株式会社三菱総合研究所(以下、MRI)は、農林水産省が構築したeMAFF申請(農林水産省共通申請サービス)およびeMAFF地図(農林水産省地理情報共通管理システム)を題材に、日本の農業行政データ活用の現状と課題を整理し、今後の方向性について提言します。
1. 背景 食糧安全保障の重要性が高まる一方で、農業現場では担い手の減少・高齢化が進み、自治体や関係機関における農政担当職員の減少も深刻化しています。また、農業に関わる行政手続きには紙や手作業によるものが依然として多く、農業者と自治体・関係機関職員の双方にとって、大きな負担となっています。 こうした課題を受け、農林水産省は各種申請手続きをオンライン化したeMAFF申請や、農地情報をデジタル地図上で閲覧・検索可能とするeMAFF地図の整備を進めてきました。 しかし、特にeMAFF申請では、約3,300の手続きをオンライン化したものの利用は伸び悩み、2023年度には申請1件あたりの執行額が64,520円に達するなど、費用対効果の課題が顕在化しています。政府の行政事業レビュー(2024年度)でも改善を求められており、抜本的な見直しが必要です。 このような状況を踏まえ、MRIは2024年発表の「食料安全保障の長期ビジョン」で提言した「農業経営のデジタルデータ整備・DX化」の具体策の一環として、eMAFF申請・eMAFF地図の課題を整理・分析し、eMAFF再編の方向性と今後あるべきデータ活用の姿を検証しました。
2. 本提言の概要 2025年に公表された「食料・農業・農村基本計画」では、eMAFF申請2.0への再編やAI-OCR活用などの改善方針が改めて示されました。これらは、現行システムの課題を踏まえた現実的な見直しとして、農政DX再構築の第一歩と評価できます。 一方で、eMAFF申請の利用が低迷している本質的な要因は、「既存の業務手続き・システムを残したまま、eMAFF申請という新しいシステムを導入したこと」にあると、MRIは考えています。MRIが農業委員会、農業再生協議会、農業共済組合などに対して実施したヒアリング調査でも、各地域で最適化された既存システムを前提とする業務フローが維持されており、農家・自治体双方にとってeMAFF申請を利用するメリットが乏しい実態が確認されました。 新たなeMAFF構想に向けては、単なる手続きのオンライン化やコスト削減にとどまらず、行政手続きを通じて収集されるデータ(農業行政データ)を、現場の生産性向上や施策の効果検証、政策立案につなげる基盤として再設計し、利用メリットを明確に打ち出すことが不可欠です。特に、eMAFF地図を基盤として各種台帳データを統合し、地域計画の高度化や農地集約の実効性向上にとつなげることが重要です。 そこで、本提言では以下の3つを同時に実現する「三方よし」の方向性を提示します。 ・地方自治体の地域計画・農地集約 ・経営体の生産性向上 ・国の行政コスト削減・EBPM(エビデンスに基づく政策立案)
3. 今後に向けて eMAFF申請2.0実装後の普及促進と「三方よし」の実現に向けては、全国一律での導入ではなく、まずは限定地域、特定申請を対象とした自治体主導の導入実証から段階的に進めることが現実的です。基礎自治体主導のもと国、県、関係団体、ベンダーが連携することで、eMAFF地図を基盤に地域計画の見直し、農地集約の合意形成の促進も期待されます。 なお、その際には、各種申請を支援する地域デジタル人材の配置、統合データ管理基盤の整備、BIツールや生成AIも活用したEBPM基盤の構築を一体で進めることが重要です。 MRIは今後、自治体・農業関係団体・企業との共創を通じて、地域実証の設計・効果検証、データ・EBPM基盤の策定を支援し、農政DXを「申請する仕組み」から「地域の将来を動かす仕組み」へ進化させていきます。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR TIMES
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