2026 年世界人工知能大会 (WAIC) が上海で盛大に開催され、史上最大規模のAIイベントとして500社以上の出展企業が集結した。これは、AI産業が「前半戦」の単なる大規模モデルによるパラメータ競争から、「後半戦」のAIエージェントの商業的実装と具身知能の実践的応用へと正式に移行したことを象徴している。
「AI機能」から「ネイティブシステム」へ
今回の大会で最も顕著なトレンドは、AIエージェントがハードウェアとソフトウェアを貫くコアテーマとなったことである。エンドデバイスにおいては、AIスマホが「後半戦」に突入し、従来のスマホにAI機能を追加する形から、「ネイティブAIエージェントスマホ」へと進化した。荣耀(ホノア)、階躍星辰(ステップ・セレステ)、中興努比亞(ZTE ヌビア)はいずれも、AIエージェントOSを搭載した新モデルを発表し、「スマホ自身がタスクを完遂する」というコンセプトを強調している。これにより、複数のアプリを横断して長期的かつ複雑なタスクを実行できるようになり、たとえば自動で注文代行や複数の予約処理を一括で行えるようになった。
さらに、AIメガネやAIイヤホンも軽量化と特定機能への特化が進んでいる。例えば、訊飛(iFlytek)の翻訳メガネやアリババの通義千問(Qwen)が提供するAIエージェントイヤホンは、個人の記憶支援やリアルタイムコミュニケーションの場面にAIを融合させている。企業向けでは、AIエージェントは「AI同僚」や「AI従業員」として位置づけられ、単なる文書処理支援にとどまらず、意思決定プロセスや業務フローの再設計にまで深く関与している。
多点数智(Dmall)の副社長・張宇氏は、小売業界が「ソフトウェアの提供」から「結果の提供」への飛躍を遂げていると指摘する。同社が独自開発した「D-BRAIN(ディーブレイン)」というスマート小売中枢AIを活用し、AIエージェント群を統括的にスケジューリングすることで、商品選定、価格設定、サプライチェーンの実行までの一連のプロセスを効率的に閉じたループで実現しているという。
ロボットが「本格稼働」する元年
具身知能(Embodied AI)の展示規模は今年、前年比で倍増し、208種類の具身知能エンドデバイスが登場した。過去の見せ物的なデモとは異なり、2026年はロボットが実際に「本格的に働く」元年と位置づけられている。ロボットはすでに薬局、レストラン、ホテル、小売店で「勤務」を開始しており、仕分け、梱包、調理、さらには中医マッサージまでをも実行している。
技術的進化としては、具身知能が「整機―大脳―巧みな手―データ」の四つの要素が連動する構造を形成している。特に「巧みな手(デクスタラスハンド)」は、触覚センシングと精密操作能力が飛躍的に向上し、絵画や針に糸を通すといった繊細な作業も可能になっている。一方、データ収集は具身知能における「石油戦争」と化しており、各メーカーがデータ工場を構築し、実機による実訓練習とシミュレーションデータを活用してラベリング不足の課題を解決しようとしている。
「計算力販売」から「Token工場」へ
インフラ層では、計算力の計測基準に根本的な変革が生じ、「FLOPS」に代わって「Token」が新たな決済単位として定着した。AI企業は次々と「Token工場」や「Tokenショップ」へと転換し、「1元(人民元)あたり、1ワットあたり、どれだけの有効Tokenを生み出せるか」という極致のコストパフォーマンスを競っている。
同時に、国産化のストーリーが主流を占め、多くの企業が基板と整機の100%国産化を強調している。華為(ファーウェイ)、アリババ、中興(ZTE)などの大手企業は「超ノード」製品を次々と発表し、システムレベルの革新によって単一チップの性能差を補完している。なかには「10万カード規模のAIスーパークラスタ」が登場し、3兆パラメータ級の大規模モデルの開発と推論を支える基盤となっている。
AIネイティブ組織の台頭
中国メディア『智東西』の総括によれば、今年のWAICはAI産業全体の覚醒を示している。大規模モデルはもはや単なる質問応答ツールではなく、AIエージェントと具身知能を通じて組織の生産性を根本から変革している。専門家は、今後12〜24か月のうちに「AIネイティブ組織」が概念から現実へと移行し、人間とAIの共生が日常となると予測している。このAIが猛烈な勢いで進化する時代において、「検証可能な成果を出せるかどうか」が、AIの価値を評価する新たな基準となっている。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:イベント
- 製品・サービス:D-BRAIN