最近、ファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)という言葉を耳にする機会が増えてきました。FWBは、「経済的な安心感を持ち、人生を楽しむための選択ができる状態」と定義されています。言い換えますと、お金の不安に追い立てられず、「自分が大切にしたいこと」を選び取れる状態です。資産残高の多寡だけでなく、「家計と将来について、どれだけ安心していられるか」が重要なポイントになります。
では、日本の家計はどの程度、この「経済的な安心感」を持てているのでしょうか。
三井住友トラスト・資産のミライ研究所(以下、ミライ研)は2026年1月、18〜69歳を対象に全国1万人調査を実施しました。その中で「今後1〜2年の自分や家庭の生活全体について、家計はどう変化しそうか」を尋ね、独自の「ミライ研 家計期待指数」を作成しました。この結果を踏まえ、生活者の暮らし向きの動向を分析しました。
【要点】 ・「景気は前向き」の一方で、家計期待指数はマイナス圏 ・日銀短観と家計期待指数は調査対象や目的が異なり、単純比較はできないものの、「マクロの景況感」と「家計が見ている景色」にギャップが生じ始めている可能性には注意が必要である ・生活者は、「景気」「賃上げ」「金融政策」といったマクロの話題を日々、目にしているが、一方で、「自分の家計」については、収支や資産、将来の見通しを具体的な数字として把握・認識したことがないという層もまだまだ多い ・FWBの観点から重要なのは、この「なんとなく不安」「なんとなく楽観」をそのまま放置しないことである ・自分や家族の働き方・収入・支出・資産を一度棚卸しし、ライフプランシミュレーションなどを活用して「わが家の家計はこれからどうなるのか」をできるだけ根拠も合わせて考え、見える化してみることが経済的な安心感を高める第一歩となる ・家計の不安が和らぎ、未来に対する現実的な期待が積み上がっていけば、消費や投資、働き方の選択も変わり、経済全体に好循環をもたらすものと考えられる
景気は「前向き」。しかし、家計の実感は?
足もとの株価は歴史的な高値圏にあり、企業収益もおおむね堅調です。2026年3月調査の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス17と4四半期連続で改善しました【図表1】。大企業・非製造業もプラス36と高水準で、マクロの景況感は総じて「前向き」といえます。
賃上げも前年並みの高い水準が見込まれ、「賃上げの流れが広がる」「景気は持ち直しつつある」といったニュースが増えています。政府も「成長と分配」を掲げ、積極的な財政運営を打ち出しています。
しかし、「わが家の暮らしはこの先よくなりそうだ」と胸を張って言える人は、どれくらいいるのでしょうか。
【図表1】大企業・製造業/大企業・非製造業 業況判断DI(最近)の推移 (出所)日本銀行公表資料よりミライ研作成
「家計期待指数」で見る“家計の温度感”
ミライ研の全国1万人調査において、「今後1~2年の自分や家庭の生活全体について、家計はどう変化しそうか」を尋ね、独自の「ミライ研 家計期待指数」を作成しました【図表2】。
【図表2】今後1~2年先の家計の見通し (ミライ研 家計期待指数) (出所)特に出所を示していない場合、三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2026年)
選択肢は、①良くなりそう②少し良くなりそう③変わらない④少し悪くなりそう⑤悪くなりそう の5つとし、「①+②」を「良くなる側」、「④+⑤」を「悪くなる側」として、「良くなる側の割合-悪くなる側の割合」を「ミライ研 家計期待指数」としました。「③変わらない」は中立です。
結果は、全体でマイナス14.3ポイントでした。「良くなる」と見る人より、「悪くなりそう」と感じる人が明確に多い水準です。
ただし注目すべきは、「③変わらない」が全体・各年代とも50〜60%前後と過半を占めたことです。「大きく良くなるとは思えないが、劇的に悪くなるとも言い切れない」という、様子見の姿勢が多数派といえます。この構図は、「景気は前向き」と報じられる中での「家計のリアルな温度感」を表しているように思われます。
ポジティブなのは20代。30代以降はネガティブ
年代別に見ると、20代だけがプラス(暮らし向きにポジティブ)、30代以降はすべてマイナス(暮らし向きにネガティブ)という結果でした。
20代は、所得水準そのものは高くないものの、「これから所得が伸びる余地」が大きく、転職やスキルアップの選択肢も比較的広い世代です。新しい働き方や投資・資産形成にも前向きで、「これから何とかしていけるだろう」という期待が支えになっています。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR TIMES
- 分類:調査
- 関連組織:三井住友トラスト・資産のミライ研究所
- 製品・サービス:ミライ研 家計期待指数 / ライフプランシミュレーション