台湾積体電路製造(TSMC)が半導体工場を設ける日本・九州熊本県で7月28日、マグニチュード7.1の大地震が発生し、これまでに38人が死亡した。この災害に対して台湾各界から関心が寄せられており、国民党主席の鄭麗文氏も個人名義で100万台湾ドルを寄付すると発表した。日本台湾交流協会台北事務所代表の片山和之氏が直接受け取り、ネット上で論争が巻き起こった。中国大陸のネットユーザーの中には、鄭麗文氏や国民党の対日姿勢を批判する声も上がっている。これについて旅日学者は、統独問題以外で今後、対日観が両岸間の最大の分岐点となる可能性があると分析している。

鄭麗文氏の寄付が「多すぎる」と批判される理由

鄭麗文氏は7月31日、自身のフェイスブックで、中国国民党を代表して熊本の強震に対する慰問の意を表明した。「台湾は地震帯に位置しており、大地震がもたらす恐怖と悲しみをよく理解しています。また、過去の災害の際に、国際社会からの温かい支援と関心を感じ取ってきました。そのため、熊本がこれほど深刻な災害に見舞われたのを見て、『人飢己飢、人溺己溺』の精神に基づき、すぐに支援と関心を示すべきだと考えました」と述べた。

さらに鄭氏は、国民党を代表して日本台湾交流協会を訪れ、心からの慰問を伝え、個人名義で熊本県に100万台湾ドルを寄付した。被災地の救援と復興に少しでも貢献し、被災者が早く傷を癒し、家庭を再建できるよう願っているという。また、今後も台湾と日本が防災・救災分野での交流と協力を深め、自然災害へのレジリエンスを共に高めていくことを期待していると語った。

しかし、こうした発言に対しては賛同の声がある一方で、台湾や中国大陸のネットユーザーの中には、同時期に発生した広西の水害などと比較して、鄭氏の対応に差があると指摘する者もいる。さらに中国側のユーザーは、この金額を民進党幹部と比較し、蔡英文総統の5倍にあたるとして寄付額を疑問視している。これに対し、旅日学者は、こうした認識の違いが、海峡两岸における『対日観』の大きな隔たりを浮き彫りにしていると指摘する。

東京大学東洋文化研究所の特任研究員・林泉忠氏は、『風傳媒』の単独インタビューで、両岸社会における『対日関係』への認識の差は、統独問題に次いで最も共通理解が乏しい分野だと語った。興味深いことに、中国側のネットユーザーだけでなく、林氏の多くの日本知人も『寄付が多すぎる』と驚いているという。

林泉忠氏は2025年9月、風傳媒の「下班國際線」番組に出演したことがある。(柯承惠撮影)

台湾は本当に『親日』社会なのか?

林泉忠氏は、鄭麗文氏の寄付をめぐる『波紋』は単なる『PR危機』ではなく、両岸社会における情義の枠組みや政治的文脈の深層的断絶の縮図だと分析する。「人道的支援が簡単に政治的、あるいは国家・民族的ラベルを貼られるとき、両岸間の民間対話の理性的な空間はさらに圧迫される」と述べた。

また、国民党が『親日政党』あるいは『反日政党』であるとする見方は単純化されすぎており、歴史的文脈を無視していると林氏は指摘する。1949年に政府が台湾に移って以降、国民党は常に日本との関係を重視してきた。蒋介石、蒋経国時代の冷戦期でさえ、日本に派遣された官僚は両氏の側近中の側近であった。李登輝政権以降、「友日」路線は国民党の定石となった。

林氏は2011年の東日本大震災を例に挙げる。当時、馬英九政権下で行われた台湾社会の対外支援は、藍(国民党)と緑(民進党)の党派を超えたものであり、日本社会に大きな衝撃と感動を与えた。これにより、日台関係は『特別なパートナーシップ』の新たな時代に入ったとし、「国民党は日台相互支援の仕組み構築に欠かせない存在だった」と評価した。

したがって林氏は、両岸が今後、真の『理性的対話』を築くためには、中国大陸の世論が台湾社会、特に国民党の『友日』姿勢の歴史的成因と現実的論理を理解する必要があると強調する。安易に『背信』や『台独自称への迎合』といったレッテルを貼るのではなく、「固定観念を捨てることで、複雑な東アジアの地政学的構図の中で、台湾政治の真の動向を正確に捉えることができる」と結論づけた。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:ニュース