概要

公益財団法人サントリー生命科学財団(SUNBOR)を中心に、富山大学、東北大学、基礎生物学研究所、サントリーグローバルイノベーションセンター㈱からなる共同研究グループは、ゴマが発芽時に主要なリグナン成分であるセサミンを大規模に別の化合物へ変換する仕組みを明らかにしました。

研究グループは、発芽時に特異的に働く新規シトクロムP450(CYP)酵素群「CYP706V12–V14」を発見しました。これらの酵素群と糖転移酵素(UGT)群が協調して働くことで、脂溶性リグナンであるセサミン類が、水溶性リグナン配糖体へ段階的に変換されることを明らかにしました。

さらに、ゴマ種子では登熟期と発芽期で異なる酵素群を使い分けることで、発達段階に応じて代謝ネットワークを柔軟に切り替えていることが明らかになりました。本成果は、植物が発達段階に応じて代謝システムを動的に組み替える仕組みを示すものであり、植物特化代謝進化の理解に新たな視点を与えるとともに、機能性成分を高含有するゴマ品種開発への応用も期待されます。

本研究成果は米国科学アカデミー紀要『Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(PNAS)』に掲載されました。

【本研究のポイント】

- ゴマ発芽時に働く新規セサミン酸化酵素群「CYP706V12–V14」を発見 - CYP酵素群と糖転移酵素(UGT)群が協調し、水溶性リグナン配糖体を形成する仕組みを解明 - 登熟期と発芽期で異なる酵素群を使い分けることで、代謝ネットワークが動的に再構成されることを発見

研究の背景

ゴマ種子には、セサミンなどの脂溶性リグナンが豊富に含まれています。研究グループはこれまでに、種子登熟期に働くセサミン酸化酵素「CYP92B14」を世界に先駆けて同定するなど、登熟種子におけるリグナン生合成を明らかにしてきました。

一方、発芽時にはこれら脂溶性リグナンが急速に減少し、水溶性配糖体へ変換されることが知られていましたが、この代謝転換を担う酵素群や制御機構は明らかになっていませんでした。

研究成果

本研究では、代謝物解析や遺伝子発現解析、酵素機能解析を組み合わせることで、ゴマ発芽時に特異的に発現する新規セサミン酸化酵素群「CYP706V12–V14」と糖転移酵素(UGT)群を発見しました。CYP706V酵素群は、登熟種子で機能する既知酵素「CYP92B14」とは異なる代謝ネットワークを形成し、セサミン類を酸化することで発芽期特有の代謝を担っていることが明らかになりました。

さらに、UGT群がCYP酵素群による酸化反応と効率的に協調しながら段階的に糖を付加することで、多様な水溶性リグナン配糖体を形成していることを明らかにしました。

また、登熟期に特定の成分(セサミノール配糖体)を蓄積しないゴマ系統を調べたところ、「CYP706V12」という酵素が機能していないことが分かりました。このことから、「CYP706V12」が発芽期だけでなく登熟期にも重要な役割を果たしていることが分かりました。これにより、ゴマでは発達段階に応じて異なるCYP、および、UGT酵素の組み合わせを使い分けながら、代謝ネットワークを柔軟に再構成していることが示されました。これらの成果は、植物特化代謝が固定的なものではなく、発達段階に応じて動的に再編成されることを示すものです。

今後の展開

本成果は、植物特化代謝進化の理解に新たな視点を与えるとともに、機能性成分を高含有するゴマ品種開発への応用も期待されます。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:調査
  • 関連組織:サントリー生命科学財団 / サントリーグローバルイノベーションセンター
  • 製品・サービス:セサミン / リグナン配糖体