『Marketwatch』の報道によると、米国の雇用市場が冷え込みを見せている。これは本来、経済の警戒信号とされるが、ウォール街の戦略家らは、経済活動が堅調に推移し、賃金インフレが緩和傾向にある限り、労働市場の弱化はFRBが利下げを行う余地を生み出すものだと指摘している。これは、株式市場のバリュエーションを下支えする要因となる可能性がある。

22V Researchは、人工知能(AI)による企業収益力の向上などを背景に、S&P500指数が今後約12カ月で8500ポイントに達するとの予測を示した。

米国7月の非農業部門雇用者数は予想に反して2万3000人減少し、市場予想の8万3000人増加を大きく下回った。これは労働市場のさらなる冷え込みを示唆している。雇用者比率も低下し、名目賃金上昇率も徐々に鈍化しているが、全体的な経済活動はなお強さを保っている。

この雇用統計発表後、市場はFRBの追加利上げの可能性を後退させた。加えて企業決算が堅調だったこともあり、S&P500指数は再び過去最高値圏に接近した。花旗のリサーチチームは、現在の市場環境を「悪材料が好材料になる」と表現している。

22V Researchのチーフマーケットストラテジスト、デニス・デブシュアー氏は、米国経済が「良性な減速」を迎えていると分析する。労働市場の需給ひっ迫が和らげば、経済成長が速くても直ちに賃金インフレが発生するとは限らず、むしろ米国経済の非インフレ成長限界が2%以上に高まる可能性があるという。

つまり、労働市場の余剰が広がり、賃金圧力が持続的に和らげば、米国経済は従来の予想を上回るペースで拡大しても、FRBが利上げで需要を抑制する必要はなくなる。また、今後需要ショックが発生した場合、FRBは利下げを行う余地をより大きく確保できるようになる。

ただし、デブシュアー氏は、このような環境でも米国債利回りが大幅に低下するとは限らないと指摘する。持続可能な経済成長率の上昇は、均衡金利、すなわち自然利回り(R*)を押し上げる可能性があるため、10年国債利回りは4.5%前後で推移すると予想している。これは、米国経済の長期的見通しに対する市場の楽観的な姿勢を反映している。

株式市場にとっては、持続的な成長、穏やかなインフレ、そしてFRBの利下げ余地という、比較的有利な環境が整っている。経済拡大期間が延びれば、投資家が求める株式リスクプレミアムは低下し、結果として株価のバリュエーションが高まる可能性がある。

マクロ環境の改善に加え、AIによる効率性の向上も企業収益を押し上げる重要な原動力になると見られている。デブシュアー氏は、企業が公表しているAIの効果をもとに試算したところ、AIは企業の利益率を平均で150ベーシスポイント、つまり1.5%ポイント改善すると推定している。

彼は、企業利益率の上昇と株式リスクプレミアムの低下が相乗的に作用すれば、S&P500指数は今後約12カ月で8500ポイントに達する可能性があると予測している。米国経済への楽観的な見方から、彼は投資ポートフォリオで景気敏感株を防御株よりも好んで保有している。

市場の次の注目点は、水曜日に発表される米国7月の消費者物価指数(CPI)だ。インフレ圧力が引き続き穏やかに推移していれば、労働市場の冷え込みが景気後退の前兆ではなく、FRBの金融緩和を後押しする要因であるとの見方がさらに強まるだろう。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:調査
  • 関連組織:22V Research / Marketwatch
  • 原文内の日付:今後12カ月
  • 製品・サービス:AIによる企業効率化