エネルギー・気候情報センター(ECIU)の最新分析によると、2026年6月に欧州を襲った記録的熱波により、現地の穀物生産量が約900万1000万トン減少し、経済損失は推計で21億ユーロに達している。科学者が「50年前にはほぼ不可能だった」と表現するこの異常高温は、欧州の農家の生活と食料安全保障に深刻な脅威を与えている。

被災の中心地:フランスとハンガリーが最も深刻な打撃

被災国の中でも、フランスの損失が最も大きい。穀物生産量は約410万トンの下方修正が見込まれ、経済損失は8.91億ユーロに上る。特にトウモロコシの減産が大きく、2022年の大干ばつ時よりも低い水準にまで落ち込む見込みだ。

ハンガリーは2番目に深刻な被害を受け、生産量は240万トン減少し、損失額は約4.44億ユーロと推定される。スペインとドイツもそれぞれ約2.76億ユーロ、2.33億ユーロの生産額損失に直面している。

ブルガリアやルーマニアなど一部の国では収穫見通しが上方修正され、赤字を一部相殺しているが、欧州全体の純損失額は18億23億ユーロの間にあると見込まれている。

重要な生育期に高温が直撃

熱波の時期が作物の成長にとって極めて不利だった。小麦や大麦は粒の肥大期(穂への養分供給期)にあり、トウモロコシは受粉期を迎えていた。極端な高温は植物の受粉能力や養分の蓄積を直接的に抑制した。

フランスの農家であるBenoît Merlo氏は、「過去10年間、農場の気候へのレジリエンスを高める努力を続けてきたが、38℃を超える高温が数週間にわたって続いたことで、その効果はほとんど得られなかった」と語る。一部の作物では50~70%の減産が予想されている。

連鎖反応:家禽から食料安全保障まで

穀物以外にも、農業全体が打撃を受けている。フランスでは高温により数十万羽の家禽が死亡し、土壌水分不足によって野菜の生育も阻害され、玉ねぎの供給不足などが発生している。専門家は、穀物の減産により欧州の輸入依存度が高まり、飼料価格が上昇すると警告している。その影響は畜産業や世界のコモディティ価格にも波及するだろう。

科学者らは、気候変動が今回の「記録的」熱波の原因であると明確に指摘している。ECIUの土地分析担当者であるTom Lancaster氏は、「排出量をネットゼロに削減しない限り、このような損失は将来の影響のほんの前触れにすぎない」と強調する。

また、この災害は「欧州連合共通農業政策(CAP)」に対する批判を招いており、専門家は現行の補助金制度が気候リスクに適応する農家を十分に支援できていないと指摘。むしろ気候危機を悪化させる生産方式を助長しているとして、高コストで持続不可能な悪循環が生じていると批判している。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:調査
  • 関連組織:エネルギーと気候情報中心 (ECIU)