案の活躍や世界の海難救 助機関に対する技術向上支援の貢献等が評価され、世 Ⅱ
第6章 シャリストである機動防除隊が発足 30 周年を迎え、 界各国の応募の中から IMO 勇敢賞表彰状に選出され 記念式典を挙行しました。 ました。 令 和 8 年 3 月 末 時 点 で、 特 殊 救 難 隊 は 出 動 実 績 海上保安庁では引き続き、一人でも多く、一分一秒 6,001 件及び救助者数 3,091 人、機動防除隊は出動実 でも早く尊い人命を救助すると共に、海洋汚染の防止 績 464 件を誇ります。 や海洋環境の保全に努めてまいります。
安全・安心社会の構築 また特殊救難隊は令和6年 11 月に神戸港で発生し
特殊救難隊発足 50 周年記念式典 記念撮影
IMO 本部(ロンドン)において開催された表彰式典
国土交通白書 2026 255 第5節 危機管理・安全保障対策
3 海上における治安の確保 (1)テロ対策の推進 ェリーターミナルにおける警戒 フ 図表Ⅱ-6-5-1 テロの未然防止措置として、原子力発電所や の様子
石油コンビナート等の重要インフラ施設に対し て、巡視船艇・航空機による監視警戒を行って いるほか、旅客ターミナル、フェリー等のいわ ゆるソフトターゲットにも重点を置いた警戒を 実施している。 また、新たなテロの脅威として、ドローンを 使用したテロの発生も懸念されていることから、 関係機関と連携して不審なドローン飛行に関す Ⅱ る情報を把握するとともに、ドローン対策資機 材を活用するなど複合的な対策を講じている。 第6章
さらに、テロ対策については、官民の連携が かつ大規模に行われるもの等が見受けられるほ 重要であるところ、海上保安庁では、官民が参 か、本邦滞在中の外国人による沿岸部における 画する「海上・臨海部テロ対策協議会」を定期 密漁が増加しており、令和7年7月には、本邦 安全・安心社会の構築
的に開催しており、ソフトターゲットへのテロ 滞在中の中国人による日本漁船を使用したサン 対策を官民一体となり推進している。 ゴの密漁も発生している。海上環境事犯では、 漁業残渣、廃材、廃船等の不法投棄や、企業に (2)不審船・工作船対策の推進 よる汚水の不法排出等が発生している。密輸事 不審船・工作船は、覚醒剤の運搬や工作員の 犯では、海上貨物への隠匿やパラサイト型密輸 不法出入国等の重大犯罪に関与している可能性 といった密輸手口の大口・巧妙化の傾向が益々 が高く、我が国の治安を脅かすこれらの活動を 高まっている。密航事犯では、貨物船の船員に 未然に防止することは重大な課題である。 よる不正上陸、訪日クルーズ船の乗客による不 海上保安庁では、巡視船艇・航空機により不 法上陸が発生している。 審な船舶に対する監視警戒を行うとともに、海 このような各種海上犯罪については、その態 上自衛隊との共同訓練を含む各種訓練を通じて 様が悪質・巧妙化しており、依然として緊張感 事案対処能力の維持・向上にも努めている。引 を持った取締りが求められているところ、海上 き続き、関係機関等との連携を一層強化して、 保安庁では、巡視船艇・航空機を効率的かつ効 不審船・工作船に対して厳格に対処していく。 果的に運用することで監視・取締りや犯罪情報 の収集・分析、立入検査を強化するとともに、 (3)海上犯罪対策の推進 国内外の関係機関との情報交換等、効果的な対 最近の海上犯罪の傾向として、密漁事犯で 策を講じ、厳正かつ的確な海上犯罪対策に努め は、密漁者と買受業者が結託した組織的な形態 ている。 で行われるものや、暴力団員が関与する組織的
256 国土交通白書 2026 第5節 危機管理・安全保障対策
4 安全保障と国民の生命・財産の保護 (1)北朝鮮問題への対応 の措置に関する法律」及び「国民の保護に関す 我が国では、 「特定船舶の入港の禁止に関す る基本指針」を受け、国土交通省・観光庁、国 る特別措置法」に基づき、すべての北朝鮮籍船 土地理院、気象庁及び海上保安庁において「国 舶、北朝鮮の港に寄港したことが確認された第 民の保護に関する計画」を定めている。 三国籍船舶及び日本籍船舶並びに国際連合安全 国土交通省・観光庁では、地方公共団体等の 保障理事会の決定等に基づき制裁措置の対象と 要請に応じ、避難住民の運送等について運送事 された船舶が入港禁止措置の対象とされている 業者である指定公共機関との連絡調整等の支援 が、令和7年4月8日の閣議において、国際情 等を実施すること、国土地理院では、地理空間 勢にかんがみ、当該入港禁止措置の期限を9年 情報を活用した被災状況や避難施設等に関する 4月 13 日まで延長することが決定された。 情報を関係省庁等と連携して国民に提供するこ 国土交通省・海上保安庁では、本措置の確実 と、気象庁では、気象情報等について関係省庁 Ⅱ な実施を図るため、これら船舶の入港に関する 等と連携して国民に提供すること、海上保安庁
第6章 情報の確認等を実施しているほか、関係行政機 では、警報及び避難措置の指示の伝達、避難住 関と緊密に連携し、 「国際連合安全保障理事会 民の誘導等必要な措置を実施することを定めて 決議第千八百七十四号等を踏まえ我が国が実施 いる。
安全・安心社会の構築 する貨物検査等に関する特別措置法」に基づく 対北朝鮮輸出入禁止措置の実効性確保に努めて (3)総合的な防衛体制の強化等に資する公共 いる。 インフラ整備 国土交通省・海上保安庁及び気象庁では、累 令和4年 12 月に閣議決定された国家安全保 次の北朝鮮関係事案の発生を踏まえ、関係省庁 障戦略に基づき、国土交通省は関係省庁と連携 との密接な連携の下、即応体制の強化、北朝鮮 して、総合的な防衛体制の強化等に資する公共 に対する監視・警戒態勢の継続をしているとこ インフラ整備に取り組んでいる。この取組で ろであり、弾道ミサイル等発射事案や核実験に は、自衛隊・海上保安庁が平素から必要な空 おいても、関係する情報の収集や必要な情報の 港・港湾を円滑に利用できるよう、インフラ管 提供を行うなど、国民の安全・安心の確保に努 理者との間で「円滑な利用に関する枠組み」を めている。特に、北朝鮮の弾道ミサイル等が我 設け、これらを「特定利用空港・港湾」とし、 が国周辺に発射された場合等には、我が国周辺 「特定利用空港・港湾」においては民生利用を の航空機や船舶に対して直接、または、事業者 主としつつ、自衛隊・海上保安庁の航空機・船 等を通じて迅速に情報を伝達し、注意を促すこ 舶の円滑な利用にも資するよう、必要な整備や ととしている。 既存事業を促進することとしている。また、8 年4月8日時点で、全国で 24 空港及び 33 港湾 (2)国民保護計画による武力攻撃事態等への を「特定利用空港・港湾」としている。 対応 「武力攻撃事態等における国民の保護のため
国土交通白書 2026 257 第5節 危機管理・安全保障対策
5 重篤な感染症及び影響の大きい家畜伝染病対策 (1)感染症対策 (2)影響の大きい家畜伝染病対策 感染症対策については、関係省庁と緊密に連 影響の大きい家畜伝染病対策については、平 携し対応している。 成 30 年9月、岐阜県の養豚場において、26 年 特に新型インフルエンザ等対策については、 ぶりとなる豚熱の発生が確認され、令和8年3 「新型インフルエンザ等対策特別措置法」にお 月 31 日までに、25 都県で計 102 事例の発生が いて、国土交通省を含む指定行政機関は自ら新 確認されている。また、令和7年 10 月、北海 型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施 道の養鶏場において、我が国では前年度に引き し、並びに地方公共団体及び指定公共機関が実 続き高病原性鳥インフルエンザの発生が確認さ 施する対策を的確かつ迅速に支援することによ れ、7年シーズン(8年5月末時点)では 16 り、国全体として万全の態勢を整備する責務を 道府県で 24 事例の発生が確認されている。 Ⅱ 有するとされている。 国土交通省では、地方公共団体が実施する防 国土交通省では、「国土交通省新型インフル 疫措置に必要となる資機材の提供、同地方公共 第6章
エンザ等対策行動計画」において、新型インフ 団体が行う防疫措置についての関係事業者に対 ルエンザ等対策について国土交通省が行うべき する協力要請を行うなど、更なる感染拡大の防 対応や、地方公共団体や所管の指定公共機関に 止のため、関係省庁と緊密に連携して必要な対 安全・安心社会の構築
対する支援の内容等を規定している。 応を講じている。
258 国土交通白書 2026 第1節 地球温暖化対策の推進
第 7章 美しく良好な環境の保全と創造
第1節 地球温暖化対策の推進
1 地球温暖化対策の実施等 気候変動の影響により、自然災害が激甚化・ 炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関 頻発化するなど、地球温暖化対策は世界的に喫 する法律」に基づき、我が国でも8年度から排 緊の課題となっている。世界平均気温は上昇傾 出量取引制度が本格稼働し、運輸部門をはじ 向にあり、1970 年以降、過去 2000 年間のど めとする国土交通分野も対象となるなど、GX の 50 年間よりも気温上昇は加速している。世 (グリーントランスフォーメーション)に係る 界気象機関(WMO)の報告によると、2025 一層の取組が求められているところである。 Ⅱ 年の世界の年平均気温は、工業化以前 1850 〜 こうした中で、地域のくらしや経済を支え
第7章 1900 年の平均気温を 1.43℃(± 0.13)上回っ る幅広い分野を所管する国土交通省では、民 ており、2023 年から 2025 年は、過去 176 年 生・運輸部門の脱炭素化等に貢献するため、令 の観測史上最も温暖な3年間となった。 和7年6月に「国土交通省環境行動計画」の改
美しく良好な環境の保全と創造 我 が 国 に お い て は、2050 年 ネ ッ ト・ ゼ ロ 定を行い、住宅・建築物や公共交通・物流等に の実現及び 2013 年度比で 2030 年度温室効果 おける省エネ化、インフラを活用した太陽光や ガス 46%削減、さらに 50%の高みに向けた 水力、バイオマス等の再エネの導入・利用拡大 挑戦を続けるとともに、2035 年度 60%削減、 (創エネ)、輸送・インフラ分野における非化石 2040 年度 73%削減という野心的な目標を掲げ 化等を推進している。 ている。また、令和7年5月に改正された「脱
2 地球温暖化対策(緩和策)の推進 (1)まちづくり GX の推進 や移動手段の変革」、エネルギーの面的利用や 地球的・国家的規模の課題である①気候変動 環境に配慮した民間都市開発等を推進すること への緩和策・適応策(CO2 排出削減、暑熱対 でエネルギー利用の効率化につなげる「街区・ 策等)や②生物多様性の確保(生物の生息・生 建物単位での取組」、グリーンインフラの社会 育環境の確保等) 、人々のライフスタイルの変 実装の推進等により都市部の CO2 吸収源拡大 化を受けた③ Well-being の向上(健康の増進、 につなげる「都市における緑とオープンスペー 良好な子育て環境等)の社会的要請に対応す スの確保」の3つの柱に加え、「猛暑の中でも るため、「まちづくり GX」に取り組んでいる。 安全・快適に暮らせる都市環境の形成」の取組 具体的には、都市のコンパクト・プラス・ネッ を進めている。 トワークや「居心地が良く歩きたくなる」空間 特に、「都市における緑とオープンスペース づくりを進め公共交通の利用の促進等を図るこ の確保」の取組としては、都市公園の整備を含 とで CO2 排出量の削減につなげる「都市構造 むグリーンインフラの社会実装、緑地の保全
国土交通白書 2026 259 第1節 地球温暖化対策の推進
及び緑化の推進、優良緑地確保計画認定制度 となく移動しやすい環境整備を図る観点から、 (TSUNAG)等を活用した民間事業者等によ MaaS やコンパクト・プラス・ネットワークの る緑地確保の後押しを行うことで、CO2 吸収、 推進、まちづくりと連携した公共交通ネット 生物の生息・生育空間の確保、健康増進等を推 ワークの再編、バリアフリー化の促進等による 進する。 公共交通サービスの更なる利便性向上を図ると ともに、エコ通勤優良事業所認証制度を活用し (2)環 境にやさしい自動車の開発・普及、最 た自治体・事業者によるエコ通勤の普及促進に 適な利活用の推進 取り組んだ。 環境性能に優れた自動車の普及を促進するた め、エコカー減税等による税制優遇措置を実施 (5)サプライチェーン全体の脱炭素化の推進 している。また、地球温暖化対策等を推進する 国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロ 観点から、関係省庁とも連携し、トラック・バ ベース)はトラックが最大であり、5割を超え ス・タクシー事業者等に、燃料電池自動車、電 ている。トラックの CO2 排出原単位は、大量 気自動車、プラグインハイブリッド自動車等の 輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、物流部
Ⅱ 導入に対する補助を行っている。また、車載用 門における CO2 排出割合は、トラックが太宗 蓄電池のリユースを促進し、再生可能エネル を占めている。 第7章
ギーの有効活用に貢献する。 国内物流を支えつつ、CO2 の排出を抑制す るために、トラック単体の低燃費化や輸送効率 (3)道路分野の脱炭素化に向けた取組 の向上と併せ、鉄道、内航海運等のエネルギー 美しく良好な環境の保全と創造
2050 年カーボンニュートラルの実現に向け 消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必 て、道路の脱炭素化の推進に関する基本的な方 要である。更なる環境負荷の小さい効率的な 針である「道路脱炭素化基本方針」を策定し、 物流体系の構築に向け、EV トラック・FCV ト 国の道路脱炭素化基本方針に基づき道路管理者 ラック等の普及促進、港湾の低炭素化の取組へ が脱炭素化推進計画を策定する枠組みを導入し の支援や冷凍冷蔵倉庫において使用する省エネ た。 型自然冷媒機器の普及促進等を行っている。ま 充電・水素充てんインフラの整備促進、安 た、共同輸配送やモーダルシフトの促進、省エ 全・安心な歩行空間や自転車等通行空間の整備 ネ船の建造促進等内航海運・フェリーの活性化 等による自動車交通量の減少等を通じた CO2 に取り組んでいる。加えて、「エコレールマー 排出の削減、ダブル連結トラックの利用環境の ク」(令和8年1月現在、商品 180 品目(153 整備や自動物流道路の実現に向けた検討等によ 件)、取組企業 97 社を認定)や「エコシップ る低炭素な物流への転換、渋滞対策等の推進、 マーク」(8年3月末現在、荷主 259 者、物流 LED の道路照明への導入や低炭素な材料の導 事業者 284 者を認定)の普及に取り組んでお 入促進による道路のライフサイクル全体の低炭 り、7年度より「エコレールマーク」の認知度 素化等により、道路分野の脱炭素化を推進して 向上や貨物鉄道輸送の利用拡大に貢献したエコ いる。 レールマーク認定企業の功績を称えることを目 的とした表彰制度を創設した。 (4)公共交通機関の利用促進 また、港湾においては、我が国の港湾や産業 自家用乗用車から CO2 排出の少ない公共交 の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するた 通機関へのシフトは、地球温暖化対策の面から め、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水 推進が求められている。自家用車だけに頼るこ 素・アンモニア等の受入環境の整備等を図る
260 国土交通白書 2026 第1節 地球温暖化対策の推進
カーボンニュートラルポート(CNP)の形成 バイオディーゼル燃料の導入等を推進するほ を推進しており、水素を燃料とする荷役機械の か、鉄道アセットを活用した再生可能エネル 導入促進の検討、低炭素型荷役機械の導入支援 ギーの導入拡大、環境優位性のある鉄道の利用 等を行った。さらに、国際海上コンテナターミ 促進等の取組を進める。 ナルの整備、国際物流ターミナルの整備、複合 また、令和7年9月に、「鉄道分野の GX に 一貫輸送に対応した国内物流拠点の整備等を推 関する官民研究会」において、主要鉄道事業者 進することにより、貨物の陸上輸送距離削減を を対象とする、省エネの徹底、非電化区間の 図っている。 GX 及び再エネの最大限導入について具体的な このほか、関係省庁、関係団体等と協力し 目標等を示した基本的考え方を整理した。 て、グリーン物流パートナーシップ会議を開催 さらには、鉄道事業の低炭素化に係る補助制 し、荷主と物流事業者の連携による優良事業者 度等鉄道事業者の積極的な取組を後押しすると への表彰や普及啓発を行っている。総合物流施 ともに、鉄道の脱炭素に関心を持つ幅広い主 策大綱(2026 ~ 2030 年度)策定後は、 「サー 体が参加する「鉄道脱炭素官民連携プラット ビスの供給制約に対応するための徹底的な物流 フォーム」における情報共有、協力体制の構築 効率化」、 「物流全体の最適化に向けた商慣行の を通じて、鉄道分野における脱炭素化の取組を Ⅱ 見直しや荷主・消費者の行動変容、産業構造の 推進していく。
第7章 転換」、「持続可能な物流サービスの提供に向け た物流人材の地位・能力の向上と労働環境の改 ②海運における省エネ・低脱炭素化の取組 善」、「物流に携わる多様な関係者の連携・協 国 際 海 運 分 野 に お い て は、 国 際 海 事 機 関
美しく良好な環境の保全と創造 力による物流標準化と物流 DX・GX の推進」、 (IMO)において令和5年に合意された国際海 「厳しさを増す国際情勢や自然災害等に対応し 運 か ら の「2050 年 頃 ま で に GHG 排 出 ゼ ロ 」 たサプライチェーンの高度化・強靱化」の5つ 等の目標達成に向けて、GHG 排出削減に関す の柱を踏まえた取組も表彰対象とし、物流分野 る新たな国際ルールの策定の議論が進められて 全般の課題解決に資する取組を幅広く周知して いるところ、我が国は各国と連携・協力しなが いる。 ら、その議論の着実な進展に貢献している。加 えて、3年度より、グリーンイノベーション基 (6)鉄 道・船舶・航空・港湾における脱炭素 金を活用して水素・アンモニア等を燃料とする 化の促進 ゼロエミッション船の技術開発を行っており、 ①鉄道分野における脱炭素化の取組 7年8月には純国産の大型商用アンモニア燃料 鉄道分野については、令和5年5月に出され エンジンが完成した。内航海運分野において た「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加 は、荷主等と連携した離着桟・荷役等の運航全 速化検討会」の最終とりまとめにおいて、鉄道 体で省エネとなる連携型省エネ船の建造・普及 分野のカーボンニュートラルが目指すべき姿 や、省エネルギー性能の見える化(内航船省エ と、それに向けて取り組むべき施策の方向性を ネルギー格付制度(8 年 3 月末時点で 268 隻認 整理した。同とりまとめを踏まえ、関係省庁と 定))を推進している。また、LNG 等のガス燃 も連携しながら、エネルギー効率の高い鉄道車 料船、メタノール燃料船、バッテリー船等の導 両の導入、水素燃料電池鉄道車両の社会実装や 入・実証を推進している。さらに、船舶のバイ
【関連リンク】 カーボンニュートラルポート(CNP) URL:https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk4_000054.html
国土交通白書 2026 261 第1節 地球温暖化対策の推進
オ燃料利用に向けた勉強会の開催など、既存船 体制を構築するとともに、空港関係者の意識醸 舶にも利用可能なバイオ燃料をはじめとする代 成や空港利用者への理解促進を図っている。 替燃料の利用に向けた環境整備を図り、関係省 庁と連携して、一層の船舶の低・脱炭素化を推 ④港湾におけるカーボンニュートラルポート 進している。 (CNP)形成の推進 造船・舶用工業分野については、令和6年度 港 湾 に お い て は CNP の 形 成 を 推 進 し て お に引き続き、ゼロエミッション船等の建造に必 り、港湾管理者における港湾脱炭素化推進計画 要となるエンジン、燃料タンク、燃料供給シス 作成への費用の補助、横浜港・神戸港における テム等の生産設備及びそれらの機器等を船舶に 水素を燃料とする荷役機械の現地実証、低炭素 搭載するための設備等の整備への支援を実施し 型荷役機械や船舶に陸上電力を供給する設備の ている。 導入支援の他、新たに、コンテナターミナル における脱炭素化の取組を客観的に評価する ③航空分野の CO2 排出削減の取組 「CNP 認証(コンテナターミナル)」の運用を 航空の脱炭素化に向けて、航空会社や空港会 開始した。また、水素等のサプライチェーンの
Ⅱ 社による主体的・計画的な脱炭素化の取組を後 構築を促進するため、「港湾における水素・ア 押しすることが重要であり、航空法等に基づく ンモニアの受入環境整備に係るガイドライン」 第7章
「航空運送事業脱炭素化推進計画」及び「空港 の作成等にも取り組んだ。加えて、ブルーカー 脱炭素化推進計画」の認定等を進めている。 ボンの活用、洋上風力発電の導入等を推進し 具体的な取組として、航空機運航分野におい た。 美しく良好な環境の保全と創造
ては、2050 年カーボンニュートラルの実現に 向け、官民協議会の場等を活用して関係省庁や (7)住宅・建築物の脱炭素化の推進 民間事業者と連携しながら、 SAF(Sustainable 2022 年6月の建築物省エネ法の改正により、 Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の導入 2025 年4月から原則すべての新築住宅・非住 促進、管制の高度化等による運航の改善、機 宅に省エネ基準適合が義務化された。2050 年 材・装備品等への環境新技術の導入等に取り組 カーボンニュートラルの実現に向け、遅くとも んでいる。特に CO2 削減効果の高い SAF につ 2030 年までに省エネ基準を ZEH・ZEB 基準 いては、2030 年時点の本邦航空会社による燃 の水準まで引き上げることを目標として掲げて 料使用量の 10%を SAF に置き換えるという目 おり、引き続き省エネ性能の向上に取り組んで 標を設定しており、国際競争力のある価格での いく。 SAF の導入促進に向け、官民連携して取り組 さらに、省エネ基準より高い省エネ性能を有 んでいる。 する住宅等への支援は、国土交通省・環境省・ 空港分野においては、令和8年3月末時点 経済産業省が連携し行う、住宅省エネキャン で 51 空港の空港脱炭素化推進計画が策定され、 ペーンにおける ZEH 水準住宅の新築や省エネ 空港施設・車両等からの CO2 の排出削減、空港 リフォーム等への補助制度、住宅ローン控除等 の再エネの導入等に取り組んでいる。また、 「空 の税制措置、独立行政法人住宅金融支援機構の 港の脱炭素化に向けた官民連携プラットフォー 【フラット 35】S における ZEH 等への融資金利 ム」を活用し、空港関係者等と情報共有や協力 引下げ等を実施している。
【関連リンク】 海事:内航船省エネルギー格付制度について - 国土交通省 URL:https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk7_000021.html
262 国土交通白書 2026 第1節 地球温暖化対策の推進
また、非住宅建築物に対しても支援を行って 酸化二窒素の削減を推進している。 おり、ZEB 等の省エネ性能の高い建築物に対 する支援や、既存建築物の改修による省エネ性 (9)建設分野における脱炭素化の推進 能向上、省エネ・省 CO2 等に係る先導的なプ 「国土交通省土木工事の脱炭素アクションプ ロジェクトに対する支援を実施している。 ラン」に基づき、建設分野における脱炭素化を 建築物の脱炭素化に向け、更なる取組の検討 進める。 も進められている。2028 年度を目途に建築物 まず、建設機械については、燃費基準値を達 のライフサイクルカーボン評価の実施を促す制 成した主要建設機械を燃費基準達成建設機械と 度の開始を目指して、2025 年 6 月に国土交通 して認定し、認定型式購入に対し低利融資制度 省において「建築物のライフサイクルカーボン 等の支援を行っている。令和 12 年度を目途に、 の算定・評価等を促進する制度に関する検討 普及が進む油圧ショベルについて、直轄工事で 会」を設置し、制度の検討を行った。2026 年 の認定型式使用を原則化する。加えて、2050 1 月には、中間とりまとめが行われ、統一的な 年ネット・ゼロの実現に向けて、GX 建設機械 算定ルールの構築や、ライフサイクルカーボン 活用推進工事及び次世代燃料を活用したゼロエ 評価に係る説明制度、届出制度、第三者認証・ ミッション促進モデル工事を7年度より実施し Ⅱ 表示制度の創設等の方向性が示された。 ている。
第7章 また、制度の開始に先駆けて実施されるライ また、GX 需要創出の進展を踏まえた公共工 フサイクルカーボン評価や、評価実施に必要な 事における本格活用を見据えて、低炭素型コン CO₂ 原単位等の策定に対する支援を実施して クリート、グリーンスチールなどのグリーン建
美しく良好な環境の保全と創造 いる。 材についても、試行工事を行う。
(8)上下水道における脱炭素化の推進 (10)都 市緑化等による CO2 の吸収源対策の 水道事業においては、省エネルギー・高効率 推進 機器の導入、ポンプのインバータ制御化等の省 都市緑化等は、パリ協定に基づく我が国の温 エネルギー設備の導入及び施設の広域化・統廃 室効果ガス削減目標の吸収源対策に位置付けら 合・施設配置の最適化(上流からの取水等)に れており、令和6年 12 月に策定した「緑の基 よる省エネルギー化の推進や、小水力発電、太 本方針」等に基づき、都市公園の整備や公共施 陽光発電等の再生可能エネルギー発電設備の導 設の緑化、民有地における緑地の確保を推進し 入を実施している。 ている。また、地表面被覆の改善等、熱環境改 下水道事業においては、高効率機器の導入等 善を通じた都市の低炭素化や緑化による CO2 による省エネ対策、下水汚泥のバイオガス化等 吸収源対策の意義や効果に関する普及啓発にも の創エネ対策、下水汚泥の高温焼却等による一 取り組んでいる。
【関連リンク】 建築物省エネ法のページ https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/shoenehou.html
【関連リンク】 建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk4_000302.html
【関連リンク】 建設分野のカーボンニュートラル URL: https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000149.html
国土交通白書 2026 263 第1節 地球温暖化対策の推進
(11)ブルーカーボン生態系を活用した吸収源 態系を活用した CO2 吸収源の拡大によるネッ 対策の推進 ト・ゼロの実現への貢献や生物多様性による豊 CO2 吸収源の新しい選択肢として、海洋生 かな海の実現を目指し、「命を育むみなとのブ 態系により吸収・固定される炭素(ブルーカー ルーインフラ拡大プロジェクト」の取組を推進 ボン)が注目されている。国土交通省では藻 するとともに、ブルーカーボン由来のカーボ 場・干潟等及び生物共生型港湾構造物を「ブ ン・クレジット制度の活用促進等に取り組んで ルーインフラ」と位置付け、ブルーカーボン生 いる。
3 再生可能エネルギー等の利活用の推進 (1)海洋再生可能エネルギー利用の推進 会制度等の創設等を位置付けた、 「港湾法の一 洋上風力発電の導入に関し、港湾区域内にお 部を改正する法律」が施行された。 いて、港湾管理者が事業者を選定済みの全国6 また、今後普及拡大が期待される浮体式洋上 港のうち、北九州港内において、令和8年3月 風力発電について、令和7年8月には「洋上風
Ⅱ に洋上風力発電設備の運転が開始された。ま 力産業ビジョン(第2次)」が公表され、浮体 た、一般海域においても、 「海洋再生可能エネ 式の産業競争力の強化に向けた取組の方向性が 第7章
ルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進 示された。具体的には、2040 年までに 15GW に関する法律」に基づき、7年7月に経済産業 以上の浮体式の案件形成を目指すとの目標が示 省及び国土交通省が新たに「北海道松前沖」及 されたほか、浮体式に対応した施工・O&M に 美しく良好な環境の保全と創造
び「北海道檜山沖」の2区域を「促進区域」と 必要な港湾等の基盤整備や技術開発の推進につ して指定した。加えて、8年1月には、長崎県 いても位置付けられた。ビジョン等を踏まえ、 五島市沖に係る促進区域において、浮体式洋上 浮体式の大量導入に向けて港湾機能や港湾の施 風力発電設備が運転を開始した。当該事業は、 設規模等について検討するため、7年 11 月か 再エネ海域利用法の規定に基づいて実施する事 ら「洋上風力発電の導入促進に向けた港湾のあ 業において、初めて発電設備の運転を開始する り方に関する検討会」を開催している。 ものであり、洋上風力発電の導入が進んでい る。 (2)未利用水力エネルギーの活用 洋上風力発電設備の設置及び維持管理に利用 気候変動への適応、ネット・ゼロ実現に向け される港湾(基地港湾)については、これまで た対応のため、ダムによる治水機能の強化と水 国土交通大臣が7港を指定し、必要な整備を実 力発電の促進を両立する「ハイブリッドダム」 施している。このうち、令和7年5月に、秋田 の取組を推進している。この取組の一環とし 港において2者目となる港湾法に基づく賃貸借 て、国・水資源機構が管理する多目的ダム等に 契約が締結された。同年 10 月には、基地港湾 おいて最新の気象予測技術を活用した洪水後期 の一時的な利用に関する協議を行うための協議 放流の活用、非洪水期の弾力的運用等のダム運
【関連リンク】 ブルーカーボンとは URL:https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk6_000069.html
【関連リンク】 洋上風力発電 URL:https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_mn6_000005.html
264 国土交通白書 2026 第1節 地球温暖化対策の推進
用の高度化の試行を継続するとともに、既設ダ (5)水素社会実現に向けた国土交通省におけ ムへの発電施設の新増設へ向け3ダムで公募を る水素政策 実施するなど未利用エネルギーの徹底的な活用 ①燃料電池自動車の普及促進 を図ることとしている。 商用車に重点を置いた燃料電池自動車の普及 また、河川等における取組として、登録制に を進めるため、関係省庁とも連携し、民間事業 よる従属発電の導入、現場窓口によるプロジェ 者等による燃料電池自動車の導入事業について クト形成支援、砂防堰堤における小水力発電の 支援している。 導入事例の共有、技術的支援及び発電設備の導 入支援等を実施し、小水力発電の導入促進を ②水素燃料船の開発 図っている。 令和 10 年までの実証運航開始を目指して、 3年度より、グリーンイノベーション基金を活 (3)下水道バイオマス等の利用の推進 用して、水素燃料船のコア技術である水素燃料 国土交通省では、下水汚泥のエネルギー利 エンジン等の技術開発を行っており、7年2月 用、下水熱の利用等を推進している。平成 27 には世界初の水素専焼対応エンジンの燃焼試験 年5月には、 「下水道法」が改正され、民間事 を開始した。 Ⅱ 業者による下水道暗渠への熱交換器設置が可能
第7章 になったほか、下水道管理者が下水汚泥をエネ ③水素燃料電池鉄道車両の導入・普及の推進 ルギー又は肥料として再生利用することが努力 水素燃料電池鉄道車両等の水素を活用した鉄 義務化された。バイオガス利用等による下水汚 道車両の実用化に当たっては、技術課題の解決
美しく良好な環境の保全と創造 泥のエネルギー利用、再生可能エネルギー熱で 及び社会実装に向けた量産化・コスト低減が必 ある下水熱の利用について、PPP/PFI 等によ 要不可欠であり、今後の水素の供給量や更なる り推進している。 技術開発の動向、水素供給拠点等のインフラの 整備状況を見極めつつ、制度面での措置を含め (4)太陽光発電等の導入推進 た官民一体の取組を進めることが重要である。 公的賃貸住宅、官庁施設や、道路、空港、港 このため、水素燃料電池鉄道車両の構造に関 湾、鉄道・軌道施設、公園、ダム、上下水道等 する技術基準を整備するとともに、国と鉄道事 のインフラ空間等を活用した太陽光発電等につ 業者等から構成される「水素燃料電池鉄道車両 いて、施設等の本来の機能を損なわないよう、 等の導入・普及に関する連絡会」を設置し、水 また、地域との共生を確保しつつ、可能な限り 素の利活用に関する検討状況等を共有するな の導入拡大を推進している。あわせて、ペロブ ど、必要な情報を収集・整理し、我が国の鉄道 スカイト太陽電池について、技術開発や市場化 における水素燃料電池鉄道車両等の導入・普及 の動向等を踏まえつつ、積極的に導入を検討す の推進を図った。 る。
4 地球温暖化対策(適応策)の推進 気候変動による様々な影響に備えるための取 応計画」(令和3年 10 月 22 日閣議決定)に基 組は、 「気候変動適応法」 (平成 30 年法律第 50 づいて、総合的かつ計画的に推進している。 号)に基づき策定された、政府の「気候変動適
国土交通白書 2026 265 第2節 循環型社会の形成促進
第2節 循環型社会の形成促進
1 建設リサイクル等の推進 (1)建設リサイクルの推進 を取りまとめた。国土交通省は5年3月に、下 「建設工事に係る資材の再資源化等に関する 水汚泥の処理を行うに当たって、肥料利用を最 法律(建設リサイクル法) 」に基づき、全国一 優先し最大限の利用を行うことを基本方針とし 斉パトロール等による法の適正な実施の確保に て明確化し、下水道管理者に通知するととも 努めている。 に、6年3月には下水道管理者の検討の参考と また、循環経済への移行の推進に向けて、建 なるよう「下水汚泥資源の肥料利用に関する検 設廃棄物由来の再生資材の需給等の実態調査を 討手順書(案)」の作成・公表を行った。 踏まえ、水平リサイクルの推進や CO2 排出抑 令和7年度には、公園等の公共施設における 制等のリサイクルの質の向上や需要拡大のため 下水汚泥の肥料利用促進に向けたパンフレット の取組を推進するとともに、建設発生土の現場 の作成・公表や、下水汚泥燃焼灰の利用等に関
Ⅱ 内・工事間利用等の有効利用や適正処理を推進 して「下水汚泥資源の肥料利用に関する検討手 している。 順書(案)」への追記を行った。また、下水汚 第7章
泥の重金属や肥料成分の分析(49 処理場)、肥 (2)下水汚泥資源の肥料利用等の推進 料の流通確保に向けた案件形成(18 団体)を 国土交通省と農林水産省は令和4年度の「下 行うとともに、5つの下水道施設において、下 美しく良好な環境の保全と創造
水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討 水処理過程からのリン回収に関する技術実証を 会」にて、下水汚泥資源の肥料利用の大幅な拡 行っている。 大に向けて総力を挙げて取り組むとして方向性
2 循環資源物流システムの構築 (1)海上輸送を活用した循環資源物流ネット る運用等の改善を行っている。サーキュラーエ ワークの形成 コノミーへの移行を踏まえ、循環経済拠点港湾 循環型社会の構築に向けた資源循環ネット (サーキュラーエコノミーポート)の選定・整 ワークを形成するため、循環資源の広域流動の 備に向けた検討を行っており、港湾を核とする 拠点となる港湾をリサイクルポート(総合静 物流システムの構築等による広域的な資源循環 脈物流拠点港)として全国で 22 港指定してい の促進を図っている。 る。リサイクルポートでは、岸壁等の港湾施設 また、大規模災害時に発生する災害廃棄物を の確保、循環資源取扱支援施設の整備への助 適正かつ円滑・迅速に処理するため、災害廃棄 成、官民連携の促進、循環資源の取扱いに関す 物の仮置場や輸送拠点等としての港湾の活用可
【関連リンク】 建設リサイクル推進計画 2020 ~「質」を重視するリサイクルへ~ URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo03_hh_000247.html
【関連リンク】 下水汚泥資源の肥料利用 URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000555.html
266 国土交通白書 2026 第2節 循環型社会の形成促進
能性について関係機関等と連携して検討を行っ いる。特に大阪湾では、大阪湾フェニックス計 ている。 画注 1 に基づいて広域処理場を整備し、大阪湾圏 域から発生する廃棄物等を受け入れている。ま (2)廃棄物海面処分場の計画的な確保 た、首都圏で発生する建設発生土をスーパー 港湾整備により発生する浚渫土砂や内陸部で フェニックス計画注 2 に基づき海上輸送し、全国 の最終処分場の確保が困難な廃棄物等を受け入 の港湾等の埋立用材として広域利用を行ってい れるため、海面処分場の計画的な整備を進めて る。
3 自動車・船舶のリサイクル (1)自動車のリサイクル して国際海事機関(IMO)における議論及び 「使用済自動車の再資源化等に関する法律 条約起草作業を主導し、「2009 年の船舶の安 (自動車リサイクル法)」に基づき、使用済自動 全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際 車が適切にリサイクルされたことを確認する制 条約(シップ・リサイクル条約)」が採択され 度を導入している。また、 「道路運送車両法」 た。 Ⅱ の抹消登録を行う際、自動車重量税還付制度も 我が国は、平成 31 年3月に同条約を締結す
第7章 併せて実施し、使用済自動車の適正処理の促進 るとともに、同条約の早期発効に向けて各国に 及び不法投棄の防止を図っている。なお、令和 対して締結を働きかけてきた。令和5年6月に 6年度において、自動車リサイクル法に基づき 同国及びリベリアが同条約を締結したことによ
美しく良好な環境の保全と創造 解体が確認され、永久抹消登録及び解体届出が り、条約の発効要件が充足され、令和7年6月 なされた自動車は 999,076 台である。 に同条約が発効した。また、円滑な条約の発効 に向けた国際協力を推進するため、JICA を通 (2)船舶のリサイクル じてバングラデシュへの技術協力(長期専門家 注3 船舶の再資源化解体(シップ・リサイクル) 派遣)等を実施しているほか、日本国内におい は、インド、バングラデシュ等の開発途上国を ては、同条約の国内法である「船舶の再資源化 中心に実施されており、労働災害と環境汚染等 解体の適正な実施に関する法律」(シップ・リ が問題視されてきた。この問題を国際的に解決 サイクル法)が施行された。 するため、我が国は世界有数の海運・造船国と
4 グリーン調達に基づく取組 「国等による環境物品等の調達の推進等に関 定した。これに基づき、公共工事における資 する法律(グリーン購入法) 」に基づく政府の 材、建設機械、工法、目的物等のグリーン調達 基本方針の一部変更を受け、 「環境物品等の調 を積極的に推進している。 達の推進を図るための方針(調達方針)」を策
注1 近畿2府4県 169 市町村から発生する廃棄物等を、海面埋立により適正に処分し、港湾の秩序ある整備を図る事業。 注2 首都圏の建設発生土を全国レベルで調整し、埋立用材を必要とする港湾において港湾建設資源として有効利用する仕組 み。 注3 寿命に達した船舶は、解体され、その大部分は鋼材として再活用される。
国土交通白書 2026 267 第3節 豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり
5 木材利用の推進 木材は、加工に要するエネルギーが他の素材 図表Ⅱ-7-2-1 木材利用の事例 と比較して少なく、多段階における長期的利用 国立アイヌ民族博物館(内装等の木質化)注 4 が地球温暖化防止、循環型社会の形成に資する など環境にやさしい素材であることから、公共 工事等において木材利用の推進を図っている。 令和 3 年 10 月 1 日に施行された「脱炭素社 会の実現に資する等のための建築物等における 木材の利用の促進に関する法律」(通称:都市 (まち)の木造化推進法)により、法律の対象 が公共建築物から建築物一般に拡大された。ま た、同法等に基づき、自ら整備する公共建築物 において木造化、内装等の木質化、CLT の活 た。また、木材利用の更なる促進のため防火関
Ⅱ 用等に取り組むとともに、木材利用に関する技 係規定の合理化を行う「建築基準法施行令の一 術基準、手引き等の作成及び関係省庁や地方公 部を改正する政令」を7年9月3日に公布し、 第7章
共団体等への普及に努めている。 7年 11 月1日に施行された。 また、森林資源の循環により温室効果ガスの さらに、炭素貯蔵効果が期待できる中大規模 吸収源対策の強化を図る上でも、我が国の木材 木造建築物の普及に資するプロジェクト等に対 美しく良好な環境の保全と創造
需要の約4割を占める建築物分野における取組 して支援しているほか、国産木材を多く活用す が求められている。このような中、建築物分野 る住宅で使用量を表示する仕組み(国産木材活 における木材利用の更なる促進に資する規制の 用住宅ラベル)の運用を通じて、木材利用の一 合理化等も盛り込んだ改正建築物省エネ法・建 層の促進を図っている。 築基準法が令和7年4月1日に全面施行され
第3節 豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり
1 生物多様性の保全のための取組 令和4年 12 月にカナダ・モントリオールで て生物の生息・生育地の保全・再生・創出等の 開催された COP15 において、 「昆明・モント 取組を引き続き推進することとした。特に、都 リオール生物多様性枠組」が採択され、さらに 市の緑地については、量・質両面での都市の緑 5年3月に「生物多様性国家戦略 2023-2030」 地の確保等を進めるまちづくり GX を通じて、 が策定されたことを受け、グリーンインフラを 生息・生育空間の保全・再生・創出による生物 含め、河川、都市の緑地、海岸、港湾等におい 多様性の確保を進める。
注4 農林水産省予算の委任を受け国土交通省が整備を実施。
268 国土交通白書 2026 第3節 豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり
2 豊かで美しい河川環境の形成 (1)良好な河川環境の保全・再生・創出 ため、洪水調節に支障を及ぼさない範囲で洪水 ①多自然川づくり、生態系ネットワークの形成 調節容量の一部に流水を貯留し、活用放流する 河川整備に当たっては、 「多自然川づくり基 ダムの弾力的管理及び弾力的管理試験を行って 本指針(令和6年6月改定) 」に基づき、河川 いるほか、河川の形状等に変化を生じさせる中 全体の自然の営みを視野に入れ、地域の暮らし 規模フラッシュ放流の取組を進めている。さら や歴史・文化との調和にも配慮し、河川が本来 に、平常時の自然流量が減少した都市内河川で 有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多 は、下水処理場の処理水の送水等により、河川 様な河川景観を保全・創出する多自然川づくり 流量の回復に取り組んでいる。 を基本とし、河川整備計画(国管理河川)にお いて河川環境の定量的な目標を位置付ける取組 (3)流域の源頭部から海岸までの総合的な土 などを推進している。 砂管理の取組の推進 また、自然再生事業による湿地再生、魚道整 土砂の流れの変化による河川環境の変化やダ 備による魚類の遡上・降下環境の改善等を図る ム堆砂、海域への土砂供給の減少、沿岸漂砂の Ⅱ とともに、多様な主体と連携した生態系ネット 流れの変化等による海岸侵食等が進行している
第7章 ワークの形成による流域の生態系の保全・創出 流砂系について、流域の源頭部から海岸まで一 を推進している。 貫した総合的な土砂管理の取組を関係機関が連 携して推進している。具体的には、砂防、ダ
美しく良好な環境の保全と創造 ②河川における外来種対策 ム、河川、海岸等における土砂の流れに関する 生物多様性に対する脅威の1つである外来種 問題に対応するため、適正な土砂管理に向けた は、全国の河川において生息域を拡大してい 総合土砂管理計画の策定や、土砂を適切に下流 る。この対策として、 「地域と連携した外来植 へ流すことのできる透過型砂防堰堤の設置並び 物防除対策ハンドブック(案)」等の周知を行 に既設砂防堰堤の改良、ダムにおける土砂バイ うなどの対策を実施している。 パス等による土砂の適切な流下、河川の砂利採 取の適正化、サンドバイパス、養浜等による砂 (2)河川水量の回復のための取組 浜の回復等の取組を行っている。 良好な河川環境を保全するには、豊かな河川 水量の確保が必要である。このため、河川整備 (4)河川における環境教育 基本方針等において動植物の生息・生育環境、 川は身近に存在する自然空間であり、環境学 景観、水質等を踏まえた必要流量を定め、この 習や自然体験活動等の様々な活動が行われてい 確保に努めているほか、水力発電所のダム等の る。安全に川で学び、遊ぶためには、河川への 下流の減水区間における清流回復の取組を進め 理解を深めるとともに、正しい知識が不可欠で ている。また、ダム下流の河川環境を保全する あることから、教育関係者や一般利用者向けの
【関連リンク】 多自然川づくり基本指針(令和6年6月改定) URL:https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/05/051013/02.pdf
【関連リンク】 ○地域と連携した河川における外来植物対策ハンドブック(案) (令和7年4月) URL:https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/gairai/pdf/handbook.pdf
国土交通白書 2026 269 第3節 豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり
学習支援素材の作成や、市民団体が中心となっ 験活動協議会(RAC)」等と連携した川の指導 て設立された特定非営利活動法人「川に学ぶ体 者の育成等を推進している。
3 海岸・沿岸域の環境の整備と保全 津波、高潮、高波等から海岸を防護しつつ、 進している。 生物の生息・生育地の確保、景観への配慮や海 また、海岸に漂着した流木等が異常に堆積 岸の適正な利用の確保等が必要であり、「防護」 し、これを放置することにより海岸保全施設の 「環境」 「利用」の調和のとれた海岸の整備と保 機能を阻害する場合は、海岸管理者に対して 全を推進している。また、「美しく豊かな自然 「災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業」 を保護するための海岸における良好な景観及び により支援している。なお、海岸保全施設の機 環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等 能の確保や海岸環境の保全と公衆の海岸の適正 の処理等の推進に関する法律(海岸漂着物処理 な利用を図ることを目的に、放置座礁船の処理 推進法) 」に基づき、関係機関と緊密な連携を や海域において異常に堆積しているヘドロ等の
Ⅱ 図り、海岸漂着物等に対する実効的な対策を推 除去についても支援している。 第7章
4 港湾行政のグリーン化 (1)今後の港湾環境政策の基本的な方向 共生型港湾構造物の普及方策の検討を引き続き 美しく良好な環境の保全と創造
我が国の港湾が今後とも物流・産業・生活の 実施するとともに、行政機関、研究所等の多様 場としての役割を担い、持続可能な発展を遂げ な主体が環境データを登録・共有することがで ていくためには、過去に劣化・喪失した自然環 きる環境情報データベースを構築し、環境デー 境を少しでも取り戻し、港湾のあらゆる機能に タの収集・蓄積・解析・公表を図りつつ、沿岸 ついて環境配慮に取り込むことが重要である。 域の良好な自然環境の保全・再生・創出に積極 そのため、港湾の開発・利用と環境の保全・再 的に取り組む。 生・創出を両輪としてとらえた「港湾行政のグ また、自然環境の大切さを学ぶ機会の充実を リーン化」を図る。 図るため、保全・再生・創出した場を活用した 「海辺の自然学校」を全国各地で実施する。 (2)良 好な海域環境の積極的な保全・再生・ 創出 (3)放置艇対策の取組 港湾整備で発生する浚渫土砂等を有効に活用 令和6年3月に策定した「三水域(港湾・河 した干潟造成、覆砂、深掘跡の埋め戻し、生物 川・漁港)におけるプレジャーボートの適正な
【関連リンク】 総合的な土砂管理と流砂系 URL:https://www.mlit.go.jp/river/sabo/sougoudoshakanri/sougoudosyatowa.pdf
【関連リンク】 川に学ぶ社会を目指して URL:https://www.mlit.go.jp/river/kankyo/play/kawanimanabu.html
【関連リンク】 河川水難事故防止ポータルサイト URL:https://www.mlit.go.jp/river/kankyo/play/anzenriyou.html
270 国土交通白書 2026 第4節 健全な水循環の維持又は回復
管理を推進するための今後の放置艇対策の方向 ボート利用者等と緊密に連携し、放置艇の解消 性」に基づき、各水域が所在する地域の実情を に取り組むことにより、プレジャーボートの適 踏まえ、関係省庁、関係団体及びプレジャー 正な管理を推進している。
5 道路の緑化・自然環境対策等の推進 道路利用者への快適な空間の提供、周辺と一 図表Ⅱ-7-3-1 道路緑化の事例(兵庫県神戸市) 体となった良好な景観の形成、地球温暖化や ヒートアイランドへの対応、良好な都市環境の 整備等の観点から、道路の緑化は重要である。 このため、道路緑化に係る技術基準に基づき、 良好な道路緑化の推進及びその適切な管理を 図っている。
Ⅱ
第7章 第4節 健全な水循環の維持又は回復
1 水循環政策の推進
美しく良好な環境の保全と創造 (1)水循環基本法に基づく政策展開 保持又は改善するために、流域において関係す 令和7年5月、水循環基本法に基づき、「水 る行政等の公的機関、有識者、事業者、団体、 循環白書」を閣議決定、国会報告した。「水循 住民等の様々な主体がそれぞれ連携して活動す 環白書」は、政府が水循環に関して講じた施 る「流域マネジメント」についても流域総合水 策について、毎年、国会に報告するものであ 管理を踏まえつつ一層の推進を図ることとして り、今回は、 「水循環施策の今後の展望〜新た いる。 な「水循環基本計画」の閣議決定について〜」 令和7年度は、各地域の水循環に係る計画の と題して新たな水循環基本計画の概要及び重点 うち、3計画を「流域水循環計画」として公表 的に取り組む主な内容を特集するとともに、6 した(8年3月時点で合計 85 計画)。 年度に政府が講じた施策を報告した。 また、流域マネジメントに関する知識や経験 を有するアドバイザーから、流域水循環計画の (2)流域マネジメントの推進 策定・実施に必要となる技術的な助言・提案等 流域の森林、河川、農地、都市、湖沼、沿岸 を行うことを目的とした「水循環アドバイザー 域、地下水盆等において、人の営みと水量、水 制度」により、7の地方公共団体への支援を実 質、水と関わる自然環境を適正で良好な状態に 施した。
2 水の恵みを将来にわたって享受できる社会を目指して 水資源政策については、平成 27 年3月国土 保し、安定して利用できる仕組みをつくり、水 審議会答申に基づき、安全で安心できる水を確 の恵みを将来にわたって享受することができる
国土交通白書 2026 271 第4節 健全な水循環の維持又は回復
社会を目指した取組が進められている。人口及 吉野川水系、筑後川水系の6水系5計画の見直 び産業活動が集中する水資源開発水系では、平 しが完了している。 成 29 年5月国土審議会答申を受けて需要主導 また、令和7年6月に国土審議会水資源開発 型の「水資源開発の促進」から、危機的な渇 分科会及び社会資本整備審議会河川分科会にお 水、大規模自然災害、大規模事故等のリスクに いて、「流域総合水管理のあり方について」答 対しての「水の安定供給」を実現するため、ソ 申が取りまとめられた。答申を踏まえ、流域全 フト・ハード両面で対策するリスク管理型の水 体であらゆる関係者が協働し、「水災害による 資源開発基本計画へと順次見直しを進めてお 被害の最小化」、「水の恵みの最大化」そして り、令和 7 年度は木曽川水系の計画の見直しに 「水でつながる豊かな環境の最大化」を目指す 着手している。令和8年3月末時点において、 「流域総合水管理」を各流域の特性を踏まえつ 利根川水系・荒川水系、豊川水系、淀川水系、 つ進めていく。
3 水環境改善への取組
Ⅱ (1)水質浄化の推進 (3)閉鎖性海域の水環境の改善 水環境の悪化が著しい全国の河川等において 東京湾、伊勢湾、大阪湾を含む瀬戸内海等の 第7章
は、地方公共団体、河川管理者、下水道管理者 閉鎖性海域では、陸域からの汚濁負荷量は減少 等の関係機関が連携し、河川における水質浄化 しているものの、藻場・干潟の消失による海域 対策や下水道整備による生活排水対策等、水質 の浄化能力の低下等により、依然として赤潮や 美しく良好な環境の保全と創造
改善に取り組んでいる。 青潮が発生し漁業被害等が生じている。 また、漂流ごみ・油による環境悪化や船舶へ (2)水質調査と水質事故対応 の航行影響等が生じている。このため、海洋環 良好な水環境を保全・回復する上で水質調査 境整備船による漂流ごみや油の回収を行うとと は重要であり、令和6年は一級河川 109 水系 もに、漁業者等の関係者と連携しつつ、海域環 の 1,086 地点を調査した。また、市民と協働で 境の改善を図っている。あわせて、海洋環境整 水質調査マップの作成や水生生物調査等を実施 備船を設計標準化することで地域間の相互補完 した。 機能の強化を図り、災害対応力の向上を目指す。 油類や化学物質の流出等による河川の水質事 加えて、きれいで豊かな海を取り戻すため、 故は、令和6年に一級水系で 592 件発生した。 ①汚泥浚渫、覆砂、深掘跡の埋め戻しによる底 水質汚濁防止に関しては、河川管理者と関係機 質改善、②藻場・干潟の再生や生物共生型港湾 関で構成される水質汚濁防止連絡協議会を 109 構造物の普及による生物生息場の創出、③海洋 水系のすべてに設立しており、水質事故発生時 環境整備船による漂流ごみ・油の回収、④下水 の速やかな情報連絡や、オイルフェンス設置等 道整備等による汚濁負荷の削減、⑤多様な主体 の被害拡大防止に努めている。 が連携・協働して環境改善に取組む体制の整備
【関連リンク】 「流域総合水管理のあり方について」答申 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/water02_sg_000215.html
【関連リンク】 令和6年全国一級河川の水質現況(令和7年7月4日発表) URL:https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kankyo/kankyou/suisitu/r6_suisitu.html
272 国土交通白書 2026 第4節 健全な水循環の維持又は回復
等の取組を推進する。また、大阪湾において 全国一律の基準の達成に向けた緊急改善対策が は、これらの取組を引き続き推進するため、令 完了しており、引き続き地域の望ましい水環境 和6年6月に大阪湾再生推進会議において「大 の創造に向け、水域の特性や水環境へのニー 阪湾再生行動計画(第三期) 」を策定した。 ズ・利用用途に応じた改善対策の強化を進めて いる。 (4)下水道における戦略的な水環境管理 このような、豊かな海等、水環境に対する新 豊かな海の再生や生物の多様性の保全に向 たなニーズの高まりに加え、人口減少社会への け、近傍海域の水質環境基準の達成・維持等を 対応や脱炭素社会への貢献等、下水道における 前提に、冬期に下水放流水に含まれる栄養塩類 水環境施策が大きな転換期にあることを踏ま の濃度を上げることで不足する窒素やリンを供 え、望ましい水環境管理のあり方について検討 給する、栄養塩類の能動的運転管理を進めてい を行っている。 る。合流式下水道の改善は、令和5年度までに
4 水をはぐくむ・水を上手に使う Ⅱ (1)水資源の安定供給 (2)水資源の有効利用
第7章 水利用の安定性を確保するためには、需要と ①下水処理水の再利用拡大に向けた取組 供給の両面から地域の実情に応じた多様な施策 下水処理水は、都市内において安定した水量 を行う必要がある。具体的に、需要面では水の が確保できる貴重な水資源である。下水処理水
美しく良好な環境の保全と創造 回収・反復利用の強化、節水意識の向上等があ 全体のうち、約 1.7%が用途ごとに必要な処理 り、供給面ではダム等の既存施設の徹底活用、 が行われ、再生水としてせせらぎ用水、河川維 水資源開発施設の建設、維持管理、老朽化対 持用水、水洗トイレ用水等に活用されており、 策、危機管理対策等がある。 更なる利用拡大に向けた取組を推進している。 また、地下水の適正な保全及び利用、雨水・ 再生水の利用促進のほか、「水源地域対策特別 ②雨水利用等の推進 措置法」に基づいて、水源地域の生活環境、産 水資源の有効利用を図り、併せて下水道、河 業基盤等を整備し、併せてダム貯水池の水質汚 川等への雨水の集中的な流出の抑制に寄与する 濁の防止等に取り組んでいる。 ため、雨水の利用を推進する取組を実施してい さらに、気候変動の影響により、渇水がより る。具体的には、雨水を一時的に貯留し水洗ト 深刻化し、渇水による社会生活や経済への更な イレ用水や散水等へ利用する取組を推進してお る影響が発生することが懸念されている。この り、これらの利用施設は、令和6年度末におい ため、渇水による被害を防止、軽減する対策を て 4,563 施設あり、その年間利用量は約 1,278 推進するべく、既存施設の水供給の安全度と渇 万 m である。 3
水リスクの評価を行うとともに、渇水被害を軽 減するための対策等を定める渇水対応タイムラ (3)安全で良質な水の確保 イン(時系列の行動計画)の作成を促進する。 安全で良質な水道水の確保のため、河川環境 渇水による影響が大きい水系から渇水対応タイ や水利用に必要となる河川流量の確保や、水質 ムラインの作成を進め、令和7年度末に国が管 事故等の不測の事態に備えた河川管理者や水道 理する 42 水系で運用を開始している。 事業者等の関係機関の連携による監視体制の強 化、下水道、集落排水施設、浄化槽の適切な役
国土交通白書 2026 273 第4節 健全な水循環の維持又は回復
割分担の下での生活排水対策の実施により、水 (5)地下水の適正な保全及び利用 道水源である公共用水域等の水質保全に努めた。 地下水の減少や汚染による地下水障害はその 回復に極めて長時間を要し、特に地盤沈下は不 (4)雨水の浸透対策の推進 可逆的な現象である。このため、地下水障害の 近年、流域の都市開発による不浸透域の拡大 防止や生態系の保全等を確保しつつ、地域の地 により、降雨が地下に浸透せず短時間で河川に 下水を守り、水資源等として利用していくこと 流出する傾向にある。降雨をできるだけ地下に が求められている。これらの課題に対応するた 浸透させることにより、豪雨による浸水被害等 め、より一層地域の実情に応じた地下水マネジ を軽減させるとともに、地下水の涵養や湧水の メントの推進を支援する。 復活等の健全な水循環系の構築にも寄与する雨 水貯留浸透施設の整備を推進・促進している。
Column コラム Ⅱ 上下水道一体での復旧支援 第7章
国土交通省では、被災自治体にて検討されるまちづ るなどし、災害対応の支援を実施しました。 くり等の復興方針と整合をとりながら、能登半島の地 域の特性を考慮し、持続可能な上下水道一体となった 復興に向けた支援を行うため、令和6年4月1日に石 美しく良好な環境の保全と創造
川県七尾市に国土技術政策総合研究所『能登上下水道 復興支援室』を設置し、上下水道の技術職員を常駐さ せ、技術的にサポートする体制を構築しました。 あわせて、令和6年能登半島地震や能登半島におけ る令和6年9月 20 日からの大雨では、上下水道一体 となった災害対応を行うため、国土交通省の職員を派 遣し復旧に関する全体調整や被災市町の長や担当部局 への定期訪問を行い、緊密なコミュニケーションをす
5 水道の基盤強化
(1)水道の基盤強化に向けた改正水道法に基 更新のための備えが不足している状況にある。 づく取組の実施 このような状況を踏まえ、2013(平成 25) 水道は、災害時においても安定した給水を確 年 3 月 に 新 水 道 ビ ジ ョ ン を 策 定 し、「 安 全 」 、 保することが求められるライフラインであり、 「強靱」、「持続」の 3 つの観点から、取組の目 そ の 普 及 率 は 2024( 令 和6) 年 度 末 時 点 で 指すべき方向性を示した上で、各種施策の推進 98.3%に達している。一方で、その多くが高度 を図ってきたほか、水道の基盤強化を目的とす 経済成長時代の 1970 年代に集中的に整備され る「水道法の一部を改正する法律」(平成 30 年 たものであり、施設の老朽化や管路の耐震化の 法律第 92 号)が 2018(平成 30)年 12 月 6 日 遅れ、人口減少等による料金収入の減少といっ に成立し、2019(令和元)年 10 月 1 日から施 た課題に直面しており、また、多くの水道事業 行されている。この改正水道法により、国は、 者が小規模で経営基盤が脆弱であり、計画的な 広域連携の推進を含め、水道の基盤強化のため
274 国土交通白書 2026 第4節 健全な水循環の維持又は回復
の基本方針を定めることとされるとともに、都 切な資産管理を推進している。加えて、水道事 道府県は、水道事業者等の広域的な連携を推進 業に対する国民の理解増進を図るべく、水道事 するよう努めなければならないものとされ、水 業経営等についてわかりやすくまとめたパンフ 道基盤強化計画を定めることや広域的連携等推 レットを作成し、国土交通省ホームページに掲 進協議会を設けることができることとされた。 載している。 また、今後の人口減少社会等への対応の観点 道事業経営等についてわかりや 水 図表Ⅱ-7-4-1 から、地域特性に応じて、集約型の水道システ すくまとめたパンフレット
ムと分散型の水道システムを適切に組み合わせ た、施設配置の最適化を実現することが重要で あり、「上下水道政策の基本的なあり方検討会」 にて「上下水道における集約型・分散型に関す る今後の方向性について」を議論したほか、上 下水道一体革新的技術実証事業(AB-Cross) にて、小規模分散型水循環システム等の新技術 の技術実証を進めている。加えて、水道事業者 Ⅱ における集約・分散のベストミックスの検討の
第7章 ために必要な方法論を示した手引きのとりまと めを行った。 さらに、水道事業者等の置かれた状況に応
美しく良好な環境の保全と創造 じ、長期的な視点に立って、優れた技術、経営 (2)全ての国民が安心しておいしく飲める水 ノウハウを有する民間企業や、地域の状況に精 道水の供給 通した民間企業と連携することは、水道の基盤 国土交通省では、環境省と連携し、安全で良 強化を図る上で有効な選択肢の一つである。国 質な水道水の確保を図るため、水道事業者等に 土交通省では、PPP/PFI 推進アクションプラ おける水安全計画の策定や、クリプトスポリジ ン(令和7年改定版)において導入拡大を図 ウム等の耐塩素性病原生物の対策指針等に基づ ることとなっている「水の官民連携」(ウォー いた対策の徹底を促進するとともに、貯水槽水 ター PPP)も含め、先進的に官民連携に取り 道の管理水準の向上に向けた取組を促進してい 組んでいる事例の紹介や、 「水分野の PPP/PFI る。 (官民連携)推進会議」の開催等により、官民 令和7年度においては、8年4月1日から 連携の取組を支援している。さらに、水道施設 PFOS 及び PFOA が水道水質基準に引き上げら 等の適切な資産管理を進める観点から、改正水 れることを踏まえ、環境省と連携し、6年度に 道法において、水道事業者等に対し、水道施設 実施した全国調査のフォローアップ調査を行う を良好な状態に保つため、水道施設の点検を含 とともに、円滑な施行に向けて、水質検査を早 む維持・修繕の実施に関する規定に加え、水道 急に実施するよう要請し、また、超過が確認さ 施設台帳の作成・保管に関する規定を設けてい れた場合は、6年度に公表した「水道事業者等 る。 によるこれまでの PFOS 及び PFOA 対応事例に また、水道施設の計画的な更新や事業の収支 ついて」を参考に、水道事業者等により適切な 見通しの作成・公表に関する努力義務規定を設 対応が速やかに図れるよう取り組んだ。 けている。国土交通省では、これらに関連する 指針やガイドラインの作成・公表等を行い、適
国土交通白書 2026 275 第4節 健全な水循環の維持又は回復
(3)東日本大震災からの復興に関する取組 県、水道事業者、公益社団法人日本水道協会等 東日本大震災に伴い、累計で約 257 万戸に の関係団体から構成される「東日本大震災水道 及ぶ大きな断減水が発生した。津波の被災地域 復興支援連絡協議会」において、現地の課題や や東京電力福島第一原子力発電所の事故による 支援ニーズの把握に努め、早期復興に向けた取 帰還困難区域を除いては復旧がおおむね完了 組を支援している。 し、復旧未完了地域についても、国土交通省や
6 下水道整備の推進による快適な生活の実現 (1)下水道による汚水処理の普及 (2)下水道事業のインフラマネジメント 汚水処理施設の普及率は令和6年度末におい 下水道は、50 万 km(令和5年度末) 、終末 て、全国で 93.7%(下水道の普及率は 81.8%) 処理場約 2,200 か所(4年度末)に及ぶ膨大な となったものの、地域別には大きな格差があ ストックを有している。これらは、高度経済成 る。特に人口5万人未満の中小市町村における 長期以降に急激に整備されたことから、今後急
Ⅱ 汚水処理施設の普及率は 84.5%(下水道の普 速に老朽化施設の増大が見込まれている。小規 及率は 55.3%)と低い水準にとどまっている。 模なものが主ではあるが、管路施設の老朽化や 第7章
今後の下水道整備においては、人口の集中した 硫化水素による腐食等に起因する道路陥没等が 地区等において重点的な整備を行うとともに、 年間に約 2,600 か所(4年度末)で発生してい 地域の実情を踏まえた効率的な整備を推進し、 る。下水道は人々の安全・安心な都市生活や社 美しく良好な環境の保全と創造
普及格差の是正を図ることが重要である。 会経済活動を支える重要な社会インフラであ り、代替手段の確保が困難なライフラインであ ①汚水処理施設の早期概成に向けた取組 ることから、効率的な管路点検・調査手法や包 汚水処理施設の整備を進めるに当たっては、 括的民間委託の導入検討を行うとともに、予防 汚水処理に係る総合的な整備計画である「都道 保全管理を実践したストックマネジメントの導 府県構想」において、経済性や水質保全上の重 入に伴う計画的かつ効率的な老朽化対策を実施 要性等の地域特性を踏まえ、適切な役割分担を し、必要な機能を持続させることが求められて 定めることとしている。令和8年度末までの汚 いる。 水処理施設整備の概成を目指して整備を促進し 令和7年1月 28 日に埼玉県八潮市で発生し ており、人口減少等の社会状況変化を踏まえ、 た道路陥没を伴う下水道管路の破損事故では、 汚水処理手法の徹底的な見直しを推進してい トラック 1 台が巻き込まれ、運転手の方が亡く る。 なられるとともに、約 120 万人に下水道の使 また、早期かつ安価な整備を可能とするた 用自粛が求められるなど、甚大な影響が生じ め、地域の実情に応じた新たな整備手法を導入 た。 するクイックプロジェクトの導入や、民間活力 事故を受け、令和7年2月に設置した「下水 を活用して整備を推進するための官民連携事業 道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえ の導入等、整備手法や発注方法の工夫により、 た対策検討委員会」からの提言に基づき、下水 未普及地域の解消を推進している。 道管路の対象を重点化したうえで全国特別重点
【関連リンク】 都市規模別汚水処理人口普及率 URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001906145.pdf
276 国土交通白書 2026 第4節 健全な水循環の維持又は回復
調査を 7 年 3 月から実施した。また、同委員会 ①下水道の広域連携の取組 から更に、7 年 5 月と 12 月に提言を受け、安 「複数自治体による事業運営の一体化」を推 全性確保を最優先し、点検・調査の重点化及び 進するため、令和8年度より「下水道広域連携 管路の複線化等によるリダンダンシー(多重 推進事業」を創設するほか、先行して取り組む 性)・メンテナビリティ(維持管理の容易性) 事例の水平展開を行うなど、持続可能な事業運 の確保や、点検・調査における2つの「メリハ 営に向けた取組を推進している。 リ」と2つの「見える化」等による管路マネジ メントの転換が示された。7 年 6 月に閣議決定 ②経営健全化の推進 された第1次国土強靱化実施中期計画では、事 下水道は、国民生活に不可欠なインフラであ 故発生時に重大な影響を及ぼす大きな管径の下 るが、その経営は汚水処理費(公費で負担すべ 水道管路の更新や複線化が位置付けられ、令和 き部分を除く)を使用料収入で賄うことが原則 7 年度補正予算において、これらを重点的に支 とされている。人口減少等に伴う収入の減少や 援するための措置を講じた。 老朽化施設の増大等、課題を克服し、将来に また、「下水道管路マネジメントのための技 渡って下水道サービスを維持するため、経営に 術基準等検討会」を令和7年8月に設置し、上 関する的確な現状把握や中長期収支見通しを含 Ⅱ 記の提言を踏まえ、下水道管路の維持管理や再 む経営計画の策定、定期検証に基づく収支構造
第7章 構築に関する具体的な基準等について専門的見 の適正化を促すなど、経営健全化に向けた取組 地から検討を行い、8年1月に本検討会の中間 を推進している。 整理として、下水道管路のメリハリをつけた点
美しく良好な環境の保全と創造 検方法や健全度を踏まえた診断基準等、具体的 ③下水道分野における官民連携の推進 な見直しの骨格を公表した。引き続き、下水道 「水の官民連携」 (ウォーター PPP)(コン 管路マネジメントの包括的な見直しに取り組む セッション方式と、同方式に準ずる効果が期待 こととしている。 できる管理・更新一体マネジメント方式の総 称)について、下水道分野においては、国費に (3)基盤強化に向けた取組 よる定額支援制度により、「水の官民連携」を 将来にわたって強靱で持続可能な下水道事業 導入しようとする地方公共団体の検討費用の補 を実現するためには、広域連携や経営健全化、 助を行うほか、地方公共団体等向けの会議にお 官民連携など、基盤強化に向けた取組が重要で いて情報提供や意見交換を実施した。加えて、 あり、上下水道政策の基本的なあり方検討会に 「下水道分野におけるウォーター PPP ガイドラ おいて、取組の方向性が議論されている。 イン」について、主に官民のリスク分担や分野 横断型・広域型に関する記載を拡充するため、 策定検討委員会を設置し改訂内容を審議した。
【関連リンク】 国土交通大臣賞「循環のみち下水道賞」 URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_000908.html
【関連リンク】 下水道管路マネジメントのための技術基準等検討会 URL:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/mizukokudo_sewerage_tk_001028.html
国土交通白書 2026 277 第5節 海洋環境等の保全
第5節 海洋環境等の保全 (1)船舶からの排出ガス対策注 5 動先の海域の生態系に影響を及ぼす問題に対応 船舶の排ガス中の硫黄酸化物(SOx)によ すべく、IMO において平成 16 年に船舶バラス る人や環境への悪影響低減のため、MARPOL ト水規制管理条約が採択され、29 年に発効し 注6 条約 により、船舶用燃料油の硫黄分濃度の上 た。本条約は、規制対象船舶に対して、有害水 限が規制されている。同条約に基づき令和2年 バラスト処理設備を用いてバラスト水中の水生 1月1日から、基準値が従来の 3.5%から 0.5% 生物を除去するなどのバラスト水管理の実施を へ強化されている。 求めている。現在、IMO では、当該条約の実 国土交通省としては、規制適合油が適切に使 運用を通じて確認された課題を踏まえた条約改 用され、安全に運航が行われるよう、引き続き 正の検討が行われており、我が国は合理的な改 状況の把握に努めていく。 正により課題の解決が図られるよう議論に参画 している。 (2)海洋汚染への対策
Ⅱ 大規模な油汚染への対応策として策定してい (4)条約実施体制の確立 る「油等汚染事件への準備及び対応のための国 船舶事故や海洋汚染の大きな要因となり得る 第7章
家的な緊急時計画」及び「排出油等防除計画」 サブスタンダード船注 8 を排除するため、日本へ を見直し、本邦周辺海域で発生した大規模油流 の寄港船舶に立入検査を行って基準に適合して 出事故における防除体制等を整えるとともに、 いるかを確認するポートステートコントロー 美しく良好な環境の保全と創造
大型浚渫兼油回収船による迅速かつ確実な対応 ル(PSC)を実施している。さらに、効果的 体制を確立している。 な PSC を実施するため、東京 MOU 注 9 の枠組 さらに、MARPOL 条約に基づく油、廃棄物 みに基づき、アジア太平洋域内の加盟国との協 等の排出規制を実施するとともに、海洋プラス 力関係を推進した。 チックごみ対策として「貨物コンテナによるプ また、IMO は、国際条約で定められた措置 ラスチックペレットの海上輸送に関する IMO が確実に実施されているか確認するため、平 勧告」を国内関係事業者等へ周知し、同勧告に 成 28 年からすべての加盟国に対し監査を行っ 基づく取組を促進している。 ている。なお、我が国においても、船舶検査や PSC 等の実施に当たり、ISO9001 に基づく品 (3)船舶を介して導入される外来水生生物問 質管理システムを導入し、国際的な水準での条 題への対応 約実施体制を確立している。 注7 水生生物が船舶のバラスト水 に混入し、移
注 5 国際海運からの温室効果ガス(GHG)削減に向けた我が国の取組は、 第 8 章第 2 節 2(4)①国際海事機関の項目を参照。 注 6 船舶による汚染の防止のための国際条約。 注 7 主に船舶が空荷のときに、船舶を安定させるため、重しとして積載する海水等。 注 8 旗国による十分な検査が行われず、条約の技術基準を満足しないまま航行している船があり、こうした船を「サブスタ ンダード船」と呼んでいる。 注 9 東京 MOU:1993 年に日本を含むアジア太平洋地域の国・地域が、PSC について地域的な協力体制を構築することを 目的として採択した Memorandum of Understanding on Port State Control in the Asia-Pacific Region(アジア 太平洋地域における PSC の協力体制に関する覚書)のこと。
278 国土交通白書 2026 第6節 大気汚染・騒音の防止等による生活環境の改善
第6節 大気汚染・騒音の防止等による生活環境の改善
1 道路交通環境問題への対応 (1)自動車単体対策 (2)交通流対策等の推進 ①排出ガス低減対策 ①大気汚染対策 新車の排出ガス対策に関しては、四輪車及び 自動車からの粒子状物質(PM)や窒素酸化 二輪車について国際調和排出ガス試験法を導入 物(NOx)の排出量は、発進・停止回数の増 しており、世界的にトップレベルの排出ガス規 加や走行速度の低下に伴い増加することから、 制を適用している。 沿道環境の改善を図るため、バイパス整備によ また、ディーゼル乗用車等の型式認証におけ る市街地の通過交通の転換等を推進している。 る路上排出ガス試験法について、国際基準を令 和6年に導入し、排出ガス規制値を強化した。 ②騒音対策 交通流対策とともに、低騒音舗装の敷設、遮 ②騒音対策 音壁の設置、環境施設帯の整備等を進めてい Ⅱ 自動車騒音対策に関しては、四輪車及び二輪 る。
第7章 車の騒音に係る国際基準を導入している。ま また、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」 た、定常走行時の騒音への寄与率が高い四輪車 に基づき、道路交通騒音により生ずる障害の防 のタイヤに関しては、タイヤ単体の騒音に係る 止等に加えて、沿道地区計画の区域内におい
美しく良好な環境の保全と創造 国際基準を導入している。 て、緩衝建築物の建築費又は住宅の防音工事費 への助成を行っている。
2 空港と周辺地域の環境対策 これまで我が国では、低騒音機の導入等によ 周辺地域への航空機騒音による影響は軽減され る機材改良、夜間運航規制等による発着規制、 てきている。 騒音軽減運航方式による運航方法の改善、空港 今後も、航空需要の変動等、状況の変化に応 構造の改良並びに防音工事や移転補償等の周辺 じ、地域住民の理解と協力を得ながら総合的な 環境対策からなる航空機騒音対策を着実に実施 航空機騒音対策を講じることで、空港周辺地域 してきた。近年、低騒音機の普及等により、航 の発展及び環境の保全との調和を図っていく必 空機の発着回数が増加する中にあっても、空港 要がある。
3 鉄道騒音対策 新幹線の騒音については、昭和 50 年環境庁 源対策では防音壁の設置や嵩上げ等を引き続き 告示「新幹線鉄道騒音に係る環境基準につい 推進している。 て」に基づき、環境基準が達成されるよう、音 また、在来線の騒音については、平成 7 年環
【関連データ】 自動車からの粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)の排出量と走行速度の関係 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
国土交通白書 2026 279 第6節 大気汚染・騒音の防止等による生活環境の改善
境庁通達「在来鉄道の新設又は大規模改良に際 すよう、音源対策ではロングレール化等を引き しての騒音対策の指針」に基づき、指針を満た 続き推進している。
4 ヒートアイランド対策 ヒートアイランド現象とは、都市の中心部の 施策の推進を図るため、関係省庁の具体的な施 気温が郊外に比べて島状に高くなる現象であ 策を体系的に取りまとめた「気候変動適応計 る。1929 年からの統計において、日本の年平 画」 (令和3年 10 月 22 日閣議決定、5年 5 月 均気温は、都市化の影響の比較的小さい地点で 30 日一部変更 閣議決定)に基づき、人間活 は、主に地球温暖化の影響により 100 年当た 動から排出される人工排熱の低減、公共空間等 り約 1.8℃の割合で上昇している。一方、日本 の緑化や水の活用による地表面被覆の改善、都 の大都市では、100 年当たり約 2 ~ 3℃の割合 市形態の改善(緑地や水面からの風の通り道の で上昇しており、地球温暖化の傾向に都市化の 確保等)、ヒートアイランド現象の観測・監視 影響が加わり、気温の上昇は顕著に現れてい 体制の強化及び調査研究等の取組を進めてい
Ⅱ る。総合的かつ計画的な気候変動適応に関する る。 第7章
5 シックハウス等への対応 (1)シックハウス対策 オキシン類対策を実施している。 美しく良好な環境の保全と創造
住宅に使用する内装材等から発散する化学物 質が居住者等の健康に影響を及ぼすおそれがあ (3)アスベスト問題への対応 るとされるシックハウスについて、「建築基準 アスベスト問題は、人命に係る問題であり、 法」に基づく建築材料及び換気設備に関する規 アスベストが大量に輸入された 1970 年代以降 制や、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」 に造られた建物が今後解体期を迎えることか に基づく性能表示制度等の対策を講じている。 ら、被害を未然に防止するための対応が重要で また、官庁施設の整備に当たっては、化学物 ある。アスベスト含有建材の使用実態を的確か 質を含有する建築材料等の使用の制限に加え、 つ効率的に把握するため、平成 25 年度に創設 施工終了時の室内空気中濃度測定等による対策 (30 年からは厚生労働省・環境省と共管)の を講じている。 「建築物石綿含有建材調査者講習」制度に基づ き、調査者の育成を行っている。また、「建築 (2)ダイオキシン類問題等への対応 基準法」により、建築物の増改築時における吹 「ダイオキシン類対策特別措置法」で定義さ 付けアスベスト等の除去等を義務付けており、 れているダイオキシン類について、全国一級水 既存建築物における吹付けアスベスト等の除去 系で水質・底質調査を実施している。令和6年 等を推進するため、社会資本整備総合交付金等 度は、水質は約 94%(162 地点/ 172 地点)、 の補助制度を行っているほか、各省各庁の所管 底質はすべての地点で環境基準を満たした。 の既存施設における吹付けアスベスト等の除 なお、河川や港湾では、「河川、湖沼等にお 去・飛散防止の対策状況についてフォローアッ ける底質ダイオキシン類対策マニュアル(案)」 プを実施している。さらに、アスベスト含有建 や「港湾における底質ダイオキシン類対策技術 材情報のデータベース化、建築物のアスベスト 指針(改訂版) 」に基づき、必要に応じてダイ 対策の普及啓発に係るパンフレット等により情
280 国土交通白書 2026 第7節 地球環境の観測・監視・予測
報提供を推進している。
6 建設施工における環境対策 公道を走行しない建設機械等に対し、「特定 している。また、最新の排出ガス規制等に適合 特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律」等 する環境対策型建設機械の購入に対して低利融 により排出ガス(NOx、PM 等)対策を実施 資制度等の支援を行っている。
第7節 地球環境の観測・監視・予測
1 地球環境の観測・監視 (1)気候変動の観測・監視 援を行っている。 気象庁では、地球温暖化の原因となる温室効 果ガスの状況を把握するため、大気中の CO2 (3)静止気象衛星による観測・監視 Ⅱ 等を国内2地点で観測しているほか、北西太 気象庁は、静止気象衛星「ひまわり8号・9
第7章 平洋の洋上大気や表面海水中の CO2 を海洋気 号」の運用を継続して実施している。 「ひまわ 象観測船で観測している。また、世界気象機関 り8号・9号」の2機体制によって長期にわた (WMO)温室効果ガス世界資料センターとし る安定的な観測体制を確立し、東アジア・西太
美しく良好な環境の保全と創造 て、世界中の温室効果ガス観測データの収集・ 平洋地域の広い範囲を、24 時間常時観測して 提供を行っている。 いる。これらの衛星では、台風や集中豪雨等に また、WMO をはじめ国内外の関係機関と 対する防災機能の向上に加え、地球温暖化をは 協力して大気・海洋等の観測・監視を行って長 じめとする地球環境の監視機能を世界に先駆け 期変化傾向を把握し、最新の情報を気象庁ウェ て強化している。 ブサイト「気候変動監視レポート」にまとめて いる。 (4)海洋の観測・監視 海洋は、大気と比べて非常に多くの熱を蓄え (2)異常気象の観測・監視 ていることから地球の気候に大きな影響を及ぼ 気象庁は、我が国や世界各地で発生する異常 しているとともに、人類の経済活動により排出 気象を監視し、極端な高温・低温や多雨・少雨 された CO2 を吸収することによって、地球温 等が観測された地域や気象災害について、定期 暖化の進行を緩和している。このことから、地 及び臨時の情報を取りまとめて発表している。 球温暖化をはじめとする地球環境の監視のため また、社会的に大きな影響をもたらした異常 には、海洋の状況を的確に把握することが重要 気象が発生した場合は、特徴と要因、見通しを である。気象庁では、国際的な協力体制の下、 まとめた情報を随時発表している。さらに、気 海洋気象観測船により北西太平洋において高精 象庁では、アジア太平洋地域の気候情報提供業 度な海洋観測を行うとともに、人工衛星や海洋 務支援のため、世界気象機関(WMO)の地 の内部を自動的に観測するアルゴフロートによ 区気候センターとしてアジア各国の気象機関に るデータ等を活用して、海洋の状況を監視して 対し、異常気象の監視・解析等の情報を提供す いる。 るとともに、研修や専門家派遣を通じて技術支 その結果については、気象庁ウェブサイト
国土交通白書 2026 281 第7節 地球環境の観測・監視・予測
「海洋の健康診断表」等により、我が国周辺海 (紫外線予測値)を毎日提供している。紫外線 域の海水温・海流、海面水位、海氷等に関する の強さには、有害紫外線の人体への影響度を示 データとして提供し、その現状と今後の見通し す指標(UV インデックス)を用いている。 の解説も行っている。 海上保安庁では、日本周辺海域の海況を自律 (6)南極における定常観測の推進 型海洋観測装置(AOV)及び漂流ブイにより 気象庁は、昭和基地でオゾン、日射・赤外放 常時監視・把握するとともに、観測結果を公表 射、地上、高層等の気象観測を継続して実施し している。また、日本海洋データセンターにお ており、観測データは南極のオゾンホールや気 いて、我が国の海洋調査機関により得られた海 候変動等の地球環境の監視や研究に寄与するな 洋データを収集・管理し、関係機関及び一般へ ど、国際的な施策策定のために有効活用されて 提供している。 いる。 国土地理院は、南極地域観測隊の活動、地球 (5)オゾン層の観測・監視 環境変動の研究及び測地測量に関する国際的活 気象庁では、オゾン・紫外線を観測した成果 動等に寄与するため、GNSS 連続観測等により
Ⅱ を毎年公表しており、それによると世界のオゾ 位置の基準を整備し、地形図の作成・更新、衛 ン量は 2000 年以降ではわずかな増加がみられ 星画像図の整備等を実施している。 第7章
るが、1970 年代と比較すると少ない状態が続 海上保安庁は、海底地形調査を実施してお いている。 り、観測データは、海図の刊行、氷河による浸 また、国民の有害紫外線対策に資するため、 食や堆積環境等の過去の環境に関する研究等の 美しく良好な環境の保全と創造
気象庁ウェブサイト「紫外線情報」において、 基礎資料として役立てられている。また、潮汐 現在の紫外線の強さ(紫外線解析値)を毎時間 観測を実施し、地球温暖化と密接に関連してい 提供し、当日、又は翌日の紫外線の強さの予測 る海面水位変動の監視にも寄与している。
2 地球環境の予測・研究 文部科学省及び気象研究所では、世界全体の 学省と気象庁が「気候変動に関する懇談会」の 炭素循環過程等を含む地球システムモデルや、 議論を踏まえて7年3月に公表した「日本の 日本付近の気候の変化を詳細に予測可能な地域 気候変動 2025」では、今後の世界平均気温が 気候モデルの開発等を行い、気候変動の予測研 2℃及び4℃上昇した場合等の将来予測に加 究を行うとともに、 世界気候研究計画(WCRP) え、新たに、100 年当たり一回等の頻度で生じ 等の国際研究計画に積極的に参加している。文 るような発生頻度が低い極端現象が、地球温暖 部科学省と気象庁は、気候変動の影響評価研究 化の進行に伴いどのように変化するかについ 者や地方公共団体、民間企業等の様々な分野で て、確率的表現を用いた評価も掲載している。 気候変動対策に活用できるデータを取りまとめ このような取組により、気候変動の自然科学 た「気候予測データセット 2022」及び解説書 的根拠について観測結果や予測結果を提供す をデータ統合・解析システム(DIAS)を通じ ることで、気候変動影響評価報告書(令和8 て令和4年 12 月に公開した。さらに、文部科 年2月公表)、気候変動に関する政府間パネル
【関連データ】 海洋気象観測船による地球環境の監視 URL:https://www.mlit.go.jp/statistics/file000010.html
282 国土交通白書 2026 第7節 地球環境の観測・監視・予測
(IPCC)第6次評価報告書(3~5年公表)、 の作成・策定に関与し、また、地方公共団体等 地球温暖化対策計画(7年2月閣議決定)や気 による適応策策定に向けた取組等に対し積極的 候変動適応計画(3年 10 月 22 日閣議決定)等 に貢献している。
3 地球規模の測地観測の推進 VLBI(天体からの電波を利用してアンテナ 準座標系(GGRF)の構築を推進している。 の位置を測る技術)や SLR(レーザ光により また、国土地理院は、令和5年度から日本の 人工衛星までの距離を測る技術)を用いた国際 機関で初めて国際機関(国際 GNSS 事業)に 観測、験潮、絶対重力観測、電子基準点による 認定された「解析センター」として、高精度測 GNSS 連続観測等を通じて全球統合測地観測シ 位に不可欠な衛星の精密な軌道情報の算出に ステム(GGOS)に参加し、地球の形状と動 JAXA と共同で取り組み、高精度測位基盤の維 きの決定に貢献することで、地球規模の測地基 持に貢献している。
Ⅱ
第7章 美しく良好な環境の保全と創造
国土交通白書 2026 283 第1節 インフラシステム海外展開の促進
第 8章 戦略的国際展開と国際貢献の強化
第1節 インフラシステム海外展開の促進
1 政府全体の方向性 新興国を中心とした世界の膨大なインフラ需 障上のリスクが増加している。我が国企業によ 要を積極的に取り込むことにより、我が国の経 る持続的なインフラシステムの海外展開を推進 済成長につなげていくため、政府は平成 25 年 するためにはこうした課題に対する一層の対応 3月に国土交通大臣を含む関係閣僚を構成員と が求められている。 する「経協インフラ戦略会議」を設置し、政府 このような状況を踏まえ、令和6年 12 月に 一体となってのインフラ海外展開に取り組んで は、政府全体のインフラシステム海外展開の方 きた。 向性を示した「インフラシステム海外展開戦 その一方で、インフラシステムの海外展開を 略 2030」が策定され、今後の重点戦略を①相 Ⅱ 取り巻く環境が急速に変化するとともに、国際 手国との共創を通じた我が国の「稼ぐ力」の向 第8章
社会は、気候変動等の地球規模課題の深刻化、 上と国際競争力強化、②経済安全保障等の新 自由で開かれた国際秩序への挑戦と分断リスク たな社会的要請への迅速な対応と国益の確保、 の深刻化、世界各地での人道危機等といった複 ③ GX・DX 等の社会変革をチャンスとして取 合的危機に直面しており、カントリーリスクを り込む機動的対応の3つの柱として整理し、政 戦略的国際展開と国際貢献の強化
はじめとする投資環境や事業環境に関するリス 府全体で我が国の強みを活かしたインフラシス クやサプライチェーン途絶といった経済安全保 テムの海外展開に取り組んでいる。
2 国土交通省における取組 国土交通省では、上記1.の通り、政府を挙 環境を整備する必要がある。このため、相手国 げて取り組んでいる我が国の強みを活かしたイ の国土計画・マスタープラン等の上位計画から ンフラの海外展開について、関係者と情報・戦 関与し、トップセールス、二国間枠組みによる 略を共有し、官民一体となった取組を進めるた 政府間対話等の GtoG による情報発信等に取り め、「国土交通省インフラシステム海外展開行 組んでいる。 動計画」を策定している。具体的には、以下の (1)〜(7)を主な施策として精力的に推進 (2)PPP 案件への対応力の強化 しているところである。 世界の膨大なインフラ需要を公共投資だけで 賄うことは困難であり、対外債務増加に消極的 (1)「川上」からの継続的関与の強化 な国もあることから、民間資金を活用する官民 我が国企業が確実に案件を獲得するために、 連携(PPP:Public-Private Partnership)へ 案件が成立するか不明確な「川上」の段階から の期待が高まっている。しかしながら、PPP 相手国に働きかけ、我が国企業が参入しやすい 案件を円滑に進めるための相手国における法制
284 国土交通白書 2026 第1節 インフラシステム海外展開の促進
度が未整備な場合や、相手国政府における官民 地・海外企業の取得といった取組を支援すると の適正なリスク分担に対する理解が不十分な場 ともに、国際標準化等に係る戦略的取組を推進 合もあることから、政府としても相手国の状況 する。 を十分に踏まえ、環境整備を働きかけている。 (6)我が国企業の海外展開に係る人材の確保 (3)我が国の強みを活かした案件形成 と環境の整備 我が国のインフラシステムは、①使いやすく 海外案件に従事できる能力を有する人材不足 長寿命かつ低廉なライフサイクルコスト、②技 を解消し、我が国企業の人材流動化を促進する 術移転、人材・企業育成等相手国発展のための ため、技術者の海外工事・業務の実績を国内事 基盤づくり、③工期等契約事項の確実な履行、 業で活用できるよう認定・表彰する「海外イン ④環境や防災、安全面にも配慮した経験に基づ フラプロジェクト技術者認定・表彰制度」の運 いた技術導入を特長として有し、これらの強み 用等を行うほか、インフラ分野に特化したジョ を活かした案件形成や「川下」までを見据えた ブマッチング等の人材育成に係る具体の支援策 案件形成後の継続的なフォローを行う。 の検討を行う。また、現場で活躍できる基礎的 能力等を付与することを目的とした「海外イン (4)我が国コンサルタントによる調査等の質 フラ展開人材養成プログラム」や中堅・中小建 の向上 設企業海外展開促進協議会(JASMOC)の設 案件形成を円滑に進めるためには、我が国コ 置・運営、各種セミナーや個別相談等を通した Ⅱ
第8章 ンサルタントによる成果の質の更なる向上を図 中堅・中小建設企業の海外展開の支援を行って る必要がある。このため、第三者による技術的 いる。 助言への支援、事業調査の早期段階における我 が国企業の知見を聴取する仕組みの構築及びコ (7)案件受注後の継続的なフォローアップ
戦略的国際展開と国際貢献の強化 ンサルタントの業務実施環境の整備等に取り組 海外案件においては、プロジェクトの受注後 む。 に発生する、相手国からの金銭の支払遅延等の トラブルが潜在的なリスクと見込まれており、 (5)我が国企業の競争力の強化 事業価格の高騰等や海外事業への参入意欲の低 競合国企業は、海外展開事業の規模と実績に 下を招いている。このようなトラブルの解決を おいて我が国企業を大きく上回っており、価格 働きかける相手方が相手国政府や自治体、公的 面及び提供する商品の質の柔軟性を含めた供給 機関であることも多く、我が国企業の独力での 能力面において、我が国企業の競争力を強化し 解決は困難を伴う。 ていく必要がある。そのため、現地ローカル企 このため、トラブル発生時のトップクレーム 業との連携の促進、海外での設計・製造拠点 等の実施や相談窓口の設置、政変・騒乱等への の設置や現地職員の活用並びに M&A による現 対応支援を行っている。
国土交通白書 2026 285 第1節 インフラシステム海外展開の促進
3 国土交通省のインフラシステム海外展開に係るアプローチ 国土交通省は、具体的には以下の(1)~ 向けた認可を行った。また、国土交通省が出席 (4)を利用して、企業が海外インフラ展開に する国際会議等において、JOIN の活用を呼び 参入しやすい環境を形成するために、様々な形 かけるとともに、JOIN にプレゼンテーション で支援を行っている。 を行う機会を提供したほか、調査事業で得られ た情報を JOIN にも共有した。さらに、JOIN (1)トップセールスによる案件形成への働き は海外展開に関する地方企業向けの説明会に参 かけ 加し、JOIN の支援施策を知る機会が限られる 政務レベルによるトップセールスは、インフ 地方企業へのアプローチを実施した。 ラ案件獲得等に重要な役割を有しており、コロ ナ禍においてはオンライン会議等による相手国 (3)官民合同の協議会等による情報提供やビ への働きかけを実施してきた。 ジネスマッチングの機会提供 一方で、対面での取組によって我が国の強み 我が国のスタートアップ企業、地方・中小企 を活かしたインフラシステムに対する理解を醸 業が高い技術力やノウハウを有していながら、 成する重要性も再認識された。往来を再開する 海外進出を具体化するに及んでいないケースも 動きが本格化していることを踏まえ、国土交通 考えられることから、インフラシステム海外展 Ⅱ 省として政務レベルのトップセールス等による 開の担い手の裾野を広げることを目指し、支援 第8章
政府間対話を復活させ、我が国企業の参入・受 を進めてきた。 注に向けた活動を支援している。 中堅・中小建設企業を対象とした海外展開に 係る情報提供や技術 PR 等のプロモーション、 (2)官民ファンドによる事業支援 ビジネスマッチング等の機会提供といった取 戦略的国際展開と国際貢献の強化
海外における交通・都市開発分野の事業は、 組を推進していく。具体的には、スマートシ 初期投資が大きく資金回収までに長い期間を要 ティ分野において、“Smart JAMP” 支援策や日 することに加えて、政治リスク、需要リスク等 ASEAN スマートシティ・ネットワーク官民協 の様々なリスクが存在するため、民間だけでは 会(JASCA)、交通ソフトインフラ分野におい 参入が困難なケースもみられる。 ては、交通ソフトインフラ海外展開支援協議会 ㈱海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN) (JAST)の活動を通じて、この分野におけるス は、このようなリスクを分担し、出資や人材派 タートアップ等の海外展開を積極的に推進して 遣等を通じて事業参画を行う、ハンズオン機能 いる。 を有する官民ファンドとして平成 26 年に設立 され、これまでに 46 事業への支援決定を行っ (4)国際標準化の推進と戦略的活用 ている(令和8年3月末時点)。 海外展開を有利に進める上で、我が国の技 JOIN は令和5年度決算において多額の損失 術・ノウハウの国際標準化は極めて重要であ を計上したが、7年6月の財政投融資分科会 り、国際機関で決定される国際基準を戦略的に において、JOIN 及び国土交通省より、有識者 活用し、我が国企業が受注しやすい環境を整備 委員会の最終報告を踏まえた経営改善策の進捗 する必要がある。それぞれの分野の実情を踏ま を受け、新規支援決定を再開していくことを報 えて戦略的な取組を行う必要があるため、①国 告した。7年9月には、国土交通省において、 際標準化機関(ISO、IEC 等)における国際標 オーストラリアにおける都市開発事業の支援に 準の獲得、国連機関等での基準化、②国際標準
286 国土交通白書 2026 第1節 インフラシステム海外展開の促進
となった後、相手国での採用を働きかけ他国と 本規格のデファクトスタンダード化を柱に取組 の差別化を確保、③国際標準未取得の場合、日 を進めている。
4 各国・地域における取組 ①東アジア・大洋州 力を推進することで合意した。 台湾については、令和 7 年 9 月に発生した河 道閉塞決壊による二次災害防止の支援のため、 (エ)タイ 我が国が開発したヘリから設置可能な水位観測 令和 7 年 3 月 28 日にミャンマーで発生した 機器を(公財)日本台湾交流協会を通じて提供 地震後、4 月 5 日及び 10 日に道路分野の専門 した。 家を派遣し、現地調査、ワークショップを開催 大洋州については、令和7年 11 月に、フィ した。後述の大臣会談でセミナーの開催要請を ジー共和国ランブカ首相と金子国土交通大臣と 受け、6 月 10 日日タイ技術協力会議を開催し の会談が実施され、海上保安やインフラ整備等 「建設時の安全管理や地震後のインフラ点検」 に係る協力について幅広く意見交換を行った。 をテーマに、日本の知見を共有した。 令和7年4月に、中野国土交通大臣がタイを ② ASEAN 地域 訪問し、スリヤ副首相兼運輸大臣との会談を実 (ア)インドネシア 施し、インフラ・交通分野における両国間の協 Ⅱ
第8章 令和7年 10 月、日本の支援により建設が進 力について意見交換するとともに、鉄道、都市 んでいるインドネシア ジャカルタ都市高速鉄 開発、港湾など我が国企業が参画を目指す事業 道(MRT)南北線延伸工事(フェーズ 2A)に に関する政策協議を行った。 おいて、フェーズ1に引き続き、車両を本邦企 また、国土交通省とタイ運輸省との間で「鉄
戦略的国際展開と国際貢献の強化 業が受注した。7年 10 月にジャカルタ下水道 道及び都市開発分野における協力覚書」の署名 整備事業(第 6 区)の下水処理場建設工事を本 式を行い、同分野における両国の一層の協力を 邦企業が受注した。 確認した。
(イ)カンボジア (オ)フィリピン 令和7年5月に、コイ・ソダニィ公共事業運 令和7年4月、中野国土交通大臣はフィリピ 輸省筆頭長官による古川国土交通副大臣表敬が ン・マニラにて、日本企業が経営に参画し、日 実施され、交通インフラ整備や人材育成に関す 本の鉄道事業のノウハウを活かした取組を実施 る意見交換を行った。 している LRT1 号線において、車両基地の視察 を行った。また4月 28 日、中野国土交通大臣 (ウ)シンガポール はフィリピン国公共事業・道路省の招待を受 令和7年7月、日本とシンガポール間のグ け、ダバオ市バイパス建設事業のトンネルの貫 リーン・デジタル海運回廊協力覚書に基づく第 通式に出席し、日本企業による海外道路事業の 2回年次会合を日本で開催した。同会合では、 受注拡大や本邦技術の伝承等に向けたトップ 港湾パートナーや民間事業者も参加し、港湾の セールスを行った。 脱炭素化や海運におけるアンモニア燃料の活 令和7年3月、9月に開催された日・フィリ 用、自動運航船の社会実装に向けた取組を共有 ピン経済協力インフラ合同委員会では、日本の し、引き続き、これらの分野における両国の協 強みを生かした形で、防災、鉄道や道路を含む
国土交通白書 2026 287 第1節 インフラシステム海外展開の促進
インフラ整備など、フィリピンの社会経済発展 いた建設等のプロジェクトについて、現下の情 に向けた支援が着実に進展していることを確認 勢を踏まえつつ、事態の推移を注視した。 するとともに、フィリピンの上位中所得国入り を見据えて鉄道・道路等の運営・維持管理等の (ケ)東ティモール 分野でも協力を一層強化していくことで一致し 令和8年1月に、マルサル公共事業大臣によ た。 る佐々木国土交通副大臣表敬が実施され、日本 令和7年 12 月、「第4回道路建設 ・ O&M に の治水・砂防事業について意見交換を行った。 関するビジネスワークショップ」を開催し、国 土交通省や高速道路会社などから本邦道路技術 ③南アジア 等を共有した。 (ア)インド 令和7年3月、「インフラメンテナンス国民 (カ)ベトナム 会議 海外市場展開フォーラム」の活動の一環 令和7年5月には、国土交通省とベトナム農 として、インフラメンテナンスの海外市場展開 業環境省間の水分野(水防災、水資源管理等) セミナーをインド国政府、民間企業と対面及び に関する協力覚書に基づく防災協働対話を官民 オンライン併用のハイブリッド形式で開催し、 協働で開催し、二国間協力の取組を継続するこ インド国のニーズに合わせた日本企業保有技術 とを確認した。 を紹介し、日本企業のインドにおけるインフラ Ⅱ 令和7年9月に、チャン・ドウック・タン農 メンテナンス事業への参画・協同に向けたネッ 第8章
業環境大臣による中野国土交通大臣表敬が実施 トワーク構築を支援した。 され、表敬後、国土交通省とベトナム社会主義 令和7年8月に行われた日印首脳会談におい 共和国農業環境省との間で水分野(水防災、水 て、両首脳は、日印の旗艦プロジェクトである 資源管理等)に関する協力覚書に署名し、両国 ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業にお 戦略的国際展開と国際貢献の強化
の国土交通分野における一層の協力を確認し いて、なるべく早期の運行の開始に向けて共に た。 取り組み、インドへの最新の日本式新幹線技術 令和7年 10 月、トラン・ホン・ミン建設大 の導入に向けて協力することで一致した。 臣が国土交通省を訪れた際には、スマートシ 令和7年9月にインドでムンバイ都市圏開発 ティ分野における我が国企業の取組の紹介に加 庁等と「第2回日印道路技術セミナー」を開催 えて、下水道分野について我が国の都市浸水対 し、海上道路建設・維持管理をテーマに日本の 策等の紹介を行い、これらの分野における二国 知見を共有するとともに、同月に東京でイン 間協力の一層の深化に向けた政策協議を行っ ド道路交通省等と「第 11 回日印道路交流会議」 た。 を開催し、トンネル建設、デジタル技術の活 用、橋梁設計技術、インドの投資機会などにつ (キ)マレーシア いて両国知見を共有し意見交換等を実施した。 令和7年9月に、マレーシアエネルギー移 令和7年 12 月、スマートシティ分野での協 行・水変革省との間で水分野(水資源管理、水 力を更に深めていくため、マハラシュトラ州タ 防災、上下水道等)に関する協力覚書に署名し ネ市とのスマートシティ分野に関する協力覚書 た。 を締結し、官民で協力できる分野や具体策につ いて意見交換等を実施した。 (ク)ミャンマー また、令和8年 1 月に国土交通省水管理・国 ミャンマー国内で日本企業により実施されて 土保全局とインド水活力省水資源・河川開発・
288 国土交通白書 2026 第1節 インフラシステム海外展開の促進
ガンガー再生局との水資源分野における協力に 実施し、日本が強みを持つ技術を活用したウク 関する覚書に基づき、ダム点検技術等について ライナ復興支援への強い期待が寄せられた。 意見交換を実施した。 また、令和8年3月には同協議会の取組とし て、遠隔施工技術導入や住宅復興に関する協力 (イ)バングラデシュ 関係強化のため、第2回官民ミッションをキー PPP 庁 と の 覚 書 に 基 づ き 日 本 バ ン グ ラ デ ウ及びリヴィウへ派遣し、インフラ復興の主務 シュ・ジョイント PPP プラットフォームを構 官庁である地方・国土発展省をはじめとした政 築し、政府間協力の下でバングラデシュ側の関 府機関との協議のほか、公社・業界団体等と 係省庁と我が国関心企業による各種プロジェク JUPITeR 会員間のネットワーキング等を行っ トの案件形成を支援している。 た。
④北米・欧州 ⑤中南米 (ア)北米 中南米地域においては、インフラ需要が旺盛 令和7年 10 月、米国のラトニック商務長官 であるが、必ずしも日本企業の関心が高いわけ が金子国土交通大臣を表敬訪問し、造船分野に ではない。一方で、PPP 案件の増加等、変化 おける協力を促進するための協力覚書に署名し しつつある域内のインフラ需要に対して適切な た。 対応が必要である。このような背景から令和 7 令和7年 12 月、第 34 回日本・カナダ次官級 年 7 月、外務省・経済産業省と共同で、日本企 Ⅱ
第8章 経済協議が東京で開催され、インフラ分野や観 業による中南米への進出を支援するため、 「中 光分野などにおける協力について意見交換を 南米地域へのインフラ海外展開に関する官民 行った。 プラットフォーム(PLACIDA)」を立ち上げ、 7年 7 月、8年 3 月に協議会を開催したほか、
戦略的国際展開と国際貢献の強化 (イ)欧州 メキシコ・ペルーへの官民ミッション派遣等の 令和7年7月、中野国土交通大臣はイタリア 活動を行っている。 のサルヴィーニ副首相兼インフラ運輸大臣と会 談を行い、長大橋の建設、運営・維持管理に関 ⑥トルコ する協力覚書への署名を行い、二国間協力を一 令和7年4月、ボラット貿易大臣による中野 層の強化することを確認した。 国土交通大臣表敬が実施され、建設産業におけ 令 和 7 年 9 月、 欧 州 委 員 会(EU) の ツ ィ る第三国連携を通じたウクライナ復興支援策等 ツィコスタス欧州委員(持続可能な運輸・観光 について意見交換を行った。 担当)による古川国土交通副大臣への表敬訪問 令和7年9月に開催された日・トルコ防災セ が実施され、航空分野や観光分野での日 EU 間 ミナーでは、官民による日トルコの防災協力を の協力などについて意見交換を行った。 一層強化するとともに、日本企業によるトルコ ウクライナ復興に関しては、ウクライナにお 進出の支援を行った。 ける国土交通分野のインフラ復興への本邦企 業の参画を促すため、令和 7 年 1 月に設立した ⑦アフリカ 「日ウクライナ・国土交通インフラ復興に関す 第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)に合 る官民協議会」 (JUPITeR)の活動を行った。 わせて平成 28 年8月に開催した「日・アフリ 特に、7 年 10 月には、ウクライナ・キーウに カ官民インフラ会議」を契機として設立した おいて遠隔施工技術のデモンストレーションを 「アフリカ・インフラ協議会(JAIDA) 」と連
国土交通白書 2026 289 第2節 国際交渉・連携等の推進
携し、アフリカにおける「質の高いインフラ投 おける人材育成に関する協力覚書を大臣間で締 資」を推進するため、我が国の「質の高いイン 結した。 フラ」を支える技術や経験等について積極的に また、令和8年2月には、エジプトにおいて 情報発信するとともに、相手国との官民双方の 「日・エジプト質の高いインフラ対話」を開催 関係構築を促進している。 し、本邦企業の参入を促し案件形成につなげる 令和7年度までにアフリカ 14 か国において ために両国間が協力することを確認した。 「官民インフラ会議」(閣僚級)を開催してきた ことに加え、官民インフラ会議のフォローアッ ⑧中央アジア プを目的とした「質の高いインフラ対話」を開 令和7年5月、ウズベキスタン共和国の移民 催しているほか、近年は、実務者レベルのミッ 庁ムサエフ長官による古川国土交通副大臣への ションを派遣した現地調査や政府関係者との面 表敬が実施され、国土交通省に関連する分野と 談や国際機関の専門家を招いた JAIDA 会員向 して、建設・自動車・造船・宿泊業における同 けセミナーの実施等、小規模・機動的な活動を 国の若者のポテンシャルの高さについて紹介を 強化している。 受け、その後意見交換を行った。 令和7年8月には、第9回アフリカ開発会議 令和7年 12 月に開催された「中央アジア+ (TICAD 9)の機会を捉えて、「第4回日・ア 日本」対話・首脳会合に合わせて、国土交通省 フリカ官民インフラ会議」及び水管理・国土保 は、ウズベキスタン政府及びタジキスタン政府 Ⅱ 全局、航空局、住宅局(共催 JUBH 等)が各々 との間で、スマートシティ開発、交通、水資源 第8章
主管するセミナーを開催し、「官民インフラ会 管理の各分野に関する省庁間の協力覚書に署名 議」には中野国土交通大臣が、 「航空セミナー」 した。 には𠮷井国土交通大臣政務官がそれぞれ出席し 令和8年3月、国土交通省とウズベキスタ た。 ン・投資産業貿易省の共催で、ウズベキスタ 戦略的国際展開と国際貢献の強化
中野国土交通大臣とアフリカ各国の要人との ン・タシケントにおいて「日本・ウズベキスタ 間で二国間会談を実施し、インフラ分野におけ ン インフラ・スマートシティ開発フォーラ る官民一体となった協力関係の強化について確 ム」を開催した。 認した。このうち、タンザニアとは建設分野に
第2節 国際交渉・連携等の推進
1 経済連携における取組 (1)経済連携協定 / 自由貿易協定(EPA/FTA) 際競争力の強化及び海外展開の推進の観点か 我が国は、アジア・太平洋地域、東アジア地 ら、相手国の外資規制の撤廃・緩和等を通じた 域、欧州等との経済連携を戦略的に推進して サービス分野の自由化、相手国の政府調達に関 いる。令和8年3月現在、22 の EPA/FTA 等 する参加機会の拡大に取り組んでいる。 について、発効済み・署名済みであり、EPA/ FTA を活用し、我が国の運輸、建設業等の国
【関連リンク】 「第4回日・アフリカ官民インフラ会議」 、二国間会談等の結果概要 ~ TICAD 9テーマ別イベントを開催しました~ https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo07_hh_000774.html
290 国土交通白書 2026 第2節 国際交渉・連携等の推進
(2)世界貿易機関(WTO) ③加盟国間の WTO 協定上の貿易紛争を手続 WTO は、 多 角 的 貿 易 体 制 の 中 核 で あ り、 きに従って解決する制度の運用という機能を果 ①貿易自由化・ルール形成のための交渉の場、 たしている。 ②加盟国による WTO 協定の履行状況の監視、
2 国際機関等への貢献と戦略的活用 (1)アジア太平洋経済協力(APEC) (2)東南アジア諸国連合(ASEAN)との協力 APEC は、アジア太平洋地域の持続可能な 国土交通省は、ASEAN における「質の高い 成長と繁栄に向けて、貿易・投資の自由化、ビ 交通」を更に推進するため、日本と ASEAN の ジネスの円滑化、経済・技術協力等の活動を行 交通分野の協力枠組みである「日 ASEAN 交通 う経済協力の枠組みであり、国土交通省では、 連携」の下、陸上、海上、航空にわたる様々な APEC の交通・観光分野に係る大臣会合及び 協力プロジェクトを実施している。 作業部会等に出席し、APEC 域内における効 また、ASEAN 各国のスマートシティ実現に 率的でシームレスな輸送システムの構築等に積 向けたプラットフォームである「ASEAN ス 極的に取り組んでいる。 マートシティ・ネットワーク(ASCN)」への APEC の 交 通 分 野 を 取 り 扱 う 作 業 部 会 協力の一環として、令和7年 11 月、 「第7回日 「APEC 交通ワーキンググループ」については、 ASEAN スマートシティ・ネットワーク ハイ Ⅱ
第8章 令和7年8月に第 55 回会合が韓国にて開催さ レベル会合」を ASEAN 各国、国内関係省庁、 れ、全体会合と航空、陸上・インターモーダ 関係自治体と連携して、香川県高松市にて開催 ル、海事の分野別会合が実施された。会合に した。本会合では、「インクルーシビティ」を 先立ち開催された APEC スマートモビリティ テーマに、この観点を踏まえたスマートシティ
戦略的国際展開と国際貢献の強化 フォーラムの成果として「APEC スマートモ の取組事例を共有し、その成功要因について議 ビリティレコメンデーション」が採択されたほ 論し、誰一人取り残されない人間中心の社会の か、分野別会合の統合による組織改革について 実現に向けた協力の更なる推進を確認し、本会 議論が行われた。 合の継続的な開催と、ASEAN でのスマートシ APEC の 観 光 分 野 を 取 り 扱 う 作 業 部 会 ティ実現に向けて引き続き協力を強化してい 「APEC 観光ワーキンググループ」については、 くことを確認した。あわせて、日本と ASEAN 令和7年7月に第 65 回会合が韓国・仁川、同 の 協 力 を 促 進 す る た め の 枠 組 み で あ る、 日 年 10 月に第 66 回会合が中国・青島で開催さ ASEAN スマートシティ・ネットワーク官民協 れ、APEC 域内における包括的で持続可能な観 議会(JASCA)の活動の一環として、同年9 光の実現に向けた取組等について議論された。 月にマレーシアにおいて開催された「Smart 国土交通省は、APEC の貿易・投資に関す City Expo Kuala Lumpur」において、国土 る分野を取り扱う「貿易・投資委員会」のプロ 交通省からの講演会登壇・知見発信及び企業 ジェクトとして、令和7年6月に、気候変動に ブースの出展・ネットワーキングを実施した。 強い都市づくりの推進をテーマに、 「APEC 質 さ ら に、 観 光 分 野 に お い て は、ASEAN と の高いインフラプロジェクト 2025」を東京に の観光協力や ASEAN+ 3(日中韓)地域にお て開催した。当会議では、APEC エコノミー ける観光の促進を目的に、毎年「ASEAN+ 3 の政府関係者を招へいし、取組の共有や日本の 観光大臣会合」が開催されている。令和8年 インフラ技術の視察を実施した。 1月、「第 25 回 ASEAN+ 3観光大臣会合」が
国土交通白書 2026 291 第2節 国際交渉・連携等の推進
フィリピン・セブで開催され、我が国からは永 促進するための国際的なルールの改正を検討す 井国土交通大臣政務官が出席した。本会合で る特別会合では、我が国が提出した提案文書を は、ASEAN 域内における観光分野の協力につ ベースに環境に配慮した船舶の定義及び金融条 いて、持続可能性、包摂性、デジタル化等の推 件の議論が行われている。我が国は SBC 及び 進に向けて今後更に連携強化を図っていくこ 同特別会合の副議長国として活動しており、引 とを主な内容とする「観光協力行動計画 2026- き続き、政策協調のための議論を継続的に実施 2030」が採択された。 し、加盟国間による公的支援の相互監視等を通 じて、公正な競争条件の確保に努める。 (3)経済協力開発機構(OECD) RDPC では、国土・地域政策等に関する各 国土交通省は、OECD の活動のうち、国際 加盟国の政策レビューや、我が国の提案によ 交通フォーラム(ITF)、造船委員会(SBC) 、 り、日本の3 D 都市モデル(PLATEAU)を 地域開発政策委員会(RDPC)、開発センター 先進事例とした、持続可能な都市政策のための (DEV) 、観光委員会等における議論に参画し デジタルツイン活用に向けた調査等に積極的に ている。 取り組んでいる。また「スマートシティと包括 ITF は、加盟 72 か国が全交通モードを対象 的成長に関する OECD プログラム」の一環と に交通政策に関する議論・研究を行っており、 してスマートシティのデータ利活用に関する調 毎年5月には各国の交通担当大臣を中心に、著 査に取り組んでいる。 Ⅱ 名な有識者・経済人を交えて交通政策に関する DEV は、途上国及び新興国の成長を促進し、 第8章
議論を行う ITF サミットをドイツ・ライプチ 生活水準を向上させるための政策的解決策を見 ヒにて開催している。令和7年5月に開催され つける手助けを行う機関であり、今後の開発に たサミットでは、ウクライナに関する特別大臣 関する議論を行うとともに、セミナー等により ラウンドテーブル及び交通レジリエンスをテー 質の高いインフラの途上国及び新興国への普 戦略的国際展開と国際貢献の強化
マとした大臣ラウンドテーブルに加え、中米地 及・実施についても取り組んでいる。令和7年 域の物流マスタープランに関するサイドイベン 度は、主に途上国政府に向けた政策提言に活 ト、ITF 等が主催するジェンダーとレジリエン 用することを目的として、自然災害による被 トに関するサイドイベントに参加するととも 害を受けた地域がより良い復興(Build Back に、サプライチェーン強靱化について、欧州と Better)を遂げた(遂げつつある)事例を集め 北東アジア間の輸送ルート多様化に関するサイ た資料を作成した。各国の事例の中に、日本 ドイベントを主催し、日本企業、ITF 事務局、 からは 2011 年東北地方太平洋沖地震からの復 ジョージア政府とともに登壇した。また、ITF 興を進めている地方公共団体の事例を採り上げ の調査研究部門である交通研究委員会(TRC) た。 の「ビジョン主導の交通計画」ワーキンググ 観光委員会では、各国の観光関連政策のレ ループや「障害者のアクセシビリティ」ラウン ビューや、各国共通の課題への対応等について ドテーブル等に我が国から多くの専門家が参画 の意見交換、観光統計データの整備及び分析等 し、国際的な研究活動の推進に貢献している。 を行っており、我が国は同委員会の副議長国と SBC は、造船に関する唯一の多国間フォー して、日本の観光政策や我が国がアジア太平洋 ラムとして、国際造船市場に関する政策協調の 諸国と連携して実施している観光レジリエンス ための重要な役割を担っており、公的支援の適 向上に向けた取組の発信等、積極的に議論に関 正化や透明性確保、輸出信用等に関する議論を 与している。 行っている。環境に配慮した船舶への融資等を
292 国土交通白書 2026 第2節 国際交渉・連携等の推進
(4)国際連合(UN) 氏(元 国土交通省航空局航空政策戦略監)が ①国際海事機関(IMO) 選出され、8年 1 月に理事会議長に就任した。 IMO は、船舶の安全・環境等に関する国際 これをきっかけとして、ICAO との協力関係を ルールを定めている国連の専門機関である。我 一層強化するとともに、日本が航空分野におい が国は、世界の主要海運・造船国として同機関 て世界をリードできるよう、国際民間航空の持 の活動に積極的に参加し、世界の海事分野にお 続可能な発展に積極的に貢献していく。 けるルール作りを主導している。 環境対策については、令和5年に合意され ③国連人間居住計画(UN-Habitat) た国際海運からの「2050 年頃までに GHG 排 UN-Habitat は、都市化と居住の問題に取り 出ゼロ」等の目標達成に向けて、IMO にて、 組む国連機関である。我が国は、設立以来の理 GHG 排出削減に関する新たな国際ルールの策 事国として UN-Habitat の諸活動に積極的に 定の議論が進められているところ、我が国は各 参加し、我が国の国土・地域・居住環境改善分 国と連携・協力しながら、その議論の着実な進 野での知見を活かした協力を通じ、世界におけ 展に貢献している。 る、急激な都市化に伴う人間居住問題の改善に また、安全面については、今後の GHG 排出 貢献している。 削減に必要不可欠なゼロエミッション船の普及 令和7年5月に開催された、全国連加盟国等 の前提である安全確保に向けて、令和7年9月 が参加する修正第2回総会において、戦略計画 には我が国提案を踏まえた水素を燃料とする船 (期間:2026 年 -2029 年)が承認され、国土 Ⅱ
第8章 舶の安全基準が IMO で合意されるなど、我が 計画及び都市計画が、すべての人々への適切な 国は安全に関する国際ルール作りに積極的に貢 住宅、土地、基礎的なサービスを確保するため 献している。 の解決策として位置付けられた。 また、令和7年7月に、急激な都市化等への
戦略的国際展開と国際貢献の強化 ②国際民間航空機関(ICAO) 国際的な取組方針であるニュー・アーバン・ア ICAO は、昭和 19 年に採択された国際民間 ジェンダの各国におけるフォローアップとし 航空条約(シカゴ条約)に基づき設立され、国 て、国別実施状況報告書を提出した。 際民間航空の安全・保安・環境等に関する国際 標準の策定、各国の安全監視体制の監査等の取 ④世界観光機関(UN Tourism) 組を実施している国連の専門機関の一つであ UN Tourism は、観光政策に関する意見交 る。 換、観光分野での技術協力、観光統計の整備、 我が国は、昭和 31 年以降今日に至るまで連 各種セミナー等を通じ、世界の観光振興を推進 続して理事国に選出されており、第1カテゴ する国連の専門機関である。我が国は、執行理 リー(航空運送において最も重要な国)の理事 事国として UN Tourism の企画・運営に積極 国として、ICAO の諸活動に積極的に参加して 的に関与するとともに、アジア太平洋地域事務 きた。 所(RSOAP)(奈良県奈良市)による持続可 また、令和7年 11 月に実施された理事会議 能な観光の促進、観光レジリエンスの推進、観 長選挙において、我が国が擁立した ICAO 日 光産業の発展と地域経済への貢献等に向けた取 本政府代表部特命全権大使(当時)の大沼俊之 組を支援している。
【関連リンク】 「国際民間航空機関(ICAO)理事会議長選挙結果について」 https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku03_hh_000294.html
国土交通白書 2026 293 第2節 国際交渉・連携等の推進
ま た、 令 和 7 年 11 月 に 開 催 さ れ た 第 26 回 令和7年は、3月と 10 月に SCWG がオン UN Tourism 総会において、持続可能性、包 ラインで開催され、サプライチェーン強靱化 摂性、AI によるイノベーション等を柱とする に関する優良事例について議論が行われた。 「観光の未来に関するリヤド宣言」が採択され 12 月9日に G7 交通次官級会合がオンライン た。 にて開催され、SCWG での議論の結果が報告 された。 ⑤国連における水と防災に関する取組 令和 7 年 7 月にアメリカ・ニューヨークで開 (6)G7 都市大臣会合 催された「水と災害ハイレベルパネル(HELP)」 第1回のドイツ・ポツダム会合、第 2 回の香 の第 25 回会合では、日本から気候変動や災害 川・高松会合に続き3回目となる G7 都市大臣 に関する議論の継続や事前防災投資の重要性を 会合が令和6年 11 月にイタリア・ローマにて 表明した。また、7 年 11 月にタイ・バンコク 開催された。 で開催された第 26 回会合では、日本から国連 議長国イタリアが前回の香川・高松会合の成 水会議 2026 における議論や SDGs の目標達成 果を引き継ぎつつ、深化させ、「ネットゼロ・ に向けて、引き続き貢献することを表明した。 レジリエンス」「インクルーシブな都市、ア フォーダブルな住宅、歴史・文化」「イノベー ⑥国連における地理空間情報に関する取組 ション創出とデジタル化」をテーマとして議論 Ⅱ 国土地理院は、国連経済社会理事会に設置さ し、G7 が連携して取り組む「共同行動」を含 第8章
れている「地球規模の地理空間情報管理に関す む成果をコミュニケとして取りまとめた。 る国連専門家委員会(UN-GGIM)」や、その 令和7年9月 17 日と 18 日に持続可能な都市 地域委員会の1つである「国連地球規模の地理 開発実務者会合がカナダ・オタワにて開催さ 空間情報管理に関するアジア太平洋地域委員会 れ、各国より都市空間及び建築物におけるレジ 戦略的国際展開と国際貢献の強化
(UN-GGIM-AP)」 、更には、「国連地名専門家 リエンス等のテーマについて意見交換を行っ グループ(UNGEGN)」に参加し、我が国で た。 培った技術や経験を活かして、地球規模の測地 基準座標系(GGRF)の普及や、地理空間情報 (7)G20 観光大臣会合 に関するパートナーシップの推進等を通じて、 令和7年9月、南アフリカ共和国・ムプマラ より国際社会に貢献している。 ンガ州において G20 観光大臣会合が開催され た。本会合では、デジタルイノベーションを通 (5)G7 交通大臣会合 じた起業・中小企業支援、観光分野における資 イタリアが G7 議長国を務める G7 交通大臣 金調達と投資、シームレスな旅行のための航空 会合が令和6年2月及び4月に開催された。 ネットワーク、観光開発のためのレジリエンス 令和6年4月の会合では、「交通の未来~不 強化をテーマに議論を行い、我が国からは観光 確実な世界での連結性の確保~」をテーマに、 におけるレジリエンス向上に関する取組を発信 ショックへの耐性がある交通、海上における連 した。会合の成果として、観光が開発の主要な 結性、ウクライナとの連携について議論が行わ 原動力であることを認識し、持続可能で包摂的 れた。その結果、強靱な交通の実現につながる かつレジリエントな観光を実現するため、国際 「交通サプライチェーンに関する G7 ワーキン 的な協力及び官民連携を強化することに合意し ググループ(SCWG)」を設置すること等を内 た旨を明記したムプマランガ宣言が採択され 容とする G7 交通大臣宣言が採択された。 た。
294 国土交通白書 2026 第2節 国際交渉・連携等の推進
(8)世界銀行(WB) (9)アフリカ開発会議(TICAD) 令和7年8月の TICAD 9に合わせて開催さ アフリカにおけるインフラ整備への我が国企 れた世界銀行主催の会議「アフリカの都市の覚 業の参画を推進するため「アフリカ・インフ 醒:経済成長の雇用の促進」において、国土交 ラ協議会(JAIDA)」と連携し、官民インフラ 通省は、都市の変革は経済の活力と雇用創出の 会議の開催等の取組を進めてきた。令和7年 鍵であると同時に、持続可能性の観点からも重 8月に開催された TICAD 9に合わせ、国土交 要であることに言及した。 通省は「第4回 日・アフリカ官民インフラ会 さらに、令和7年 10 月に東京で開催された 議」を主催した。今後も、我が国の強みである 「「成長のための都市計画と土地活用」に関する 「質の高いインフラ投資」の原則を実践しつつ、 都市開発実務者向け対話型研修(TDD)」にお JAIDA と協力し、インフラ分野での協力を一 いては、都市計画法制の観点から日本における 層強化していく旨を確認した。本会議におい 知見を紹介した。また、令和7年 12 月に京都 て、タンザニア共和国とは建設分野における人 で開催された「 「観光と雇用のための都市」に 材育成に関する協力覚書を締結した。今後、二 関する都市開発実務者向け対話型研修(TDD)」 国間の連携強化及び本邦企業の海外展開促進を において、観光立国の実現に向けた取組を紹介 目的に、現地のインフラ整備等に資する人材の した。 育成に両国で取り組んでいく。
Ⅱ 3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組
第8章 (1)国土政策分野 ける課題の解決に貢献し、我が国企業の海外展 アジア諸国等において、政府関係者、国際機 開促進を図りつつ、各国との連携を強化するた 関等様々なステークホルダーをネットワーク化 め、令和7年度は以下の取組を行った。
戦略的国際展開と国際貢献の強化 し、会議、ウェブサイト等により国土・地域政 タイやインドネシアなどにおいて、公共交通 策に係る課題や知見を共有する仕組みである 指向型都市開発(TOD)やデジタル分野にお 「国土・地域計画策定・推進支援プラットフォー ける連携強化に取り組んだ。例えば、インドネ ム(SPP)」の第8回会合を、令和7年 12 月に シアでは令和7年 12 月、同国の持続可能な都 福岡市において、オンライン併用のハイブリッ 市課題解決方策を議論するため、UR 都市機構 ド形式で開催した。 「広域の地域計画の役割と と共催で「TOD フォーラム」をジャカルタで その実効性」について、国土交通省からは第三 開催し、永井国土交通大臣政務官が出席の上、 次国土形成計画の概要等を紹介しつつ、日本の 官民の知見の共有及び機運醸成を図った。 地域計画である広域地方計画の特徴及び具体例 さらに、国内で培ってきた知見を生かした3 を説明するとともに、南アジア各国(スリラン D 都市モデルの海外展開に向け、例えばインド カ、インド、バングラデシュ)とのパネルディ ネシア新首都庁と協力・連携に関する覚書を締 スカッションを行った。 結するなど、各国政府等へ我が国の知見を共有 した。 (2)都市分野 また、都市政策分野における協力を推進する 東南アジアを含むグローバルサウス諸国にお ため、令和7年6月に住宅・コミュニティ・地
【関連リンク】 国土・地域計画策定・推進支援プラットフォーム(SPP) URL:https://spp-pr.com/index_ja.html
国土交通白書 2026 295 第2節 国際交渉・連携等の推進
方自治省のペニークック閣外大臣と中野国土交 して、政府間会合、セミナー等を実施し、国際 通大臣が都市政策に係る覚書を締結した。 貢献及び我が国が有する上下水道の技術・ノウ 世界最大級の国際不動産見本市である ハウ等の国際展開支援を行っている。 「MIPIM」 (フランス・カンヌ開催)においては、 水道分野については、令和7年 10 月にフィ 日本の都市開発・不動産市場や、横浜で令和9 リピンで開催された上下水道に関する国際展示 年に開催される GREEN × EXPO2027 等の PR 会において、本邦企業が製品・サービスの紹介 を通じて、日本の都市の魅力の発信や、日本企 を行うセッションを設置した。8年1月には、 業の海外展開の促進を図った。 太平洋島嶼国における水ビジネス展開の支援を また、J-CODE(一般社団法人海外エコシ 目的に、パラオで「太平洋島嶼国水道ワーク ティプロジェクト協議会)による案件形成推進 ショップ」を開催した。 等の取組を支援している。 下水道分野については、アジアにおける汚水 管理の主流化等を目的として日本が主導しカ (3)水分野 ンボジア、インドネシア、ミャンマー、フィ 水問題は地球規模の問題であるという共通認 リピン及びベトナムと平成 30 年に設立した 識のもと、国際会議等において問題解決に向け アジア汚水管理パートナーシップ(AWaP) た議論が行われている。令和7年7月には、ア 等の枠組みを通じた国際協力を行ってい メリカ・ニューヨークにおいて第7回国連水と る。 令 和 6 年 9 月 に は AWaP に 新 た に バ ン Ⅱ 災害に関する特別会合が開催され、日本からは グラデシュとタイが加盟した。 7 年 11 月 に 第8章
水防災に関する取組を国際社会に発信した。 はカンボジアで AWaP 第4回総会を開催した。 それに加え、水資源分野では、独立行政法人 パートナー国より6か国(バングラデシュ、カ 水資源機構を事務局とし関係業界団体や関係省 ンボジア、インドネシア、日本、フィリピン及 庁からなる「水資源分野における我が国事業者 びベトナム)が参加し、「汚水管理の主流化と 戦略的国際展開と国際貢献の強化
の海外展開活性化に向けた協議会」を活用して 財政」及び「汚水処理施設の最適配置」につい 相手国のニーズや課題を把握し、治水機能や て意見交換を行い、ポリシーを制定した。8年 CO2 削減に資する発電を含む利水機能の向上 1月には、国土交通省とベトナム社会主義共和 を図るダム再生事業の案件形成に向けた調査を 国建設省との間の「下水、排水及び汚水処理分 行うなど、水資源分野の案件形成に向けた取組 野に関する技術協力に係る覚書」に基づく政府 を実施した。また、アジア河川流域機関ネット 間会合及び「日本 - ベトナム下水道管理に関す ワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理 る技術セミナー」を開催した。 (IWRM)の普及促進に貢献している。 また、令和8年1月にカンボジアで第 18 回 日本 - カンボジア上下水道セミナーを開催し、 (4)上下水道分野 両国における上下水道の交流や情報交換、最新 世界では、衛生面等で課題がある井戸、地表 技術の共有を行った。 水等の水源を約 4.1 億人(令和 6 年時点)が利 用している。また開発途上国においては急激な (5)防災分野 都市化や人口増加に伴う水質汚濁が深刻化して 世界の自然災害による被害の軽減に向けて、 いる。 防災が持続可能な開発の鍵であるという共通認 今後、これらの国々では水インフラの需要拡 識を形成するため、我が国の経験・技術を発信 大が見込まれることから、国土交通省では、主 するとともに、事前防災の重要性に関する国際 にアジア・太平洋地域の開発途上国等を対象と 連帯の醸成に努めている。また、相手国の防災
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課題と日本の防災技術をマッチングさせるワー 日 ASEAN 交通連携の枠組みの舗装維持管理 クショップ「防災協働対話」をインドネシア、 技術共同研究では、令和7年度に第4回及び第 ベトナム、南アフリカ、トルコで実施してい 5 回専門家会合を開催し、ASEAN 各国の舗装 る。現在、既存ダムを有効活用するダム再生等 関連の優良な技術・取組について意見交換する の本邦技術を活用した案件形成を進めていると とともに、最終成果となる技術参考資料の内容 ころである。 について議論した。 国立研究開発法人土木研究所水災害・リスク 令和8年2月に国際連合地域開発センターと マネジメント国際センター(ICHARM)では、 共同で「第2回質の高い道路インフラ整備に関 統合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾 する国際ワークショップ」を開催し、先進技術 濫(RRI)モデル等の開発、リスクマネジメン 等について知見共有等を行った。 トの研究、博士課程及び修士課程を含む人材育 さらに、高速道路の運営・維持管理やアス 成プログラムの実施、UNESCO や、アジア開 ファルト再生技術等、我が国の優れた道路技術 発銀行及び世界銀行のプロジェクトへの参画及 の海外展開に向け、多国間・二国間の取組を進 び国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局として めている。 の活動等を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対 象にした技術協力・国際支援を実施している。 (7)住宅・建築分野 砂防分野においては、イタリア、韓国、スイ 国際建築規制協力委員会(IRCC)、日米加 ス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会 建築専門家会合(BEC)等への参加等、建築 Ⅱ
第8章 議を開催しているほか、JICA 専門家の派遣等 基準等に係る国際動向について関係国間での情 や研修の受入れを通じて土砂災害対策や警戒避 報交換を行った。また、カンボジアからの要請 難、土地利用規制等の技術協力を行っている。 を受け、建築物の構造安全や火災安全に関する 建築技術基準の策定支援に取り組んでいる。
戦略的国際展開と国際貢献の強化 (6)道路分野 住 宅・ 建 築 海 外 展 開 連 携 協 議 会(J-HAB) 世界道路協会(PIARC)の各技術委員会等 を立ち上げ、官民連携の下、我が国の住宅産業 に継続的に参画し、国際貢献に積極的に取り組 の海外展開を推進している。 んでおり、令和6年からは4年間の戦略計画が スタートし、加盟国による調査研究が進められ (8)鉄道分野 ている。8年3月にフランス国シャンベリー市 我が国の鉄道システムの海外展開の推進を通 で開催された「第 17 回冬期サービスとレジリ じて、相手国の経済・社会の発展への寄与のみ エンスに関する世界大会(シャンベリー冬期大 ならず、我が国鉄道関連産業の生産性向上・競 会)」では、大会テーマである「冬期サービス」 争力の強化を図るため、令和7年度は、タイ運 「レジリエンス」「脱炭素」に関する多くのセッ 輸省との間の「鉄道及び都市開発分野における ションや展示が行われた。日本からも多くの関 協力覚書」の署名のほか、日スウェーデン鉄道 係者がセッションに登壇したほか、日本パビリ 協力会議や日英鉄道協力会議の開催、JICA 専 オンを出展し、官民連携して最新の道路技術や 門家の派遣を通じた技術協力等、二国間での連 政策を紹介した。 携に向けた取組等を実施している。
【関連リンク】 国際機関への参画 (1)世界道路協会(PIARC) URL:https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/kokusai/sankaku/index02.html
国土交通白書 2026 297 第2節 国際交渉・連携等の推進
(9)自動車分野 ての協力に関する覚書を締結した。その覚書に 日 ASEAN 交 通 大 臣 会 合 に て 承 認 さ れ た、 基づく第2回年次会合を7年7月に開催し、港 「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的 湾の脱炭素化、海運におけるアンモニア燃料の な交通安全・環境施策に関する日 ASEAN 新協 活用等、今後取り組むべき具体的な協力内容等 力プログラム」に基づく取組として、アジア地 の確認を行い、協力を進めている。 域官民共同フォーラムを開催するなどにより、 アジア地域における基準調和・相互承認活動、 (12)航空分野 交通安全・環境保全施策等について情報交換を 令和7年5月には日・チェコ航空協定及び 行っている。 日・ルクセンブルク航空協定の国会承認手続が 完了した。同年 10 月には日・チェコ航空協定 (10)海事分野 が、また8年3月には日・ルクセンブルク航空 令和7年9月に開催された CSG 会議(海運 協定が発効し、航空分野における条約の締結に 先進国当局間会議)では、米国の海事政策、米 おいて進展が見られた。加えて、7年6月には 中をはじめとする地政学的競争への対応、海運 カンボジア航空当局と協議を実施し、日本路線 の脱炭素化、船員の労働環境改善など、海運に における輸送力の拡大につなげた。 関する幅広いテーマについて活発な議論を行っ また、令和7年7月に我が国において、第 た。 46 回以来 16 年ぶりに第 60 回アジア太平洋航 Ⅱ また、途上国に対して我が国は、海上保安能 空局長会議を開催し、航空安全・保安、環境対 第8章
力向上や公共交通インフラの整備のために巡視 策、人材育成、新技術対応など、民間航空の持 船、作業船の供与を行っており、令和7年3月 続的発展に向けた幅広いテーマについて活発な 末現在、インドネシア、フィリピン等の6か国 議論が行われた。また、同年 9 月にカナダにお に対し、計 15 隻の供与に向けた ODA 事業が いて開催された国際民間航空機関(ICAO)の 戦略的国際展開と国際貢献の強化
進行中である。 総会では中野国土交通大臣による一般演説を実 更に、ASEAN 域内に低環境負荷船を普及促 施したほか、各国との意見交換を行うなど、多 進させるため、令和7年2月には、フィリピン 国間・二国間における航空当局間の連携強化に において、低環境負荷船の更なる普及促進を目 取り組んでいる。 的とした専門家会合のほか、低環境負荷船の技 術に関するセミナーを開催した。 (13)物流分野 日中韓物流大臣会合における合意に基づき、 (11)港湾分野 日中韓の物流分野における協力の推進について 日 ASEAN 交通連携の枠組みの下、令和7年 中韓と議論を進めた。令和 7 年 8 月には日中韓 12 月にカンボジアにおいて日 ASEAN 港湾技 物流課長級会議を開催し、6 年2月の第9回日 術 者 会 合(PTG) を 開 催 し、ASEAN に お け 中韓物流大臣会合で採択された共同声明及び行 るカーボンニュートラルポート(CNP)の形 動計画の進捗状況や、第 10 回日中韓物流大臣 成に向けたガイドライン(案)に関して議論を 会合に向けた今後のスケジュールについて意見 行った。 交換を行った。 また、港湾分野の脱炭素化の推進のため、令 また、ASEAN との関係では、令和7年6月 和5年 12 月に国土交通省とシンガポール運輸 にカンボジアとの間で物流政策対話、8 年 1 月 省との間で、温室効果ガスの排出削減及び両国 にタイで日 ASEAN 物流専門家会合・ワーク 間のグリーン・デジタル海運回廊の創設につい ショップを開催し、各国政府の物流関連政策や
298 国土交通白書 2026 第2節 国際交渉・連携等の推進
物流課題等の情報交換等を行った。 平和財団の枠組み等を通じて、専門的な知識を 有する海上保安官や海上保安庁 MCT(Mobile (14)地理空間情報分野 Cooperation Team)を各国に派遣している ASEAN 地域各国における測地基準座標系の ほか、各国の海上保安機関等の職員を日本に招 構築・運用支援として、ラオスを対象に電子基 へいして研修を実施している。 準点網の整備・利活用に関する現況調査と意見 また、海上保安政策に関する教育を行う海上 交換を行った。 保安政策プログラム(修士課程)を開講し、ア ジア諸国等の海上保安機関職員を受け入れ、各 (15)気象・地震津波分野 国の連携協力、認識共有を図っている。 気象庁は、世界気象機関(WMO)の枠組 フィリピン沿岸警備隊に対する みの下、気象観測データや予測結果等の国際的 図表Ⅱ-8-2-1 能力向上支援 な交換や技術協力により各国の気象災害の防 止・軽減に貢献しており、令和8年2月にアジ ア・大洋州の国々や主要先進国の国家気象水文 機関の専門家を東京に招いて、気象観測データ の交換に係る官民連携を推進するワークショッ プを開催した。 ま た、 国 際 連 合 教 育 科 学 文 化 機 関 Ⅱ
第8章 (UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の 枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各 国に提供し、関係各国の津波防災に貢献してい る。
戦略的国際展開と国際貢献の強化 さらに、国際協力機構(JICA)等と協力し (17)観光分野 て、開発途上国に対し気象、海洋、地震、火山 令和7年は日韓国交正常化 60 周年という節 等の様々な分野で研修等を通した人材育成支 目の年であることから、両国間の観光交流を拡 援・技術協力を行っている。 大するため、観光庁として初めて韓国最大規模 の日韓文化交流イベントである「日韓交流おま (16)海上保安分野 つり 2025 in Seoul」へ出展するなど、両国関 海上保安庁は、世界海上保安機関長官級会 係機関と連携し観光イベントに取り組んだ。ま 合(CGGS)、 北 太 平 洋 海 上 保 安 フ ォ ー ラ ム た、同年 12 月には日韓の観光当局が滋賀県大 (NPCGF)、アジア海上保安機関長官級会合 津市で「第 39 回日韓観光振興協議会・交流会」 (HACGAM)といった多国間の連携、日米韓 を開催し、両国の持続的な観光交流拡大と地方 による合同訓練といったミニラテラルの連携、 誘客の必要性を共有し、未来志向の観光交流拡 長官級会合や合同訓練といった二国間の連携を 大のための課題についての意見を交換した上 通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の で、確認文書に署名した後、両国の官民観光関 各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的 係者によって「日韓国交正常化 60 周年記念ク に推進している。 ロージングセレモニー」が実施された。 また、シーレーン沿岸国等における海上保安 また、観光庁では、令和7年7月にはジンバ 能力向上支援のため、独立行政法人国際協力機 ブエ共和国との間で、7年8月にはペルー共和 構(JICA)や公益財団法人日本財団及び笹川 国通商観光省との間で、7年 12 月には、ウズ
国土交通白書 2026 299 第3節 国際標準化に向けた取組
ベキスタン共和国観光委員会との間で、「観光 所)と連携し、「観光レジリエンス実務者級会 分野における協力覚書」に署名した。8年3月 合」を開催した。仙台声明の一つ目の柱「危機 には国土交通省とインドネシア共和国観光省と や自然災害による影響の予防・最小化」につい の間で「日本国国土交通省とインドネシア共和 て議論し、その成果をガイドラインに取りまと 国観光省間の観光協力覚書」に署名した。 め、国内外に発信した。 さらに、令和6年 11 月に開催した閣僚級会 さらに、令和8年3月に「観光レジリエンス 合「観光レジリエンスサミット」において採択 シンポジウム」を東京で開催し、実務者級会合 した「仙台声明」に基づく取組に、より実効性 の成果であるガイドライン・事例集の発表を行 を持たせ、アジア・太平洋地域における連携を うとともに、韓国やインドネシアの実務者や有 引き続き強化するため、7年7月及び 12 月に 識者を交え、官民連携をテーマとするパネル RSOAP(世界観光機関アジア太平洋地域事務 ディスカッション等を実施した。
第3節 国際標準化に向けた取組 (1)自動車基準・認証制度の国際化 る中、日本の優れた技術が国際規格から排除さ 我が国は、安全で環境性能の高い自動車の早 れると、鉄道システムの海外展開に当たって大 期の普及や高度な自動運転技術等の優れた日本 きな障害となる可能性があるなど、鉄道分野に Ⅱ の新技術の国際的な普及のため、自動車の国際 おける国際競争力へ大きな影響を与えることか 第8章
基準を策定する国連自動車基準調和世界フォー ら、鉄道技術の国際標準化を推進することが重 ラム(WP.29)への積極的な参加を通じ、日 要である。このため、鉄道関係の国際規格を一 本の技術・基準等の国際標準化を推進してい 元的に取り扱う組織である公益財団法人鉄道総 る。また、WP.29 において日本は副議長を務 合技術研究所「鉄道国際規格センター」におい 戦略的国際展開と国際貢献の強化
めるなど自動運転分野においても国際議論を て、鉄道の更なる安全と鉄道産業の一層の発展 リードしている。加えて、自動車基準・認証 を図っている。 制度分野において、ASEAN 諸国との官民共同 こ の よ う な 取 組 の 結 果、 国 際 標 準 化 機 構 フォーラム等の開催を通じて、自動車の安全・ (ISO)の鉄道分野専門委員会(TC269)では 環境基準の国際標準化やアジア諸国等との連携 議長として国際標準化活動を主導し、国際電気 の推進を図っている。 標準会議(IEC)の鉄道電気設備とシステム専 門委員会(TC9)と合わせ、それぞれにおける (2)鉄道に関する国際標準化等の取組 個別規格の提案・審議等の国際標準化活動で中 我が国の鉄道システムの国際競争力の更なる 心的な役割を担い、成果を上げている。引き続 強化をはじめとした鉄道の持続的発展を目的と き、これら国際会議等における存在感を高め、 し、鉄道業界関係者が共通認識の下、「鉄道技 鉄道技術の国際標準化の推進に取り組む。 術標準化ビジネスプラン」に基づく標準化活動 また、国内初の鉄道分野における国際規格の を通じて、国内関係者のみならず海外の関係者 認証機関である独立行政法人自動車技術総合機 との相互理解を深め、直面する社会課題の解決 構交通安全環境研究所は、鉄道認証室設立以 や経済発展への貢献を目指すべく、今後の鉄道 来、着実に認証実績を積み重ね、鉄道システム 分野における技術の標準化活動を戦略的かつ効 の海外展開に寄与している。 果的に推進している。国際標準化の分野では、 欧州が欧州規格の国際標準化を積極的に推進す
300 国土交通白書 2026 第3節 国際標準化に向けた取組
(3)船舶や船員に関する国際基準への取組 主導している。 我が国は、海運の環境負荷軽減や安全性向上 を目指すとともに、我が国の優れた省エネ技術 (6)地理情報の標準化 等を普及するため、国際海事機関(IMO)にお 地理空間情報を異なる地理情報システム 注1 注2 け る「SOLAS 条 約 」、 「MARPOL 条 約 」、 (GIS)間で相互利用する際の互換性を確保す 注3 「STCW 条約 」等に関連する基準等の策定を ること等を目的として、ISO の地理情報に関す 主導している。 る専門委員会(ISO/TC 211)における国際規 また、海上保安庁は、国際水路機関(IHO) 格の策定に積極的に参画している。あわせて、 での海図や水路書誌、航行警報等の国際基準に 国内の地理情報の標準化に取り組んでいる。 関する議論に参画している。さらに、船舶交通 の安全を確保するとともに、船舶の運航能率の (7)技術者資格に関する海外との取決め より一層の増進を図るため、国際航路標識機関 APEC アーキテクト・プロジェクト、APEC (IALA)のデジタル技術(DTEC)委員会に エンジニア・プロジェクトでは、一定の要件を おいて新たな海上データ通信方式である VHF 満たす APEC 域内の建築設計資格者、構造技 データ交換システム(VDES)の国際標準化に 術者等に共通の称号を与えている。APEC アー 関する議論を主導している。 キテクト・プロジェクトでは、我が国は、オー ストラリア、ニュージーランドとの二国間相互 (4)土 木・建築分野における基準及び認証制 受入れの取決めの締結、APEC アーキテクト Ⅱ
第8章 度の国際調和 中央評議会への参加等を通じ、建築設計資格者 土木・建築・住宅分野において、外国建材の の流動化を促進している。 性能認定や評価機関の承認等の制度の運用や、 JICA 等による技術協力等を実施している。ま (8)上下水道分野
戦略的国際展開と国際貢献の強化 た、設計・施工技術の ISO 制定に参画するな 我が国が強みを有する上下水道技術の海外展 ど、土木・建築分野における基準及び認証制度 開を促進するため、水の再利用に関する専門 の国際調和の推進に取り組んでいる。 委員会(ISO/TC282)、汚泥の回収、再生利 用、処理及び廃棄に関する専門委員会(ISO/ (5)高度道路交通システム (ITS) の国際標準化 TC275)、飲料水、汚水及び雨水に関するシ 効率的なアプリケーション開発や国際貢献、 ステムとサービスに関する専門委員会(ISO/ 国内の関連産業育成のため、ISO 等の国際標準 TC224)へ参画している。 化機関における ITS 技術の国際標準化を進めて いる。 (9)物流システムの国際標準化の推進 特 に ISO の ITS 専 門 委 員 会(ISO/TC204) コールドチェーン物流への需要の拡大が見込 に参画し、ITS 関連サービスの役割機能モデル まれる ASEAN やインド等のグローバルサウス に関する標準化活動を行っている。また、国 諸国等を念頭に置いて、我が国の質の高いコー 連の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29) ルドチェーン物流サービスの国際標準化を推進 の自動運転に係る基準等について検討を行う各 している。 分科会等の共同議長等又は副議長として議論を 具体的には、BtoB の日本式コールドチェー
注1 海上における人命の安全のための国際条約。 注2 船舶による汚染の防止のための国際条約。 注3 船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約。
国土交通白書 2026 301 第3節 国際標準化に向けた取組
ン物流サービス規格(JSA-S1004)を基に策 (11)都市分野 定された国際規格の普及促進に向けたアクショ 3D 都市モデルの分野において、地理空間 ンプランを策定し、ASEAN を中心に二国間で 情報の標準化に取り組んでいる国際標準団体 の物流政策対話やコールドチェーン物流に関す OGC(Open Geospatial Consortium)と連 るワークショップを実施している。 携し、最新の技術調査や標準に係る議論に参画 している。 (10)港湾分野 日ベトナム間で、平成 26 年に署名した「港 (12)水防災分野 湾施設の国家技術基準の策定に関する協力に係 水防災分野では、ISO 内に IWA 50(国際 る覚書(MOC)」に基づき、我が国のノウハ ワークショップ協定「水文学的リスク」 )を ウを活用した、ベトナムの国家技術基準の策定 設置し、今後の水防災分野の標準形成につい 協力を実施しており、これまでに、10 項目の て議論を主導するとともに、持続可能な都市 国家技術基準の発行に至った。 と コ ミ ュ ニ テ ィ に 関 す る 専 門 委 員 会(ISO/ 令和8年度以降も MOC に基づき、基準等の TC268)において洪水リスク評価の規格化を 策定及び普及に係る支援を引き続き予定してい 進めている。 る。
Ⅱ 第8章 戦略的国際展開と国際貢献の強化
302 国土交通白書 2026 第1節 DXによる高度化・効率化
第 9章 DX 及び技術研究開発の推進
第1節 DX による高度化・効率化
1 国土交通行政の DX 社会全体のデジタル化は喫緊の課題であり、 ある。人口減少や高齢化が進む中にあっても、 政府として、デジタル行財政改革や地方創生 これらの役割を果たすため、建設業の賃金水準 2.0 といった政策が進められているところ、国 の向上や休日の拡大等による働き方改革ととも 土交通省においても必要な取組を、より一層加 に、生産性向上が必要不可欠である。国土交通 速させる必要がある。このため、国土交通行 省では、前述のインフラ分野の DX の取組に先 政の DX を推進すべく、「デジタル社会の実現 駆けて、インフラ分野の DX を推進する上で中 に向けた重点計画」(以下「重点計画」 )(令和 核となる i-Construction を平成 28 年度より推 7年6月閣議決定)や国土交通省 DX ビジョン 進しており、ICT の活用等により調査・測量 (7年6月 13 日公表)等に基づき、行政手続や から設計、施工、検査、維持管理・更新までの 行政文書のデジタル化を進め、データを活用し あらゆる建設生産プロセスにおいて、抜本的な た政策立案やオープンデータ化を通じた新たな 生産性向上に取り組んでいる。 Ⅱ サービスの実現に取り組んでいる。 令和6年4月からは、i-Construction の取組
第9章 を更に加速し、2040 年度までに建設現場の省 (1)インフラ分野の DX 人化を少なくとも 3 割、すなわち生産性を 1.5 インフラ分野の DX は、デジタル技術を活用 倍向上することを目指し、建設現場のオート
DX 及び技術研究開発の推進 して、管理者側の働き方やユーザーに提供する メーション化に取り組む「i-Construction 2.0」 サービス・手続等も含めて、インフラ周りをス を推進している。 マートに変容させるものである。例えば、3D 令和7年4月には、 「インフラ分野のオープン ハザードマップを活用したリアルに認識できる データの取組方針」を取りまとめ、国土交通省 リスク情報の提供、現場にいなくても現場管理 が保有する様々な分野のデータと民間等のデー が可能になるリモートでの立会いによる監督業 タを連携する国土交通データプラットフォーム 務やデジタルデータを活用した配筋検査の省力 の整備・利活用促進等を進め、産官学連携によ 化、及び自動施工・遠隔施工等に取り組んでい るオープンイノベーションを創出することで、 る。令和5年8月には「インフラ分野の DX ア 施策の効率化・高度化を加速させていく。 クションプラン(第 2 版)」を策定し、個別施 建設現場の生産性向上に関するベストプラ 策ごとの取組概要や目指す姿、8年度までの具 クティスの横展開に向けて、平成 29 年度より 体的な工程等といった実行計画を取りまとめ 「i-Construction 大賞」を実施しているが、令 た。 和 4 年度には、この取組を更に拡大するため 建設業は社会資本の整備の担い手であると同 「インフラ DX 大賞」と改称し、インフラの利 時に、社会の安全・安心の確保を担う、我が国 用・サービスの向上や建設業界以外の取組につ の国土保全上必要不可欠な「地域の守り手」で いても含めて広く募集した。また、インフラ分
国土交通白書 2026 303 第1節 DXによる高度化・効率化
野におけるスタートアップの取組を支援し、活 (2)行政手続等の DX 動の促進、建設業界の活性化へつなげることを 国土交通分野における行政手続のデジタル化 目的に、これまでの「国土交通大臣賞」「優秀 や、国土交通省が保有する行政情報のデータ化 賞」のほか、新たに「スタートアップ奨励賞」 を行い、官民が利用可能な基礎的な情報として を設置した。令和7年度は計 33 団体(国土交 提供するとともに、行政内での活用環境の整備 通 大 臣 賞 4 団 体、 優 秀 賞 27 団 体、 ス タ ー ト を進め、オープンデータを利用したビジネス創 アップ奨励賞2団体)を表彰しており、引き続 出や政策立案等を促進する取組である「Project きインフラ DX の普及促進に取り組んでいく。 LINKS」の展開を進める。
Column i-Construction 2.0 コラム 施工のオートメーション化の主な取組状況
i-Construction 2.0 で は、 施 工 の オ ー ト メ ー シ ョ 動化を進めています。例えば、遠隔施工については、 ン化として、建設機械のデータ共有基盤の整備や安全 令和7年度の直轄工事において、42 件の試行工事を ルールの策定等、自動施工の環境整備を進めるととも 開始しており、今後も遠隔・自動施工の取組拡大を図 に、遠隔施工の普及拡大や AI の活用等により施工の自 るため環境整備を実施してまいります。
<遠隔施工の事例>
Ⅱ 第9章 DX 及び技術研究開発の推進
東北地方整備局 立谷沢川上流松沢地区管理用道路整備工事 関東地方整備局 R6 馬返崩壊地対策工事 (山形県) (栃木県)
近畿地方整備局 慈尊院地区掘削他工事 九州地方整備局 令和7年度赤松谷川堰堤群補修その他工事 (和歌山県) (長崎県)
【関連リンク】 建設機械施工の自動化・遠隔化技術 URL:https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000049.html
304 国土交通白書 2026 第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
1 ITS の推進 ITS は、高度な道路利用、ドライバーや歩行 (イ)道路交通情報提供の充実と効果 者の安全性、輸送効率及び快適性の飛躍的向上 VICS により旅行時間や渋滞状況、交通規制 の実現とともに、交通事故や渋滞、環境問題、 等の道路交通情報がリアルタイムに提供される エネルギー問題等の様々な社会問題の解決を図 ことで、ドライバーの利便性が向上し、走行燃 り、自動車産業、情報通信産業等の関連分野に 費の改善が CO2 排出削減等の環境負荷の軽減 おける新たな市場形成の創出につながっている。 に寄与している。 また、令和7年6月に閣議決定された「デジ タル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、 ②新たな ITS サービスの技術開発・普及 交通安全対策・渋滞対策・災害対策等に有効と (ア)ETC2.0 の普及と次世代の ITS 推進 なる道路交通情報の収集・配信に係る取組等を 全国の高速道路上に設置された ETC2.0 路側 積極的に推進している。 機を活用し、渋滞回避支援や安全運転支援等の 情報提供の高度化を図り、交通の円滑化と安全 ①社会に浸透した ITS とその効果 に向けた取組を進めている。また、収集した速 (ア)ETC の普及促進と効果 度や利用経路、急ブレーキのデータ等、多種多 ETC は、今や日本全国の高速道路及び多く 様できめ細かいビッグデータを活用して、ピン の有料道路で利用可能であり、車載器の新規 ポイント渋滞対策や交通事故対策、生産性の高 Ⅱ セットアップ累計台数は令和8年3月時点で約 い賢い物流管理等、道路ネットワークの機能を
第9章 9,510 万台、全国の高速道路での利用率は8年 最大限に発揮する取組を推進している。 3月時点で 95.8%となっている。従来高速道 また、データの性質や利活用シーン等を踏ま 路の渋滞原因の約3割を占めていた料金所渋滞 え、プライバシーの観点にも留意しつつ、デー
DX 及び技術研究開発の推進 はほぼ解消され、CO2 排出削減等、環境負荷 タの提供体制を整えるなど、地方公共団体等が の軽減にも寄与している。さらに、ETC 専用 活用しやすい環境の構築(オープン化)を進め IC であるスマート IC の導入や、ETC 車両を る。 対象とした料金割引等、ETC を活用した施策 更なる取組として、社会経済活動が成熟化・ が実施されるとともに、有料道路以外において 複雑化する中で、交通課題の解決を超えて、社 も駐車場やドライブスルーでの決済等への応用 会経済活動に貢献するため、革新的な技術を活 利用も可能となるなど、ETC を活用したサー 用した次世代の ITS を具体化する。 ビスは広がりと多様化を見せている。
【関連リンク】 【関連リンク】 ETC 総合情報ポータルサイト ETC2.0 URL:https://www.go-etc.jp/ URL:https://www.mlit.go.jp/road/ITS/j-html/etc2/
国土交通白書 2026 305 第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
2 自動運転の社会実装の推進 自動運転は、 「交通事故の削減」のほか、我 遠隔監視する仕組みなど、運転手不足の課題解 が国で課題となっている「地域公共交通の維 決に向けてより効果の高い取組への支援を重点 持・改善」や「ドライバー不足への対応」に効 化し、地域公共交通等への自動運転の導入の優 果的なものであり、今後の我が国にとって必要 良事例として横展開することにより、自動運転 不可欠なものである。国土交通省では、こうし の社会実装を着実に進めていく。また、自動運 た様々な社会課題の解決に有効な自動運転につ 転の社会実装を支援するため、車両側の開発状 いて、自動運転技術の進展にあわせ、これまで、 況やニーズを踏まえた上で、自動運転車の走行 適時、道路運送車両法の改正等必要な制度を整 の安全性・円滑性の向上に資する走行環境の整 備してきたところであり、本格的な自動運転社 備(交差点センサや合流支援・先読み情報等の 会を実現するため、 「制度整備」と「事業化推 路車協調システム、走行空間等の基準の策定等) 進」の観点から取組を進めている。 を推進した。 「制度整備」については、令和6年 10 月に交 また、令和8年1月に閣議決定された第3次 通政策審議会の傘下に設置した自動運転ワーキ 交通政策基本計画における「2030 年度にバス、 ンググループにおいて検討された自動運転車に タクシー、トラックの自動運転サービス車両数 係る事故調査機関の在り方等について、7年5 1万台」の目標実現に向けて、同月に国土交通 月に公表された「中間とりまとめ」を踏まえた 大臣を本部長とする自動運転社会実現本部を設 検討を実施した。 置し、自動運転社会の早期実現に向けた取組を Ⅱ 「事業化推進」については、自動運転サービ 国土交通省の総力を挙げて強力に推進するとと スの全国各地の普及拡大に向け、サービスの導 もに、自動運転の普及に伴う社会変容への対応 第9章
入に向けた取組を支援しており、令和7年度 について検討を開始した。国土交通省としては、 は、全国の地方公共団体の 67 事業の取組等を この実現本部の下、安全性の確保を大前提に、 補助した。今後も引き続き、既存バス路線にお 一日も早い本格的な自動運転社会の実現に向け DX 及び技術研究開発の推進
ける自動運転車両の導入や、一人が複数車両を て、取組を進めていく。
3 地理空間情報を高度に活用する社会の実現 誰もがいつでもどこでも必要な地理空間情 る地理空間情報の充実や利活用を図りつつ、正 注1 報 を活用できる「G空間社会(地理空間情報 確な地理空間情報をもたらす礎となる電子基準 高度活用社会) 」の実現のため、令和4年3月 点注 2 や電子国土基本図注 3 などの国土情報基盤注 4 に閣議決定された「地理空間情報活用推進基本 の整備・更新を進めている。 計画」に基づき、各分野を支える共通基盤であ
注1 間上の特定の地点又は区域の位置を示す情報(当該情報に係る時点に関する情報を含む)及びこの情報に関連づけら 空 れた情報。G 空間情報(Geospatial Information)とも呼ばれる。 注2 全国約 1,300 か所に設置された測量の基準点。みちびきや GPS などの人工衛星からの電波を常時観測し、地殻変動の 監視や位置情報サービスの支援にも活用されている。 注3 電子的に整備される我が国の基本図であり、我が国の領土を適切に表示するとともに、全国土の状況を示す最も基本的 な情報として、国土地理院が整備する地理空間情報。ベース・レジストリに位置付けられている。 注4 経済社会活動や災害対応の基礎となる、電子国土基本図や電子基準点等のデジタル公共インフラ。ICT 施工やドローン 物流等に欠かせないものであり、日本の持続的な成長や国民の利便性向上、安全安心な暮らしの確保等に不可欠。
306 国土交通白書 2026 第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
(1)社 会の基盤となる地理空間情報の整備・ データ、明治期の低湿地データ、自然災害伝承 更新 碑等の防災に役立つ地理空間情報を利活用する 衛星測位により効率的に標高を取得できる環 ことは、地域における自然災害へのリスクを把 境を整備するため、令和7年4月には全国の標 握する上で極めて有用であることから、防災・ 高成果について、衛星測位を基盤とする値に改 減災の実現等につながるそれらの地理空間情報 定した。電子国土基本図については、基盤地 の活用力の向上を意図して、地理院地図の普及 図情報注 5 と一体的に更新するとともに、国土全 活動を行った。また、地理空間情報を活用した 域で 3 次元化を実施し、順次提供していく。ま 技術を社会実装するための G 空間プロジェク た、空中写真、地名に関する情報、高精度標高 トの推進のほか、産学官民連携による「G 空間 データ、都市計画基礎調査により得られたデー EXPO」の開催や地理空間情報を扱う様々な タや国土に関する基礎的な情報を GIS データ ユーザーとのコミュニケーションを図る「場」 化した信頼性・統一性の高い国土数値情報の整 としての「地理空間情報課ラボ」の活用等、地 備等の取組を行っている。国土数値情報につい 理空間情報施策の一層の普及啓発に向けた取組 ては、6年7月公表の「今後の国土数値情報の を行った。 整備のあり方検討会最終とりまとめ」を踏まえ た整備・更新を行っている。 (3)建築・都市の DX 個々の建築物の情報の三次元デジタル化 (2)地理空間情報の活用促進に向けた取組 を 図 る 建 築 BIM、3D 都 市 モ デ ル の 整 備・ 活 様々な地理空間情報の集約・提供を行う G 用・ オ ー プ ン デ ー タ 化 を 推 進 す る「Project 空間情報センターを中核とした地理空間情報 PLATEAU」、国土数値情報等の地理空間情報、 Ⅱ の流通の推進、Web 上での重ね合わせができ 土地・建物を一意に特定する不動産 ID に係る
第9章 注6 る地理院地図 の充実、人流データの利活用促 取組を一体的に推進する「建築・都市の DX」 進(自治体の利活用における課題把握や事例収 を加速する。 集、三次元人流データの活用等) 、「地理空間情 こうした取組を通じて、建物内外にわたる三
DX 及び技術研究開発の推進 報データチャレンジ」の開催等、社会全体での 次元のデジタルツインの社会実装を図り、まち 地理空間情報の共有と相互利用を更に促進する づくりや防災の高度化、新サービスの創出を推 ための取組を推進している。さらに、地形と自 進する。 然災害には密接な関係があるため、地形分類
4 デジタル・ガバメントの実現 重点計画等に基づき、デジタル社会の実現に り、国土交通省においても積極的に推進してい 向けた取組を行っている。特に、国・地方を通 る。また、国民・事業者に対して書面の作成・ じた行政全体のデジタル化により、国民・事業 提出等を求める行政手続を原則オンライン化す 者の利便性向上を図る施策については、「重点 るという政府目標の下、国土交通省所管手続に 計画」を踏まえ、政府全体で取組を進めてお ついてもこれに基づき対応を進めているところ
注5 子地図上における地理空間情報の位置を定める基準となる、測量の基準点、海岸線、公共施設の境界線、行政区画等 電 の位置情報。項目や基準等は国土交通省令等で定義される。 注6 国土地理院の運用するウェブ地図(https://maps.gsi.go.jp/)。国土地理院が整備した地形図、写真、標高、地形分類、 災害情報等の地理空間情報を一元的に配信。
国土交通白書 2026 307 第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
である。 度 42.3 %(168.8 万 件 ) 、継続検査で6年度 自動車保有関係手続に関しては、検査・登 51.1%(1,099 万件)となっている。 録、保管場所証明、自動車諸税の納付等の諸手 OSS 利用率の更なる向上に向けて、令和7 続をオンラインで一括して行うことができる 年4月に二輪の小型自動車に係る継続検査等の 「ワンストップサービス(OSS)」を平成 17 年 手続きを対象に追加したほか、申請時に提出が に新車の新規登録を対象として、関係省庁と連 必要な書類について PDF ファイルでの提出を 携して開始し、以後、対象地域や対象手続の拡 可能とすることにより申請時の運輸支局等への 大を進めてきた。 出頭を不要とする「添付書類の電子提出サービ OSS の利用率は、新規登録手続で令和 6 年 ス」の試行を4支局等において開始した。
図表Ⅱ-9-2-1 自動車保有関係手続のワンストップサービス申請別利用率の状況
Ⅱ 第9章 DX 及び技術研究開発の推進
【関連リンク】 自動車保有関係手続のワンストップサービス URL:https://www.oss.mlit.go.jp/portal/index.html
5 公共施設管理用光ファイバ及びその収容空間等の整備・開放 国の管理する河川・道路管理用光ファイバの 道路及び河川に係る収容空間等の位置情報の集 うち、芯線約 18,000km を民間事業者等へ開 約・開示等について、安全保障やセキュリティ 放した(令和7年 11 月募集開始)。 にも配慮しつつ、一元的な情報公開と手続きの また、民間事業者等による光ファイバ整備を ワンストップ化に向けた環境整備を進めてい 支援するため、国及び地方公共団体が管理する く。
【関連リンク】 河川・道路管理用光ファイバの民間事業者等への開放 URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/tk_000048.html
308 国土交通白書 2026 第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
6 水管理・国土保全分野における DX の推進 水管理・国土保全分野においては、流域に関 山噴火時の緊急減災対策支援等により、発災時 する様々なデータの取得・作成、蓄積・連携、 の迅速な災害対応や早期の避難等を支援してい 分析・可視化を一体的かつ効率的に行うための る。上下水道分野では、施設の老朽化や管理に 技術開発やプラットフォームの構築、デジタル 精通した熟練職員の減少等が進む中、デジタル 技術の実装等を行い、インフラの整備・管理の 技術を活用し、メンテナンスの効率を向上さ 効率化・高度化、総合的かつ多層的な防災・減 せる「上下水道 DX」を推進しており、上下水 災対策の実施、防災対応の省人化・迅速化、防 道 DX に資するデジタル技術の情報をまとめた 災情報の高度化等を図り、水管理・国土保全分 「上下水道 DX 技術カタログ」を公表するとと 野における DX を推進している。 もに、水道事業者や下水道管理者による、AI 例えば、河川空間に通信スポット(Smart や人工衛星を用いた漏水検知、スマート水道 River Spot)を設置することで、建設機械や メーターの活用、施設情報や維持管理情報のデ 除草機械の無人化・自動化、ドローンによる巡 ジタル化等を支援している。 視・点検等の取組等を進め、インフラ施設の整 さらに、流域に関する様々なデータを一元的 備や管理の高度化・効率化を推進している。あ に管理する「流域データプラットフォーム」の わせて、物流分野の担い手不足等の状況の下、 整備や、サイバー空間上の実証実験基盤である 河川上空を活用したドローン物流の社会実装の 「流域デジタルテストベッド」の構築を進め、 実現にも寄与している。 データ品質の向上や更新の効率化を図るととも また、洪水予測の高度化、AI を活用したダ に、職員業務効率化や産官学における技術開発 Ⅱ ム操作支援、センサや衛星による浸水範囲・ の促進等において、データを最大限活用するた
第9章 土砂移動箇所の把握、統合災害情報システム めの基盤を構築する。 (DiMAPS)の改良による災害情報の集約、火
DX 及び技術研究開発の推進 7 鉄道分野における DX の推進 生産性向上、特に経営の厳しい地域鉄道等の 力化に資する技術開発や安全対策、環境対策に 維持コスト削減、人手不足対策等の観点から、 係る技術開発等を推進する。 デジタル技術を活用した現場業務の効率化・省
8 ビッグデータの活用 (1)交通関連ビッグデータ等を活用した新た 近年の都市交通調査データや調査の実施、結果 なまちづくり の分析に関する支援ツールを公開する「都市 移動に関するビッグデータやシミュレーショ 交通調査プラットフォーム」の構築を通じて、 ン技術、調査結果の利活用方策等を記載した データを活用したまちづくりや調査結果のオー 「都市交通調査ガイダンス」の策定及び公表、 プン化を進めている。
【関連リンク】 国土交通省都市交通調査プラットフォーム https://ptplatform.mlit.go.jp/
国土交通白書 2026 309 第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
今後は、「都市交通調査プラットフォーム」 な地図のベースとして利用されている。この電 の拡充等を通じて地方公共団体を支援し、調査 子国土基本図の登山道をより正確に表示するた 結果を多様な都市政策に活用するための取組を め、民間事業者との協力協定により提供され 進めていく。 た、登山者がスマートフォンで取得した経路情 報(ビッグデータ)を活用して、登山道の修正 (2)ビッグデータを活用した電子国土基本図 に取り組んでいる。 の修正 電子国土基本図は、国土の基本図として様々
9 気象データを活用したビジネスにおける生産性向上の取組 ビッグデータである気象データを活用して企 また、「気象データアナリスト」の育成のた 業の生産性向上を図るべく、気象庁では、産学 め、教育内容等が一定以上の水準を満たすと認 官連携の「気象ビジネス推進コンソーシアム められる民間講座を「気象データアナリスト育 (WXBC)」における「気象ビジネスフォーラ 成講座」として認定し、気象データ等を活用し ム」や各種セミナーの開催等の取組を行ってい たビジネス創出や課題解決等、産業界における る。 気象データ利活用促進に努めている。
Ⅱ 10 まちづくり DX の推進 (1)スマートシティの推進 に関する先進的な都市サービスについて、産学 第9章
先進的技術や官民データをまちづくりに取り 官のマッチング機会を創出することで連携を促 込み、地域の抱える課題解決、新たな価値の創 進するなど、スマートシティのもたらす効果の 出を図るスマートシティについて、国土交通省 最大化を一層推進していく。 DX 及び技術研究開発の推進
においては、 「スマートシティモデルプロジェ クト」として、令和元年度より全国の牽引役と (2)3D 都 市 モ デ ル の 整 備・ 活 用 等 の 推 進 なる先駆的な取組について、都市サービスの導 (Project PLATEAU) 入に向けた実証実験への支援を行っている。 国土交通省ではこれまで、地方公共団体等に 令和7年度は「スマートシティ実装化支援事 対する補助制度等により、全国約 300 都市で 業」として 10 地区を選定し、実証事業の支援 3D 都市モデルを整備し、さらに 100 件以上の を行った。また、国が定める特定の政策テーマ 多様な分野におけるユースケース開発に取り組
【関連リンク】 【関連リンク】 PLATEAU ウェブサイト PLATEAU 補助制度ポータルサイト URL:https://www.mlit.go.jp/plateau/ URL:https://www.mlit.go.jp/toshi/daisei/plateau_hojo.html
【関連リンク】 【関連リンク】 X(旧 Twitter)の PLATEAU アカウント YouTube の PLATEAU チャンネル URL:https://twitter.com/ProjectPlateau https://www.youtube.com/channel/UC3glW7rxyDRCQLq-Jfmx5SA
【関連リンク】 GitHub の PLATEAU ページ URL:https://github.com/Project-PLATEAU
310 国土交通白書 2026 第2節 デジタル技術の活用によるイノベーションの推進
んできた。令和7年度は、地下構造物の作成や た。また、国際標準化団体 Open Geospatial 実証を行うなど「建築・都市の DX」を進めた Consortium における国際標準化の議論への参 ほか、3D 都市モデルの整備・活用・オープン 画や東南アジアにおけるデータ整備等を通じた データ化の自律的な進展に向けて、地域ハッカ 国際展開にも取り組んだ。今後も整備・活用・ ソンへの支援、人材育成、PLATEAU コンソー オープンデータ化の取組を一層推進し、都市の シアムを通じた産学官連携の促進等を実施し 課題解決を図る。
11 国土交通データプラットフォーム 国土に関するデータ、経済活動、自然現象に て自然言語で検索・分析する」MCP(Model 関するデータを連携させ、分野を跨いだデータ Context Protocol)サーバの提供を開始する 検索・取得を可能とすることで業務の効率化や 等、連携基盤としての強化を図っている。7年 スマートシティ等の施策の高度化、産学官連携 11 月には戦略的イノベーション創造プログラ によるイノベーション創出等を実現するための ム(SIP)第3期課題「スマートインフラマネ データ連携基盤として「国土交通データプラッ ジメントシステムの構築」と連携した社会実験 トフォーム」の構築を進めている。 の第 2 期公募を開始し、今後も、データ連携や 令和2年4月の公開以降、連携データの拡 機能の充実等により、現実空間の事象をサイ 充や地図上での表示・検索・ダウンロード機 バー空間に再現するデジタルツインの実現に向 能の改良、API 機能の追加、7年 9 月には、専 け取組を進めていく。 門的な知識や技術的な操作なしに「AI を用い Ⅱ
第9章 12 サイバーポートによる港湾の DX 港湾を取り巻く様々な情報を電子化し、生産 築及び一般統計調査の電子化等、 「港湾インフ
DX 及び技術研究開発の推進 性向上を図る「サイバーポート」について、 ラ(GIS からの港湾施設情報の閲覧) 」では他 「物流手続(民間事業者間の港湾物流手続)」で システムとの連携機能高度化等の機能改善を行 は船社・ターミナル連携機能の構築等、 「行政 い、利用促進及びデータ利活用を推進してい 手続」・「調査統計」ではクルーズ予約機能の構 る。
13 道路分野における DX の推進 道路関連データの利活用等により道路調査・ ス化等を進め、道路利用者の利便性向上を図 維持管理等の高度化・効率化を図る道路システ る。また、道路に関する基礎的なデータを一元 ムの DX の取組「xROAD」を推進する。その 的に集約し、幅広く提供する「道路データプ 一環として、AI・ICT の活用、特殊車両通行 ラットフォーム」において、引き続きデータの 確認制度の利用推進による通行手続きの迅速化 充実を図る。 や高速道路の ETC 専用化によるキャッシュレ
【関連リンク】 サイバーポート URL:https://www.cyber-port.mlit.go.jp/
国土交通白書 2026 311 第3節 技術研究開発の推進
第3節 技術研究開発の推進
1 技術政策における技術研究開発の位置付けと総合的な推進 国土交通省では、事業・施策の効果・効率を を築き、安全・安心で豊かな未来を創造するこ より一層向上させ、国土交通に係る技術が広く とを目標としている。 社会に貢献することを目的として、「国土交通 省技術基本計画」で技術政策の基本方針を示 (1)施設等機関、特別の機関、外局、国立研 し、技術研究開発の取組を推進している。令和 究開発法人等における取組 7年度には、社会資本整備審議会・交通政策 施設等機関、特別の機関、外局や国土交通省 審議会技術分科会技術部会での議論を踏まえ、 所管の国立研究開発法人等における主な取組は 「第6期国土交通省技術基本計画」を策定した。 リンク先のとおりである。国立研究開発法人に 第 6 期計画では、 「イノベーション・エコシス おいては、我が国における科学技術の水準の向 テム注 7」の確立により、持続可能で強靱な社会 上を通じた国民経済の健全な発展そのほかの公
【関連リンク】 【関連リンク】 国土地理院 国土交通政策研究所 URL:https://www.gsi.go.jp/cais/index.html URL:https://www.mlit.go.jp/pri/gaiyou/kenkyutheme.html
【関連リンク】 【関連リンク】
Ⅱ 国土技術政策総合研究所 気象庁気象研究所 URL:http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/youran.htm URL:https://www.mri-jma.go.jp/Research/project/plans.html 第9章
【関連リンク】 【関連リンク】 海上保安庁 土木研究所 URL:https://www.kaiho.mlit.go.jp/soshiki/soumu/center/center.html URL:https://www.pwri.go.jp/jpn/about/pr/publication/index.html
【関連リンク】 【関連リンク】 DX 及び技術研究開発の推進
建築研究所 交通安全環境研究所 URL:https://www.kenken.go.jp/english/pdf/pamphlet.pdf URL:https://www.ntsel.go.jp/main.html
【関連リンク】 【関連リンク】海上・港湾・航空技術研究所(船舶に係る技術及び 海上・港湾・航空技術研究所(分野横断的な研究) これを活用した海洋の利用等に係る技術に関する研究開発) URL:https://www.mpat.go.jp/initiatives/ 分野横断的な研究の取り組み / URL:https://www.nmri.go.jp/study/research_organization/
【関連リンク】海上・港湾・航空技術研究所 【関連リンク】 (港湾、航路、海岸及び飛行場等に係る技術に関する研究開発) 海上・港湾・航空技術研究所(電子航法に関する研究開発) URL:https://www.pari.go.jp/about/summary/ URL:https://www.enri.go.jp/jp/research.html
【関連リンク】 【関連リンク】 研究開発税制について(経済産業省 HP) SBIR 建設技術研究開発助成制度 URL:https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/tax/about_tax.html URL:https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000121.html
【関連リンク】交通運輸技術開発推進制度 【関連リンク】 URL: SBIR(Small/StartupBusinessInnovationResearch)制度(内閣府 HP) https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/safety/sosei_safety_tk2_000007.html URL:https://sbir.csti-startup-policy.go.jp/
【関連リンク】 【関連リンク】 SBIR フェーズ3基金事業 国土交通省技術基本計画 URL:https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000132.html URL:https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000136.html
注7 優れた技術革新を継続的に生み出すため、産学官連携や SU 等の異分野も含め多様な組織が互いに協働し、技術開発の 支援や人材育成・確保などの各施策を相互に連携させ、各施策を改善・発展させていく仕組み。
312 国土交通白書 2026 第3節 技術研究開発の推進
益に資するため研究開発の最大限の成果を確保 ら社会実装に向けた技術実証等、その後の普 することを目的とし、社会・行政ニーズに対応 及、拡大に至るまで切れ目のない支援を行って した研究を重点的・効率的に行っている。 いる。 研究開発段階では、 「SBIR 建設技術研究開発 (2)地方整備局における取組 助成制度」及び「交通運輸技術開発推進制度」 技術事務所及び港湾空港技術調査事務所にお により、毎年度公募テーマを設定し、事業構想 いては、管内の関係事務所等と連携し、建設工 から成果の社会還元を目指した研究開発支援を 事用材料及び水質等の試験・調査、施設の効果 行っている。交通運輸技術開発推進制度では、 的・効率的な整備や維持管理に関する調査・検 より行政機関等のニーズに沿った研究開発に対 討等、地域の課題に対応した技術開発や新技術 する公募区分を新設した。両制度は、SBIR 制 の活用・普及等を実施している。 度における指定補助金等に位置付けられ、SU 支援の更なる拡大を図っている。 (3)産学官の連携による技術研究開発の推進 技術実証段階では、「SBIR フェーズ3基金 「総合技術開発プロジェクト」では、行政部 事業」により、SU の持つ優れた技術を速やか 局が計画推進の主体となり、建設技術に関する に社会実装につなげるための支援を実施してい 重要な研究課題のうち、特に緊急性が高く、対 る。令和5年度から9年度までの5年間で SU 象分野の広い課題を取り上げ、産学官の連携に による技術実証への財政的支援を行うととも より、総合的・組織的に研究を実施している。 に、技術実証完了後の社会実装に向けた伴走支 令和7年度は、「カーボンニュートラルに資す 援を行っている。 る新技術の導入促進のための研究開発」等、計 また、「土研新技術ショーケース」(令和7年 Ⅱ 4課題について、研究開発に取り組んだ。 各地で開催)、「交通運輸技術フォーラム」 (8
第9章 年3月開催)等を通じて、支援した SU 技術の (4)スタートアップ等への支援 普及、拡大を図るほか、研究開発投資に関する 国土交通省では、建設、交通運輸分野等のス 税制上の特例措置により、SU 等の研究開発を
DX 及び技術研究開発の推進 タートアップ(SU)等を対象に、研究開発か 引き続き後押ししている。
2 公共事業における新技術の活用・普及の推進 国土交通省では、民間業者等による技術開発 ため、現場ニーズと技術シーズのマッチングイ の促進、優れた技術の創出による公共工事の品 ベント等を行っている。 質確保、良質な社会資本の整備に寄与すること また、国土交通省では新技術に係る情報を共 を目的とし公共工事等において新技術の活用を 有及び提供するためのデータベースである新技 推進している。近年では脱炭素化に資する技術 術情報提供システム(以下、NETIS)を運用し の活用も進めている。 ている。NETIS には令和8年1月現在約 3,900 公共工事等における新技術を活用する取組と の新技術が登録されており、登録者からの情報 して、国土交通省の工事では新技術の活用を義 だけでなく、実際に技術を使用した使用者の評 務化しており、更に異分野の技術も取り入れる 価情報も掲載している。加えて、7年 10 月よ
【関連リンク】 総合技術開発プロジェクト https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000124.html
国土交通白書 2026 313 第4節 建設マネジメント(管理)技術の向上
り、多数の新技術がある中で、個々の技術の比 り自動的に抽出する機能を実装している。 較を容易にするため、類似した技術を AI によ
第4節 建設マネジメント(管理)技術の向上
1 公共工事における積算技術の充実 公共工事の品質確保の促進を目的に、中長期 め、積算基準に関する検討及び必要に応じた見 的な担い手の育成及び確保や市場の実態の適切 直しに取り組んでいる。 な反映の観点から、予定価格を適正に定めるた
2 BIM/CIM の取組 BIM/CIM(Building/Construction 省)を令和元年6月から開催している。建築生 Information Modeling, Management)とは、 産全体(設計・施工・維持管理)のワークフ 建設事業で取り扱う情報をデジタルデータとし ロー等を整理したガイドラインについて、改定 て統合管理することで、調査・測量・設計・施 に向けた議論を行っているほか、BIM による 工・維持管理等の建設事業の各段階に携わる受 建築確認に向けた取組を進めており、8年4月 発注者のデータ活用・共有を容易にし、建設生 に BIM 図面審査を開始している。 Ⅱ 産・管理システム全体の効率化を図ることをい 官庁営繕事業における BIM 活用については、 う。令和5年度からすべての直轄土木業務・工 令和5年度から、原則としてすべての新築の設 第9章
事(小規模なもの等は除く)に BIM/CIM を原 計業務と工事において EIR(発注者情報要件) 則適用した。これまで、三次元モデルの工事契 を適用とすること等により、設計業務及び工事 約図書化に向けた試行工事や、属性情報を活用 の品質の確保及び事業の円滑化を図るととも DX 及び技術研究開発の推進
した「BIM/CIM 積算」、デジタルデータを活 に、BIM 活用の考え方や手続等を「官庁営繕 用した監督・検査の実施に関する試行を実施 事業における BIM 活用ガイドライン」等の技 し、生産性向上に向けた取組を進めている。 術基準として示すことにより、受発注者におけ また、官民一体となって建築 BIM の推進を る BIM 活用の円滑化・効率化を図っている。 図る「建築 BIM 推進会議」 (事務局:国土交通
3 事業監理の効率化・高度化 デジタルデータを活用した新たな働き方を実 を一元的に蓄積する等を目的とした事業監理 現させ、事業監理の効率化・高度化を図るた データ連携基盤(プロジェクト CDE)の整備 め、事業監理を行う際に必要なデジタルデータ に取り組んでいる。
【関連リンク】 新技術情報提供システム(NETIS) URL:https://www.netis.mlit.go.jp/netis/input/pubsearch/search
314 国土交通白書 2026 第5節 建設機械・機械設備に関する技術開発等
第5節 建設機械・機械設備に関する技術開発等 (1)建設機械の開発及び整備 の開発にも取り組んでいる。 国が管理する河川や道路の適切な維持管理、 災害復旧の迅速な対応を図るため、維持管理用 (3)建設施工における技術開発成果の活用 機械及び災害対策用機械の全国的な整備及び老 道路除雪の現場において今後懸念される熟練 朽化機械の更新を実施している。また、治水事 オペレーターの減少に対応するため、リアルタ 業及び道路整備事業の施工効率化、省力化、安 イム測位技術等の ICT を活用して除雪作業装 全性向上等を図るため、建設機械と施工に関す 置を自動制御する除雪機械の開発を行い、実現 る調査、技術開発に取り組んでおり、近年では 場に配備し活用することで、省力化や安全性向 ICT 除雪機械の開発に取り組んでいる。 上を図っている。
(2)機械設備の維持管理の合理化と信頼性向上 (4)建設施工への自動化・自律化技術の導入 災害から国民の生命・財産を守る水門設備・ に向けた取組 揚排水ポンプ設備、道路排水設備等は、その多 建設機械施工の自動化・遠隔化技術は、建設 くが高度経済成長期以降に整備されており、今 機械を人が搭乗することなく、1 人のオペレー 後、建設から 50 年以上経過する施設の割合は ターが複数の建設機械を稼働させることや、遠 加速度的に増加する見込みである。これらの機 隔地から稼働させることを可能にするものであ 械設備は、確実に機能を発揮することが求めら るため、建設現場の抜本的な生産性向上や働き れているため、設備の信頼性を確保しつつ効率 方改革に資する技術として期待されている。な Ⅱ 的・効果的な維持管理の実現に向け、状態監視 お、これらの技術は月面拠点建設への応用も見
第9章 型の保全手法の適用を積極的に推進している。 据え、開発が進められている。 このような状況の中、AI を活用して排水機 本技術の普及を産官学一体となって推進して 場の非常用設備の劣化傾向を迅速・正確に把握 いくことを目的として、関係省庁、業界団体、
DX 及び技術研究開発の推進 し、機能喪失の防止と適切な維持管理体制の 研究機関で構成する「建設機械施工の自動化・ 確保を目指して AI モニタリングシステムの研 自律化協議会」を設置、自動・遠隔施工の技術 究開発を開始したところである。令和7年には 開発の促進に資する協調領域や機能要件の整 「インフラ施設管理 AI 協議会」を設立し、産官 理、現場導入の促進に資する安全ルールや施工 学連携により普及と継続的な研究体制の構築を 管理基準の整備に向けた検討を実施している。 進めている。 今後はフィジカル AI の活用を通じて、自動 また、総合信頼性の向上を目指し量産品のエ 化・遠隔化技術の高度化を図るとともに、維持 ンジンを採用したマスプロダクツ型排水ポンプ 管理等を含む建設技術の開発を加速していく。
【関連リンク】 「インフラ施設管理 AI 協議会」を開催します ~産官学関係者が連携した分野横断的な議論を行います~ https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_001266.html
【関連リンク】 建設施工・建設機械:マスプロダクツ型排水ポンプの開発・導入 https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000040.html
【関連リンク】 建設機械施工の自動化・自律化協議会 URL:https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000049.html
国土交通白書 2026 315 第5節 建設機械・機械設備に関する技術開発等
Column 宇宙建設革新プロジェクトについて コラム
国土交通省では、建設分野で培われた自動化・遠隔 は月面での地質調査、地盤解析、無人・自動化施工、 施工技術を、将来の月面建設に活用することを見据え、 建材製造、簡易施設建設等など多岐にわたり、これら 「宇宙建設革新プロジェクト」を推進しています。月 の成果は地上の施工高度化にも役立ちます。2030 年 面ならではの通信遅延や過酷な環境に対応するため、 代の月面拠点づくりに向け、産学官が連携して開発を 自律施工を中心とした技術開発を進めています。研究 加速しています。
宇宙建設革新プロジェクト全体
Ⅱ 第9章 DX 及び技術研究開発の推進
月面施工デジタルツインの構築:地上(左)から月面(右)へ
月面無人地盤調査ロボット 多目的自動展開タワーの月面設置
【関連リンク】 宇宙建設革新プロジェクト https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/sosei_constplan_tk_000045.html
316 国土交通白書 2026
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:政府報告