『The Information』の報道によると、Alphabet傘下のGoogleは、「Frozen v2」というコードネームの次世代AIサーバーチップの開発を進めています。このチップは、Gemini大規模言語モデルの基本アーキテクチャをシリコンに直接固定することで、AI推論の効率を高めることを目的としています。このニュースが報じられた後、Alphabet(GOOGL-US)の株価は月曜日の取引で一時約3%上昇し、市場がAIインフラへの継続的な投資を評価していることが示されました。

報道によれば、Frozen v2の最大の特徴は、Geminiモデルの一部のアーキテクチャをソフトウェアではなく、チップのハードウェアに直接書き込む点です。現在広く使われているGPUやGoogleの自社製TPUといった汎用AIチップと比較して、この新しい設計は汎用性の一部を犠牲にすることで、より高い推論効率と低いエネルギー消費を実現します。

関係者によると、Googleの内部試算では、Frozen v2の単位消費電力あたりのトークン処理量は、現行最新のTPUと比べて6~10倍に達する見込みです。これは、モデル実行時の論理判断やデータ転送のプロセスを大幅に削減し、一部の演算処理をハードウェアで直接行えるためです。

現在のAIチップ、例えばNVIDIAのGPUやGoogleのTPUは、汎用アーキテクチャを採用しており、さまざまな大規模言語モデルをサポートできます。しかし、推論を実行するたびに、大量のデータ転送と演算をリアルタイムで行う必要があります。一方、Frozen v2は高度にカスタマイズされた設計で、Geminiの一部の基本アーキテクチャをチップに永久的にエッチングすることで、「柔軟性を下げ、効率を上げる」ことを主な目的としています。

このプロジェクトの背後にある重要な要因は、Googleが直面している深刻なAI処理能力の不足です。報道によれば、内部のGPUやTPUリソースが逼迫しており、Google Cloudの一部顧客サービスにも影響が出ているといいます。これにより、外部の協業案件を断らざるを得ない状況にまで至っています。

報道はまた、Googleが先月、SpaceXに対して毎月約10億ドルを支払い、xAIが提供するAI処理能力を獲得することで合意したと伝えています。これは、自社のインフラ不足を補うための措置であり、AI推論需要の急速な成長が、大手テック企業の計算リソースに大きな圧力をかけていることを示しています。

実際、Frozen計画は初めて提唱されたわけではありません。初期バージョンはGoogle DeepMindのチーフサイエンティストであるJeff Dean氏が主導し、完全なモデルの重みをチップに焼き込む計画でした。しかし、これではGeminiのバージョンが更新された際にハードウェアが無効になってしまうため、最終的に凍結されました。

新しいFrozen v2は「柔軟な固定化(elastic hardening)」戦略を採用しており、モデルの重みではなく、アーキテクチャのみを固定します。これにより、後から重みを更新することでGeminiを進化させることができ、高い推論効率を維持しつつ、チップの寿命を延ばすことが可能になります。

Googleは現在、Frozen v2をTPU製品ラインの外にある新しい技術の分岐として位置づけており、TPUの代替品とは見なしていません。当面は大規模な量産を計画しておらず、生産能力はTPUよりはるかに低く、むしろ将来の高度に専用化されたAIチップ技術の実証プラットフォームとしての役割を重視しています。

ただし、Frozen v2には明確なリスクもあります。チップ設計がGeminiの現行アーキテクチャに強く依存しているため、将来的にGeminiの基本構造が大幅に変更されると、ハードウェアが互換性を失い、「量産前にすでに陳腐化」という事態も起こり得ます。そのため、GoogleはGeminiのアーキテクチャが長期間にわたって維持されるとの賭けをしていると見られています。

業界全体を見渡すと、AI推論チップは各テック企業が競い合う新たな戦場となっています。カナダの新興企業Taalasも、Frozen v2と同様の戦略を採用し、モデルのロジックをハードウェア化しており、すでに2億ドル以上の資金調達を完了しています。

また、SambaNova、d-Matrix、OpenAI、Microsoft(MSFT-US)なども、AI推論チップの開発に積極的に取り組んでおり、エネルギー効率の向上と推論コストの削減を目指して、NVIDIAのGPUがAI市場で持つ主導的地位に挑戦しています。

一方、NVIDIAも自らの戦略を強化し続けています。報道によれば、同社は2025年12月に、AI推論チップ企業Groqの技術ライセンスを200億ドルで取得したといいます。これは、世界的なAIチップ競争が、学習用の計算能力から推論効率へと徐々にシフトしていることを示しています。

市場関係者によれば、大規模言語モデルが商業的展開段階に入りつつある中で、AI産業の競争の焦点は、モデルの学習能力から、より低コスト・低消費電力で大規模な推論を実現できるかどうかへと移行しています。もしFrozen v2が内部試算通りに6~10倍の効率向上を実現できれば、AI推論のコスト構造を変える可能性があり、Googleがモデル、チップ、クラウドサービスまでを垂直統合する優位性をさらに強化するでしょう。

ただし、アナリストは、Frozen v2が実際に展開されるのは2028年ごろが最速であり、現時点では開発段階にあり、チップの製造、テスト、量産までにはまだ長い検証プロセスが必要だと指摘しています。また、Googleは当面大規模な量産を計画しておらず、短期的には収益やコスト構造への実際の貢献は限定的です。6~10倍の効率向上も、現時点では開発チームの内部試算に過ぎず、実際の製品で検証されていません。

したがって、市場は今回のニュースによるAlphabet株価の上昇を、Frozen v2がすぐに収益力を変える実質的価値があると見ているわけではなく、むしろGoogleがAI革新に継続的に投資する姿勢への期待の表れと捉えているのです。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:新製品
  • 関連組織:Alphabet / Google / NVIDIA
  • 製品・サービス:Frozen v2 / Gemini