トイレや衛生設備で世界的に知られる日本のTOTOは、AI半導体市場への進出を本格化している。AI用GPUやHBM、先端チップの需要拡大に伴い、TOTOは300億円を投じて半導体向け先進セラミックス事業を拡大する計画を発表した。このうち170億円は茅ヶ崎基地に新設するセラミックス研究棟に投資され、数十年にわたるセラミックス技術を新たな成長エンジンに転換する。
TOTOが精密セラミックスに取り組むのは近年のことではない。1976年に研究を開始し、1984年に本格的に事業化。中長期経営戦略「WILL2030」において、半導体先進セラミックスをコア成長分野に位置づけ、従来の衛生陶器から半導体・光通信市場へと事業領域を拡大している。
現在、TOTOが提供する半導体セラミックス製品には、主に静電チャック(ESC)とAD気相堆積(Aerosol Deposition)セラミックス部品がある。静電チャックは静電力でウエハを固定する装置で、先端プロセスでは温度制御、平面度、パーティクル管理が極めて厳しく、半導体製造装置の重要な構成部品となっている。
もう一つのAD気相堆積技術は、音速に近い速度でセラミックス粉末を噴射し、緻密な酸化イットリウム(Y2O3)セラミックス膜を形成する。この膜はプラズマ腐食に強く、製造プロセス中のパーティクル汚染を低減でき、従来の熱噴射法よりも優れた性能を発揮する。
AI用GPUやHBM、先端チップの需要急増に伴い、これらの製品の需要も高まっている。
研発と量産の同時拡大
半導体需要の取り込みを図るため、TOTOは「研発」と「量産」の両面で拡大を進めている。研究開発は茅ヶ崎基地が担い、新研究棟では次世代静電チャックやAD部品の技術開発を推進。一方、量産は中津工場と豊前工場で行う。
特に豊前工場では、静電チャック用の焼成設備の建設を2025年12月に開始し、2027年1月の操業開始を予定している。中津工場も複数回の増設を完了しており、生産能力を強化している。この「茅ヶ崎で開発、中津・豊前で製造」という分業体制により、TOTOは材料開発から設計、製造、性能検証までの一貫した体制を構築しつつある。
AI需要が上流素材に波及
AIの演算能力拡大に伴う需要は、GPUやHBMにとどまらず、半導体製造装置や材料にも波及している。かつてはニッチだった静電チャックや酸化イットリウムコーティングは、高温・高プラズマ環境下でのウエハ処理において不可欠な部品となり、高性能特殊セラミックスの品質がプロセス歩留まりに直接影響するようになっている。
TOTOは、長年にわたる衛生陶器分野での材料技術や焼結プロセスを半導体材料に応用しており、今回の投資は最終段階ではない。今後もさらなる大規模な増産計画を検討している。AI半導体需要が上流素材にまで広がる中、従来のセラミックスメーカーが半導体サプライチェーンに深く入り込む動きが加速している。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:新製品
- 製品・サービス:静電チャック(ESC) / AD気相堆積セラミックス