イランを巡る戦争が世界に影響を及ぼす中、日本・野村総合研究所の首席経済学者である辜朝明氏は2日、「2026年下半期の世界経済動向を見据えて」と題するフォーラムで年次特別講演を行い、アジアにおけるエネルギー危機について言及した。
彼は、エネルギー危機がアジアに与える影響は他の地域よりもはるかに大きいと述べた。その理由として、アジアがホルムズ海峡を通じたエネルギー・石油供給に極めて依存していることを挙げた。
2015年のイラン核合意について振り返り、当時の米国大統領バラク・オバマ氏が欧州連合(EU)、ドイツ、国連安全保障理事会の常任理事国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)とともにイランと交渉し、核合意に至ったと説明した。この合意により、イランは濃縮ウランの大半を海外に搬出。各国は対イラン制裁を解除し、イランは国際社会に再び統合され始めたと語った。
しかし、共和党のドナルド・トランプ氏が2018年に米国大統領に就任すると、この合意を破棄し、イランへの制裁を再開した。辜氏は、イランが合意を順守して濃縮ウランを海外に送ったにもかかわらず、米国が約束を反故にしたと指摘。このことが米伊関係の悪化を招き、イランでは強硬派が政権を握る結果となったと分析した。
さらに、辜氏は「すべての米国の同盟国がイラン戦争から距離を置いている。国連、中国、ロシアも介入していない。トランプ氏の対応はイランの穏健派を失脚させた」と述べた。そして、「今の米国は信頼できるのか? もちろん、信頼できない。合意破棄を主導したのはトランプ自身であり、米国とイスラエルは2月末の交渉期間中にイランを攻撃した。もし自分がイラン人なら、どう感じるだろうか?」と問いかけた。
彼は、現在の米伊情勢は2015年よりもはるかに難しい状況にあると断じた。
トランプ氏が立場を失っていることについて、辜氏は「イスラエルもイランも強硬派が政権を握っており、トランプ氏はイランに対して信用を失っている」と指摘した。かつてトランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相は、イランに強力な攻撃を加えればイランが降伏すると考えていたと推測した。
4月に米国ワシントンDCを訪問し、関係者と戦争について協議した際の話として、辜氏は「米政府関係者は私に、トランプ氏に何度も説得したと語った。もしイランが攻撃を耐え抜き、ホルムズ海峡を支配すれば、米国の立場は極めて悪くなると。私がワシントンで会った誰もが、状況は楽観できないと感じていた。全員が『この戦争は悲劇的に終わるだろう』と言っていた」と明かした。
その後、トランプ氏の姿勢が変化していると指摘。ネタニヤフ氏を強く批判するだけでなく、イランの強硬派が提示したすべての要求を受け入れるようになっていると述べた。これは、トランプ氏が「イランにはもはや穏健派がおらず、戦争を終わらせるには強硬派と交渉するしかない」と認識したためだと分析した。
彼は、トランプ氏が6月中旬のG7サミットまでにイランとの交渉で成果を出したいと考えており、それが信頼回復の手段になると推測した。ただし、「トランプ氏のこの行動はイスラエルの利益を損ない、イランへの降伏と受け取られる可能性がある。だが、それがトランプ氏のやり方だ」と評した。
ウクライナ・ロシア戦争の例を挙げ、「トランプ氏は『24時間で戦争を終わらせる』と繰り返していたが、2025年3月の米ウクライナ首脳会談で、その意味は『ウクライナが降伏する』ことだと明らかになった。戦争終結をそのような方法で考えるのは、トランプ氏ならではだ」と語った。
2015年の核合意は20か月かけて成立したが、今回の米伊交渉が60日で合意に至るのは現実的ではないとし、「トランプ氏が2015年の合意を再利用しない限り、短期間での合意は不可能だ」と述べた。交渉期間中、トランプ氏はイスラエルとイランの両方に強硬な姿勢を示す必要があると予測した。「彼はイランに対して強硬でなければならない。そうしないと、イランが新たな条件を出してくるからだ。また、イスラエルに対しても非常に強い立場を取らなければ、誰が主導権を持っているかが明確にならない。」
関連報道として、以下の見出しが紹介された:
・ トランプ氏、再びイラン爆撃を指示!元国防長官は「米国が弾薬のブラックホールに巻き込まれる」と懸念、テヘランを倒す唯一の方法とは ・ 米軍の空爆でイランの原子力発電所が巻き添えに イスラエルは強力な介入を警告 トランプ氏「交渉しないなら、お前を破滅させる」 ・ 極限の圧力か開戦の予告か?ロイター独占:米軍がイランの防空施設を猛烈に攻撃、上陸作戦や核施設強襲の布石か
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- 出典:PR Times
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