人工知能基礎建設投資の波はさらに高まりつつあります。花旗の最新レポートは、グローバルの大手クラウドサービスプロバイダー(Hyperscaler)のデータセンター資本支出見通しを大幅に上方修正しました。そして、AIネットワークインフラが重要な転換点を迎えていると指摘しています。つまり、帯域幅の拡張フェーズから「Stage 4」と呼ばれる早期採用期へと移行しているのです。次の成長の原動力は、近封裝光學(NPO)や共封裝光學(CPO)といった次世代の光インターコネクト技術に移るとされています。
花旗のアナリスト、Ronald Josey氏率いるチームは、最新の業界レポートで、AIインフラ投資が「スーパー循環」を形成していると分析しています。最新モデルによると、五大クラウド事業者のデータセンター資本支出は、2025年の4002億ドルから、2026年には7309億ドルにまで大幅に増加すると予測されています。さらに2027年には9781億ドル、2028年には1.16兆ドルを突破すると見込まれています。このうち、2026年の予測は4月時点のものから16%上方修正されており、AIの計算能力に対する需要が、依然として市場の当初予想を上回っていることを示しています。
花旗は、AI投資の規模が、これまでの数千億ドル規模から、兆ドル規模へと移行しつつあると認識しています。報告書は、2026年にアマゾン(AMZN-US)、マイクロソフト(MSFT-US)、Alphabet(GOOGL-US)、Meta(META-US)の四大クラウド事業者の合計資本支出が6300億ドルを超えると予測しています。また、2026年のグローバルAI資本支出は4900億ドルに達すると予想され、2026年から2030年までの累計投資額も、当初の8兆ドルから8.9兆ドルに上方修正されました。
花旗は、この四大クラウド大手のうち、3~4社が2026年のデータセンター資本支出の伸び率を2025年よりもさらに加速させると予想しており、AI基礎建設競争が依然として加速していることを示しています。
とはいえ、このような巨額の投資は短期的にはフリーキャッシュフローを圧迫しますが、花旗はこれを企業の経営悪化とは見なしていません。むしろ、長期的な競争優位を築くための意図的な戦略的投資だと分析しています。報告書は、かつてアマゾンがAWSに巨額投資した戦略と類似しているとし、AIインフラに早期から投資した企業は、将来、より強固な市場の護城河を築く可能性があると指摘しています。花旗は、Alphabet(GOOGL-US)、Meta(META-US)、アマゾン(AMZN-US)の第2四半期の収益と利益が、市場のコンセンサスを上回る可能性があると予想しています。
花旗の今回のレポートのもう一つの重要な観察点は、AIネットワーク技術の進化が「Stage 4」に入ったことです。
花旗は、AIネットワークの発展を5段階に分類しており、現在の市場の注目は、基礎ネットワークの構築や帯域幅の拡張、データセンター間の接続から、規模拡張型光技術(scale-up optics)の早期商業化フェーズ、つまりNPOやCPOがデータセンター構成に導入され始めた段階へと移っています。
過去のAIデータセンター建設の重点は「機器をつなぐこと」にありましたが、モデルの規模が急速に拡大するにつれ、データ交換量と遅延の要求が同時に高まっています。市場の需要は「より速く、より密に接続すること」へと変化しています。NPOやCPO技術は、チップやラック間の光インターコネクト効率を高めることで、消費電力と遅延を削減できる可能性があり、次世代のAIインフラアップグレードの重要な方向性になると期待されています。
市場データもこの傾向を裏付けています。花旗によると、フロントエンドのデータセンター交換機市場は年率約20%の成長を維持しており、AIバックエンドのイーサネット交換機市場の年率成長率は100%を超え、市場規模は37億ドルを突破しています。年間で倍増する見込みです。光伝送市場は第1四半期に年率約20%の成長を示しており、その中でもZR/ZR+技術の成長率は30%を超えています。
AIネットワークがStage 4に入ったことに伴い、花旗は、光通信とネットワーク機器のサプライヤーが主要な受益者になると見ています。
報告書は、通信機器セクターのトップ3として、Lumentum(LITE-US)、Ciena(CIEN-US)、Keysight Technologies(KEYS-US)の3社を挙げています。このうち、Lumentumは、NPO・CPO光インターコネクト技術分野で先行者優位を持ち、シリコンウェーハとレーザー部品の供給緊張の恩恵も受けるとして、花旗が注目するStage 4の主要受益者とされています。
Cienaは、光伝送市場の成長の恩恵を受けており、第1四半期の光伝送市場シェアは25%を超え、前年同期比で300ベーシスポイント以上拡大しています。ZR/ZR+技術の成長率も30%を超えています。Keysightは、AIネットワークインフラのテスト需要の増加により、花旗が注目するもう一つの受益銘柄となっています。
さらに、AI資本支出の波及効果は、半導体や電力インフラにも広がっています。花旗は、2026年のAI資本支出予測を4200億ドルから4900億ドルに引き上げており、NVIDIAなどのGPUサプライヤーや、Broadcomなどのネットワークチップメーカーが引き続き恩恵を受けると見ています。
ただし、花旗は、AI投資の熱狂にはリスクがあるとも警告しています。その一つの重要な課題は、サプライチェーンが急速な需要拡大に対応できるかどうかです。
報告書は、シリコン交換チップ、メモリ部品、レーザーなどのキーコンポーネントで供給ボトルネックが生じる可能性があり、これが下半期の利益率や製品納期に影響を与える可能性があると指摘しています。資本支出の上方修正は一つの側面ですが、サプライチェーンが実際に導入を完了できるかどうかが、AIインフラ投資サイクルの継続を左右するとされています。
また、市場はAI投資に過剰な評価がされているかどうかを注目し始めています。花旗は、今回のAI投資は2000年のネットバブルとは本質的に異なるとしながらも、企業側のAI需要が実際に収益や注文として現れている点が異なると分析しています。しかし、2027年から2028年にかけて、大規模な資本支出が十分なリターンに転化できるかどうかは、引き続き注視が必要だとしています。
一方で、光インターコネクトのアップグレードトレンドに追随できない従来型のネットワーク機器メーカーは、市場シェアを失うリスクに直面しています。花旗は、「Stage 4」は技術の世代交代を意味しており、NPO・CPOへの取り組み能力と、シリコンウェーハやレーザーの供給を確保する能力が、企業の競争力の鍵になると指摘しています。
花旗の今回のレポートの重要な意義は、AIインフラ投資の「規模」と「技術方向性」の両方を再定義している点にあります。
投資規模から見れば、AIインフラは千億ドル規模から兆ドル規模へと移行しています。技術進化の観点からは、単に計算能力を増やすことから、データ伝送効率を高める方向へと市場の注目が移っています。
花旗は、「Stage 4」が象徴する光インターコネクトのアップグレードが、次世代のAIネットワーク投資の中心になると見ています。投資家にとっての次の重要な観察ポイントは、クラウド大手の決算発表における資本支出ガイダンスが予想に合致するかどうかです。実際の投資がさらに上方修正されれば、AIスーパー循環の論理がさらに強化されます。逆に、資本支出が予想を下回れば、市場はAI投資サイクルを再評価する可能性があります。
AI競争は、モデルとチップの競争から、データセンター内部のネットワーク構成競争へと徐々に拡大しています。花旗が提唱する「Stage 4」は、次なるAIインフラ投資の戦場が、計算能力そのものから、その計算能力を支える高速光インターコネクトネットワークへと移っていることを意味しています。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:調査
- 関連組織:Amazon / Microsoft / Alphabet
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