令和8年8月7日
国土交通省が令和8年3月に設置した「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」では、計5回にわたり、土地の取得やその利用等に関して現在生じている課題について、制度の整備・見直しを含めた必要な対応策を検討してきました。
主要指標 — KEY FIGURES
この度、有識者会議の提言がとりまとめられましたので公表いたします。
1.提言のポイント
○ 各地域で不適切な土地利用が生じている実態があるが、問題が起こって深刻化してからでは遅い。また、土地利用関連法の射程から外れる「法規制の“隙間”」で問題が起こった場合には、特に対処が困難となる。
○ 土地利用に関する一般法であり、かつ、早期の情報把握機能を有する国土利用計画法の特色を生かしつつ、様々な土地利用の課題に対応できるよう、土地利用の継続的なモニタリングや、不適切な土地利用に対する取引段階・利用段階を通じた指導監督を可能にするなど、制度を見直すべき。
2.添付資料
・ 報道発表資料
・別紙1: 概要
・別紙2: 提言
3.参考
「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」の開催状況、資料等は「 土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議 - 国土交通省 」をご参照ください。
添付資料
報道発表資料 (PDF形式)
別紙1:概要 (PDF形式)
別紙2:提言 (PDF形式)
お問い合わせ先
国土交通省 不動産・建設経済局 土地政策審議官部門 土地政策課 野口、鎌田、林
TEL:03-5253-8111 (内線30-624、30-655、30-658) 直通 03-5253-8292
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添付資料1 令 和 8 年 8 月 7 日 不動産・建設経済局土地政策審議官部門 土 地 政 策 課
「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」提言 がとりまとめられました 国土交通省が令和8年3月に設置した「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者 会議」では、計5回にわたり、土地の取得やその利用等に関して現在生じている課題に ついて、制度の整備・見直しを含めた必要な対応策を検討してきました。 この度、有識者会議の提言がとりまとめられましたので公表いたします。 1.提言のポイント ○ 各地域で不適切な土地利用が生じている実態があるが、問題が起こって深刻化して からでは遅い。また、土地利用関連法の射程から外れる「法規制の“隙間”」で問題 が起こった場合には、特に対処が困難となる。
○ 土地利用に関する一般法であり、かつ、早期の情報把握機能を有する国土利用計画 法の特色を生かしつつ、様々な土地利用の課題に対応できるよう、土地利用の継続的 なモニタリングや、不適切な土地利用に対する取引段階・利用段階を通じた指導監督 を可能にするなど、制度を見直すべき。
2.添付資料 ・別紙1:概要 ・別紙2:提言
3.参考 「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」の開催状況、資料等は下記 URL (土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議 - 国土交通省)をご参照ください。 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000134.html
<問合せ先> 不動産・建設経済局 土地政策審議官部門 土地政策課 野口、鎌田、林 代表:03-5253-8111(内線 30-624、30-655、30-658)、直通:03-5253-8292
添付資料2 土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議について 【背景・目的】 〇 かつて、土地政策の課題は高度成長期の都市の拡大に伴う宅地の供給や土地需要の調整、バブル期の投機 的取引や地価高騰の抑止等に重点が置かれていたが、現在は、人口減少による土地需要の減少なども背景に、 土地の適切な利用や管理に課題が移行しつつある。特に近年は、不適切な土地利用の発生や外国人による 土地取得への懸念などもきっかけとして、国土の適正な利用の在り方に関する国民の意識が高まっている。 〇 現行では、大規模土地取引の届出制度など適正かつ合理的な土地利用の確保を図るための制度が存在する が、こうした現行制度の枠に捉われることなく、国民が求める情報を十分に把握できているかという観点や把握した 情報を課題解決のために有効に活用できているかといった観点も含めて、土地の取得・利用等の在り方について 幅広く検討する必要がある。 〇 このため、有識者会議を設置し、土地の取得・利用に関する情報把握の拡大や取得後の適正な土地利用の 確保等を図るための有効な方策について、制度の整備・見直しも視野に検討を行う。 【構成員】 ※2026.7.31時点 座長 中井 検裕 東京科学大学名誉教授 大澤 真知子 東京都都市整備局都市づくり政策部都市計画課長 大橋 真由美 上智大学法学部法律学科教授 草間 時彦 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会専務理事 佐々木 隆一 (一社)不動産協会 企画委員会委員長 松尾 弘 慶應義塾大学大学院法務研究科教授 松川 寿也 長岡技術科学大学環境社会基盤系准教授 吉原 祥子 (公財)東京財団政策研究部マネージャー 【スケジュール】 令和8年3月27日 第1回:土地取引の主な制度、土地利用の実態について 令和8年5月12日 第2回:現状及び検討の視点について 令和8年5月26日 第3回:取りまとめの方向性について 令和8年6月11日 第4回:取りまとめについて 令和8年7月31日 第5回:取りまとめについて 令和8年8月7日 提言公表 「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」提言(概要) 基本的考え方 ➢各地域の土地利用の実態を見ると、必要な法令手続をとらずに開発を行う、周辺に悪影響を与える土地利用を行う などの事例があるが、問題が起こって深刻化してからでは遅い。また、土地利用関連法の射程から外れる「法規制の “隙間”」で問題が起こった場合には、特に対処が困難となる。 ➢この点、国土利用計画法は、 ・土地利用プロセスのうち最初のステップとなる取引時点で関与する仕組みを有しており、早期の情報把握に適している。 ・用途を問わず全国の土地を規制対象とする一般法であるため、隙間事案を含めて包括的に対処できる。 これらの特色を生かしつつ、様々な土地利用の課題に対応できるよう、制度見直しを検討すべき。 ➢土地利用規制の実効性を高めるためには、関係行政機関が相互に連携して対応することが重要である。 ➢政府全体の議論の動向も踏まえながら、土地利用の実態や具体の施策の取組状況等に応じ、更なる検討・対策が 行われることを期待する。 取組の方向性 ③不適切な土地利用等への対応 ①土地利用の在り方に係る基本的考え方の提示 ⚫都道府県による指導監督の根拠となる土地利用基本 ⚫国が基本方針を策定し、適正な土地利用を確保する上で 計画において、「不適切な土地利用」※に該当する行為を 必要となる指針を示すべき。 明示することで、国土利用計画法に基づく指導監督を 可能にすべき。 ②土地利用に係る情報把握の強化 この指導監督は、土地の取引段階のみならず、利用段階 ⚫土地取得の際に必要となる届出の対象面積※を引き下げ においても行えるようにすべき。 るなど、取引段階における情報把握の強化を図るべき。 ※提言中、「土地利用関連法では必ずしも禁止されておらず、法規制の“隙間”に (全国一律で行う引下げに加え、地方公共団体による 存在するが、周辺地域に悪影響を生じさせるような土地利用」と定義
更なる引下げも可能とすべき。) ⚫登記情報との照合により無届事案を把握し現地調査に ※市街化区域2,000㎡、市街化区域以外の都市計画区域5,000㎡、 入るなど、無届事案への対応を強化すべき。 都市計画区域外1ha以上 ⚫届出後に利用目的を変更した場合の再届出を求めること ④国・都道府県・市町村の役割分担と支援体制 とし、土地利用の継続的なモニタリングを可能にすべき。 ⚫国・都道府県・市町村の役割に応じた分担・連携体制を ⚫届出対象面積未満の土地取引情報について、国がデータ 構築し、重層的に対応すべき。 ベースを整備して把握し、地方公共団体への提供等を ⚫国は、ガイドライン策定、相談対応の充実、データベース 行う仕組みを構築すべき。 構築など地方公共団体を積極的に支援すべき。
添付資料3 土地の取得・利用等の在り方に関する 有識者会議 提 言
令和8年8月 土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議 目次
はじめに ................................................................................................. 1
Ⅰ.土地の取得・利用を巡る現状と課題 ................................................ 1
1.土地の取得・利用の実態 ............................................................... 1
2.現行制度の現状・課題................................................................... 2
3.地方公共団体の対応上の課題 ........................................................ 4
Ⅱ.土地の取得・利用等に関する取組の方向性 ..................................... 4
1.基本的な考え方 ............................................................................. 4
2.具体的な提案と留意すべき事項 .................................................... 8
おわりに ............................................................................................... 14 はじめに 我が国の土地政策は、かつて、高度成長期の都市の拡大に伴う宅地の供給や土地需 要の調整、バブル期の投機的取引や地価高騰の抑止等に重点が置かれていたが、現在 は、人口減少による土地需要の減少なども背景に、土地の適切な利用や管理に課題が 移行しつつある。特に近年は、周辺環境や地域の生活に深刻な影響を及ぼしうる不適 切な土地利用の発生や外国人による土地取得への懸念などもきっかけとして、国土の 適正な利用の在り方に関する国民の意識が高まっている。 現行では、大規模土地取引の届出制度など適正かつ合理的な土地利用の確保を図る ための制度が存在するが、こうした現行制度の枠に捉われることなく、国民が求める 情報を十分に把握できているかという観点や把握した情報を課題解決のために有効 に活用できているかといった観点も含めて、土地の取得・利用等の在り方について幅 広く検討を行う必要がある。 本有識者会議は、このような背景から、土地の取得・利用等に関して現在生じてい る課題について、制度の整備・見直しを含めた必要な対応策を検討することを目的と して設けられたものである。 本有識者会議では、3月の設置以来計5回にわたり、様々な土地利用の実態を踏ま えながら、現行制度の現状や課題などについて議論を重ねてきた。本提言は、その議 論の成果をとりまとめたものであり、これをきっかけに、国土の適正な利用に向けた 取組が広く社会に浸透し、より一層推進されることを期待する。
Ⅰ.土地の取得・利用を巡る現状と課題 1.土地の取得・利用の実態 土地の取得の状況について、不動産の所有権移転登記ベースでは全国で約 157 万件 の取引があるところ、国土利用計画法に基づく大規模土地取引の届出ベースでは約 1.9 万件となっており、前者に占める割合は約 1.2%、経年で見ても概ね1%前後で ある1。なお、面積ベースでは、約3割となっている1。 届出の内訳(いずれも件数ベース)をみると、近年は利用目的を「生産施設」(電 気・ガス等供給施設、工場、倉庫、資材置場等)とするものの割合が増えているとこ ろ、 「生産施設」という一つの分類に多くの利用類型が包含されるとともに、近年増加 している太陽光発電関係を「生産施設」として扱うケースと「その他」として扱うケ ースが混在しているなど、利用目的の的確な把握ができない状況となっている。また、 利用目的を「資産保有・転売等目的」とするものが一定数あり、届出後の具体の土地
1 国土交通省「土地取引規制基礎調査概況調査」及び「土地取引規制実態統計」より。いずれも 令和6年の実績値。
1 利用の動向が把握できないことが懸念される。 土地の利用の状況については、国土交通省が地方公共団体からの聞き取り等により 把握したところによれば、以下のような実態が各地で確認されている。 ・住宅地に近接する土地で廃棄物や土砂の積み上げが行われたり、スクラップヤード 2 が建設されたりすることで、安全面への懸念や、騒音、悪臭、水質汚濁等周辺への 悪影響が生じている。 ・住宅地に近接する土地が大型車両の駐車場として利用されることで、周辺住民から 生活環境などへの懸念の声が上がっている。 ・法令に基づく許可等の手続を経ずに大規模な森林伐採や開発が行われ、周辺の自然 環境等に悪影響を及ぼしている。 こうした事案は、土地利用に関する規制が比較的弱いエリアで行われたり、規制対 象になりにくい態様で行われたりする傾向がみられる。また、これらの多くは、土地 取得時に利用目的の把握が十分にできず、土地の開発や使用収益が開始された段階で 初めて発覚し、行政の対応が後手に回るとともに、周辺住民に対して不安や懸念を与 えるという共通の特徴を有している。 なお、違反行為をするのは外国人・外国法人に限られないことに留意が必要だが、 当事者が外国人・外国法人の場合、連絡がつかなかったり、取引の存在自体が把握で きなかったりする3等の指摘もある。
2.現行制度の現状・課題 (現行制度の現状) 土地の取得・利用等に関する制度を見ると、土地の取引段階で一定の手続を行う仕 組みとして不動産登記法、国土利用計画法、森林法及び農地法がある。このうち不動 産登記法では、不動産登記によって土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・ 氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係 などの状況が誰にでもわかるようにし、安全で円滑な取引を確保する役割を果たして いる。国土利用計画法及び森林法においては、対象となる土地を取得した時点で届出 義務がかかり、行政側は届出情報を取得することで、関係する施策の実施に必要な土 地所有者等の情報を把握するとともに、国土利用計画法では届出によって把握した利 用目的について土地利用に関する計画との適合性を審査し、適合しない場合には利用 目的の変更等の指導監督を行うことで、適正かつ合理的な土地利用の確保を図ってい
2 スクラップヤードに関する許可制の創設等の規制強化を盛り込んだ廃棄物処理法等の一部を改 正する法律が本年の第 221 回国会(特別会)において成立しており、施行に向けた準備が進め られている。 3 制度について十分な認識を持たない者どうしで法令上の手続を行わずに取引が行われることな
どにより、行政が取引の存在を確認できないこと等による。
2 る。農地法では、農地等の権利移転に際し農業委員会の許可を必要とし、効率的な耕 作が見込めない場合等には不許可とすることで、当該農地の農地としての機能を担保 している。このように、これらの制度では、取引段階で情報を把握するとともに、そ のうち一部の制度では、取引後の土地の利用に一定の制約を課すことで、それぞれの 制度の趣旨・目的に沿った土地の適正な利用につなげる役割を果たしている。 他方で、土地の開発等の段階で一定の手続を行う仕組みとして都市計画法、農地法、 農業振興地域の整備に関する法律、森林法、自然公園法、自然環境保全法がある。こ れらの法律では、土地の開発等の段階で許可等の手続にかからしめ、開発そのものを 抑制し、又は一定の制約を課すことで、都市の健全な発展、農地・森林・自然環境の 適正な保全・利用等といったそれぞれの制度の趣旨・目的に沿った土地の適正な利用 を確保する役割を果たしている。 このほか、宅地の造成、盛土など土地の開発等に関する規制、建築物の建築に関す る規制、大気汚染、騒音など周辺環境に悪影響を及ぼす行為に関する規制、電気・ガ スの供給など特定の事業に関する規制といったように、土地を利用する際に遵守する 必要がある規制は多岐にわたる。また、地方公共団体においては、独自の条例や指導 要綱等を制定・策定することにより、一定の土地取引や開発等を行う場合に、所要の 手続(当該地方公共団体との事前協議等)や行為(説明会開催、標識の設置等)を規 定したり、建築物の仕様や周辺環境への負荷等に係る一定の基準を満たすことを求め たりしている。
(国土利用計画法の課題) 以上のように、土地の取得・利用等に関する制度として様々なものが用意されてい る中で、国土利用計画法は、土地利用に関する一般法として、全国の土地について、 地域・地目や用途を問わず、土地の開発・利用に係る一連のプロセスのうち最初のス テップとなる取引段階で情報を把握することにより、土地利用上の問題が起きること を未然に防止するという機能を有している。 一方で、国土利用計画法について現在明らかとなっている課題としては、 ・届出対象面積が大規模なもの4に限られており、土地取引に係る情報の把握範囲とし て不十分な面がある ・届出対象面積以上の土地取引であるにもかかわらず届出を行わない事案(無届事案) が見受けられる ・届出が行われた後に土地の利用目的が変更されても、変更後の利用目的を把握する 手段がなく、継続的なモニタリングができない ・土地利用に関する一般法ではあるものの、個別法において明確な規制の対象となら
4 市街化区域 2,000 ㎡、市街化区域以外の都市計画区域 5,000 ㎡、都市計画区域外1ha 以上。
3 ない“隙間”的な土地利用について、機動的な対処ができない などがあり、土地利用上の問題が発生する要因の一つとなっていることは否定できな い。
3.地方公共団体の対応上の課題 土地利用に関する制度及び施策の中心的な実施主体は地方公共団体となっており、 各地で発生する様々な事案に対して、地方公共団体が地域の実情に応じて的確に対処 できるようにすることが重要である。しかし、現状では、ほとんどの地方公共団体に おいて、土地利用の情報を早期に把握し、指導監督するための体制が十分なものにな っているとはいえず、土地利用に関し新たな課題が生じた場合に機動的な対処が行え るようなノウハウが十分に蓄積されているという状況ではない。また、土地利用に関 し、独自の条例や指導要綱等を制定・策定している地方公共団体もあるものの、一般 的には任意の協力を求めるような拘束力を持たない措置も多く、その効果には自ずと 限界がある。加えて、土地の取得・利用行為が複数の制度に抵触する場合に、その権 限主体が国・都道府県・市町村に分かれることにより、相互の情報共有や連携が十分 になされていないという実態も見受けられる。
Ⅱ.土地の取得・利用等に関する取組の方向性 1.基本的な考え方 (1)検討の視点 「はじめに」で述べたとおり、かつての土地政策は、宅地の大量供給、投機的取引・ 地価高騰対策等を主眼としていたが、現在では、人口減少に伴う土地需要の減少等も 背景に、土地の適正な利用・管理の確保ということに焦点が当たってきている。この ような変化を前提に、かつての土地政策の課題に即して創設された制度を、現下の課 題に応じて機動的に見直していくことが必要である。 各地域の土地利用の実態を見てみると、法令に基づく許可等の手続を経ずに開発を 行う、騒音や悪臭等周辺に悪影響を与える土地利用を行うなどの事例が生じている。 こうした事案では、開発等の直前や開始後になってはじめて行政や地域住民が了知す ることも多く、地域において大きなトラブルに至ることがある。また、いったん開発 が進行してしまうと原状回復に係る負担が大きくなり、開発前の状態に戻すことは容 易ではない。 また、土地利用に関する個別法には、その趣旨・目的とそれに見合った特定の規制 対象が存在し、その範囲の拡大には限界があるため、カバーしきれない“隙間”的な 領域が自ずと生じることになる。こうした法規制の“隙間”で問題が起こった場合に は、特に対処が困難となる。
4 これらを踏まえると、制度を見直す上での重要な視点は、土地利用上の問題が起こ って深刻化してからでは遅く、手遅れになる前に歯止めをかけなければならないとい うこと、そして、隙間事案を含めた様々な問題に幅広く対処していく必要があるとい うことである。本提言においては、こうした考え方のもと、土地利用に係る情報を広 範かつ早期に把握し、問題がある事案に対して効果的な対応を行うためのルール・施 策を検討していくこととする。 検討に当たっては、土地利用に関する一般法であり、かつ、早期の情報把握機能を 有する国土利用計画法の見直しが有効な選択肢となりうるため、以下詳述する。
(2)国土利用計画法の見直しの考え方 国土利用計画法は、制定時からバブル期に至るまで投機的取引・地価高騰対策とし ての充実が図られてきたものの、平成 10 年の法改正においては、バブル崩壊後の地 価下落局面にあったことを背景に、地価抑制から土地の有効活用に政策目的を転換し たことに伴い、土地取引に係る届出制度について、価格の事前審査機能に重きを置い た事前届出制を一部で残しつつも、制度の中心は、利用目的の事後審査機能により重 きを置いた事後届出制に移行した。 この届出制度に見られるように、国土利用計画法は、土地の開発・利用に係る一連 のプロセスのうち最初のステップとなる土地取引の段階を捉えて規制を講じている ところに特色があり、開発計画が進行し不可逆的な段階に至る前に防止措置を講じる ことができるという独自の強みがある。また、一定規模以上に限られるものの、他法 令とは異なり、地域・地目や土地の用途を問わず全国の土地取引を対象としており、 土地利用に関する一般法として様々な土地利用の課題に横串の観点から対処する、包 括的な機能を果たすことが期待される。 制度見直しに当たっては、国土利用計画法のこうした特色を生かしつつ、先に述べ たような同法の課題(情報把握の範囲や継続的なモニタリング、隙間事案への対処等 の課題)を克服し、以下のような役割を十分に果たせるようにすることを基本的な考 え方とすべきである。
①取引段階等において情報を早期に把握する役割 国土利用計画法に基づく事後届出制度は、土地の利用サイクルのうち土地利用の転 換の端緒となりうる土地取引を把握し、適正な土地利用の確保を図るための事前チェ ック機能を有する。しかし、届出対象が大規模な取引に限定されていることや届出を 求めるタイミングが取引時のみとされていること等により、土地利用転換の契機を十 分に捉えられず、事前に手立てを講じる機会を逸してしまう場合がある。 このため、取引段階で土地利用に係る早期の情報把握をより広範に行うとともに、
5 取引から利用段階に至るまで継続的なモニタリングを行うという役割が求められる。
②利用段階も含め不適切な土地利用に対し包括的に対応する役割 国土利用計画法は、土地利用に関する一般法として、「適正かつ合理的な土地利用 の確保」という他法令にはない広範な目的を有している。他法令、すなわち土地利用 に関する個別法で禁止されている行為は当然にこの目的に反することとなり、国土利 用計画法に基づく指導監督の対象となるが、国土利用計画法では、届出で把握した利 用目的について、個別法における許可基準等を満たすと考えられる場合であっても、 都道府県が策定する土地利用基本計画に適合せず、周辺地域の土地利用に著しい支障 を生じさせると判断されるのであれば指導監督を行うことができる。したがって、法 規制の“隙間”に存在する行為、すなわち個別法では必ずしも禁止されていない行為 (規制対象エリアの外で行われる行為や、行為の態様から規制対象とならないもの) であっても、周辺地域に悪影響を生じさせるものについては、国土利用計画法の法目 的に反するものとして、同法の規制の射程に入るという考え方が成り立ち得る。具体 的な行為としては、周辺地域における災害発生のリスクがあるものや安全面で著しい 支障を及ぼすもの、周辺住民の生活環境や周辺の自然環境に著しい悪影響を及ぼすな ど周辺環境の悪化を生じさせるもの、行政が定めた計画・施策の方向性等に反してい るものなどが該当する。 土地基本法においては、 「土地については、公共の福祉を優先させる」べきこと、土 地は、 「その所在する地域の自然的、社会的、経済的及び文化的諸条件に応じて適正に 利用し、又は管理される」べきこと、 「その周辺地域の良好な環境の形成を図るととも に当該周辺地域への悪影響を防止する観点から、適正に利用し、又は管理される」べ きこと、「適正かつ合理的な土地の利用及び管理を図るため策定された土地の利用及 び管理に関する計画に従って利用し、又は管理される」べきこと等が基本理念とされ ており、土地所有者は、この基本理念にのっとり、土地の利用・管理・取引を行う責 務を有することとされている。上述したような行為(法規制の“隙間”に存在する行 為、すなわち個別法では必ずしも禁止されていない行為であっても、周辺地域に悪影 響を生じさせるもの)を伴う土地利用を以下「不適切な土地利用」5と呼ぶこととする が、国土利用計画法が「不適切な土地利用」を規制の射程に入れ、指導監督の対象と することは、土地基本法による土地所有者の責務とも整合的であるといえる。 ただし、当然のことながら、何らかの規制的措置を講じる場合には、規制を受ける こととなる者が、土地の利用に際しどのような行為が許容され、又は制限されるのか
5 本頁以降「不適切な土地利用」という用語が複数箇所で登場するが、本用語は、定義のとおり 「個別法で禁止されている土地利用」を含まない概念として用いられていることに留意された い。(本提言では、国土利用計画法による指導監督の対象となる行為を、「個別法で禁止されて いる土地利用」と「不適切な土地利用」の二つに要素分解している。)
6 を予見できるようにすべきであり、そのためには、地域における土地利用のルールと して、何が不適切な土地利用に該当するのかを土地利用基本計画にあらかじめ明示し、 当該ルールへの適合性が客観的に判断できるようにしておく必要がある。 以上を前提とした上で、不適切な土地利用への対処について、国土利用計画法に求 められる一般法としての包括的な役割を整理すると、以下のとおりである。 ・まず、取引段階において、個別法違反を事前にチェックする機能を果たすことに加 え、土地利用基本計画の記載に基づき客観的に不適切な土地利用と判断される利用 目的に対して指導監督を行うことで、そうした土地利用を未然に防止する。 ・加えて、現行制度において対応を行っていない利用段階においても、土地利用基本 計画の記載に基づき客観的に不適切な土地利用と判断される行為が行われ、周辺地 域に悪影響が生じる場合には、土地利用基本計画を根拠に指導監督を行うことで、 不適切な土地利用の是正を図る。
(3)国・地方公共団体双方の取組・連携強化の必要性 (2)の考え方に基づき国土利用計画法の機能が拡充され、同法がこれまで以上に 包括的な役割を果たしていくためには、都道府県等において、地域の実情を踏まえた 適正な土地利用の在り方の提示、当該在り方や多岐にわたる個別法、条例、行政計画 等との適合性の審査、必要な指導監督などが円滑かつ着実に実施される必要がある。 また、適正な土地利用の在り方を提示する際には、地域の実情を熟知した市町村が積 極的に関与していくことも重要である。 国においては、制度見直し後の地方公共団体の取組が進み、全国的に起こっている 土地利用上の様々な問題への対処がなされるよう、運用等に関する一定の方針を示す 必要がある。 加えて、国土利用計画法の見直しに伴い、特にこれまで規制対象としてこなかった 土地の利用段階における措置も含めて適切に運用されるためには、他法令との連携や 役割分担が効果的に図られる必要がある。そのためには、土地利用等に関係する行政 機関どうし及び国と地方公共団体が相互に連携し、土地利用規制の実効性を高めてい くことが重要である。
(4)個別法との関係 上述したように、土地利用については、個別法ではカバーしきれない“隙間”的な 領域が存在するため、一般法である国土利用計画法が役割を果たすべき局面があるが、 一般法と個別法の関係を考えると、個別法で対応可能なことは個別法で対応していく ことが基本となる。今後、各個別法において、社会経済情勢の変化に応じ、必要な制 度の検証や見直しが不断に行われることを求めるものである。
7 2.具体的な提案と留意すべき事項 1.の「基本的な考え方」を踏まえ、国土利用計画法が然るべき役割を果たすため に必要な仕組みについて、その具体的な方向性と留意事項を以下のとおり提案する。
(1)土地利用の在り方に係る基本的考え方の提示 本提言を踏まえ、制度の見直しをはじめ様々な施策を講じていく際には、制 度運用の主体である地方公共団体が適切かつ着実に事務を遂行することがで きるよう、国が先頭に立って積極的な役割を果たすべきである。特に、現在、 全国的に発生している土地利用上の様々な問題に対応するためには、地域任せ にするのではなく、統一的な考え方を示すことが必要である。 このため、地方公共団体による取組の指針となるよう、国が基本方針を策定 し、適正な土地利用に関する基本的な考え方や関係行政機関どうしの相互連 携・情報共有の在り方などを定め、提示すべきである。
(2)土地利用に係る情報把握の強化 ①届出対象範囲の拡大 土地利用の契機を早期かつ広範に捉え、問題が深刻化する前に未然に対応す ることを可能にする観点から、届出対象範囲を拡大し、情報把握の強化を図る ことを検討すべきである。 具体的には、まず、届出対象となる面積要件については、土地利用の実態や 申請側・行政側双方の負担も考慮した上で、可能な範囲で引き下げる方向で見 直すことを検討すべきである。この引下げは全国一律で行うことが考えられる が、その上で、地域の実情に応じてその基準を更に引き下げる必要がある場合 も想定されることから、地方公共団体の意向により引き下げることを可能とす る方策についても併せて検討すべきである。 また、相続後に特段の取引を行うことなく相続人自身が従前と異なる土地利 用を行うケースや、土地を無償で取得したり借り上げたりするケースもあるこ とから、現行制度のように有償取引のみに限定するのではなく、相続や無償譲 渡などについても届出対象として追加することが考えられる。ただし、土地の 権利取得が積極的な土地利用の意思を持たずに行われる場合も含めて届出対 象とすべきかについては、同様の仕組みを規定する他法令も参照しつつ、その 是非を検討する必要がある。 なお、近年、土地利用について、これまでにはなかった様々な利用形態が出 現しているという質的変化が生じていることも踏まえ、届出に係る利用目的を
8 確実に確認・審査するために、利用目的の分類や記入方法について見直すこと も必要である。 加えて、土地取得者が国外に居住する場合に、国内居住者よりも連絡がとり にくくなるリスクがあることなどを踏まえ、日本語による円滑なやりとりが可 能となるよう、国内連絡先や国内に居住する管理者・保証人の登録を土地取得 者に対して求めるなど、必要な場合に指導監督を円滑に行えるようにする方策 も検討する必要がある。
②届出後の利用目的に係る再届出の導入 現行の届出制度では、取引時点で届け出た後に届出事項に変更があっても、 変更届を提出する必要はなく、届出時に利用目的を「未定」とした場合や届出 後に土地の利用目的が変わった場合には、実際の利用目的を捕捉できないこと となる。 このため、土地利用を継続的にモニタリングし、実際の利用目的を確実に把 握できるよう、利用目的の変更に際して再度の届出を求めるようにすべきであ る。 なお、継続的なモニタリングを徹底する観点からは、再届出に加えて、届出 者に対し定期的な報告等を求めることも考えられ、どの時点でどのような形で 情報を求めることとするのか、実効性や申請側・行政側双方の負担等も考慮し、 詳細を検討する必要がある。
③届出対象とならない土地取引の把握等 届出対象面積を際限なく引き下げることはできないため、届出の対象外とな る土地取引が相当程度存在することになる。こうした土地取引を可能な限りカ バーできるよう、幅広く土地取引関連情報を把握できるデータベース等を国が 整備し、当該データに基づく取引状況の調査・分析とその結果の地方公共団体 への情報提供を行うような仕組みを検討すべきである。
④届出情報を整理した台帳の整備 土地利用については、都道府県内部部局や国・市町村といった多くの部局・ 機関が関連業務を担当しているが、②に述べたような継続的なモニタリングの 実効性を高めるためには、届出情報を様々な部局・機関との間で共有し、個別 法による措置の実施も含め、十分な連携を図っていく必要がある。 このため、都道府県において届出情報を整理した台帳を整備し、関係する部 局・機関が必要に応じ参照できるようにすることを検討すべきである。
9 また、地域住民等から請求があった場合には台帳の閲覧を可能にすることで、 届出情報と現地の状況に齟齬があるケースや必要な届出が行われていないケ ースなど問題事案の把握の一助となることが期待でき、地方公共団体による迅 速な対応につながるものと考えられる。 なお、届出情報には個人の機微な情報や土地の取引価格等が含まれており、 これらがオープンになれば個人のプライバシーの保護や事業者の事業活動等 に支障を及ぼす可能性がありうる。加えて、こうした情報が、例えば、ウェブ サイト上で誰でも容易に常時アクセスできる状態で公開されることとなれば、 その支障の度合いが大きくなることも考えられる。 このため、閲覧を可能とする場合は、他法令も参照しつつ、閲覧できる対象 や請求できる者の範囲、閲覧の請求・実施に係る方法等について検討が必要で ある。
(3)不適切な土地利用等への対応 ①土地利用基本計画の記載事項の充実 国土利用計画法に基づく土地取引の届出によって把握した利用目的に対す る指導監督の根拠となるのが土地利用基本計画であるが、同計画は県土全域を 都市・農業・森林・自然公園・自然保全の5地域に区分することを主眼として おり、概括的な内容にとどまっているため、指導監督の根拠となりにくいとい う実態がある。不適切な土地利用を未然に防ぎ、発生時には行政が関与する根 拠の一つとして有効に機能させるためには、当該地域の土地利用の実態や目指 すべき方向性等を踏まえた的確な指導監督を行うことができるよう、その拠り 所となる土地利用基本計画の記載事項を拡充し、都道府県がより具体的な内容 を計画に書き込めるようにすべきである。 記載事項の充実に当たっては、以下の点に留意する必要がある。 ・都道府県の区域内のどこでどのような行為が「不適切な土地利用」に該当す るものとして指導監督の対象となるのか(つまりは、どのような土地利用で あれば許容されるのか)について、地域住民や事業者が客観的に判断できる 程度に明示されている必要がある。 ・特定の目的による土地利用が当該土地において行われることそのものが不適 切な土地利用に該当する場合と、特定の目的による土地利用が当該土地にお いて行われることそのものは不適切な土地利用に該当せずとも一定の条件が 満たされなければ周辺地域への悪影響が生じ、不適切な土地利用に該当する 場合とがある。前者については抑制すべき土地利用の類型をエリアとともに 明示し、後者については土地利用の類型・エリアに加え、周辺地域への悪影
10 響の防止を図るために必要な条件を明示する必要がある。 ・地域の特性に応じて記載されるものであり、全ての都道府県が一律に定める ものではなく、また、必要な区域に限定されるものである。 ・住民の生活や法令等に基づき適正に行われる事業活動に必要不可欠な施設で あるにもかかわらず、当該施設が立地する周辺の住民にとっては望ましくな い施設が存在することも踏まえると、そうした施設を一律に排除するような 計画とならないようにする必要がある。 ・市町村や地域において、条例や地域管理構想6を含む計画などを通じて地域の 土地利用の在り方・ルール等を独自に定めている場合があるが、都道府県が 計画を策定する際に、これら土地利用の在り方・ルール等のうち一定の規範 性を有し、指導監督の根拠として計画への記載がなじむものについては可能 な限り計画に取り込むことなどにより、市町村や地域住民等の意向がボトム アップ的に反映されるようにすることも検討すべきである。 これらの留意事項も考慮のうえ、地方公共団体による計画策定や指導監督等 が適切かつ円滑に行われることが重要であり、国は、それに資するよう、 (1) の基本方針において土地利用基本計画の記載に当たっての具体的な指針を示 すなど、適切な措置を講じるべきである。 なお、土地利用基本計画の記載事項を充実するとしても、計画の見直しには 相当の期間を要することが想定される。このため、計画の見直しが実際に行わ れるまでの間においても、不適切な土地利用への対応が可能となるよう、例え ば、関係部局間及び関係行政機関間の情報共有・連携の強化等を先行的に行う ことが考えられ、国において対応を検討すべきである。
②届出情報の行政内部及び行政機関間での共有 届出情報について、国土利用計画法に基づく指導監督の要否判断のため他法 令への抵触の有無を確認するという観点のみならず、他法令による指導監督等 が的確に実施されるようにするという観点から、当該地方公共団体内の関係部 局や他の行政機関との間で円滑かつ横断的に共有できる枠組みを構築するべ きである。
③土地の利用段階における指導監督措置の導入 現行の国土利用計画法では、土地取引段階で把握した利用目的について土地
6 地域管理構想は、人口減少下において分野横断的・総合的に国土全体の管理の在り方を示す「国 土の管理構想」を基に、地域レベルで示された計画。住民自ら、地域の現状把握及び将来予測 を前提とした地域の将来像を描き、土地の管理の在り方について地域管理構想図として地図化 するとともに、管理主体や管理手法を明確にした行動計画を示す。
11 利用基本計画その他の土地利用に関する計画との適合性を審査し、不適合の場 合には利用目的の変更等について勧告を行い、勧告に従わない場合には公表の 措置を講じることとしている。一方、土地の利用段階に入ったのちは個別法に よる規制が適切に機能することで、周辺地域への悪影響等を生じさせる土地の 利用が防止又は是正されることとなる。つまり、国土利用計画法はこれまで、 個別法の規制に係る事前チェック的な機能を果たしてきた。 しかしながら、1.の「基本的な考え方」で述べたとおり、個別法には特定 の規制領域があるため、カバーしきれない“隙間”的な領域が存在し、それに より、不適切な土地利用が行われやすいという特徴がある。 このため、個別法において、必要な制度の検証・見直しが不断に行われるこ とを前提としつつも、国土利用計画法の目的である適正かつ合理的な土地利用 の確保を図る観点から、不適切な土地利用に対しては、土地の取引段階のみな らず土地の利用段階においても、必要に応じ勧告等の指導監督を行うことが考 えられる。さらに、当該不適切な土地利用によって災害の発生や著しい環境悪 化など周辺の土地利用に特段の被害が生じ、又は生じるおそれがある場合には、 その状態を解消させるため、勧告等の緩やかな措置だけではなく、利用行為の 差し止めや変更等の命令、義務者が命令に従わない場合における緊急的な行政 代執行といった措置を可能とすることも考えられる。 なお、土地の利用段階においては、基本的には、個別法による規制措置が講 じられるものであることから、当該措置を実施する内部部局や関係行政機関と の適切な役割分担や連携が確保されるよう留意すべきである。
④無届事案への対応の強化 国土利用計画法に基づく届出対象面積以上の土地取引であるにもかかわら ず届出を行わない事案(無届事案)について、登記情報など他の取引情報と照 合すること等により洗い出しを行い、報告徴収や現地調査等により利用目的等 を把握するとともに、必要な指導監督を行うなど、対応を強化すべきである。
⑤罰則の強化 上記の措置とあわせ、違反行為に対する抑止力を高める観点から、罰則の強 化を検討すべきである。特に、悪質な事業者に対する罰則については、近年の 立法例も参考に十分なものとなるよう検討すべきである。
(4)国・都道府県・市町村の役割分担と支援体制 ①役割分担の考え方
12 今後、ここまでに述べたような形で国土利用計画法の役割・機能強化のため の見直しを行い、適正な土地利用を確保するための対策を効果的に講じていく ためには、国・都道府県・市町村それぞれの役割に応じた分担・連携体制を構 築し、重層的に対応していくことが重要となる。 現状における国・都道府県・市町村それぞれの役割についてみると、国は、 全国的な問題の有無、その発生状況やそれに対する各地方公共団体の対応状況 などを把握し、地方公共団体の取組を支援しつつ、制度の企画立案を行う役割 を担っている。都道府県は、国土利用計画法及び土地利用に関する個別法に基 づく事務権限の多くを有し、執行するとともに、市町村をまたぐ広域的な課題 への対応を行っている。市町村は、住民に最も近い立場として地域の土地利用 に関する初期的な情報把握や相談対応を担い、また、独自の条例制定等により 適正な土地利用への誘導を図っている。
②国による支援 これまでの国土利用計画法では土地利用上の課題に対して必ずしも的確に 対処できず、運用にもばらつきがあったことを踏まえると、まず、国として全 国共通の制度設計や仕組みの構築を検討するべきである。また、不適切な土地 利用に対する措置や無届事案への対応など国土利用計画法に基づく事務はも とより、地域が独自に制定している条例等に基づく取組なども含め、都道府県・ 市町村の取組が万全を期して行われるよう後押しする必要がある。具体的には、 国においてガイドラインの策定、技術的助言、情報提供や相談対応の充実など、 積極的な支援を行うことを検討すべきである。加えて、国が届出対象外となる 土地取引の把握などを行い、地方公共団体に提供することで、地域における適 正な土地利用に向けた対応の充実を図ることも期待される。
③都道府県・市町村に期待される役割 都道府県は、広域的な土地利用の調整や専門的知見の提供及び市町村への技 術的支援を担う中核的主体としての役割を果たすとともに、土地利用基本計画 の重要な要素となる土地利用に関する総合的な方針の立案や当該方針に関す る管内市町村間の調整を行い、市町村と連携した情報把握や指導監督を進めて いくことが期待される。 市町村は、都道府県と連携して、引き続き住民に最も近い立場として地域の 土地利用に関する情報提供や相談対応を行うとともに、都道府県が作成する土 地利用基本計画が地域の実情に応じた適切な内容となるよう的確なインプッ トを行うことが期待される。
13 ④デジタル活用の推進 届出等の事務を担う地方公共団体側及び届出を行う側の双方の負担を軽減 するため、土地関連情報データベースの構築・普及を含めデジタル活用を推進 し、届出手続や審査等の効率化を図るべきである。
おわりに 国土利用計画法が求める適正な土地利用の実現を確かなものにするためには、制度 の整備・見直しだけでは十分でなく、国・地方公共団体・地域・事業者それぞれの役 割を明確にし、制度・技術・人材・運用を組み合わせた持続的な土地政策として推進 していくことが不可欠である。 本提言が、その出発点となり、まずは、上記提案を踏まえ、具体的な検討が進めら れるよう求める。さらに、今後とも、政府全体の議論の動向も踏まえながら、土地利 用の実態や具体の施策の取組状況等に応じ、更なる検討・対策が行われることを期待 する。
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添付資料4 令 和 8 年 8 月 7 日 不動産・建設経済局土地政策審議官部門 土 地 政 策 課
「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」提言 がとりまとめられました 国土交通省が令和8年3月に設置した「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者 会議」では、計5回にわたり、土地の取得やその利用等に関して現在生じている課題に ついて、制度の整備・見直しを含めた必要な対応策を検討してきました。 この度、有識者会議の提言がとりまとめられましたので公表いたします。 1.提言のポイント ○ 各地域で不適切な土地利用が生じている実態があるが、問題が起こって深刻化して からでは遅い。また、土地利用関連法の射程から外れる「法規制の“隙間”」で問題 が起こった場合には、特に対処が困難となる。
○ 土地利用に関する一般法であり、かつ、早期の情報把握機能を有する国土利用計画 法の特色を生かしつつ、様々な土地利用の課題に対応できるよう、土地利用の継続的 なモニタリングや、不適切な土地利用に対する取引段階・利用段階を通じた指導監督 を可能にするなど、制度を見直すべき。
2.添付資料 ・別紙1:概要 ・別紙2:提言
3.参考 「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」の開催状況、資料等は下記 URL (土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議 - 国土交通省)をご参照ください。 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk2_000134.html
<問合せ先> 不動産・建設経済局 土地政策審議官部門 土地政策課 野口、鎌田、林 代表:03-5253-8111(内線 30-624、30-655、30-658)、直通:03-5253-8292
添付資料5 土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議について 別紙1
【背景・目的】 〇 かつて、土地政策の課題は高度成長期の都市の拡大に伴う宅地の供給や土地需要の調整、バブル期の投機 的取引や地価高騰の抑止等に重点が置かれていたが、現在は、人口減少による土地需要の減少なども背景に、 土地の適切な利用や管理に課題が移行しつつある。特に近年は、不適切な土地利用の発生や外国人による 土地取得への懸念などもきっかけとして、国土の適正な利用の在り方に関する国民の意識が高まっている。 〇 現行では、大規模土地取引の届出制度など適正かつ合理的な土地利用の確保を図るための制度が存在する が、こうした現行制度の枠に捉われることなく、国民が求める情報を十分に把握できているかという観点や把握した 情報を課題解決のために有効に活用できているかといった観点も含めて、土地の取得・利用等の在り方について 幅広く検討する必要がある。 〇 このため、有識者会議を設置し、土地の取得・利用に関する情報把握の拡大や取得後の適正な土地利用の 確保等を図るための有効な方策について、制度の整備・見直しも視野に検討を行う。 【構成員】 ※2026.7.31時点 座長 中井 検裕 東京科学大学名誉教授 大澤 真知子 東京都都市整備局都市づくり政策部都市計画課長 大橋 真由美 上智大学法学部法律学科教授 草間 時彦 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会専務理事 佐々木 隆一 (一社)不動産協会 企画委員会委員長 松尾 弘 慶應義塾大学大学院法務研究科教授 松川 寿也 長岡技術科学大学環境社会基盤系准教授 吉原 祥子 (公財)東京財団政策研究部マネージャー 【スケジュール】 令和8年3月27日 第1回:土地取引の主な制度、土地利用の実態について 令和8年5月12日 第2回:現状及び検討の視点について 令和8年5月26日 第3回:取りまとめの方向性について 令和8年6月11日 第4回:取りまとめについて 令和8年7月31日 第5回:取りまとめについて 令和8年8月7日 提言公表 「土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議」提言(概要) 基本的考え方 ➢各地域の土地利用の実態を見ると、必要な法令手続をとらずに開発を行う、周辺に悪影響を与える土地利用を行う などの事例があるが、問題が起こって深刻化してからでは遅い。また、土地利用関連法の射程から外れる「法規制の “隙間”」で問題が起こった場合には、特に対処が困難となる。 ➢この点、国土利用計画法は、 ・土地利用プロセスのうち最初のステップとなる取引時点で関与する仕組みを有しており、早期の情報把握に適している。 ・用途を問わず全国の土地を規制対象とする一般法であるため、隙間事案を含めて包括的に対処できる。 これらの特色を生かしつつ、様々な土地利用の課題に対応できるよう、制度見直しを検討すべき。 ➢土地利用規制の実効性を高めるためには、関係行政機関が相互に連携して対応することが重要である。 ➢政府全体の議論の動向も踏まえながら、土地利用の実態や具体の施策の取組状況等に応じ、更なる検討・対策が 行われることを期待する。 取組の方向性 ③不適切な土地利用等への対応 ①土地利用の在り方に係る基本的考え方の提示 ⚫都道府県による指導監督の根拠となる土地利用基本 ⚫国が基本方針を策定し、適正な土地利用を確保する上で 計画において、「不適切な土地利用」※に該当する行為を 必要となる指針を示すべき。 明示することで、国土利用計画法に基づく指導監督を 可能にすべき。 ②土地利用に係る情報把握の強化 この指導監督は、土地の取引段階のみならず、利用段階 ⚫土地取得の際に必要となる届出の対象面積※を引き下げ においても行えるようにすべき。 るなど、取引段階における情報把握の強化を図るべき。 ※提言中、「土地利用関連法では必ずしも禁止されておらず、法規制の“隙間”に (全国一律で行う引下げに加え、地方公共団体による 存在するが、周辺地域に悪影響を生じさせるような土地利用」と定義
更なる引下げも可能とすべき。) ⚫登記情報との照合により無届事案を把握し現地調査に ※市街化区域2,000㎡、市街化区域以外の都市計画区域5,000㎡、 入るなど、無届事案への対応を強化すべき。 都市計画区域外1ha以上 ⚫届出後に利用目的を変更した場合の再届出を求めること ④国・都道府県・市町村の役割分担と支援体制 とし、土地利用の継続的なモニタリングを可能にすべき。 ⚫国・都道府県・市町村の役割に応じた分担・連携体制を ⚫届出対象面積未満の土地取引情報について、国がデータ 構築し、重層的に対応すべき。 ベースを整備して把握し、地方公共団体への提供等を ⚫国は、ガイドライン策定、相談対応の充実、データベース 行う仕組みを構築すべき。 構築など地方公共団体を積極的に支援すべき。
添付資料6 別紙2
土地の取得・利用等の在り方に関する 有識者会議 提 言
令和8年8月 土地の取得・利用等の在り方に関する有識者会議 目次
はじめに ................................................................................................. 1
Ⅰ.土地の取得・利用を巡る現状と課題 ................................................ 1
1.土地の取得・利用の実態 ............................................................... 1
2.現行制度の現状・課題................................................................... 2
3.地方公共団体の対応上の課題 ........................................................ 4
Ⅱ.土地の取得・利用等に関する取組の方向性 ..................................... 4
1.基本的な考え方 ............................................................................. 4
2.具体的な提案と留意すべき事項 .................................................... 8
おわりに ............................................................................................... 14 はじめに 我が国の土地政策は、かつて、高度成長期の都市の拡大に伴う宅地の供給や土地需 要の調整、バブル期の投機的取引や地価高騰の抑止等に重点が置かれていたが、現在 は、人口減少による土地需要の減少なども背景に、土地の適切な利用や管理に課題が 移行しつつある。特に近年は、周辺環境や地域の生活に深刻な影響を及ぼしうる不適 切な土地利用の発生や外国人による土地取得への懸念などもきっかけとして、国土の 適正な利用の在り方に関する国民の意識が高まっている。 現行では、大規模土地取引の届出制度など適正かつ合理的な土地利用の確保を図る ための制度が存在するが、こうした現行制度の枠に捉われることなく、国民が求める 情報を十分に把握できているかという観点や把握した情報を課題解決のために有効 に活用できているかといった観点も含めて、土地の取得・利用等の在り方について幅 広く検討を行う必要がある。 本有識者会議は、このような背景から、土地の取得・利用等に関して現在生じてい る課題について、制度の整備・見直しを含めた必要な対応策を検討することを目的と して設けられたものである。 本有識者会議では、3月の設置以来計5回にわたり、様々な土地利用の実態を踏ま えながら、現行制度の現状や課題などについて議論を重ねてきた。本提言は、その議 論の成果をとりまとめたものであり、これをきっかけに、国土の適正な利用に向けた 取組が広く社会に浸透し、より一層推進されることを期待する。
Ⅰ.土地の取得・利用を巡る現状と課題 1.土地の取得・利用の実態 土地の取得の状況について、不動産の所有権移転登記ベースでは全国で約 157 万件 の取引があるところ、国土利用計画法に基づく大規模土地取引の届出ベースでは約 1.9 万件となっており、前者に占める割合は約 1.2%、経年で見ても概ね1%前後で ある1。なお、面積ベースでは、約3割となっている1。 届出の内訳(いずれも件数ベース)をみると、近年は利用目的を「生産施設」(電 気・ガス等供給施設、工場、倉庫、資材置場等)とするものの割合が増えているとこ ろ、 「生産施設」という一つの分類に多くの利用類型が包含されるとともに、近年増加 している太陽光発電関係を「生産施設」として扱うケースと「その他」として扱うケ ースが混在しているなど、利用目的の的確な把握ができない状況となっている。また、 利用目的を「資産保有・転売等目的」とするものが一定数あり、届出後の具体の土地
1 国土交通省「土地取引規制基礎調査概況調査」及び「土地取引規制実態統計」より。いずれも 令和6年の実績値。
1 利用の動向が把握できないことが懸念される。 土地の利用の状況については、国土交通省が地方公共団体からの聞き取り等により 把握したところによれば、以下のような実態が各地で確認されている。 ・住宅地に近接する土地で廃棄物や土砂の積み上げが行われたり、スクラップヤード 2 が建設されたりすることで、安全面への懸念や、騒音、悪臭、水質汚濁等周辺への 悪影響が生じている。 ・住宅地に近接する土地が大型車両の駐車場として利用されることで、周辺住民から 生活環境などへの懸念の声が上がっている。 ・法令に基づく許可等の手続を経ずに大規模な森林伐採や開発が行われ、周辺の自然 環境等に悪影響を及ぼしている。 こうした事案は、土地利用に関する規制が比較的弱いエリアで行われたり、規制対 象になりにくい態様で行われたりする傾向がみられる。また、これらの多くは、土地 取得時に利用目的の把握が十分にできず、土地の開発や使用収益が開始された段階で 初めて発覚し、行政の対応が後手に回るとともに、周辺住民に対して不安や懸念を与 えるという共通の特徴を有している。 なお、違反行為をするのは外国人・外国法人に限られないことに留意が必要だが、 当事者が外国人・外国法人の場合、連絡がつかなかったり、取引の存在自体が把握で きなかったりする3等の指摘もある。
2.現行制度の現状・課題 (現行制度の現状) 土地の取得・利用等に関する制度を見ると、土地の取引段階で一定の手続を行う仕 組みとして不動産登記法、国土利用計画法、森林法及び農地法がある。このうち不動 産登記法では、不動産登記によって土地や建物の所在・面積のほか、所有者の住所・ 氏名などを公の帳簿(登記簿)に記載し、これを一般公開することにより、権利関係 などの状況が誰にでもわかるようにし、安全で円滑な取引を確保する役割を果たして いる。国土利用計画法及び森林法においては、対象となる土地を取得した時点で届出 義務がかかり、行政側は届出情報を取得することで、関係する施策の実施に必要な土 地所有者等の情報を把握するとともに、国土利用計画法では届出によって把握した利 用目的について土地利用に関する計画との適合性を審査し、適合しない場合には利用 目的の変更等の指導監督を行うことで、適正かつ合理的な土地利用の確保を図ってい
2 スクラップヤードに関する許可制の創設等の規制強化を盛り込んだ廃棄物処理法等の一部を改 正する法律が本年の第 221 回国会(特別会)において成立しており、施行に向けた準備が進め られている。 3 制度について十分な認識を持たない者どうしで法令上の手続を行わずに取引が行われることな
どにより、行政が取引の存在を確認できないこと等による。
2 る。農地法では、農地等の権利移転に際し農業委員会の許可を必要とし、効率的な耕 作が見込めない場合等には不許可とすることで、当該農地の農地としての機能を担保 している。このように、これらの制度では、取引段階で情報を把握するとともに、そ のうち一部の制度では、取引後の土地の利用に一定の制約を課すことで、それぞれの 制度の趣旨・目的に沿った土地の適正な利用につなげる役割を果たしている。 他方で、土地の開発等の段階で一定の手続を行う仕組みとして都市計画法、農地法、 農業振興地域の整備に関する法律、森林法、自然公園法、自然環境保全法がある。こ れらの法律では、土地の開発等の段階で許可等の手続にかからしめ、開発そのものを 抑制し、又は一定の制約を課すことで、都市の健全な発展、農地・森林・自然環境の 適正な保全・利用等といったそれぞれの制度の趣旨・目的に沿った土地の適正な利用 を確保する役割を果たしている。 このほか、宅地の造成、盛土など土地の開発等に関する規制、建築物の建築に関す る規制、大気汚染、騒音など周辺環境に悪影響を及ぼす行為に関する規制、電気・ガ スの供給など特定の事業に関する規制といったように、土地を利用する際に遵守する 必要がある規制は多岐にわたる。また、地方公共団体においては、独自の条例や指導 要綱等を制定・策定することにより、一定の土地取引や開発等を行う場合に、所要の 手続(当該地方公共団体との事前協議等)や行為(説明会開催、標識の設置等)を規 定したり、建築物の仕様や周辺環境への負荷等に係る一定の基準を満たすことを求め たりしている。
(国土利用計画法の課題) 以上のように、土地の取得・利用等に関する制度として様々なものが用意されてい る中で、国土利用計画法は、土地利用に関する一般法として、全国の土地について、 地域・地目や用途を問わず、土地の開発・利用に係る一連のプロセスのうち最初のス テップとなる取引段階で情報を把握することにより、土地利用上の問題が起きること を未然に防止するという機能を有している。 一方で、国土利用計画法について現在明らかとなっている課題としては、 ・届出対象面積が大規模なもの4に限られており、土地取引に係る情報の把握範囲とし て不十分な面がある ・届出対象面積以上の土地取引であるにもかかわらず届出を行わない事案(無届事案) が見受けられる ・届出が行われた後に土地の利用目的が変更されても、変更後の利用目的を把握する 手段がなく、継続的なモニタリングができない ・土地利用に関する一般法ではあるものの、個別法において明確な規制の対象となら
4 市街化区域 2,000 ㎡、市街化区域以外の都市計画区域 5,000 ㎡、都市計画区域外1ha 以上。
3 ない“隙間”的な土地利用について、機動的な対処ができない などがあり、土地利用上の問題が発生する要因の一つとなっていることは否定できな い。
3.地方公共団体の対応上の課題 土地利用に関する制度及び施策の中心的な実施主体は地方公共団体となっており、 各地で発生する様々な事案に対して、地方公共団体が地域の実情に応じて的確に対処 できるようにすることが重要である。しかし、現状では、ほとんどの地方公共団体に おいて、土地利用の情報を早期に把握し、指導監督するための体制が十分なものにな っているとはいえず、土地利用に関し新たな課題が生じた場合に機動的な対処が行え るようなノウハウが十分に蓄積されているという状況ではない。また、土地利用に関 し、独自の条例や指導要綱等を制定・策定している地方公共団体もあるものの、一般 的には任意の協力を求めるような拘束力を持たない措置も多く、その効果には自ずと 限界がある。加えて、土地の取得・利用行為が複数の制度に抵触する場合に、その権 限主体が国・都道府県・市町村に分かれることにより、相互の情報共有や連携が十分 になされていないという実態も見受けられる。
Ⅱ.土地の取得・利用等に関する取組の方向性 1.基本的な考え方 (1)検討の視点 「はじめに」で述べたとおり、かつての土地政策は、宅地の大量供給、投機的取引・ 地価高騰対策等を主眼としていたが、現在では、人口減少に伴う土地需要の減少等も 背景に、土地の適正な利用・管理の確保ということに焦点が当たってきている。この ような変化を前提に、かつての土地政策の課題に即して創設された制度を、現下の課 題に応じて機動的に見直していくことが必要である。 各地域の土地利用の実態を見てみると、法令に基づく許可等の手続を経ずに開発を 行う、騒音や悪臭等周辺に悪影響を与える土地利用を行うなどの事例が生じている。 こうした事案では、開発等の直前や開始後になってはじめて行政や地域住民が了知す ることも多く、地域において大きなトラブルに至ることがある。また、いったん開発 が進行してしまうと原状回復に係る負担が大きくなり、開発前の状態に戻すことは容 易ではない。 また、土地利用に関する個別法には、その趣旨・目的とそれに見合った特定の規制 対象が存在し、その範囲の拡大には限界があるため、カバーしきれない“隙間”的な 領域が自ずと生じることになる。こうした法規制の“隙間”で問題が起こった場合に は、特に対処が困難となる。
4 これらを踏まえると、制度を見直す上での重要な視点は、土地利用上の問題が起こ って深刻化してからでは遅く、手遅れになる前に歯止めをかけなければならないとい うこと、そして、隙間事案を含めた様々な問題に幅広く対処していく必要があるとい うことである。本提言においては、こうした考え方のもと、土地利用に係る情報を広 範かつ早期に把握し、問題がある事案に対して効果的な対応を行うためのルール・施 策を検討していくこととする。 検討に当たっては、土地利用に関する一般法であり、かつ、早期の情報把握機能を 有する国土利用計画法の見直しが有効な選択肢となりうるため、以下詳述する。
(2)国土利用計画法の見直しの考え方 国土利用計画法は、制定時からバブル期に至るまで投機的取引・地価高騰対策とし ての充実が図られてきたものの、平成 10 年の法改正においては、バブル崩壊後の地 価下落局面にあったことを背景に、地価抑制から土地の有効活用に政策目的を転換し たことに伴い、土地取引に係る届出制度について、価格の事前審査機能に重きを置い た事前届出制を一部で残しつつも、制度の中心は、利用目的の事後審査機能により重 きを置いた事後届出制に移行した。 この届出制度に見られるように、国土利用計画法は、土地の開発・利用に係る一連 のプロセスのうち最初のステップとなる土地取引の段階を捉えて規制を講じている ところに特色があり、開発計画が進行し不可逆的な段階に至る前に防止措置を講じる ことができるという独自の強みがある。また、一定規模以上に限られるものの、他法 令とは異なり、地域・地目や土地の用途を問わず全国の土地取引を対象としており、 土地利用に関する一般法として様々な土地利用の課題に横串の観点から対処する、包 括的な機能を果たすことが期待される。 制度見直しに当たっては、国土利用計画法のこうした特色を生かしつつ、先に述べ たような同法の課題(情報把握の範囲や継続的なモニタリング、隙間事案への対処等 の課題)を克服し、以下のような役割を十分に果たせるようにすることを基本的な考 え方とすべきである。
①取引段階等において情報を早期に把握する役割 国土利用計画法に基づく事後届出制度は、土地の利用サイクルのうち土地利用の転 換の端緒となりうる土地取引を把握し、適正な土地利用の確保を図るための事前チェ ック機能を有する。しかし、届出対象が大規模な取引に限定されていることや届出を 求めるタイミングが取引時のみとされていること等により、土地利用転換の契機を十 分に捉えられず、事前に手立てを講じる機会を逸してしまう場合がある。 このため、取引段階で土地利用に係る早期の情報把握をより広範に行うとともに、
5 取引から利用段階に至るまで継続的なモニタリングを行うという役割が求められる。
②利用段階も含め不適切な土地利用に対し包括的に対応する役割 国土利用計画法は、土地利用に関する一般法として、「適正かつ合理的な土地利用 の確保」という他法令にはない広範な目的を有している。他法令、すなわち土地利用 に関する個別法で禁止されている行為は当然にこの目的に反することとなり、国土利 用計画法に基づく指導監督の対象となるが、国土利用計画法では、届出で把握した利 用目的について、個別法における許可基準等を満たすと考えられる場合であっても、 都道府県が策定する土地利用基本計画に適合せず、周辺地域の土地利用に著しい支障 を生じさせると判断されるのであれば指導監督を行うことができる。したがって、法 規制の“隙間”に存在する行為、すなわち個別法では必ずしも禁止されていない行為 (規制対象エリアの外で行われる行為や、行為の態様から規制対象とならないもの) であっても、周辺地域に悪影響を生じさせるものについては、国土利用計画法の法目 的に反するものとして、同法の規制の射程に入るという考え方が成り立ち得る。具体 的な行為としては、周辺地域における災害発生のリスクがあるものや安全面で著しい 支障を及ぼすもの、周辺住民の生活環境や周辺の自然環境に著しい悪影響を及ぼすな ど周辺環境の悪化を生じさせるもの、行政が定めた計画・施策の方向性等に反してい るものなどが該当する。 土地基本法においては、 「土地については、公共の福祉を優先させる」べきこと、土 地は、 「その所在する地域の自然的、社会的、経済的及び文化的諸条件に応じて適正に 利用し、又は管理される」べきこと、 「その周辺地域の良好な環境の形成を図るととも に当該周辺地域への悪影響を防止する観点から、適正に利用し、又は管理される」べ きこと、「適正かつ合理的な土地の利用及び管理を図るため策定された土地の利用及 び管理に関する計画に従って利用し、又は管理される」べきこと等が基本理念とされ ており、土地所有者は、この基本理念にのっとり、土地の利用・管理・取引を行う責 務を有することとされている。上述したような行為(法規制の“隙間”に存在する行 為、すなわち個別法では必ずしも禁止されていない行為であっても、周辺地域に悪影 響を生じさせるもの)を伴う土地利用を以下「不適切な土地利用」5と呼ぶこととする が、国土利用計画法が「不適切な土地利用」を規制の射程に入れ、指導監督の対象と することは、土地基本法による土地所有者の責務とも整合的であるといえる。 ただし、当然のことながら、何らかの規制的措置を講じる場合には、規制を受ける こととなる者が、土地の利用に際しどのような行為が許容され、又は制限されるのか
5 本頁以降「不適切な土地利用」という用語が複数箇所で登場するが、本用語は、定義のとおり 「個別法で禁止されている土地利用」を含まない概念として用いられていることに留意された い。(本提言では、国土利用計画法による指導監督の対象となる行為を、「個別法で禁止されて いる土地利用」と「不適切な土地利用」の二つに要素分解している。)
6 を予見できるようにすべきであり、そのためには、地域における土地利用のルールと して、何が不適切な土地利用に該当するのかを土地利用基本計画にあらかじめ明示し、 当該ルールへの適合性が客観的に判断できるようにしておく必要がある。 以上を前提とした上で、不適切な土地利用への対処について、国土利用計画法に求 められる一般法としての包括的な役割を整理すると、以下のとおりである。 ・まず、取引段階において、個別法違反を事前にチェックする機能を果たすことに加 え、土地利用基本計画の記載に基づき客観的に不適切な土地利用と判断される利用 目的に対して指導監督を行うことで、そうした土地利用を未然に防止する。 ・加えて、現行制度において対応を行っていない利用段階においても、土地利用基本 計画の記載に基づき客観的に不適切な土地利用と判断される行為が行われ、周辺地 域に悪影響が生じる場合には、土地利用基本計画を根拠に指導監督を行うことで、 不適切な土地利用の是正を図る。
(3)国・地方公共団体双方の取組・連携強化の必要性 (2)の考え方に基づき国土利用計画法の機能が拡充され、同法がこれまで以上に 包括的な役割を果たしていくためには、都道府県等において、地域の実情を踏まえた 適正な土地利用の在り方の提示、当該在り方や多岐にわたる個別法、条例、行政計画 等との適合性の審査、必要な指導監督などが円滑かつ着実に実施される必要がある。 また、適正な土地利用の在り方を提示する際には、地域の実情を熟知した市町村が積 極的に関与していくことも重要である。 国においては、制度見直し後の地方公共団体の取組が進み、全国的に起こっている 土地利用上の様々な問題への対処がなされるよう、運用等に関する一定の方針を示す 必要がある。 加えて、国土利用計画法の見直しに伴い、特にこれまで規制対象としてこなかった 土地の利用段階における措置も含めて適切に運用されるためには、他法令との連携や 役割分担が効果的に図られる必要がある。そのためには、土地利用等に関係する行政 機関どうし及び国と地方公共団体が相互に連携し、土地利用規制の実効性を高めてい くことが重要である。
(4)個別法との関係 上述したように、土地利用については、個別法ではカバーしきれない“隙間”的な 領域が存在するため、一般法である国土利用計画法が役割を果たすべき局面があるが、 一般法と個別法の関係を考えると、個別法で対応可能なことは個別法で対応していく ことが基本となる。今後、各個別法において、社会経済情勢の変化に応じ、必要な制 度の検証や見直しが不断に行われることを求めるものである。
7 2.具体的な提案と留意すべき事項 1.の「基本的な考え方」を踏まえ、国土利用計画法が然るべき役割を果たすため に必要な仕組みについて、その具体的な方向性と留意事項を以下のとおり提案する。
(1)土地利用の在り方に係る基本的考え方の提示 本提言を踏まえ、制度の見直しをはじめ様々な施策を講じていく際には、制 度運用の主体である地方公共団体が適切かつ着実に事務を遂行することがで きるよう、国が先頭に立って積極的な役割を果たすべきである。特に、現在、 全国的に発生している土地利用上の様々な問題に対応するためには、地域任せ にするのではなく、統一的な考え方を示すことが必要である。 このため、地方公共団体による取組の指針となるよう、国が基本方針を策定 し、適正な土地利用に関する基本的な考え方や関係行政機関どうしの相互連 携・情報共有の在り方などを定め、提示すべきである。
(2)土地利用に係る情報把握の強化 ①届出対象範囲の拡大 土地利用の契機を早期かつ広範に捉え、問題が深刻化する前に未然に対応す ることを可能にする観点から、届出対象範囲を拡大し、情報把握の強化を図る ことを検討すべきである。 具体的には、まず、届出対象となる面積要件については、土地利用の実態や 申請側・行政側双方の負担も考慮した上で、可能な範囲で引き下げる方向で見 直すことを検討すべきである。この引下げは全国一律で行うことが考えられる が、その上で、地域の実情に応じてその基準を更に引き下げる必要がある場合 も想定されることから、地方公共団体の意向により引き下げることを可能とす る方策についても併せて検討すべきである。 また、相続後に特段の取引を行うことなく相続人自身が従前と異なる土地利 用を行うケースや、土地を無償で取得したり借り上げたりするケースもあるこ とから、現行制度のように有償取引のみに限定するのではなく、相続や無償譲 渡などについても届出対象として追加することが考えられる。ただし、土地の 権利取得が積極的な土地利用の意思を持たずに行われる場合も含めて届出対 象とすべきかについては、同様の仕組みを規定する他法令も参照しつつ、その 是非を検討する必要がある。 なお、近年、土地利用について、これまでにはなかった様々な利用形態が出 現しているという質的変化が生じていることも踏まえ、届出に係る利用目的を
8 確実に確認・審査するために、利用目的の分類や記入方法について見直すこと も必要である。 加えて、土地取得者が国外に居住する場合に、国内居住者よりも連絡がとり にくくなるリスクがあることなどを踏まえ、日本語による円滑なやりとりが可 能となるよう、国内連絡先や国内に居住する管理者・保証人の登録を土地取得 者に対して求めるなど、必要な場合に指導監督を円滑に行えるようにする方策 も検討する必要がある。
②届出後の利用目的に係る再届出の導入 現行の届出制度では、取引時点で届け出た後に届出事項に変更があっても、 変更届を提出する必要はなく、届出時に利用目的を「未定」とした場合や届出 後に土地の利用目的が変わった場合には、実際の利用目的を捕捉できないこと となる。 このため、土地利用を継続的にモニタリングし、実際の利用目的を確実に把 握できるよう、利用目的の変更に際して再度の届出を求めるようにすべきであ る。 なお、継続的なモニタリングを徹底する観点からは、再届出に加えて、届出 者に対し定期的な報告等を求めることも考えられ、どの時点でどのような形で 情報を求めることとするのか、実効性や申請側・行政側双方の負担等も考慮し、 詳細を検討する必要がある。
③届出対象とならない土地取引の把握等 届出対象面積を際限なく引き下げることはできないため、届出の対象外とな る土地取引が相当程度存在することになる。こうした土地取引を可能な限りカ バーできるよう、幅広く土地取引関連情報を把握できるデータベース等を国が 整備し、当該データに基づく取引状況の調査・分析とその結果の地方公共団体 への情報提供を行うような仕組みを検討すべきである。
④届出情報を整理した台帳の整備 土地利用については、都道府県内部部局や国・市町村といった多くの部局・ 機関が関連業務を担当しているが、②に述べたような継続的なモニタリングの 実効性を高めるためには、届出情報を様々な部局・機関との間で共有し、個別 法による措置の実施も含め、十分な連携を図っていく必要がある。 このため、都道府県において届出情報を整理した台帳を整備し、関係する部 局・機関が必要に応じ参照できるようにすることを検討すべきである。
9 また、地域住民等から請求があった場合には台帳の閲覧を可能にすることで、 届出情報と現地の状況に齟齬があるケースや必要な届出が行われていないケ ースなど問題事案の把握の一助となることが期待でき、地方公共団体による迅 速な対応につながるものと考えられる。 なお、届出情報には個人の機微な情報や土地の取引価格等が含まれており、 これらがオープンになれば個人のプライバシーの保護や事業者の事業活動等 に支障を及ぼす可能性がありうる。加えて、こうした情報が、例えば、ウェブ サイト上で誰でも容易に常時アクセスできる状態で公開されることとなれば、 その支障の度合いが大きくなることも考えられる。 このため、閲覧を可能とする場合は、他法令も参照しつつ、閲覧できる対象 や請求できる者の範囲、閲覧の請求・実施に係る方法等について検討が必要で ある。
(3)不適切な土地利用等への対応 ①土地利用基本計画の記載事項の充実 国土利用計画法に基づく土地取引の届出によって把握した利用目的に対す る指導監督の根拠となるのが土地利用基本計画であるが、同計画は県土全域を 都市・農業・森林・自然公園・自然保全の5地域に区分することを主眼として おり、概括的な内容にとどまっているため、指導監督の根拠となりにくいとい う実態がある。不適切な土地利用を未然に防ぎ、発生時には行政が関与する根 拠の一つとして有効に機能させるためには、当該地域の土地利用の実態や目指 すべき方向性等を踏まえた的確な指導監督を行うことができるよう、その拠り 所となる土地利用基本計画の記載事項を拡充し、都道府県がより具体的な内容 を計画に書き込めるようにすべきである。 記載事項の充実に当たっては、以下の点に留意する必要がある。 ・都道府県の区域内のどこでどのような行為が「不適切な土地利用」に該当す るものとして指導監督の対象となるのか(つまりは、どのような土地利用で あれば許容されるのか)について、地域住民や事業者が客観的に判断できる 程度に明示されている必要がある。 ・特定の目的による土地利用が当該土地において行われることそのものが不適 切な土地利用に該当する場合と、特定の目的による土地利用が当該土地にお いて行われることそのものは不適切な土地利用に該当せずとも一定の条件が 満たされなければ周辺地域への悪影響が生じ、不適切な土地利用に該当する 場合とがある。前者については抑制すべき土地利用の類型をエリアとともに 明示し、後者については土地利用の類型・エリアに加え、周辺地域への悪影
10 響の防止を図るために必要な条件を明示する必要がある。 ・地域の特性に応じて記載されるものであり、全ての都道府県が一律に定める ものではなく、また、必要な区域に限定されるものである。 ・住民の生活や法令等に基づき適正に行われる事業活動に必要不可欠な施設で あるにもかかわらず、当該施設が立地する周辺の住民にとっては望ましくな い施設が存在することも踏まえると、そうした施設を一律に排除するような 計画とならないようにする必要がある。 ・市町村や地域において、条例や地域管理構想6を含む計画などを通じて地域の 土地利用の在り方・ルール等を独自に定めている場合があるが、都道府県が 計画を策定する際に、これら土地利用の在り方・ルール等のうち一定の規範 性を有し、指導監督の根拠として計画への記載がなじむものについては可能 な限り計画に取り込むことなどにより、市町村や地域住民等の意向がボトム アップ的に反映されるようにすることも検討すべきである。 これらの留意事項も考慮のうえ、地方公共団体による計画策定や指導監督等 が適切かつ円滑に行われることが重要であり、国は、それに資するよう、 (1) の基本方針において土地利用基本計画の記載に当たっての具体的な指針を示 すなど、適切な措置を講じるべきである。 なお、土地利用基本計画の記載事項を充実するとしても、計画の見直しには 相当の期間を要することが想定される。このため、計画の見直しが実際に行わ れるまでの間においても、不適切な土地利用への対応が可能となるよう、例え ば、関係部局間及び関係行政機関間の情報共有・連携の強化等を先行的に行う ことが考えられ、国において対応を検討すべきである。
②届出情報の行政内部及び行政機関間での共有 届出情報について、国土利用計画法に基づく指導監督の要否判断のため他法 令への抵触の有無を確認するという観点のみならず、他法令による指導監督等 が的確に実施されるようにするという観点から、当該地方公共団体内の関係部 局や他の行政機関との間で円滑かつ横断的に共有できる枠組みを構築するべ きである。
③土地の利用段階における指導監督措置の導入 現行の国土利用計画法では、土地取引段階で把握した利用目的について土地
6 地域管理構想は、人口減少下において分野横断的・総合的に国土全体の管理の在り方を示す「国 土の管理構想」を基に、地域レベルで示された計画。住民自ら、地域の現状把握及び将来予測 を前提とした地域の将来像を描き、土地の管理の在り方について地域管理構想図として地図化 するとともに、管理主体や管理手法を明確にした行動計画を示す。
11 利用基本計画その他の土地利用に関する計画との適合性を審査し、不適合の場 合には利用目的の変更等について勧告を行い、勧告に従わない場合には公表の 措置を講じることとしている。一方、土地の利用段階に入ったのちは個別法に よる規制が適切に機能することで、周辺地域への悪影響等を生じさせる土地の 利用が防止又は是正されることとなる。つまり、国土利用計画法はこれまで、 個別法の規制に係る事前チェック的な機能を果たしてきた。 しかしながら、1.の「基本的な考え方」で述べたとおり、個別法には特定 の規制領域があるため、カバーしきれない“隙間”的な領域が存在し、それに より、不適切な土地利用が行われやすいという特徴がある。 このため、個別法において、必要な制度の検証・見直しが不断に行われるこ とを前提としつつも、国土利用計画法の目的である適正かつ合理的な土地利用 の確保を図る観点から、不適切な土地利用に対しては、土地の取引段階のみな らず土地の利用段階においても、必要に応じ勧告等の指導監督を行うことが考 えられる。さらに、当該不適切な土地利用によって災害の発生や著しい環境悪 化など周辺の土地利用に特段の被害が生じ、又は生じるおそれがある場合には、 その状態を解消させるため、勧告等の緩やかな措置だけではなく、利用行為の 差し止めや変更等の命令、義務者が命令に従わない場合における緊急的な行政 代執行といった措置を可能とすることも考えられる。 なお、土地の利用段階においては、基本的には、個別法による規制措置が講 じられるものであることから、当該措置を実施する内部部局や関係行政機関と の適切な役割分担や連携が確保されるよう留意すべきである。
④無届事案への対応の強化 国土利用計画法に基づく届出対象面積以上の土地取引であるにもかかわら ず届出を行わない事案(無届事案)について、登記情報など他の取引情報と照 合すること等により洗い出しを行い、報告徴収や現地調査等により利用目的等 を把握するとともに、必要な指導監督を行うなど、対応を強化すべきである。
⑤罰則の強化 上記の措置とあわせ、違反行為に対する抑止力を高める観点から、罰則の強 化を検討すべきである。特に、悪質な事業者に対する罰則については、近年の 立法例も参考に十分なものとなるよう検討すべきである。
(4)国・都道府県・市町村の役割分担と支援体制 ①役割分担の考え方
12 今後、ここまでに述べたような形で国土利用計画法の役割・機能強化のため の見直しを行い、適正な土地利用を確保するための対策を効果的に講じていく ためには、国・都道府県・市町村それぞれの役割に応じた分担・連携体制を構 築し、重層的に対応していくことが重要となる。 現状における国・都道府県・市町村それぞれの役割についてみると、国は、 全国的な問題の有無、その発生状況やそれに対する各地方公共団体の対応状況 などを把握し、地方公共団体の取組を支援しつつ、制度の企画立案を行う役割 を担っている。都道府県は、国土利用計画法及び土地利用に関する個別法に基 づく事務権限の多くを有し、執行するとともに、市町村をまたぐ広域的な課題 への対応を行っている。市町村は、住民に最も近い立場として地域の土地利用 に関する初期的な情報把握や相談対応を担い、また、独自の条例制定等により 適正な土地利用への誘導を図っている。
②国による支援 これまでの国土利用計画法では土地利用上の課題に対して必ずしも的確に 対処できず、運用にもばらつきがあったことを踏まえると、まず、国として全 国共通の制度設計や仕組みの構築を検討するべきである。また、不適切な土地 利用に対する措置や無届事案への対応など国土利用計画法に基づく事務はも とより、地域が独自に制定している条例等に基づく取組なども含め、都道府県・ 市町村の取組が万全を期して行われるよう後押しする必要がある。具体的には、 国においてガイドラインの策定、技術的助言、情報提供や相談対応の充実など、 積極的な支援を行うことを検討すべきである。加えて、国が届出対象外となる 土地取引の把握などを行い、地方公共団体に提供することで、地域における適 正な土地利用に向けた対応の充実を図ることも期待される。
③都道府県・市町村に期待される役割 都道府県は、広域的な土地利用の調整や専門的知見の提供及び市町村への技 術的支援を担う中核的主体としての役割を果たすとともに、土地利用基本計画 の重要な要素となる土地利用に関する総合的な方針の立案や当該方針に関す る管内市町村間の調整を行い、市町村と連携した情報把握や指導監督を進めて いくことが期待される。 市町村は、都道府県と連携して、引き続き住民に最も近い立場として地域の 土地利用に関する情報提供や相談対応を行うとともに、都道府県が作成する土 地利用基本計画が地域の実情に応じた適切な内容となるよう的確なインプッ トを行うことが期待される。
13 ④デジタル活用の推進 届出等の事務を担う地方公共団体側及び届出を行う側の双方の負担を軽減 するため、土地関連情報データベースの構築・普及を含めデジタル活用を推進 し、届出手続や審査等の効率化を図るべきである。
おわりに 国土利用計画法が求める適正な土地利用の実現を確かなものにするためには、制度 の整備・見直しだけでは十分でなく、国・地方公共団体・地域・事業者それぞれの役 割を明確にし、制度・技術・人材・運用を組み合わせた持続的な土地政策として推進 していくことが不可欠である。 本提言が、その出発点となり、まずは、上記提案を踏まえ、具体的な検討が進めら れるよう求める。さらに、今後とも、政府全体の議論の動向も踏まえながら、土地利 用の実態や具体の施策の取組状況等に応じ、更なる検討・対策が行われることを期待 する。
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FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:政策