令和8年8月5日

運輸審議会は、標記事案について棄却すべきであるとの審査庁の判断は妥当である旨、本日、国土交通大臣に対して答申しました。

主要指標 — KEY FIGURES

令和8年5月27日
令和8年5月27日付けで国土交通大臣から運輸審議会に対し諮問がありました
令和4年 12 月 27 日
令和4年 12 月 27 日付けで国土交通大臣が行った東日本旅客鉄道株式会社への旅客運賃上限変更認可処分

令和8年5月27日付けで国土交通大臣から運輸審議会に対し諮問がありました標記事案について、審議の結果、棄却すべきであるとの審査庁の判断は妥当であるとの結論に達し、本日、国土交通大臣に対して答申しました(事案の内容、答申結果等は別紙のとおりです)。

審議における配付資料及び議事概要は以下のURLで後日公表予定です。

https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/unyu00_sg_000021.html

○運輸審議会について

運輸審議会は、国土交通大臣の行う許認可等について諮問を受け、これに対して、各方面の意見を汲んだ上で公平かつ合理的な答申を行う常設の機関です。

公聴会を除く審議は非公開で行いますが、配付資料及び議事概要については、答申後に運輸審議会のホームページにて公表する予定です。

添付資料

報道発表資料 (PDF形式)

お問い合わせ先

運輸審議会における審議に関する問合せ先 総合政策局運輸審議会審理室 鍋釜、藤間

TEL:(03)5253-8111 直通 03-5253-8810

本件審査請求事案に関する問合せ先 鉄道局鉄道事業課旅客輸送業務監理室 渡邉、石田

TEL:(03)5253-8111 (内線40642) 直通 03-5253-8543

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添付資料1 令 和 8 年 8 月 5 日 総合政策局運輸審議会審理室

「東日本旅客鉄道株式会社への旅客運賃上限変更認可に係る 審査請求事案」に関する答申について

運輸審議会は、標記事案について棄却すべきであるとの審査庁の判断は妥当 で あ る 旨、 本 日 、 国 土 交 通 大臣 に 対 し て 答 申 し まし た 。

令 和 8 年 5 月 27 日 付 け で 国 土 交 通 大 臣 か ら 運 輸審 議 会 に 対 し 諮 問 があ り ま し た 標 記 事 案に つ い て 、 審 議 の 結果 、 棄却すべきであるとの審査庁の判断は妥当で あ る と の 結 論 に 達し 、 本 日 、 国 土 交 通大 臣 に 対 し て 答 申 しま し た ( 事 案 の 内 容、 答 申 結 果 等 は 別 紙の と お り で す ) 。

審 議 に お け る 配 付 資 料 及 び 議事 概 要 は 以 下 の URL で 後 日 公 表 予 定 で す 。 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/unyu00_sg_000021.html

○運輸審議会について 運 輸 審 議会 は 、国 土 交 通 大 臣の 行 う 許 認 可 等 に つい て 諮 問 を 受 け 、こ れに 対 し て 、 各 方 面 の 意 見 を 汲 ん だ 上で 公 平 か つ 合 理 的 な答 申 を 行 う 常 設 の 機関 で す 。 公 聴 会 を除 く 審 議 は 非 公 開 で行 い ま す が 、 配 付 資料 及 び 議 事 概 要 に つい て は 、 答 申 後 に 運 輸 審 議 会 の ホ ー ムペ ー ジ に て 公 表 す る予 定 で す 。

[運輸審議会における審議に関する問合せ先] 総合政策局運輸審議会審理室 鍋釜、藤間 (直通)03-5253-8810 [本件審査請求事案に関する問合せ先] 鉄道局鉄道事業課旅客輸送業務監理室 渡邉、石田 (代表)03-5253-8111(内線 40642)、(直通)03-5253-8543 別紙 【申請者】小井土 直樹

【事案の種類】審査請求の裁決

【事案の内容】 令和4年 12 月 27 日付けで国土交通大臣が行った東日本旅客鉄道株式会社への旅 客運賃上限変更認可処分(令和四年国鉄事第五百四十六号)の取消を求める審査請 求について

【運輸審議会答申】棄却すべきであるとの審査庁の判断は妥当 国 運 審 第 8 号 令和8年8月5日

国土交通大臣 金子 恭之 殿

運輸審議会会長 堀川 義弘

答 申 書

東日本旅客鉄道株式会社への旅客運賃上限変更認可に係る 審査請求について

令8第 3001 号

令和8年5月 27 日付け国鉄事第 244 号をもって諮問された上記の事案 については、令和8年7月 14 日に東京都において公聴会を開催し、同月 16 日に東京都において意見聴取を行い、審議した結果、次のとおり答申 する。

1 主 文

東日本旅客鉄道株式会社への旅客運賃上限変更認可に係る審査請求に ついては、棄却すべきであるとの審査庁の判断は妥当である。

理 由

第1 事案の概要 本件は、国土交通大臣が東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日 本」という。)に対して令和4年 12 月 27 日付けで鉄道事業法(昭和 61 年法律第 92 号)第 16 条第1項に基づく認可処分(以下「本件認可 処分」という。)をしたところ、審査請求人が本件認可処分は同条第 2項に違反した通達に基づき行われたものである、及び、認可に当た っての総収入の算定は合理性を欠くものであるとして、本件認可処分 の取消等を求めて審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした 事案である。 1 関係する法令の定め (1)鉄道事業法第 16 条第1項は、鉄道運送事業者は、旅客の運 賃及び国土交通省令で定める旅客の料金の上限を定め国土 交通大臣の認可を受けなければならない、これを変更しよう とするときも同様とすると規定している。 (2)鉄道事業法第 16 条第2項は、国土交通大臣は、前項の認可 をしようとするときは、能率的な経営の下における適正な原 価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどう かを審査して、これをしなければならないと規定している。 (3)国土交通省鉄道局が定めた鉄道局関係審査基準・標準処理期 間(平成 19 年6月 25 日国鉄総第 13 号)は、鉄道事業法第 16 条第1項の認可に係る審査基準として、具体的には、運賃 及び料金の上限が効率的かつ合理的に鉄道事業を経営した

2 場合における適正な原価に公正妥当な利潤を加えたものを 回収し得るような水準を超えないものであることと規定し ている。また、審査の際に用いる収入原価等の基本的な算定 方法として、JR旅客会社、大手民鉄及び地下鉄事業者の収 入原価算定要領(平成 12 年3月1日鉄業第 10 号)を定めて いる。 (4)国土交通省鉄道局鉄道事業課長が定めた運賃収入の増加を目 的としない運賃の上限の変更に関する処理方針(令和4年9 月 14 日国鉄事第 287 号、以下「処理方針」という。)は、 変動運賃制(運賃収入を増加させないことを前提に、変更し た上限の範囲内において割増の運賃と割引の運賃を組み合 わせた設定をいう。以下同じ。)を実施する場合には、変動 運賃制を実施した場合の運賃収入と実施しなかった場合の 運賃収入を適切な方法で比較及び検証し、変動運賃制の実施 によって運賃収入が増加しないことをもって、適正な原価に 適正な利潤を加えたものを超えないとみなすこと、収入原価 算定要領を適用しないこと、変動運賃制は一定の期限を定め て実施すること、運賃の上限の変更については利用者利益の 保護の観点から適切なものであることを確認すること、変動 運賃制の実施に必要な事項を定めた計画を認可申請時に提 出すること、変動運賃制の実施期間中は総括原価に著しい影 響を及ぼすことが明らかなダイヤ改正等は行わないこと等 を規定している。 2 事案の経緯 各項末尾掲記の資料によれば、本件の経緯は次のとおりである。 (1)JR東日本は、令和4年9月 16 日付けで、国土交通大臣に 対し、変動運賃制を実施するため、鉄道事業法第 16 条第1 項に基づく運賃上限変更認可を申請した。(別添1) (2)国土交通大臣は、令和4年9月 21 日付けで、運輸審議会に 対し、当該申請について諮問した。(別添2)

3 (3)運輸審議会は、令和4年 12 月 15 日付けで、国土交通大臣に 対し、期限に係る条件を付した上で認可することが適当であ る旨、また利用者に対する丁寧な説明や購入に当たってのデ メリットも含めた積極的な周知等の要望事項を付した上で、 答申した。(別添3) (4)国土交通大臣は、令和4年 12 月 27 日付けで、有効期限を令 和8年3月 31 日までとして、予め利用者等への十分な周知 を図ること等の条件を付した上で、本件認可処分を行った。 (別添4) (5)審査請求人は、令和4年 12 月 27 日付けで、国土交通大臣に 対し、本件認可処分の取消及び執行停止を求めて本件審査請 求を行った。(別添5) (6)国土交通大臣は、令和5年7月7日付けで、JR東日本の鉄 道利用者にすぎない原告には審査請求人適格がなく本件審 査請求は不適法であり、かつ、これを補正することができな いことが明らかであるとして、行政不服審査法(平成 26 年 法律第 68 号)第 24 条第2項及び第 45 条第1項の規定に基 づき、本件審査請求を却下する裁決を行った。また、同日付 けで、執行停止をしない旨の決定も行った。(別添6-1、 6-2) なお、この際、国土交通省設置法第 15 条第3項に該当す ることを理由に、運輸審議会への諮問は行われていない。 (7)審査請求人は、令和6年1月 10 日付けで、当該裁決の取消 等を求める訴えを提起した。(別添7) (8)東京地方裁判所は、令和7年5月 22 日付けで、当該裁決を 取り消す旨の判決を言い渡した。その後、東京高等裁判所は、 令和8年1月 28 日付けで、当該裁決を取り消す旨の判決を 言い渡し、令和8年2月 20 日付けで同判決が確定した。(別 添8-1、8-2、8-3) (9)判決の確定を受けて、本件審査請求の審理(審理員の指名、

4 弁明書の提出、反論書の提出、物件提出要求等)が行われ、 審理員は、令和8年5月 22 日付けで、国土交通大臣に対し、 本件認可処分には違法又は不当な点がなく、本件審査請求に は理由がないことから、本件審査請求は行政不服審査法第 45 条第2項の規定に基づき棄却されるべきとの意見書を提出 した。(別添9) (10)国土交通大臣は、令和8年5月 27 日付けで、運輸審議会に 対し、本件審査請求について諮問した。(別添 10) (11)運輸審議会は、令和8年6月4日付けで審議を開始した。そ の中で、同年7月 14 日に東京都で公聴会を開催(審査請求 人、処分庁及び一般公述人2名が公述)し、同月 16 日にJ R東日本より意見聴取を行った。 3 審査請求人の主張の要旨 審査請求人は、次の理由により、本件認可処分の取消を求めてい る。 (1)処理方針に基づいて行われた本件認可処分に係る審査が違法 又は不当であること 処理方針に従い、届出に基づいて行われる割引運賃の実施を前 提として収入額を算定することは、上限運賃により算定した総収 入が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加え たものを超えないものであるかどうかを審査すると定めた鉄道 事業法第 16 条第2項及びJR旅客会社、大手民鉄及び地下鉄事 業者の収入原価算定要領第2章第2節1.(2)と整合せず、違 法又は不当である。 運賃上限変更認可の申請時に実施計画が提出されていても、そ の認可後にオフピーク定期券運賃の廃止又は縮減を鉄道運送事 業者が届け出た場合、国土交通省はこれを受理せざるを得ず、こ のような廃止又は縮減を制約する法的担保は存在しない。鉄道事 業法第 23 条に基づく事業改善命令は事後的な是正措置であって 制度設計が異なるものであり、結果的には、総括原価の審査を経

5 ずに運賃の値上げ・収入の増加を図ることが可能となっており、 鉄道事業法第 16 条の定めを空洞化させるものと言わざるを得な い。変動運賃制を導入するのであれば、割引についても認可の対 象とすべきである。 また、オフピーク定期券運賃の導入によりピーク時のラッシュ が緩和されれば、ピーク時の運転本数の減少等を通じてコスト削 減につながるため、総括原価が変化しないという処理方針の前提 には誤りがある。 さらに、JR東日本ではコロナ禍時の終電繰上や令和5年3月 の山手線運行本数の見直し(削減)等の原価削減に向けた取組が 行われてきたこと、昭和 62 年の会社設立以降 36 年間も本格的な 運賃改定が行われていないことを踏まえれば、総括原価を改めて 審査する必要があり、処理方針に定める方法では審査したことに はならないというべきである。 (2)JR東日本による想定(総収入の算定)が合理性を欠くこと JR東日本による需要予測に関し、外国人観光客数の回復、出 張の再開、リモートワーク廃止の動き、対面コミュニケーション の重要性の再認識といった動きが見られ、列車の混雑度も上昇し ていることを踏まえると、通勤需要がコロナ禍前(令和元年)実 績の 80%に留まるとする想定に合理性があるとはいえない。 また、給与規定の運用変更など新制度の円滑な導入には3年程 度を要すると考えるのが自然であること、全く新しい制度にもか かわらず充分な広報を欠いていること、オフピーク定期券の割合 が高まることはJR東日本にインセンティブがないこと、現行の 通常定期券でもオフピーク時間帯に利用することで付与される ポイントがオフピーク定期券導入後も継続されるのであれば労 働者側にもインセンティブがないこと、算定の根拠となったアン ケート調査を実施した令和4年春時点から利用者の意識が大き く変化していること等を踏まえると、切替遅れによる増収 10 億 円、オフピーク定期券購入率 17.8%(審査請求書記載のママ)、

6 先買いによる減収1億円という想定には合理性があるとはいえ ない。オフピーク定期券購入者による定期外利用の増収額が 35 億円となる合理的な証拠資料も提出されていない。 さらに、対象に中小企業が含まれていなかった可能性があり、 アンケートに欠陥があったことが想定されるほか、オフピーク定 期券の利用率に変化を及ぼす距離別の分析が為されておらず、分 析が合理的であるということもできない。 実際にオフピーク定期券の利用率は、割引率を 15%に引き上げ た令和6年 11 月(反論書記載のママ)時点でも 9.4%と目標を大 きく下回り、JR東日本に超過収入をもたらしている。 第2 諮問に係る審査庁の判断 審査庁は、審理員の意見のとおり、本件認可処分には違法又は不当 な点はなく、本件審査請求には理由がないため、行政不服審査法第 45 条第2項の規定により棄却されるべきとしている。審理員の意見の概 要は次のとおりである。 1 審理員が認定した事実 (1)処理方針は、第2次交通政策基本計画(令和3年5月 28 日 閣議決定)や交通政策審議会鉄道運賃・料金制度のあり方に 関する小委員会中間取りまとめ(令和4年7月)を受けて、 通勤時間帯等の混雑緩和促進を目的とし、現行制度の運用の 改善・工夫等で実施できる運賃・料金についての検討の結果 として、令和4年9月 14 日付けで策定された。 (2)JR東日本が行ったアンケート調査は、首都圏(1都3県) に所在する企業(中小企業を含む。)及び個人を対象に実施 された(有効回答数:企業 1689 件、個人 2124 件)ものであ り、オフピーク定期券運賃を 10%の値下げ、通常の通勤定期 券運賃を2%の値上げと設定した場合のオフピーク定期券購 入率は 17.2%になるという分析結果が得られた。 (3)電車特定区間内の通勤定期券発売実績、運賃表から算出した 平均単価、Suica 通勤定期券による平日ピーク時間帯の利用

7 実績及びオフピーク定期券購入率に、経済合理性に基づく推 論を加味することによって、オフピーク定期券をピーク時間 帯に使用したことによる定期外運賃の増収額が算定された。 (4)令和6年 11 月時点でのオフピーク定期券購入率は、目標 17.2% に対して実績 9.5%であった。なお、令和6年 10 月から、オ フピーク定期券運賃の割引率が約 15%に拡大された。 2 処理方針に定められた審査方法の妥当性 鉄道事業法第 16 条第2項の審査方法は事案に応じて様々な方法 が考えられること、変動運賃制が運賃収入の増加を図ることを目的 とするものではないこと(旅客需要の平準化等により利用者利便の 向上を図ることを目的とするものであること)及び前述第2-1- (1)の経緯に照らせば、申請・審査に係る期間の短縮や負担軽減 を通じた変動運賃制の円滑な実施、利用者利便の向上という観点か ら、処理方針に従った本件認可処分の審査方法には一定の合理性が 認められる。 また、変動運賃制によるコスト削減効果は、車両数や施設規模の 見直し等を通じて中長期的に期待されるものであり、処理方針で 「最長でも3年程度」とされている実施期間内に直ちに発現するも のではないことから、平年度において総括原価が変化しないものと する処理方針の前提に不合理な点があるとはいえない。輸送需要等 に応じたダイヤ見直しや時間経過によって、認可済の上限運賃の適 法性・有効性が失われるものではなく、これを前提とした処理方針 の審査方法が妥当性を欠くことにもならない。 さらに、変動運賃制は、割引運賃の額をあらかじめ固定せず、利 用状況等に応じて割引運賃の額を臨機応変に変動させる方法(ダイ ナミックプライシング)により実施されることも、第2次交通政策 基本計画の記載に鑑みれば充分に想定されるところである。そうし たケースを考えると、割引運賃を上限運賃として認可することには 技術的な困難がある。よって、現行の上限運賃制の仕組みを活用し、 届出による割引運賃の実施を前提として収入額を算定することに

8 より、利用状況等に応じた割引運賃の柔軟な設定・変更が可能とな る審査方法には一定の合理性が認められる。 その上で、認可に一定の期限を付すことによる効果検証、割引運 賃の実施に必要な計画の提出及び鉄道事業法第 23 条第1項の事業 改善命令により実効性が担保され得ることからすれば、実態として、 鉄道運送事業者が任意に割引運賃を廃止又は縮小することは想定 されにくい。 以上を踏まえると、処理方針に定められた審査方法が、行政庁に 認められた裁量の範囲を超える違法又は不当なものであるという ことはできない。 3 JR東日本による想定に係る審査の合理性 認可申請時点における輸送需要はコロナ禍前を大幅に下回るも のであり、特に通勤定期券利用による輸送需要の回復が遅かったこ とからすれば、通勤需要がコロナ禍前実績の 80%に留まるとする想 定に不合理な点は認められない。 オフピーク定期券の利用率は、JR東日本が実施したアンケート 調査の分析結果に基づいており、対象範囲の設定、統計的に充分な サンプル数の確保、回答サンプルに係る偏りの補正等の処理等が行 われていることから、不合理な点は認められない。リモートワーク など新しい生活様式の定着や通勤混雑を回避する意識の高まりが 一定程度生じていたことは事実であり、アンケート調査結果の妥当 性が直ちに失われていたということはできない。 アンケート調査結果に基づく想定と実績が乖離していることは 事実であるものの、コロナ禍という事情、前例のない取組であるこ と、本件認可処分においては期限を付しており想定と実績が乖離し た場合には将来に向かってこれを是正する機会を設けていること から、結果的に乖離が生じたことのみをもって、本件認可処分が違 法又は不当であるとはいえない。 切替遅れによる増収、定期外利用による増収、先買いによる減収 については、それぞれ企業ヒアリング結果、JR東日本が保有する

9 発売実績や利用実績等のデータ、消費税 10%改定時の実績に基づい て推計したものであり、いずれも不合理な点は認められない。 以上を踏まえると、JR東日本による想定が不合理であり、本件 認可処分が違法又は不当であるということはできない。 第3 当審議会の判断 1 処理方針に定められた審査方法の妥当性 (1)「旅客運賃等」及び「適正な原価」の解釈 鉄道事業法第 16 条においては、同条第1項の「旅客運賃等」 の画一的な定義を定める規定は置かれておらず、また、同条第2 項も能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加え たものを超えないものであるかどうかを審査しなければならな いという抽象的かつ概括的な文言を使用し、具体的な基準を定め ているものではない。鉄道旅客運賃の上限変更認可の審査に際し ては、鉄道事業の実態を鑑みた専門的・技術的な検討を要するも のであるから、同項の審査に当たっては専門的・技術的な知見を 有する行政庁の裁量が認められると考えられる。そのため、例え ば学生割引や障害者割引のように広く適用されるものを「旅客運 賃等」に含めて「適正な原価」を審査すること、及び、従前の認 可を前提に、総括原価については平年度において変化しないもの として取り扱うこと、変動運賃制の実施によって運賃収入が増加 しないことをもって適正な原価に適正な利潤を加えたものを超 えないとみなすこと等を内容とする処理方針を定め審査を行う ことにも合理性が認められるところである。 本事案のオフピーク定期券運賃は、本件認可処分の申請時点に おける想定で 120 億円の減収(平年度3年間合計)を見込んでい たものであり、実績が想定を下回ったことを考慮しても、オフピ ーク定期券運賃による減収額をこれらに含めたことは、裁量の範 囲を超えるものではないと認められる。 (2)運賃上限に係る認可と割引運賃に係る届出 審査請求人が主張するように、鉄道事業法には、第 16 条第3

10 項に基づく届出により実施されていた割引運賃が廃止又は縮小 されたことをもって、同条第1項の認可の効力が失われることを 直接定めた条文は存在しない。 しかし、本件認可処分の申請書には、「4 変更を必要とする 理由」として「旅客需要の平準化」及び「変更した上限の範囲内 において割増の運賃と割引の運賃を組み合わせた設定(変動運賃 制)を実施する」と明記され、「6 添付資料」として提出され た実施運賃制実施計画には、設定しようとする運賃として上限変 更に係る通勤定期券の値上率とオフピーク定期券運賃の割引率 が示されている。そして、鉄道事業法第 16 条第2項の「能率的 な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超 えないものであるかどうかを審査」するに当たっては、オフピー ク定期券運賃による減収額と値上げによる増収額とを比較して いること等に鑑みれば、本件についてはオフピーク定期券運賃を 実施することが当然の前提であったと評価することができる。 また、万一、審査請求人が想定するように、オフピーク定期券 運賃の廃止又は縮小のみが実施された場合には、公聴会において ハードルの高さが指摘されたとはいえ、同法第 23 条「利用者の 利便その他公共の利益を阻害」に該当するとして事業改善命令を 発出することも否定されるものではなく、鉄道事業法体系の中で 担保措置が設けられている。 よって、処理方針に定められた審査方法に基づく審査を行うこ とが鉄道事業法で認められる裁量の範囲を超え違法又は不当で あるということはできない。 なお、審理員意見において、割引運賃の額を臨機応変に変動さ せる方法(ダイナミックプライシング)に言及した上で、割引運 賃を上限運賃として認可することには技術的な困難がある旨が 述べられており、これらは、固定された上限を定めることが割引 運賃の変動の妨げとなることを危惧しているのではないかとも 受け取れる記載となっている。しかし、鉄道事業法が「鉄道等の

11 利用者の利益を保護」することを目的の一つに掲げ、運賃等の上 限を認可する制度を採用していることに鑑みれば、認可の審査に 際してその減収額が旅客運賃等・運賃収入に含められた割引運賃 について、本事案のように割引率を拡大する方向へ変動させるこ とであればともかく、割引率を縮小し収支率が向上する方向・利 用者にとって不利な方向へと変動させることを可能とする制度 の検討は慎重に行う必要があることを付言する。 2 審査の合理性 (1)はじめに 本件認可処分に係る想定が行われた時期はコロナ禍による輸 送需要の大幅な減少の影響が残る令和4年であったこと、鉄道 運賃に係る変動運賃制は前例のない取組であったこと、及び需 要想定には実績と乖離するリスクが内在するものであって避け られないことといった制約の存在、並びに本件認可処分に条件 が付されていることに鑑みれば、次に述べるとおり、結果的に 実績が想定からある程度乖離したことのみをもって、直ちに、 その想定が合理性を欠くものであったと断じることはできない。 (2)JR東日本による想定に係る審査の合理性 まず、JR東日本からの意見聴取によれば、本件認可処分に 係る想定は、アンケート調査(有効回答数:企業 1689 件、個人 2124 件)、ヒアリング調査(対象企業数:79 社)及びJR東日 本が有する各種実績データを基礎とするものであるが、前述の 制約を前提とするならば、アンケート調査等に依拠したという 想定の手段が不合理であるとはいえない。 次に、オフピーク定期券利用率 17.2%、定着期間1年程度等 との想定について、結果的には実績との間に乖離が生じたもの ではあるが、分析過程において、オフピーク定期券と親和性が 高い者への母集団の絞り込み、定期券購入に係る意思決定権者 が企業・従業員のどちらであるかを考慮した補正等の必要な処 理が行われていることからすれば、この想定に基づいて行われ

12 た本件認可処分が取消を免れない違法又は不当なものであると まではいえない。 この点、審査請求人が主張するように距離別分析を行うこと や、利益よりも損失が行動を左右する心理傾向への考慮、従業 員の公平性(オフピーク定期券を購入することが、ピーク時間 帯に出社しなくてもよいというある種の免罪符として機能して しまうため、企業は導入を躊躇し得ること等)などの心理的な 要素の検証、他の鉄道運送事業者がオフピーク定期券運賃を導 入するか否かの加味等、想定に影響を及ぼし得ると考えられる ような事項が他にも存在することは事実である。しかし、前述 の制約に加えて、より精緻な結果を確実に得る手法は必ずしも 確立されていないこと、本件認可処分を行った令和4年当時に は3密の回避といったパンデミックへの対応が社会的に要請さ れていたこと、及び後述する本件認可処分に付された条件を考 慮すれば、この事実をもって直ちに想定が合理性を欠くものと はならない。 (3)認可に付された条件の存在 交通政策基本法(平成 25 年法律第 92 号)に基づき閣議決定 された第2次交通政策基本計画や、交通政策審議会鉄道運賃・ 料金制度のあり方に関する小委員会中間とりまとめの中に盛 り込まれたことにも顕れているとおり、通勤時間帯の混雑緩和 は社会的な要請を背景に持つ取組である。そして、本事案で実 施されたオフピーク定期券運賃は前例のない取組であり、その ための「現行制度の運用の改善・工夫」もまた前例のない取組 であった。よって、参考にすることができる知見にも限りがあ ったと考えられる。 本事案に限らず、鉄道事業法第 16 条第1項の認可・同条第 2項の審査は想定に基づいて行うものである以上、想定と実績 が乖離するリスクは内在しているものである。本事案において は、そのリスクは相対的に大きくならざるを得ず、このことへ

13 の対応の一つとして、本件認可処分には3年間という期限が付 されており、検証と是正を行う仕組みが伴っていたといえる (実際に、令和6年 10 月に割引率が 10%から 15%へ拡大されて おり、本件認可処分の期限内にも是正策がとられている)。 なお、公聴会で審査請求人・処分庁双方から公述があったよ うに、長期的には車両保有数や駅施設等の調整を通じて、総括 原価に変動が生じることには争いがないと考えられる。その一 方、鉄道事業は全費用における固定費の割合が大きな産業であ ることや、JR東日本からの意見聴取によれば近年実施された コスト削減はオフピーク定期券運賃導入以外の取組によるも のであること等に鑑みれば、3年間という本件認可処分の期限 内に、オフピーク定期券運賃導入により総括原価に変動が生じ る規模のコスト削減が実現することは期待し難いと考えられ る。 加えて、本件認可処分には、本件認可に係る旅客運賃の実施 に当たって、予め利用者等への十分な周知を図ることも条件の 一つとされている。これは、前例のない取組に対して利用者の 誤解を生じさせないことを目的とするものであって、利用者利 益に資するものであるのと同時に、広くオフピーク定期券運賃 を知らしめてその利用を促進することにより、想定と実績との 整合を促すものであったといえる。 このように本件認可処分に付された条件の存在を鑑みても、 本件認可処分に係る審査が不合理であったとは評価できない。 4 まとめ 以上によれば、本件審査請求には理由がないから棄却すべきであ るとの審査庁の判断は妥当である。 よって、主文記載のとおり答申する。

14 別添資料一覧( 【 】は別添資料の該当ページ)

別添1 認可申請書(2022 年 9 月 16 日付 本 MB 第 250 号) 【1~22】

別添2 諮問書(令和4年9月 21 日付 国鉄事 346 号) 【23~27】

別添3 答申書(令和4年 12 月 15 日付 国運審第 54 号) 【28~39】

別添4 認可書(令和4年 12 月 27 日付 国鉄事 546 号) 【40】

別添5 審査請求書(令和4年 12 月 27 日付) 【41~47】

別添6-1 裁決書(令和5年7月7日付 国鉄事 239 号) 【48~50】

(令和5年7月7日付 国鉄事 240 号) 別添6-2 執行停止申立てに対する決定について(通知) 【51】

別添7 訴状(令和6年1月 10 日付) 【52~54】

別添8-1 判決(令和5年5月 22 日付 (行ウ)第4号 裁決取消等請求事件) 【55~78】

別添8-2 判決(令和8年1月 28 日付 (行コ)第 191 号 裁決取消等請求控訴事件) 【79~88】

別添8-3 判決の確定について(通知)(令和8年2月 20 日付 2訟1第 697 号) 【89】

別添9 審理員意見(令和8年5月 22 日付 審査請求第1号) 【90~101】

別添 10 諮問書(令和8年5月 27 日 国鉄事第 244 号) 【102~103】 別添1

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 別添2

23 (別 紙)

事案の種類 申請事業者 事 案 の 内 容

鉄 道 の 旅 客 東日本旅客 すべての運賃に消費税及び地方消費税(10%)を含んだ以下の額 運 賃 の 上 限 鉄道株式会 を上限額とする。ただし、免税の運賃は消費税及び地方消費税を含 変更認可 社 んだ運賃に110分の100を乗じ、1円未満の端数を1円単位に 切り上げた額とする。 通勤定期旅客運賃 ① 電車特定区間のみを乗車する場合 現行の運賃を次のとおり変更する。 営業キロ 1箇月 3箇月 6箇月 1 4,000 円 11,420 円 19,240 円 2 4,000 円 11,420 円 19,240 円 3 4,000 円 11,420 円 19,240 円 4 5,000 円 14,280 円 24,040 円 5 5,000 円 14,280 円 24,040 円 6 5,000 円 14,280 円 24,040 円 7 5,340 円 15,220 円 25,640 円 8 5,340 円 15,220 円 25,640 円 9 5,340 円 15,220 円 25,640 円 10 5,340 円 15,220 円 25,640 円 11 6,670 円 19,020 円 32,060 円 12 6,670 円 19,020 円 32,060 円 13 6,670 円 19,020 円 32,060 円 14 6,670 円 19,020 円 32,060 円 15 6,670 円 19,020 円 32,060 円 16 9,340 円 26,650 円 44,870 円 17 9,340 円 26,650 円 44,870 円 18 9,340 円 26,650 円 44,870 円 19 9,340 円 26,650 円 44,870 円 20 9,340 円 26,650 円 44,870 円 21 12,010 円 34,260 円 57,700 円 22 12,010 円 34,260 円 57,700 円 23 12,010 円 34,260 円 57,700 円 24 12,010 円 34,260 円 57,700 円 25 12,010 円 34,260 円 57,700 円 26 14,090 円 40,190 円 68,930 円 27 14,360 円 40,930 円 68,930 円 28 14,360 円 40,930 円 68,930 円

24 29 14,360 円 40,930 円 68,930 円 30 14,360 円 40,930 円 68,930 円 31 16,330 円 46,580 円 81,740 円 32 16,780 円 47,840 円 81,740 円 33 17,030 円 48,540 円 81,740 円 34 17,030 円 48,540 円 81,740 円 35 17,030 円 48,540 円 81,740 円 36 18,470 円 52,660 円 94,570 円 37 18,910 円 53,900 円 94,570 円 38 19,280 円 54,950 円 94,570 円 39 19,630 円 55,940 円 94,570 円 40 19,700 円 56,150 円 94,570 円 41 20,520 円 58,500 円 105,790 円 42 20,830 円 59,410 円 105,790 円 43 21,140 円 60,270 円 105,790 円 44 21,580 円 61,520 円 105,790 円 45 21,900 円 62,430 円 105,790 円 46 21,960 円 62,630 円 118,620 円 47 22,250 円 63,440 円 118,620 円 48 22,610 円 64,440 円 118,620 円 49 22,900 円 65,260 円 118,620 円 50 23,200 円 66,120 円 118,620 円 51 23,700 円 67,540 円 127,970 円 52 24,150 円 68,860 円 130,440 円 53 24,530 円 69,920 円 132,470 円 54 25,050 円 71,380 円 136,240 円 55 25,450 円 72,520 円 136,240 円 56 25,890 円 73,800 円 136,240 円 57 26,280 円 74,900 円 136,240 円 58 26,780 円 76,360 円 136,240 円 59 27,180 円 77,460 円 136,240 円 60 27,620 円 78,730 円 136,240 円 61 27,990 円 79,810 円 151,240 円 62 28,410 円 80,960 円 153,390 円 63 28,870 円 82,290 円 155,920 円 64 29,270 円 83,440 円 158,090 円 65 29,810 円 84,970 円 160,290 円 66 30,190 円 86,090 円 160,290 円

25 67 30,610 円 87,240 円 160,290 円 68 31,080 円 88,590 円 160,290 円 69 31,550 円 89,910 円 160,290 円 70 32,020 円 91,240 円 160,290 円 71 32,280 円 92,000 円 174,310 円 72 32,820 円 93,560 円 177,270 円 73 33,200 円 94,630 円 179,310 円 74 33,680 円 95,980 円 181,830 円 75 34,030 円 97,000 円 184,330 円 76 34,570 円 98,570 円 184,330 円 77 34,970 円 99,680 円 184,330 円 78 35,420 円 100,980 円 184,330 円 79 35,880 円 102,290 円 184,330 円 80 36,340 円 103,590 円 184,330 円 81 36,990 円 105,410 円 199,750 円 82 37,420 円 106,660 円 202,100 円 83 37,850 円 107,900 円 204,430 円 84 38,290 円 109,160 円 206,840 円 85 38,810 円 110,620 円 209,980 円 86 39,260 円 111,870 円 209,980 円 87 39,690 円 113,130 円 209,980 円 88 40,130 円 114,360 円 209,980 円 89 40,560 円 115,610 円 209,980 円 90 40,990 円 116,840 円 209,980 円 91 41,350 円 117,860 円 223,300 円 92 41,840 円 119,250 円 225,950 円 93 42,230 円 120,340 円 228,000 円 94 42,710 円 121,770 円 230,710 円 95 43,090 円 122,850 円 234,020 円 96 43,580 円 124,230 円 234,020 円 97 44,070 円 125,640 円 234,020 円 98 44,470 円 126,750 円 234,020 円 99 44,950 円 128,100 円 234,020 円 100 45,440 円 129,500 円 234,020 円

② 山手線等のみを乗車する場合 現行の運賃を次のとおり変更する。 営業キロ 1箇月 3箇月 6箇月 1 4,000 円 11,420 円 19,240 円

26 2 4,000 円 11,420 円 19,240 円 3 4,000 円 11,420 円 19,240 円 4 5,000 円 14,280 円 24,040 円 5 5,000 円 14,280 円 24,040 円 6 5,000 円 14,280 円 24,040 円 7 5,340 円 15,220 円 25,640 円 8 5,340 円 15,220 円 25,640 円 9 5,340 円 15,220 円 25,640 円 10 5,340 円 15,220 円 25,640 円 11 6,010 円 17,130 円 28,850 円 12 6,010 円 17,130 円 28,850 円 13 6,010 円 17,130 円 28,850 円 14 6,010 円 17,130 円 28,850 円 15 6,010 円 17,130 円 28,850 円 16 8,010 円 22,850 円 38,480 円 17 8,010 円 22,850 円 38,480 円 18 8,010 円 22,850 円 38,480 円 19 8,010 円 22,850 円 38,480 円 20 8,010 円 22,850 円 38,480 円 21 10,350 円 29,510 円 49,680 円 22 10,350 円 29,510 円 49,680 円 23 10,350 円 29,510 円 49,680 円 24 10,350 円 29,510 円 49,680 円 25 10,350 円 29,510 円 49,680 円 26 12,400 円 35,370 円 60,900 円 27 12,690 円 36,150 円 60,900 円 28 12,690 円 36,150 円 60,900 円 29 12,690 円 36,150 円 60,900 円 30 12,690 円 36,150 円 60,900 円 31 14,220 円 40,540 円 70,530 円 32 14,580 円 41,590 円 70,530 円 33 14,690 円 41,870 円 70,530 円 34 14,690 円 41,870 円 70,530 円 35 14,690 円 41,870 円 70,530 円

27 別添3

国 運 審 第 5 4 号 令和4年12月15日

国土交通大臣 斉藤 鉄夫 殿

運輸審議会会長 堀川 義弘

答 申 書

東日本旅客鉄道株式会社からの鉄道の 旅客運賃の上限変更の認可申請について

令4第3002号

令和4年9月21日付け国鉄事第349号をもって諮問された上記の 事案については、令和4年11月17日東京都において公聴会を開催し、 審議した結果、次のとおり答申する。

28 主 文

東日本旅客鉄道株式会社からの申請に係る鉄道の旅客運賃の変更につ いては、期限に係る条件を付した上で、別紙に掲げる額を上限として認 可することが適当である。

理 由

1.申請者は、昭和62年の設立以来、主に関東・東北・上信越エリア において、都市圏輸送や都市間輸送、地域輸送など多様な輸送サービ スを提供してきている。中でも首都圏における都市圏輸送については、 会社発足当時より、利用者が集中する朝の通勤時間帯を中心とした混 雑緩和が重要な経営課題の一つとなっており、ピーク時間帯の輸送力 の増強に継続的に取り組んできた結果、朝のピーク時間帯の混雑率(首 都圏において申請者が運行する主要17線区22区間に係るピーク1 時間の平均混雑率をいう。以下同じ。)は会社発足当時の238%か ら平成30年度には165%と大幅に低下している。 一方、令和2年当初からの新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う 緊急事態宣言の発出等により、外出自粛やテレワークの浸透等から行 動様式の変容がみられ、輸送人員は大幅に減少し、その影響が最も大 きかった令和2年度には、朝のピーク時間帯の混雑率は102%にま で低下した。 申請者は、今後の通勤需要について、新型コロナウイルス感染症拡 大前の水準までは至らないものの、一定程度は輸送人員も回復し、そ れに伴って混雑率も再び上昇することを見込むとともに、利用者のい わゆる「3密」回避や、混雑緩和へのニーズが高まっている状況とし ている。 これらを踏まえ、申請者は、ソフト面からの新たな混雑緩和対策に ついても検討することとなった。この検討の結果、申請者においては、 首都圏において、平日朝のピーク時間帯以外の時間帯において割安に 利用できる通勤定期乗車券(以下「オフピーク定期券」という。)を

29 導入するとともに、ピーク時間帯も含めた全時間帯で利用可能な通勤 定期乗車券(以下「通常定期券」という。)については、全体として 増収とならないと想定される範囲において運賃を改定することで、ピ ーク時間帯に集中する通勤需要を分散させ、混雑の緩和と利用者の利 便向上を図るべく、通常定期券について旅客運賃の上限変更認可を申 請したものである。

2.国土交通大臣は、鉄道運送事業者からの旅客運賃の上限の変更の認 可にあたっては、鉄道事業法(以下「法」という。)第16条第2項 に基づき、当該旅客運賃の上限による総収入が、能率的な経営の下に おける適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるこ とを確認の上、法第16条第1項の認可をするものとされている。 また、鉄道事業者が旅客需要の平準化等による利用者利便の向上を 目的に、運賃の上限を変更した上で、運賃収入を増加させないことを 前提に、変動運賃制を実施する場合における法第16条第2項の運用 方針として、「運賃収入の増加を目的としない運賃の上限の変更に関 する処理方針について」(令和4年9月14日付鉄道局鉄道事業課長 通達。以下「処理方針」という。)が発出されている。本処理方針に おいては、総括原価が平年度において変化しないものと取り扱うとと もに、運賃収入が増加しないことを「適切な方法で比較及び検証を行」 うことで、法第16条第2項の要件を充たすとみなすこととされてい る。

3.当審議会は、本事案の審議にあたり、公聴会を開催し申請者の陳述 及び一般公述人の公述を聴取したほか、当審議会に提出された資料、 所管局から聴取した説明等に基づいて検討を行った。その結果は、次 のとおりである。 まず、処理方針は、「第2次交通政策基本計画」(令和3年5月2 8日)や、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会鉄道運賃・料金制 度のあり方に関する小委員会中間とりまとめ(令和4年7月26日。 以下「中間とりまとめ」という。)を踏まえて、現行制度の運用の改

30 善・工夫の観点から発出されたものであり、認可に当たって期限等必 要な条件を付すことや、利用者利益の保護にも十分配慮することを求 めるなど、その内容についても一定の合理性を有するものであると認 められる。 また、平年度(原価計算期間)である令和5年度から令和7年度ま での3年間の総収入は、オフピーク定期券の導入(現行に比較して1 0%割引)による減収額が120億円と見込まれるのに対し、通常定 期券の上限運賃改定による増収額が85億円、オフピーク定期券所持 者によるピーク時間帯の利用による普通旅客運賃の収入額が35億円 と見込まれるため、申請者の運賃収入額は増加しないと推定される。

4.また、今後の通勤需要やオフピーク定期券の需要見通し及び通常定 期券からのシフト効果については、申請者が所管局の指導・助言を受 けつつ、企業や利用者を対象として実施した市場調査(令和4年3月) 等を踏まえたものである。さらに、通常定期券の上限運賃改定等によ る増収想定についても、運賃改定時に改定に先立って乗車券を購入す るいわゆる「先買い」等の短期的な増減収要素を含め、過去の乗車券 の発売実績等を踏まえて検証を行っており、一定の合理性が認められ る。 これらに鑑みれば、本申請は処理方針に掲げる要件を充足している といえ、本件申請は上記2.の認可基準に適合するものと認められる。 したがって、法第16条第1項に基づき、国土交通大臣が本件申請 を認可することは適当であると認める。

5.ただし、オフピーク定期券の導入は、過去に類例のない取組であり、 かつ、上記3.の収入見込については、複数の前提条件で構成された 想定に基づいているため、想定された収入と実績が大きく乖離する可 能性がある。このため、国土交通大臣は、当該認可にあたっては、期 限に係る条件を付すことが適当である。

31 要望事項

主文及び理由5.に記載した条件の設定にあたっては、国土交通大臣 は、法第54条第1項及び第2項並びに処理方針の規定も踏まえ、適切 なものとなるよう検討されたい。 また、通常定期券の上限運賃改定にあたって、勤務条件等によりオフ ピーク定期券を購入できない利用者やその勤務先からも理解が得られる よう制度の趣旨等を丁寧に説明すること、オフピーク定期券の導入にあ たっては、利用者や勤務先に対して購入にあたってのデメリットも含め て積極的な周知を行うこと、オフピーク定期券導入後の増収の有無や混 雑緩和の状況に係る検証を適切に実施することについて、東日本旅客鉄 道株式会社に、指導・助言されたい。 加えて、上記検証結果及び当該検証結果を踏まえた同社及び国土交通 省の対応について、当審議会に適切に報告されたい。その際、国土交通 省においては、運賃・料金制度に関し、中間とりまとめにおいて指摘さ れた「現行制度そのものの見直し」の議論も踏まえ、対応を進められた い。

32 別紙 すべての運賃に消費税及び地方消費税(10%)を含んだ以下の額を上限額 とする。ただし、免税の運賃は消費税及び地方消費税を含んだ運賃に110分 の100を乗じ、1円未満の端数を1円単位に切り上げた額とする。

通勤定期旅客運賃 ① 電車特定区間のみを乗車する場合 現行の運賃を次のとおり変更する。

営業キロ 1箇月 3箇月 6箇月

1 4,000 円 11,420 円 19,240 円

2 4,000 円 11,420 円 19,240 円

3 4,000 円 11,420 円 19,240 円

4 5,000 円 14,280 円 24,040 円

5 5,000 円 14,280 円 24,040 円

6 5,000 円 14,280 円 24,040 円

7 5,340 円 15,220 円 25,640 円

8 5,340 円 15,220 円 25,640 円

9 5,340 円 15,220 円 25,640 円

10 5,340 円 15,220 円 25,640 円

11 6,670 円 19,020 円 32,060 円

12 6,670 円 19,020 円 32,060 円

13 6,670 円 19,020 円 32,060 円

14 6,670 円 19,020 円 32,060 円

33 15 6,670 円 19,020 円 32,060 円

16 9,340 円 26,650 円 44,870 円

17 9,340 円 26,650 円 44,870 円

18 9,340 円 26,650 円 44,870 円

19 9,340 円 26,650 円 44,870 円

20 9,340 円 26,650 円 44,870 円

21 12,010 円 34,260 円 57,700 円

22 12,010 円 34,260 円 57,700 円

23 12,010 円 34,260 円 57,700 円

24 12,010 円 34,260 円 57,700 円

25 12,010 円 34,260 円 57,700 円

26 14,090 円 40,190 円 68,930 円

27 14,360 円 40,930 円 68,930 円

28 14,360 円 40,930 円 68,930 円

29 14,360 円 40,930 円 68,930 円

30 14,360 円 40,930 円 68,930 円

31 16,330 円 46,580 円 81,740 円

32 16,780 円 47,840 円 81,740 円

33 17,030 円 48,540 円 81,740 円

34 17,030 円 48,540 円 81,740 円

35 17,030 円 48,540 円 81,740 円

34 36 18,470 円 52,660 円 94,570 円

37 18,910 円 53,900 円 94,570 円

38 19,280 円 54,950 円 94,570 円

39 19,630 円 55,940 円 94,570 円

40 19,700 円 56,150 円 94,570 円

41 20,520 円 58,500 円 105,790 円

42 20,830 円 59,410 円 105,790 円

43 21,140 円 60,270 円 105,790 円

44 21,580 円 61,520 円 105,790 円

45 21,900 円 62,430 円 105,790 円

46 21,960 円 62,630 円 118,620 円

47 22,250 円 63,440 円 118,620 円

48 22,610 円 64,440 円 118,620 円

49 22,900 円 65,260 円 118,620 円

50 23,200 円 66,120 円 118,620 円

51 23,700 円 67,540 円 127,970 円

52 24,150 円 68,860 円 130,440 円

53 24,530 円 69,920 円 132,470 円

54 25,050 円 71,380 円 136,240 円

55 25,450 円 72,520 円 136,240 円

56 25,890 円 73,800 円 136,240 円

35 57 26,280 円 74,900 円 136,240 円

58 26,780 円 76,360 円 136,240 円

59 27,180 円 77,460 円 136,240 円

60 27,620 円 78,730 円 136,240 円

61 27,990 円 79,810 円 151,240 円

62 28,410 円 80,960 円 153,390 円

63 28,870 円 82,290 円 155,920 円

64 29,270 円 83,440 円 158,090 円

65 29,810 円 84,970 円 160,290 円

66 30,190 円 86,090 円 160,290 円

67 30,610 円 87,240 円 160,290 円

68 31,080 円 88,590 円 160,290 円

69 31,550 円 89,910 円 160,290 円

70 32,020 円 91,240 円 160,290 円

71 32,280 円 92,000 円 174,310 円

72 32,820 円 93,560 円 177,270 円

73 33,200 円 94,630 円 179,310 円

74 33,680 円 95,980 円 181,830 円

75 34,030 円 97,000 円 184,330 円

76 34,570 円 98,570 円 184,330 円

77 34,970 円 99,680 円 184,330 円

36 78 35,420 円 100,980 円 184,330 円

79 35,880 円 102,290 円 184,330 円

80 36,340 円 103,590 円 184,330 円

81 36,990 円 105,410 円 199,750 円

82 37,420 円 106,660 円 202,100 円

83 37,850 円 107,900 円 204,430 円

84 38,290 円 109,160 円 206,840 円

85 38,810 円 110,620 円 209,980 円

86 39,260 円 111,870 円 209,980 円

87 39,690 円 113,130 円 209,980 円

88 40,130 円 114,360 円 209,980 円

89 40,560 円 115,610 円 209,980 円

90 40,990 円 116,840 円 209,980 円

91 41,350 円 117,860 円 223,300 円

92 41,840 円 119,250 円 225,950 円

93 42,230 円 120,340 円 228,000 円

94 42,710 円 121,770 円 230,710 円

95 43,090 円 122,850 円 234,020 円

96 43,580 円 124,230 円 234,020 円

97 44,070 円 125,640 円 234,020 円

98 44,470 円 126,750 円 234,020 円

37 99 44,950 円 128,100 円 234,020 円

100 45,440 円 129,500 円 234,020 円

② 山手線等のみを乗車する場合 現行の運賃を次のとおり変更する。

営業キロ 1箇月 3箇月 6箇月

1 4,000 円 11,420 円 19,240 円

2 4,000 円 11,420 円 19,240 円

3 4,000 円 11,420 円 19,240 円

4 5,000 円 14,280 円 24,040 円

5 5,000 円 14,280 円 24,040 円

6 5,000 円 14,280 円 24,040 円

7 5,340 円 15,220 円 25,640 円

8 5,340 円 15,220 円 25,640 円

9 5,340 円 15,220 円 25,640 円

10 5,340 円 15,220 円 25,640 円

11 6,010 円 17,130 円 28,850 円

12 6,010 円 17,130 円 28,850 円

13 6,010 円 17,130 円 28,850 円

14 6,010 円 17,130 円 28,850 円

15 6,010 円 17,130 円 28,850 円

16 8,010 円 22,850 円 38,480 円

38 17 8,010 円 22,850 円 38,480 円

18 8,010 円 22,850 円 38,480 円

19 8,010 円 22,850 円 38,480 円

20 8,010 円 22,850 円 38,480 円

21 10,350 円 29,510 円 49,680 円

22 10,350 円 29,510 円 49,680 円

23 10,350 円 29,510 円 49,680 円

24 10,350 円 29,510 円 49,680 円

25 10,350 円 29,510 円 49,680 円

26 12,400 円 35,370 円 60,900 円

27 12,690 円 36,150 円 60,900 円

28 12,690 円 36,150 円 60,900 円

29 12,690 円 36,150 円 60,900 円

30 12,690 円 36,150 円 60,900 円

31 14,220 円 40,540 円 70,530 円

32 14,580 円 41,590 円 70,530 円

33 14,690 円 41,870 円 70,530 円

34 14,690 円 41,870 円 70,530 円

35 14,690 円 41,870 円 70,530 円

39 別添4

40 別添5

41 42 43 44 45 46 47 別添6-1

48 49 50 51 別添7

52 53 54 別添8-1

55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 別添8-2

79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 別添8-3 機密性2情報

2 訟 1 第 6 9 7 号 令和8年2月20日

国土交通省鉄道局長 殿

東 京 法 務 局 長 (公 印 省 略)

判決の確定について(通知) 下記事件の判決は、令和8年2月12日の経過により確定したので、 通知します。 記 当 事 者 控訴人兼被控訴人 国 被控訴人兼控訴人 小井土直樹 事件番号 東京高等裁判所 令和8年(行コ)第191号 事 件 名 裁決取消等請求控訴事件

89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 別添10

102 103

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:行政決定