台積電は世界最大のウエハ代工メーカーとして、その動向がグローバル半導体産業に大きな影響を与えている。2024年6月、同社の魏哲家(ウェイ・チェージャ)董事長は株主総会で、価格見直しを検討していることを明らかにした。その後、複数のメディアが、7ナノメートル以下の先進プロセスを中心に価格引き上げが行われると報じていた。

しかし、最新の報道によると、米国の関係者2人が明かしたところでは、台積電は2027年をメドに、すべての製造プロセスで価格を引き上げる正式な計画を進めているという。『日経アジア』の報道によれば、台積電は2024年6月から顧客との新たな価格交渉を開始し、7月までにその協議を完了。新価格は2027年初頭から適用される見込みだ。

価格引き上げの対象は、6ナノメートル以下の先進プロセスにとどまらず、12ナノメートル、16ナノメートル、28ナノメートルといった成熟プロセスも含まれる。引き上げ幅はプロセスや顧客ごとに異なるが、5%から最大10%の範囲で調整されるという。これは、単なる投機的な値上げではなく、長期的な戦略に基づくものだと、台積電の広報担当者は強調している。

同社は「当社の価格戦略は、短期的な利益追求ではなく、顧客との長期的なパートナーシップを重視したものだ。提供する価値を明確に示しながら、顧客と密接に協力していく」と説明している。

一方、技術メディア『Wccftech』は、2ナノメートルプロセスが値上げ対象に含まれるかどうかは報じられていないと指摘。もしこれも対象となれば、Apple、Qualcomm、MediaTekといった主要顧客にさらなるコスト負担が生じる可能性がある。また、NVIDIAの次世代チップ供給にも影響が及ぶと見られている。

魏哲家董事長は、6月の株主総会で「確かに価格引き上げを検討している」と発言。ただし、「メモリメーカーのように価格を4倍に跳ね上げることはない」とも述べ、顧客との信頼関係を損なわないよう配慮する姿勢を示した。彼は「台積電は利益を上げつつも、顧客をパートナーと見なすという方針を変えない。急激な価格改定は持続可能ではない」と強調した。

今回の価格引き上げの背景には、半導体サプライチェーン全体の財務的圧力がある。原材料価格の高騰、製造装置のコスト上昇、アメリカや日本、欧州などへの新工場建設に伴う巨額の資本支出が、台積電のコスト構造を圧迫している。これらの要因を反映させるため、ウエハ単価の見直しが不可避となった。

業界関係者によれば、台積電はこれまで価格の安定性を重視し、市場の需給変動に応じて急激に価格を変動させることは控えてきた。しかし、近年の地政学的リスクやサプライチェーンの分散化により、設備投資が膨らみ続けている。このため、長期的な収益性を確保するためには、価格調整が避けられないという判断に至ったとみられる。

今回の動きは、半導体産業全体のコスト構造の変化を象徴している。特に、成熟プロセスまでが値上げ対象になった点は、自動車や産業機器など、広範な分野で使われるチップに影響を及ぼす可能性がある。顧客企業は、サプライヤーとの再交渉や、設計の最適化を通じてコスト対策を迫られるだろう。

今後、他のウエハ代工企業も同様の価格見直しに踏み切る可能性があり、業界全体の価格トレンドが変わる兆しともいえる。台積電の戦略的判断は、グローバル半導体市場の今後数年の動向を左右する重要なシグナルとなるだろう。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:ニュース
  • 関連組織:Apple / Qualcomm / MediaTek
  • 製品・サービス:ウエハ代工サービス