企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、入社1〜12年目の若手・中堅社員1,393名を対象に「若手・中堅社員の仕事の負荷とマネジメントに関する調査」を実施しました。本調査が、今後の人材定着施策や職場づくりを検討する際の一助となれば幸いです。
【注目いただきたいポイント】
主要指標 — KEY FIGURES
「求められる最低限の仕事だけをする=静かな退職」と思っていませんか?
本調査は、その見方に一石を投じます。今の会社で働き続ける意思はあるものの、「求められている最低限の仕事だけを行い、それ以上のことはしない」という働き方を「静かな退職」と表現されることもありますが、意味があると感じる仕事については自律的に追求するという「意味スイッチ型」が存在することが明らかになりました。これらの人は、実はワーク・エンゲイジメントが高い傾向があります。
一方で、仕事全般に対して必要以上に自分を投入しない働き方である「静かな退職型」も存在しますが、その原因は本人の姿勢だけでなく、上司のマネジメントや仕事環境にある可能性が示されています。裏を返せば、適切な環境の提供によって変えられる可能性があるということを示しています。
【エグゼクティブサマリ】
1.今の会社で働き続ける意思はあるものの、「求められる最低限の仕事だけを行い、それ以上のことはしない」社員には、意味があると感じる仕事は自律的に追求する「意味スイッチ型」と、仕事全般への関与を最小限に抑える「静かな退職型」の2つが混在している。【図表1・2】
2.「意味スイッチ型」は、会社から割り当てられた仕事はミニマムの労力でこなす一方で、意味を感じる仕事には積極的に挑戦。仕事の負荷・上司の関わり・ワーク・エンゲイジメントのいずれもが高い水準にあり、キャリア自律時代に適合した一つの新しい働き方といえる。【図表1】
3.「静かな退職型」は、仕事の負荷・上司の関わりが低い水準にあり、職場が「ゆるい」と感じている。仕事については、他群に比べて「もう少しできる」という回答傾向を示しており、上司による適切なマネジメントや支援という環境が整えば、働き方が変わる可能性がある。【図表3・4】
4.ワーク・エンゲイジメントを高めるには、仕事の負荷がかかる場面で、複数の「仕事の資源」(上司のマネジメントや支援的な環境)を適切に組み合わせることが重要となる。【図表5・6】
5.入社年次によって、働き方の傾向・比率は変化する。「静かな退職型」は4〜8年目にやや増加し、「意味スイッチ型」は9年目以降に大きな減少が見られる。【図表7・8】
【本プレスリリースの全体像】
1. 調査担当のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
技術開発統括部 研究本部 主任研究員
内藤 淳(ないとう じゅん)
近年、「静かな退職」が社会のさまざまな場面で注目されています。一方で、その定義や測定方法には曖昧な部分が多く見受けられます。本調査では、こうした問題意識から、働き方や意識の意味内容を明確にしたうえで分析を行った結果、「静かな退職」と一括りにされてきた働き方の中に、「意味スイッチ型」と呼べる、やや異なる特徴を持つ働き方が存在することがわかりました。
また、「静かな退職」が必ずしも「もっと負担を減らしたい」という意識から生じているわけではなく、本人にとっての成長に繋がるような適切な負荷や挑戦の機会が十分に与えられていないことが一因となっている可能性が示唆されました。これは、従業員本人の意識や姿勢だけの問題として捉えるのではなく、上司がメンバーの状態を適切に把握し、仕事の内容や負荷、挑戦の機会などを整えることで、働き方が変化する可能性があることを示しています。
「静かな退職」という言葉は、ともすると従業員側の問題として語られがちです。しかし、その背景には、上司の関わり方や仕事の与え方、職場環境など、企業側から働きかけることのできる要因もあります。本調査の結果が、企業の経営者、人事担当者、管理職の皆様にとって、従業員の働き方を捉え直し、よりよい職場環境やマネジメントを考えるきっかけとなれば幸いです。
2. 調査の結果
◆ 働き方の分類
「求められている最低限の仕事だけを行う」社員は、2つの異なる働き方に分かれる
「必要最低限の仕事しかしない=静かな退職」とは限りません。本調査では、今の会社で働き続ける意思はあるものの、求められている最低限の仕事だけを行うという働き方(勤続志向・ミニマム遂行群)を調べた結果、異なる2つの働き方が含まれていることがわかりました。
「意味スイッチ型」と「静かな退職型」はいずれも、「必要最低限の仕事だけ行う」という点に加え、仕事上の負担やストレスを減らすために仕事を選んだり避けたりする「仕事の調整行動」が高いという点でも共通しています。しかし、その先の行動がまったく異なります。「意味スイッチ型」は、割り当てられた仕事への労力は抑えながらも、自身が意味を感じる仕事や新たな取り組みには積極的に関与します。一方、「静かな退職型」は、仕事の調整にとどまり、仕事全般に対して必要以上に自分を投入しません。
「求められた仕事にミニマムな労力で応える」という行動だけで、社員の働き方を「静かな退職」と見なすことはできません。「何を避け、何に意欲を向けているのか」まで踏み込んで捉えることが、社員の働き方を正しく理解するうえで重要です。
【図表1】働き方の5分類(比較)
【図表2】働き方の5分類について
1.「求められている最低限の仕事だけを行う」という行動と勤続意向を組み合わせて、まず以下のように4つに区分
2.「勤続志向・ミニマム遂行群」を、「職場で新しい取り組みを試す」 行動の高低により、「意味スイッチ型」(3以上:高)と「静かな退職型」(2以下:低)の2群に区分
◆仕事の負荷との関係
「意味スイッチ型」は適切な負荷の中で働き、「静かな退職型」は「ゆるさ」の中で停滞している
「意味スイッチ型」と「静かな退職型」では、置かれている仕事の負荷の状況が対照的です。「意味スイッチ型」は仕事量・時間的プレッシャー・挑戦的負荷のいずれにおいても高い負荷のもとで働いており、その中で自ら仕事を調整しながら意欲的に取り組んでいます。一方、「静かな退職型」はこれらすべての負荷が5群中最も低く、現在の職場を「ゆるい」と感じている傾向が最も強い群でもあります。
注目すべきは、「静かな退職型」でも自分の力を高めるための仕事量増加希望が全体平均と大きく変わらず、むしろやや高めである点です。このことは、「静かな退職」が必ずしも「もっと負担を減らしたい、楽をしたい」という意識から生じているわけではなく、本人にとって適切な負荷や挑戦機会が十分に与えられていないことが一因となっている可能性を示しています。上司にとっては「負荷を下げる」だけでなく、「本人の成長段階に合った適切な負荷を設計する」という視点が求められます。
【図表3】仕事の負荷(5群比較)
◆ 上司のマネジメント・仕事環境との関係
「意味スイッチ型」は支援環境が充実している一方で、「静かな退職型」は上司の支援も成長環境も不足している
「意味スイッチ型」と「静かな退職型」の違いは、仕事の負荷だけではありません。「意味スイッチ型」では上司からのフィードバックやキャリア支援、成果が見えやすい環境など、仕事を支える資源の多くが5群中で最も高い水準にあります。高い負荷のもとで働きながらも充実した支援環境があることが、この群の高いワーク・エンゲイジメントにつながっていると考えられます。
一方、「静かな退職型」では上司の関わりや成長につながる環境が5群中最低水準にあります。裏を返せば、上司が適切にメンバーに関わり環境を整えることで、「静かな退職型」の働き方や姿勢が変わる可能性があるということでもあります。
【図表4】上司のマネジメントと仕事の環境(5群比較)
◆ ワーク・エンゲイジメントを高める仕事の負荷のかけ方
仕事の負荷を成長につなげるには、「複数の仕事の資源」の組み合わせが鍵
メンバーに「仕事の負荷」をかけるだけでは意欲向上にはつながりません。本調査のデータを用いた分析では、「仕事の資源」(上司のマネジメントや支援的な環境)が複数組み合わさることで、検証を実施したケースのうち30〜45%でワーク・エンゲイジメントへの効果が確認されました(「仕事の資源」が1つだけの時には、効果がほぼ見られない)。また、効果的な「仕事の資源」の組み合わせは、負荷の種類によって異なります(図表5)。具体的には、「仕事量」「時間的プレッシャー」には組織的資源(仕事の公平な分担など)、「挑戦的な負荷」には職務資源(魅力のある仕事の内容)と社会的資源(上
司の支援的な関わり)の組み合わせが効果的です(図表6)。どのような負荷を、どの資源とセットに
してメンバーに提供するかを設計することがポイントとなります。
【図表5】仕事の負荷と資源の組み合わせ効果(単独vs2つの組み合わせ)
【図表6】仕事の負荷の種類別・動機づけ効果が見られた仕事の資源のランキング
◆ 入社年次別の傾向
年次によって異なる「静かな退職型」と「意味スイッチ型」の比率とマネジメント課題
「静かな退職型」は4〜8年目に比率がやや増える一方、「意味スイッチ型」は9年目以降に比率が大きく減少する傾向が見られます。
4〜8年目は、若手・中堅社員にとって仕事の負荷も上がらず、仕事経験の幅が広がらないと感じられやすい時期であり、適切な負荷が与えられないことで成長が停滞し、「静かな退職型」が増加しやすいと考えられます。一方、9年目以降は多くの企業で準管理職的な立場へと昇格していく時期にあたり、仕事の負荷が急増する一方で、「仕事の資源」はむしろ低下していきます。特に上司の関わりが大きく低下することで、「意味スイッチ型」のという働き方が成り立ちにくい状況が生じると考えられます。 入社年次を踏まえて、「仕事の負荷」と「仕事の資源」をバランスよくメンバーに提供することが、それぞれの課題への対応として重要となります。
【図表7】働き方の5分類の年次推移
【図表8】「仕事の負荷」の年次推移
3. 調査概要
リクルートマネジメントソリューションズについて
ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・ 戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。
●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス
また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。
※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp
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