人々の意思決定の積み重ねにより減少してきた生物多様性は、2030年までに損失を反転させ、その後回復軌道に乗せていくことが求められています(ネイチャーポジティブ)。

では、私たちはそんな野生の生きものや自然を、どこで見て知るのでしょうか。

多くの人にとって、生きものとの出会いは、自然の中ではなく、テレビやSNS、ニュース、映像作品などの画面を通して生まれています。

そんなメディアは、遠く離れた自然に生きる生きものを私たちの身近に引き寄せ、人々の心を動かし、「知る」「好きになる」「守りたいと思う」きっかけをつくる大きな力を持っています。一方で、伝え方によっては、生きものへの誤解や不適切な関わりを生む可能性もあります。

だからこそ、メディアの中で生きものがどのように切り取られ、映され、どのような言葉で語られるかは、自然を回復させていく社会をつくるうえで重要な意味を持ちます。

ROOTsは、メディアと生物多様性の関係を研究・可視化し、科学的知見を制作現場に届けることを通じて、人と生きものの未来につながる意思決定を支えることを目指しています。

最初の取り組みとして、以下を調査しました。

『テレビ番組における生きもの表現の現状』 (5月22日 国際生物多様性の日 公開) メディアと生物多様性の関係を考えるための基礎情報として、テレビ番組における生きものの扱われ方と、生きもの表現のあり方が人々の認識や行動に影響しうることを体系的に整理しました。

『自然・生物分野の関心形成におけるメディアの役割』 (6月5日 世界環境の日 公開) 研究者、実務者、学生など自然・生きもの分野に関わる人々を対象としたアンケート結果をもとに、メディアが関心形成やキャリア形成に果たしてきた役割を整理しました。

この2本のレポートから見えてくるのは、メディアが生きものを「伝える場」であるだけでなく、人々が自然と出会い、関心を深め、未来の行動へとつなげていく大切な入口でもあるということです。

だからこそ、自然や生きものを扱うコンテンツには、魅力的に伝える力とともに、科学的な正確性や背景となる文脈、視聴者への伝わり方を意識した制作のあり方が重要になります。

『テレビ番組における生きもの表現の現状』 調査の結果、日本のテレビにおいて、年間推計約6,470件の生きもの番組が放送されていることがわかりました(2025年4月30日〜7月30日の調査結果に基づく推計)。生きものはテレビメディアにおいて日常的に扱われるテーマであることがわかります。

一方で、番組に登場する生きものには偏りも見られました。犬猫をはじめ、パンダ、サル、クマ、ゾウ、ライオンなど、哺乳類や特定の動物に注目が集まりやすい傾向があります。テレビの中で繰り返し取り上げられる生きものは、人々にとって身近な存在になりやすい一方で、取り上げられにくい生きものは、自然や生物多様性の理解の中で見落とされやすくなる可能性があります。

本調査レポートでは、国内外の放送局や業界団体、プラットフォームなどの放送基準や制作ガイドラインを比較し、自然や生きものの視点を既存の基準に組み込み、制作現場で実際に使える判断の指針として運用していくことの重要性を提案しています。

『自然・生物分野の関心形成におけるメディアの役割』 このレポートでは、自然・生物分野に関わる研究者、実務者、学生を対象に、幼少期から社会人段階までの関心形成のきっかけを尋ねました。

調査から見えてきたのは、メディアが自然や生きものへの関心を育む重要な入口になっているということです。特に、幼少期から思春期にかけて、メディアを関心形成のきっかけとして選択した割合が高く見られました。また、関心の入口は世代によって変化しており、若年層ではSNSやYouTubeの存在感が高まっていますが、テレビ、書籍、ドキュメンタリーも依然として重要な接点です。自然や生物への関心形成は、従来型メディアからデジタルメディアへ単純に置き換わっているのではなく、多層的な情報環境の中で起きていると考えられます。

各世代に、その時代のメディア環境を反映した「入口となるコンテンツ」が存在しており、この結果は、自然や生きものを扱うコンテンツが、長期的な学習、関心形成、将来の人材育成にも関わり得ることを示しています。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:調査
  • 関連組織:ROOTs
  • 原文内の日付:5月22日(国際生物多様性の日) / 6月5日(世界環境の日)
  • 製品・サービス:テレビ番組における生きもの表現の現状レポート / 自然・生物分野の関心形成におけるメディアの役割レポート