19歳のとき、アメリカンフットボールの試合中の事故で首を骨折し、医師から「二度と歩けない」と宣告された青年がいる。その弟を支えるため、兄は会社を辞め理学療法士の道を選んだ。この実話を原点に「失った悲しみから始まる幸せな人生」というメッセージを社会に届けているのが、神戸学院大学心理学部客員教員の心理学者・中村珍晴(37)と理学療法士の兄・珍輔である。

中村氏は2026年2月28日に名古屋で開催された全国セミナーコンテストで優勝し、日本一に輝いた。コンテストでは自身の体験と心理学研究をもとに、喪失体験のあとに人はどのように人生を描き直すことができるのかを語った。今回、その発表内容をもとに、2026年7月4日(土)にビジョンセンター東京虎ノ門にて講演会を開催する。

アメフトの事故で人生が一変、兄がとった決断 中村氏は19歳の時、天理大学アメリカンフットボール部の試合中に相手選手と接触し首を骨折、頸髄を損傷し首から下が動かなくなった。医師から「二度と歩くことはできない」と告げられ絶望する中、兄が「仕事を辞めて理学療法士になる。お前の力になりたい」と伝えた。その言葉が、中村氏が前を向く大きなきっかけとなった。

その後、約2年半のリハビリを経て車椅子で大学に復学。アメリカンフットボール部にコーチとして復帰し、新たな人生を歩み始めた。

喪失体験から人生を描き直す心理学 自身の経験から「人は大きな喪失のあとにどうしたら前を向くことができるのか」という問いを持ち、大阪体育大学大学院で心理学を研究。「心的外傷後成長(Post-Traumatic Growth)」をテーマとした。

心的外傷後成長とは、困難な出来事を経験した後に価値観や人間関係などに新たな変化が生まれる心理的プロセスを指す。中村氏は、喪失からの回復は人との関係性の中で新たな自己を再構築していく過程であるという視点に注目し研究を進めている。

車椅子の心理学者としての活動 現在、中村氏はセミナーやワークショップを開催し、喪失体験をした人が心を整え前に進む支援を行っている。また、YouTubeチャンネル「スイスイプロジェクト」は登録者数10万人、総再生回数約4500万回に達する。さらにNHK Eテレの福祉番組「toi-toi」の制作にも初期から関わり、レギュラー出演者も務めている。

FACT BOX ・ 要点整理

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