発表のポイント
術後癒着は、腹部・骨盤内手術後にみられる代表的な合併症の一つであり、腸閉塞や慢性疼痛、再手術時の手術難易度の上昇などにつながります。
主要指標 — KEY FIGURES
術後癒着を防止するため閉腹前に、切開部周辺に癒着防止材を散布しますが、従来型であるシート型やスプレー型の癒着防止材では、凹凸のある組織表面に薬剤が行き渡りにくいことが課題となっていました。
本試験では、粉末型癒着防止材SI-449を用い、直腸がんの開腹手術後にSI-449で処置を行ったグループと無処置のグループでの術後癒着の発生率や重症度等を全国53施設による多施設共同ランダム化比較試験で検証しました。
本試験の結果、無処置のグループでの癒着発生率が93%であるのに対し、SI-449で処置を行ったグループでは45%で、SI-449で処置を行うことにより術後癒着の発生率が約半分に低下し、さらに癒着の重症度や範囲も有意に抑制されることを確認しました。
本試験結果により、SI-449が腹部手術後の癒着抑制に有用である可能性が示され、今後、患者さんの身体的負担の軽減につながることが期待されます。
概要
国立研究開発法人国立がん研究センター(所在地:東京都中央区、理事長:間野 博行)中央病院(病院長:瀬戸 泰之)は、全国53施設による多施設共同ランダム化比較試験において、直腸がんの開腹手術の閉腹前に切開直下の組織表面へ、粉末型癒着防止材SI-449(以下、SI-449)を散布することにより、術後癒着の発生率、重症度および広がりが有意に抑制されることを確認しました。
術後癒着(手術後に臓器や組織が周囲の組織とくっつくこと)は、腹部や骨盤内の手術後に多く発生し、腸閉塞や慢性的な痛みの原因となるほか、再手術の際に癒着した組織をはがす必要が生じ、手術を難しくすることがあります。そのため一般的には、閉腹前に組織表面に癒着防止材を散布しますが、従来型であるシート型やスプレー型の癒着防止材では複雑な形状の部位への適用が難しいことが課題となっていました。
本試験では、粉末型の癒着防止材を用いて、直腸がんの開腹手術後、閉腹前にSI-449を散布するグループ(SI-449群)と処置を行わないグループ(無処置群)での、術後癒着の発生率と重症度および広がりを評価しました。その結果、癒着発生率は無処置群の93%に対し、SI-449群では45%で、SI-449群において術後癒着の発生率が有意に低下しました。また、癒着の重症度および広がりもSI-449群で有意に抑制されました。安全性については、本試験で確認された範囲では、SI-449と因果関係がある有害事象は認められませんでした。
本試験結果により、直腸がんの開腹手術において、閉腹直前にSI-449で処置を行うことで、術後癒着を抑制できる可能性が示されました。さらに、SI-449は凹凸のある組織表面や狭い部位にも散布しやすいという特徴を有しており、今回得られた知見を基盤として、今後、ロボット支援手術を含む腹腔鏡手術をはじめ、さまざまな手術への応用が期待されます。
なお、本研究成果は、外科学分野の国際医学誌「JAMA Surgery」に米国時間2026年8月26日付でオンライン掲載されました。
詳細を見る
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR TIMES
- 分類:press_release
- 関連組織:国立研究開発法人国立がん研究センター / 国立がん研究センター中央病院