今朝開催された成果発表会において、新竹台大分院内科部長の頼超倫氏は、脳卒中予防のための抗凝固薬使用について報告しました。抗凝固薬は脳卒中を防ぐ一方で、歯茎や痔からの出血から、深刻な胃腸出血や脳出血に至るまで、出血のリスクを伴うという課題があります。従来のリスク評価では「中間層」の患者に対してリスクを過大評価しがちで、本来投薬不要な患者が薬を服用し、結果として出血のリスクを高めるケースがありました。新しいAIモデルは、こうした「判断が難しい」境界線上のグループに対してリスクの境界を明確にし、必要な人には確実に投薬し、不要な人には投薬を避けるという、精度の高い医療を実現します。
台大病院の研究チームは、2007年から2016年までの心房細動患者9,511名のデータを基にモデルを開発。予測精度と透明性を両立させるデュアルモデル設計を採用し、AIが「ブラックボックス」化することを防いでいます。さらに新竹台大分院(1,300名)と雲林分院(1,242名)のデータで検証した結果、異なる医療環境でも高い適用性と安定性を示しました。また、AIがリスクを判断する根拠を明確に示す「説明可能なAI」技術を導入しており、医師が数値の背景を理解した上で患者とのコミュニケーションや意思決定を行うことが可能です。
頼氏は、従来の評価ツールを「硬い定規」に例え、年齢や性別、病歴のみに基づくため精度が約6割に留まっていたのに対し、新しいAIモデルは肺疾患や肝疾患、服薬歴など多様な情報を反映させる「しなやかなメジャー」であり、精度を約9割まで引き上げたと説明しました。この成果は、デジタル医療分野でトップクラスの学術誌「npjデジタル・メディシン(npj Digital Medicine)」に今年4月7日付で掲載されました。
台湾では35歳以上の成人15万〜20万人以上が心房細動のリスクにさらされていると推定されます。心房細動患者の脳卒中リスクは一般の5〜10倍ですが、抗凝固薬による年間出血リスクは約2%存在するため、脳卒中リスクが2%未満の患者にとっては薬の副作用の方が危険な場合があります。このAIは、そうした際に最適な治療選択を支援します。現在は後ろ向き研究の段階であり、今後はさらなる臨床検証を通じて、より多くの医療AIが現場で実用化され、健康格差の是正に貢献することを目指します。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:中央社 CNA
- 分類:research