2026年3月、株式会社GATARI(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:竹下俊一、以下「GATARI」)は、東京都「キングサーモンプロジェクト」の一環として、水害時に床上浸水の恐れがある葛飾区の高齢者福祉施設2施設で、Mixed Reality(MR)プラットフォーム「Auris(オーリス)」を用いた水害対策訓練を実施しました。

GATARIはこれまでも東京都都市整備局とともに、防災・液状化対策・建物の耐震を体験的に学ぶ「防災クエスト」を実施してきました。今回はこれまでの取り組みに続いて、床上浸水のシチュエーションを「Auris」で再現し、ロールプレイングを伴う「イマーシブアクティブラーニング」として水害対策訓練を設計・実施しました。

※イマーシブアクティブラーニング:デジタル技術を用いて、学習者が仮想空間の世界観に深く入り込み、身体を動かしながら主体的に学ぶ教育手法。

※Mixed Reality(MR、複合現実):現実の空間に、デジタルの情報を重ねて体験できる技術。

福祉施設の水害訓練が「机上確認」にとどまる構造的理由

居住型の高齢者福祉施設は、利用者にとっては生活の場であり、職員にとっては利用者の生活を支援する職場です。

浸水への初動対応と入居者対応を、限られた人数で同時に判断・実行しなければならない同施設では、以下2つの課題により福祉施設で実践的な水害訓練を行うことは困難でした。

図版課題1. 火災・地震と比較して、水害は災害時の状況イメージがしづらい

課題2. 机上で避難経路の確認に留まり、いざというときに動けるノウハウが蓄積されない

葛飾区のハザードマップによると、中川・綾瀬川圏域では少ない所で0.1m〜0.5m、多い所で3.0m〜5.0mの浸水が想定されています。つまり、浸水リスクが高い地域に立地する福祉施設ほど実践的な訓練が求められる一方、現場の構造的な制約が訓練を阻んでいる状況です。

同施設での水害対応は主に2段階で行うものとされており、GATARIは上記課題に対し第1段階目の「浸水への初動対応(設備・環境の保全)」にフォーカスした水害対策訓練を設計しました。

2つの連動が生む、固定されない訓練設計

今回の訓練では、福祉施設における水害訓練の2つの課題に対し以下の設計思想のもと制作しました。

・イメージしにくい水害に音でリアリティを与え、訓練者が「いま、どういう状況か」を音から判断できる環境の設計

・自らの行動がシナリオを前に進める設計による、知識を体で覚える一連のプロセスの確立

時間経過とともに強くなる雨音に加え、廊下を歩くたびに水をかき分ける足元の音がリアルタイムで変化する空間音を制作。いつもの施設の廊下を水害が起きている空間へと変貌させました。音が歩行・方向転換・しゃがむといった動作を促し、動作が訓練シナリオを進めるサイクルにより、訓練に対して主体性を持ちながら取り組むことができる設計となっています。

Aurisエディター画面:施設の空間に重ね合わされた音や音声Aurisがインストールされたスマートフォンのカメラが空間を把握

音と行動で見えてくる「守るべき場所」

実際の訓練では、第1段階目の「浸水への初動対応(設備・環境の保全)」に必要な、浸水経路・浸水対策・食料備品の確認などに取り組みました。 3名のグループごとにAurisの指示とリアルタイムで変化する音に従い、施設の1階・2階を実際に歩きながら実施。ワークシートも併用しながら気象状況の把握から浸水経路の確認、リーダーへの報告の一連の流れを行いました。

裏口の確認に向かう場面。 扉に近づくにつれ、Aurisから屋外の強い風が聞こえてくる。ある職員は扉を閉める動作を声に出して確認していました。いつもの廊下の奥にある裏口が、「守るべき場所」として見え始めた瞬間でした。

さらに印象的な場面として、トイレの逆流への対応が挙げられます。 水害時には下水が逆流し、便器から汚水があふれる可能性があり、それを防ぐために水嚢で蓋をする必要があります。職員がしゃがんだ瞬間に「下水が逆流している恐れがあります。もし逆流していたら、この袋に水を入れて水嚢(すいのう)を作り、蓋をしてください。...」といった、水嚢の扱い方を説明するナレーションが聞こえてきた際には「知らなかった」と口々に声が上がり、職員たちは実際に水嚢を手に取るようにしゃがみ込んで動作を確かめていました。マニュアルには記載されていた知識が、体を動かすことで初めて自分のものになった場面でした。

訓練後、職員同士の会話は自発的に次の課題に向かい、「リーダーを立てて指示系統を確立しなければ」「入居者の所在を確認してからでないと避難できない」「災害発生時にどの順番で何をするかを、日頃から意識しておく必要がある」——自分たちの施設の課題を自分たちの言葉で整理し始めた場面からも、Aurisによる訓練が水害のイメージの解像度を上げ、身体で覚えるノウハウの蓄積がうかがえました。

Aurisから聞こえてくる指示と音響を聞きながら、訓練に取り組む様子

訓練者の約8割が「恐怖感・臨場感を体験」、机上訓練では得られなかった心理的なリアリティと反復意欲

訓練後に実施した参加職員と施設担当者にアンケート・ヒアリングからは、訓練者の約8割が「恐怖感・臨場感を体験した」と回答し、複数名から「繰り返し体験したい」という声が上がりました。机上訓練では得られなかった2つの変化「水害の心理的なリアリティの獲得」と「反復への意欲」が確認されました。

図版水害のイメージ

訓練者の3/4が「恐怖感・臨場感を体験した」、うち半数が「本番に近い焦りを感じた」と回答。「イメージしにくい」とされてきた水害に対して、音と動作の連動が心理的なリアリティを生んだことがうかがえます。

ノウハウの蓄積

「初めての訓練のため、繰り返し体験したい」という声が複数上がりました。机上訓練では見られなかったこの反応は、反復意欲の獲得にとどまらず、繰り返すことで対応力が積み上がるサイクルの起点となり得ます。

訓練への参加意欲

施設の防災担当者からは「この取り組みにより職員たちの訓練への参加率が向上した」との報告がありました。訓練そのものへの関心を喚起するという、副次的な効果も確認されています。

「イマーシブアクティブラーニング」を学校・企業・行政機関へ

今回はグループ単位で実施しましたが、本訓練はAurisのアプリとイヤホンがあれば個々人での訓練が可能です。24時間稼働の施設でも、シフトの隙間に自分のタイミングで繰り返し訓練することができ、職員の入れ替わりにも対応できます。

また、この「イマーシブアクティブラーニング」は、福祉の現場に限らず、以下のような領域への展開が可能です。

小学校の教室で子どもたちが災害を体で学ぶ訓練

行政と連携した地域単位の防災プログラム

病院・商業施設・オフィスなど

訓練は指示をこなす作業から、身体が自然に動く経験へと変わる。 GATARIはこれからも、あらゆる現場の空間に音を重ね、身体が動く訓練を通じて防災対応力が積み上が

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:イベント
  • 製品・サービス:Auris(オーリス) / イマーシブアクティブラーニング