ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の最新調査によると、今後12か月間で中国企業がAIチップを調達する際、国産チップが算力予算に占める比率は、現在の約30%から46%まで上昇する見込みです。この数字は、これまでNVIDIAが中心だった調達構造に大きな逆転が生じていることを意味しています。
専門家は、中国企業が予算を国産にシフトしている背景には、国産化政策の推進に加え、米国がNVIDIAのH20チップ供給を停止したことが大きく影響していると指摘しています。これにより、中国企業は国産AIチップを「予備」から「主力」に格上げせざるを得なくなったのです。しかし、業界関係者は、中国の国産AI算力の実用化を真に阻んでいるのはGPUそのものではなく、HBMの供給不足であると警告しています。
調査では、中国政府の複数の政策から、北京当局が算力の自立を急いでいることがうかがえます。政府は今後5年間で約2兆人民元を投じて全国データセンターを建設する計画を掲げており、また、コアチップの国内調達比率を少なくとも80%に設定しています。輸出規制と補助金政策の両面的な推進により、騰訊(テンセント)、阿里巴巴(アリババ)、華為(ファーウェイ)といったクラウドサービスプロバイダーは、H20の撤退により生じた算力の空白を、華為の昇騰、海光情報、寒武紀などの国産AIチップで埋めようとしています。現在、昇騰は中国国産AIチップ市場の約43%を占めており、寒武紀は約11%です。
しかし、AIチップがその性能を発揮できるかどうかは、単に算力(TOPS)だけでなく、メモリ帯域幅に大きく依存します。
専門家は、HBMが複数のDRAMダイを垂直に積層し、処理チップに極めて近接させる重要な部品であると説明しています。このHBMがなければ、どれほど高い算力を持っていても、データの供給が追いつかず、チップは空回りしてしまうのです。
推計によると、今年の中国における国産AIチップの需要は約420万個ですが、供給は約260万個にとどまり、160万個の不足が生じています。この不足の主な原因は、チップの設計や生産能力ではなく、HBMの配分不足にあります。
世界のHBM市場は、長年にわたりSKハイニックス、サムスン電子、マイクロンによって寡占されています。中国の国内サプライチェーンの最も脆弱な部分がまさにここにあります。長鑫存儲(CXMT)は積極的に展開を進めていますが、現在のDRAM月産能力は年末までに約35万枚、2028年には50万枚を目指しています。しかし、現時点でAI対応のHBM生産能力は月産約5,000枚にとどまり、HBM3のサンプルはようやく出荷された段階で、2026年末に小規模試作を予定しています。HBM4の開発はまだ始まったばかりです。
つまり、中国の国産GPU設計は「ようやくテーブルに着けた」状態ですが、最も重要なHBMは「まだ他人の顔色をうかがっている」状況です。
2018年以降の中国半導体の国産化の歴史を振り返ると、同様の展開が繰り返されています。第1段階は先進プロセスの受託生産(TSMC)で足止めされ、第2段階はEUVリソグラフィ装置(ASML)で阻まれ、今回のAIチップではHBMがボトルネックとなっています。いずれも「設計段階では最も進んでいても、最も高度な上流工程は最後まで突破できない」という構図です。46%という予算比率は「調達意欲と注文の方向性」を示しており、「生産能力と性能が完全に閉じた」ことを意味するものではありません。
業界関係者は、華為の昇騰エコシステムと寒武紀のシェアが今後も上昇すると予想しています。中国の国産チップは、推論処理や中小規模の学習用途から優先的に導入されるでしょう。しかし、2026年から2027年にかけてHBMの供給は依然逼迫すると見られており、もし世界的なメモリ不足が悪化したり、輸出規制がさらに厳しくなれば、中国の国産算力の拡大は供給の天井にぶつかる可能性があります。
現在、中国企業は国産チップを購入したいと思っても「HBMが組み合わせられない」という苦境に直面しています。真の状況逆転の鍵を握るのは、長鑫存儲のHBMの歩留まりと月産能力の上昇速度です。市場は、現在の5,000枚から数万枚規模への飛躍に注目しています。
アナリストは、「ダブルエンド型」のアプローチで中国の国産算力チェーンを捉えることを提唱しています。一方の端には、実際に恩恵を受けるチップ設計(華為エコシステム、海光、寒武紀)と先進パッケージング(HBMには2.5D/3Dパッケージが必要)を配置し、もう一方の端では、HBM供給の実態を伴わない単なる話題株を避けるべきだと助言しています。
専門家は、誰もが中国の国産チップのシェアがどこまで上昇するかに注目する中で、まず問われるべきは「160万個のHBM不足を、誰が、どれだけの期間で埋められるのか」という点だと指摘しています。これが、算力の自立を実現する真の勝負の分かれ目なのです。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:調査
- 関連組織:NVIDIA
- 製品・サービス:AIチップ / HBMメモリ