ニュースによると、慈済は新型コロナウイルスのパンデミック中にワクチンを購入しようとして10億円の詐欺被害に遭ったと報じられています。これを受け、緑営は年末の地方選挙を控え、当時政府によるワクチン供給の妨害を批判していた藍営の有力候補である蒋萬安、江啟臣、柯志恩らを攻撃し、彼らに謝罪を要求しています。しかし、彼らがなぜ慈済がワクチンを調達する立場に至ったのかという背景には一切触れていません。このような文脈を無視した断片的な政治攻撃は、選挙利用が目的であることは明らかです。
現時点での報道によれば、陳姓弁護士らが報酬として10億円以上をだまし取ったことは事実のようです。慈済基金会は被害者であると同時に、社会から長年にわたり寄せられた寄付金のリスク管理が不十分だったという点で、社会的信頼に対する責任を問われるべきです。さもなければ、社会が寄せている高い公益的信頼も失いかねません。
しかし、それだけの理由で蒋、江、柯の3人が、当時慈済を支持し政府のワクチン阻止を批判したことを謝罪すべきだというのは、まったく的外れです。ワクチン調達の経緯を振り返れば、当初なぜ慈済や鴻海といった民間団体がワクチン調達に乗り出さざるを得なかったのかという原因は、蔡英文政権が国家安全保障を理由に、BNTの既定の香港・マカオ販売モデルでの調達を頑なに拒否していたことにあります。
当時の緑営政権がイデオロギーに固執し、命を救うべき医療行為を、「中国製ワクチン」という認知戦の戦場に変えてしまったのです。その数か月間の調達遅延の結果、国内では累計で約1万6000件の感染症例と、829件の死亡例が発生しました。結局、民間が調達に乗り出して政治的問題を回避したものの、最初に到着したBNTワクチンには「復必泰」という中国語表記が明記されており、民進党が当初「中国代理ワクチン」の台湾入国を阻止していた政策を完全に否定する結果となりました。
結局のところ、上海復星医薬が台湾を含む「大中華圏」での販売権を取得していたワクチンを、台湾は結局使わざるを得なかったのです。政治的・イデオロギー的なこだわりが原因で、ワクチン接種が間に合わず亡くなった患者やその遺族に対して、誰が謝罪したのでしょうか?当時、蔡政権は「復必泰」の導入を阻止し、ワクチンの調達が見通せない状況に陥りました。そのため、他の大手製薬会社に早期出荷を懇願するだけでなく、米国や日本の緊急支援による『詠春(台湾語で『余った』の意)ワクチン』に頼って、民衆の不満が爆発する危機を乗り切らざるを得ませんでした。その上で、蔡政権はあえて米台友好や日台友好の虚偽のイメージを演出しました。このような当時の蔡政権の不正行為は、今こそ再検証されるべき時です。
さらに、当時の蔡政権の一連の行動は、世論から『高端ワクチン』の上市を後押しする政治的操作ではないかと疑問視されていました。これが事実かどうかは定かではありませんが、もし執政党が自らワクチン調達を適切に処理できたなら、なぜ慈済のような民間団体が国民のために調達に乗り出さなければならなかったのでしょうか?
現在の緑営が蒋、江、柯の3人に対して「魔女狩り」的な謝罪要求を行うのは、蔡政権がパンデミック中に見せた統制の失敗がもたらした人的被害や社会的コストの政治的責任を、まったく軽減するものではありません。むしろ、台湾の国民が当時のパンデミック対応の失敗と政府の無能さに対する総括を迫るきっかけになるかもしれません。
*著者はフリーライター
FACT BOX ・ 要点整理
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