日立は、高度な判断業務を生成AIによって支援するため、複数の根拠を一歩ずつ整理する論理的思考能力を高める技術を開発しました。新規事業の検討、投資判断、制度や社内ルールを踏まえた計画立案などでは、複数の条件や制約を整理しつつ、結論に至るまでの根拠を一貫して示すことが求められます。今回、日立は2024年12月に公開した論理的思考データセット自動生成技術*1を発展させ、独自の論理パズルデータセット*2と既存の英語学習データを併用した学習を行うことで、日本語において根拠を示すための論理推論*3性能の向上を確認しました。
なお、本技術に関連する研究成果は、テキスト解析技術を扱う国内最大級の学会である言語処理学会で最優秀論文賞を受賞し*4、また生成AIへの追加学習効果を競うコンペティションである「FT-LLM 2026」で1位を獲得しています*5。今後、日立は本技術を活用し、お客さま、研究機関、パートナー企業との協創を通じて、金融、公共、電力・エネルギーなど、判断根拠の一貫性が重要となる分野で実証を進めます。
図1 二つの学習技術で、日本語の論理推論能力を強化
*1 生成AIの論理的思考能力を強化するための学習データを自動生成する基本技術を開発 - 研究開発:2024年12月11日
*2 論理パズルデータセット: 複数の条件や制約から、矛盾なく結論を導く問題を集めた学習用データセット
*3 論理推論: 与えられた条件や制約、根拠を順に整理し、一貫した結論を導く思考プロセス
*4 森下ら. 2026. 大規模言語モデルに推論を教えるための人工論理推論コーパスを用いたアプローチ. 自然言語処理: 32(2).
*5 FT-LLM 2026: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnlp/33/2/33_1081/_article/-char/ja
背景および課題
企業や公共機関では、制度、リスク、コスト、現場制約など、複数の条件を踏まえて判断する業務が増えています。こうした業務では、結論だけでなく、なぜその判断に至ったのかという根拠を説明できることが重要です。一方、生成AIは文書要約や検索支援などの用途では活用が進んでいるものの、このような根拠を論理的に積み上げる用途への適用には課題がありました。
日立は2024年12月、生成AIの論理的思考能力を高める学習データを自動生成する基本技術を公開し、最先端の生成AIを用いた評価で、このような論理的な思考能力が平均約9%、最大30%向上することを確認しました。しかし、実務レベルでの判断を支援するためには、結論に至るまでの推論の進め方をさらに改善すること、日本語での適用性を高めることが課題でした。
課題を解決するために開発した技術の特長
そこで日立は、判断支援業務への適用へ向けて、生成AIの日本語での論理推論能力を高める技術を開発しました。技術の特長は以下の通りです。
1. 正しい結論に至る論理推論方法を獲得するための、独自論理パズルを用いた推論学習技術
日立は、独自の論理パズルデータセットを用い、結論の正誤を報酬として与える強化学習技術を適用しました。これにより、生成AIは正しい結論に至るための論理的な推論の進め方を、試行錯誤しながら学習できます。従来の教師あり学習で高めてきた論理的思考能力をさらに発展させ、複数条件・制約を整理する力や、結論に至る根拠を示す力の向上をめざします。
2. 日本語での能力を高めるための、英語の高品質データを活用した追加学習技術
生成AIの強化に通常用いられる学習データは、英語で整備されたものが多く、日本語のデータは限られています。日立は、日本語と英語の双方に対応する既存モデルに対し、英語の学習データ*6,7を用いた追加学習を行うことで、英語での能力向上を日本語に転移させました。結果として、日本語ベンチマークにおける性能の向上を確認しました。これにより、日本語の学習データが限られる領域でも、英語の学習資源を活用して性能向上を図れる見通しを得ました。
*6 https://huggingface.co/datasets/nvidia/Nemotron-CC-Math-v1
*7 https://huggingface.co/datasets/OpenDataArena/ODA-Math-460k
今後の展望
今後、日立は、本技術を用いて、お客さまや研究機関、パートナー企業との協創を通じて、金融、公共、電力・エネルギーなど、判断根拠の一貫性が求められる業務への生成AI活用を進めます。Lumadaのさらなる強化に向けて、これまで培ってきたデジタルのケイパビリティやドメインナレッジを活用し、専門知識とAIを組み合わせることで、複数の条件や制約を踏まえた判断根拠の整理や説明を支援し、社会インフラのトランスフォーメーションと持続可能な社会の実現に貢献していきます。
関連情報
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