株式会社SIGNING(サイニング、本社:東京都港区、代表取締役社長:牧 貴洋、以下SIGNING)は、視覚に障害のある人たちの音楽体験をより開かれたものにしていくプロジェクト「Route for Music」の第二弾として、2026年5月16日17日に静岡県御殿場市「富士山 樹空の森」で開催された音楽フェス「ACO CHiLL CAMP 2026」(通称:アコチル)において、視覚に障害のある参加者とともにフェス参加の実証を行いました。

当日は5名の当事者と同行するご家族・ご友人の皆さんがフェス会場を歩きながら生の音楽を体験しました。今回の実証は、「ACO CHiLL CAMP 2026」事務局の協力のもと実施しています。

実施背景と目的 視覚に障害のある方にとって、音楽は聴覚のみでも味わえる大切な楽しみです。しかし、生の音楽イベントとなると、実は見えない人には行きにくいハードな環境でした。そこでSIGNINGは、2025年より音楽体験に多くの人がアクセスできる環境・仕組みづくりの実証研究を開始。それが「Route for Music」プロジェクトです。

第一回の実証は、2025年11月22日23日に群馬県高崎市で開催された室内型音楽フェス「GFEST.2025」にて、ナビゲーション技術と人のサポートを組み合わせることで、フェスを楽しめる環境づくりに挑戦しました。

そして迎えた第二弾の実証。今回のテーマは「視覚に障害があっても会場の盛り上がりをリアルタイムに感じること」でした。ライブ中に起きるハンズアップ、つまり手を横に揺らしたり前後に振ったりする観客の動きを振動に変えて届ける、新しいフェス体験の設計に挑みました。今後のサービス開発を見据えたMVP(実用最小限の製品)としての位置づけで、現場での検証を通じて社会実装へ向けた課題と可能性を洗い出すことが目的です。既存のウェアラブルデバイスを活用しながら、独自の振動パターンを設定するアプローチで検証を行いました。

具体的には、参加者の腕に装着したデバイスに、会場の観客の手の動きの「種類」と「テンポ」を振動パターンに変換してリアルタイムに送信。目に頼らなくても、身体を通じて「今、この瞬間の会場の盛り上がり」をダイレクトに受け取れる仕組みを作りました。アーティストと観客の熱量をテクノロジーで同期させることで、視覚障害のある方が孤立せず、フェスの一体感に自然に入り込んでいける鑑賞体験——その可能性を探りました。

リアルタイム振動ガイドによる一体感の創出 アーティストのパフォーマンスが始まると、「リズムジョッキー」と呼ばれる運営スタッフが、会場の手の振りに合わせてアプリをリアルタイムに操作し、振動信号を刻んでいきます。手を横に揺らす動きの場面では「ブーッ、ブーッ」と長めの振動を、挙げた手を前に出す動きには「ドッ、ドッ」という短いパルスへと切り替え、会場の動きを参加者の手首へと直感的に届けていきます。

実証の参加者たちは、音楽とリズムを全身で感じながら、ライブの空気感の中へと入り込んでいきました。周りと一緒に盛り上がりたいときは振動に合わせて腕を振り、自由に楽しみたいときは思い思いに体を揺らす。音楽に身を委ねながら、会場の観客とグルーヴを共有していく——そんな姿が生まれていったのが印象的でした。

参加者の声 「会場で一緒に振り付けができた一体感が楽しかったです。今までは同行者に『今は縦だよ』『横だよ』と言ってもらったり、近くの人の影で見様見真似をしてたんですけど、誰かにこっそり教えてもらうんじゃなくて、振動があれば自分で分かることがいいなって思いました。」

「徐々に目が見えなくなっていく障害なので、見えている時に体験した音楽フェスの様子が記憶の中にあります。その記憶からの想像だけでなく、振動によって昔に体験した様子を追体験できる点で、楽しみ方がまた一つ増えました。」

【今後の展望】 耳で聴くだけでは捉えきれなかった音楽フェスの「会場の盛り上がり」や「一体感」を、テクノロジーによって「肌で感じる」体験へと変換する試みが今回の実証でした。視覚に障害のある方が、誰かに教えてもらうのでも、合っているか不安を感じながら動かすでもなく、自分の感覚で会場と盛り上がりを共有できる、新しい鑑賞体験の可能性を提示しました。今後はこのMVP実証で得られたデータをもとに、体験のアップデートと社会実装に向けて進んでいきます。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:corporate_social_responsibility
  • 関連組織:SIGNING / ACO CHiLL CAMP