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経済・物価情勢の展望 2026 年 7 月 本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合(引用は含まれません) は、予め日本銀行政策委員会室までご相談ください。
主要指標 — KEY FIGURES
引用・転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。 経済・物価情勢の展望(2026 年7月) 【基本的見解】 1 <概要>
⚫ 先行きのわが国経済を展望すると、2026 年度については、中東情勢の影響を受けた春 先以降の原油価格上昇が下押し要因となるものの、グローバルなAI関連需要の増加に 加え、政府による各種施策や緩和的な金融環境等が経済を下支えすると考えられるため、 わが国経済は、伸び率を縮小しつつも、緩やかな成長を続けるとみられる。2027 年度以 降は、原油高のマイナスの影響が減衰し、所得から支出への前向きな循環メカニズムが 徐々に強まっていくことから、わが国経済は成長率を緩やかに高めていくと考えられる。
⚫ 物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価 格に転嫁する動きが続くもとで、これまでの原油価格上昇が、エネルギーや財を中心に価 格を押し上げるほか、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇や最近 の為替円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026 年度後半以降、2%をはっ きりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される。その後、見通し期間後半には、 原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に向けてプラス幅を縮小していくと考えら れる。この間、人手不足感の強い状況が続くなかで、賃金と物価が相互に参照しながら緩 やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な予想物価上昇率は上昇していくと 見込まれる。こうしたもとで、消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まっていくと予 想され、2026 年度後半から 2027 年度にかけて「物価安定の目標」と概ね整合的な水準 となり、その後も同程度で推移すると考えられる。
⚫ 前回の見通しと比べると、成長率は概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前 年比は、政府による夏場のエネルギー負担緩和策(電気・ガス代)の効果等から、2026 年度が下振れている。
⚫ リスク要因としては様々なものがあるが、当面は、中東情勢が金融・為替市場やわが国 の経済・物価に及ぼす影響をとくに注視する必要がある。このほか、グローバルなAI 関連需要の動向や今後の為替相場の変動が、わが国の経済・物価に及ぼす影響にも留意 が必要である。
⚫ リスクバランスをみると、経済の見通しについては、概ねバランスしている。消費者物 価の見通しについては、上振れリスクの方が大きい。基調的な物価上昇率については、 企業の賃金・価格設定行動が積極化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き 続き上昇していることなどを踏まえると、2%の「物価安定の目標」を超えて上振れて いくリスクがある。こうしたリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼす ことがないよう、十分に留意する必要がある。
1 本基本的見解は、7月 30、31 日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定されたものである。
1 1.わが国の経済・物価の現状
わが国の景気は、中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられるが、 緩やかに回復している。海外経済は、一部に弱めの動きもみられるが、総じて みれば緩やかに成長している。輸出や鉱工業生産は、基調としては横ばい圏内 の動きを続けている。グローバルなAI関連需要の堅調な増加などを背景に、 企業収益は高水準で推移しており、業況感も良好な水準で推移している。こう したもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。個人消費は、家計マインド に弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移している。 一方、住宅投資は減少傾向にある。公共投資は横ばい圏内の動きを続けている。 この間、労働需給は、引き締まった状態が続いている。わが国の金融環境は、 緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をみ ると、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くなか、足もとでは、政府によ るエネルギー負担緩和策の効果などから、1%台半ばとなっている。予想物価 上昇率は、緩やかに上昇している。
2.わが国の経済・物価の中心的な見通し2
(1)経済の中心的な見通し
先行きのわが国経済を展望すると、2026 年度については、中東情勢の影響 を受けた春先以降の原油価格上昇が、交易条件の悪化などを通じて企業収益や 家計の実質所得に対する下押し要因となるものの、グローバルなAI関連需要 の増加や春季労使交渉におけるしっかりとした賃上げの実現に加えて、政府に よる各種施策(エネルギー負担緩和策等)や緩和的な金融環境などが経済を下 支えすると考えられる。こうしたもとで、わが国経済は、伸び率を縮小しつつ も、緩やかな成長を続けるとみられる。 すなわち、企業部門をみると、輸出や生産は、中東情勢の影響を受けつつも、 グローバルなAI関連需要の強さが押し上げ要因として作用することから、当 面は横ばい圏内の動きになると見込まれる。企業収益は、原油価格上昇に伴う
2 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また、先行きの政策運営については、 市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。なお、原油価格(ドバイ原油)に ついては、先物市場の動向などを参考に、1バレル 80 ドル程度を出発点に、見通し期間 の終盤にかけて、70 ドル程度まで下落していくと想定している。
2 交易条件悪化の影響を受けつつも、AI関連需要の強さなどを背景に高水準が 続くとみられる。そうしたもとで、設備投資は、既往案件の受注残を解消する 動きに加え、政府の経済対策や緩和的な金融環境が下支え要因として作用し、 緩やかな増加傾向が続くと考えられる。 家計部門をみると、雇用面では、労働需給は引き締まった状態が続き、名目 賃金は、本年の春季労使交渉の結果などを反映して現状程度の伸びが続くと見 込まれる。個人消費は、賃金の増加や株価上昇による資産効果に加えて、政府 による各種施策を通じた家計への所得移転が下支え要因となるものの、エネル ギーを中心とした物価上昇の影響から、横ばい圏内の動きになるとみられる。 住宅投資は、住宅価格の上昇や人口動態等を反映して、緩やかな減少傾向をた どるとみられる。この間、公共投資は横ばい圏内で推移し、政府消費は、医療・ 介護費の趨勢的な増加や防衛関連支出の増加などを反映し、緩やかに増加して いくと想定している。 2027 年度以降については、原油高のマイナスの影響が減衰し、所得から支 出への前向きな循環メカニズムが徐々に強まっていくことから、わが国経済は 成長率を緩やかに高めていくと考えられる。輸出や生産は、中東情勢の影響が 和らぎ、海外経済の緩やかな成長が続くなか、グローバルなAI関連需要の強 さなどにも支えられ、緩やかに増加していくと考えられる。企業収益は、原油 価格の下落に伴う交易条件の改善や内外需要の増加に支えられて、改善してい くとみられ、そうしたもとで、設備投資は、人手不足対応の省力化投資やAI 関連等の成長分野への能力増強投資に加え、貿易構造やサプライチェーンの変 容に適合するための投資案件なども押し上げ要因となり、増加傾向を維持する と考えられる。雇用・所得環境をみると、労働需給は引き締まった状況が続き、 名目賃金は着実な増加が続くとみられる。これに加え、物価の上昇ペースが 徐々に落ち着いていくと見込まれるなか、個人消費は、緩やかな増加基調に復 していくとみられる。 こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、見通し 期間を通じて概ね不変となっている。 この間、潜在成長率は、政府による各種の施策の後押しなどもあって、デジ タル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、資本ストックの着実な増加
3 などを背景に、小幅のプラスが続くとみられる3。
(2)物価の中心的な見通し
消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価格に転嫁する動 きが続くもとで、これまでの原油価格上昇が、エネルギーや財を中心に価格を 押し上げるほか、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇 や最近の為替円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026 年度後半 以降、2%をはっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される。そ の後、見通し期間後半には、原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に 向けてプラス幅を縮小していくと考えられる。 この間、人手不足感の強い状況が続くなかで、賃金と物価が相互に参照しな がら緩やかに上昇していくメカニズムは維持され、中長期的な予想物価上昇率 は上昇していくと見込まれる。こうしたもとで、消費者物価の基調的な上昇率 は、徐々に高まっていくと予想され、2026 年度後半から 2027 年度にかけて 「物価安定の目標」と概ね整合的な水準となり、その後も同程度で推移すると 考えられる。基調的な物価上昇率が2%に近づいていることを踏まえると、今 後は、 「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、これが2% 程度の水準で定着するかどうかを確認していくことが重要となってくる。 なお、消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格の動向や政府によ る各種施策の影響も受ける。原油価格については、先物市場の動向などを参考 に、見通し期間終盤にかけて緩やかに低下していく前提としているが、中東以 外の地域からの代替調達に伴って輸送コストが増加していることを踏まえる と、わが国の企業が直面する調達価格は、国際市況ほどには低下しないと考え られる。政府による施策については、燃料油補助金などのエネルギー負担緩和 策や教育無償化政策等が行われており、2026 年度の消費者物価の前年比を押 し下げる方向に作用する。 エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食
3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、足もとでは「0%台半ばから後半」 と計算される。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータに左右され るうえ、デジタル化の進展などに伴い生産性や労働供給のトレンドがどのように変化する かといった点を巡る不確実性も高いため、相当の幅をもってみる必要がある。
4 品・エネルギー)の前年比は、これまでの原油価格上昇が財を中心に価格を押 し上げることに加え、半導体価格等の上昇や最近の為替円安が耐久財等の価格 上昇につながることから、2%を超える水準で推移したあと、原油高の影響が 減衰していくもとで、プラス幅を縮小すると見込まれる。 こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、消費者 物価(除く生鮮食品)は、政府による夏場のエネルギー負担緩和策(電気・ガ ス代)の効果等から、2026 年度が下振れているが、消費者物価(除く生鮮食 品・エネルギー)は、見通し期間を通じて概ね不変である。 物価の基調を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状 況を表すマクロ的な需給ギャップは、振れを伴いつつも、改善傾向をたどって おり、足もとでは小幅のプラスとなっている。先行きの需給ギャップは、上記 の経済の見通しのもとで、現状程度のプラスが続くと予想される。この間、女 性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給はマクロ的 な需給ギャップ以上に引き締まっている。こうしたもと、労働集約的な業種を 中心に企業が労働の供給制約に直面しつつある状況を踏まえると、マクロ的な 需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価には上昇圧力がかかりやすくなっ ているとみられる。 次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、緩やかに上昇している。先行き については、労働需給の引き締まりなどを背景に、企業の積極的な賃金・価格 設定行動が続き、予想物価上昇率は緩やかな上昇が続くと予想される。その水 準は、2026 年度後半から 2027 年度にかけて2%程度となり、その後も同程 度で推移すると考えられる。
3.経済・物価のリスク要因
上記の中心的な経済・物価の見通しに対する上振れないし下振れの可能性 (リスク要因)としては、主に以下の点に注意が必要である。 第1に、中東情勢がわが国経済・物価に及ぼす影響である。中東情勢につい ては、なお不透明な状況が続いているが、原油価格は一頃に比べて下落してお り、前回の展望レポートで指摘したような、経済の大幅な下振れリスクや物価 の大幅な上振れリスクは低下している。とくに、サプライチェーンの大規模な 混乱が生じ、わが国企業の生産活動に大きな影響をもたらすリスクは、中東依
5 存度の高い原材料の代替調達が進展していることもあり、低下している。もっ とも、これまでの原油価格上昇が経済・物価に及ぼす影響については、引き続 き注意が必要である。実体経済面では、原油高に伴う原材料等の価格上昇が、 企業収益や家計の実質所得を想定以上に下押しすることがないか、確認してい く必要がある。物価面では、原油高を起点に企業間取引における価格転嫁がや や速いスピードで進んでおり、これが、今後、消費者段階における幅広い品目 の価格上昇に波及していく可能性が高いと考えられる。これらに加え、中長期 の予想物価上昇率が引き続き上昇していることも踏まえると、消費者物価の基 調的な上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れていくリスクがある。 この間、原油価格については、なお振れの大きい展開が続いている。今後の 原油価格の変動がわが国の経済・物価に及ぼす影響については、引き続き留意 が必要である。 第2に、AI関連需要を含む内外の経済・物価動向である。AI関連につい ては、その用途の急速な広がりとともに、グローバルな需要拡大が続いており、 旺盛な設備投資が世界経済を一段と押し上げる可能性がある。一方、投資に見 合った形で収益の拡大が実現しない場合には、資産価格の変動なども伴って、 調整圧力が生じる可能性もある。物価面では、最近の半導体価格の上昇は、関 連する耐久財の価格を押し上げるとみられるほか、企業間取引において、銅な どの素材価格や機械類の価格が上昇していることも踏まえると、今後は、消費 者段階においても、様々な品目の価格上昇につながる可能性がある。こうした AI関連の材料・部品などに対する内外の需要が想定以上に増加した場合には、 価格面での上昇圧力が一段と高まるリスクもある。なお、AI関連需要拡大の 好影響は、これまでのところ、IT関連セクターの収益拡大や株価上昇に伴う 資産効果などを中心に現れている面があるが、今後、AIの利活用による生産 性向上などを通じて、その恩恵が幅広いセクターに広がるか、注意を払う必要 がある。 このほか、米欧を含む各国の財政拡張的な動きなどが、世界経済・物価や金 融市場に及ぼす影響にも留意が必要である。中国経済については、不動産市場 や労働市場における調整圧力が続くなか、先行きの成長ペースを巡る不確実性 は引き続き高いほか、一部の財における供給能力の過剰が世界経済・物価に及 ぼす影響についても注意を払う必要がある。
6 第3に、為替相場の変動がわが国の経済・物価に及ぼす影響である。これに ついては様々な経路が考えられるが、為替円安の進行は、グローバル企業の収 益などにプラスの影響を及ぼす一方、輸入物価の上昇などを通じて、家計の実 質所得を下押しするほか、中小企業などの収益にマイナスに作用する面がある。 また、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替 の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があることや、そうした動き が、予想物価上昇率の変化を通じて基調的な物価上昇率に影響する可能性があ ることにも留意が必要である。この点、原油高等の市況要因に加え、為替円安 の進行から、足もと輸入物価の前年比が大きく上昇していることは、先行き、 耐久財をはじめとした幅広い品目の価格を押し上げる方向に作用すると考え られ、その影響を十分注視する必要がある。 これらのリスクに加え、やや長い目でみたリスク要因としては、わが国を巡 る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える 影響がある。人口動態の構造的な変化等に伴う人手不足感の強まりは、デジタ ル化やAIの利活用などによる省力化投資の動きを加速させる可能性があり、 政府が進めている成長分野への投資増加に向けた取り組みと相俟って、成長期 待や潜在成長率を押し上げることも考えられる。この点、投資の制約要因とし て、人手不足とともに、資材価格の高騰等を指摘する声が多いことを踏まえる と、適切な金融政策運営を通じて物価の安定を実現することは、わが国の成長 投資の拡大を支える観点からも重要である。一方、人手不足下において、資本 と労働の代替が十分に進展しない場合には、供給制約によって成長率が下押し されるリスクがあることには注意が必要である。この間、これまで打ち出され た各国の通商政策はグローバル化の潮流に変化を及ぼしている面があり、今後 の各国の政策の展開次第では、そうした変化が急速に進むことも考えられる。
4.金融政策運営
以上の経済・物価情勢について、 「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」 による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する4。 まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価
4 「物価安定の目標」のもとでの2つの「柱」による点検については、日本銀行「金融政 策運営の枠組みのもとでの「物価安定の目標」について」(2013 年1月 22 日)参照。
7 (除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇を販売価格に転嫁する動きが続くもと で、これまでの原油価格上昇が、エネルギーや財を中心に価格を押し上げるほ か、グローバルなAI関連需要の増加に伴う半導体価格等の上昇や最近の為替 円安が耐久財等の価格上昇につながることから、2026 年度後半以降、2%を はっきりと上回る水準まで伸び率を高めていくと予想される。その後、見通し 期間後半には、原油高の影響が減衰していくもとで、2%程度に向けてプラス 幅を縮小していくと考えられる。この間、人手不足感の強い状況が続くなかで、 賃金と物価が相互に参照しながら緩やかに上昇していくメカニズムは維持さ れ、中長期的な予想物価上昇率は上昇していくと見込まれる。こうしたもとで、 消費者物価の基調的な上昇率は、徐々に高まっていくと予想され、2026 年度 後半から 2027 年度にかけて「物価安定の目標」と概ね整合的な水準となり、 その後も同程度で推移すると考えられる。 政策金利の水準が一頃に比べて上昇しているなかにあっては、金融環境がど のように変化していくかを点検していくことも重要である。この点、実質金利 は短中期ゾーンを中心にマイナスとなっているほか、企業全体の収益性と比較 した金利コストはなお十分に低い状況が続いている。こうしたなか、企業等の 資金需要は増加しており、金融機関の貸出態度も引き続き積極的である。CP・ 社債市場でも良好な発行環境が続いている。これらの動きを踏まえると、わが 国の金融環境は緩和した状態が維持されており、引き続き、経済活動をしっか りとサポートしていくと考えられる。 次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについ て点検する。わが国経済・物価を巡るリスク要因としては様々なものがあるが、 当面は、中東情勢が金融・為替市場やわが国の経済・物価に及ぼす影響をとく に注視する必要がある。このほか、グローバルなAI関連需要の動向や今後の 為替相場の変動が、わが国の経済・物価に及ぼす影響にも留意が必要である。 リスクバランスは、経済の見通しについては、概ねバランスしている。消費者 物価の見通しについては、上振れリスクの方が大きい。前述したとおり、基調 的な物価上昇率が2%に近づいているなか、企業の賃金・価格設定行動が積極 化していることや、中長期的な予想物価上昇率が引き続き上昇していることな どを踏まえると、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上 振れていくリスクがある。こうしたリスクが顕在化し、それがその後の経済に
8 悪影響を及ぼすことがないよう、十分に留意する必要がある。 金融面のリスクについてみると、不動産価格や株価といった資産価格の動向 には引き続き留意が必要であるものの、貸出などの金融仲介活動は円滑に行わ れており、現在の金融活動に大きな不均衡はみられていない。わが国の金融シ ステムは、全体として安定性を維持している。内外の実体経済や国際金融市場 が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えて いることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。そのうえ で、今後の中東情勢やAI関連投資の収益性、海外ノンバンク部門の動向等が、 様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については丁寧にみていく必 要がある。 金融政策運営については、基調的な物価上昇率が2%に近づいているなか、 現在の金融環境が緩和的であることを踏まえると、経済・物価・金融情勢に応 じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことに なると考えている。そのうえで、調整のタイミングやペースについては、中東 情勢やAI関連需要の拡大、為替相場の変動の影響を含め、経済・物価の中心 的な見通しが実現する確度やリスクを点検しながら、検討していく方針である。 とくに、基調的な物価上昇率が2%の「物価安定の目標」を超えて上振れてい くリスクが顕在化し、それがその後の経済に悪影響を及ぼすことがないよう、 基調的な物価上昇率を2%程度の水準で安定させていくという観点が重要に なると考えている。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持 続的・安定的な実現という観点から、適切に金融政策を運営していく。
9 (参考)
2026~2028 年度の政策委員の大勢見通し
――対前年度比、%。なお、< >内は政策委員見通しの中央値。
消費者物価指数 (参考) 実質GDP 消費者物価指数 (除く生鮮食品) (除く生鮮食品・エネルギー)
+0.6 ~ +0.7 +2.3 ~ +2.7 +2.3 ~ +2.6 2026 年度 <+0.6> <+2.5> <+2.5>
+0.4 ~ +0.7 +2.8 ~ +3.0 +2.5 ~ +2.7 4月時点の見通し <+0.5> <+2.8> <+2.6>
+0.7 ~ +0.8 +2.2 ~ +2.5 +2.2 ~ +2.7 2027 年度 <+0.8> <+2.4> <+2.6>
+0.6 ~ +0.8 +2.3 ~ +2.4 +2.6 ~ +2.7 4月時点の見通し <+0.7> <+2.3> <+2.6>
+0.7 ~ +0.8 +2.0 ~ +2.2 +2.1 ~ +2.3 2028 年度 <+0.8> <+2.0> <+2.2>
+0.7 ~ +0.8 +2.0 ~ +2.2 +2.1 ~ +2.4 4月時点の見通し <+0.8> <+2.0> <+2.2>
(注1)「大勢見通し」は、各政策委員が最も蓋然性の高いと考える見通しの数値について、最大値と最小値 を1個ずつ除いて、幅で示したものであり、その幅は、予測誤差などを踏まえた見通しの上限・下限 を意味しない。 (注2)各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込み を参考にして、上記の見通しを作成している。
10 政策委員の経済・物価見通しとリスク評価
(1)実質GDP (前年比、%) (前年比、%) 2.0 2.0
1.5 1.5
1.0 1.0
0.5 0.5
0.0 0.0
-0.5 -0.5 2021 2022 年度 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029
(2)消費者物価指数(除く生鮮食品) (前年比、%) (前年比、%) 3.5 3.5
3.0 3.0
2.5 2.5
2.0 2.0
1.5 1.5
1.0 1.0 2021 2022 年度 2023 2024 2025 2026 2027 2028 2029
(注1)実線は実績値、点線は政策委員見通しの中央値を示す。 (注2) 、△、▼は、各政策委員が最も蓋然性が高いと考える見通しの数値を示すとともに、その形状で 各政策委員が考えるリスクバランスを示している。 は「リスクは概ね上下にバランスしている」、 △は「上振れリスクが大きい」、▼は「下振れリスクが大きい」と各政策委員が考えていることを示し ている。
11 【 背 景 説 明 】5
1.経済活動の現状と見通し
1.1 景気動向
わが国の景気は、中東情勢の影響もあって一部 図表1:実質GDP に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復してい ①水準 (季節調整済年率換算、兆円) る。 600
2026 年1~3月の実質GDPは、前期比+ 580
0.5%(年率+1.8%)と、2四半期連続のプラス 560 成長となった(図表1) 。需要項目別にみると、① 設備投資は人手不足や資材価格の高騰に伴う工事 540 進捗の遅れから減少に転じたものの、②個人消費 は実質可処分所得の改善を背景に増加を続けたほ 520
か、③輸出も、昨年の関税引き上げの影響が概ね 500 剥落するもとで、AI関連需要の堅調な増加を背 11 年 13 15 17 19 21 23 25
景に、財輸出を中心にしっかりと増加した。こう ②前期比年率 (季節調整済、前期比年率、%) したもとで、労働需給は引き締まった状態が続い 10 8 ており、労働と設備の稼働状況を捉えるマクロ的 6 な需給ギャップをみても、1~3月は、ゼロ%台 4 6 半ばのプラスで推移した(図表2) 。 2 0 4月以降の月次指標や高頻度データ、企業への -2 -4 ヒアリング情報を踏まえると、中東情勢を受けた 輸入 -6 輸出 素原料輸入の減少やエネルギー・原材料価格の上 -8 その他内需 民間企業設備投資 昇は、輸出・生産面の一部やマインド面にマイナ -10 民間最終消費支出 実質GDP -12 スの影響を及ぼしているものの、代替調達の進展 21 年 22 23 24 25 26 (出所)内閣府 によりサプライチェーンの大規模な混乱は回避さ
5 7月 30、31 日開催の政策委員会・金融政策決定会合で 決定された「基本的見解」について、その背景を説明する ためのものである。 6 需給ギャップや潜在成長率は、生産要素のトレンドに関 して一定の仮定を置いて推計・算出した値であるため、相 当の幅をもってみておく必要がある。推計方法の詳細につ いては、日本銀行調査統計局「需給ギャップ・潜在成長率 の見直しと労働需給関連指標の補完的活用について」、日 本銀行調査論文(2026 年3月)を参照。
12 れるもとで、グローバルなAI関連需要の堅調な 図表2:需給ギャップ 増加にも支えられて内外需要は底堅さを維持して 5 (%) (「過剰」-「不足」、%ポイント、逆目盛) -40 7 いる 。すなわち、輸出・生産は、物流の停滞を受 4 需給ギャップ(左目盛) -30 3 短観加重平均DI(右目盛) けた中間財(化学等)の減少は小幅にとどまる一 -20 2 方で、資本財や情報関連はグローバルなAI関連 -10 1 需要の堅調さを背景に増加していることから、基 0 0 調としては横ばい圏内の動きを続けている。こう -1 10 -2 したもとで、企業収益は高水準で推移していると 20 -3 みられ、6月短観でも、業況判断DI(全産業全 30 -4 規模)は、前回と同じく 1991 年8月以来の良好 -5 40 85 年 90 95 00 05 10 15 20 25 な水準を維持した。6月短観で同様に確認された (出所)日本銀行 (注)1. 需給ギャップは、日本銀行スタッフによる推計値。 とおり、企業は積極的な設備投資スタンスを続け 2. 短観加重平均DI(全産業全規模)は、生産・営業用設備判断DIと雇用人員 判断DIを資本・労働分配率で加重平均して算出。2003/12月調査には、 調査の枠組み見直しによる不連続が生じている。 ているものの、中東情勢を受けた建設資材の不足 3. シャドー部分は、景気後退局面。
や価格高騰は、従来からの人手不足と相俟って、 一部で建設投資の進捗の遅れにつながっている模 様である。家計部門をみると、消費者マインド指 標には引き続き弱さがみられるものの、個人消費 は、雇用者数・名目賃金の増加に加え、政府によ る各種支援策や株高による資産効果、一部財での 前倒し需要も押し上げ要因となり、このところ増 加している。以上のような内外需要を反映して、 6月短観の雇用人員判断DI(全産業全規模)は、 非製造業を中心に 1990 年代初頭と同程度の「不 足」超が続いた。この結果、生産・営業用設備判 断と雇用人員判断の加重平均DIでみても、大幅 な「不足」超が続いた(図表2)。以上のように、 中東情勢に伴うマイナスの影響は一部でみられる ものの、グローバルなAI関連需要の堅調さや株 価上昇、政府による各種支援策等によるプラス効 果が、わが国の景気を下支えしている。
わが国経済の先行きを展望すると、グローバル なAI関連需要の堅調さや政府による各種施策は 下支えとなるものの、当面は、エネルギー・原材
7 中東情勢を受けた素原料輸入の動向についてはBOX1 を参照。
13 料価格の上昇による交易条件悪化が下押しに作用 図表3:潜在成長率 することから、成長率は幾分減速するとみられる。 5 (前年比、%)
なお、令和8年熊本地震による供給面の制約から、 TFP 4 資本投入 目先の生産が、輸送機械や電子部品・デバイスを 労働投入 3 潜在成長率 中心に下押しされる可能性に留意する必要がある。 2 その後は、原油価格の下落基調が続くという前提 1 のもとで、グローバルなAI関連需要の堅調な増 加にも支えられて、成長率は緩やかに高まり、潜 0
在成長率並みのペースで推移すると考えられる8。 -1
前回の展望レポート時点と比較すると、成長率の -2 85 90 95 00 05 10 15 20 25 見通しは、概ね不変である。 年度半期 (出所)日本銀行 (注)日本銀行スタッフによる推計値。
潜在成長率の推計値をみると、コロナ禍からの 回復以降、 「0%台半ばから後半」で推移しており、 先行きも同程度の伸びが続くと想定している(図 表3) 。潜在成長率の内訳については、①働き方改 革の影響一巡から潜在労働時間は減少から下げ止 まりに向かうものの、女性・高齢者の労働参加が 徐々に頭打ちとなり、潜在就業者数の伸びは鈍化 することから、潜在労働投入量は若干のマイナス で推移する、②資本ストックは、経済的価値の減 耗が速い無形固定資産投資のウエイト上昇を反映 して従来よりもペースは鈍化するが、政府の各種 の施策もあって着実な増加を続ける、③全要素生 産性(TFP)は、AI等の活用による生産性改 善や生産要素の効率的な再配分に支えられて現状 程度のプラスを続ける、と考えている。以上の景 気展開と潜在成長率の想定のもとで、先行きの需 給ギャップは、見通し期間を通じて現状程度のプ ラスが続く姿を見込んでいる。
見通し期間の各年度の特徴をやや詳しくみると、 2026 年度は、輸出はグローバルなAI関連需要 の堅調さを背景に緩やかな増加傾向をたどるもの
8 グローバルなAI関連需要の増加がわが国経済に及ぼす 影響についてはBOX2を参照。
14 の、エネルギー・原材料価格の上昇によって、企 業収益は下押しされ、家計の実質購買力も低下す るもとで、国内民間需要の増勢は鈍化することか ら、成長率は前年度から幾分減速すると見込まれ る。ただし、AI関連財の輸出価格上昇等により 一段と上振れている高水準の企業収益がバッファ ーとなるほか、政府による施策や緩和的な金融環 境も下支えとなることから、成長率の低下は小幅 にとどまると予想される。財輸出は、当面は、中 東情勢の影響による中間財等への下押し圧力から 横ばい圏内の動きにとどまるが、中東情勢の影響 が緩和するのに伴い、AI関連を中心に緩やかな 増加傾向をたどると予想される。設備投資は、A I関連の能力増強投資に加え、既往の投資案件の 受注残を解消する動きなども下支えとなり増加基 調をたどるものの、当面は、エネルギー・原材料 価格上昇による企業収益の伸び鈍化や建設コスト の上昇・工事遅延の影響から、増勢が鈍化した状 態が続くと考えられる。名目賃金は、概ね前年並 みのベースアップが実現するもとで、最低賃金の 引き上げによるパート賃金の上昇の影響も加わり、 着実な上昇を続けるほか、雇用者数も緩やかな増 加を続ける可能性が高い。個人消費は、こうした 雇用者所得の増加やエネルギー負担緩和策などの 政府の各種施策に加え、耐久財の前倒し需要も押 し上げ要因となり、当面は緩やかに増加するもの の、年度後半にかけては物価上昇による実質購買 力への下押し圧力が強まり、減速する可能性が高 い。この間、住宅投資は、住宅価格上昇や人口動 態等を反映して減少傾向をたどるとみられる。
2027 年度の成長率は、上期を中心に物価上昇 による下押しの影響が残るものの、AI関連財の 輸出価格高止まりや原油価格下落に伴う交易利得 の改善に支えられて、国内民間需要の増加基調は 徐々に明確となることから、成長率は幾分高まり、
15 潜在成長率並みとなると考えられる。財輸出は、 中東情勢の影響が和らぐもとで、AI関連を中心 に緩やかな増加傾向をたどると見込まれる。企業 収益は、内外需要の増加とエネルギー・原材料価 格の下落を背景に、増益基調を続けると予想され る。そのもとで、設備投資は、人手不足対応の省 力化投資やAI関連の能力増強投資に加え、貿易 構造やサプライチェーンの変容に適合するための 投資案件なども押し上げ要因となり、増加傾向を 続けると考えられる。名目賃金は既往の企業収益 の増勢鈍化がタイムラグを伴って下押しとなり、 上昇率が幾分鈍化するとみられる。個人消費は、 物価上昇率の低下に伴う実質可処分所得の回復は 下支えとなるものの、前年までの支援策の剥落や 耐久財の前倒し需要の反動減等から横ばい圏内の 動きにとどまると見込まれる。
2028 年度は、原油価格が横ばい圏内で推移す るなかで、潜在成長率並みの成長ペースが続くと 考えられる。財輸出は、海外経済の緩やかな成長 を背景に、緩やかな増加を続けると見込まれる。 設備投資は、企業収益の改善が続くもとで、着実 な増加傾向を維持すると考えられる。名目賃金が 企業収益の改善に伴い再び伸びを高めるもとで、 雇用者所得はしっかりと増加するとみられる。そ うしたもとで、実質可処分所得も改善を続けるこ とから、個人消費は緩やかな増加基調に復すると 考えられる。
16 1.2 主要支出項目の動向とその背景
(政府支出)
公共投資は、横ばい圏内の動きを続けている(図 図表4:公共投資 表4) 。GDPの公的固定資本形成(実質)は、政 27 (季節調整済年率換算、兆円)(季節調整済年率換算、兆円) 33 公共工事出来高(名目、左目盛) 府の経済対策に基づく国土強靱化関連工事等が進 26 32 公的固定資本形成(実質、右目盛) 捗するもとで、振れを均せば横ばい圏内の動きを 25 31 続けている。一致指標である公共工事出来高(名 24 30 目)は、建設工事費の上昇を反映して緩やかな増 23 29 加基調にある。 22 28
21 27 各種の先行指標の動きも踏まえると、先行きの 20 26 公共投資は、横ばい圏内で推移すると予想される。 19 25 政府消費は、 医療・介護費の趨勢的な増加に加え、 16年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 経済対策や防衛関連の支出増も反映して、着実な (出所)内閣府、国土交通省 (注)2026/2Qは、4~5月の値。
増加を続けると考えられる。
(海外経済)
海外経済は、中東情勢の影響もあって一部に弱 図表5:海外経済見通し めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成 10 (前年比、%)
長している(図表5) 。地域別にみると、米国経済 8 IMF 予測
は、一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれ 6
ば堅調な成長を維持している。欧州経済は、総じ 4
2 てみれば底堅さを維持しているものの、中東情勢 0 の影響を受けて内需に下押し圧力がみられている。 -2 中国経済は、消費に力強さを欠きつつも、輸出の -4 海外経済 増加などに支えられて、このところ持ち直してい 先進国 -6 新興国・資源国 る。中国以外の新興国・資源国経済は、一部に弱 -8 95 年 00 05 10 15 20 25 めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに改 (出所)IMF、財務省 (注)IMFによる各国・地域の実質GDP成長率を、わが国の通関輸出ウエイトで 善している。このうち、わが国経済とつながりの 加重平均したもの。2026年以降はIMF予測(2026/4月および7月時点)。 先進国は、米国、ユーロ圏、英国。新興国・資源国はそれ以外。
深いアジア地域をみると、NIEs・ASEAN 経済は、グローバルなAI関連需要に牽引される かたちで改善しているが、中東情勢を受けて消費 や生産面への影響が一部でみられている。
以上の世界経済の現状をグローバルPMIでみ
17 ると、サービス業では、中東情勢の影響を受けて 図表6:グローバルPMI 低下したあと、足もと改善・悪化の分岐点となる 60 (季節調整済、DI)
50 を小幅に上回っている。この間、製造業は、50 55 を上回って推移している(図表6) 。 50
45 先行きの海外経済は、当面、中東情勢等の影響 40 が下押し圧力となるものの、その後は、中東情勢 35 の影響が和らぐとの前提のもとで、グローバルな 30 AI関連需要にも支えられて、緩やかな成長を続 製造業 25 けると考えられる。地域別にみると、中東へのエ サービス業
20 ネルギー輸入依存度の高いアジア諸国を中心に、 11 年 13 15 17 19 21 23 25 (出所)Copyright © 2026 by S&P Global Market Intelligence, a division of S&P 当面、中東情勢の影響が下押し圧力になるとみら Global Inc. All rights reserved. (注)製造業は、J.P.Morganグローバル製造業PMI。サービス業は、J.P.Morgan れる。その後は、中東情勢の影響が和らぐとの前 グローバルサービス業PMI事業活動指数。
提のもとで、米国経済は、AI関連需要や政策面 図表7:実効為替レート (2020年=100) の下支えもあって、堅調な成長を続けると考えら 200 実質実効為替レート れる。欧州経済は、政策面の下支えもあって、徐々 180 名目実効為替レート
に成長率を高めていくと考えられる。中国経済は、 160
140 政策面の下支えもあって、緩やかに改善していく 120 と考えられる。中国以外の新興国・資源国経済は、 100 グローバルなAI関連需要にも支えられて、緩や 80 かに改善していくと考えられる。 60 円高
40 円安 (輸出入) 20 80年 85 90 95 00 05 10 15 20 25 輸出は、中東情勢による下押しの影響とグロー (出所)BIS (注)ブロードベース。1993年以前は、ナローベースを使用して接続。
バルなAI関連需要による押し上げの影響が概ね 図表8:実質輸出入 相殺し、基調としては横ばい圏内の動きを続けて (季節調整済、2020年=100) 9 130 いる(図表8) 。地域別にみると(図表9)、米 実質輸出 実質輸出(除くその他財) 国向けは、一部完成車メーカーにおける生産ライ 120 実質輸入
ン再開を受けた自動車関連の増加に加え、データ 110 センター向けの資本財の増加等も押し上げ要因と 100 なり、増加している。欧州向けは、現地の国内需 要の底堅さや新車投入効果を反映して、自動車関 90
連を中心に増加している。中国向けは、現地メー 80
9 70 GDP統計には計上されない再輸出品等が含まれる「そ 11 年 13 15 17 19 21 23 25 の他財」を除いた実質輸出をみても、横ばい圏内の動きと (出所)日本銀行、財務省 (注)日本銀行スタッフ算出。その他財は、金、再輸出品など。 なっている。
18 カーの競争力の高まりを背景に自動車や情報関連 図表9:地域別実質輸出 等の内製化が進むもとで、半導体製造装置の需要 130 (季節調整済、2021/1Q=100)(季節調整済、2021/1Q=100) 130 米国<18.5> 一巡も下押し要因となり、低水準で推移している。 EU<9.1> 120 中国<17.0> 120 NIEs・ASEAN等向けは、足もとでは鉱物 性燃料(軽油・ジェット燃料等)の減少が下押し 110 110
に作用しているが、グローバルなAI関連需要を 100 100 背景とした資本財(半導体製造装置)の堅調さに 90 90 支えられて、基調としては底堅く推移している。 NIEs・ASEAN等 <37.2> その他地域向けは、中東向けの自動車輸出の大幅 80 その他<18.1> 80
減少を主因に4~6月に減少したが、減少幅は小 70 70 21年 22 23 24 25 26 21年 22 23 24 25 26 幅にとどまっている。この点、中東向け輸出につ (出所)日本銀行、財務省 (注)日本銀行スタッフ算出。< >内は、2025年通関輸出額に占める各国・地域の いて月次の動きをみると、4月にかけて自動車関 ウエイト。
連を中心に大幅に減少したが、5月以降は、代替 図表10:財別実質輸出 ルートでの輸出の進捗に伴い、持ち直しに転じて 130 (季節調整済、2021/1Q=100)(季節調整済、2021/1Q=100) 130 いる。財別にみると(図表 10)、自動車関連は、 120 120 中東情勢による下押しの影響を受けつつも、一部 完成車メーカーにおける生産ライン再開や新車投 110 110
入効果等から、米欧向けを中心に増加している。 100 100 資本財は、グローバルなAI関連需要の堅調な増 90 90 加を背景に、半導体製造装置や電力設備向けを中 中間財<19.2> 情報関連<19.2> 心に増加している。情報関連は、データサーバー 80 自動車関連<22.6> 80 資本財<16.6> 向けなどのAI関連需要の堅調さに支えられて、 70 70 21年 22 23 24 25 26 21年 22 23 24 25 26 底堅く推移している。この間、中間財は、中国の (出所)日本銀行、財務省 (注)日本銀行スタッフ算出。< >内は、2025年通関輸出額に占める各財のウエイト。 過剰生産能力を背景にアジアを中心に供給過剰状 態が続くもとで、低水準で横ばい圏内の動きを続 けてきたが、足もとでは中東情勢の影響による素 材産業の稼働率低下により一段と水準を切り下げ ている。
先行きの輸出は、グローバルなAI関連需要の 堅調さは情報関連や資本財を中心に押し上げ要因 となる一方、中東情勢の影響は中間財等の下押し 要因として作用することから、当面は、横ばい圏 内の動きを続けると考えられる。その後は、中東 情勢の影響が和らぐもとで、AI関連の資本財や 情報関連を中心に緩やかな増加傾向をたどるとみ
19 られる。 図表11:経常収支 (季節調整済年率換算、兆円) 50 輸入は、足もとでは中東情勢の影響を受けた素 40 原料輸入の減少を主因に減少している(図表8)。 30 先行きは、当面、中東情勢の影響を受けつつも、 20 代替調達の進展により持ち直していくと見込まれ 10 る。その後は、中東情勢の緊張緩和に伴う物流の 0 正常化に加え、在庫復元圧力も含めた国内需要の -10 貿易収支 サービス収支 増加も後押しとなり、緩やかな増加基調をたどる -20 第一次所得収支 第二次所得収支 と考えられる。 -30 経常収支 -40 16年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (対外収支) (出所)財務省・日本銀行 (注)2026/2Qは、4~5月の値。
名目経常収支は、このところ黒字幅が拡大して いる(図表 11)。貿易収支は、名目輸出額がメモ 図表12:入国者数 (季節調整済年率換算、百万人) 50 リ等の輸出単価の上昇により増加するもとで、足 欧米・その他地域 45 もとでは、中東情勢を受けた素原料の輸入数量減 ASEAN 40 NIEs 少の影響も加わり、小幅の黒字となっている。サ 35 中国
ービス収支をみると、旅行収支はインバウンド需 30 25 要に支えられて黒字で推移しているものの(図表 20 12) 、デジタル関連の支払が高水準となっている 15 ことから、 全体では小幅の赤字基調が続いている。 10 この間、第一次所得収支は、直接投資収益や証券 5 0 投資収益の受取等の増加に加え、為替円安も押し 16年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 上げ要因となり、黒字幅の拡大基調が続いている。 (出所)日本政府観光局(JNTO) (注)欧米・その他地域は、季節調整誤差を含む。
先行きの名目経常収支は、目先は原油価格上昇 図表13:貯蓄投資バランス 等を背景とした貿易収支の悪化により、いったん (後方4四半期移動平均、年率換算、兆円) 80 黒字幅を縮小するが、その後は、原油価格下落に 貯蓄超過 60 よる貿易収支の回復と、海外経済の改善に伴う第 40 投資超過 一次所得収支の黒字幅拡大を反映して、黒字幅が 20 再び緩やかに拡大していくと見込まれる。 0
この間、経常収支と表裏の関係にあるわが国の -20 家計部門 貯蓄投資バランスをみると、企業収益の増加を受 -40 企業部門 けた企業部門の貯蓄超過幅の拡大が、一般政府の -60 一般政府 国内部門貯蓄投資バランス 赤字幅拡大を上回り、全体の貯蓄超過幅は緩やか -80 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 な拡大傾向にある(図表 13) 。先行きは、企業収 (出所)日本銀行
20 益の改善や政府部門における財政赤字の縮小を背 図表14:鉱工業生産 景に、全体の貯蓄超過幅は緩やかな拡大が続くと 120 (季節調整済、2020年=100)
考えられる。 生産 115 在庫
(鉱工業生産) 110
鉱工業生産は、やや長い目でみれば、横ばい圏 105
内の動きを続けている(図表 14) 。主な業種につ 100 いてみると、 「輸送機械」は、中東向け輸出減少の 影響は受けつつも、米欧向けや国内の需要が底堅 95
く推移するもとで、高水準で推移している。 「はん 90 11 年 13 15 17 19 21 23 25 用・生産用・業務用機械」は、半導体製造装置等 (出所)経済産業省 (注)シャドー部分は、景気後退局面。 による振れの影響を受けつつも、グローバルなA I関連需要の堅調な増加が品目の裾野を広げつつ 波及するもとで、増加傾向にある。 「電子部品・デ バイス」は、AI関連需要の堅調さを背景に、メ モリや電子回路を中心に増加傾向にある。 「電気・ 情報通信機械」は、半導体測定器やエアコン等を 中心に増加している。一方、 「化学(除く医薬品)」 は、アジアを中心とした供給過剰が基調的な下押 し要因として作用するもとで、足もとでは中東か らの原料輸入の停滞を受けたプラントの稼働率低 下の影響も加わり、一段と減少している。この間、 在庫は、AI関連需要が企業の想定を上回って堅 調に推移するもとで、中東情勢を受けた化学製品 の在庫取り崩しや、環境基準変更を見越したエア コンの前倒し需要の影響も加わり、このところは っきりと減少している。
先行きの鉱工業生産は、グローバルなAI関連 需要の堅調な増加という押し上げ要因と、中東情 勢による下押しの影響が相殺し、当面は横ばい圏 内の動きを続けると予想されるが、その後は、中 東情勢の影響が和らぐもとで、緩やかに増加して いくとみられる。
21 (企業収益) 図表15:企業収益関連指標 ①売上高と利益 企業収益は、グローバルなAI関連需要の堅調 (季節調整済、兆円) (季節調整済、兆円) 420 35 な増加などを背景に、高水準で推移している。法 売上高(左目盛) 400 営業利益(右目盛) 30 人企業統計の営業利益(全産業全規模ベース)を 経常利益(右目盛) 380 25 みると、グローバルなAI関連需要の堅調な増加 に加え、国内需要の底堅さとそのもとでの価格転 360 20
嫁の進捗に支えられて、一段と水準を切り上げて 340 15
おり、1~3月は既往ピークとなっている(図表 320 10 15)。業種別の営業利益をみると、製造業は、輸送 300 5 機械において米国の関税引き上げに伴う輸出採算 280 0 悪化によるマイナスの影響はみられるものの、A 11 年 13 15 17 19 21 23 25
I関連需要の堅調な増加が価格・数量両面から収 ②業種別の営業利益 (季節調整済、兆円) 益の押し上げ要因として作用するもとで、電気・ 16 製造業 情報通信機械やはん用・生産用・業務用機械を中 14 非製造業 心に、はっきりと増加している。非製造業は、底 12
堅い国内需要や価格転嫁の進展を背景に、建設・ 10
不動産等を中心に高水準で推移している。 8
6 企業の業況感は、中東情勢の影響を受けつつも、 4 グローバルなAI関連需要の堅調さなどを背景に 2 良好な水準で推移している。6月短観の業況判断 0 DI(全産業全規模)をみると、 「良い」超幅は3 11 年 13 15 17 19 21 23 25 (出所)財務省 (注)1. 法人季報ベース。金融業、保険業および純粋持株会社を除く。 月短観から横ばいの+18 となり、1991 年8月以 2. シャドー部分は、景気後退局面。
来の高水準を維持している。ただし、先行きは、 図表16:業況判断 中東情勢の影響に伴う仕入コスト上昇や前倒し需 (「良い」-「悪い」、DI、%ポイント) (同左) 60 60 要の反動減への懸念から、+11 とやや大きめの悪 良い 全産業 企業 の 化が見込まれている(図表 16) 。業種別にみると、 40 製造業 予測 40 非製造業 製造業の業況判断DIは、中東情勢を受けた原材 20 悪い 20 料・エネルギー価格上昇のマイナスの影響は素材 0 0 業種でみられるものの、AI関連需要の堅調な増 加が電機・資本財セクターを中心に押し上げ要因 -20 -20
となり、全体では改善している。先行きは、エネ -40 -40 ルギー・原材料価格の上昇や前倒し需要の反動減 -60 -60 の影響から、幅広い業種で悪化が見込まれている。 90 年 95 00 05 10 15 20 25 26/3月 9 (出所)日本銀行 非製造業の業況判断DIをみると、原材料・エネ (注)1. 短観の業況判断DI(全規模ベース)。2003/12月調査には、調査の枠組み 見直しによる不連続が生じている。 2. シャドー部分は、景気後退局面。
22 ルギー価格上昇や原材料の調達難の影響は中小企 図表17:設備投資一致指標 業を中心に下押しに作用しているものの、底堅い 110 (季節調整済年率換算、兆円) (季節調整済、2020年=100) 130
国内需要や価格転嫁の進展に支えられて、高水準 105 120 で推移している。先行きは、仕入コスト上昇への 100 110 懸念から、悪化が予想されている。 95 100 90 企業収益の先行きを展望すると、当面は、エネ 90 85 ルギー・原材料価格の上昇が幅広い業種への下押 民間企業設備投資 (GDPベース、実質、左目盛) 80 80 し圧力となるものの、政府によるエネルギー負担 資本財総供給(右目盛)
75 建設工事出来高(民間非居住用、 70 緩和策が下支えとなるほか、グローバルなAI関 実質、右目盛) 70 60 連需要の堅調さも押し上げ要因となり、増益基調 11 年 13 15 17 19 21 23 25 (出所)内閣府、経済産業省、国土交通省 を続けると考えられる。 (注)1. 建設工事出来高の2026/2Qは、4~5月の値。 2. 建設工事出来高の実質値は、建設工事費デフレーターを用いて日本銀行スタッフ が算出。
(設備投資) 図表18:設備投資先行指標 (季節調整済年率換算、兆円) 設備投資は、緩やかな増加傾向にある(図表 17)。 15 14 機械受注(民需除く船舶・電力) 機械投資の一致指標である資本財総供給は、半導 13 建築着工(民間非居住用、工事費予定額) 体製造装置等の振れを伴いつつも、AI関連や省 12 力化関連の堅調な投資需要に支えられて、緩やか 11
な増加傾向にある。建設投資の一致指標である建 10 9 設工事出来高(民間非居住用、実質)をみると、 8 建設資材高や人手不足を背景とした工事後ずれの 7 影響がみられるものの、物流施設や都市再開発関 6
連、電力関連を中心とした旺盛な建設需要に支え 5 11 年 13 15 17 19 21 23 25 られて、緩やかな増加傾向を続けている。 (出所)内閣府、国土交通省 (注)2026/2Qは、4~5月の値。
機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電 図表19:設備投資計画と実績 (前年比、%) 力を除く民需)は、大型案件の影響もあって大幅 18 15 に増加している(図表 18)。業種別にみると、製 12 造業は、半導体部材やAI関連等の成長分野向け 9 6 の能増需要の堅調さに加え、化学や非鉄金属、造 3 船の大型投資にも支えられて、しっかりと増加し 0 -3 ている。非製造業は、旺盛なデジタル・省力化関 -6 連の投資需要に支えられて、情報サービスや金融・ -9 GDP民間企業設備投資(名目) -12 短観(実績) 保険等を中心にはっきりと増加している。この間、 -15 短観(6月調査時点の当年度計画値)
電力は、データセンター関連の電力需要増加や脱 -18 11年度 13 15 17 19 21 23 25 炭素化への対応が基調的な押し上げ要因として作 (出所)日本銀行、内閣府 (注)短観は、ソフトウェア投資額・研究開発投資額を含み、土地投資額は含まない (2016/12月調査以前は、研究開発投資額を含まない)。全産業+金融機関の値。
23 用するもとで、足もとでは大型案件もあって大幅 図表20:資本ストック循環図 に増加している。建設投資の先行指標である建築 8 設備投資(前年度比、%) 25年度末 着工・工事費予定額(民間非居住用)は、大型案 6 05 14 のI/K比率 15 4 22 18 25年度 件による振れを伴いつつも、堅調な都市再開発関 12 <1.5%成長> 2 19 04 連需要や物流施設・データセンター等の新設需要 0 24 10 23 <1%成長> に支えられて、非製造業を中心に増加基調にある。 -2 -4 6月短観における設備投資計画(名目ベース)を 08 20 <0.5%成長> -6 みると(図表 19) 、GDPの概念に近い「全産業 -8 <0%成長> 全規模+金融機関」の、土地投資を除きソフトウ -10 09 -12 ェア・研究開発を含むベースでは、2025 年度は <-2%成長> <-1%成長> -14 前年比+8.6%と、前年度の伸びを幾分上回る堅 8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 11.5 12.0 前年度末のI/K比率(%) (出所)内閣府 調な増加で着地した。2026 年度は、中東情勢の (注)破線は、現時点で見込まれる期待成長率に対応する双曲線。 Iは設備投資、Kは資本ストック。
影響等から中小企業には弱さがみられるが、全体 図表21:就業者数 としては前年比+8.9%と、しっかりとした増加 (季節調整済、百万人) (季節調整済、2019年=100) 69 110 計画となっている。 68 105 先行きの設備投資は、AI関連の能力増強投資 67 100 に加え、既往の投資案件の受注残を解消する動き 66 95 なども下支えとなり、増加基調をたどるものの、 65 90 当面は、エネルギー・原材料価格上昇による増益 64 85 ペースの低下や建設コストの上昇・工事遅延の影 就業者(左目盛)
響から、増勢の鈍化した状態が続くとみられる。 63 正規(右目盛) 80 非正規(右目盛) その後は、内外需要の増加や仕入コストの低下に 62 75 11 年 13 15 17 19 21 23 25 伴い企業収益の増勢が強まるもとで、既往の経済 (出所)総務省 (注)2012年以前の正規、非正規は、詳細集計ベース。
対策の効果にも支えられて、緩やかな増加傾向を 図表22:失業率と労働力率 たどると考えられる。見通し期間を通じて設備投 (季節調整済、%) (季節調整済、%) 7 65 資を下支えする中長期的な案件としては、①構造 失業率(左目盛) 64 的な人手不足に対応するための省力化投資や、事 6 労働力率(右目盛)
業活動のデジタル化に向けた情報関連投資、②E 63
5 コマース拡大に伴う物流施設の建設投資、都市再 62
開発に関連するオフィスや商業施設の建設投資、 61 4 ③AI・半導体関連等の成長分野への能力増強投 60 資、④脱炭素化や科学技術支援関連の研究開発投 3 59 資、⑤サプライチェーン強靱化等を企図した投資 2 58 等が挙げられる。 11 年 13 15 17 19 21 23 25 (出所)総務省
24 資本ストックの増加ペースから逆算される企業 図表23:労働需給関連指標 の期待成長率は、0%台半ば程度と潜在成長率と ①ベバリッジ比率、短観雇用人員判断DI (季節調整済、倍) (「過剰」-「不足」、%ポイント、逆目盛) 概ね整合的な伸び率となっている(図表 20)。先 2.0 -50 べバリッジ比率(左目盛) 1.8 短観雇用人員判断DI(右目盛) -40 行きは、設備投資の増加傾向を反映して資本スト 1.6 -30 ックは積み上がっていくとみられるが、減耗率の 1.4 -20 高い無形固定資産投資のウエイト上昇もあって、 1.2 -10
ストックの増加ペースは緩やかなものにとどまる 1.0 0 0.8 10 と考えられる。 0.6 20 0.4 需給がタイト 30 (雇用・所得環境) 0.2 40
雇用・所得環境は、緩やかに改善している。 0.0 50 85 年 90 95 00 05 10 15 20 25
就業者数は、雇用者数の増勢回復を反映して、 ②失業率、就業率ギャップ (季節調整済、%、逆目盛) 足もとでは前年比プラス幅が拡大している(図表 1.5 (%) 1.0 失業率(左目盛) 21)。雇用者数のうち、正規雇用は、人手不足感の 2.0 就業率ギャップ(右目盛) 0.5 強い医療・福祉に加え、足もとではAI関連需要 2.5
3.0 0.0 の堅調な製造業も牽引役となり、増加傾向にある。 3.5 非正規雇用は、正規雇用への切り替えが進むもと -0.5 4.0 で水準をやや切り下げてきたが、足もとでは医療・ 4.5 -1.0 福祉や対面型サービス業を中心に回復している。 5.0 需給がタイト -1.5 5.5 労働需給は、引き締まった状態が続いている。 6.0 -2.0 失業率は、2%台半ばから後半の低水準で推移し 85 年 90 95 00 05 10 15 20 25
ている(図表 22、23②) 。実際の失業率と労働市 ③入離職ギャップ 場のミスマッチ等を示す構造失業率の差から算出 0.3 (季節調整済、入職率-離職率、%ポイント)
した就業率ギャップの推計値も、歴史的にみれば 0.2 引き締まった状態を維持している(図表 23②) 。 短観の雇用人員判断DIは、1990 年代初頭と同 0.1
程度の大幅な「不足」超となっており、企業の人 0.0 手不足感は強い状態が続いている。こうしたもと -0.1 で、事業所における入職率と離職率の乖離をみた 需給がタイト 入離職ギャップは、引き続き高い水準にあり、企 -0.2
業の労働需要の強さが窺われる(図表 23③) 。一 -0.3 85 年 90 95 00 05 10 15 20 25 方、ベバリッジ比率は、足もとでは幾分持ち直し (出所)日本銀行、総務省、厚生労働省 (注)1. べバリッジ比率=欠員率÷雇用失業率。2019/4Qまでは職業安定業務統計、 ているが、最低賃金の上昇や省力化投資の進展を 2020/1Q以降は労働経済動向調査より算出した欠員率を用いて算出。2025/3Q以降 は、同調査の労働者過不足判断DIを用いた試算値。 2. 短観雇用人員判断DIは、全産業全規模ベース。2003/12月調査には、調査の 受けた企業の欠員率の低下を反映して、ひと頃よ 枠組み見直しによる不連続が生じている。 3. 入離職ギャップ(1989年以前は、事業所規模30人以上)は、中心3四半期移動 平均(2026/2Qは、4~5月の値)。 4. シャドー部分は、景気後退局面。
25 りはやや低下している(図表 23①)。この間、労 図表24:名目賃金 働力率は、振れを伴いつつも、女性を中心に緩や 5 (前年比、%)
特別給与 かな上昇基調を続けている(図表 22)。 4 所定外給与 所定内給与 先行きの雇用動向を展望すると、中東情勢によ 3 名目賃金
る下押しの影響を受けつつも、人手不足感の強い 2 業種の正規雇用を中心に緩やかな増加を続けると 1 予想される。ただし、これまで女性や高齢者の労 0 働参加が相応に進んできたなかで、人口動態面か -1 ら労働供給の追加的な増加余地が乏しくなってい -2 くことから、雇用者数の増加ペースは鈍化してい 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)厚生労働省 く可能性が高い。こうしたもとで、先行きの失業 (注)1. 各四半期は、1Q:3~5月、2Q:6~8月、3Q:9~11月、4Q:12~2月。 2. 共通事業所ベース。 率は、中東情勢の影響を受けつつも、ごく緩やか な低下傾向をたどる姿を想定している。 図表25:所定内給与 (前年比、%) 10 7 賃金面をみると 、一人当たり名目賃金は、振 6 れを伴いつつも、着実な上昇を続けている(図表 5 4 24)。内訳をみると、所定内給与の前年比は、この 3 ところ3%弱の伸びとなっている(図表 25)。一 2 1 般労働者の所定内給与 (一人当たり)の前年比は、 0 昨年までサンプル要因とみられる卸売・小売等の -1 -2 弱さから伸び率が低下していたが、本年入り後は 所定内給与(一般労働者) -3 時間当たり所定内給与(一般労働者) サンプル要因の剥落から2%台半ばから後半の伸 -4 時間当たり所定内給与(パート労働者) -5 びで推移している。同給与を時間当たりベースで 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)厚生労働省 みると、振れを均せば、一人当たりベースを幾分 (注)1. 各四半期は、1Q:3~5月、2Q:6~8月、3Q:9~11月、4Q:12~2月。 2. 共通事業所ベース。 3. 時間当たり所定内給与(一般労働者)は、季節調整済の値。 上回る上昇率で推移している。パートの時間当た り所定内給与の前年比は、最低賃金の引き上げを 受けた既存のパートの賃金改定を反映して、4% から5%程度の高めの伸びが続いている。一方で、 アルバイト・パートの募集時平均時給の前年比は、 企業による新規求人の慎重化もあって、このとこ ろパート時給よりも低い伸び率で推移している。 所定外給与の前年比は、残業手当の時給上昇に、
10 毎月勤労統計の賃金については、調査対象のサンプル替 えによる振れの影響を受けにくい共通事業所ベースを用 いて評価しているが、それでもなお 500 人未満の事業所で はサンプル替えの影響が相応にみられる。
26 足もとでは製造業の生産増加による残業時間増加 図表26:雇用者所得 の影響も加わり、高めのプラスで推移している。 8 (前年比、%) 名目賃金 雇用者数 この間、特別給与の前年比をみると、高水準の企 名目雇用者所得 6 実質雇用者所得(CPI除く持家の帰属家賃) 実質雇用者所得(CPI総合) 業収益に支えられて、振れを伴いつつもしっかり とした伸びを維持している。 4
2 先行きの賃金動向を展望すると、本年の春季労 使交渉が概ね前年並みの3%台半ばの賃金改定率 0
(ベースアップ)で着地したことから、今年度の -2 一人当たり所定内給与も、サンプルによる振れの -4 要因を除けば、前年度並みで推移する可能性が高 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)厚生労働省、総務省 い。来年度については、エネルギー・原材料高を (注)1. 各四半期は、1Q:3~5月、2Q:6~8月、3Q:9~11月、4Q:12~2月。 2. 名目雇用者所得=名目賃金(毎月勤労統計)×雇用者数(労働力調査)
受けた企業収益の増勢鈍化が下押しとなり、前年 3. 毎月勤労統計は、共通事業所ベース。 4. 雇用者所得の実質値は、()内の各物価指標を用いて日本銀行スタッフが算出。
比プラス幅が幾分縮小する可能性が高いが、その 後は、労働需給の引き締まりと企業収益の改善に 支えられて、上昇率は再び高まっていくと考えら れる。この間、特別給与は、企業収益の変動から タイムラグを伴って、本年度後半から来年度前半 にかけて伸び率がいったん鈍化すると見込まれる が、見通し期間後半にかけては再び増勢が強まっ ていくとみられる。
名目雇用者所得は、上記のような雇用・賃金情 勢を反映して、前年比+3~4%程度のペースで 着実な増加を続けている(図表 26)。消費者物価 (総合除く持家の帰属家賃)で実質化したベース の前年比は、ゼロ%近傍で推移していたが、昨年 末以降は物価上昇率の低下等を受けて前年比+1 ~2%程度まで持ち直している。先行きの名目雇 用者所得は、企業収益が増益基調を続けるもとで、 振れを伴いながらも着実な増加を続けると考えら れる。実質ベースでみると、物価上昇率の高まり からいったんはっきりと減速するとみられるが、 見通し期間終盤にかけては、物価上昇の落ち着き に伴い、再び伸び率を高めていくと想定している。
27 (家計支出) 図表27:個人消費と可処分所得 (季節調整済、2016~2018年平均=100) 120 個人消費は、家計マインドに弱さがみられるも 115 のの、雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移 110 している。 105
100 各種の販売・供給統計を合成した消費活動指数 95 (実質・旅行収支調整済)11をみると、実質所得の 90 改善や株高による資産効果に加え、耐久財需要の 85 家計最終消費支出(実質) 可処分所得等(実質) 一時的な増加もあって、このところ増加している 80 家計最終消費支出(名目) 可処分所得等(名目) (図表 27、28)。形態別にみると、耐久財消費は、 75 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 本年入り後幾分減少してきたが、足もとでは自動 (出所)内閣府 (注)1. 家計最終消費支出は、除く持ち家の帰属家賃。 2. 可処分所得等は、可処分所得に年金受給権の変動調整を加えたもの。実質値は、 車を中心に大きく増加している(図表 28) 。自動 家計最終消費支出デフレーターを用いて日本銀行スタッフが算出。
車販売は、4月の環境性能割の廃止を見越した買 図表28:消費活動指数(実質) (季節調整済、2022/1Qからの累積変化、%) い控えの動きが一部でみられたことから、本年入 10 サービス<47.1> 非耐久財<44.3> り後は弱めの動きとなっていたが、4月以降はペ 8 耐久財<8.6> 消費活動指数 ントアップ需要から大きく増加している。家電販 消費活動指数(旅行収支調整済) 6 売額は、一部OSのサポート切れを受けたパソコ ンの更新需要は一服しているが、エアコン販売が 4
一部自治体の購入補助金拡大や来年の環境基準変 2 更を見越した前倒し需要を背景に堅調に推移して 0 いることから、振れを伴いつつも高水準で推移し ている。非耐久財消費(飲食料品・衣料品等)は、 -2 22 年 23 24 25 26 消費者の節約志向を背景に減少傾向が続いてきた (出所)日本銀行等 (注)1. 消費活動指数(旅行収支調整済)は、除くインバウンド消費・含むアウト バウンド消費(日本銀行スタッフ算出)。2026/2Qは、4~5月の値。 が、足もとでは実質所得の改善に加え、日用品の 2. 非耐久財は、GDP統計において半耐久財に分類される品目を含む。 3. < >内は、消費活動指数におけるウエイト。
買い溜めの動きもあって、持ち直している。 図表29:カード支出に基づく消費動向 (2016~2018年度の当該半月平均=100) 140 サービス消費は、緩やかに増加している(図表 130 28、29) 。外食は、内食から外食への基調的なシ 120 フトが続くもとで、実質所得の改善にも支えられ 110 て緩やかに増加している。国内旅行は、賃金上昇 100 90 の恩恵を受ける就労世帯の旅行意欲の強さに支え 80 られて、 高めの水準で推移している。海外旅行は、 70 総合 為替円安等による割高感を主因に、弱めの動きが 60 財 50 サービス
11 40 消費活動指数については、日本銀行調査論文「GDP統 21 年 22 23 24 25 26 計の 2020 年基準への改定に伴う消費活動指数の見直し」 (出所)JCB/ナウキャスト「JCB消費NOW」 (注)1. 支出者数の変化を考慮に入れた参考系列。 (2026 年4月)を参照。 2. 通信とエネルギー(燃料小売業および電気・ガス・熱供給・水道業)を除く。 日本銀行スタッフ算出。
28 続いている。 図表30:個人消費関連のマインド指標 (季節調整済) 60 個人消費関連のマインド指標をみると(図表 30)、今後半年間の消費者の意識を調査する消費 50
動向調査の消費者態度指数は、不安定な中東情勢 40 や物価見通しの上昇を受けて3月と4月に急激に 30 悪化したが、その後は悪化に歯止めがかかってい る。企業に対し景気の「方向性」を調査する景気 20 改善 消費者態度指数 ウォッチャー調査の現状判断DI(家計動向関連) 10 景気ウォッチャー も、中東情勢を受けたエネルギー価格上昇に伴う (家計動向関連) 悪化
0 収益悪化や個人消費への悪影響に対する懸念から、 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)内閣府 4月にかけて急落したが、その後は好調な耐久消 (注)景気ウォッチャーは、景気の現状判断DI。
費財販売や株高による資産効果もあって、全体と して下げ止まっている。
個人消費の動向について、各種の高頻度データ や業界統計、企業からのヒアリング情報などから 足もとの状況を窺うと(図表 29) 、6月は台風や 多雨等といった天候要因による下押しを受けたも のの、基調としては、消費の増勢は維持されてい る模様である。
先行きの個人消費を展望すると、当面は、物価 上昇が実質可処分所得の下押しに作用するものの、 株高による資産効果に加え、政府による各種支援 策、エアコン等の前倒し需要も押し上げ要因とな り、底堅く推移する可能性が高い。その後は、物 価上昇による実質購買力の低下や政府支援の剥落 が下押しに作用するもとで、エアコン等の前倒し 需要の反動減の影響もあって、いったん横ばい圏 内の動きとなるものの、物価上昇率の低下に伴う 実質可処分所得の回復に支えられて緩やかな増加 基調に転じていくと考えられる。
29 住宅投資は、減少傾向にある(図表 31) 。住宅 図表31:住宅投資 投資の先行指標である新設住宅着工戸数をみると、 28 (季節調整済年率換算、兆円)(季節調整済年率換算、万戸) 120 建築基準法等の改正に伴う振れを均してみれば、 110 26 住宅価格の上昇や人口動態等を反映して、減少傾 100 向をたどっている。先行きも、緩やかな減少傾向 24 90 をたどると考えられる。 80 22
70 20 民間住宅投資 (GDPベース、実質、左目盛) 60 新設住宅着工戸数(右目盛)
18 50 11 年 13 15 17 19 21 23 25 (出所)内閣府、国土交通省 (注)2026/2Qは、4~5月の値。
30 2.物価の現状と見通し 図表32:物価関連指標 (前年比、%)
(物価の現状) 25/3Q 25/4Q 26/1Q 26/2Q 消費者物価指数(CPI) 除く生鮮 2.9 2.8 1.8 1.5 国内企業物価の前年比は、中東情勢の影響を受 除く特殊要因 2.9 2.7 2.3 2.8 けた石油・石炭製品や化学製品の大幅な上昇が押 除く生鮮・エネルギー 3.2 3.0 2.5 1.8 除く特殊要因 3.4 3.2 2.7 2.1 し上げ要因となるもとで、グローバルなAI関連 除く食料・エネルギー 1.5 1.5 1.4 1.1 需要の拡大による非鉄金属や機械類の上昇も加わ 除く特殊要因 1.8 1.8 1.7 1.4 国内企業物価指数(PPI) 2.6 2.6 2.5 6.4 り、上昇率がはっきりと高まっている(図表 32、 企業向けサービス価格指数(SPPI) 2.9 2.7 2.7 2.9 12 33) 。企業向けサービス価格(除く国際運輸) GDPデフレーター 3.5 3.4 3.2 内需デフレーター 2.8 2.6 2.4 の前年比は、人件費上昇等を価格に転嫁する動き (出所)総務省、内閣府、日本銀行等 (注)1. CPIの食料は、酒類を除く。特殊要因=教育無償化政策(2026/4月の学校給食 が続くもとで、3%程度で推移している(図表 32、 無償化政策を含む)+ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策の各影響。日本銀 行スタッフによる試算値。
39)。 2. SPPIは、除く国際運輸。
図表33:PPI 消費者物価の前年比をみると13、除く生鮮食品・ (前年比、%) 15 その他 エネルギーは、賃金や物流費等の上昇を販売価格 電力・都市ガス・水道 為替・海外市況連動型 に転嫁する動きは続いているが、前年に大きく上 素材関連 10 機械類 昇した食料品価格の上昇率低下を主因に、足もと 飲食料品・農林水産物 総平均 では1%台後半となっている(図表 32、34)。除 5 く生鮮食品の前年比は、政府によるエネルギー負 担緩和策の効果などから、足もとでは1%台半ば 0 となっている(図表 32、35)。この間、食料品や エネルギーの価格変動の影響を受けない除く食 -5 料・エネルギーの前年比は、1%台前半で推移し 16 年 17 (出所)日本銀行 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (注)1. 消費税率の変更の影響を除く。 ている(図表 32、35) 。 2. 為替・海外市況連動型は、石油・石炭製品、非鉄金属。
図表34:CPI(除く生鮮・エネルギー) 除く生鮮食品・エネルギーについて内訳をみる (前年比、%) 6 財 と(図表 34) 、財は、食料品価格の上昇率低下を 一般サービス(除く家賃) 家賃 5 主因にプラス幅が縮小している。一般サービスは、 公共料金 CPI(除く生鮮・エネルギー)
賃金上昇の販売価格への転嫁が続くもとで、この 4
3
12 2 企業間取引における物価上昇圧力の背景とその影響に ついては、BOX3を参照。 1 13 消費者物価指数は、本年8月に、2020 年基準から 2025 年基準に切り替えられるとともに、2026 年1月に遡って 0 前年比が改定される予定である。モデル式の見直しなど不 -1 確実性はあるものの、ラスパイレス連鎖指数の最近の動き 21 年 22 23 24 25 26 や7月に公表された新基準のウエイトなどを踏まえると、 (出所)総務省 (注)1. 公共料金(除くエネルギー)=「公共サービス」+「水道料」 本年1月以降の除く生鮮食品の前年比は、基準改定前後で 2. CPIは、消費税率の変更・教育無償化政策(2026/4月の学校給食無償化政策を
概ね不変となる可能性が高い。 含む)、2021年の携帯電話通信料の引き下げ、旅行支援策の各影響を除いた、日 本銀行スタッフによる試算値。
31 図表35:CPI(除く生鮮) ところ2%程度の上昇率で推移してきたが、足も (前年比、%) 6 とでは私立高校授業料の無償化の影響を主因に 特殊要因 米類 エネルギー 食料(除く米類) 5 除く食料・エネルギー CPI(除く生鮮) 1%台前半まで低下している。公共料金(除くエ 4 ネルギー)の前年比は、鉄道各社の値上げや診療 3 報酬の改定が押し上げ要因となる一方、学校給食 2 の無償化や一部自治体における保育所保育料の引 1 き下げといった下押し要因の影響から、足もとで 0 はゼロ%程度となっている。 -1 消費者物価の基調的な動きを捕捉する観点から、 -2 21 年 22 23 24 25 26 エネルギー負担緩和策や教育無償化等の「特殊要 (出所)総務省等 (注)1. エネルギーは、石油製品・電気代・都市ガス代。食料(除く米類)は、生鮮 因」14を除いたベースのコア指標をみると(図表 食品・酒類を除く。 2. 特殊要因=消費税率の変更・教育無償化政策(2026/4月の学校給食無償化政策を 含む)+ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策+2021年の携帯電話通信料の引 36)、除く生鮮食品の前年比は、食料品価格の上昇 き下げ+旅行支援策の各影響。日本銀行スタッフによる試算値。
鈍化を主因に、ひと頃に比べてプラス幅を縮小し 図表36:CPI(除く特殊要因) (前年比、%) ているが、2%をなお上回っている。同様に、特 5 除く生鮮、特殊要因 殊要因調整後の除く生鮮食品・エネルギーの前年 4 除く生鮮・エネルギー、 比も、ひと頃に比べてプラス幅を縮小しており、 特殊要因 除く食料・エネルギー、 3 足もとでは2%程度となっている。特殊要因調整 特殊要因
後の除く食料・エネルギーの前年比は、1%台半 2
ばで推移している。品目別の価格変動分布等から 1 15 算出したコア指標をみると(図表 37) 、刈込平 0 均値は、食料品のプラス幅縮小を主因に、1%台 半ばまで低下してきたが、足もとでは診療代の上 -1 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 昇の影響などから幾分上昇している。加重中央値 (出所)日本銀行等 (注)特殊要因=消費税率の変更・教育無償化政策(2026/4月の学校給食無償化政策を含 む)+ガソリンや電気・ガス代等の負担緩和策+2021年の携帯電話通信料の引き下 は、食料品のプラス幅縮小に加え、政府のエネル げ+旅行支援策の各影響。日本銀行スタッフによる試算値。
ギー支援策の影響もあって低下してきたが、足も 図表37:CPIの刈込平均値等 (前年比、%) とではプラス幅が小幅に拡大し、1%程度となっ 3.5 刈込平均値 3.0 ている。最頻値も、本年入り後低下してきたあと、 加重中央値 2.5 最頻値 14 2.0 特殊要因とは、消費税率の変更・教育無償化政策(2026 年4月の学校給食無償化政策を含む) 、ガソリンや電気・ガ 1.5 ス代等の負担緩和策、2021 年の携帯電話通信料の引き下 1.0 げ、旅行支援策の各影響。日本銀行スタッフによる試算値。 15 0.5 刈込平均値とは、大きな相対価格変動を除去するために、 品目別価格変動分布の両端の一定割合(上下各 10%)を機 0.0 械的に控除した値。最頻値とは、品目別価格変動分布にお -0.5 いて最も頻度の高い価格変化率。加重中央値とは、価格上 昇率の高い順にウエイトを累積して 50%近傍にある値。各 -1.0 11 年 13 15 17 19 21 23 25 指標とも、消費税率の変更・教育無償化政策、旅行支援策 (出所)日本銀行等 の各影響を除いた個別品目の指数をもとに算出している。 (注)CPIを用いて日本銀行スタッフが算出。CPIは、消費税率の変更・教育無償化 政策(2026/4月の学校給食無償化政策を含む)、旅行支援策の各影響を除いた、日 本銀行スタッフによる試算値。
32 足もとでは1%台半ばまでプラス幅が拡大してい 図表38:上昇・下落品目比率 る。除く生鮮食品を構成する各品目の前年比につ 100 (%ポイント) (%) 100 上昇品目比率-下落品目比率(左目盛) いて、上昇品目の割合から下落品目の割合を差し 80 上昇品目比率(右目盛) 90 下落品目比率(右目盛) 60 80 引いた指標をみると、 「上昇」超幅は縮小傾向にあ 40 70 ったが、足もとでは、食料品などで値上げ品目数 20 60 の増加を反映して、下げ止まりから持ち直しに転 0 50 じている(図表 38)。この間、賃金とサービス価 -20 40 -40 30 格の関係をみると、賃金上昇のサービス価格への -60 20 転嫁が幅広い品目で進むもとで、ともに緩やかな -80 10 上昇傾向にある(図表 39)。 -100 0 11年 13 15 17 19 21 23 25 (出所)日本銀行等 次に、人々の物価観を示す中長期の予想物価上 (注)上昇・下落品目比率は、前年比上昇・下落した品目の割合。CPI(除く生鮮) を用いて日本銀行スタッフが算出。CPIは、消費税率の変更・教育無償化政策
昇率に関連する諸指標をみると、全体として、2% (2026/4月の学校給食無償化政策を含む)、旅行支援策の各影響を除いた、日本銀行 スタッフによる試算値。
に向けて緩やかに上昇している(図表 40)16。主 体別にみると、企業の予想物価上昇率は、上昇傾 図表39:賃金と物価 (前年比、%) 向が続いており、2%を上回って推移している。 7 CPI一般サービス(除く家賃) 6 家計や専門家の予想物価上昇率は、引き続き2% SPPI(除く国際運輸) 5 を下回っているものの、全体として緩やかな上昇 4 時間当たり所定内給与 (常用労働者) が続いている。物価連動国債から算出されるBE 3
Iは、振れを伴いつつ、2%程度で推移している。 2 1 このほか、経済モデルから推計したトレンドイン 0 フレ率は、いずれのモデルでも、緩やかに上昇し -1 ており、足もとでは1%台後半から2%近傍とな -2 17 っている(図表 41) 。 -3 83年 87 91 95 99 03 07 11 15 19 23 (出所)総務省、厚生労働省、日本銀行 (注)1. CPI一般サービス(除く家賃)は、消費税率の変更・教育無償化政策、2021年 この間、GDPデフレーターを分配面からみる の携帯電話通信料の引き下げ、旅行支援策の各影響を除いた、日本銀行スタッフ による試算値。
と、2023 年は、価格転嫁の進展を受けてユニッ 2. SPPI(除く国際運輸)は、消費税率の変更の影響を除いた試算値。 3. 時間当たり所定内給与(常用労働者)は、季節調整済の値(中心3四半期移動 平均)。2016/1Q以降は、共通事業所ベース。 ト・プロフィット(UP)主導で上昇率が高まっ 4. 時間当たり所定内給与(常用労働者)の2026/2Qは、4~5月の値。
ていたが、2024 年以降は、賃金の上昇を反映し てユニット・レーバー・コスト(ULC)の寄与
16 物価の基調の概念とそれを捉えるための指標の詳細に ついては、日本銀行企画局「基調的な物価上昇率の概念と 捉え方」 、日銀レビュー・シリーズ(2026 年3月)を参照。 17 トレンドインフレ率は、①推計値が足もとのデータに引 きずられやすいことや、②推計に利用されるデータが更新 されると、過去の推計値が相応に改定される、いわゆるリ アルタイム問題が存在することなどの留意点を踏まえる と、ある程度幅をもってみる必要がある。
33 も高まっている。そうしたもとで、GDPデフレ 図表40:予想物価上昇率 ーターは、UPとULCがバランスよく押し上げ ①各種調査 (前年比、年率平均、%) (%) に寄与するかたちで、3%台前半の上昇率で推移 3.0 3.0
している(図表 42) 。 2.5 2.5
(物価を取り巻く環境) 2.0 2.0
1.5 1.5 先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上 昇率を規定する主な要因について点検する。第1 1.0 1.0
に、先行きのマクロ的な需給ギャップは、見通し 0.5 0.5 期間を通じて現状程度のプラスが続く姿を見込ん 0.0 0.0 でいる(図表2) 。この間、女性や高齢者による労 13 年 16 19 22 25 13 年 16 19 22 25 働参加の増加ペースの鈍化などから、労働需給は 市場参加者(QUICK、2年先~10年後までの8年間) エコノミスト①(6~10暦年先) エコノミスト②(7~11年度先) マクロ的な需給ギャップ以上に引き締まっている 家計(生活意識アンケート調査、今後5年間) 企業(短観、5年後)
とみられる(図表 23)。こうしたもとで、労働集 合成予想物価上昇率(主成分分析①) 合成予想物価上昇率(主成分分析②)
約的な非製造業を中心に、人手不足が供給面から (出所)日本銀行、QUICK「QUICK月次調査<債券>」、JCER「ESPフォーキャスト」、 Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、Bloomberg (注)1. エコノミスト①はコンセンサス・フォーキャスト、②はESPフォーキャスト。 の制約となりつつある現状を踏まえると、マクロ 2. 家計は、5択選択肢情報を用いた修正カールソン・パーキン法による。 3. 企業は、全産業全規模ベースの物価全般の見通し(平均値)。 4. 合成予想物価上昇率は、10年後。家計、企業、専門家の予想物価上昇率の共通 的な需給ギャップが示唆する以上に、賃金や物価 成分を抽出した、日本銀行スタッフによる試算値。主成分分析①、②の詳細は、 日本銀行企画局「基調的な物価上昇率の概念と捉え方」(2026年3月)を参照。
には上昇圧力がかかりやすくなっているとみられ ②BEI る。 (%) 3.0
第2に、中長期的な予想物価上昇率は、緩やか 2.5 旧物価連動国債(最長物)
新物価連動国債(10年物) に上昇している(図表 40)。先行きについては、 2.0 労働需給の引き締まりなどを背景に、企業の積極 1.5 的な賃金・価格設定行動が続き、予想物価上昇率 1.0 は緩やかな上昇が続くと予想される。その水準は、 0.5 2026 年度後半から 2027 年度にかけて2%程度 となり、その後も同程度で推移すると考えられる。 0.0
-0.5 第3に、輸入物価(円ベース)の前年比をみる 13年14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)Bloomberg と、中東情勢やグローバルなAI関連需要の拡大 (注)固定利付国債利回り-物価連動国債利回り。物価連動国債のうち、2013/10月以降に 発行されたものを新物価連動国債、それ以外を旧物価連動国債と呼称。旧物価連動 国債の最長物は、16回債(2018/6月償還の銘柄)の利回りを用いて算出。 を背景とした契約通貨ベースの上昇に為替円安の 影響も加わり、プラス幅がはっきりと拡大してお り、足もとでは前年比 30%近い上昇率となってい る(図表 44、45)。先行きの輸入物価は、当面、 現状程度の大幅な上昇が続いたあと、原油等の資 源価格の下落を反映して上昇率は徐々に低下して
34 いく、と想定している。 図表41:トレンドインフレ率 (%) 3.0 この間、エネルギー価格(ガソリン・電気代等) モデル1(フィリップス曲線の切片) モデル2(時変VARモデル) 2.5 の前年比は、燃料油補助金などのエネルギー負担 モデル3(準構造モデル) モデル4(トレンド・サイクル分解) 2.0 緩和策の効果から、足もとではマイナスとなって いる。現状程度の原油価格と為替相場が続くとの 1.5
前提のもと、政府による「緊急的激変緩和措置」 1.0
や本年夏の電気・ガス代の負担緩和策も加味して、 0.5
先行きを展望すると、当面はゼロ%前後で推移し 0.0 たあと、本年度末頃にかけて、電気・ガス代の上 -0.5 昇を主因にプラス幅がはっきりと拡大していくと 13年14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)厚生労働省、総務省、内閣府、日本銀行、QUICK「QUICK月次調査<債券>」、 Consensus Economics「コンセンサス・フォーキャスト」、Bloomberg、 見込まれる。その後は、原油価格の下落を反映し Google Trends (注)日本銀行スタッフによる試算値。
て、エネルギーの前年比は、振れを伴いながらも 低下傾向をたどり、来年末にかけてマイナスに転 図表42:GDPデフレーター (前年比、%) 7 化すると想定される。 ユニット・プロフィット等 6 ユニット・レーバー・コスト 5 (物価の先行き) GDPデフレーター 4
以上の物価を取り巻く環境を踏まえると、先行 3 2 きの消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の 1 前年比は、目先は、教育無償化等の制度要因に加 0 え、米などの食料品価格の前年比上昇率の低下も -1
下押しに作用することから、2%前後で推移する -2 -3 と見込まれる。もっとも、本年夏場以降は、①昨 11 年 13 15 17 19 21 23 25 (出所)内閣府 秋以降の為替円安をパススルーする動きや、②A (注)ユニット・レーバー・コスト=名目雇用者報酬÷実質GDP
I関連需要の拡大を受けた半導体等の価格上昇に 図表43:販売価格判断 加え、③中東情勢を受けたエネルギー・原材料価 ( 上昇 - 下落 、DI、%ポイント) 50 格上昇が、食料・耐久財・日用品等の財価格や一 40 製造業 部サービス価格を押し上げる動きが強まることか 30 非製造業 20 ら、来年度初にかけて3%を超える水準まで伸び 10 が加速するとみられる。その後は、消費の減速に 0 ややタイムラグを伴うかたちで企業の価格設定ス -10
タンスが慎重化するのに伴い、物価上昇率は低下 -20
していくとみられる。見通し期間終盤にかけては、 -30 -40 景気の回復基調と労働需給の引き締まりが明確化 -50 するもとで、財・サービスともに幅広い品目で賃 74年78 82 86 90 94 98 02 06 10 14 18 22 26 (出所)日本銀行 (注)短観の販売価格判断DI。全規模ベース。2003/12月調査には、調査の枠組み 金上昇を販売価格に転嫁する動きが定着すること 見直しによる不連続が生じている。
35 図表44:国際商品市況 から、2%台前半で推移すると考えている(図表 (月中平均、原油:ドル/バレル、銅:百ドル/トン) (指数) 140 200 46)。 180 120 160 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面 100 140 は、政府による燃料油補助金や本年夏の電気・ガ 120 80 ス代補助によるエネルギー価格の上昇抑制により 100 60 2%前後で推移するが、本年度後半にかけては、 80 60 除く生鮮食品・エネルギーの上昇率の高まりに加 40 40 え、LNG輸入価格上昇を受けた電気・ガス代上 20 ドバイ原油(左目盛) 銅(左目盛) 20 FAO食料価格指数(右目盛) 昇によるエネルギー価格のプラス寄与拡大を反映 0 0 11年 13 15 17 19 21 23 25 して、プラス幅は3%を超える水準まではっきり (出所)日本経済新聞社、Bloomberg、FAO (注)FAO食料価格指数は、肉類、乳製品、穀物、植物油、砂糖から構成される
と拡大するとみられる。その後は、原油価格の下 価格指数(2014~2016年平均=100)。
落を反映して、エネルギー価格の伸び率は低下し、 図表45:輸入物価(円ベース) (前年比、%) マイナス寄与にも転じることから、消費者物価(除 50 為替要因 く生鮮食品)の上昇率は低下傾向をたどり、振れ 40 市況要因等 総平均 を均せば2%前後の上昇率で推移すると考えてい 30
る。 20
10 企業の賃金・価格設定行動は、従来よりも積極 0 化しており、中心的な見通しで想定している景気 -10 展開のもとでは、賃金と物価がともに緩やかに上 -20 昇していくメカニズムは維持されると考えられる。 -30 ただし、輸入ペネトレーション比率の上昇もあっ 16年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)日本銀行
て、為替レートの変動が国内物価に与える影響が (注)市況要因等は、輸入物価の契約通貨ベース指数の変動により説明される部分。 為替要因は、輸入物価の円ベース指数と契約通貨ベース指数の乖離から算出。
強まっているだけに、為替円安が一段と進行する 図表46:フィリップス曲線 場合や、AI関連需要の一段の上振れにより需要 5 CPI(除く生鮮・エネルギー、前年比、%)
全期間:1983/1Q~2026/2Q 面からの物価上昇圧力が強まる場合には、中長期 y = 0.54x + 0.9 4 の予想物価上昇率の高まりを伴いつつ、賃金・物 1983/1Q~2013/1Q 2013/2Q~2026/1Q 3 2026/2Q 価の上昇率がともに上振れる可能性も考えられる。 2 一方、交易利得の悪化による企業収益への下押し の影響等が拡大・長期化した場合には、企業がコ 1
スト削減に注力する傾向が想定以上に強まり、賃 0
金上昇圧力が弱まるとともに、やや長い目でみた -1
物価上昇率も低下する可能性も考えられる。 -2 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 需給ギャップ<2四半期先行>(%) (出所)総務省、日本銀行 (注)1. CPIは、消費税率の変更・教育無償化政策(2026/4月の学校給食無償化政策を 含む)、旅行支援策、携帯電話通信料の各影響を除いた日本銀行スタッフによる 試算値。 2. 需給ギャップは、日本銀行スタッフによる推計値。
36 3.わが国の金融情勢 図表47:短期金利 (%) 1.6 (金融環境) 1.4 1.2 わが国の金融環境は、緩和した状態にある。 1.0 0.8 短期金利をみると、無担保コールレート(オー 0.6 0.4 バーナイト物)は、0.75%程度で推移したあと、 0.2 6月の金融政策決定会合における政策金利の引き 0.0 -0.2 上げ以降は、 1.0%程度で推移している(図表 47) -0.4 TIBOR(3か月物) 18 国庫短期証券利回り(3か月物) 。ターム物金利については、TIBOR(3か月 -0.6 レポ・レート(O/N) -0.8 無担保コールレート(O/N) 物) 、国庫短期証券利回り(3か月物)ともに上昇 -1.0 23 年 24 25 26 している。 (出所)日本銀行、全銀協TIBOR運営機関、Bloomberg (注)レポ・レートは、東京レポ・レート。
実質金利は、短中期ゾーンを中心にマイナスで 図表48:実質金利(1年) (%) 推移している(図表 48) 。 1.5
1.0 実質金利
企業の資金調達コストは、上昇している(図表 名目金利 0.5 49)。貸出金利(新規約定平均金利)は、基準金利 0.0 として参照される市場金利の上昇を受けて、短期、 -0.5 長期ともに上昇している。CPの発行金利は、短 -1.0 期金利の上昇につれて、上昇している。社債の発 -1.5 行金利は、ベースレートの上昇を映じて、上昇し -2.0 ている。この間、ストック・ベースの調達コスト -2.5 をみると、企業の平均支払金利は、総資産利益率 10 年 12 14 16 18 20 22 24 26 (出所)日本銀行、QUICK「QUICK月次調査<債券>」、Consensus Economics 「コンセンサス・フォーキャスト」、Bloomberg (ROA)といった企業の収益性と比べ、なお十 (注)実質金利は、国債利回り(1年物)から予想物価上昇率(日本銀行 スタッフによる推計値)を差し引くことにより算出。
分に低い状況が続いている(図表 50)。 図表49:貸出金利とCP・社債発行利回り (%) 2.4 2.2 銀行貸出金利(短期) 2.0 銀行貸出金利(長期) 1.8 CP(3か月物) 1.6 社債(AA格) 1.4 1.2 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 05 年 07 09 11 13 15 17 19 21 23 25 (出所)日本銀行、証券保管振替機構、キャピタル・アイ、アイ・エヌ情報センター、 18 Bloomberg 政策金利の引き上げが家計に及ぼす影響については、B (注)1. CP発行利回りの2009/9月以前はa-1格以上、2009/10月以降はa-1格。 OX4を参照。 2. 社債発行利回りは、単純平均値、起債日ベース。対象は国内公募社債で、 銀行や証券会社などの発行分は除く。 3. 銀行貸出金利は、後方6か月移動平均。
37 企業からみた金融機関の貸出態度を短観のDI 図表50:企業の資金調達コストと収益性 でみると、全体として緩和的な水準を維持してい 8 (%) ROA(営業利益/総資産) る(図表 51) 。短観のCP発行環境判断DIは、 7 企業の平均支払金利(支払利息/有利子負債) 貸出約定平均金利(ストック、総合) 引き続き「楽である」超となっている。こうした 6 もとで、CP・社債市場では、良好な発行環境と 5 なっている。この間、企業の資金繰りを短観のD 4 Iでみると、経済活動の回復や価格転嫁の進展を 3 背景に、良好な水準となっている(図表 52) 。 2
1
0 85 年 90 95 00 05 10 15 20 25 (出所)財務省、日本銀行 (注)1. ROA、企業の平均支払金利は、法人季報・全規模ベース。金融業、 保険業および2009/2Q以降の純粋持株会社を除く。季節調整済の値。 2. 貸出約定平均金利は、国内銀行ベース。
図表51:企業からみた金融機関の貸出態度 ( 緩い - 厳しい 、DI、%ポイント) 40
30
20
10
0
-10 全産業・大企業 -20 全産業・中小企業
-30 95 年 00 05 10 15 20 25 (出所)日本銀行 (注)短観の金融機関の貸出態度判断DI。2003/12月調査には、調査の枠組み見直しに よる不連続が生じている。
図表52:企業の資金繰り ( 楽である - 苦しい 、DI、%ポイント) 40 全産業・大企業 30 全産業・中小企業
20
10
0
-10
-20
-30 95 年 00 05 10 15 20 25 (出所)日本銀行 (注)短観の資金繰り判断DI。2003/12月調査には、調査の枠組み見直しによる 不連続が生じている。
38 企業の資金需要は、経済活動の回復や企業買収 図表53:貸出残高とCP・社債発行残高 の動きなどを背景に、増加している。こうしたも 16 (前年比、%)
14 とで、銀行貸出残高の前年比は、伸び率を高めて 民間銀行貸出 12 おり、6%台前半となっている(図表 53) 。CP・ 10 CP・社債計
8 社債の発行残高の前年比は、既往の大口の発行案 6 件が押し上げに寄与していることもあり、6%台 4 2 半ばとなっている。 0 -2 マネーストック(M2)の前年比は、貸出残高 -4 の増加による押し上げが続くもとで、2%台前半 -6 -8 となっている(図表 54) 。 05 年 07 09 11 13 15 17 19 21 23 25 (出所)日本銀行、証券保管振替機構、日本証券業協会、アイ・エヌ情報センター (注)民間銀行貸出は平残前年比、CP・社債計は末残前年比。
図表54:マネーストック (平残前年比、%) 10 9 8 M2
7 M3
6 5 4 3 2 1 0 -1 98年00 02 04 06 08 10 12 14 16 18 20 22 24 26 (出所)日本銀行
39 (金融市場動向) 図表55:主要国の長期金利(10年物国債) (%) 6 国際金融市場の動向をみると、グローバルなA 日本 米国 I関連需要の拡大が、市場のセンチメントを改善 5 ドイツ
させる方向に作用しているものの、中東情勢を巡 4 る不確実性が引き続き意識されている。 3 米国の長期金利(10 年物国債利回り)をみると、 2 5月半ばにかけては、原油価格上昇に伴うインフ レ圧力の高まりが意識され、上昇した(図表 55) 。 1 その後は、原油価格の下落に伴い、いったん低下 0 したものの、足もとにかけては、堅調な経済指標 23 年 24 25 26 (出所)Bloomberg を背景としたFRBの利上げ観測の高まりや原油 図表56:ドル資金調達プレミアム 価格の反発などから、再び上昇している。欧州の 2.6 (%)
長期金利は、原油価格の動向に連れる展開となり、 2.4 円 2.2 ユーロ 期間を通じてみれば上昇している。わが国の長期 2.0 1.8 金利は、経済・金融政策に関する市場の見方など 1.6 1.4 を背景に、 やや大きく上下する場面もみられたが、 1.2 インフレ圧力の高まりが意識されるもとで、期間 1.0 0.8 を通じてみれば上昇している。 0.6 0.4 円を見合いとするドル調達にかかるプレミアム 0.2 0.0 は、総じて低水準で推移している(図表 56) 。 -0.2 19 年 20 21 22 23 24 25 26 (出所)Bloomberg
株式市場をみると、米国の株価は、ハイテク関 (注)1. 円またはユーロによる為替スワップ市場を通じたドルの調達金利と短期金融 市場でのドルの調達金利の差(いずれも3か月物)。 2. 円金利はOIS、ユーロ金利は19/10/3日以前はOIS(EONIAベース)、 連株の割高感が意識されるもとで下落する場面も 19/10/4日以降はOIS(€STRベース)、ドル金利は19/1/2日以前はOIS、 19/1/3日以降はSOFRを使用。
みられたものの、AI関連需要の拡大が続くもと 図表57:主要株価指数 で、期間を通じてみれば上昇している(図表 57)。 300 (2023年初=100)
日本(日経平均) 欧州の株価は、米国の株価と同様、期間を通じて 280 米国(S&P500) 260 みれば上昇している。わが国の株価は、米国の株 欧州(EURO STOXX) 240 新興国(MSCI) 価に連れて下落する場面もみられたものの、良好 220 な企業業績などを背景に、上昇している。この間、 200 180 新興国の株価は、足もとにかけて下落している。 160 140 120 100 80 23 年 24 25 26 (出所)Bloomberg (注)新興国は、MSCIエマージング(現地通貨建て)を利用。
40 為替市場をみると、円の対ドル相場は、米国経 図表58:ドル円・ユーロ円相場 済が堅調に推移するもとで、FRBの利上げ観測 190 (円)
ドル/円相場 の高まりなどから、ドル高・円安方向の動きとな 180 ユーロ/円相場 っている(図表 58)。円の対ユーロ相場は、横ば 170 い圏内の動きとなっている。 160 以 上 150
140 円安
130 円高
120 23 年 24 25 26 (出所)Bloomberg
41 (BOX1)中東情勢を受けた素原料輸入の動向
わが国経済は、前回展望レポートで指摘したと 図表B1-1:原油・ナフサの輸入量 おり、原油やナフサといった鉱物性燃料の中東依 ①原油 ②ナフサ (百万バレル) (百万バレル) 存度が高いため、中東情勢の緊迫化は、わが国素 100 Kpler 16 Kpler 90 予測 予測 14 原料輸入に大きな影響を及ぼしている19。本BO 2025年平均 80 12 Xでは、前回展望レポート以降の素原料の輸入動 70 60 10 向について、数量・価格の両面から点検する。 50 8 40 まず、数量面から、原油輸入の動向を船舶位置 6 30 情報に基づくオルタナティブ・データで確認する 20 その他 4 その他 アルジェリア と、3~4月は、軍事衝突前に輸入量の9割超を 10 米国 米国 2 中東 中東 0 0 占めていた中東産が大幅に減少したが、5月以降 25/1月 7 26/1 7 25/1月 7 26/1 7 (出所)Kpler は、ホルムズ海峡を経由しない中東産に加え、米 (注)7/29日時点。予測は、過去の船舶の航行パターン等を基にしたKpler社の予測値 であり、今後修正されうる。予測期間の「その他」には、現時点で輸入元が不明な
国産がはっきりと増加するなど、調達先の多様化 国も含まれる。
を伴いつつ、原油輸入量ははっきりと回復してい る(図表 B1-1①) 。過去の船舶の航行データ等か ら推計された予測値をみても、当面は、軍事衝突 前の輸入量を概ね確保できる見込みとなっている。 この間、ナフサについても、輸入量の7割を占め ていた中東産が大幅に減少する一方で、4月以降 は、米国産やアルジェリア産が増加するなど、代 替調達が進展している(図表 B1-1②)。以上のよ うに、原油、ナフサともに中東以外の地域からの 代替輸入が進展するもとで、サプライチェーンの 大規模な混乱に起因する経済活動の落ち込みは回 避されている。
次に、価格面について、ドバイ原油の市況価格 (ドル建てのスポット価格)をみると、5月まで はホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くもとで、1 バレル当たり 100 ドル前後で高止まりした。その 後は、6月央の米国・イラン間の戦闘終結に向け
19 詳しくは、2026 年4月展望レポートBOX1(中心的 見通しにおける原油価格の前提と交易条件悪化のわが国 経済への影響)を参照。
42 た覚書締結を受けて軍事衝突前の水準までいった 図表B1-2:原油価格の先行きの想定 ん低下したが、7月中旬以降は、中東情勢の緊張 170 (ドル/バレル) 中東情勢 米国・イラン間 再燃を背景に反転上昇している。こうしたきわめ 160 緊迫化 覚書締結 150 先物カーブのレンジ て振れの大きい展開を踏まえ、先行きの原油価格 140 (3/9日以降) ドバイ原油 については、7~9月の月中平均が 80 ドル程度 130 120 ドバイ原油(前回 で推移すると想定したうえで、その後は、市場参 110 展望レポート時点)
加者の見方が集約されている先物カーブの形状に 100 見通し 90 沿って、見通し期間終盤には 70 ドル程度へと緩 80 やかに低下していくと想定した(図表 B1-2) 。こ 70 60 れを前回展望レポートの想定と比較すると、見通 24 年 25 26 27 28 29 (出所)日本経済新聞社、Bloomberg
し期間を通じて下振れている。 (注)見通しは、ブレント先物カーブ(7/21日時点の値)を参考に作成。「先物カーブ のレンジ」は、同様の手法で作成した各日時点の先物カーブを、3/9日から7/21日 時点分にかけてプロットした際の、最大値と最小値のレンジを示す。
もっとも、わが国企業が数量確保を優先する中 図表B1-3:原油・ナフサの輸入単価 で、企業が直面する鉱物性燃料の調達コストに追 ①原油 ②ナフサ (ドル/バレル) (ドル/バレル) 加的な上昇圧力が発生している点には注意が必要 140 140
である。実際、原油やナフサの通関輸入単価をみ 120 120 ると、米国などの中東以外からの輸入単価が、輸 100 100 送距離等を反映して、中東からの輸入単価を上回 80 80 っているほか、中東からの輸入単価についても、 スポット調達の増加もあって、市況価格対比で高 60 全体平均 全体平均 60
中東 中東 止まっている(図表 B1-3)。こうしたもとで、原 40 米国 米国 40 アルジェリア その他 油やナフサを含む鉱物性燃料の輸入単価は、この 20 その他 20 26/1月 3 5 26/1月 3 5 ところ、それまで連動してきたドバイ原油の市況 (出所)財務省、石油連盟 (注)1. ナフサは、石油連盟による定義をもとに集計。 価格対比で割高となっている(図表 B1-4) 。現在 2. ②の輸入実績がない月、または、輸入量が僅少で単価が大幅に変動している月に ついては、線形補間。
のような調達行動が先行きどの程度続くかについ 図表B1-4:鉱物性燃料の輸入単価 ては不確実性が高いが、地政学的リスクへの頑健 (円/リットル) 130 性を高める観点から、素原料の調達先の分散を不 原油価格(ドバイ原油、1か月先行) 120 原油輸入単価(通関ベース) 可逆的に進める企業も増えてきているように窺わ 110 ナフサ輸入単価(通関ベース) れる。その場合、わが国企業が直面する鉱物性燃 100 料の調達コストは、先行き、原油の市況価格が示 90
唆するほどには低下しない可能性がある。こうし 80
た追加的な調達コストは、川上から川下段階へと 70
波及し、幅広い財・サービスの価格を押し上げる 60
方向に作用すると考えられる。 50 22 年 23 24 25 26 (出所)財務省、日本経済新聞社、日本銀行、石油連盟 (注)ナフサは、石油連盟による定義をもとに集計。
43 (BOX2)グローバルなAI関連需要の増加がわが国経済に及ぼす影響
グローバルなAI関連需要は、米国のハイパー 図表B2-1:世界半導体出荷額 (季節調整済、対数値×100) 540 スケーラーによる旺盛なデータセンター投資を主 500 世界半導体出荷額 因に力強い拡大を続けており、足もとでは、AI 460 2026/5月時点の予測 の用途の裾野拡大を伴いながら、上振れ傾向が明 420 各時点の予測 確となっている。実際、WSTS世界半導体出荷 380 額をみると、昨秋以降、事前予測を上回る非常に 340 高い伸びが続いており、トレンドがはっきりと上 300
方屈折している(図表 B2-1)。こうしたもとで、 260 IT関連企業の見通しも一段と強気化しており、 220 98 年 01 04 07 10 13 16 19 22 25 少なくとも 2028 年頃までは、ペースを鈍化させ (出所)WSTS (注)1. WSTSデータを用いて日本銀行スタッフが算出。 2. 世界半導体出荷額の2026/2Qは、4~5月の値。 つつも、AI関連主導で半導体需要の拡大は続く 3. 各時点の予測は、それぞれ2024/5月、11月、2025/5月、11月時点。
との見方が多くなっている。本BOXでは、グロ 図表B2-2:半導体出荷額の要因分解 ①2000年代初頭 ②今次局面 ーバルなAI関連需要の堅調な増加がわが国経済 (季節調整済、倍) (季節調整済、倍) 2.0 3.5 に及ぼす影響について考察する。 単価 単価 1.8 数量 数量 3.0 今回のAI投資ブームの大きな特徴は、半導体 出荷額 出荷額 1.6 2.5 の短期的な増産余力が限られる――半導体の短期 1.4 2.0 的な供給曲線が垂直に近い――もとで、需要の大 幅拡大の効果が、 「数量の増加」よりも「価格の上 1.2 1.5
昇」として現れている点にある(図表 B2-2)。こ 1.0 1.0
の点は、 わが国も含め多数の半導体メーカーが「規 0.8 0.5 模の経済」の追求を目的として生産設備の拡大競 97年 98 (出所)WSTS 99 00 01 23 年 24 25 26 (注)1. WSTSデータを用いて日本銀行スタッフが算出。 争を繰り広げる中で、半導体の数量の増加と価格 2. 交差項による影響は、各要因の大きさに応じて按分。単価には、品質変化による 価格変動を含む。
の低下が続いた 1990 年代後半から 2000 年頃の 3. ①は1997/1Q、②は2023/1Qの世界半導体出荷額を1とした時の累積変化。 4. ②の2026/2Qは、4~5月の値。
ドットコム・バブル期との大きな違いである。 図表B2-3:名目輸出額の推移 (季節調整済、2023/1月からの累積変化、%) 40 こうしたもとで、わが国の輸出をみても、実質 35 輸出デフレーター ベースでは横ばい圏内で推移しているものの、名 30 実質輸出 名目輸出 目ベースでみれば、昨秋以降、輸出価格主導で大 25 20 幅に増加している(図表 B2-3)。この点、わが国 15 半導体企業は、スマートフォンや車載向けを主力 10 とする先が多く、サーバー向けの先端半導体を得 5 意とする台湾・韓国と比べると、AI投資ブーム 0 -5 がわが国の情報関連輸出に及ぼす好影響は、昨年 23 年 24 25 26 (出所)日本銀行、財務省 (注)交差項による影響は、各要因の大きさに応じて按分。
44 央頃までは限定的であった20。もっとも、AIの 図表B2-4:輸出物価とAI関連市況 「学習」から「推論」への用途拡大に伴い、スト ①輸出物価 ②AI関連市況 (2023年=100) (2023/1月からの累積変化、%) (2023年=100) レージ需要も拡大する中で、昨年末以降、わが国 35 その他 2,500 DRAM価格 170
30 化学製品 (左目盛) 160 の名目輸出も価格主導で増勢が強まっており、実 機械類 NAND価格 金属・同製品 2,000 (左目盛) 25 150 際、輸出物価の内訳をみても、 「メモリ」がはっき メモリ 銅 総平均 (右目盛) 20 1,500 140 りと上昇している(図表 B2-4)。さらに、最近の 15 130 輸出物価の上昇には、 「金属・同製品」や「機械類」 1,000 10 120 の上昇も相応に寄与している。これには、データ 5 110 500 センターに不可欠な電力・通信インフラといった 100 0 付帯設備分野において、わが国の輸出企業には比 -5 0 90 23 年 24 25 26 23 年 24 25 26 較優位を有する企業も少なくないことが影響して (出所)日本銀行、Bloomberg (注)1. ①のメモリは、モス型メモリ集積回路。金属・同製品は銅を含む。機械類はメモ いる。 リを除く。その他は、繊維品、その他産品・製品。 2. ②のDRAM価格はDDR4(8GB、1GB×8)、NAND価格はTLC(512GB) の価格。直近は、2026/7月(月中平均、29日まで)。
こうしたAI関連需要の拡大に起因する輸出物 図表B2-5:交易条件 価の上昇は、中東情勢を受けた輸入物価上昇に伴 30 (2023/1月からの累積変化、%) 輸入物価要因 う交易条件の悪化圧力を和らげる方向に作用して 25 輸出物価要因 20 いる(図表 B2-5)。このことは、AI関連需要拡 交易条件 15 大の影響を大きく受ける企業の収益改善を通じて、 10 国内民間需要にもプラスの影響を及ぼすと考えら 5 0 れるが、そのインパクトを評価する際には、以下 -5 の点に留意する必要がある。 -10 -15 第1に、AI関連需要の恩恵は、製造業のうち -20 23 年 24 25 26 一部業種の大企業を中心に顕在化している。実際、 (出所)日本銀行 (注)交易条件=輸出物価指数(円ベース)÷輸入物価指数(円ベース)
産業連関表を用いてAI関連財(データセンター 関連の付帯設備等を含む)の価格上昇の影響を試 算すると、プラス効果が大きく現れる業種は、電 気機械、情報通信機器、一般機械に集中しており、 他業種への波及効果は限定的である(図表 B2-6 ①)21。これとは対照的に、同様の方法で試算した 原油価格上昇によるマイナスの影響は、非製造業
20 2026 年4月展望レポートBOX4(AI関連需要の増 加がわが国輸出に及ぼす影響)を参照。 21 ただし、上記分析に用いた産業連関表が 2020 年時点で あるため、最近のAI関連財の拡大に伴う産業構造の変化 を十分に織り込めていない可能性がある点には注意が必 要である。
45 も含め幅広い業種に及んでいる(図表 B2-6②)。 図表B2-6:業種別にみた価格上昇の影響 前述のように、中東情勢に伴う一国全体でみた交 ①AI関連財の価格上昇の影響 (AI関連財の付加価値額の5兆円増加に対する産出額の変化、 易条件の悪化圧力は、輸出物価上昇によって一部 兆円) 3 緩和されているものの、個別の経済主体別にみる プラスの影響 と、交易条件が改善している主体は、AI関連需 2
要で業績好調な一部の製造業大企業にとどまって おり、その他多くの企業では、仕入コスト上昇に 1
伴うマイナスの影響の方が大きくなっていると考 えられる。 0 農鉱飲繊パ化そ窯鉄非金は情電輸建サ商不運情 林業食維ル学の業鋼鉄属ん報気送設ー業動輸報 漁 料製プ製他・ 金製用通機機 ビ 産・通 第2に、AI関連業種(電気機械、情報通信機 業 品品・品製土 紙 造 石 属品機信械械 械 機 ス 業 郵信 便 等 業製 等器 械、はん用・生産用機械の大企業)の支出性向は、 品 等 ②原油価格上昇の影響 全体平均よりも低めである。実際、AI関連業種 (鉱物性燃料の輸入額の5兆円増加に対する中間投入額の変化、 兆円、逆目盛) 0 の設備投資キャッシュフロー比率をみると、IT サイクルに伴う大きな収益変動に対するバッファ 1 ー確保の必要性もあってか、他業種よりも低めと なっている(図表 B2-7①)。また、これらの業種 2 の労働分配率も、資本集約度の高さを背景に、相 マイナスの影響
対的に低めとなっているうえ、近年は明確な低下 3 農鉱飲繊パ化そ窯鉄非金は情電輸建サ商不運情 トレンドにある(図表 B2-7②) 。こうした点を踏 林業食維ル学の業鋼鉄属ん報気送設ー業動輸報 漁 料製プ製他・ 金製用通機機 ビ 産・通 業 品品・品製土 属品機信械械 ス 郵信 まえると、AI関連業種の収益増加が国内民間需 紙 造石 械機 業 便 等 業製 等器 品 等 要を誘発する効果は、他業種と比較すると小さい (出所)総務省、財務省、日本銀行、WTO、OECD、WSTS (注)1. 数量一定の価格ショックの仮定のもとで、2020年産業連関表から推計。 と考えられる。 2. AI関連財の定義は、2026/4月展望レポートBOX4を参照。鉱物性燃料は、 石炭・原油・天然ガス。 3.「パルプ・紙等」は、パルプ・紙・木製品。「その他製造業」は、プラスチック・ ゴム製品など。「はん用機械等」は、はん用機械、生産用機械、業務用機械。 「情報通信機器等」は、情報通信機器、電子部品。「サービス業」は、対事業所 サービスなど。
図表B2-7:AI関連業種の特徴 ①設備投資CF比率 ②労働分配率 (後方4四半期移動平均、%)(後方4四半期移動平均、%) 80 75
70 70 65 60 60 50 55 40 50 全体 30 45 AI関連業種 20 40 15年 17 19 21 23 25 15年 17 19 21 23 25 (出所)財務省 (注)1. 法人季報ベース。AI関連業種は、はん用・生産用機械、電気機械、情報通信 機械のうち大企業(資本金10億円以上)。全体は、金融業、保険業を除く(CF は、純粋持株会社も除く)。 2. 設備投資CF比率は、設備投資(除くソフトウェア)÷CF(=減価償却費+ 経常利益÷2)。労働分配率は、人件費÷付加価値額(=営業利益+人件費+ 減価償却費)。
46 (BOX3)企業間取引における物価上昇圧力の背景とその影響
前回展望レポートで指摘したとおり22、今次局 図表B3-1:企業物価の局面比較(1) 面では、企業の価格設定行動が従来よりも積極化 200 (2020年=100) (2020年=100) 150 ロシアによる 中東情勢 する中で、コスト上昇の価格転嫁スピードが、速 ウクライナ侵攻 緊迫化 180 140 まっている点が特徴的である。本BOXでは、最 近の国内企業物価の大幅な上昇の背景を分析する 160 130
とともに、その消費者物価への波及についても若 140 120 干の考察を行う。 120 輸入物価指数(円ベース、左目盛) 110 中東情勢緊迫化後の企業物価の動きを、2022 PPI(総平均、右目盛) PPI(除くエネルギー、右目盛) 年のロシアによるウクライナ侵攻時と比較すると、 100 100 21 年 22 23 24 25 26 今回の輸入物価の上昇ペースは 2022 年当時を下 (出所)日本銀行 (注)1. PPI(総平均)は、夏季電力料金の影響を除く。 2. PPI(除くエネルギー)は、工業製品から石油・石炭製品を除いて作成。 回っているにもかかわらず、国内企業物価の風速 (前期比)でみた上昇ペースは当時を明確に上回 図表B3-2:国内企業物価(前期比) (前期比、%) っている(図表 B3-1、B3-2) 。国内企業物価の前 6 その他 期比の内訳をみると、原油等の商品市況に連動す 5 電力・都市ガス・水道 為替・海外市況連動型 4 素材関連 る「為替・海外市況連動型」だけでなく、 「素材関 機械類 3 飲食料品・農林水産物 連」や「機械類」も急速にプラス寄与を拡大して 総平均 2 おり、川上段階の値上げだけでなく、川中・川下 1 への価格転嫁も短期間に進展している様子が窺わ 0 れる。こうした企業間取引における価格設定行動 -1 の積極化は、各種の企業向けサーベイ結果でも確 -2 21 年 22 23 24 25 26 認できるが(図表 B3-3) 、とりわけ次の2点が今 (出所)日本銀行 (注)1. PPIベース。夏季電力料金の影響を除く。 次局面の特徴である。 2. 為替・海外市況連動型は、石油・石炭製品、非鉄金属。
第1に、化学製品において、コスト上昇の価格 図表B3-3:企業の物価見通し(1年後) 転嫁が従来みられないペースで進んでいる(図表 4 (前年比、%)
B3-4①)。すなわち、①川上の石油製品や石油化 販売価格見通し 3 物価全般見通し 学基礎製品では、サーチャージの導入やフォーミ ュラの見直しにより、価格転嫁を速やかに進め、 2
マージン圧縮を回避する動きが急速に拡がったほ 1 か、②川中・川下製品でも、原材料不足に起因す る品不足や納入遅延が意識され、在庫確保を目的 0
-1 22 14 年15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 2026 年4月展望レポートBOX2(原油価格高騰がわ (出所)日本銀行 が国物価に与える影響)を参照。 (注)短観ベース(全産業全規模)。
47 とした前倒し需要も発生したことから、売り手企 図表B3-4:企業物価の局面比較(2) ①化学+プラスチック ②AI関連 業の価格交渉力が大きく高まったとみられる。そ (基準時点=100) (基準時点=100) 120 120 の結果、平時であればコスト上昇の転嫁に半年程 度を要するプラスチックや塗料・接着剤といった 115 115
川下製品でも、1~2か月後に相応の値上げが行 110 110 われた(図表 B3-5) 。 105 105 第2に、昨年秋以降、グローバルなAI関連需 100 100 要が一段と上振れる中で、BOX2でみた輸出向 けだけでなく、国内向けでも、関連財の価格上昇 95 95 21 年 22 21年 22 圧力が急速に強まっている。とくに、①データセ 25 年 26 25年 26 ロシアによるウクライナ侵攻 中東情勢緊迫化 ンターの付帯設備である電力・通信関連の需要拡 (出所)日本銀行 (注)1. PPIベース。基準時点は、ロシアによるウクライナ侵攻が2021年、中東情勢
大を背景に、銅価格等が騰勢を強める中、非鉄金 緊迫化が2025年。縦線は、2022/2月と2026/2月。 2. AI関連は、電子部品・デバイス、電気機器、情報通信機器、非鉄金属の合計。
属等でコスト上昇を転嫁する動きが拡がっている 図表B3-5:原油・ナフサ価格上昇の波及 最終製品 うえ、②電子部品や電気・情報通信機器でも、メ 石油関連製品 石油製品 石油化学製品 川下製品 石油化学 川中製品
モリ価格高騰の転嫁に起因する価格上昇圧力が強 原油 ナフサ 基礎製品 エチレン ポリエチレン・ 医薬品 +83.2 +75.0 塩化ビニル・ プラスチック +85.9 -4.4 まっている(図表 B3-4②)。 製品 界面活性剤 ガソリン +8.2 他 +27.8 +9.6 繊維製品 乗用車 プロピレン ポリプロピレン 軽油 +42.6 +3.2 +0.6 +71.4 他 +41.0 汎用技術(General Purpose Technology)と 重油 +31.5 ポリスチレン・ ジェット ベンゼン ナイロン樹脂 鉄鋼・建材 みられるAIは、経済社会で一段と浸透し、労働 燃料油 +31.5 +23.0 他 +35.3 関連 +2.9
ポリエステル・ 塗料・ キシレン 者や企業の適応も進む中長期でみれば、生産性上 灯油 +21.1 PET樹脂 接着剤 +51.6 他 +10.0 +7.2 電気機器 アスファルト・ +2.0 潤滑油 昇を通じて物価押し下げ圧力をもたらすが、短期 トルエン 溶剤 ゴム製品 +39.1 +42.0 他 +34.6 +1.4
LPG ブタジエン 合成ゴム 印刷・出版 的には、投資ブームによる総需要拡大効果の方が +48.3 +50.5 他 +29.2 +2.9
まさり、物価押し上げ圧力として働くと考えられ 当月 ~3か月後 ~6か月後 ~12か月後
(出所)経済産業省、日本銀行、日本経済新聞社
る。この点、本年入り後、わが国を含む主要国・ (注)1. 計数はPPI該当品目の2026/6月の2026/2月対比累積変化率、%。ただし原油は、 ドバイ原油の2026/3月の2026/2月比。背景色が濃いものほど高い変化率を示す。 2. 図表下部の期間区分は、原油価格とPPIの過去平均的な関係から概算した波及 地域の生産者物価(PPI)は高い連動性を示し ラグ。 3. トルエンはPPIの調査対象品目ではないため、上位分類「石油化学系芳香族製 品」の変化率で代替。川中製品に含まれる品目は経済産業省による分類。 ながら上昇率を高めている。この間も世界経済は 図表B3-6:グローバルな生産者物価の動向 底堅さを維持している点も考慮すると、足もとの (前年比、%) (前年比、%) 24 48 世界的なPPIの上昇には、景気に悪影響をもた 日本(左目盛) 米国(左目盛) 18 36 らす原油価格ショックだけでなく、AI関連需要 韓国(左目盛) 中国(左目盛) の増加というプラスのグローバル需要ショックも 12 台湾(左目盛) 24 ユーロ圏(右目盛)
作用している可能性が高い(図表 B3-6) 。 6 12
この点を検証するため、ダイナミックファクタ 0 0
ーモデルの手法を用いて、6つの地域(日本、米 -6 -12
国、ユーロ圏、韓国、中国、台湾)のPPIイン -12 -24 フレ率について、①地域と財の種類を問わず共通 20 年 21 22 23 24 25 26 (出所)日本銀行、Haver、CEIC (注)ユーロ圏は産業計(除く建設)ベース、その他の国・地域は総平均ベース。
48 する成分(Global Inflation Trend:GIT)、②特 図表B3-7:Global Inflation Trend(GIT) ①GITの抽出手法 定の財でグローバルに共通する成分、③特定の地 国・地域と財別の PPIインフレ率 一時的成分 域で財を問わず共通する成分(国・地域固有の成 持続的成分 (前月比)
分)等への分解を試みた(図表 B3-7)23。GIT グローバル共通成分 持続的成分 (Global Inflation Trend, GIT) の推計結果をみると、グローバルなサプライチェ 財固有のグローバル成分 ー ン の 需 給 逼 迫 度 合 い を 示 す 指 数 ( Global 推計期間 国・地域固有の成分 2000/1月 Supply Chain Pressure Index)と高い相関を示 国・地域と財固有の成分 ~2026/5月
しながら、足もとでは、過去の標準的な変動幅を ②GITの推移 上回る規模のグローバルな物価上昇圧力が生じて 3 (平均からの乖離、標準偏差) (指数) 6
いることが示唆される。 2 4
1 2 次に、このGITの変動の背景を考察するため、 0 0 世界生産、GIT、原油価格の3変数による「符 -1 -2 号制約条件付きのベクトル自己回帰(VAR)モ -2 -4 GIT(左目盛) デル」を推計することで、①グローバル需要ショ -3 -6 ±1標準偏差(左目盛) ック、②グローバル供給ショック、③原油価格シ -4 Global Supply Chain -8 24 Pressure Index(右目盛) ョックの識別を試みた 。GITのヒストリカル -5 -10 01 年 04 07 10 13 16 19 22 25 分解の結果をみると、足もとのGITの上昇の大 (出所)日本銀行、ニューヨーク連銀、Haver、CEIC (注)6つの国・地域(日本、米国、ユーロ圏、韓国、中国、台湾)における、8種類(飲 食料品、石油・石炭製品、化学製品、金属製品、はん用機器、電気機器、情報通信機 部分は、原油価格ショックで説明されるものの、 器、輸送用機器)のPPIインフレ率から、各成分を抽出している。GITは、推計 期間の平均と標準偏差で基準化。2026/2Qは、4~5月の値。
グローバルな需要ショックも3~4割程度、上昇 図表B3-8:GITの変動要因 に寄与している(図表 B3-8) 。本分析だけでグロ ①ショックの識別条件(符号制約) ーバル需要ショックの中身を具体的に特定するこ ショック/変数 世界生産 GIT 原油価格
とはもとより困難であるが、最近の銅やメモリの 原油価格ショック - + + グローバル 価格上昇とタイミング等が符合する点も勘案する 供給ショック + - + グローバル需要 と、グローバルなAI関連需要の増加とその波及 ショック + + +
が影響している可能性がある。さらに、この識別 ②GITの要因分解 (平均からの乖離、標準偏差) されたグローバル需要ショックが、わが国の消費 3
者物価(除く食料・エネルギー)に及ぼす影響に 2
ついて、ローカル・プロジェクションの手法を用 1
いて推計すると、同ショックは消費者物価(除く 0
-1 23 本分析は、以下の文献を参考に行った。 -2 原油価格ショック Akinci et al. (2025), “Global Trends in U.S. Inflation グローバル供給ショック -3 グローバル需要ショック Dynamics,” Federal Reserve Bank of New York Liberty GIT Street Economics, February 27, 2025. -4 24 20 年 21 22 23 24 25 26 VARモデルは、以下の文献を参考にした。 (出所)日本銀行、オランダ経済政策分析局、Haver、CEIC、FRED (注)1. 表中の「+」はショックと同方向、「-」はショックと逆方向の反応を示す。 Ha et al. (2025), “What Explains Global Inflation,” IMF 2. 推計期間は、2000/2Q~2026/2Q。推計における世界生産の2026/2Qは、4月の値。 Economic Review, vol. 73, pp.522-555. その他の2026/2Qは、4~5月の値。 3. GITは、推計期間の平均と標準偏差で基準化。
49 食料・エネルギー)の水準を粘着的に押し上げる 図表B3-9:グローバル需要ショックの わが国CPIへの影響 効果を持つことも示唆される(図表 B3-9) 。 (1標準偏差の需要ショックが水準に与える効果、%) 1.0
さらに、わが国のPPIインフレ率の持続的成 CPI(除く食料・エネルギー、特殊要因) への影響 0.8 分をGITと日本固有の成分等に分解すると、コ ロナ禍まではGITがPPIの変動の大部分を説 0.6
明してきたが、2022 年頃からは、わが国固有の 0.4 成分が一貫して大きなプラス寄与を続けてきたこ とが分かる(図表 B3-10) 。この点、わが国固有の 0.2
成分は、実質実効為替レートの水準と高い連動性 0.0 を示している(図表 B3-11) 。こうした観察事実 0 1 四半期後 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (出所)総務省、日本銀行、オランダ経済政策分析局、Haver、CEIC、FRED を踏まえると、2022 年以降の実質実効為替レー (注)1. ローカル・プロジェクションにより、+1標準偏差のグローバル需要ショックに 対するインパルス応答を推計。コントロール変数は、グローバル供給ショックと
トの減価(日本の財の相対価格の低下)は、相対 原油価格ショックおよび自己ラグ(4期)。推計期間は、2001/2Q~2026/2Q。 CPIの2026/2Qは、4~5月の値。シャドーは、90%タイルバンド。 2. 特殊要因=消費税率の変更・教育無償化政策+2021年の携帯電話通信料の引き下 的に割安な国内の財価格を海外の財価格に均等化 げ+旅行支援策の各影響。日本銀行スタッフによる試算値。
させるよう働く内外価格差の裁定メカニズムを通 図表B3-10:わが国PPIの要因分解 じて、わが国PPIに対し持続的な上昇圧力をも 12 (前年比、%)
その他要因 たらしている可能性がある25。 10 日本固有の成分 8 GIT 先行きを展望すると、①原油価格の下落を受け 6 日本の持続的成分 PPI(工業製品) て、川上の化学製品等では、サーチャージやフォ 4 2 ーミュラに従って販売価格も下落傾向に転じると 0 見込まれるが、川中・川下での化学製品の値上げ -2 には人件費や物流費の上昇の転嫁分も含まれるた -4 め、これらの価格は下方硬直的に推移するとみら -6 15 年16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 れる。他方、②AI関連需要の増加というグロー (出所)日本銀行、Haver、CEIC (注)1. PPI(工業製品)は、消費税率の変更の影響を除く。 2. 日本の持続的成分の2026/2Qは、4~5月の値。 バルな需要ショックの波及効果や、既往の為替円 安とそのもとでの内外価格差の解消圧力は、暫く 図表B3-11:日本固有の成分の推移 (前年比、%) (2020年=100、逆目盛) の間、持続的に作用し続ける可能性が高い。以上 7 -20 6 0 を踏まえると、先行き、原油価格の下落が続くも 日本固有の成分(左目盛) 5 実質実効為替レート(右目盛) 20 とでも、エネルギーを除く国内の財価格には当面、 4 40 粘着的な上昇圧力がかかり続けると考えられる。 3 60 2 80 1 100 25 実質為替レート変動の背景で生じる内外価格差の調整 0 120 メカニズムについては、例えば以下の文献で議論されてい -1 140 る。 -2 160 Engel (2019), “Real Exchange Rate Convergence: The 01 年 05 09 13 17 21 25 Roles of Price Stickiness and Monetary Policy,” Journal (出所)日本銀行、Haver、CEIC、BIS (注)実質実効為替レートは、ブロードベース。 of Monetary Economics, vol. 103, pp.21-32.
50 (BOX4)政策金利の引き上げが家計に及ぼす影響
日本銀行は、2024 年3月に大規模な金融緩和 図表B4-1:預金金利 (%) 0.7 の枠組みを見直し、その後は、政策金利を1%ま で段階的に引き上げ、金融緩和の度合いを調整し 0.6 定期預金(5年) 定期預金(1年) てきている。政策金利の引き上げに応じて、預金 0.5 普通預金 金利は、普通預金、定期預金ともに上昇している 0.4 (図表 B4-1)。貸出金利についても、参照される 0.3 基準金利の上昇を受けて、上昇している。住宅ロ 0.2 ーン金利をみると、新規実行・残高の大半を占め 0.1 る変動金利26は短期プライムレートに連動して上 昇しているほか、固定金利も長期金利の動向等を 0.0 06 年 08 10 12 14 16 18 20 22 24 26 映じて上昇している (図表 B4-2)。 本BOXでは、 (出所)日本銀行 (注)国内銀行等の平均値。
預金・貸出金利の上昇が家計に及ぼす影響につい 図表B4-2:住宅ローン金利 (%) て、家計の資産・負債構造を踏まえて考察する。 4.0
3.5 固定金利(当初10年) まず、わが国家計のバランスシートを確認する 3.0 変動金利 と、資産サイドでは、2,400 兆円程度の金融資産 2.5 のうち、預金が 1,000 兆円程度を占め、次いで、 2.0 保険・年金が 600 兆円程度、株式・投資信託が 550 1.5 兆円程度となっている(図表 B4-3) 。一方、負債 1.0 は 400 兆円程度にとどまり、その過半は住宅ロー 0.5 ンが占める。政策金利の引き上げは、資産サイド 0.0 では、預金金利上昇に伴う利子所得の増加をもた 16 年 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 (出所)各社開示資料
らし、負債サイドでは、住宅ローン等の利払い負 (注)一部大手行の中央値(金利優遇勘案後)。2020年までは保証料型、2021年以降 は融資手数料型。
担増加につながるが、家計全体としては、預金総 図表B4-3:家計のバランスシート (兆円) 額が住宅ローン等の借入額を大きく上回るため、 2,500 その他資産 金利水準の差を勘案しても、金利上昇によるプラ 2,000 保険・年金等 ス効果を享受しやすいと考えられる。 1,500 株式・ その他 もっとも、家計のバランスシートは、世代間で 投資信託等 現預金 大きく異なる点には留意が必要である。資産・負 1,000 定期預金 債構造を世帯主の年齢別にみると、金融資産につ 500 消費者 その他負債 普通預金 ローン 26 近年、わが国では、住宅ローンを契約する際、変動金利 住宅ローン 型のローンを利用する世帯が多く、住宅金融支援機構の 0 資産 負債 2026 年1月調査によれば、2025 年度上期の住宅ローン契 (出所)日本銀行 約者のうち 75%が変動金利型を選択している。 (注)2026年3月末の値。株式・投資信託等は、株式等と投資信託受益証券の残高(時価 ベース)。
51 いては、年齢が上がるにつれて、預金を中心に増 図表B4-4:世帯主の年齢別バランスシート 加している(図表 B4-4) 。一方、負債については、 30 (百万円)
普通預金 定期預金 30 代や 40 代で住宅ローンの残高が大きくなって 25 債券 株式等 その他金融資産 住宅ローン おり、とくに 30 代では、負債の総額が資産の総 20 その他ローン 純金融資産
額を上回っている。こうした住宅ローン保有世帯 15
10 にとっては、金利上昇に伴う返済負担の増加は、 資産 5 支出行動の慎重化につながる可能性がある27。 0
この点、住宅ローンの大半を占める変動金利型 -5 負債 の場合、 「5年ルール」等、返済額の大幅な増加を -10
-15 抑制する仕組みが設けられていることが多い28。 20代 30代 40代 50代 60代 また、政策金利引き上げの前提として、ここ数年 (出所)総務省 以上 (注)2019年の値。世帯当たりのバランスシートの状況。20代は30歳未満の値。
のしっかりとした賃上げの実現など、雇用・所得 図表B4-5:年齢別の賃金 環境の改善が続いていることも、併せて評価する (万円) (%) 50 20 必要がある。最近では、若年層の人手不足感がと 45 変化率(2020年→2025年、右目盛) 18 所定内給与(2025年、左目盛) くに強いことを受けて、20 代や 30 代の賃金改定 40 所定内給与(2020年、左目盛) 16
率を相対的に高くしている企業も多い(図表 B4- 35 14 30 12 5)。こうした動きは、これらの世代の住宅ローン 25 10 の返済負担を和らげる方向に作用している。この 20 8 ほか、近年は、家計の株式等の保有残高が増加し 15 6
ており、株式保有世帯では、配当収入が増加して 10 4 5 2 いるほか、株価上昇に伴う資産効果も働いている 0 0 (図表 B4-6)。 歳 (出所)厚生労働省 こうしたもとで、住宅ローン金利が上昇するな (注)所定内給与(月額)の値。
かにあっても、個人消費はこれまでのところ底堅 図表B4-6:家計の株式等の保有残高 (兆円) く推移している。政策金利の引き上げが家計の行 600
動に及ぼす影響については、世代間の資産・負債 500 構造の異質性等を踏まえ、今後とも丁寧に確認し 400 ていく必要がある。 300
200 27 近年は、不動産・住宅価格の上昇に伴い、住宅ローンの 借入額自体が増加していることも、家計にとっては、返済 100 負担が増える方向に作用している。 28 変動金利型の住宅ローンでは、毎月の返済額が5年間固 0 定される「5年ルール」が設定されることが多い。加えて、 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 年 返済額が見直される場合でも、返済額を見直し前の 1.25 (出所)日本銀行 (注)株式等と投資信託受益証券の残高(時価ベース)。 倍以内とする「125%ルール」が設定されることが多い。
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FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:経済予測