7月30日、サーバー大手の廣達が市場に大きな衝撃を与えた。同社は海外存託憑証(GDS)を発行し、最大21.64億ドル(約703億円)の巨額増資を行うと発表したのだ。これは過去20年間で台湾最大級の株式発行案件の一つである。

しかし、市場の反応は芳しくなかった。発表前の午前中から廣達の株価は急落し、一時はストップ安にまで落ち込んだ。終値は279元(前日比9.8%以上下落)となり、年間高値を大きく割り込み、4か月ぶりの安値を記録した。

この動きは、台湾のAI関連企業が抱える根本的な課題を象徴している。「売上はどんどん伸びているのに、利益がなかなか上がらない」という“賣愈多、賺愈薄”(売れば売るほど、もうかるどころか薄利に)という構造である。ハードウェア製造というビジネスモデルの限界が、ここに来て鮮明になっているのである。

廣達は、NVIDIAやMicrosoftといったグローバルIT企業向けに、AI訓練用の高性能サーバーを多数開発・製造している。AIブームに乗って受注は急増しており、2023年にはAI関連の受注高が前年比で3倍近くに達したとも報じられている。しかし、その一方で、競争相手との価格競争が激化しており、単価の下落や部品調達コストの上昇が利益を圧迫している。

つまり、いくら受注が増えても、それをそのまま利益に結びつけることが難しいのが現状なのだ。今回の増資は、AI需要のさらなる拡大を見据えた設備投資や研究開発のためとされているが、市場は「本当にこれで収益構造が改善できるのか?」という疑問を呈しているのである。

投資家たちは、単なる規模拡大ではなく、本質的な収益力の強化を求めている。例えば、より高付加価値なソリューションの提供、ソフトウェアとの融合、あるいは自社ブランドの展開などが求められるだろう。そうでなければ、AIという巨大な波に乗っていても、その恩恵を十分に享受できない企業になってしまう可能性がある。

廣達のケースは、台湾の多くのハードウェアメーカーにとっての教訓となっている。技術力や生産能力は世界トップレベルでも、ビジネスモデルの革新がなければ、持続可能な成長は難しいということだ。今後は「どれだけ作れるか」ではなく、「どれだけ価値を創出できるか」が問われる時代に入っているのである。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:資金調達
  • 製品・サービス:AIサーバー / クラウドインフラ