株式会社関電工(本社:東京都港区、代表取締役社長:田母神博文、東証プライム市場:1942、以下「関電工」)と株式会社Arent(本社:東京都港区、代表取締役社長:鴨林広軌、東証グロース市場:5254、以下「Arent」)は、電気設備設計業務の生産性向上と設計品質の標準化を目的に、電気設備自動設計システム「VOLDAR(ヴォルダー)」を共同開発し、このたび運用を開始しました。

VOLDARは、建築BIMモデルから取得した建物情報と、電気設備設計に必要な知見・法規・実績データを統合し、幹線設備の概算設計から基本設計における各種図面・計算書の自動生成を支援するシステムです。これまで熟練設計者の経験と判断に依存していた業務をデジタル化・標準化することで、設計プロセスの高速化と高品質化を実現します。開発にあたっては、電気設備設計の実務ノウハウを持つ関電工が設計知見を、BIMの自動化技術や自動ルーティング技術をはじめ建設DX分野で豊富な開発実績を有するArentがシステム実装を担いました。

主要指標 — KEY FIGURES

1942
東証プライム市場:1942
5254
東証グロース市場:5254
2~3週間
根拠図の作成に2~3週間を要していた
1時間
概算根拠図の作成を、約1時間で出力することが可能

本リリースのポイント

熟練設計者の設計ノウハウを計算ロジックとして実装: 幹線計画や経路選定の判断基準、積算根拠の組み立て方を、関電工が長年の施工実績のなかで培ってきた設計ノウハウをもとに数値化・体系化。複数の要素として重み付けし、BIM上で動く設計ロジックエンジンとして実装しました。

幹線根拠図の作成から概算算出までを一貫自動化: 3D幹線ルートの自動生成に加え、幹線設備平面図・系統図・単線結線図・各種リスト・技術計算書までをBIMデータと連動して自動作成。概算設計の精度と説明性の向上を支援します。

構想段階にとどまらず、実プロジェクトでの運用を開始: 多階層の幹線ルート生成やEPSの選択、計算書の自動出力を実案件で検証し、設計業務への適用可能性を確認。構想や実証段階ではなく、実務での運用開始まで踏み込みました。

開発の背景

建設業界では、担い手不足や技術継承が課題となるなか、生産性向上と品質確保の両立が求められています。電気設備設計では、設備容量の算定、幹線計画、各種図面の作成、法令基準の確認など、多くの業務が設計者の経験やノウハウに依存しており、品質のばらつきや作業負荷の増大、熟練設計者の技術・判断基準を次世代へ継承することが課題となっていました。

とりわけ電気設備工事費の概算業務では、基本設計前の段階で積算部署が概算金額を求められます。この時点では機器や配線の記載がない「白図」の状態で建築計画を受け取るため、設計部署に幹線設備の図面作成を依頼し、設計者が経験をもとに一から根拠図を作成していました。最初の概算金額がそのまま工事予算枠となるケースが多く、金額の精度が受注や利益に直結する極めて重要な業務です。しかし、担当者の経験した物件・経験年数によって算出根拠にばらつきが生じ、また根拠図の作成には2~3週間を要していました。ゼネコン・サブコンを問わず「仕組み化したいが手がつけられない」領域とされてきました。

関電工は、こうした課題の解決に向け、従来のBIM活用をさらに発展させ、3Dモデルだけでなく、単線結線図・系統図・技術計算書・機器仕様書などの情報を統合管理する独自の「電気BIM」構想を推進しています。しかし従来のBIM運用では、幹線情報が形状データ中心で、接続元・接続先の盤やケーブルの種類・長さといった情報、関連図面・計算書との連動が十分でないケースがありました。また、受変電設備からEPS(電気設備スペース)を経由して各盤に至る整合性のある3D経路の生成には、階ごとに異なるEPSの形状や地下ピット等の特殊な空間条件、複数幹線の集約など、建物固有の制約を考慮する必要があります。

両社は、これらの課題の根底にある「熟練設計者の判断プロセスが形式化されていない」という点に着目し、その形式知化と計算ロジックへの実装を開発の中心テーマに据えました。VOLDARは、関電工が推進する「電気BIM」構想を具現化する中核システムとして共同開発したものです。

VOLDARの主な機能(運用開始範囲)

VOLDARは、建築BIMモデルから取得した建物情報と設計条件を活用し、電気設備設計に必要な3D幹線ルート、各種図面および技術計算書の作成を支援します。現在運用を開始している主な機能は以下のとおりです。

幹線設備概算設計支援機能: 受注検討の初期段階において、限られた設計情報から根拠に基づく概算コストを算出するための機能です。両社が共同開発した幹線ルーティング技術を中核に、建築BIMモデルと設計条件をもとに、以下の図面・帳票を自動作成します。設備構成やルート情報に基づく算出根拠を付加することで、概算設計の精度と説明性の向上を支援します。これまで2~3週間を要していた概算根拠図の作成を、約1時間で出力することが可能になりました。

幹線設備平面図(配電盤・電灯盤・動力盤の自動配置、幹線ケーブル・ケーブルラックの自動ルーティング)

幹線設備系統図

単線結線図

配電盤表

分電盤・動力盤リスト

技術計算書(変圧器容量計算、幹線計算、ケーブルラック幅計算など)

電気設備基本設計支援機能: 法令上の要件、関電工の設計基準および過去の設計ノウハウをロジック化し、各種設備の配置案を自動生成する機能です。設計者が用途・負荷配置条件を設定することで、法令要件や設計ルールを踏まえた機器配置案を自動生成し、設計者の確認・調整を経て設計に反映します。現在対応している設備は次のとおりです。

非常照明設備

誘導灯設備

コンセント設備

放送設備

テレビ共聴設備

電話設備

情報通信(LAN)設備

VOLDARの主な特徴

熟練設計者の判断プロセスを数値化: 幹線ルートの経路の長さ、方向転換の回数や角度、部屋の機能との適合性、配置済み設備との整合性などを複数のコスト要素として数値化し、設計条件に応じて重み付け。部屋の用途や負荷条件を考慮した盤配置案と、建物の機能上の制約を踏まえた幹線経路を自動生成します。

BIMオブジェクトに属性情報を生成: 生成したルートは単なる図形データではなく、種別・仕様・接続情報などの属性を持つBIMの設備要素として構築。今後の実施設計・施工フェーズへのデータ受け渡しや、他設備との干渉チェックに活用できます。

受変電設備構成と技術計算書を連動して作成: 各盤の負荷容量から変圧器容量やバンク構成を自動選定し、受変電設備構成を単線結線図に反映。ルーティング結果と連動した幹線計算書をExcel形式で自動出力します。

避難経路を解析し、誘導灯の配置案を生成: 最終避難口を設定することで避難経路を自動解析し、消防法令上の要件を踏まえた器具配置案を生成します。

自動化と設計者による判断を両立: すべてをシステムのみで確定せず、設計者が生成結果を確認しながら経路やケーブルサイズを調整できる設計。変更内容は関連する計算書に反映され、効率化と個別プロジェクトに応じた設計判断を両立します。図面と計算書の整合性向上、入力・転記に伴うヒューマンエラーの低減にも寄与します。

開発成果

実プロジェクトのBIMモデルを用いて検証を行い、主に以下の成果を確認しました。熟練設計者によるレビューにおいても、実務への適用可能性が認められています。

盤の自動配置: 部屋名称・用途を検知し、配電盤・電灯盤・動力盤の配置を自動生成。

多階層の3D幹線ルート生成: 盤配置やEPS(縦ルート)を考慮し、受変電設備から負荷までの3D幹線ルートを、不要な防火区画壁の横断を抑えて自動生成。

幹線ルートの乱立を抑制: 各階の配置条件を踏まえてEPSの選択を評価し、ルートの過度な分散・乱立を抑制。

計算書の自動出力: 生成したルート情報と連動し、幹線計算書を自動出力。

機器容量の自動選定: 負荷容量から変圧器容量やバンク構成を自動選定し、設備構成の検討を支援。

単線結線図の自動作成: 受電方式や設備構成などの条件設定に基づき自動生成。

法規に基づく自動配置: 消防法令上の要件を踏まえ、避難経路や有効範囲などを考慮し、誘導灯等の配置を自動化。

一部の特殊な建物形状や例外条件では設計者による手動調整が必要となる場合もありますが、全体として設計工数の削減と、設計成果物の整合性向上が見込まれます。

今後の展望

両社は今後、単線結線図および幹線設備系統図の自動作成機能の高度化に加え、以下の機能開発を進めます。

発電機・UPS・直流電源装置の仕様検討支援

電気室機器配置図の自動生成

電源供給状態図の作成

分岐回路やバスダクトなど、特殊な幹線方式への対応

暗黙知の形式化、精度の向上、大規模・複雑な建物形状に対する処理性能の最適化

関電工は、今後2年以内を目途に、一般的な建築物における電気設備基本設計の大部分を自動化することを目指します。さらに将来的には、AIエージェントによる対話型の設計支援、過去プロジェクトの知見を活用したAIによる設計検証、電気設備施工BIMへのシームレスなデータ連携、積算システムとの自動連携などを検討。BIM操作に習熟していない技術者でも容易に利用できるブラウザベースのシステム開発も視野に、設計から施工・積算までをつなぐ電気設備DX基盤への発展を図ります。

研究開発成果の学会発表

本システムの開発成果の一部は、2025年度電気設備学会全国大会で発表しました。2026年度電気設備学会全国大会においても、その後の研究開発成果を以下のとおり発表を予定しています。

学会名:電気設備学会全国大会

会期:2026年9月3日(木)・4日(金)

発表タイトル:幹線の概算見積根拠図作成業務の自動化・効率化(1)・(2)

発表者:捧慎一、佐藤芳伸、榎本良太、白土知憲、西脇一真、西野雄大(株式会社関電工)/舟越功貴、山越将之、佐野龍太郎(株式会社Arent)

株式会社関電工について

株式会社関電工は、「人間第一」の理念のもと、電気設備・空調衛生設備・情報通信設備をはじめとする社会インフラの構築と維持を担う、日本有数の総合設備工事会社です。建築設備事業と社会インフラ事業を中核に、企画・設計から施工、保守・リニューアルまでをワンストップで提供しています。近年は、BIM、AI、IoTなどのデジタル技術を活用したDXを推進し、生産性向上と品質向上の両立に取り組んでいます。再生可能エネルギーや蓄電池、マイクログリッドなどの脱炭素ソリューションの提供に加え、電気設備設計の自動化や施工BIMの活用など、新たな技術開発を通じて持続可能な社会の実現に貢献しています。

会社名:株式会社関電工

所在地:東京都港区芝浦四丁目8番33号

代表者:代表取締役社長 田母神博文

設立:1944年9月1日

資本金:102億6,400万

証券コード:1942(東証プライム市場)

Webサイト:https://www.kandenko.co.jp/

株式会社Arentについて

株式会社Arentは、「暗黙知を民主化する」をミッションに、建設業界を中心としたDXを推進する企業です。クライアント企業とともに業務課題の解決に取り組む「DX事業」と、自社SaaSを展開する「プロダクト事業」の二軸で事業を展開しています。BIMを直感的に扱うためのRevit向けプラグイン「LightningBIM」シリーズをはじめ、建設業界の専門的な知見をソフトウェアとして実装し、業界が抱える構造的課題の解決に取り組んでいます。

会社名:株式会社Arent

所在地:東京都港区浜松町2-7-19 KDX浜松町ビル3階

代表者:代表取締役社長 鴨林広軌

設立:2012年7月2日

資本金:12億8,600万

証券コード:5254(東証グロース市場)

Webサイト:https://arent.co.jp/

<本件に関するお問い合わせ先 >

株式会社関電工 [email protected] / 050-3186-2920

株式会社Arent  [email protected] / 03-6228-3393

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:プレスリリース