最近、OpenAIやAnthropicが相次いでIPO計画を開始し、市場評価は兆ドル規模に達しようとしている。これは投資家がAI産業に対して非常に楽観的な見方をしていることを示している。しかし、騰訊研究院の上級経済顧問である孫明春氏とビジネスアナリティクスマネージャーの程琬清氏は、収益の急成長が直ちに利益に結びつくわけではないと警告している。現在の大規模モデル産業は「収益はあるが利益がない」という経済的パラドックスに陥っているという。

「独占競争」構造が価格支配力を制限

ミクロ経済学の観点から分析すると、大規模モデルAPI市場は現在、「独占競争」という特徴を示しており、外部から見ると予想されるような完全独占や寡占状態ではない。確かに研究開発コストは非常に高いが、投資資金が豊富に流入しており、オープンソースモデルの普及(学習コストの低下)や人材の流動性が高いため、市場参入の障壁はそれほど高くない。

統計によると、世界中で500以上の機関が大規模モデルの開発に参加しており、OpenRouterプラットフォームだけでも70社以上から400種類以上のモデルが提供されている。

このような市場構造下では、各ベンダーは安定した価格設定権を持てない。AIゲートウェイと呼ばれるモデル統合プラットフォームの登場により、ユーザーの切り替えコストや探索コストがさらに低下しており、ユーザーは「コストパフォーマンス」に対して極めて敏感になっている。性能が類似していても、価格が少しでも安いモデルが登場すれば、トラフィックは瞬時にそちらに移行する。その結果、ベンダーは超過利潤を維持することが難しくなっている。

高コストと運営上のプレッシャー

業界のリーダー格であっても、厳しい財務的プレッシャーに直面している。たとえばOpenAIの場合、2025年には年間収益が200億ドルを突破すると予想されているが、内部資料では2026年にも140億ドルの赤字が見込まれている。Anthropicも営業利益は伸びているものの、高額な株式報酬費用や継続的な技術開発投資を考慮すると、純利益は依然としてマイナスの可能性が高い。

技術の進化スピードが非常に速いため、多くの企業が第一世代のモデルの開発コストを回収する前に、すでに次世代モデルの開発に巨額の投資を始めなければならない。このため、長期にわたり赤字経営が続く構造になっている。

「トークン販売」から差別化された「護城河」へ

騰訊研究院は、単純に「トークンを売る」というビジネスモデルでは、長期的な収益化は困難だと指摘している。将来的には市場が「寡占」に移行する可能性もあるが、仮に寡占化しても、価格競争が数量競争に代わらず続く限り、初期の巨額な研究開発投資を回収するのは難しいだろう。

このジレンマを打破するためには、大規模モデルベンダーは差別化された防衛ライン(護城河)を築く必要がある。研究では、以下の戦略が有効だと提言している。

「AI+」モデル:AI機能を既存の製品やサービスに組み込み、顧客の囲い込みを強化するとともに、既存ビジネスの価値を高める。

契約型カスタマイズ:企業の独自データや業務プロセスに深く連携し、乗り換えコストを高めることで、より強い価格支配力を得る。

エコシステム構築:業界特化、企業の業務フロー、アプリケーションエコシステムにおいて競争優位を築き、ユーザーの価格感度を低下させる。

まとめると、騰訊研究院は、大規模モデルの技術的価値は疑いようがないものの、モデルの性能以外に護城河を築けなければ、激しい市場競争の中で持続可能性の課題に直面するだろうと結論づけている。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:調査
  • 関連組織:OpenAI / Anthropic / OpenRouter
  • 製品・サービス:大規模言語モデル / APIサービス