令和8年7月31日

今般、下記の調査事案について、事業用自動車事故調査報告書が議決されたことを受け、

主要指標 — KEY FIGURES

90km/h
法定速度(60km/h)を大幅に超える約90km/hで走行中

当該報告書を公表いたしますのでお知らせします。

○ 特別重要調査対象事故

・大型トラックの衝突事故(群馬県伊勢崎市)

(令和6年5月6日発生)

※対象事故について

特別重要調査:社会的影響が大きく、事故調査委員会による特別な調査、

要因分析及び再発防止策の提言が必要なもの

重要調査  :特別重要調査対象事故以外の事故であって、事故調査委員会による

要因分析及び再発防止策の提言が必要なもの

※過去の報告書は、以下の国土交通省ホームページをご覧ください。

https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/jikochousa/report1.html

添付資料

報道発表資料 (PDF形式)

概要資料 (PDF形式)

報告書本体 (PDF形式)

お問い合わせ先

国土交通省物流・自動車局安全政策課 太田、黒﨑

TEL:03-5253-8111 (内線41623) 直通 03-5253-8566

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添付資料1 令和8年7月31日 物流・自動車局 安 全 政 策 課

「日々の運転状況の把握」及び「法令遵守にかかる指導監督」の重要性 ~大型トラックの衝突事故から得た教訓~

今般、下記の調査事案について、事業用自動車事故調査報告書が議決されたことを 受け、当該報告書を公表いたしますのでお知らせします。

○ 特別重要調査対象事故 ・大型トラックの衝突事故(群馬県伊勢崎市) (令和6年5月6日発生)

※対象事故について 特別重要調査:社会的影響が大きく、事故調査委員会による特別な調査、要因 分析及び再発防止策の提言が必要なもの 重 要 調 査:特別重要調査対象事故以外の事故であって、事故調査委員会に よる要因分析及び再発防止策の提言が必要なもの

※過去の報告書は、以下の国土交通省ホームページをご覧ください。 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/jikochousa/report1.html

【お問い合わせ先】 物流・自動車局安全政策課 太田、黒﨑 TEL 03-5253-8111(内線 41623)03-5253-8566(直通)

添付資料2 ~中央分離帯を乗り越え 令和8年7月31日 公表 対向車線を走行中の乗用車と正面衝突~ 事業用自動車事故調査委員会

大型トラックの衝突事故 事故概要 令和6年 5月6日 16時15分ごろ 群馬県伊勢崎市

群馬県伊勢崎市の国道17号上武道路において、大型トラック が片側2車線の第2車両通行帯を、法定速度(60km/h)を 大幅に超える約90km/hで走行中、中央分離帯を乗り越え、 対向車線を走行してきた乗用車と正面衝突し、さらにその後 方の乗用車に衝突した。

事故により最初に衝突した乗用車に乗車していた3名全員が 死亡し、後方の乗用車の運転者が軽傷を負った。

事故時大型トラックの運転者は、酒気帯び運転の基準値を超 えるアルコールを体内に保有していた。

原因① ~運転者~ 事故直前、アルコールの影響により 感情のコントロールができず、急に前 方に割り込んだ車両に憤慨し、事 故地点交差点を右折する別車両を 割り込み車両と誤認し、90km/hを 超える高速でハンドルを右に操作し たことで、車両の制御を失い、中央 事故地点状況図 分離帯に接触し、乗り越えた。

始業点呼時のアルコール検査で検出されないように、 始業点呼後に飲酒をしたと推定される。事故前にも 常習的に飲酒運転を繰り返していたと考えられ、法令 遵守の意識が低い状態であった。

事故車両 原因② ~事業者~ 安全優先、法令遵守の企業姿勢を事業者内全体に示すことが 出来ていなかった。

適性診断による運転特性の把握、定期的な安全運行に関する 指導監督が適正に行われていなかった。

再発防止策 ~二度と同じ事故を 起こさない為に~

飲酒運転の根絶の姿勢を 事業者がしっかりと示す 飲酒運転根絶の取り組み ☆事業者の飲酒運転根絶の決意と姿勢を示し、 飲酒運転をしない・させない企業風土を構築 する。

☆「自動車運送事業者における飲酒運転防止 マニュアル※1」を活用し、正確な情報を理解し 浸透させる。 携帯型アルコール検知器を使用 した確認を徹底化する ☆重大な死亡事故につながる飲酒運転の危険 性を、事故事例や統計データを使用して理解 ※1【自動車運送事業者における飲酒 させる。 運転防止マニュアル】 https://www.mlit.go.jp/jidosha /anzen/03manual/data/drunk_ ☆運行途中での長時間の休憩取得後等には、 driving_prevention_manual.pdf 携帯型アルコール検知器を使用した確認を行う。

☆「アルコール使用障害スクリーニングテスト ※2【アルコール使用障害スクリーニン グテスト(AUDIT)】 (AUDIT)※2」等のアルコール依存症 https://kurihama.hosp.go.jp/ho スクリーニング検査による飲酒習慣の確認を行う。 spital/screening/

添付資料3 2446101

事 業 用 自 動 車 事 故 調 査 報 告 書

〔特別重要調査対象事故〕 大型トラックの衝突事故(群馬県伊勢崎市)

令和8年7月24日

事業用自動車事故調査委員会 本報告書の調査は、事業用自動車の事故について、事業用自動車事故調

査委員会により、事業用自動車事故及び事故に伴い発生した被害の原因を

調査・分析し、事故の防止と被害の軽減に寄与することを目的として行わ

れたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない。

事業用自動車事故調査委員会

委員長 吉田 裕 《参考》

本報告書に用いる分析・検討結果を表す用語の取扱いについて

① 断定できる場合 ・・・「認められる」

② 断定できないが、ほぼ間違いない場合 ・・・「推定される」

③ 可能性が高い場合 ・・・「考えられる」

④ 可能性がある場合 ・・・「可能性が考えられる」 事業用自動車事故調査報告書

(特別重要調査対象事故)

調査番号 :2446101 事業者 :両毛運輸株式会社 本社所在地:群馬県前橋市 車 両 :大型トラック 事故の種類:衝突事故 発生日時 :令和 6 年 5 月 6 日 16 時 15 分頃 発生場所 :群馬県伊勢崎市 国道 17 号上武道路

令和8年7月24日 事業用自動車事故調査委員会 委員長 吉 田 裕 委 員 今 井 猛 嘉 委 員 小田切 優子 委 員 久保田 尚 委 員 首 藤 由 紀 委 員 廣 瀬 敏 也 委 員 小 川 和 久 委 員 余 村 朋 樹 要 旨

<概要> 令和6年5月6日 16 時 15 分頃、群馬県伊勢崎市の国道 17 号上武道路において、大 型トラックが片側2車線の第2車両通行帯を、法定速度(60km/h)を大幅に超える約 90km/h で走行中、交差点先の中央分離帯前端部に右前輪を接触させ、車両の制御を失 い中央分離帯を乗越え、対向車線を走行してきた乗用車①と正面衝突し、さらにその後 方を走行していた乗用車②に衝突した。この事故により、乗用車①に乗車していた3名 全員が死亡し、大型トラックの運転者が重傷、乗用車②の運転者が軽傷を負った。 なお、事故時大型トラックの運転者は、酒気帯び運転の基準値を超えるアルコールを 体内に保有していた。

<原因> 事故は、大型トラックの運転者が、片側2車線の道路の第2車両通行帯を走行中、ハ ンドル操作を誤り、信号機のある交差点先の中央分離帯前端部に右前輪を接触させ、そ の後中央分離帯を乗越え対向車線を走行中の2台の乗用車に衝突したことにより発生 したものと推定される。 同運転者は、最高速度規制 60km/h の道路において約 90km/h の高速で走行中、事故地 点交差点手前で第2車両通行帯から右折専用車線方向へハンドルを操作したことで、車 両の走行安定性を失い、中央分離帯前端部に右前輪を接触させた。これにより車両の制 御が不能となり、中央分離帯を乗越え対向車線に進入したものと考えられる。 事故後の調査で、同運転者の血中アルコール濃度が酒気帯び運転の処罰対象となる基 準値を超える数値であったことが確認されている。また、同車両の事故前のドライブレ コーダーの映像には、事故の約2分 30 秒前には急に前方に割り込んだ車両に憤慨した 同運転者の様子が記録されており、さらに事故直前には事故地点交差点の右折専用車線 から右折する同色の別車両が記録されている。事故時にアルコールを体内に保有してい たことから、この別車両を割り込み車両と誤認し、アルコールの影響により感情のコン トロールができずに、意図的にハンドルを右に操作した可能性が考えられる。 同運転者は、事故当日の始業点呼時のアルコール検知器による酒気帯びの有無の確認 ではアルコールは検出されておらず、点呼時に検出されないように意図して点呼後に飲 酒を行ったものと推定される。さらに、同じ事業者の他の運転者と異なり、運行途中に 長い休憩を取っており、この長い休憩は帰庫後にアルコールが検出されないようにする ためであった可能性も考えられる。同運転者は比較的アルコールに強く運転に影響ので にくい体質であったと考えられ、飲酒運転は本事故以前から常習的に行われていた可能 性が考えられる。最高速度規制を大きく超える速度での走行についても、事故前1ヵ月 間の運行において複数回確認されており、同運転者の法令遵守に対する意識が低い状態 であった可能性が考えられる。 事業者においては、煽り運転等の運転に対する苦情の多かった同運転者を含め、適性 診断による運転特性の把握が行われていなかった。また、定期的に行う安全運行に対す る指導監督も行われておらず、運行記録計の記録やドライブレコーダーの映像記録を使 用した運転特性に対する指導も行われていなかった。さらには、始業・終業点呼におい ても、運転者がアルコール検知器による酒気帯びの有無確認を行った記録を残すのみで、 運行管理者からの注意事項等の指示や健康状態の確認等を行った記録も残されておら ず、適切に実施されたかも不明である。これらにより、事業者として安全最優先、法令 遵守の企業としての姿勢を事業者内全体に示すことができていなかったことから、同運 転者の法令遵守の意識が醸成されずに、飲酒運転・速度超過の運行が繰返され事故につ ながった可能性が考えられる。

<再発防止策> (1) 運行管理に係る法令遵守の徹底 事業者は、運行の安全を確保するため、運行管理者と共に次に掲げる取組みを継続 的に実施することが必要である。 ・始業・終業点呼は、運転者の健康状態等を確認する重要な工程であると同時に、 事業者の安全運行に対する姿勢を示し、運転者に理解させる重要な機会であるこ とを肝に銘じ、原則対面で真剣に取組むこと。 ・日々の運行では、適切な運行計画の作成と指示を行い、運行終了後には運行記録 計の記録を確認し、速度超過等の道路交通法違反や「自動車運転者の労働時間等 の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号)に定められた拘束時間の超過 等の違反の有無を確認し、同じ違反が繰返されることのないよう指導監督するこ と。 ・飲酒運転事故は、始業点呼後の飲酒に起因するものであり、点呼時のアルコール 検知器による酒気帯びの確認では根絶できないことを認識し、運転者の飲酒習慣 を把握する。必要に応じて日々の運転状況をドライブレコーダーの映像記録等で の観察や、運行途中での長時間の休憩取得後等には、携帯型アルコール検知器を 使用した確認を行うこと。 ・点呼時のアルコール検知器による酒気帯びの確認から出庫までに、荷積み等で時 間を要する場合は、出庫時に改めて酒気帯びの有無を確認するように努めること。 ・飲酒習慣は、健康診断結果や本人及び家族等からの聞き取りや、WEB上に公開 されている「アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)」等のアルコール依存 症スクリーニング検査を実施し把握すること。 (2) 運転者への指導監督の徹底 事業者は、運行の安全を確保するため、運行管理者と共に、次のような指導監督を 継続的に実施することが必要である。 ・自動車運送事業は、貨物を安全・確実に輸送することが社会的使命であることを 認識させるとともに、事業用自動車による交通事故が社会に与える影響の大きさ を理解させ、運行の安全を確保することが使命であることを理解させること。 ・飲酒運転の根絶は、悲惨な被害者を出さないことはもとより、事業者自身のみで はなく、自社の運転者を悲惨な事故加害者にしないために取組むべき課題である ことを認識し、以下の取組みを行うこと。 ✓ 国土交通省が作成した「自動車運送事業者における飲酒運転防止マニュアル」 を活用し、飲酒運転防止に対する正確な情報を理解し、事業者として飲酒運 転根絶に取組むこと。 ✓ 飲酒運転根絶には事業者の決意と姿勢が重要であり、事業者は飲酒運転を絶 対に許さないという決意と姿勢を示し、事業者内全体に浸透させ、飲酒運転 をしない・させない強固な企業風土を構築すること。 ✓ 飲酒運転は、重大な死亡事故につながる可能性が非常に高いことを事故事例 や統計データを使用して運転者にその危険性を正確に理解させること。 ✓ アルコールが運転に及ぼす影響について、警察庁がWEB上に公開している 動画の活用や、自動車教習所等で実施している「飲酒運転体験ゴーグル」を 使用した飲酒運転体験講習等を利用し、その影響の大きさを理解させること。 ✓ 飲酒後の血中アルコール濃度と、時間経過による変化については、厚生労働 省がWEB上に公開しているアルコール量とアルコール分解時間を把握する ツール「アルコールウォッチ」やウィドマーク法の計算手法等を用いて、時 間が経過しても簡単に抜けないアルコールの状況を理解させること。 ✓ 運転者を新規に雇用する際は、運転記録証明書等により飲酒運転等の道路交 通法違反歴を把握し、雇用及び運転者としての選任について慎重に検討する こと。また、就業規則に飲酒運転を行った場合には(懲戒)解雇する旨の規 定を記載することを検討すること。 ✓ 雇用後においては、運転者の飲酒傾向を継続的に把握し、必要に応じてアル コール依存症スクリーニングテストを実施し、 「自動車運送事業者における飲 酒運転防止マニュアル」等を参考に、改善に向けた指導監督を行うこと。 ・適性診断は運転者の運転特性を把握する有効なツールであり、定期的に受診させ、 デジタル式運行記録計の記録やドライブレコーダーの映像記録と合わせて、運転 特性の改善に活用すること。 ・指導監督にあたっては、運転者が自ら考えることにより、その内容を十分に理解 できるよう手法を工夫するとともに、常に運転者の習得の程度を把握しながら進 めること。また、参加・体験・実践型の手法を積極的に活用すること。 ・効果的な指導監督を自社で行うことが難しい事業者においては、専門的な知識、 技術並びに指導のための場所を有する外部専門的機関(独立行政法人自動車事故 対策機構や自動車安全運転センター等)の積極的な活用を検討すること。 目 次

1 事故の概要 ······························································ 1

2 事実情報 ································································ 3 2.1 事故に至るまでの運行状況等 ··········································· 3 2.1.1 事業者等からの情報 ··············································· 3 2.1.1.1 当該事業者からの情報 ········································· 3 2.1.1.2 警察からの情報 ··············································· 5 2.1.2 運行状況の記録 ··················································· 8 2.1.2.1 運行記録計の記録状況 ········································· 8 2.1.2.2 ドライブレコーダーの記録状況 ································· 9 2.1.2.3 事故後の確認状況 ············································ 11 2.2 死亡・負傷の状況 ···················································· 11 2.3 車両及び事故地点の状況 ·············································· 11 2.3.1 車両に関する情報 ················································ 11 2.3.1.1 当該車両に関する情報 ········································ 11 2.3.1.2 相手車両に関する情報 ········································ 13 2.3.2 道路環境等 ······················································ 13 2.3.2.1 道路管理者からの情報 ········································ 13 2.3.2.2 警察からの情報 ·············································· 14 2.3.2.3 事故地点現地調査結果 ········································ 14 2.3.3 天候 ···························································· 15 2.4 当該事業者等に係る状況 ·············································· 15 2.4.1 当該事業者及び当該営業所の概要 ·································· 15 2.4.2 当該事業者及び当該営業所への監査等の状況 ························ 16 2.4.2.1 本事故以前3年間の監査 ······································ 16 2.4.2.2 本事故を端緒とした監査 ······································ 16 2.4.3 当該運転者 ······················································ 17 2.4.3.1 運転履歴 ···················································· 17 2.4.3.2 運転特性 ···················································· 17 2.4.3.3 健康状態等 ·················································· 18 2.4.4 運行管理の状況 ·················································· 18 2.4.4.1 当該運転者の乗務管理 ········································ 18 2.4.4.2 点呼及び運行指示 ············································ 21 2.4.4.3 指導及び監督の実施状況 ······································ 24 2.4.4.4 適性診断の受診及び活用状況 ·································· 24 2.4.4.5 運転者の健康管理 ············································ 24 2.4.4.6 車両管理 ···················································· 24 2.5 飲酒運転事故に関する情報 ············································ 25 2.5.1 飲酒運転による死亡事故件数 ······································ 25 2.5.2 事業用自動車の飲酒運転事故件数推移 ······························ 25 2.5.3 国土交通省等による事業用自動車飲酒運転防止の取組み ·············· 26 2.5.4 交通事故防止のための動画 ········································ 26 2.6 飲酒と車両の運転に関する情報 ········································ 27 2.6.1 アルコールが車両の運転に与える影響 ······························ 27 2.6.1.1 反応時間 ···················································· 27 2.6.1.2 運転操作 ···················································· 27 2.6.2 飲酒運転の脳・体への影響 ········································ 28 2.7 アルコール依存症スクリーニング検査 ·································· 28 2.8 事故防止に向けた技術開発 ············································ 29 2.8.1 飲酒運転事故防止に向けた技術開発 ································ 29 2.8.2 自動速度制御装置(ISA) ······································ 29

3 分析 ··································································· 30 3.1 事故に至るまでの運行状況等の分析 ···································· 30 3.2 当該事業者等に係る状況の分析 ········································ 31 3.2.1 運行管理の状況に係る分析 ········································ 31 3.2.2 指導監督の状況に係る分析 ········································ 31 3.3 車両に係る状況の分析 ················································ 32 3.3.1 当該車両に係る分析 ·············································· 32 3.3.2 相手車両1に係る分析 ············································ 32 3.3.3 相手車両2に係る分析 ············································ 33 3.4 飲酒後の血中アルコール濃度に係る分析 ································ 34

4 原因 ··································································· 35

5 再発防止策 ····························································· 37 5.1 事業者の運行管理に係る対策 ·········································· 37 5.1.1 運行管理に係る法令遵守の徹底 ···································· 37 5.1.2 運転者への指導監督の徹底 ········································ 37 5.2 自動車単体に係る対策 ················································ 38 5.3 本事案の他業者への水平展開 ·········································· 39

参考図1 事故発生概要図 ··················································· 40 参考図2 当該車両外観図 ··················································· 40 参考資料 アルコール使用障害スクリーニングテスト ··························· 41 ・KAST―M(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト男性版) ········· 41 ・KAST―F(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト女性版) ········· 41 ・CAGE(アルコール依存症スクリーニングテスト) ······················· 42 ・AUDIT(アルコール使用障害同定テスト) ····························· 43 1 事故の概要

令和6年5月6日 16 時 15 分頃、群馬県伊勢崎市の国道 17 号上武道路(以下「上武 道路」という。)において、大型トラック(以下「当該車両」という。)が片側2車線の 第2車両通行帯を、法定速度(60km/h)を大幅に超える約 90km/h で走行中、交差点先 の中央分離帯前端部に右前輪を接触させ、車両の制御を失い中央分離帯を乗越え、対向 車線を走行してきた乗用車①(以下「相手車両1」という。)と正面衝突し、さらにそ の後方を走行していた乗用車②(以下「相手車両2」という。)に衝突した。この事故 により、相手車両1に乗車していた3名全員が死亡し、当該車両の運転者(以下「当該 運転者」という。)が重傷、相手車両2の運転者が軽傷を負った。 なお、事故時当該運転者は、酒気帯び運転の基準値を超えるアルコールを体内に保有 していた。

表1 事故時の状況 〔発生日時〕 〔道路形状〕 令和 6 年 5 月 6 日 16 時 15 分頃 変形T字型交差点、勾配:平坦 〔天候〕 〔路面状態〕 曇り 乾燥 〔運転者の年齢・性別〕 〔最高速度規制〕 69 歳(当時) ・男性 60km/h(法定速度) 〔死傷者数〕 〔危険認知速度〕 死亡 3 名、重傷 1 名、軽傷 1 名 約 90 ㎞/h※ 〔当該業態車両の運転経験〕 〔危険認知距離〕 約 44 年(当該事業者 9 年 10 ヵ月) 不明 ※危険認知速度は、ドライブレコーダー映像から推定。

表2-1 当該車両 車両 大型トラック 乗車定員 2名 当時の乗車人数 1名 最大積載量 5,000kg 当時の積載量 約 200kg 積載物品 冷凍食品 負傷程度及び人数 重傷 1 名

1 表2-2 関係した車両 相手車両1 相手車両2 車両 (乗用車) (乗用車) 車体の形状 ステーションワゴン 箱型 乗車定員 7名 5名 車両重量 1,610kg 910kg 当時の乗車人数 3名 1名 負傷程度及び人数 死亡 3 名 軽傷 1 名

始業点呼 ( アルコール チェック ) 車両移動 出庫 事故発生 出勤 荷積み 運転

14:30 14:52 15:28 15:48 16:15 図1 事故に至る時間経過

2 2 事実情報

本件については、一審における判決内容を不服として、当該運転者が控訴しており、 裁判が継続している。この報告書は、公表時点までに得られた事実情報を基に作成して おり、今後の裁判の進捗により、記載内容に不整合が発生した場合には、修正を行う可 能性がある。

2.1 事故に至るまでの運行状況等 2.1.1 事業者等からの情報 本運行における、事故に至るまでの経過等について、当該運転者が勤務していた事 業者(以下「当該事業者」という。)等から次のとおり口述が得られた。なお、当該運 転者に対し調査への協力を求めたが口述は得られなかった。 2.1.1.1 当該事業者からの情報 当該事業者の代表取締役社長であり、かつ本事故が発生した運行において始業点 呼を実施した運行管理者(以下「当該運行管理者」という。)の口述並びに関係資料 によると、事故に至るまでの経過は次のとおりであった。 (1) 事故前々日及び事故前日の運行状況 ・当該運転者は、主に東京都中央区豊海町の複数の卸売会社冷蔵庫(以下「卸 売会社冷蔵庫」という。)から冷凍食品を運ぶ運行を担当しており、東京中央 卸売市場開場日のカレンダーに従って運行している。本事故の前々日は市場 休業日のため休みであった。 ・当該運転者は自家用車で通勤し、群馬県前橋市所在の当該事業者の本社営業 所(以下「当該営業所」という。)敷地内の従業員駐車場に自家用車を駐車し ている(図2参照)。 ・事故前日は、13 時 54 分頃当該営業所事務所内で血圧の測定とアルコール検 知器による酒気帯びの有無の確認を行い、点呼場に掛けてある当該車両の鍵 を取っている。 ・始業点呼は運行管理者である自分が行った。 ・14 時 22 分頃、当該車両を車両置場から当該営業所の倉庫前に移動し、埼玉 県川口市所在のスーパーマーケットの物流センター(以下「物流センター」 という。)へ納品する冷凍食品の荷積みを行っている。 ・荷積み終了後、14 時 46 分頃、物流センターに向けて当該営業所を出庫して いる。 ・途中、埼玉県行田市内の上武道路沿いにあるコンビニエンスストアで約 30 分 間休憩し、18 時 57 分頃物流センターに到着している。

3 ・物流センターで約 50 分間荷下ろしを行い、19 時 47 分頃豊海町に向けて出発 している。 ・物流センターまではいつも同じ経路で運行しているが、物流センターから先 は道路事情により経路を選択して運行している。 ・20 時 40 分頃豊海町に到着し、車内で休憩を取っている。 ・約3時間 43 分間の休憩後、卸売会社冷蔵庫に移動し荷積みを行っている。 ・約 59 分間の荷積み後、1時 22 分頃当該営業所に向けて出発し、3時 49 分頃 到着。約 42 分間の荷下ろし後、当該車両の給油を行い、5時 22 分頃車庫に 当該車両を戻している。 ・5時 28 分頃当該営業所の事務所で、アルコール検知器による酒気帯びの有無 の確認を行い、勤務を終了している。

図2 当該営業所敷地概略図

始業点呼 終業点呼 ( アルコール 行田市 豊海町 ( アルコール チェック ) 車両移動 出庫 物流センター チェック ) 出勤 荷積み 運転 休 運転 荷下ろし 運転 休憩 荷積み 運転 荷下ろし 帰庫 憩 3:43 停車

13:54 14:22 14:46 16:43 18:57 20:40 0:23 3:49 5:22 5:28 17:13 19:47 1:22 4:31 図3 事故前日の運行状況

(2) 事故当日の運行状況 ・事故当日は 14 時 30 分頃当該営業所に出勤している。 ・出勤後、14 時 52 分頃事務所内の点呼場で血圧の測定とアルコール検知器に よる酒気帯びの有無の確認を行い、始業点呼を受け、点呼場に掛けてある当 該車両の鍵を取っている。

4 ・アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認の結果、アルコールは検出さ れていない。 ・始業点呼は運行管理者である自分が対面で行った。 ・15 時 28 分頃、当該車両を車両置場から当該営業所の倉庫前に移動し、約 20 分間荷積みを行っている。 ・荷積み後、15 時 48 分頃、物流センターに向けて当該営業所を出庫している。 ・その後 16 時 15 分頃本事故が発生した。

2.1.1.2 警察からの情報 警察から次の情報が得られた。 ・事故発生時刻は、令和6年5月6日 16 時 15 分頃である。 ・天候は曇りで、路面の状況は乾燥であった。 ・群馬県伊勢崎市の上武道路において、当該車両が約 90km/h で走行中、中央分離 帯を乗越えて対向車線に進出し、対向から進行してきた相手車両1、相手車両 2の2台の車両と衝突したもの。 ・相手車両1は、第2車両通行帯を約 60km/h で走行中、当該車両との衝突回避の ため第 1 車両通行帯に移動中に衝突した。 ・相手車両2は第1車両通行帯を約 60km/h で走行中に当該車両と衝突した。 ・事故後に実施した当該運転者の血液検査の結果、酒気帯び運転の処罰対象とな る基準値を超えるアルコールが検出された。

5 ※この図は、国土地理院の地理院地図(電子国土 web)を使用して作成した。 図4 事故に至る運行経路

6 表3 事故に至るまでの運行状況 休 始業点呼 13:54 卸売会社冷蔵庫着 0:23

前 前 (アルコールチェック) 当 荷積み (59 分)

々 日 倉庫前に車両移動 14:22 日 豊海町発 1:22 荷積み (24 分) 当該営業所着 3:49 日 当該営業所出庫 14:46 荷下ろし (42 分) コンビニエンスストア着 給油 (7 分) 16:43 休憩 (42 分) 休憩 (30 分) 帰庫 5:22 コンビニエンスストア発 終業点呼 5:28 17:13 (アルコールチェック) 物流センター着 18:57 荷下ろし (50 分) 物流センター発 19:47 豊海町着 20:40 出勤 14:30 休憩 (3 時間 43 分) 始業点呼 14:52 (アルコールチェック) 倉庫前に車両移動 15:28 荷積み (20 分) 当該営業所出庫 15:48 事故発生 16:15

(運転時間:2 時間 50 分) (運転時間:2 時間 54 分) 走行距離:138km 走行距離:144km ※表中に記載した時刻は、デジタル式運行記録計の時刻を記載した。

7 2.1.2 運行状況の記録 当該車両には、デジタル式運行記録計(以下「運行記録計」という。)及び車両前 方と車室内運転席付近の2ヵ所の映像が記録されるドライブレコーダーが装着され ていた。事故当日の各装置の記録状況は次のとおりであった。 2.1.2.1 運行記録計の記録状況 ・事故当日の運行記録計の 24 時間記録図表を図5-1に、4分間記録図表を図 5-2に示す。 ・記録開始 15 時 40 分頃から、最高車速約 90km/h から0km/h の停止まで車速の 増減を繰返し 16 時 15 分 50 秒頃に、約 90km/h から一気に0km/h となってい る。

24 時間記録図表

図5-1 事故当日の運行記録計の記録(〇は事故発生付近)

4分間記録図表

図5-2 事故当日の間運行記録計の記録(〇は事故発生付近)

8 2.1.2.2 ドライブレコーダーの記録状況 当該車両に装着されていたドライブレコーダーに記録されていた当該営業所出 庫前から事故に至るまでの映像記録における、当該車両及び車両前方の状況、当該 運転者の状況の概要を表4に示す。この記録によると、 ・15 時 47 分頃当該営業所を出庫し、15 時 50 分頃上武道路の第2車両通行帯に 入り、約 50km/h まで加速。信号で停止中の先行車に追着き、その後は先行車に 追従して 60~70km/h で走行している。 ・15 時 55 分頃第1車両通行帯に車線変更し先行車を追抜き、第2車両通行帯に 戻り、約 90km/h まで加速して走行している。 ・先行車に追従して 50~75km/h で走行中、16 時 03 分頃、第1車両通行帯から軽 自動車が先行車との間に割り込むが、特に当該運転者は割り込みに対して反応 していない。その後「急ブレーキです」の機械音声が聞こえる。 ・割り込んだ軽自動車が第1車両通行帯に移動する。 ・先行に大型トラックが現れ、追従して約 70km/h で走行中、黒色の乗用車が前方 車との間に割り込み、当該運転者がハンドルを右左に少し操作し、その後割り 込み車両が蛇行するような動きを行う。その後当該運転者の「ばか野郎」とい う声が聞こえる。 ・黒色の乗用車は、第1車両通行帯に移動し、交差点の黄色信号をそのまま走り 抜け、当該車両は交差点の赤色信号に従って停止し当該運転者の「やろー」と いう声が聞こえる。 ・交差点の信号が青色に変わる直前に、当該車両は発進し一気に加速している。 ・16 時 15 分頃、事故地点交差点で黒色のワゴン車が右折専用車線から右折する。 ・約 90km/h で走行中、事故地点交差点直前で右折専用車線方向に急に操舵し、直 ぐに左に操舵し当該運転者の「おー」の声が聞こえる。その後当該車両が事故 地点交差点内の中央分離帯前端部に接触する。 ・当該車両は蛇行しながら再度中央分離帯に接触し乗上げる。 ・前方に、第2車両通行帯から第1車両通行帯に移動する相手車両が見え、映像 が終了する。映像終了時の車速は約 71km/h。 ・記録されていた映像の開始から本事故までの間、交差点等での停止中に何かを 食べる様子は見られるが、何かを飲む様子は見られない。また、事故地点まで の走行中にふらつきや、極端な速度変動等の不安定な運転は見られない。

9 表4 ドライブレコーダーの記録状況 時刻 当該車両及び車両前方の状況 当該運転者の状況 15:44:33 当該事業者内で倉庫前から敷地出口に移動。 車の周りを点検する様子。 15:46:16 車内で何かを食べる様子が確認され、その後シート ベルトを締める。 15:47:00 当該事業者敷地から出発。 15:50:42 上武道路の第2車両通行帯に入り、先行車の居ない状況で 約50㎞/hまで加速。前方に赤信号の交差点で停止中の車両 が現れ徐々に減速。 15:51:32 信号で停止中の車両に追着く、信号が変わり先行車に追従 して発進。暫くは先行車両の後方を60~70km/hで走行。 15:55:11 約80㎞/hで第1車両通行帯へ車線変更して先行車を追抜 き、再び第2車両通行帯に戻る。 先行車が居なくなり約90km/hまで加速して走行。 15:56:39 先行車に追着き減速。先行車に追従して50~75km/hで走 行。 16:03:00 第1車両通行帯から軽自動車が先行車との間に割込む。 割込みに対して特に反応していない。 先行の軽自動車に追従して40~70km/hで走行。 「急ブレーキです」の機械音声が聞こえる。 16:07:25 信号で停止。 停止中に何か食べる。 16:09:37 先行の軽自動車が第1車両通行帯に移動し、先行車は大型 トラックとなる。 16:13:17 先行の大型トラックに追従して約70km/hで走行中、黒色の ハンドルを右・左に少し操作する。 乗用車が先行車との間に割込む。 16:13:20 黒色の乗用車が蛇行するような動きを行う。 運転者の「ばか野郎」の声が聞こえる。 16:14:04 黒色の乗用車は第1車両通行帯に移動し、交差点の信号が 黄色に変わった交差点を通過。 当該車両は信号で停止。 運転者のつぶやき「やろー」の声が聞こえる。 16:15:15 信号が青に変わる直前に動き始め、一気に加速。 16:15:43 黒色のワゴン車が右折車線から右折。 16:15:44 事故地点交差点直前で急に右に少し操舵し、直ぐに 左に操舵し再度右に操舵する。 直後に「おー」の声が聞こえる。 16:15:46 車速約90km/hで交差点内の中央分離前端部に接触。 右手で持つハンドルが衝撃とともに左右に振れる。 16:15:48 惰行しながら再度中央分離帯に接触し乗上げる。 前方に、第2車両通行帯から第1車両通行帯に移動する相 手車両1が見え、映像が終了する。映像終了時の車速は約 71km/h。

※時刻及び車速はドライブレコーダーに記録された数値を記載した。

10 2.1.2.3 事故後の確認状況 当該運行管理者の口述によると、事故後に確認された内容は以下のとおりである。 ・警察の要請により事故後の当該車両の確認に同席し、当該車両の車内に残され ている物品を1点ずつ取出し確認を行った結果、ゴミ袋に入った市販の弁当の 蓋と一緒にコンビニエンスストアのプライベートブランド品と思われる焼酎 の空容器(約 220ml・20%)が2個確認された。 ・本事故後に飲酒運転であったことを知ったが、アルコール検知器での確認は毎 回行っており、どこで飲んだのかも含めて全く認識していなかった。 ・当該営業所に設置されたアルコール検知器について、検知器製造事業者同席の 上、警察が確認を行った結果、数値の不正をすることはできないことを確認し ている。

2.2 死亡・負傷の状況 死亡3名(相手車両1の運転者及び2列目席同乗者) 重傷1名(当該運転者) 軽傷1名(相手車両2の運転者)

2.3 車両及び事故地点の状況 2.3.1 車両に関する情報 2.3.1.1 当該車両に関する情報 ・自動車検査証によると、初度登録年は平成 22 年であり、事故時の総走行距離は 795,292 ㎞であった。 ・衝突被害軽減ブレーキ等の運転支援装置は装備されていない。 ・事故により車両前面部を大きく破損しており、また、車両左側面部中央の巻込 防止装置及び燃料タンク付近にも損傷がみられる(写真1~3参照)。 ・前輪は大きく右に転舵されており、右前輪は左前輪よりさらに大きく転舵され、 通常の操舵角以上に転向している(写真4参照)。

11 表5 当該車両の概要 種類 大型トラック 車体の形状 冷蔵冷凍車 乗車定員 2名 車両重量及び車両総重量 5,810 ㎏、10,920 ㎏ 最大積載量 5,000kg 初度登録年(総走行距離) 平成 22 年(795,292 ㎞) 変速機の種類 手動 運転支援装置 無

図版写真1 当該車両前部右側 写真2 当該車両前面部

燃料タンク 右前輪 巻込防止装置

図版左前輪 写真3 当該車両左側面部 写真4 左右前輪転舵状況

12 2.3.1.2 相手車両に関する情報 (1) 相手車両1 ・相手車両1は、乗車定員7名のステーションワゴンである。 ・事故時3名が乗車しており、2名の同乗者は3列シートの2列目席に乗車し ていた。 ・当該車両が右斜め前方から正面衝突し、側道外側の防護柵まで押込まれ、当 該車両と防護柵に挟まれる形で押しつぶされ原形をとどめないほどに大破し ている。 ・衝突時の状況を図6に示す。 (2) 相手車両2 ・相手車両2は、乗車定員5名の箱型乗用車である。 ・事故時、運転者のみが乗車していた。 ・当該車両の左側面と、相手車両2の左前面部が衝突することで車両左前面部 を大きく破損している。 ・衝突時の状況を図6に示す。

相手車両1 相手車両2

当該車両 当該車両

図6 当該車両と相手車両1及び相手車両2の衝突時の状況

2.3.2 道路環境等 2.3.2.1 道路管理者からの情報 道路管理者から次の情報が得られた。 ・事故地点は、一般国道 17 号上武道路と伊勢崎都市計画道路上矢島米岡線の交 差する境交番交差点付近である。 ・事故時には事故地点付近での車道上の工事は行っていなかった。 ・事故地点に向かう道路は直線で勾配は概ね平坦である。 ・事故地点道路は上下線ともに片側2車線で、車道幅員は第1車両通行帯 3.5m、 第2車両通行帯 3.5mの計 7.0mである。また、高さ約 0.25m(分離帯におけ る縁石の高さ 0.25m以下の基準1に適合)、幅約 3.5mの中央分離帯があり、中

1 歩道の一般的構造に関する基準等について(国都街第 60 号、国道企第 102 号 平成 17 年2月3日) https://www.mlit.go.jp/road/sign/kijyun/pdf/20050203hodou.pdf

13 央分離帯に防護柵は設置されていない。 ・事故地点の道路と側道の境界は、高さは約 0.2m、幅は約 0.95mの縁石で仕切 られている。また、側道の外側に防護柵が設置されている(図7参照)。

※本図は国土交通省高崎河川事務所HP道路管理図から引用し車線名等を追記したもの。 図7 事故地点付近道路断面図

2.3.2.2 警察からの情報 警察から次の情報が得られた。 ・事故地点の上武道路の最高速度規制は法定速度の 60km/h でバス専用及び優先 レーンはなく、駐停車禁止である。 ・本事故前5年間の事故地点の前後約 100m間における事故件数は、追突等によ る人身事故が 10 件、物件事故が8件発生しているが、中央分離帯を乗越えた 事故事案はない。

表6 道路環境の状況 路面状況 乾燥 最高速度規制 60km/h(法定速度) 道路形状 片側 2 車線の直線道路 勾配は平坦 車道幅員 片側 7.0m(上下線共)

2.3.2.3 事故地点現地調査結果 ・事故地点の概略図を図8に示す。 ・交差点中央分離帯の前端部に接触痕が確認され、約 20m進んだ先の中央分離帯 に乗上げ痕があり、その先の中央分離帯上にはタイヤ痕が確認された。 ・中央分離帯前端部から約 85m先の側道外側の防護柵に衝突の痕跡が確認され た。 ・中央分離帯の縁石高さは約 0.25m、側道との境界の縁石高さは約 0.2mである (写真5-1、5-2参照)。

14 中央分離帯前端部 中央分離帯乗上げ部 防護柵衝突痕

図8 事故地点状況図

図版写真5―1 中央分離帯縁石高さ 写真5-2 側道縁石高さ

2.3.3 天候 曇り

2.4 当該事業者等に係る状況 2.4.1 当該事業者及び当該営業所の概要 当該事業者及び当該営業所の概要は次のとおりである。

15 表7 当該事業者及び当該営業所の概要 運輸開始年 昭和 52 年 資本金 12,500 千円 事業の種類 一般貨物自動車運送事業 所在地 群馬県 営業所数 1 ヵ所 従業員数(運転者を含む) 63 名 当該事業者総計 51 台 保有車両数 (大型 15 台、中型 24 台、 小型 4 台、トラクタ 4 台、トレーラ 4 台) 運転者数 36 名 運行管理者の選任数 3名

2.4.2 当該事業者及び当該営業所への監査等の状況 当該事業者への監査等の状況2は、次のとおりである。 2.4.2.1 本事故以前3年間の監査 当該事業者における過去3年間の監査及び行政処分等はなかった。

2.4.2.2 本事故を端緒とした監査 本事故を端緒として、当該事業者に対し、令和6年5月7日、同年5月 30 日及 び同年9月4日に監査が実施され、次の行政処分等が行われている。 (1) 行政処分の内容 当該営業所に対し令和7年1月 21 日に、一般貨物自動車運送事業の事業停止 処分 10 日及び輸送施設の使用停止処分 220 日車。 (2) 違反行為の概要 次の 15 件の違反が認められた。 ・乗務時間等告示の遵守違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則(以下「安全 規則」という。)第3条第4項) ・酒気を帯びた状態による業務(安全規則第3条第5項) ・疾病のおそれのある業務(安全規則第3条第6項) ・点呼の実施義務違反等(安全規則第7条第1項~第3項) ・業務記録の記載事項違反(安全規則第8条第1項) ・運転者台帳の記載事項違反(安全規則第9条の5第1項) ・運転者に対する指導監督違反(安全規則第 10 条第1項)

2 事業者への監査等の状況は、国土交通省が公表している自動車運送事業者に対する行政処分等の状況による。 行政処分情報(ネガティブ情報の公開):https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/index.html 参照

16 ・運転者に対する酒気帯び運転の禁止等の適切な指導監督違反(安全規則第 10 条第1項) ・運転者に対する最高速度違反行為の禁止等の適切な指導監督違反(安全規則 第 10 条第1項) ・初任・高齢運転者に対する指導監督違反(安全規則第 10 条第2項) ・初任・高齢運転者に対する適性診断受診義務違反(安全規則第 10 条第2項) ・整備管理者の研修受講義務違反(安全規則第3条の5) ・運行管理者の講習受講義務違反(安全規則第 23 条第1項) ・事故の未報告(貨物自動車運送事業法第 24 条) ・事業計画(事業用自動車の種別ごとの数)の変更事前届出違反(貨物自動車 運送事業法第9条第3項)

2.4.3 当該運転者 2.4.3.1 運転履歴 当該運行管理者の口述及び当該事業者の関係資料によると、当該運転者の運転履 歴は以下のとおりである。 ・平成 26 年 7 月に当該事業者に事業用自動車の運転者として雇用され、選任さ れており、当該事業者での運転経験は9年 10 ヵ月である。 ・当該事業者に採用される以前は、別の事業者で運転者として約 35 年間勤務し ており、当該業態車両の運転経験は約 44 年である。 ・運転者台帳は、専用の書式に氏名・現住所等が記載され、運転免許証のコピー が添付されているのみで、事業用自動車運転者としての選任年月日、履歴・運 転経験等のその他の情報が記載されていない。

2.4.3.2 運転特性 当該運行管理者及び総務担当者の口述によると、当該運転者の適性診断受診状況 及び運転特性に対する指導の状況は次のとおりであった。 ・当該運転者も含めて、当社では適性診断(初任)(以下「初任診断」という。) を含めて適性診断は受診させていなかった。 ・当該運転者は、基本的にそんなに飛ばす運転者ではなかったと思うが、「煽られ た」 「運転マナーが悪い」という苦情は半年に1回くらいはあった。他の運転者 は殆ど苦情がないので多い方だと思う。 ・苦情に対しては「自分の前を走っている車を自分の家族だと思って運転しろ」 「免許なくなるよ」と注意はしていた。 ・ 「周りの車に擦った」とか「観音扉がぶつかった」程度の事故はあったが、大き な物損事故等は今までになかった。

17 ・責任感が強く、時間に遅れることもなく、頼んだことは百パーセントやってき てくれる信頼している運転者。 ・荷物の取り扱いが丁寧で、他の運転者がパレット積を行う中、体力維持も兼ね ていつも手積みをしていた。 ・総務担当である自分がいつも出庫前に伝票を渡しているが、お酒臭かったこと は一度もなく、お酒が強い方でもなかったと思う。また、配送先の物流センタ ーの担当者の方も、本事故までにお酒臭かったことはなかったと言っていた。

2.4.3.3 健康状態等 当該運行管理者及び総務担当者の口述並びに健康診断結果の記録によると、当該 運転者の健康状態及び指導の状況は次のとおりであった。 (1) 当該運行管理者等の口述 ・事故前直近の健康診断は令和5年 11 月に受診させている。 ・令和5年 11 月の診断結果で「要精密検査」なっており、再検査表が来たので 受けてもらった。その結果問題がないということで返ってきている。 ・当該運転者については、毎日お酒を飲むという人ではないので、健康上の問 題はなかったと考えている。 (2) 健康診断結果の記録 当該運転者が令和5年 11 月に受診した健康診断の診断書の結果では、血圧等 で要再検査、血中脂質で要精密検査項目があり、総合判定は要精密検査と記載さ れている。

2.4.4 運行管理の状況 2.4.4.1 当該運転者の乗務管理 ・当該運転者のアルコール検知器による測定結果の記録及び運転日報によると、 事故日前1ヵ月の勤務状況については、表8及び図9のとおりである。 ・ 「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号。 以下「改善基準告示」という。)に定められた1日の拘束時間の上限値超過 18 件、休息期間の下限値不足 10 件が確認された。 ・当該事業者は、時間外労働・休日労働に関する協定を労使間で締結し、令和6 年1月に労働基準監督署へ届出している。1ヵ月の拘束時間は 293 時間で届出 ており、令和6年2月から令和7年1月まではこの時間が適用される。 ・ほぼ毎回の運行において、運行先で1~5時間の休憩・待機を行っている。

18 表8 当該運転者の事故日前1ヵ月の勤務状況 318 時間 46 分(平均 16 時間 47 分/日) 拘束時間 (事故日前 1 週間 64 時間 34 分) 123 時間 54 分(平均 6 時間 31 分/日) 運転時間 (事故日前 1 週間 23 時間 33 分) 1 日の拘束時間の上限値超過:18 件(上限値 15 時間) 休息期間の下限値不足:10 件(下限値 9 時間) 改善基準告示に関する 連続運転時間の上限値超過:0 件(上限値 4 時間) 基準の超過等 1 日の運転時間の上限値超過:0 件(上限値 2 日平均で 9 時間) 1 ヵ月の拘束時間上限値超過※:0 件(上限 320 時間) 休日数 3日 ※ 事故日前1ヵ月が、事業者の管理する期間と同一ではないため、法令違反の有無を示すものではない。

19 時刻 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 日

4月6日 30 日前 7:31

4月7日 29 日前 休息期間 30:34 14:05

4月8日 28 日前 拘束時間 17:16 7:21 休息期間 7:39 15:00

4月9日 27 日前 拘束時間 15:33 6:33

4月10日 26 日前 休息期間 32:24 14:57

4月11日 25 日前 拘束時間 14:50 5:46 休息期間 9:10 14:56

4月12日 24 日前 拘束時間 15:11 5:52 休息期間 8:49 14:41

4月13日 23 日前 拘束時間 17:14 7:55

4月14日 22 日前 休息期間 29:19 13:14

4月15日 21 日前 拘束時間 17:57 7:11 休息期間 7:47 14:58

4月16日 20 日前 拘束時間 17:53 8:51

4月17日 19 日前 休息期間 30:00 14:51

4月18日 18 日前 拘束時間 16:09 7:00 休息期間 7:56 14:56

4月19日 17 日前 拘束時間 16:03 6:59 休息期間 8:09 15:08

4月20日 16 日前 拘束時間 15:23 6:31

4月21日 15 日前 休息期間 30:53 13:24

4月22日 14 日前 拘束時間 18:21 7:45 休息期間 7:05 14:50

4月23日 13 日前 拘束時間 17:19 8:09

4月24日 12 日前 休息期間 30:49 14:58

4月25日 11 日前 拘束時間 16:15 7:13 休息期間 7:49 15:02

4月26日 10 日前 拘束時間 15:55 6:54 休息期間 8:05 14:59

4月27日 9 日前 拘束時間 15:41 6:40

4月28日 8 日前 休

4月29日 7 日前 14:13

4月30日 6 日前 拘束時間 15:35 5:48 休息期間 8:50 14:38

5月1日 5 日前 拘束時間 17:59 8:37 休息期間 6:18 14:55

5月2日 4 日前 拘束時間 16:12 7:07

5月3日 3 日前 休

5月4日 2 日前 休

5月5日 前日 13:54

5月6日 当日 拘束時間 15:34 5:28 休息期間 9:24 14:52 16:15 事故発生 ※「拘束時間」とは、各日の始業時刻から起算して 24 時間以内に拘束された時間の合計数を示す。 赤字は、拘束時間 15 時間超え、休息期間 9 時間未達を示す。 色部分は、市場での休憩・待機時間を示す。 図9 当該運転者の事故日前1ヵ月の勤務状況(当該事業者資料に基づき作成)

20 2.4.4.2 点呼及び運行指示 当該運行管理者の口述によると、運転者の点呼及び運行指示の状況については次 のとおりであった。 (1) 当該運行管理者の口述 ・事故当時、当営業所では3名の運行管理者を選任していた。 ・3名の運行管理者の業務割は作成していないが、統括運行管理者である自分 が中心となり運行管理者不在となることがないようにしていた。 ・点呼場には、血圧計とアルコール検知器があり、運転免許証を免許証リーダ ーに置き測定を開始すると測定結果と測定時の顔写真がパソコン上に記録さ れる。測定終了後に対面で点呼を行っている。 ・始業点呼が終わると、車両の鍵が保管されている場所から鍵を各運転者が自 分で取り、車両に向かい、終業時は各自で鍵を戻す工程としている。 ・始業点呼・終業点呼ともに同じ工程で実施している。 ・点呼記録簿は特になく、アルコールチェックの測定記録一覧を点呼記録簿代 わりにしており、拘束時間もアルコールチェックの時間で管理していた。 ・手書きの出勤簿があり、始業・終業時間、拘束時間、休憩時間、労働時間、 時間外労働、深夜労働の時間を各運転者が自分で記入しているが、勤務時間 等の集計には使用していない。 ・健康状態や疲労の確認は、話すことで大体わかるので点呼時に確認している。 ・点呼時に使用しているアルコール検知器は、6ヵ月又は 60,000 回測定後にメ ンテナンスが必要で、本事故の約2週間前にアルコール検知器製造事業者が 来て実施している。 (2) 点呼記録簿等の記録状況 ・点呼記録簿代わりのアルコールチェックの測定記録一覧には、ID番号、氏 名、測定日時、数値(呼気中アルコール濃度)、判定、免許期限までの日数及 び測定時の顔写真が記録されている。 ・事故日前1ヵ月間のアルコールチェック測定結果一覧では、呼気中アルコー ル濃度は何れも 0.000 となっており、血圧測定結果の欄は空欄となっており 記録はない。 (3) 当該運転者への運行指示状況 ・当該運転者が担当する卸売会社冷蔵庫は、東京中央卸売市場のカレンダーを 使用しており、運行日は同カレンダーで決まっている。 ・配送指示は、総務担当者が出庫表と納品書を渡すことで行っている。 ・物流センターへの納品は深夜の0時までとなっている。 ・卸売会社冷蔵庫の荷積み開始時刻は、22 時から 23 時頃で卸売会社ごとに異 なっている。開始時刻は各運転者の頭の中に入っており、それを記載した資

21 料はない。 ・各運転者は、出庫表をみて冷蔵庫の廻る順番を決めており「何時に何処へ行 け」等の指示は行っていない。 ・2~3名の運転者が当該運転者と同じ運行を担当しており、他の運転者は 18 時頃に出勤しているが、当該運転者はいつも他の運転者より早く出勤して豊 海町で休憩していた。 ・豊海町での休憩時間は長いと4時間ぐらいとなることもあり、短くするよう に指示しても「体内の時計が決まっている」と言って、言うことを聞いても らえなかった。 ・2024 年問題で拘束時間を短くするため、令和6年の4月から遅く出勤するよ うにしてもらい多少遅くなったが、それでも他の運転者より早かった。 (4) 当該運転者の運行状況 ・当該運転者の事故日前3運行の運行記録計の記録図を図 10 に示す。 ・当該運転者は、事故前1ヵ月間の運行において豊海町の卸売会社冷蔵庫への 運行では、到着後ほぼ毎日1~5時間の休憩を取っている。 ・本事故の発生した上武道路及び国道 122 号の最高速度規制は法定速度(60km/h) であるが、90km/h を超える速度での走行が確認できる。

22 図 10 事故日前3運行の運行記録計の記録

23 2.4.4.3 指導及び監督の実施状況 当該運行管理者の口述によると、当該事業者の指導監督の実施状況は次のとおり であった。 ・労働安全衛生法に基づく安全管理体制の構築、及び安全衛生教育等については 実施していなかった。 ・平成 13 年8月に国土交通省が作成した「貨物自動車運送事業者が事業用自動 車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(以下「指導監督指針」という。 ) に基づく月次教育については、契約により行政書士が年間計画を作って持って きていたが、実施していなかった。 ・運行記録計の記録で速度超過がある場合は口頭で「速度超過しないように」と 注意していた。 ・ドライブレコーダーの映像記録は、苦情があったときには確認して指導してい たが、それ以外で使用したことはなかった。 ・本事故後に、これではいけないと考え、運輸・物流業界向けソリューションの 専門展示会に行き、スマートフォンを使用したシステムを、事故の3ヵ月後か ら導入した。内容はWEB上での資料・動画視聴による受講と理解度確認テス トで実施している。

2.4.4.4 適性診断の受診及び活用状況 当該運行管理者の口述によると、本事故発生当時、当該運転者を含め適性診断は 受診させていなかった。現在は一般診断・適齢診断・初任診断含めて実施している。

2.4.4.5 運転者の健康管理 当該運行管理者の口述によると、運転者の健康管理の状況は次のとおりであった。 ・定期健康診断は群馬県トラック協会前橋支部から実施案内が来るので、人数を 登録して受診させており、運転者全員に年2回定期健康診断を受診させている。 ・本事故前は管理が十分でなく、未受診者が居たことで、本事故後の監査で指摘 を受けて、現在は未受診者が出ないように管理を行っている。

2.4.4.6 車両管理 当該運行管理者の口述によると、車両管理の状況は次のとおりであった。 ・本社営業所の車両管理体制は、整備管理者1名を選任している。 ・運行前の日常点検については、車両に乗務する乗務員が実施している。 ・3ヵ月定期点検は自社で実施し、12 ヵ月定期点検は車両販売元の自動車特定整 備事業者で実施している。

24 2.5 飲酒運転事故に関する情報 2.5.1 飲酒運転による死亡事故件数 警察庁が公表している飲酒運転事故に関するデータによると、自動車、自動二輪車 及び原動機付自転車(令和5年は特定小型原動機付自転車を含む。)の(第1当事者) 飲酒運転の死亡事故構成率は飲酒無しの約 7.4 倍(令和6年)と極めて高く、飲酒運 転による交通事故は死亡事故につながる危険性が高くなっている。

表9 飲酒による死亡事故構成率 平成 26 年 平成 27 年 平成 28 年 平成 29 年 平成 30 年 令和元年 令和 2 年 令和 3 年 令和 4 年 令和 5 年 令和 6 年

事故件数 539,753 505,882 470,715 443,197 403,129 354,484 286,216 281,836 276,059 282,072 266,075 死亡事故 飲酒無し 3,378 3,356 3,162 3,023 2,881 2,578 2,227 2,124 2,119 2,215 2,148 件数 死亡事故 0.63% 0.66% 0.67% 0.68% 0.71% 0.73% 0.78% 0.75% 0.77% 0.79% 0.81% 構成率 事故件数 4,155 3,864 3,757 3,582 3,355 3,046 2,522 2,198 2,167 2,346 2,346 死亡事故 飲酒あり 件数 227 201 213 204 198 176 159 152 120 112 140 死亡事故 5.46% 5.20% 5.67% 5.70% 5.90% 5.78% 6.30% 6.92% 5.54% 4.77% 5.97% 構成率 死亡事故における飲酒 8.7 倍 7.8 倍 8.4 倍 8.3 倍 8.3 倍 7.9 倍 8.1 倍 9.2 倍 7.2 倍 6.1 倍 7.4 倍 有の構成比 ※警察庁「飲酒運転による交通事故及び死亡事故件数推移(平成 26 年~令和6年)」により作成した。

2.5.2 事業用自動車の飲酒運転事故件数推移 ・事業用自動車の飲酒運転事故件数推移を図 11 に示す。 ・平成 19 年に飲酒運転に対する罰則の引き上げ、平成 21 年に飲酒運転に対する行 政処分の強化が行われ飲酒運転事故は減少したが、平成 24 年以降横ばいの傾向 が続いている。

25 図 11 事業用自動車の飲酒運転事故件数推移

2.5.3 国土交通省等による事業用自動車飲酒運転防止の取組み ・飲酒運転を防止するための具体的な取組やアルコールが身体に及ぼす影響などを 分かりやすくまとめたほか、アルコール依存傾向の強い運転者に関する症状の把 握や治療の必要性について記載した「自動車運送事業者における飲酒運転防止マ ニュアル3(令和6年3月)」を作成し、WEB上に公開している。 ・先進安全装置を搭載した事業用の車両を購入等する場合の購入に係る費用の補助 (先進安全自動車の導入に対する支援4)を実施しており、アルコールインターロ ック5も対象となっている。また、全日本トラック協会の「安全装置等導入促進助 成事業6」の対象にもなっている。 ・酒酔い・酒気帯び運転に係る行政処分基準の強化として、従前の基準に対して以 下を追加している(令和6年9月改正)。 ✓ 飲酒運転防止に係る点呼義務違反 初違反 100 日車 再違反 200 日車 ✓ 飲酒運転防止に係る指導監督義務違反 初違反 100 日車 再違反 200 日車

2.5.4 交通事故防止のための動画 警察庁が「交通事故防止のための動画リスト 7」をWEB上に公開している。飲酒運

3 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03manual/data/drunk_driving_prevention_manual.pdf 4 https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/esc_07.html 5 車載のアルコール検知器により、呼気中のアルコール濃度を測定し、規定値を超えるとエンジンの始動ができなくなる装置。 6 https://jta.or.jp/member/shien/anzen2025.html 7 https://www.youtube.com/playlist?list=PLoAoFXEnRkKEJMEnnZoYdhWC9JquxsJP2

26 転防止及び飲酒の影響等を題材にした動画を含む、交通事故全般を題材にした動画が 公開されており、事故防止に向けた貴重な情報を得ることができる。

2.6 飲酒と車両の運転に関する情報 2.6.1 アルコールが車両の運転に与える影響8 アルコールが車両の運転に与える影響について、公益財団法人 交通事故総合分析 センター9が公開している「イタルダ・インフォメーション」には、反応時間及び運転 操作に与える影響について以下の内容が記載されている。以下、原文のまま記載。 2.6.1.1 反応時間 「被験者に、お酒を飲んでいない時と飲酒した時に、前方を走っている車に追従 するという条件でシミュレーターを運転してもらい、選択反応(色の異なる点灯す るランプへの反応の速さを集計する)について、ボタンを押すという方法(ランプ の色で押すボタンが変わる)で実験を2種類(A・B実験)行いました。いずれの 実験でも、飲酒無しよりも飲酒した場合の反応時間が遅くなっています。また、飲 酒した場合、呼気中アルコール濃度の違いによる反応速度の大きな変化は見られず 飲酒した場合は一律に反応速度が遅くなっていることが判ります」

※被験者:A実験(25~57 歳)男性 24 名、B実験(25~51 歳)男性 18 名。 図 12 アルコールが運転時の反応時間に与える影響調査

2.6.1.2 運転操作 「アルコールがハンドルとアクセルの操作にどのような影響をあたえるか被験 者9名のハンドル角とアクセル度のデータについて分析を実施しました。飲酒した 場合、飲酒していない場合よりハンドルが大きく左右にふれたり、アクセルを強く 踏込む回数が多くなる被験者が数人いました。全被験者に共通する大きな動作の変 化は確認できませんでしたが、全体的に見るとお酒を飲んだ時の方がハンドル操作

8 「イタルダ・インフォメーション」 (公益財団法人 交通事故総合分析センター 2008 No.72) https://www.itarda.or.jp/contents/466/info72.pdf 9 https://www.itarda.or.jp/

27 やアクセル操作の動作が大きくなる傾向があるようです」

図 13 アルコールが運転時の運転操作に与える影響調査

2.6.2 飲酒運転の脳・体への影響 10 飲酒運転の脳・体への影響について、公益社団法人 アルコール健康医学協会11のホ ームページには「お酒を飲んで運転すると以下に挙げる影響が現れます」と紹介され ている。以下、ホームページでの紹介内容を原文のまま記載。 ・動体視力が落ち、視野が狭くなります。そのため信号の変化や路上の人や車の動 きの見極めが遅れます。 ・抑制がとれ理性が失われているため、運転に必要な判断力が低下しています。ス ピードを出していても気づかなかったり、乱暴なハンドルさばきをしてしまいま す。 ・集中力が鈍っているため、とっさの状況の変化に対応できなくなります。 ・運動をつかさどる神経が麻痺しているため、ハンドル操作やブレーキ動作が遅れ がちになります。 ・体の平衡感覚が乱れ、直進運転できず、蛇行運転をしたりします。このため、信 号無視、カーブを曲がりきれない、横断中の人の見落とし、ハンドル操作の誤り、 ガードレールや電柱への衝突などをして、悲惨な事故を招いてしまうのです。

2.7 アルコール依存症スクリーニング検査 アルコール依存症の疑いを簡易に把握することができるツールとして、アルコール使 用障害スクリーニングテスト12が使われている。日本では現在、KAST(久里浜式ア ルコール症スクリーニングテスト)、CAGE、AUDITなどがよく使われており、 いずれもWEB上に公開されている。本人が回答して評価するように作成されており、 点数配分などで本人の否認傾向も考慮されている。本人にアルコール依存症を気づかせ るために、また、家族が本人の飲酒問題の程度を知るために使用するものとなっている (参考資料参照)。

10 公益社団法人 アルコール健康医学協会ホームページ https://www.arukenkyo.or.jp/health/prevention/ 11 https://www.arukenkyo.or.jp/index.html 12 https://kurihama.hosp.go.jp/hospital/screening/

28 2.8 事故防止に向けた技術開発 2.8.1 飲酒運転事故防止に向けた技術開発 日本の自動車生産企業を会員とする業界団体(一般社団法人日本自動車工業会)で は、アルコールインターロックに変わる飲酒運転防止技術として、呼気センサー等の 専用センサーを用いることなく、ステアリング操作や車両挙動の車載センサーを使用 した飲酒運転推定技術 13の検討が始まっている。まだ検討段階であるが今後の実用化 に向けた取組みが進められている。

2.8.2 自動速度制御装置(ISA) 自動速度制御装置は、速度超過による事故防止を目的として、欧州では 2022 年7 月以降に生産される乗用車、商用車、トラックなどの新型車に、2024 年からは継続生 産車を含めて搭載が義務化されている。この自動速度制御装置が搭載された車両は、 地図情報や道路標識から取得した制限速度情報を用いて道路ごとに設定された制限 速度以下の速度での走行を運転者に警報等で促すシステム(Intelligent Speed Assistance)である。さらに、警報のみでなく、ブレーキ等で車速を制御するシステ ム(Intelligent Speed Adaptation)の検討も欧州で進んでいる。日本においては、 令和元年に国土交通省から車速制御を含む基本設計書14がまとめられている。

13 「運転操作と車両挙動から飲酒運転を推定する試み」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jje/52/Supplement/52_S394/_pdf 14 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001320703.pdf

29 3 分析

3.1 事故に至るまでの運行状況等の分析 2.1.2.2 に記述したドライブレコーダーの映像記録から、当該運転者は上武道路を事 故地点交差点へ向けて、第2車両通行帯を最高速度規制 60km/h を超える約 90km/h で 走行し、交差点手前(交差点先中央分離帯前端部から約 65m)で右折専用車線方向へ 右にハンドルを操作したことから、車両の走行安定性を失い、立直すことができずに交 差点先の中央分離帯前端部に右前輪を接触させたものと考えられる。約 90km/h の高速 で右前輪を接触させたことで、車両を制御することができなくなり中央分離帯を乗越え、 対向車線に進入し、対向車線を走行中の相手車両1と正面衝突したものと考えられる。 2.4.4.2(4)に記述したように、当該運転者の事故日前3日間の運行記録計の記録では、 事故地点を含む上武道路では約 90km/h での走行が確認された。また 2.1.2.2 に記述し た本事故当日のドライブレコーダーの記録でも先行車の居なくなる状況では約 90km/h まで加速し走行しており、最高速度規制を超える速度での走行は日常的に行われていた と推定される。 2.1.1.2 に記述した警察からの情報では、事故後の当該運転者の血液検査では、酒気 帯び運転の基準値を超えるアルコールが検出されている。また、2.1.2.2 に記述したド ライブレコーダーの記録には、事故地点手前で当該車両直前に割り込んだ車両に対して 憤慨した声が記録されており、事故地点交差点の右折専用車線から右折する割り込み車 両と同色の車両を発見し、割り込み車両と誤認しハンドルを右に操作した可能性が考え られる。事故時にアルコールを体内に保有していたことから、別車両を割込み車両と誤 認し、高速走行時であったにもかかわらずハンドルを右に操作し、そのハンドル操作は、 2.6 に記述した飲酒の影響により、速度感が薄れ、自身の感覚より大きく乱暴なハンド ル操作となっていた可能性が考えられる。その操作自体は何らかの意図をもって行われ たものと思われるが、割り込み車両と誤認した右折車両を煽ろうとしたものか、追いか けようとしたものかは当該運転者から口述が得られていないため不明である。 本事故当日、始業点呼時の 14 時 52 分頃に行った当該運転者のアルコール検知器に よる酒気帯びの有無の確認では呼気中のアルコールは検出されておらず、2.1.2.3 に記 述したようにアルコール検知器の数値の不正ができないことは確認されている。また、 2.1.2.2 に記述した当該車両が倉庫前から動き始める 15 時 44 分頃から事故発生までの 約 30 分間に飲物を摂取した映像は見られないことから、14 時 52 分頃から 15 時 44 分 頃までの約 52 分間にアルコールを摂取したと推定される。点呼時に発見されないよう に、また、ドライブレコーダーの映像に記録されないように、意図して点呼と出庫の間 で飲酒を行っていると推定されることから、飲酒運転の危険性に対する意識が薄れてい たものと考えられる。また、同じ運行を行っている他の運転者と異なり、早く出勤・出

30 庫し、運行先で長い休憩を取っており、この長い休憩は帰庫後のアルコール検査で検出 されないようにするためであった可能性が考えられる。これらのことから、飲酒運転は 本事故以前にも常習的に行われていた可能性が考えられる。

3.2 当該事業者等に係る状況の分析 3.2.1 運行管理の状況に係る分析 2.4.4.2(1)に記述したように、当該事業者では点呼記録簿は存在せず、アルコール 検知器による酒気帯びの有無確認結果を点呼記録簿代わりとしていた。また、当該運 行管理者を含む3名の運行管理者の勤務割もないことから、始業・終業点呼を誰が実 施したのか、点呼時にどのような内容が確認され、どの様な指示が行われていたかは 不明である。2.1.1.1 に記述した、事故当日も「始業点呼は運行管理者である自分が 対面で行った」との当該運行管理者の口述ではあるが、始業・終業点呼が適切に実施 されていたかを確認できる記録が存在しないため不明である。また、2.4.4.1(1)に記 述した当該運転者の事故日前1ヵ月間の運行記録計の記録では、拘束時間の超過等の 改善基準告示違反が多数確認されており、2.4.4.2(4)に記述したように最高速度規制 を超える速度での運転も継続的に確認されていることから、日々の運行記録の確認も 十分に行われておらず、適切な運行管理が実施されていなかった可能性が考えられる。

3.2.2 指導監督の状況に係る分析 2.4.3.2 に記述したように、当該事業者では初任診断を含め適性診断を実施してい なかった。当該運転者に対しては「煽られた」「運転マナーが悪い」等の苦情が多か ったものの、口頭で注意するのみで、適性診断を受診させ運転特性を確認し改善させ る取組みが十分に行われていなかったことから、速度超過等の先を急ぐ運転特性が改 善されずに継続的に行われていた可能性が考えられる。 2.4.4.3 に記述したように、本事故以前には、行政書士が作成した指導監督の年間 計画はあったものの実施されておらず、ドライブレコーダーの映像記録を使用した運 転特性に対する指導も、苦情対応時以外では行われていなかった。また、当該運転者 の拘束時間の超過に繋がる長時間の休憩について、2.4.4.2(3)に記述したように当該 運行管理者は注意していたものの「言うことを聞いてもらえなかった」と口述してい る。休憩時間を長くとることで、終業点呼時のアルコール検知器での酒気帯びの有無 の確認でアルコールが検出されないようにしていた可能性も考えられ、「聞いてもら えなかった」で終わらせずに、問題点が何かを正しく伝え、相手に理解してもらう指 導監督が不足していた可能性が考えられる。また、2.4.3.2 に記述したように、「責任 感が強く、時間に遅れることもなく、頼んだことは百パーセントやってきてくれる信 頼している運転者」であったことから、任せきりとなりコミュニケーションが不足し、 深夜運行専門の当該運転者に対する飲酒や睡眠等の生活面の指導等が不足していた

31 可能性が考えられる。 2.5.1 に記述したように、飲酒運転事故においては、死亡事故構成率が飲酒無しの 7.4 倍(令和6年数値)であり、その危険性は非常に高い。また、2.5.3 に記述した ように、平成 19 年に飲酒運転に対する罰則の引き上げ、平成 21 年に飲酒運転に対す る行政処分の強化が行われ、平成 23 年に事業用自動車事業者へのアルコール検知器 による酒気帯びの有無の確認が義務付けされているものの、飲酒運転による交通事故 は、平成 24 年以降横ばいまたは微減を続けている。アルコール検知器の使用の義務 付け以降に発生する飲酒運転事故は、本事故のように始業点呼時における確認後に行 われる飲酒が主な要因であると考えられる。飲酒運転事故を根絶するためには、始業・ 終業点呼時の確認はもちろん重要であるが、事業者の飲酒運転を許さないという強い 覚悟と姿勢を日々の指導監督において示すことで、「飲酒運転をしない・させない」 という強固な企業風土を構築することが重要である。このような当該事業者全体の法 令遵守・安全運行に対する取組みの姿勢の欠如により、当該運転者の法令遵守・安全 運行に対する意識が醸成されず、飲酒・速度超過の運転に繋がった可能性が考えられ る。

3.3 車両に係る状況の分析 3.3.1 当該車両に係る分析 2.1.2.2 のドライブレコーダーの記録に記述したように、当該車両は約 90km/h の 高速で、高さ約 0.25mの中央分離帯前端部に右前輪が接触しており、この時点で、右 前輪の操舵系にはかなりの損傷が発生していた可能性が考えられる。右前輪を接触さ せた後、その反動で縁石に乗上げることなく数メートル進むが、再度中央分離帯縁石 に接触し乗越え、対向車線に進入した可能性が考えられる。 中央分離帯縁石へ約 90km/h での接触により当該車両は激しく揺動しており、当該 運転者による制動操作ができる状況であったか、また行われていたかは不明であるが、 衝突直前の速度は約 71km/h であり、約 60km/h で走行していた相手車両1と正面衝突 することで、当該車両の前部が激しく損傷したものと推定される(写真1、2参照)。 また、車両左側面中央部には相手車両2が衝突したと思われる損傷が確認されており、 相手車両1を押しながら斜めに対向車線の第1車両通行帯を走行中に相手車両2が 当該車両左側面に衝突したものと考えられる(写真3、参考図1参照)。

3.3.2 相手車両1に係る分析 2.1.2.2 のドライブレコーダーの記録に記述したように、対向車線の第2車両通行 帯を走行していた相手車両1は、当該車両と衝突する直前に衝突を回避するための操 作と思われる、第1車両通行帯に移動する様子が記録されている。しかしながら衝突 を回避することができずに、相手車両1の斜め右前方から当該車両が衝突している。

32 車両重量約 11,000kg・車速約 71km/h の当該車両と車両重量約 1,600kg・車速約 60km/h の相手車両1が正面衝突することで、相手車両1はそのまま押され、側道縁石 を越え、側道外側の防護柵と当該車両との間に挟まれる形となった。相手車両1の損 傷が非常に大きかった要因は、衝突時の相対速度が大きかったこと及び相手車両1の 前方からの衝突荷重を吸収する車両前後方向の強度構造の外側に斜めに当該車両が 衝突したことにより、車両の衝突荷重吸収構造が有効に働かなかったことによるもの である可能性が考えられる(2.3.1.2 図6参照)。

3.3.3 相手車両2に係る分析 相手車両2は、相手車両1の後方の第1車両通行帯を走行中、第1車両通行帯を斜 めに進行する当該車両の左側面と衝突し 、左前面を破損したものと考えられる (2.3.1.2 図6参照)。

33 3.4 飲酒後の血中アルコール濃度に係る分析 2.1.2.3 に記述した、本事故後に当該車両内から発見された焼酎 について1本 (220ml・20%)を飲んだ場合の飲酒後の血中アルコール濃度は、一般的な計算式「ウ ィドマーク計算式」によると、摂取したアルコール量は約 35.2g で、摂取による血中ア ルコール濃度は 0.69~1.11 ㎎/ml となる(呼気中アルコール濃度 0.35~0.56 ㎎/L 相 当)。始業点呼直後の 15 時頃に摂取した場合、事故時の 16 時 15 分頃の血中アルコール 濃度は 0.45~0.97mg/ml(呼気中アルコール濃度 0.23~0.49 ㎎/L 相当)であり、酒気 帯び運転の処罰対象となる基準値 0.3mg/ml(呼気中アルコール濃度 0.15mg/L 相当)を 大きく超えていたと考えられる。また、摂取されたアルコールが完全に体内で消費され るまでに必要な時間は4~11 時間となる(体重を 53kg として計算)。 仮に、当該車両から発見された焼酎を2本飲んだ場合においても、当該運転者の始業 から終業迄の拘束時間は 14 時間以上あり、体質によっては終業時にはアルコールが体 内で消費されている可能性が考えられる。 以上から、事故当日の出庫から本事故まで間は、かなり高い血中アルコール濃度であ った可能性が考えられるものの、2.1.2.2 に記述したように、ドライブレコーダーに記 録された事故時の当該運転者の運転おいては、ふらつきや、極端な速度変動等は見られ ないことから、比較的アルコールに強い体質であった可能性が考えられ、このことも飲 酒運転に対する罪の意識の低下につながる要因であった可能性が考えられる。

【ウィドマーク計算式】 アルコール摂取量(g) = 飲酒量(ml) × アルコール濃度(%) × 0.8 (アルコール比重) 血中アルコール濃度(mg/ml) = アルコール摂取量 ÷ { 体重(kg)×(0.6~0.96) } (アルコール体内分布係数) 1時間当りの減少率 = 0.11~0.19 ㎎

摂取した純アルコール量とアルコール分解時間については、簡単に把握できるツール として、厚生労働省がWEB上に公開している「アルコールウォッチ 15」を利用して把 握することができる。

15 https://izonsho.mhlw.go.jp/alcoholwacth/

34 4 原因

事故は、当該運転者が、片側2車線の道路の第2車両通行帯を走行中、ハンドル操作 を誤り、信号機のある交差点先の中央分離帯前端部に右前輪を接触させ、その後中央分 離帯を乗越え対向車線を走行中の2台の乗用車に衝突したことにより発生したものと 推定される。 当該運転者は、最高速度規制 60km/h の道路において約 90km/h の高速で走行中、事故 地点交差点手前で第2車両通行帯から右折専用車線方向へハンドルを操作したことで、 車両の走行安定性を失い、中央分離帯前端部に右前輪を接触させた。これにより車両の 制御が不能となり中央分離帯を乗越え対向車線に進入したものと考えられる。 事故後の調査で、当該運転者の血中アルコール濃度が酒気帯び運転の処罰対象となる 基準値を超える数値であったことが確認されている。また、当該車両の事故前のドライ ブレコーダーの映像には、事故の約2分 30 秒前には急に前方に割り込んだ車両に憤慨 した当該運転者の様子が記録されており、さらに事故直前には事故地点交差点の右折専 用車線から右折する同色の別車両が記録されている。事故時にアルコールを体内に保有 していたことから、この別車両を割り込み車両と誤認し、アルコールの影響により感情 のコントロールができずに、意図的にハンドルを右に操作した可能性が考えられる。 当該運転者は、事故当日の始業点呼時のアルコール検知器による酒気帯びの有無の確 認ではアルコールは検出されておらず、点呼時に検出されないように意図して点呼後に 飲酒を行ったものと推定される。また、同じ事業者の他の運転者と異なり、運行途中に 長い休憩を取っており、この長い休憩は帰庫後にアルコールが検出されないようにする ためであった可能性も考えられる。当該運転者は比較的アルコールに強く運転に影響の でにくい体質であったと考えられ、飲酒運転は本事故以前から常習的に行われていた可 能性が考えられる。最高速度規制を大きく超える速度での走行についても、事故前1ヵ 月間の運行において複数回確認されており、当該運転者の法令遵守に対する意識が低い 状態であった可能性が考えられる。 事業者においては、煽り運転等の運転に対する苦情の多かった当該運転者を含め、適 性診断による運転特性の把握が行われていなかった。また、定期的に行う事が義務づけ られている安全運行に対する指導監督も行われておらず、運行記録計の記録やドライブ レコーダーの映像記録を使用した運転特性に対する指導も行われていなかった。さらに は、始業・終業点呼においても、運転者がアルコール検知器による酒気帯びの有無確認 を行った記録を残すのみで、運行管理者からの注意事項等の指示や健康状態の確認等を 行った記録も残されておらず、適切に実施されたかも不明である。これらにより、事業 者として安全最優先、法令遵守の企業としての姿勢を事業者内全体に示すことができて いなかったことから、当該運転者の法令遵守の意識が醸成されずに、飲酒運転・速度超

35 過の運行が繰返され事故につながった可能性が考えられる。

36 5 再発防止策

5.1 事業者の運行管理に係る対策 5.1.1 運行管理に係る法令遵守の徹底 事業者は、運行の安全を確保するため、運行管理者と共に次に掲げる取組みを継続 的に実施することが必要である。 ・始業・終業点呼は、運転者の健康状態等を確認する重要な工程であると同時に、 事業者の安全運行に対する姿勢を示し、運転者に理解させる重要な機会であるこ とを肝に銘じ、原則対面で真剣に取組むこと。 ・日々の運行では、適切な運行計画の作成と指示を行い、運行終了後には運行記録 計の記録を確認し、速度超過等の道路交通法違反や拘束時間の超過等の改善基準 告示違反の有無を確認し、同じ違反が繰返されることのないよう指導監督するこ と。 ・飲酒運転事故は、始業点呼後の飲酒に起因するものであり、点呼時のアルコール 検知器による酒気帯びの確認では根絶できないことを認識し、運転者の飲酒習慣 を把握する。必要に応じて日々の運転状況をドライブレコーダーの映像記録等で の観察や、運行途中での長時間の休憩取得後等には、携帯型アルコール検知器を 使用した確認を行うこと。 ・点呼時のアルコール検知器による酒気帯びの確認から出庫までに、荷積み等で時 間を要する場合は、出庫時に改めて酒気帯びの有無を確認するように努めること。 ・飲酒習慣は、健康診断結果や本人及び家族等からの聞き取りや、WEB上に公開 されている「アルコール使用障害同定テスト(AUDIT) 」等のアルコール依存 症スクリーニング検査を実施し把握すること。

5.1.2 運転者への指導監督の徹底 事業者は、運行の安全を確保するため、運行管理者と共に、次のような指導監督を 継続的に実施することが必要である。 ・自動車運送事業は、貨物を安全・確実に輸送することが社会的使命であることを 認識させるとともに、事業用自動車による交通事故が社会に与える影響の大きさ を理解させ、運行の安全を確保することが使命であることを理解させること。 ・飲酒運転の根絶は、悲惨な被害者を出さないことはもとより、事業者自身のみで はなく、自社の運転者を悲惨な事故加害者にしないために取組むべき課題である ことを認識し、以下の取組みを行うこと。 ✓ 国土交通省が作成した「自動車運送事業者における飲酒運転防止マニュアル」 を活用し、飲酒運転防止に対する正確な情報を理解し、事業者として飲酒運

37 転根絶に取組むこと。 ✓ 飲酒運転の根絶には事業者の決意と姿勢が重要であり、事業者は飲酒運転を 絶対に許さないという決意と姿勢を示し、事業者内全体に浸透させ、飲酒運 転をしない・させない強固な企業風土を構築すること。 ✓ 飲酒運転は、重大な死亡事故につながる可能性が非常に高いことを事故事例 や統計データを使用して運転者にその危険性を正確に理解させること。 ✓ アルコールが運転に及ぼす影響について、警察庁がWEB上に公開している 動画の活用や、自動車教習所等で実施している「飲酒運転体験ゴーグル」を 使用した飲酒運転体験講習等を利用し、その影響の大きさを理解させること。 ✓ 飲酒後の血中アルコール濃度と、時間経過による変化については、厚生労働 省がWEB上に公開しているアルコール量とアルコール分解時間を把握する ツール「アルコールウォッチ」やウィドマーク法の計算手法等を用いて、時 間が経過しても簡単に抜けないアルコールの状況を理解させること。 ✓ 運転者を新規に雇用する際は、運転記録証明書等により飲酒運転等の道路交 通法違反歴を確実に把握し、雇用及び運転者としての選任について慎重に検 討すること。また、就業規則に飲酒運転を行った場合には(懲戒)解雇する 旨の規定を記載することを検討すること。 ✓ 雇用後においては、運転者の飲酒傾向等を継続的に把握するとともに、アル コール依存症スクリーニングテストを実施し、 「自動車運送事業者における飲 酒運転防止マニュアル」等を参考に、改善に向けた指導監督を行うこと。 ・適性診断は運転者の運転特性を把握する有効なツールであり、定期的に受診させ、 運行記録計の記録やドライブレコーダーの映像記録と合わせて、運転特性の改善 に活用すること。 ・指導監督にあたっては、運転者が自ら考えることにより、その内容を十分に理解 できるよう手法を工夫するとともに、常に運転者の習得の程度を把握しながら進 めること。また、参加・体験・実践型の手法を積極的に活用すること。 ・効果的な指導監督を自社で行うことが難しい事業者においては、専門的な知識、 技術並びに指導のための場所を有する外部専門的機関(独立行政法人自動車事故 対策機構や自動車安全運転センター等)の積極的な活用を検討すること。

5.2 自動車単体に係る対策 飲酒運転を防止する車両での対策技術として、アルコールインターロックが量販され、 各大型自動車製作者では注文設定が可能となっている。また、国土交通省及び全国のト ラック協会では導入のための補助金が設定されており、事業者においては、特に必要と 思われる運転者に対しては補助金を利用して取付けることを検討すること。 また、自動車製作者においては、アルコールインターロックに変わる飲酒運転防止技

38 術として「運転操作と車両挙動から飲酒運転を推定する試み」の検討が進められており、 運転者の運転操作や運転者の状態をモニターすることで、飲酒運転を検出し事故を未然 に防止する技術開発の促進が望まれる。 事故による死亡率の高い速度超過の防止を目的とした、道路ごとに設定された制限速 度以下に車速を制御する、自動速度制御装置(Intelligent Speed Adaptation)は、国 土交通省で基本設計書がまとめられているが、まだ実用化には至っていない。事故の被 害軽減には効果が期待されることから、国土交通省及び自動車製作者における開発促進 が望まれる。

5.3 本事案の他業者への水平展開 国土交通省及び運送事業者等の関係団体においては、他事業者における同種事案の再 発防止を図るため、運行管理者講習、運送事業者等が参画する各地域の事業用自動車安 全対策会議や各種セミナー、メールマガジン等を通じ、本事案の周知・徹底を図る必要 がある。

39 ※この図は、国土地理院の地理院地図(電子国土 web)を使用し、事故地点の道路及び概略の車両の位置を追記した図であり 正確な縮尺、位置関係にはなっていない。 参考図1 事故発生概要図

参考図2 当該車両外観図

40 参考資料 アルコール使用障害スクリーニングテスト ・KAST―M(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト 男性版)

・KAST―F(久里浜式アルコール症スクリーニングテスト 女性版)

41 ・CAGE(アルコール依存症スクリーニングテスト)

42 ・AUDIT(アルコール使用障害同定テスト)

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FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:事故報告