ウクライナは最近、ロシアの重要な石油輸出拠点である新ロシスク港に対して継続的な攻撃を実施している。この港は黒海沿岸に位置し、ロシアの原油輸出の主要な窓口の一つだ。ウクライナのドローンやミサイル攻撃により、港湾施設の損傷や輸出の一時停止が繰り返され、実質的な供給制約が生じている。
一方、中東情勢も緊迫しており、ホルムズ海峡とマンデブ海峡という二大エネルギー航路もリスクに晒されている。ホルムズ海峡は世界の石油輸送の約20%を占め、イランと湾岸諸国の緊張が高まる中で封鎖のリスクが常に存在する。マンデブ海峡は紅海とアラビア海を結ぶ要衝であり、イエメンのフーシ派による船舶攻撃が相次いでおり、航行の安全性が脅かされている。
このように、黒海、ホルムズ海峡、マンデブ海峡という「三大エネルギー要道」が同時に危機にさらされている状況は、極めて異例だ。これら三か所が同時に機能停止すれば、世界の石油供給の約25%が遮断される可能性があり、これは1970年代の石油危機に匹敵する規模の供給ショックを引き起こす恐れがある。
さらに深刻なのは、エネルギーの需要側を支えるはずの備蓄体制が弱体化している点だ。米国エネルギー情報局(EIA)のデータによると、7月17日までの週に米国の商業原油在庫は約200万バレル増加したものの、戦略石油備蓄(SPR)は約510万バレル減少した。これを合計すると、全体の原油在庫は約300万バレルの純減少となり、総在庫量は1984年、レーガン政権時代以来の最低水準にまで落ち込んでいる。
戦略石油備蓄は、地政学的危機や自然災害時の緊急対応用として蓄えられてきたが、近年の繰り返しの放出により、その規模は大幅に縮小している。バイデン政権下で2022年に大規模な放出が行われたことに加え、その後の補充が遅れていることが背景にある。
こうした状況下で、原油価格が過去最高値を更新していないのは、需要側の弱さが価格上昇を抑制しているためと考えられる。米国ではインフレ抑制のための金融引き締めが続き、経済成長の鈍化が懸念される。また、中国の不動産危機や消費の回復鈍さも、原油需要の伸びを抑制している。市場は「供給リスクはあるが、需要がそれを上回るほど強くない」という見方を強めており、これが価格の天井感を生んでいる。
しかし、このバランスは非常に脆い。もし中東やウクライナ情勢がさらに悪化し、三大航路のいずれかが実質的に封鎖されれば、在庫の少なさが即座に価格の急騰を招く可能性がある。特に、米国の備蓄が過去最低レベルにあるため、緊急時の対応余地が極めて限られている。
専門家の間では、『現在は時間との戦いだ』という声も出始めている。エネルギーインフラの分散化、代替航路の確保、備蓄の早期補充などが急務とされている。また、再生可能エネルギーへの移行加速が、長期的な地政学的リスク回避の鍵になるとの指摘もある。
今後の市場動向を注視する必要があるが、投資家や企業にとって重要なのは、単なる価格変動ではなく、サプライチェーン全体の脆弱性の可視化だ。エネルギー供給の地政学的リスクは、今後も継続的なテーマとなるだろう。
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FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:ニュース
- 原文内の日付:レーガン政権時代
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