令和8年8月4日

国土交通省及び内閣官房水循環政策本部事務局が設置した「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」は、今般、「地下水の適正な保全と利用のあり方について」の提言をとりまとめました。

主要指標 — KEY FIGURES

19%
生活用水の約 19%
28%
工業用水の約 28%
5%
農業用水の約5%

同検討会は、令和8年1月に外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議でとりまとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を踏まえ、令和8年3月に設置され、これまで4回にわたり議論を進めてきたものです。

<本提言のポイント>

○地下水は生活・工業・農業用水等に用いられる重要な水資源。

○ 社会変化による水需要変化 、 気候変動による地下水涵養への影響 、 外国人等の地下水採取の懸 念等 の 新た

な課題が生じている一方、条例等の規制の空白地域が存在していることから、全国 統一的な考え方による

地下水の実態把握と適正な保全と利用の仕組みづくりを早急に進める ことが必要 。

○持続可能な地下水利用を確保する観点から、 行政庁が、地下水採取行為を把握し、他の地下水 利用等への

支障を及ぼすおそれがある場合には、是正を求めることができるような仕組みが必 要 であり、 今後、具体

的な仕組みのあり方について法制度を含め検討 すべき。

<添付資料>

別紙1:概 要

別紙2:提 言

※これまでの検討会資料については、内閣官房及び国土交通省WEBサイトで公開しています。

内 閣 官 房 : https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/mizu_junkan/index.html

国土交通省: https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_fr1_000065.html

添付資料

報道発表資料 (PDF形式)

別紙1:概 要 (PDF形式)

別紙2:提 言 (PDF形式)

お問い合わせ先

国土交通省 水管理・国土保全局 水資源部 水資源政策課 山田、田中(輝)、吉村

TEL:03-5253-8111 (内線31-154、31-301、31-153)

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添付資料1 令 和 8 年 8 月 4 日 同時発表:内閣官房 水管理・国土保全局 水資源部水資源政策課

「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」提言 がとりまとめられました

国土交通省及び内閣官房水循環政策本部事務局が設置した「地下水の適正な保全と利用に関する検 討会」は、今般、 「地下水の適正な保全と利用のあり方について」の提言をとりまとめました。 同検討会は、令和8年1月に外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議でとり まとめられた「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を踏まえ、令和8年3月に設 置され、これまで4回にわたり議論を進めてきたものです。

<本提言のポイント> ○地下水は生活・工業・農業用水等に用いられる重要な水資源。 ○社会変化による水需要変化、気候変動による地下水涵養への影響、外国人等の地下水採取の懸 念等の新たな課題が生じている一方、条例等の規制の空白地域が存在していることから、全国 統一的な考え方による地下水の実態把握と適正な保全と利用の仕組みづくりを早急に進める ことが必要。 ○持続可能な地下水利用を確保する観点から、行政庁が、地下水採取行為を把握し、他の地下水 利用等への支障を及ぼすおそれがある場合には、是正を求めることができるような仕組みが必 要であり、今後、具体的な仕組みのあり方について法制度を含め検討すべき。

<添付資料> 別紙1:概 要 別紙2:提 言 ※これまでの検討会資料については、内閣官房及び国土交通省 WEB サイトで公開しています。 内 閣 官 房:https://www.cas.go.jp/jp/seisakukaigi/mizu_junkan/index.html 国土交通省:https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_fr1_000065.html

【問い合わせ先】 水管理・国土保全局 水資源部 水資源政策課 担当 山田、田中(輝) 、吉村 「健全な水循環」 代表:03-5253-8111(内線:31-154、31-301、31-153) ロゴマーク

添付資料2 別紙-1 内閣官房水循環政策本部事務局

「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」 提言の概要(1/2) 【 背 景 】 ○地下水は生活・工業・農業用水等に用いられる重要な水資源 ○令和3年水循環基本法改正で、国及び地方公共団体が地下水の適正な保全と利用のために必要な措置を講ずるよう努める旨を規定 ○社会変化による水需要変化、気候変動による地下水涵養への影響、外国人等の地下水採取の懸念等の新たな課題が生じている一方、条 例等の規制の空白地域が存在していることから、全国統一的な考え方による地下水の実態把握と適正な保全と利用の仕組みづくりが必要 【 地下水に関する現状と課題 】 【社会変化による地下水需要の増加】 【地下水採取による障害の状況】 【現行の法律・条例による地下水規制の状況】 ○半導体事業等の立地で地域により地下水需要 ○依然として、地域により、地下水位の低下、 ○条例等の規制の空白地域が存在 の高まり 地盤沈下等の地下水障害が発生 ○規制があっても、地方公共団体により規制内容 ○外国人等による地下水採取に係る支障事例は ○公害対策としての地下水採取規制の実施か や採取量等の実態把握状況に差 確認されていないが、条例が制定されていない ら長期間経過し、地下水位が高止まりしてい ○一部の地方公共団体では地下水保全の体制や 地方公共団体では実態把握が十分にできない る地域があり、科学的データに基づき持続 知見が不足、地下水位等の観測コストも負担 ○災害時の代替水源の確保が必要 可能な範囲で有効利用する視点も必要

【気候変動等による地下水涵養等への影響】 【地下水流動の把握技術(地下水シミュレーション)の開発】 ○気候変動による蒸発散量の増加等で地下水涵養量が減少する地域が ○地下水の流動を解析し、 多くなる見込み。海面上昇による塩水化リスクの高まり 視覚的に表現可能な 〇地下水の涵養域である農地面積が減少 水循環解析モデル等を 109水系平均値 109水系平均値 109水系平均値 産学官で開発 ○地下水涵養量の算出や 地下水採取による影響 予測が可能

気候変動による年蒸発散量の増加と年水資源賦存量の減少※ 水循環解析モデルの概念図 ※出典)西村 宗倫ら:WBC-d4PDF5km(2022)を用いた気候変動による渇水への影響のマクロ的評価、土木学会論文集(地球環境)、Vol.81、No.27、25-2703,2025 内閣官房水循環政策本部事務局

「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」 提言の概要(2/2) 【 地下水の実態把握や適正な保全と利用のあり方 】 ○地下水の採取については、他の地下水利用等への支障が顕在化した後に対応すると原状回復には多大な時間と労力が必要 ○持続可能な地下水利用を確保する観点から、行政庁が、地下水採取行為を把握し、他の地下水利用等への支障を及ぼすおそれがある場 合には、是正を求めることができるような仕組みづくりを早急に進めることが必要 ○今後、具体的な仕組みのあり方について法制度を含め検討すべき

<仕組みのイメージ> 全国一律での一定規模以上の地下水採取行為の把握等 ○行政庁は、他の地下水利用等に影響を与えうる一定規模以上の地下水採取行為について、その内容(実施主体(国籍情報を含む)、位置、 用途、採取量等)を把握する ○行政庁は、揚水試験の結果等を活用し、他の地下水利用等への影響を確認し、支障を及ぼすおそれがある場合に、採取者に対して是正を 求める

地下水の需給がひっ迫するおそれがある地域における地下水採取の調整 ○行政庁は、地下水採取の状況等を踏まえ、地下水の需給がひっ迫するおそれがある地域がある場合には、当該地域を指定し、より規模 の小さい地下水採取行為についても把握する ○行政庁は、地下水シミュレーション等を活用して地下水利用可能量を算出し、把握した採取量が地下水利用可能量の範囲内に収まるよう に調整する

※「行政庁」については、地下水流動の広域性や、地下水の適正な保全を行うために必要な知見や体制等を勘案し、 国と地方公共団体の役割分担や連携のあり方を整理して検討 ※「地下水利用可能量」については、地下水涵養量を基本とし、地下水採取に伴う水循環への影響にも配慮しながら算出

<仕組みの構築と併せて取り組むべき施策> ○地下水障害の未然防止のため、国や地方公共団体等による地下水位の定点観測の継続的な実施 ○国や地方公共団体が把握した地下水位や採取量等の地下水情報について共通のプラットフォームによるデータベース化や公開 〇地下水に関するデータ整備状況に応じた地下水シミュレーション等の技術の開発と普及啓発 ○地下水の採取者や協力者による多様な地下水涵養に資する取組の推進 ○地下水採取の規制等で地下水位が回復した地域における、科学的根拠に基づく地下水の適正な保全と利用の両立に向けた検討

添付資料3 別紙-2

地下水の適正な保全と利用のあり方について

提 言

令和8年8月

地下水の適正な保全と利用に関する検討会 目次

1.はじめに

2.地下水に関する現状と課題

2.1 社会変化による地下水需要の状況

2.2 気候変動等による地下水涵養等への影響

2.3 地下水採取による障害の状況

2.4 現行の法律・条例による地下水規制の状況

2.5 地下水流動の把握技術の開発

3.地下水の実態把握や適正な保全と利用のあり方

3.1 地下水を取り巻く現状と課題の基本認識

3.2 地下水の実態把握及び適正な保全と利用に向けた対応策

1 1.はじめに

○地下水は、井戸から容易に水が得られる簡易性、他の水資源に比べて一般に安価である経済性、 地表水に比べて温度変化や水質変化が小さいという安定性等の特性を有している。このため、 生活用水の約 19%、工業用水の約 28%、農業用水の約5%は地下水が利用されていると推計さ れており、積雪地域の消雪や地下水熱等のエネルギー源、災害時の代替水源等として多様な用 途に幅広く利用されている。

○しかしながら、一部地域では地下水の過剰な利用が行われ、関東平野南部では明治中期頃から 地盤沈下が認められ、高度経済成長期(昭和 30~40 年代(1955 年頃~1974 年頃) )以降は、都 市部を中心に全国各地に拡大した。

○このため、国において工業用水法(昭和 31 年(1956 年)制定)及び建築物用地下水の採取の規 制に関する法律(昭和 37 年(1962 年)制定。以下「ビル用水法」という)が整備されるととも に、昭和 50 年代以降、地盤沈下防止等対策関係閣僚会議が開催され地盤沈下防止等対策要綱が 決定(濃尾平野、筑後・佐賀平野:昭和 60 年(1985 年) 、関東平野北部:平成3年(1991 年)) された。

○こうした法律や地方公共団体における条例等による採取規制、地下水から地表水への水源転換 など地下水の適正な保全と利用に関する取組により、地盤沈下防止等対策要綱の対象地域等に おいては、地下水位が回復し、地盤沈下等の被害は概ね沈静化している状況であるが、一部地 域では沈下が継続している。

○一方、都市部への人口の集中、産業構造の変化、気候変動といった様々な要因が水循環に変化 を生じさせ、それに伴う渇水、洪水、水質汚濁、生態系への影響などの様々な問題が顕著とな っていること等を背景として、水循環の健全化への取組を求める声が高まってきた。このため 平成 22 年(2010 年)頃から水循環の健全化のための法制度整備へ向けた、政・官・学・民の多 様な関係者による議論が活発に行われた。その結果、平成 26 年(2014 年)3月に議員立法に よる「水循環基本法」が成立し、同年7月1日に施行された。

○水循環基本法においては、水が国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いものであることに 鑑み、水については、その適正な利用が行われるとともに、全ての国民がその恵沢を将来にわ たって享受できることが確保されなければならないこととされた。

○水循環基本法が制定され、地下水の公共性が示されたことにより、地方公共団体の取組の後ろ 盾となったが、地下水の挙動が明らかでないこと等に伴う様々な課題が残っていた。これらの 課題へ対応していくため、令和3年(2021 年)に水循環基本法の一部改正が行われ、国や地方 公共団体の責務に「地下水の適正な保全及び利用に関する施策」が含まれること、及び事業者・ 国民の責務に当該施策への協力が含まれることが明確化され、関係省庁において、地下水の適 正な保全及び利用に向けた取組を講ずるよう努める旨が規定された。

○さらに、水循環基本法に基づく水循環基本計画では、持続可能な地下水の保全と利用の推進の ための施策として地下水マネジメントに取り組むことが位置付けられ、国による地下水マネジ

2 メントの手順書の作成やポータルサイトによる情報提供、アドバイザーの派遣、研究会の開催 といった取組により、地域関係者が主体となった地下水マネジメントの取組が推進されている。

○こうした取組が進められているが、地下水について全国一律でその採取を規制する法律がなく、 地域の実情に応じて、地方公共団体が条例により採取の届出や許可等の規制を実施しており、 条例を制定していない地方公共団体においては地下水採取の実態把握ができていない状況があ る。

○地下水をめぐっては、デジタル化等の社会変化による水需要の変化、災害時の代替水源確保、 気候変動等による地下水涵養への影響など新たな課題が生じている。

○さらに、外国人等による地下水採取を含む土地利用に対する将来的な懸念等への対応として、 令和8年(2026 年)1月の外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議にお いて、 「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」が策定され、地下水採取の実態 把握や地下水の適正な保全と利用の実効性のある仕組みについて、令和8年(2026 年)夏まで に基本的な考え方を整理することが位置づけられた。

○地下水の過剰採取は、地下水位を低下させ、井戸枯れなどにより生活や経済活動に重大な影響 を及ぼす。さらに地盤沈下、塩水化、地下水汚染などの地下水障害が発生すると、その回復に は多大な時間と労力が必要となる。

○一方、豊富な地下水は地産品の生産や良好な景観の形成などに必要な資源として地域の活性化 に貢献しており、適正な利用の推進もまた重要である。

○地下水採取の影響は、行政区域を越えて複数の地方公共団体に及ぶこともあり、全国統一的な 考え方に基づいた実態把握や、保全と利用のルールを整えることの必要性が高まっている。

○これらの状況を踏まえ、今般、 「地下水の適正な保全と利用に関する検討会」を開催し、全国統 一的な考え方による地下水採取の実態把握や地下水の適正な保全と利用に向けた実効性のある 仕組みのあり方について、専門的見地から検討を行ったものである。

3 2.地下水に関する現状と課題

2.1 社会変化による地下水需要の状況 ①社会変化による水需要の変化 ○全国の地下水使用量は平成初期(1990 年代)をピークに減少傾向である。特に工業用水の減少 傾向が顕著であり、農業用水についても緩やかな減少傾向にあると推計される。一方で、水道 事業(水道用水供給事業含む)の年間取水量に対する地下水構成比は 22%、簡易水道事業では 46%となっており、水道事業において地下水は依然として重要な水源である。

○水道事業における地下水の利用状況は、令和5年度において、上水道事業等で約7割、簡易水 道事業で6割弱の事業が地下水を採取しており、水道事業において地下水が重要な水源となっ ている。

○各地方公共団体の上水道事業における地下水依存割合別に、地下水関係条例の有無を確認した ところ、上水道事業において地下水構成比が 50%を超える地方公共団体のうち約6割では条例 等の規制が行われていない。地下水の依存度が高くても条例等の規制が行われていない地方公 共団体が多く、地下水障害の進行を把握することが困難である。

○製造業における地下水の利用状況については、地下水採取を行っている製造業の事業所(従業 員が 30 人以上)を対象に調査を行ったところ、平成 22 年(2010 年)から令和2年(2020 年) の 10 年間で、条例等による実態把握が行われていない市区町村においても地下水を利用する事 業所数が増加している実態が確認された。

○半導体事業については、我が国の半導体戦略の基本方針(「半導体・デジタル産業戦略(令和5 年6月)」)にて令和 12 年(2030 年)に国内の半導体生産企業の合計売上高 15 兆円超を実現す ることが挙げられており、今後、全国的な事業の拡大が見込まれ、全国の立地地域において地 下水需要が高まることが予想される。

○データセンターについては、約8割が東京圏及び大阪圏に集中していることから、大規模災害 時の被災リスク軽減のための地方分散が推進されており、全国の立地地域において水需要が増 加することが予想される。なお、米国の国立研究所によれば、米国におけるデータセンターの 水使用量は、2024 年~2028 年の間で、2倍から4倍に増加する見込みとの試算が示されている。

○ミネラルウォーターにおける水需要については、日本国内で生産されるミネラルウォーターの 大半は地下水が利用されており、その生産量は平成 12 年(2000 年)の約 89 万キロリットルか ら、令和6年(2024 年)の約 503 万キロリットルと年々増加している。

○販売業、製造業等では、地下水の導入によるコストの削減や災害対策等の理由により、地下水 利用専用水道に転換する動きが見られ、平成 14 年(2002 年)度以降平成 29 年(2017 年)まで の累積で 1934 件の転換件数が確認されている。

○これらの経済活動の動向を踏まえると、地下水を利用する事業場等が立地する地域においては、 今後、地下水需要の更なる増加が見込まれる。

4 ②災害時の代替水源の確保 ○災害時の地下水の活用について、令和3年(2021 年)に和歌山市で発生した水管橋崩落事故に 伴う断水の際、事故の翌日には断水地域の災害用井戸所在地を市がホームページで公開し活用 された事例、令和6年(2024 年)1月の能登半島地震の断水時に地域住民が自主的に井戸を提 供した事例などが報告されており、災害時の代替水源としての地下水の有効性が再認識された。

○このため、国においては、大規模災害時の地下水活用を進めるために「災害時の地下水利用ガ イドライン」を令和7年(2025 年)3月に策定して災害用井戸等の普及啓発に取組んでおり、 地方公共団体において災害用井戸の把握・登録や平時からの地域の利用の取組が進展している。

○ただし、災害時の地下水の過剰な利用による地下水障害の発生にも留意する必要があり、災害 時の地下水利用について平時から検討しておくことが望ましい。

③外国人等による地下水採取への懸念 ○外国人等による地下水採取等について、内閣官房水循環政策本部事務局が行った地方公共団体 へのアンケートにおいて、12 地方公共団体(49 件)で外国人等によると思われる地下水採取の 事例について報告があった。主な目的としては、住宅や別荘での生活用水、リサイクル業の事 業場における使用や消雪用が挙げられた。

○また、地方公共団体への聞き取りにおいて、外国人等による地下水採取の懸念事例として、次 のような例が挙げられた。 ・地下水を活用する飲料製造工場を建設し海外に輸出したいという相談があったものの、その 後、地下水保全の条例が制定され、立ち消えになった。 ・外国資本が出資していると思われる法人が整備した観光施設において、無届での地下水採取 があり、条例に基づく基準に適合する形で事後的に届け出をさせた。 ・日本酒酒造会社が、外国の企業から海外向けのミネラルウォーターの生産を持ちかけられた ものの、設備投資の負担を求めたところ音信不通になった。

○さらに、 「外国人が水源池を買い占めて地下水を採取しているのではないか」、 「外国人が森林を 取得し、違法な開発を行っているのではないか」といった懸念に関して、林野庁が実施する「外 国法人等による森林取得に関する調査」において、令和6年(2024 年)に外国法人等により取 得された森林面積は 382 ヘクタールで、平成 18 年(2006 年)からの累計は 10,396 ヘクタール であった。外国法人等が取得した森林において、取水や地下水の採取を目的とした開発等の事 例はこれまで報告されていない。

○外国人等による地下水採取で地下水利用の障害や住民トラブルなど具体的な支障事例は確認さ れていないが、条例がない地方公共団体では外国人等による地下水採取の実態が十分把握でき ないことが課題である。

2.2 気候変動等による地下水涵養等への影響 ○山に降った雨や、河川から地下に浸透した水は地下水として流れ、その一部は湧水として地表

5 に湧出して再び河川に合流するなど、地表水と地下水が相互に影響し合いながら流動している。

○我が国においては、平野、台地、盆地に分布する第四紀(更新世・完新世)に堆積した未固結の 砂・礫層が主要な帯水層として各地に分布しており、都市域周辺を中心に水源として利用され ている。また、岩盤内や風化帯に存在する地下水も、山地や平野等において水源として利用さ れている。

○地下水の涵養、貯留、流動に影響を与える事象には、人為的な地下水の利用や土地利用の変化、 気候変動がある。

①人為的な地下水の利用による影響 ○経済活動等による地下水採取は、地下水位を低下させることがある一方、雨水貯留浸透施設等 により、地下水を涵養することが可能である。

○地表水と地下水は一体的に循環しているため、河川等の地表水周辺において強度の強い地下水 の採取を行うと地表水から地下水への涵養が誘発され、河川等の水位が低下するなどの影響が 現れることもある。

②土地利用の変化による影響 ○地下水を維持する上で、森林、農地、都市等における地下水の涵養機能の維持及び向上を図る ことが重要である。

○しかしながら、地下水の主な涵養域の1つである農地は、市街化の進展等により面積が減少傾 向である。

○特に、水田は地下水涵養にとって重要な役割を果たしている。そのため、かんがい期だけでな く冬場も水を張ることができれば、地下水の涵養量増加に寄与することが期待される。

○水源地域の山林は、地下水涵養において重要な役割を果たしているが、人工林の荒廃が水循環 に影響を及ぼすとする研究もある。また、山地における地下水流動の実態については、観測デ ータが少ないため特に不明な点が多い。

③気候変動による影響 ○気候変動の影響と考えられる地下水の涵養に影響を与えうる様々な事象が、すでに気象観測等 により確認されており、気候変動の影響に関する将来予測も示されている。

○具体的な例を挙げると、無降水日について、気象庁の全国 51 観測地点で、1901 年から 2024 年 の期間に観測された降水量のデータによると、100 年当たり 9.2 日増加している。

○雨の降り方については、短時間豪雨の発生回数や降雨量が増加し将来的に降雨強度が極端に大 きな降雨イベントが増え、表面流出の増加が試算されている。これらにより、一部地域におい て地下水涵養量が減少することを示す報告もある。

6 ○渇水については、気候変動の影響によって雨の少ない年や渇水の発生頻度が増加するという解 析結果が報告されている。

○降雪については、気象庁の日本海側の観測地点で年最深積雪や日降雪量 20 ㎝以上の年間日数の 減少傾向が確認されており、将来予測においても、年最深積雪や年降雪量が減少するという解 析結果が報告されている。

○今後の水資源賦存量については、気候変動による降雨量の変化はほとんどないものの、年蒸発 散量の増加により、年間水資源賦存量が減少するという解析結果が報告されている。

○気候変動による地下水への影響を予測・評価した研究結果では、局所的な降雨・降雪の変化や 地形条件等により地下水位が上昇する地域と低下する地域が、いずれも生じることを示す解析 結果が一部地域で報告されている。

○海面水位の上昇については、日本沿岸の海水面が上昇傾向であることが観測されており、島嶼 部の一部では海面上昇による地下水の塩水化が確認されている。気候変動の影響により、今後 も平均海面水位が上昇していくという予想結果があり、沿岸部や河川河口部で地下水の塩水化 のリスクが高まる可能性がある。

○気候変動により高温化するほど、火災の発生しやすい気象条件が世界の一部地域で増加するこ とが示唆されている。大規模山林火災により、土壌の撥水性が強くなり、豪雨時には、雨水が 浸透せず表面流出が増加し、また、火災による植生変化で立木が失われ、雪の吹きとばしや蒸 発、昇華が増加し、地下水涵養量が減少することが指摘されている。

○以上のことから、気候変動の影響で全体として年間水資源賦存量が減少傾向になるという研究 成果があり、それに伴い、地下水涵養量が減少する地域が多くなることが見込まれる。また、 場の条件によって地下水位が上昇する地域と、低下する地域がいずれも生じることが予測され ている。そのため、島嶼部や沿岸部・河川河口部における地下水の塩水化や山林火災等の状況 も注視する必要がある。

2.3 地下水採取による障害の状況 ○過去に深刻な地盤沈下等が発生した、濃尾平野、筑後・佐賀平野、関東平野北部の3地域では、 地盤沈下防止等対策要綱が決定され、地下水の過剰採取の規制や代替水源の確保等の総合的な 対策を実施してきた結果、地下水位は回復し、地盤沈下は概ね沈静化しているものの、一部地 域では沈下が継続している。

○また、法律・要綱の規制がかかっていない地域においては、大規模な地下水採取により地盤沈 下や著しい地下水位の低下等の地下水障害が発生している地域もある。例えば、千葉県の一部 地域、上越地域等において、緩やかな地盤沈下の傾向が継続している。また濃尾平野や愛媛県 の沿岸域では、地下水位の低下により海水が地下に浸入する塩水化が引き続き発生している。

○さらに、平成6年(1994 年)の渇水時には、地下水採取量が急増したことで、筑後・佐賀平野

7 等で年間 10~15cm 程度の大きな地盤沈下が発生している。また同年には関東平野の北部におい ても広範囲に地盤沈下が発生している。

○一方で、地下水採取の規制等で地下水位が回復した地域では、地下構造物の浮き上がりなどの 新たな障害も発生している。

○地下水の利用については、地下水障害が発生しないように留意し、適正な利用を維持していく ことが重要である。地下水障害を引き起こさない範囲でどの程度の地下水の有効利用が可能な のか、科学的なデータの整備、解析や地下水シミュレーション等を用いた検証が必要である。

2.4 現行の法律・条例による地下水規制の状況 ○現行の法律については、先述のとおり工業用水法やビル用水法が地下水採取による地盤沈下の 防止を目的に昭和 30 年代に制定されているが、対象地域については地盤沈下が現に発生してい る地域に限定されるとともに、規制対象の用途も限定されている。

○また、法律による規制のほかに、地盤沈下が特に著しい地域については地域の実情に応じて、 地盤沈下等の地下水障害の防止や地下水の保全を図るため、地方公共団体が条例で地下水採取 の規制を実施している。26 都府県において 28 条例、236 市区町村において 241 条例が制定され ており、これらの条例により規制対象となっている市区町村は 714 市区町村(全国の市区町村 の4割)であり、全国的な地下水利用の実態把握に課題がある。また、近年条例の新規制定数 は減少の傾向にある。

○地方公共団体へのアンケート等により確認された条例による地下水採取規制の課題としては、 以下が挙げられる。 ・地下水採取規制の対象や方法については地方公共団体により異なる。 ・地下水の採取量の報告を義務付けしていない地方公共団体が半数を占め、採取量を把握する 仕組みが未整備である。 ・条例制定前から使用されている既存井戸を規制対象としない地方公共団体があり、既存利用 の実態把握に課題がある。 ・6割の地方公共団体が地下水位の定期観測を行っておらず、地下水の収支を推計している地 方公共団体は1割に満たない。 ・周辺地方公共団体と比べて厳しい強い規制を課すのは、産業振興の観点から不利となること が懸念される。 ・統一的なルールを必要としている地域と、ほとんど必要性を感じていない地域と、ばらつき がある。 ・一部の地方公共団体においては、担当職員の確保、地下水に関する技術や知見の不足、観測 データの取得コスト等が課題である。

○地盤沈下等の地下水障害は一度起こると回復に多大な時間や労力が必要となることから、規制 も含めた予防的対策が重要である。

8 ○また、把握した地下水位の状況を可視化して公表したことで、地域住民の不安解消につながっ た事例があり、地域住民の意識啓発にも有効である。

○地下水については、水量だけでなく、水質の確保の観点も重要である。地下水の水質保全につ いては、水質汚濁防止法等において既に規制の枠組みが整備されており、引き続きこれらの措 置を継続していくことが必要である。

2.5 地下水流動の把握技術の開発 ○これまで、地下水の流動の把握が困難であったが、近年、地下水流動の研究や解析が進められ、 地下水の動きを解析し、視覚的に表現する手法として、多様なアプローチから地下水シミュレ ーション等の技術開発が進められている。

○国においては、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「災害時や危機的渇水時におけ る非常時地下水利用システムの開発」の中で、地下水の涵養、貯留、流動等の把握に三次元水 循環解析モデルを活用し、有効性・実用性を確認している。

○一部の地下水採取規制を行っている地方公共団体においても、地下水流動の把握や許可等の運 用に地下水シミュレーション等が用いられているが、さらなる普及には課題が残る。限られた データしか得られない地域等においても、地下水流動に関する基本的な把握が可能になるよう な手法の開発も課題である。

○地下水涵養、流動、利用の実態に関する科学的データは未だ十分とは言えず、これらに関する 科学的データの収集に関し不断の努力が必要である。

○加えて、地下水のデータの理解や解釈、活用ができる人材の育成も必要である。

9 3.地下水の実態把握や適正な保全と利用のあり方

3.1 地下水を取り巻く現状と課題の基本認識 ○過剰な地下水採取による地盤沈下が顕著であった地域における対策は着実に進められてきたが、 全国的には依然として地盤沈下等の地下水障害が発生している地域もある。そのような中で、 半導体工場等の進出による大規模な地下水需要の高まりや、気候変動により地下水涵養量が減 少する地域の増加や、海面上昇に伴う沿岸域地下水の塩水化リスクなど、需給バランスに影響 を及ぼす恐れが生じている。

○一方で、地下水の保全等を図るために地下水採取を規制する条例の制定は一部の地方公共団体 であり、地下水依存率が高い地域を含め、規制の空白地域が存在している。こうした地域では、 外国人等による採取を含め地下水利用の実態把握が不十分である。また規制がある地域でも地 方公共団体間で規制内容に差がある。

○近年、地下水に関する涵養、流動、流出及び採取やそれによる地盤沈下等への影響を一体的に 解析し、視覚的に表現する地下水シミュレーション等が開発され、国の実証研究において、有 効性・実用性も確認されている。こうした、地下水シミュレーション等の活用により科学的デ ータに基づく地下水の適正な保全と利用が可能となっている。

3.2 地下水の実態把握及び適正な保全と利用に向けた対応策 ○地下水の採取については、他の地下水利用等への支障が顕在化した後に対応すると原状回復に 多大な時間と労力を要する。このため、前述の地下水を取り巻く現状と課題を踏まえ、持続可 能な地下水利用を確保する観点から、行政庁が、地下水の採取行為を把握し、他の地下水利用 等への支障を確認できるようにし、支障を及ぼすおそれがある場合等に是正等を求めることが できる仕組みを早急に構築すべきである。

○具体的には、全国一律で、行政庁が、他の地下水利用等に影響を与えうる一定規模以上の地下 水採取行為について、その内容(国籍を含む実施主体の情報、位置、用途、採取量等)を把握す るとともに、地下水採取を行う者が実施する揚水試験の結果等を基に、採取箇所周辺の地下水 利用等への影響を確認し、支障を及ぼすおそれがある場合には、是正を求めることができるよ うにすべきである。また、採取後においても、採取箇所及びその周辺において地下水位等の基 礎データを継続的に取得し、地下水採取行為が、当該地域における地下水位変動に著しい影響 を及ぼさないよう慎重に監視するべきである。

○また、地下水採取の状況等を踏まえ、地下水の需給がひっ迫し、地下水利用等に支障を及ぼす おそれがある地域がある場合には、そのような地域を指定した上で、行政庁が、より規模の小 さい地下水採取行為についても把握するべきである。また、地下水採取を行う者が実施する揚 水試験の結果や地下水位観測に加え、詳細な地下水シミュレーション等を活用して当地域の地 下水利用可能量※を算出し、他の地下水利用等に影響がなく、その採取量が地下水利用可能量 の範囲内に収まるように調整できるようにすべきである。 ※地下水利用可能量は、地下水涵養量を基本とし、地下水採取に伴う水循環への影響にも配慮し ながら算出することが必要である。この際、他の地下水利用等への支障や生態系への深刻な影

10 響を及ぼさないよう、持続可能な地下水利用に努める必要がある。加えて、地下水涵養量の評 価には、当該地域の降水量、蒸発散量、地下水位等の基礎データに加え、既存の水利用や質的 な情報も活用し、複数の手法により検証することが必要である。

○こうした地下水管理の仕組みについては、これまで地方公共団体がその中心的役割を担ってき た。一方で、地下水が地方公共団体の行政区域をまたがり流動している場合があること、地下 水の採取が周辺に及ぼす影響把握手法等の技術開発を国が進めてきたこと、必ずしもすべての 地方公共団体が地下水の適正な保全を行うために必要な知見や体制を有しているわけではない こと等を踏まえ、国と地方公共団体の役割分担や連携のあり方を整理した上で、今後、具体的 な仕組みのあり方について法制度を含め検討すべきである。

○これらの仕組みを適切に運用するためには、科学的根拠となるデータの蓄積が重要であり、地 下水位の異常な低下等を早期に検知できるよう、地下水位の定点観測を継続的に実施すべきで ある。なお、国の観測井だけでなく、地方公共団体や民間企業等の保有する井戸による地下水 位の観測情報についても活用していくことが望ましい。さらに状況によっては、水質の観測も 併用することが望ましい。

○また、把握した全国の地下水位や採取量等の地下水情報については、エビデンスに基づく政策 立案や国土管理につながるよう共通のプラットフォームによりデータベース化し、地下水に関 する地域の不安払拭のために、公開することも必要である。

○限られたデータしか得られない地域等においては、データ整備状況に応じた地下水シミュレー ション等の技術開発と普及啓発も必要である。

○持続可能な地下水利用のためには、涵養の取組も重要であることから、地下水の採取者や協力 者による水田涵養や森林整備への協力、雨水貯留浸透施設の整備などの冬期を含む年間を通じ た多様な地下水涵養に資する取組を進めることが望ましい。

○災害時の代替水源の確保については、地方公共団体における災害用井戸の把握・登録や平時か らの地下水の利用等の取組を進めることが望ましい。また、災害時の地下水利用について平時 に検討しておくことが望ましい。

○一方で、地下水採取の規制等で地下水位が回復した地域では、地下構造物の浮き上がりなどの 新たな課題や、地下水の利用促進を求める地域のニーズも生じている。このため、科学的根拠 に基づく地下水の適正な保全と利用の両立について、地下水障害の再発防止、地下水資源の持 続可能性や地域の合意形成に十分留意しつつ、検討を進めていくことが必要である。

○上記取組のほか、地下水の適正な保全と利用を考える上で、水利用の合理化、節水、普及啓発 等の取組を進めることや、地下水を共有する地方公共団体間の連携を図ることが望ましい。ま た、地域における地下水保全の取組を後押しするため、先進的な地下水保全の取組や行政、市 民、大学、企業、NPO 等の様々な主体の連携、データ活用等に関する好事例を収集整理して、地 域と共有していくことが望ましい。

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FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:行政発表