特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトは、2026年9月に実施した「ウクライナ平和教育プロジェクト2026」の活動中、首都キーウで出会った市民との交流から、音楽とダンスによる「PEACE LIVE」を行いました。
ウクライナ・キーウで行われたPEACE LIVE
主要指標 — KEY FIGURES
始まりは、予定されたイベントでも、用意されたステージでもありませんでした。キーウ市内を歩いていたなかよし学園一行に、一人の女性が声をかけました。彼女の名は、Oksana Lavryk氏。
誘われるままについて行った先にあったのは、キーウ郊外の地下に設けられたBARでした。そこで始まったのは、一人の人間が全身を使って「生きること」を表現するダンス。そしてそのダンスに応えるように、なかよし学園代表・中村雄一がギターを手に取り、なかよし学園校歌「LOVE OTHERS」を歌いました。
戦争が続く国で。
空襲警報が日常の中に存在する街で。
踊る人がいる。
歌う人がいる。
笑う人がいる。
人と人が出会う。
そこにあったのは、戦争について語るためにつくられたイベントではありませんでした。「私たちは生きている。」現在のウクライナにおいて、この地で生きる人々の熱い想いがこもり、この空間そのものが強烈なメッセージを放っていました。
熱いダンスを披露したOksana Lavryk氏
街で声をかけられ、たどり着いた地下BAR
2026年9月3日。なかよし学園代表の中村雄一、事務局長の中村里英は、ウクライナの現状を自分たちの目で学ぶため、キーウ市内を歩いていました。同日には独立広場を訪れ、戦没者の写真や名前が並ぶ追悼の空間を見学。現地の市民や若者から、戦争下での生活や未来への思いを直接聞いていました。
なかよし学園の2人は、街ゆくキーウ市民からたびたび声をかけられ「自分たちが何を感じながら暮らしているのかを聞いてほしい」と語りかけられるなど、戦争下における厳しい状況を痛感しました。
独立広場付近で出会った学生学生にもらった手作り新聞独立広場で戦没者に黙祷を捧げる国立軍事史博物館を訪問
そんな一日の夕方、街を歩いていた一行にOksana Lavryk氏が声をかけました。
「これからダンスをするから、見に来ない?」
そんな偶然の誘いから始まった交流でした。
中村雄一代表を案内するOksana Lavryk氏。キーウ市内にて
案内されたのは地下にあるBAR。店内には絵画や本、楽器、アンティークの家具などが並び、そこには単なる飲食店とは異なる、文化や表現を愛する人々の空間が広がっていました。
やがて音楽が始まり、Oksana氏がステージへ。なかよし学園一行は、その場で彼女のパフォーマンスを見ることになりました。ウクライナに来て突然声をかけられ、ダンスのステージを見学する。当初予定表にはなかった活動です。しかし、なかよし学園にとって、こうした偶然の出会いこそが世界の「今」を知る教室でもあります。
地下のBARで始まったダンスステージ
言葉ではなく、身体で語る。「生きている」というダンス
Oksana氏が披露したダンスは2部構成。身体全体を使った力強い表現が、地下の小さな空間を満たしました。
そこでは、言語の違いはほとんど意味を持ちません。
身体が動く。
手が伸びる。
表情が変わる。
音に合わせて、一人の人間が自分自身を表現する。
戦争について説明する言葉を並べなくても、その姿から伝わってくるものがありました。
ウクライナでは今も戦闘が続いています。国連人権監視団によると、2026年8月だけでも少なくとも372人の民間人が死亡し、2,349人が負傷しました。また同月、ミサイルや長距離ドローンなどの長距離兵器は民間人死傷者の47%を占め、その被害の多くが前線から離れた都市部で発生したとされています。
キーウも例外ではありません。空襲警報。爆発音。地下への避難。予定の変更。交通の混乱。
それらはニュースの中だけに存在するものではなく、市民の日常生活に入り込んでいます。国連も2026年9月、キーウを含む各地で攻撃が続き、学校、医療施設、住宅など市民生活への危険が継続していると報告しています。
ウクライナ人権ミッションレポート https://ukraine.ohchr.org/en/node/582
しかし、人間の生活は「戦争」だけではありません。
人は恋をする。子どもを学校へ送る。仕事へ行く。食事をする。友人と話す。そして、歌う。踊る。
Oksana氏のダンスは、そうした当たり前の「人間として生きる時間」が、戦争によってすべて消えてしまったわけではないことを伝えていました。
Oksana氏のダンスOksana氏のダンスOksana氏のダンス
ダンスへの返事は、日本からの歌だった
2部にわたるダンスが終わった後、中村雄一代表はギターを手に取り、ステージへ上がりました。現在このキーウには日本人はほとんどいません。日本人代表としてウクライナの人々に想いとエールを歌に込めました。披露したのは、なかよし学園の校歌「LOVE OTHERS」です。
このタイトルに込められたのは「他者を愛する気持ち」。
国籍も、言葉も、文化も違う人々が集まったキーウの地下空間で、この言葉が歌になりました。
そこにいた人々は、日本から来た中村の歌に耳を傾けました。ウクライナのダンスに、日本の歌で応える。演じる人と、見る人だけでもありません。自分の文化を表現した人に、自分の文化で返す。一方向ではなく、お互いが表現者になる時間でした。
中村雄一代表が歌ったなかよし学園校歌「Love Others」
それは小さなライブでした。けれど、その小さな空間には、平和という言葉が持つ本質の一つがありました。
相手を知ること。 相手の表現を受け取ること。 そして、自分も何かを返すこと。
こうして空襲警報がなるキーウの街の片隅で「PEACE LIVE」は行われました。
なかよし学園校歌「Love Others」
https://youtu.be/mPLwAC46iH8?si=FJeHEdKKLpJC0lyw
その翌日、約100メートル先にドローンが着弾
このライブが単なる「海外での楽しい文化交流」で終わらない理由があります。
翌9月4日。なかよし学園一行が引き続きキーウで活動していた最中、キーウ中心部のウクライナ保安庁(SBU)本部がロシアのドローン攻撃を受けました。
現地報道によると、9月4日午後にキーウで空襲警報が発令され、その後、市中心部で爆発が発生。少なくとも12人が負傷しました。
着弾直後の現場付近。辺りは騒然となった。
なかよし学園の活動記録では、中村雄一代表と中村里英事務局長は着弾地点から約100メートルの場所におり、爆発後、周囲には消防・救急車両が集まり、交通規制によってホテルへ戻る経路の確保も難しくなったと記録しています。
前日の夜、人々は踊っていました。歌っていました。そして翌日、その同じ街で爆発が起こりました。
この二つは、別々のウクライナではありません。どちらも、同じ場所。現在のキーウです。
戦争がある。
それでも、生活がある。
危険がある。
それでも、人間は表現する。
だからこそ、あの夜のダンスと歌には大きな意味がありました。
「私たちは生きている」
戦争のニュースでは、死者数、負傷者数、攻撃回数、占領地域、兵器の種類といった数字が伝えられます。それらは、状況を知るために欠かせない情報です。しかし、その数字だけでは見えにくいものがあります。
その街で今日も生活している人がいるということ。
笑う人がいる。
踊る人がいる。
子どもの手を引いて歩く家族がいる。
芸術をつくる人がいる。
友人と会う人がいる。
そして「明日」を考えている人がいる。
LIVE後インタビューに答える観客LIVE後インタビューに答える観客LIVE後インタビューに答えるOksana氏
今回、なかよし学園が見たのは、戦争だけではありませんでした。私たちが見たのは戦争の中でも、人間であり続けようとする人々の姿でした。PEACE LIVEで交わされたダンスと歌は、「かわいそうなウクライナ」を伝えるためのものではありません。そこに生きる人々自身が持っている力を伝えるものです。
私たちは生きている。 私たちは踊る。 私たちは歌う。 私たちは人と出会う。 そして、未来を諦めない。
その姿そのものが、この日のPEACE LIVEが世界へ届けたメッセージでした。
LIVE後、観客と演者が一体となった
学校だけが「教室」ではない――街全体から学ぶ、なかよし学園のウクライナ活動
なかよし学園の「ウクライナ平和教育プロジェクト2026」は、学校で授業を行うことだけを目的としていません。2026年9月2日から12日まで行われたウクライナの活動では、キーウとリビウを中心に、子ども、保護者、教員、退役軍人、博物館関係者、文化活動家、市民など、さまざまな人々と直接交流しました。
学校の地下シェルター。博物館。独立広場。街角。模型工房。市民の集う場所。そして地下BAR。
予定された授業だけではなく、そこで出会った人と話し、歌い、つくり、互いの文化を伝える。
なかよし学園が活動報告書の総括で掲げる、「どこでも いつでも 誰にでも 教育で平和をつくる」という考え方は、教室の外でも実践されました。
平和教育とは、「戦争はいけない」と教えることだけではありません。目の前にいる人を知ること。その人が何を大切にしているのかを知ること。違う文化を持つ人の表現を受け止めること。そして、自分自身も表現すること。キーウの地下BARで行われたPEACE LIVEは、まさにその実践でした。
中村雄一代表のギターと、トランペット奏者のセッションも実現した。
踊ることも、歌うことも、平和をつくる行動になる
アートだけで戦争を終わらせることはできません。歌だけでミサイルを止めることもできません。しかし戦争が、人間から笑顔や文化、つながり、未来を想像する力まで奪おうとするのなら、踊ること。歌うこと。人と出会うこと。誰かを愛すること。そして、自分の未来を語ること。それらを諦めないこともまた、人間が平和へ向かって行うことのできる一つの行動です。
キーウで出会ったダンス。日本から届けた「LOVE OTHERS」。そこにいた人々の笑顔。なかよし学園は、世界の片隅で平和をつくります。私たちがこの活動で証明したのは、ウクライナという国が「戦争が起きている遠い国」ではなく、今、この瞬間も私たちと同じように生き、笑い、悩み、愛し、未来をつくろうとしている人々が暮らす国だということ。
願う平和から、行動する平和へ。PEACE LIVEは、これからも世界の街角で、人と人との出会いから生まれていきます。
キーウで歴史のある樹木を説明するOksana氏空襲から逃れた大聖堂。人々は戦争の中を生きている。街のあちこちに戦没者のボードが設置されていた。
なかよし学園プロジェクト代表・中村雄一 コメント
「戦争の中にいる人たちは、毎日悲しい顔をして生きているわけではありません。笑うし、踊るし、歌うし、誰かを愛し、明日のことを考えています。
キーウでOksanaさんのダンスを見た時、僕が強く感じたのは『私たちは生きている』というメッセージでした。
その翌日、私たちのすぐ近くにドローンが着弾しました。キーウの楽しそうな人々を見ていると、戦争とは無縁な日常を感じていましたが、決してそんなことはない。ここは今、戦争をしている状況なんだ。改めて痛感しました。戦争が本当にすぐそばにある、と。
このPEACE LIVEの夜には同じ街で人々が踊り、音楽を楽しみ、初めて会った日本人の僕たちを仲間として迎えてくれた。僕も、彼女たちのダンスに歌で応えたいと思い、なかよし学園の校歌『LOVE OTHERS』を歌った。これが「戦争の中でも起こった現実」です。
平和は、戦争が終わった後に突然始まるものではないと僕は思いました。こんな時だからこそ、人を愛すること、表現すること、誰かと出会うこと、笑うこと。それをやめないこと自体が、平和をつくる行動になる。
僕たちはウクライナに『何かを与えに行った』のではありません。ここに来て、たくさんの人に出会い、たくさんのことを教えてもらいました。教室だけが学校じゃない。街も、人も、出会いも、すべてが学びになる。あの夜のキーウで僕が受け取った『私たちは生きている』というメッセージ、『日本の人たちに伝えてほしい』と受け取ったメッセージを、今度は日本の人々に伝えていきたいと思います。」
どんな状況下でも音楽を楽しむ中村雄一代表
【ウクライナ平和教育プロジェクト2026】
実施期間:2026年9月2日~12日 実施団体:特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト 参加者:代表 中村雄一/事務局長 中村里英
活動地域:キーウ、リビウほか
主な活動:平和教育、未来のまちづくり、文化交流、創造性教育、防災教育、環境教育、現地調査
本件に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト E-mail:peace.office@nakayoshigakuen.org
写真素材・取材対応が可能です。 掲載時の写真クレジット:©なかよし学園プロジェクト
FACT BOX ・ 要点整理
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