輝達(NVIDIA, NVDA-US)は、次世代AIチップアーキテクチャ「Rubin」時代の幕開けを迎えようとしている。米国の大手投資銀行である米国銀行(Bank of America, BAC-US)は、この新プラットフォームが新たな複数四半期にわたるアップグレードサイクルを牽引する可能性があるとし、輝達を「首選股」に格上げし、目標株価を350ドルに設定した。これは、当時の株価223.96ドルから約56.3%の上昇余地を示唆している。
米銀のアナリスト、Vivek Arya氏は最新レポートで、市場の関心が「AI需要の持続性」から「メモリコスト」「粗利益率の圧力」「カスタムチップ競争」「AI顧客への資本投入」などのリスクに移行していると指摘。しかし、投資家はRubinアーキテクチャ、Vera CPU、そしてクラウド資本支出の持続的増加がもたらす次の成長フェーズを過小評価している可能性があると警告した。
輝達は8月26日に第2四半期決算を発表予定。米銀は、同四半期の売上高が940億~950億ドルに達すると予想しており、これは会社が示した約910億ドルのガイダンスを30~40億ドル上回る水準。さらに、第3四半期の売上見通しは1070億~1080億ドルと予測しており、市場の平均予想である約1040億ドルを大きく上回る。
この予想が正しければ、輝達は自社のガイダンスを上回る業績を連続で達成するだけでなく、市場予想を上回る先行き見通しを示すことで、AIデータセンター投資サイクルの継続への信頼をさらに強化することになる。
すでに発表された財報では、AIデータセンター需要の強さが明確に示されている。2026会計年度第4四半期の売上高は681.27億ドル(前年比73%増)で、うちデータセンター部門は623億ドル(前四半期比22%増、前年比75%増)。年間のデータセンター売上高は1937億ドルに達し、前年比68%増となった。また、2027会計年度第1四半期の売上見通しは780億ドル(±2%)、GAAPベースの粗利益率は約74.9%と見込まれている。
製品戦略面では、Rubinが次の成長の柱となる。輝達はすでに「Vera Rubin」プラットフォームを正式発表しており、これは6種類の新チップで構成され、Blackwellプラットフォームに比べて最大で10倍の推論トークンコスト削減を目指している。このシステムは、アマゾンウェブサービス(AWS)、Google Cloud、マイクロソフトAzure、オラクル(Oracle)などのクラウドサービスプロバイダーが先行導入する予定だ。
米銀は、Rubinの出荷開始、新型Vera CPUの量産、そしてクラウド事業者の資本支出増加が「複数四半期にわたるアップグレードサイクル」を引き起こすと予測。したがって、Rubinの重要性は次期決算の単一四半期の業績にとどまらず、今後数四半期にわたる収益・利益見通しの上方修正を支える鍵になると分析している。
市場はすでに、輝達の次世代システムの単価を再評価し始めている。米銀の試算では、Vera Rubin NVLラックの価格は700万~850万ドルに達する可能性があり、Blackwell Ultraの約400万ドルと比べて大幅に高くなる見込みだ。
システム価格の上昇は、メモリや先端パッケージングなどの部品コストが上昇する中でも、輝達が高価格のシステム販売によってコスト圧力を吸収できることを意味する。つまり、Rubinは単なる性能向上にとどまらず、AIシステム1台あたりの収益性を高める役割も果たす可能性がある。
メモリコストは、現在市場が最も注目するリスクの一つだ。AIサーバーにおけるHBM(高帯域メモリ)需要の急増により、供給が逼迫しており、メモリ価格の上昇が粗利益率を圧迫するとの懸念がある。
しかし、米銀は、高コストのメモリがRubinコンピューティングラックの粗利益率に与えるマイナス影響は約60ベーシスポイント(bps)にとどまると試算。投資家の一部が懸念するほど深刻ではないと判断している。同社は、長期的な粗利益率が73~74%程度で維持されると予想しており、現行の約75%からわずかに低下する水準だ。
米銀は、輝達が強力な価格設定力、優先的なメモリ供給の確保、部品コスト変動に応じた価格調整の余地を持っているため、メモリ価格の上昇が粗利益率に完全に転嫁されるわけではないと分析している。
最近の市場では、HBM4およびHBM4Eの供給逼迫により、価格上昇幅が当初予想を上回る可能性があるとの見方が強まっている。輝達のRubinシリーズのHBM需要は、AIサプライチェーン全体の重要な変数となるだろう。マイクロン・テクノロジー(Micron)、SKハイニクス、サムスン電子などの主要メモリサプライヤーは、AI資本支出サイクルの恩恵を受ける主要企業となっている。
しかし、輝達にとって真に重要なのは、メモリ価格がどれだけ上がるかではなく、GPUやAIシステム全体のコストを顧客に転嫁できるかどうかだ。
米銀が注目する重要な指標は、A100、H100、B200などの輝達GPUのレンタル価格が、8月時点でなお歴史的高値圏に近い水準を維持していることだ。これは、クラウド事業者やAI企業が依然として高価な輝達の計算リソースを必要としており、需要が根強いことを示している。
GPUのレンタル価格やAI計算サービスの収益が高水準を維持すれば、輝達はメモリやその他の部品コスト上昇を顧客に転嫁する十分な価格余力を確保できる。これが、Rubin時代に高粗利益率を維持するための重要な要因となるだろう。
また、輝達が直面するもう一つのリスクは、カスタムAIチップの台頭だ。大手クラウドプロバイダーが自社開発のASIC(特定用途向け集積回路)を採用することで、AIアクセラレータ市場における競争が激化している。市場は、超大規模クラウド事業者が自社チップの比率を高めれば、汎用GPUへの依存が低下する可能性を懸念している。
しかし、輝達はGPU、CPU、ネットワーク機器、NVLink、CUDAソフトウェア、そして完全なAIデータセンター・プラットフォームを組み合わせることで、より深いエコシステムを構築し、単一チップの代替リスクを低減しようとしている。
現在の輝達の競争優位性は、GPUの性能だけではない。AI推論需要の急増に伴い、顧客が求めるのは単一のGPUではなく、数千から数万のプロセッサ、メモリ、ネットワーク、ソフトウェアを統合した完全な計算システムだ。
輝達が発表したRubinプラットフォームは、まさにこの方向性を体現している。同社は、RubinがAI推論コストをさらに削減し、エージェント型AIなどの新興ワークロードに対して計算効率を高めると説明している。CEOのジェンスン・フアン(黄仁勳)氏も、AIエージェントが計算需要に新たな転換点をもたらしており、企業のAIインフラ投資は急速に拡大していると指摘している。
評価面では、米銀は、輝達の現在の株価が投資判断のもう一つの根拠になると分析している。同社の予想PER(株価収益率)は約16倍で、過去10年間で相対的に割安な水準にあるという。
さらに重要なのは、米銀が、輝達の1株当たり利益(EPS)が2026年暦年の4.55ドルから2027年には9.09ドルに達すると予想しており、1年間でほぼ倍増する見込みだ。
「利益の急速な成長」と「評価倍率の圧縮」という組み合わせは、米銀が輝達を引き続き買い推奨する主な理由となっている。つまり、現在の株価は、同社が予想する利益成長スピードを十分に反映していないと判断している。
したがって、米銀は、Rubinの登場を単なる新製品発表ではなく、市場が輝達の収益力と適正評価を再評価するための「触媒」と位置付けている。
ただし、輝達には依然として複数のリスクが存在する。AI資本支出が現在のペースを維持できるか、超大規模クラウド事業者がASICの採用をさらに進めるか、メモリなどの部品コストがさらに上昇するか、AIモデルの効率化が単位計算需要を低下させるか、などが挙げられる。
さらに、AIデータセンターへの資本支出はすでに極めて高い水準に達しており、市場は、大手テック企業が数千億ドルを投じてAIインフラを構築した後、十分な投資収益を上げられるかを注目している。もしAIサービスの収益成長がインフラ投資に追いつかなければ、クラウド事業者は資本支出を減速させ、結果として輝達のGPU需要に影響を与える可能性がある。
そのため、8月26日の決算発表は、単なる四半期業績の確認にとどまらず、Rubinサイクルが正式に始動したかどうかを判断する重要な窓口となる。輝達が市場予想を上回る売上高と先行き見通しを発表し、Rubinの出荷状況や供給体制を確認できれば、市場の信頼はさらに高まるだろう。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:新製品
- 関連組織:アマゾンウェブサービス / Google Cloud / マイクロソフト
- 製品・サービス:Rubinアーキテクチャ / Vera Rubinプラットフォーム