7月下旬、中東戦場の硝煙は依然として散っていない。米国とイランはホルムズ海峡で衝突と対話が繰り返される奇妙な展開を見せている。米軍のリンカーン空母はアラビア海で警戒を維持し、戦闘機は武装を装備したまま待機している。一方でトランプ大統領は、イラン側の交渉継続要請を受け入れると発表し、両国は「交戦しながら交渉する」という奇妙な状態に入った。この状況はもはや驚きではなく、長年にわたって繰り返されてきたパターンの一部である。

極限施圧の本質

トランプが好む交渉スタイルは、ニューヨークの不動産業界で培った本能に由来している。彼自身が1987年に出版した著書で明言している。「世界全体を要求せよ。値引きされても、最終的な結果はまだ受け入れられるかもしれないからだ。」この発想は、彼がホワイトハウスに移ってもそのまま持ち込まれ、規模も賭けもさらに大きくなった。

イランに対しては「イランを石器時代にまで爆撃する」と発言し、「無条件降伏」を要求。中国に対しては最大157%の制裁関税を課し、「極めて敵対的」と北京の立場を非難した。これらの発言に共通するのは、それが最終目的ではなく、あくまで交渉の出発点である点だ。強硬な姿勢は相手に恐怖を植え付け、最悪のシナリオを前提にした心理的準備を促す。その結果、実際の措置がやや穏当であれば、相手は安心感を覚えることになる。

批判派はこれを「恫喝外交」と呼ぶ。支持派は「極限施圧」と評し、相手を譲歩に追い込む有効な手段だとする。しかし、どちらの見方も問題の半面しか捉えていない。

交渉の裏のカード

中国との貿易交渉を振り返ると、トランプは繰り返し譲歩しているが、それは失敗とは言えない。関税の脅しを延期したり撤回したりしながら、最終的に北京と合意に達した。当初の要求とはかけ離れた内容ではあるが、重要なのは、米国の平均関税率が2024年2.5%から現在の約9%まで上昇したという事実だ。米国財政にとっては確実な収益であり、世界貿易にとっては確かな負担である。一見譲歩したように見えるこの駆け引きは、実際にはトランプが心理的な優位を築き、相手に「最悪の事態は避けられた」と錯覚させ、相対的に不利な結果を「勝利」として受け入れさせたのである。

一方、イランに対する状況はより複雑だ。これはもはや貿易戦争ではなく、実際の武力衝突の可能性があるからだ。米国とイランは2023年6月に一時的な停戦枠組みで合意したが、その後イランがホルムズ海峡の商船を攻撃したことで協定は破綻した。トランプは直ちに「イラン人はろくでなしだ」「病的な人々だ」と非難し、米国は「まだ寛大にしているだけだ」と述べたが、すぐに交渉再開に同意した。この繰り返しについて、一部の分析家は「不確実性」を意図的に作り出していると見る。他方で、混乱した状況の現実を反映していると見る向きもある。

信頼性の侵食

トランプの交渉スタイルの根本的な矛盾は、「予測可能な予測不可能性」という依存にある。恫喝が効果を持つには、相手がその脅しが実際に実行される可能性を信じなければならない。しかし、交渉が成立するには、相手は合意が守られると信じなければならない。この二つの条件は互いに矛盾しており、互いに弱体化させる。

イランは中国の経験から学んでいる。中国は2025年の関税交渉で「待機」を選択し、最終的にトランプが自ら温度を下げることを見守った。イランも同様に、ホルムズ海峡での影響力を維持しながら、交渉の再開を要求し、時間稼ぎをしているように見える。相手が彼の戦略を読み解くようになれば、虚勢の効果は当然低下する。

この点は、トランプ政権が最高裁判所で関税訴訟や出生地市民権訴訟で敗れた後、彼がすぐに態度を切り替え、「他の方法がある」「議会立法で対応できる」と軽く発言したことに象徴される。彼にとって敗北は戦略的転換の機会にすぎず、終点ではない。この心理的強靭さは支持者を驚かせ、批判者を怒らせ、外国の交渉相手を困惑と警戒に陥れる。

謙虚さと盲点

メディアに対する訴訟でも、トランプは同じ手法を用いている。ABCやCBSに対して数十億ドルの損害賠償を要求し、最終的には数千万ドルで和解した。あるメディア法の専門家は指摘する。和解金額自体は非常に大きいが、それは法的勝敗ではなく、行政権を持つ大統領と争いたくないというメディア側の現実的判断を反映している。この観察は重要だ。なぜなら、トランプの交渉力の一部は交渉技術そのものではなく、彼が持つ制度的権力に由来していることを示しているからだ。

真に警戒すべきは、相手がこのリズムに慣れてしまい、トランプの手札が次第に小さくなる可能性だ。米国とイランの「交戦しながら交渉する」状態が常態化し、同盟国が米国の脅しが単なる出発点だと理解すれば、外交的約束の重みは徐々に薄れていく。トランプは自身の著書で「すべてのボールをホームランにしようとする者は、三振もする」と自戒している。この自制心は、ニューヨークの不動産市場では知恵かもしれないが、現在の複雑な国際情勢では、本能的な極限操作ではなく、より精緻な戦略的計算が求められる。

虚勢を外交手段とするのは一時的に有効な戦略だが、紙の虎はいずれ見破られる。

*著者は台北商業大学名誉講座教授。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:ニュース