億万長者のイーロン・マスク氏が所有するソーシャルメディアプラットフォームXと、世界広告主連盟(World Federation of Advertisers、WFA)との間で約2年間にわたって続いた法的対立が、正式に終結した。両者は30日、広告主によるXへの広告出稿停止を巡る反トラスト訴訟について和解することで合意したと発表。これにより、双方の関係が再構築され、近年のデジタル広告市場で最も注目された法的攻防が幕を下ろすことになった。

この訴訟の中心には、すでに解散した「グローバル・アライアンス・フォー・レスポンシブル・メディア(Global Alliance for Responsible Media、GARM)」が位置している。Xは、複数の大手企業がGARMを通じて連携し、プラットフォームへの広告出稿を共同で削減または停止した行為は、米国の反トラスト法に違反する集団的ボイコット(Boycott)にあたると主張していた。一方、WFAは一貫して、こうした行動は違法な連携ではないと否定していた。

XとWFAは共同声明を発表し、法的紛争を正式に解決したことを明らかにした。声明では、今回の和解が双方の協力関係の再構築を意味し、ブランド安全やデジタル広告エコシステムの発展について今後も対話を続けていくと述べている。

WFAは声明の中で、言論の自由の支持が同団体の重要な原則であることを改めて強調した。1953年の設立以来、この理念は組織の定款に明記されており、Xの立場と一致していると指摘した。

また、WFAは2024年8月にGARMの活動を永久に終了させたことを再確認。今後、同様の性質や機能を持つ新たな組織を設立しないことも明言した。

Xは、大手企業が連携して広告を引き揚げ、数十億ドル規模の広告収入が失われたと主張していた。この法的対立の発端は2024年にさかのぼる。Xは米国の裁判所に反トラスト訴訟を提起し、マーズ(Mars)、CVSヘルス、コルゲート・パーモリーブ(Colgate-Palmolive)など複数の多国籍企業が、WFA傘下のGARMの枠組みで協調し、Xへの広告出稿を停止または大幅に削減したと訴えた。

Xは、各企業がプラットフォームのコンテンツモデレーション方針について異なる見解を持っていたにもかかわらず、GARMを通じて一貫した行動を取った結果、数十億ドルの広告収入を失ったと主張。これは企業の自主的判断を超え、競争法に違反する集団的ボイコットであるとして、法的責任の追及を求めた。

Xは、広告主が個別に判断したのではなく、共通の枠組みの中で商業戦略を調整したことで、プラットフォームに重大な経済的損害を与えたと訴えていた。

しかし、2025年3月、米テキサス州ダラス連邦地裁のジェーン・ボイル判事は、Xが反トラスト法上の損害を証明するに足る十分な証拠を提出できていないとして、訴訟を却下した。

この判決はXにとって大きな打撃となり、複数の多国籍企業およびWFAに対する法的攻勢が事実上終了した。

GARMは2019年に世界広告主連盟が設立したもので、グローバルなデジタル広告市場において統一されたブランド安全(Brand Safety)の基準を構築することを目的としていた。

Facebook、YouTube、X(旧Twitter)などの大手ソーシャルメディアプラットフォームの発展に伴い、グローバルブランドは、自社の広告がヘイトスピーチ、暴力、極端主義、誤情報などの有害なコンテンツの横に表示されるリスクに懸念を示すようになった。

そのため、GARMの主な役割は、ブランド、広告代理店、デジタルプラットフォームが共通のガイドラインを用いて、広告と有害コンテンツの並列表示リスクを低減することであり、企業が広告を出すかどうかを直接決定するものではなかった。

しかし、マスク氏が2022年末にTwitterを買収し、Xに改名して以降、プラットフォームのコンテンツ管理方針は大きく変更された。特定のアカウントの管理措置の緩和や、コンテンツ審査制度の見直しなどが行われ、一部の広告主はブランド安全に対する懸念を強め、広告出稿を縮小。これにより、Xの広告収入は打撃を受けた。

Xは、こうした広告主の行動がGARMの枠組みのもとで協調されたものであり、個別の商業判断によるものではないとし、反トラスト訴訟を提起した。

今回の共同声明では、XとWFAは、ブランド安全がデジタル広告市場において依然として重要な課題であることを認識。今後も関連する技術や制度の革新を推進していくことで一致した。

双方は、ブランド安全の仕組みが改善されれば、企業が安心して広告を出稿できるようになるだけでなく、デジタルプラットフォームの広告品質の向上や、ユーザーのより良いネット体験にもつながると指摘している。

今回の和解は、コンテンツ審査、ブランド安全、広告出稿、反トラスト問題を巡る法的対立が、裁判所での争いから、協力と制度構築へと移行したことを意味している。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:ニュース
  • 関連組織:Mars / CVS Health / Colgate-Palmolive
  • 製品・サービス:GARM(Global Alliance for Responsible Media)