壱、前言
我が国の『新住民基本法』は民国113年8月12日に公布された。『新住民基本法』の公布からほぼ2年が経過しようとしているが、前回の寄稿(参照:林麗蟬の視点:新住民基本法の実践と施行)でも述べた通り、行政院が同法の施行日を定めていないため、法の実効性が確保されていない。この状況は、新住民事務に従事する専門の公務員の採用や任用にも大きな影響を与えている。これは多くの市民や行政機関が注目する重要な課題であり、各機関における法の実施効果にも大きく関わっている。
弐、公務員の採用と任用
「事は人による」という言葉がある。適切で公正な基準による人材選考が行われなければ、『新住民基本法』の実践は再びスローガンにとどまってしまう可能性がある。したがって、新住民の権利促進を推進するには、適切な「人」が政策を実行し、意思決定を行う必要がある。
公務員の採用と任用に関しては、『公務員任用法』第2条に「公務員の任用は、専門性、適材適所の原則に基づき、初任と昇任を重視し、人材と職務の適切なマッチングを図ること」と規定されている。つまり、公務員の採用には専門性、適材性、適所性が求められる。また、行政機関における公務員の職務内容や必要な資格は、『公務員任用法』第6条に基づき、各機関の組織法規によって定められる。
「同じ新住民の身分を持つ者が担当すべきだ」「外国語が話せる者が私たちとコミュニケーションできるので、この職務に適しているはずだ」という声が広がっており、専門人材に求められる身分、知識、スキルについての議論が活発化している。いずれにせよ、この議論は中央省庁がこの問題に真剣に向き合うべきであることを示している。
参、台湾が「移民国家」であるという現実を直視する
「移民国家」という言葉は、米国第35代大統領ジョン・F・ケネディが1958年に著した『移民の国』(A Nation of Immigrants)に由来する。この書籍では、「移民こそが米国の建国の基盤である」とし、移民の受入れを呼びかけている。これは単なる法的スローガンではなく、歴史的、経済的、社会的、文化的な視点から多様性を包摂し、新たな文化を生み出す実践的な理念である。
台湾に目を向けると、歴史的にも多民族が移り住み、統治し、定住してきた島国である。現代のグローバル化の影響により、さらに多くの国籍を持つ人々が生活、就職、就学のために来台し、定住している。内政部移民署の2026年5月時点の統計によると、台湾の新住民の数はすでに62万人を超え、総人口の約2.6%を占めている。これはもはや「移民国家」と呼ぶにふさわしい状況である。
21世紀の人権重視の時代において、前世紀の米国大統領の主張と比較すれば、台湾政府は自国が「移民国家」であるという現実を真剣に認識すべきである。
肆、新住民事務専門の公務員制度が実現できない理由
上述の通り、台湾はすでに「移民国家」である。しかし、新住民事務に従事する専門の公務員に関する採用・任用制度が明確に定められていない。
前述の『公務員任用法』によれば、公務員の採用・任用は専門性、適材適所の原則に基づき、各機関の組織法規によって職務内容と資格要件が定められる。『内政部新住民発展署組織法』は民国114年12月10日に公布され、115年3月10日に施行された。しかし、いまだに『新住民発展署編制表』が制定されておらず、専門の公務員の採用制度や政策も存在しない。さらに、新住民の権利の根幹をなす『新住民基本法』が公布から2年近く経過しても施行日が定められていないため、専門職員の制度整備が進んでいない。
伍、結語
政府が『新住民基本法』の施行日を定めず、主管機関の編制を明確にせず、専門の公務員制度を策定しない限り、新住民政策の統合的な計画、研究、諮問、調整、推進は困難である。新住民の権利保障も実現できないだろう。
*著者は元立法委員。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
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