アメリカ 7 月製造業活動は、4年以上ぶりの最速ペースで拡大した。新規受注、生産、雇用が同時に改善しており、人工知能(AI)、半導体、国防関連の需要が工場景気を支えていることが明らかになった。一方で、別の調査では成長が停滞しており、中東の軍事衝突や関税、サプライチェーンの遅延によるコスト上昇が、製造業の回復に大きな分断をもたらしていることも浮き彫りになった。
アメリカ供給管理協会(ISM)は8月3日、7月の製造業景気指数が6月の53.3から55.6へと上昇したと発表した。これは市場予想の54.0を上回る数値であり、2022年5月以来の最高値である。指数は7か月連続で景気拡張域(50以上)を維持している。
7月のISM製造業指数の内訳(50が景気の荣枯線):
- 新規受注指数:56.7(前月56.0) - 生産指数:58.5(前月52.2) - 雇用指数:52.8(前月49.7) - サプライヤー納期指数:58.9(前月57.4) - 在庫指数:51.2(前月51.4) - 顧客在庫指数:40.7(前月42.3) - 価格指数:71.1(前月73.0) - 未処理受注指数:55.0(前月50.5) - 輸出受注指数:53.0(前月48.5) - 原材料輸入指数:55.7(前月52.9)
生産指数は58.5と、2021年末以来の高水準に達し、新規受注指数も56.7と需要の堅調さを示している。雇用指数は49.7から52.8へと急反発し、2022年8月以来の高値を記録。製造業者が人材を増員したのは2023年9月以来初めてのことである。
アメリカの製造業はGDPの約9.4%を占めており、今年は消費者需要の粘り強さ、企業投資、国防支出、そしてAIインフラ投資の活発化によって支えられている。また、関税や米イラン紛争による価格上昇・品不足を避けるため、企業が早期に調達を進めていることも背景にある。
7月には化学工業以外のほぼすべての製造業セクターが成長を遂げており、特に印刷、衣料品、電気機器の業績が目立っている。輸出受注指数は2022年3月以来の高水準に達し、原材料の輸入指数も2021年6月以来の最高値を記録した。
しかし、明るいデータとは対照的に、S&Pグローバルが発表した7月の米製造業PMIは53.9と、前月と変わらず3か月ぶりの低水準にとどまっており、ISMの「4年半ぶり高値」との間に明らかな乖離が生じている。
企業からの回答内容からは、「一つの産業、二つの世界」という構図が浮かび上がる。AI、半導体、電子機器、機械業界では、データセンター、チップ、国防関連の需要が強く推移している。一方で、金属、運送、化学、消費財関連の業界は、需要の低迷、関税コストの上昇、地政学的リスク、価格混乱などの圧力を受けており、回復が遅れている。
つまり、AIサプライチェーンは活況を呈しているが、他の製造業はその恩恵を十分に受けていない。S&Pグローバルのチーフビジネスエコノミストであるウィリアムソン氏は、「全体のPMIは安定しているが、詳細を見ると、今後の成長力が弱まっているという警告信号がある」と指摘している。
7月の生産拡大スピードは明らかに鈍化しており、新規受注の伸びも3か月連続で減速している。その理由の一つは、第2四半期にかけて企業が大量の予防的在庫を積み増した結果、在庫補充の勢いが弱まってきたことにある。輸出の減少、供給の遅延、消費者の高価格への抵抗も、成長を抑制する要因となっている。
中東の軍事衝突は、製造業のサプライチェーンにさらなる負担をかけている。ISMのサプライヤー納期指数は57.4から58.9へと上昇しており、50を超えることは納期の遅れを意味する。原材料や部品の入手に時間がかかっていることを示している。納期の遅れは通常、需要の高まりとも関連するが、今回は戦争による供給制約も重なっている。
ISMの原材料価格指数は、6月の73.0から71.1へと低下し、5か月ぶりの安値となったが、年初と比べれば依然として高い水準にある。これにより、工場側のインフレ圧力は依然として強い。関税や中東情勢が石油関連製品のコストを押し上げており、企業は利益を守るために価格を引き上げるか、生産性向上でコストを吸収している。
S&Pグローバルの調査によれば、製造業のビジネス信頼感は2023年10月以来の低水準にまで落ち込んでおり、企業の短期的な見通しに対する慎重姿勢がうかがえる。在庫は5四半期連続で減少しており、まだ補充余地はあるものの、製造業が高速成長を続けるかどうかは、AI需要が他の産業にも波及するかどうかにかかっている。
連邦準備制度(FRB)は先週、金利を3.50%~3.75%の範囲で据え置いたが、3人の当局者が0.25%の利上げを主張した。中東情勢や関税がインフレリスクを上方に押し上げる中、製造業の需要の高まりとコストの高止まりは、FRBの政策判断をさらに難しくする要因となるだろう。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:調査
- 関連組織:ISM / S&P Global
- 製品・サービス:AIインフラ