家樂福、全聯、Costcoや大型スーパーに入ると、誰もが一度は見たことがある光景があります。買い物カートを引き出すと、ハンドル近くの金属製の板を下にひっくり返すだけで、子どもが座れる小さな座席が現れます。 子ども連れでない人は、そのまま壁面に収納された状態にしておくことが多いでしょう。 しかしよく考えてみると、とても興味深い疑問が浮かびます。そもそも買い物カートは商品を運ぶための道具です。それなのに、なぜあえて小さな椅子をわざわざ設ける必要があるのでしょうか? そして、なぜ必ず「折りたたみ式」にしなければならないのでしょうか? 実は、この一見些細に見える小座椅には、想像以上に実用的な目的が隠されています。 1961年に認可されたあるアメリカの買い物カート特許では、この構造を明確に「seat or shelf」と表現しています。つまり「座席または棚」です。特許書類にはさらに、子どもが座る以外にも、展開して小さな台として使うことができると記されています。特に、サイズが小さく、壊れやすく、他の商品と一緒に積みたくない物品を置くのに適していると説明されています。 要するに、買い物カートの前面にあるこの折り畳み式の板は、初期の設計段階から二つの課題を同時に解決するために存在していたのです。一つは、子ども連れの買い物客が安心して買い物ができるようにすること。もう一つは、誰も座らないときには、壊れやすい商品を守るための独立したスペースとして活用することです。 最初の現代的買い物カートには、実は今の形の子ども用座椅はなかった 別の視点からこの小座椅の起源を理解するには、1930年代まで遡る必要があります。 当時、アメリカのオクラホマ州でスーパーマーケットを経営していたシルバン・N・ゴールドマン(Sylvan N. Goldman)はある現実的な問題に直面していました。 自動販売形式のスーパーマーケットが広まりつつあったものの、顧客は依然として手提げの買い物籠を使っていました。この籠が重くなると、顧客はそれ以上商品を取ることをやめてしまいます。 消費者にとっては「重くて持てない」というだけの話ですが、店舗側から見れば、これは大きな損失です。つまり、本来ならもっと買いたかったはずの顧客が、買い物籠の重さゆえに早期に会計に向かってしまうのです。 この問題を解決するために、ゴールドマンはフレッド・W・ヤング(Fred W. Young)と協力し、折りたたみ椅子のような金属フレームに買い物籠を取り付け、その下に車輪をつけた装置を開発しました。これが初期の現代的買い物カートです。1937年、ゴールドマンの経営するスーパーで、このようなカートが実際に導入されました。 オクラホマ歴史学会の資料によれば、ゴールドマンは現代のスーパー買い物カートの発展において重要な人物とされています。 ただし、当時の買い物カートは、今日私たちが知っているものとは大きく異なっていました。 当初の設計の主な目的は、重い買い物籠を持ち歩かなくて済むようにすることにありました。 つまり、私たちが今当たり前のように見かける子ども用座椅は、その後徐々に加えられてきた機能だったのです。 初期の買い物カート用子ども座椅は、実は後から取り付けるタイプだった 1940年代後半になると、ゴールドマンは別の現実的な課題に向き合うことになります。それは、「赤ちゃんや幼児を連れて買い物に来た親たちが、子どもをどこに置けばいいのか?」という問題です。 1949年5月、ゴールドマンは「Baby seat for store carts(店舗用カートのベビーシート)」という名称の特許を出願し、1950年に特許を取得しました。 この初期の設計は、現在のようにカート本体に一体化された折りたたみ式の小座椅とは少し異なります。むしろ、買い物カートに後から取り付けることができる金属製の子ども用座椅に近いものです。 特許図面を見ると、座椅は買い物カートのハンドル付近に設置されており、子どもが座ったときに大人の方を向くようになっています。足は前方の開口部から外に出し、前滑り防止の構造も備えています。 この配置は、今日多くの伝統的な買い物カートと非常に似ています。つまり、子どもはハンドル側に座り、大人の正面を向いて座る形です。こうすることで、押す大人が常に子どもを見ることができ、安心して買い物ができます。 なぜ後に「折りたたみ式」に統一されたのか?鍵は「一台ずつ入れられる」構造にあった 現代の買い物カートの形を作り上げたもう一つの重要な進化は、「買い物カートを一台ずつ入れられる(ネスティング)」構造の登場です。 1946年、発明家オラ・E・ワトソン(Orla E. Watson)が、 telescoping shopping cart(伸縮式ショッピングカート)を発明しました。 その最大の特徴は、カートの後部が上に跳ね上がる構造になっており、後ろのカートを前のカートの中に押し込むことができる点です。 一見すると些細な変更に思えますが、スーパーマーケットにとっては非常に重要な意味を持ちます。 例えば、100台の買い物カートをすべて並べて保管しようとすれば、店舗の入り口や駐車場の一角に広いスペースを確保する必要があります。 しかし、カートを一台ずつ入れられるようにすれば、保管に必要なスペースを大幅に削減できます。 問題はここから生じます。もし子ども用座椅が常にカート内に突き出していたら、他のカートがうまく入らないかもしれません。また、買い物中の商品スペースを圧迫してしまう可能性もあります。 そのため、1950年代になると、買い物カートの子ども座椅はさまざまな折りたたみ式の設計が登場します。 たとえば、フレッド・W・ヤングは1954年に「Collapsing seat for nesting carriers(収納式キャリア用折りたたみ座椅)」の特許を出願しました。その後、ゴールドマン自身も「Folding baby seats for telescoping carts(伸縮式カート用折りたたみベビーシート)」といった関連設計の特許を取得しています。 これらの設計の背後にある論理は明確です。子どもがいるときは座れる場所が必要。いないときは、座椅を収納して買い物スペースを無駄にせず、カート同士の連結も妨げないこと。 今日私たちが当たり前に使っている「下にひっくり返して座る」「使わないときは折りたたむ」という動作は、まさにこのニーズの進化によって生まれたのです。 座椅を使わないときは折りたたむことで、もっと多くのものを積める この設計には、もう一つの利点があります。 1961年の特許書類には、座椅または棚が使われていないときは、折りたたんで収納することで、買い物籠の容量をできるだけ元に戻せると記されています。同時に、カート同士の連結機能も維持されます。 つまり、この一見シンプルな小座椅は、実際には複数の条件を同時に満たさなければならない高度な機械構造なのです。 子どもがいるときは、子ども用の座椅として機能する。 子どもがいないときは、収納して買い物スペースを圧迫しない。 必要に応じて、壊れやすい商品を置くための独立した台として使える。 店舗外にカートを回収するときも、他のカートとスムーズに連結できる。 これは単なる椅子ではなく、「座椅」「置物棚」「収納空間」という三つの役割を切り替えることができるメカニカル構造なのです。 一台の買い物カートには、約100年にわたるスーパーの進化が凝縮されている 今日、スーパーに入ってゆっくりと買い物カートを押しながら歩くのは、ごく自然な行為です。しかし、1937年に買い物カートが初めて登場した当時、一部の消費者はむしろ拒否反応を示しました。 HISTORYがまとめた資料によれば、ゴールドマンが買い物カートを導入した当初、男性の一部は「自分には買い物籠を持てる力がある」と考えて使おうとせず、女性の一部は「赤ちゃん用车(ベビーカー)を押しているようで恥ずかしい」と感じたそうです。 消費者にこの新しい道具を受け入れてもらうために、ゴールドマンは実際に店内にスタッフを配置して、買い物カートの使い方をデモンストレーションさせました。その様子を見て他の顧客も真似するようになり、やがて買い物カートは広く普及していきました。 それから数十年を経て、買い物カートは今日の形にまで進化しました。 最初は「買い物籠が重い」という問題を解決するために始まり、 次に「一台ずつ入れられる」構造で店舗の省スペース化を実現し、 その後、子ども連れの親のために子ども用座椅が追加され、 座椅はさらに折りたたみ式に進化して、買い物容量を犠牲にしない設計になり、 さらには、この折り畳み板自体が「壊れやすい商品を守るための独立した台」として設計されるに至りました。 だから次に、スーパーで買い物カートの前面にある折りたたみ式小座椅を見かけたら、子どもがいないからといって、すぐに「使えない」と思う必要はありません。 少なくとも1961年の初期特許を見る限り、この板は決して「ただ座るためだけ」のものではありません。 必要に応じて、衝撃や圧迫から商品を守るための、小さな独立スペースとして活用できるのです。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:ニュース
- 関連組織:Costco
- 製品・サービス:ショッピングカート / 折りたたみ式子供座椅