最新の『全球EMSとODM二十強2026』予測レポートによると、全球の電子製造業の力の地図は、人工知能(AI)インフラ需要の高まりによって再編されつつある。AIインフラの展開スピードを左右するのは、システム統合能力を持つハードウェア製造企業の存在だという認識が広がっている。
AIとクラウドインフラ関連の収益が、初めて消費性電子を上回る
データによると、2026年の全球トップ20代工業者の合計収益は1.10兆ドルを突破し、従業員総数は330万人に達する見込みだ。このうち、AIおよびデータセンター関連の収益は3400億ドルを超え、全体の約31%を占める。つまり、代工収益の3ドルのうち、ほぼ1ドルがAIインフラから生み出されていることになる。
この数値は、産業構造における「ゴールデンクロス」を示している。AIとクラウドインフラの収益比率が、従来の消費性電子(28%)を初めて上回り、業界最大の単一収益源となったのだ。
調査担当者は、かつてはスマートフォンやPCがサプライチェーンの生産計画を主導していたが、現在ではNVIDIAのGPU発表スケジュールや、クラウドサービスプロバイダー(CSP)の設備投資計画、データセンターの建設進捗が、代工大手の生産能力配分を左右する主導的要因になっていると分析している。
台湾と中国大陸の企業が8割以上を占める市場
地域別の収益分布では、台湾企業が約61%のシェアを占め、中国大陸企業が約23%を占める。両者を合わせると84%近くに達し、製造の集中度の高さが際立っている。
トップ10企業のうち、台湾企業は富士康(予想収益2100億ドル超)、緯創(800億ドル超)、和碩(750億ドル超、年間45%増と二十強中トップクラスの成長率)、仁寶、英業達、廣達、華宇(USI)の7社が名を連ねる。
特に、台湾のODMメーカーは、米国四大CSP(Meta、Google、Microsoft、Amazon AWS)と深い協業関係にあり、サーバーの整機製造やシステム統合の分野で重要な受注権を握っている。
一方、中国大陸勢は垂直統合の競争優位性を発揮している。立訊精密(予想収益600億ドル超)、比亞迪電子(240億ドル超)、歌爾股份、華勤技術、龍旗科技は、スマートフォンから車載電子、精密機構部品まで幅広く手がけている。
AI応用がスマートカー、ロボットなどのエッジコンピューティング領域に広がるにつれ、中国企業の垂直統合の強みはさらに拡大すると市場は予測している。北米勢は、捷普(Jabil)と偉創力(Flex)が中心で、主に航空宇宙、医療、産業システムなど、高い参入障壁を持つ高付加価値分野に特化している。
バリューチェーンの躍進と地政学的・システム工学的課題
報告書は、代工業界のバリューチェーンが「単板組立」から「サーバー、ラック、インフラ」の整ラック統合へと移行していると指摘する。しかし、台湾と中国が84%の収益を占めるという極度の集中構造は、地政学的リスクを高めており、企業や顧客が近岸・多拠点調達へと多様化を加速させている。
また、AIチップの性能向上はハードウェア製造側にも厳しい課題を突きつける。演算システムが直面する「メモリーワール」(CPUとGPUの間で頻繁にデータを移動する際の消費電力と遅延)や、精密な放熱、電源管理の問題が、製造現場にまで影響を及ぼしている。
今後、フルラック液冷ソリューション、高効率電源、高速接続技術など、全スタックのシステム統合能力を持つトップメーカーは、複雑さを議価力に変えることができる。一方、こうした能力を持たない企業は、利益空間がさらに圧迫される可能性がある。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:調査
- 関連組織:NVIDIA / Meta / Google
- 製品・サービス:AIサーバー / データセンターインフラ