最近、国内外で相次ぐサイバーセキュリティ事件が企業のリスクを高めている。フォーティネットのファイアウォール機器やVPN認証情報の漏洩により、台湾の約90社のネットワークアクセス権が闇市場で販売された。これには、緯創(3231)、友訊(2332)、瑞昱(2379)、上銀(2049)といった上場企業も含まれていた。国際的にも、AIモデルやオープンソースプラットフォーム、企業システムへの攻撃が相次ぎ、企業が直面するセキュリティリスクが急速に高まっている。

AIエージェントが、単なるチャットボットから、企業の文書を読み、内部システムを操作し、APIを呼び出して複雑な業務を自動化する「自律的エージェント」へと進化している。このため、AIエージェントが不正に操作されれば、情報漏洩にとどまらず、企業の業務や重要なインフラに直接的な影響を及ぼす可能性がある。

こうした背景を受け、NVIDIAはマイクロソフト、IBM、シスコ(Cisco)、アドビ(Adobe)など30社以上のテクノロジー・セキュリティ企業と連携し、「オープンセキュアAIアライアンス(Open Secure AI Alliance)」を設立した。この連合は、オープンなモデル、ツール、手法を共有することで、AI時代のセキュリティ防御基盤を共に構築することを目指している。

従来のセキュリティ対策は、サーバーや端末、クラウド環境の保護に焦点を当てていた。しかし、AIエージェントの時代では、モデルそのものに加え、エージェントの実行フレームワーク(ハーネス)、認証、権限管理、行動監視など、包括的なガバナンス構造が求められる。NVIDIAは、AIエージェントのセキュリティは「システムの保護」から「エージェントの保護」へとパラダイムシフトしていると指摘する。

このアライアンスには、NVIDIA、アドビ、キャピタルワン、シスコ、クラウドストライク、デル・テクノロジーズ、IBM、リナックス財団、マイクロソフト、OpenClaw、セールスフォース、SAP、SpaceXAIなどが創設メンバーとして参加。クラウドフェア、Hugging Face、パロアルト・ネットワークス、スノーフレーク、シーメンス、シンオプシスなども加わっている。

連合の目的は、企業がAIエージェントとソフトウェアシステムのセキュリティを強化できるよう、オープンな技術、手法、ツールを共同開発・共有すること。また、リナックス財団のAkritesプロジェクトやOpenSSFコミュニティの成果を継承し、オープンソースを通じて脆弱性の修復や脅威の可視化、全体的なセキュリティの回復力を高める。

NVIDIAは、このアライアンスに向け、モデル、モデル重み、データに加え、新たな研究プロジェクト「NVIDIA Labs Object-Oriented Agent(NOOA)」を公開する。NOOAは、AIエージェントのハーネスとモデルを統合する研究フレームワークで、企業がエージェントの行動をテスト、追跡、監査、管理しやすくする。これにより、次世代のAIセキュリティツールの開発が加速する。

NVIDIAは、AIエージェントは大規模言語モデル(LLM)だけではなく、モデル、ハーネス、セキュリティ制御が一体となったシステムであると強調。今後のAIセキュリティの鍵は、検証可能で、管理可能で、追跡可能なエージェント実行環境の構築にあるとしている。

他のメンバー企業も技術を提供している。マイクロソフトは、複数のAIエージェントを協調させて脆弱性を発見・検証する「MDASH」を提供。IBMとレッドハットは、オープンソースソフトウェアのサプライチェーンを守るデジタル署名技術「Lightwell」を公開。HPEは、AIエージェントと企業サービス間の通信を安全にするゼロトラスト認証基盤「SPIFFE/SPIRE」を貢献。Hugging Faceは、リモートコード実行リスクを防ぐ安全なモデルフォーマット「Safetensors」を提供。SpaceXAIは、ターミナル向けAIプログラミングエージェント「Grok Build」をオープンソース化し、Grokシリーズのモデル重みも段階的に公開する計画を発表した。

NVIDIAは、AIセキュリティの鍵は「モデルがオープンかどうか」ではなく、「AIエージェントスタック全体のガバナンス能力」にあると主張する。真のAIセキュリティには、認証、権限管理、ハーネス、防御機構、操作ログ、セキュリティ評価が不可欠であり、オープンなハーネスやツールにより、より多くの専門家がAIの制御機構を検証・改善できるようになる。

アライアンスは、各国政府や規制当局に対し、オープンモデルやハーネスをリスクではなく「防御資産」として位置づけ、データセット、攻撃シミュレーション、評価フレームワーク、レッドチーム演習などの共有インフラへの投資を促している。AIの競争は、GPUの計算力やモデル性能から、「信頼できるAI(Trustworthy AI)」と「AIセキュリティ」のガバナンス競争へと移行しつつある。NVIDIAが30社以上と連携したこの動きは、グローバルAI産業が新たな段階に進んでいることを示している。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:提携
  • 関連組織:NVIDIA / マイクロソフト / シスコ
  • 製品・サービス:Open Secure AI Alliance / NOOA