中国が米国との代理型AI戦争で勝利する?豪州シンクタンク「超低コストで西方モデルを打ち負かせる」
### 米中AIの性能と価格差が顕在化
世界的な人工知能(AI)技術の進展に伴い、中国と米国とのAIおよび計算能力の差が注目されている。米財務長官スコット・ベセント氏は、中国がAIモデルを盗んでいると非難し、米国が少なくとも1年はリードしていると主張しているが、豪州のシンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)」は、7月21日に発表した報告書で、中国の低コストAIモデルが、代理型AI(Agentic AI)時代における西方モデルの重大な弱点となる可能性を指摘した。
報告書は、中国のAI新興企業Z.aiとMoonshotが、わずか1か月の間に、米国のOpenAIやAnthropicと同等の知能レベルを持つモデルを、はるかに低い価格で投入したと述べている。Z.aiのGLM-5.2はすでに米国のスタートアップで採用され始め、MoonshotのKimi-K3も市場で存在感を高めている。
### 代理型AIのコスト問題が焦点に
代理型AIは、単なる言語モデルよりも何千倍ものトークンを消費するため、コストが極めて重要になる。MIT、スタンフォード大学、Google DeepMindの研究によれば、代理型AIのタスクは通常の推論タスクの約3,500倍のトークンを必要とするという。たとえば、コード生成や研究タスクでは数百万トークンが消費され、極端なユーザーでは1日で数千万から数億トークンを使うこともある。
中国のモデルはこの点で圧倒的な価格優位性を持つ。Z.aiはGLM-5.2の出力100万トークンあたり1.92ドルを請求するのに対し、AnthropicのOpus 4.8は25ドルと約13倍の差がある。
### 外国企業の中国AI採用が進む
この価格差は、すでに実際の市場動向に影響を与えている。マイクロソフトがClaude Codeのサブスクリプションを中止した一因も、高コストのトークン支払いにあるとされる。同社が中国のDeepSeekをCopilot Coworkの支援に検討している背景には、コスト削減の必要性がある。
英国のテック起業家アゼーム・アザール氏も、自社の研究業務に中国の代理型AIを導入。小米のMiMo-2.5-Proを採用した理由について、「1日1億トークン以上を使う中で、コスト差は予算に大きな差を生む」と説明している。
### 西方モデルの価格は持続可能か?
報告書は、OpenAIやAnthropicの現行価格は、代理型AIの普及に伴い「持続不可能」になると警告。一方、中国のDeepSeekはAPI価格を永久に75%引き下げ、OpenAIやAnthropicの1/34のコストにまで削減した。
独立AI評価機関Artificial Analysisのテストでは、657の代理型AIタスクをAnthropic Opus 4.8で実行すると約1,000ドルかかるのに対し、Z.aiは270ドル、DeepSeek-V4 Flashはわずか14ドルだった。Kimi-K3はタスク達成数で最も高く、コストはFable 5の約3分の1にとどまった。
### 中国AIの台頭と今後の課題
中国のAIモデルはまだ課題を抱えるが、「状況は変わりつつある」と報告書は指摘。高性能と低コストを両立すれば、西方AIは深刻な挑戦に直面する。
また、資金力のある西方企業にとってもコストが問題なら、「グローバル・サウス」の国々にとってはさらに大きな障壁となる。報告書は、西方企業が技術力と価格のバランスを取る必要があると提言している。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:調査
- 関連組織:Z.ai / Moonshot / OpenAI
- 製品・サービス:GLM-5.2 / Kimi-K3