一間の中華レストランと、借金を抱えたシェフ。もともと異国で生活を立て直すつもりだった彼は、戦争の勃発によって「人を救うべきか」という究極の選択を迫られることになる。これが中国映画『ようこそ龍レストランへ』の物語であり、公開直後に話題となった理由でもある。
『我不是藥神』の監督・文牧野が手がけ、沈騰と蔣奇明が主演を務める本作は、8月11日に中国本土で公開された。8月13日午後7時までの累計興行収入は人民元で4億元を突破。豆瓣では約8.5点の評価を維持しており、19万人以上が評価に参加している。
一方で、近年稀に見る反戦映画として称賛する声がある一方、一部の視聴者はこれを「厨子版戦狼」と皮肉り、「ようこそ狼レストランへ」と改題して嘲ることさえある。中国のSNS上では、「笑って入って、泣いて出た」という感想と、「沈騰のコメディイメージに騙された」という声が同時に広がった。
この映画は、ある意味で「厨子版戦狼」と呼ばれるに至った。もともと借金返済のために中東に渡り、鍋を振るうだけの中国人シェフが、戦乱の中で「自らを守る」から「現地の子どもたちを代償を惜しまず救う」存在へと変貌する。そして、混沌の時代における善意のヒーローとなるのだ。
『沈騰=コメディ』という先入観を利用して、観客の警戒心を解くのが本作の第一の巧みさである。沈騰が演じる徐福は、借金を返すために中東でシェフとして働くごく普通の男だ。彼の銀幕イメージはこれまでコメディが中心だったが、今回はそのイメージを覆す役柄を演じている。
本作には実話の要素も含まれている。2003年のイラク戦争前後、深圳の若者である劉磊や帥學軍らがバグダッドで「中国龍」という中華レストランを経営していた。昼は中華料理を提供し、夜はバーを営み、酒類の転売も行っていた。1年余りで約308万元を稼いだが、爆発や銃撃戦も目の当たりにした。また、北京大学のアラビア語学科出身の陳憲忠が経営した「宴龍湾」の経験も参考にされている。
映画はこれらの実話の要素を統合し、戦場の背景を明確に米英連合軍による政権転覆戦争に設定。登場人物の台詞を通じて、「お前たちがいなければ、テロリストなど生まれなかった」といった批判も織り込まれている。
主人公の徐福は、最初からヒーローになるつもりなどなかった。映画の設定では、彼はただレストランの経営をうまくこなし、お金を稼いで故郷に帰ることを目指していた。戦争の勃発によって、政治とは無縁だった生活が突然破壊される。そして「龍レストラン」は、商売の場から、戦火の中の避難所へと変化していく。
映画の公式資料では、ジャンルは「ドラマ」「戦争」「コメディ」とされているが、その核心は「普通の人が戦争にどう向き合うか」というテーマにある。
この設定は、文牧野監督の過去の作品スタイルを踏襲している。『我不是藥神』から『奇蹟・笨小孩』まで、彼は常に大きな時代の流れの中で、小さな個人に焦点を当ててきた。今回は、その「小さな個人」を中国の都市から中東の戦場へと移したにすぎない。
この映画の最大の転換点は、「中国人が世界を救う」ということではなく、「ただ自分を守りたかっただけの男が、なぜ他人を救う決断をしたのか」という問いにある。
「厨子版戦狼」という呼称は、果たして映画そのものへの批判なのか、それとも中国の物語構成への批判なのか?
映画は中国人を海外の紛争地に置き、最終的に中国人が現地の人々を救う鍵となる人物として描いている。これは『戦狼』シリーズの中国ヒーロー像を連想させるため、「厨子版戦狼」と呼ばれるようになったのである。
沈騰の国民的コメディイメージと映画のタイトル、そして初期のプロモーション素材により、多くの観客は「異国での中華料理店起業コメディ」として映画館に入った。しかし、実際には基調が重く、後半は硝煙と死に満ちた反戦正劇だった。
前半の庶民的なユーモア(東北式の肉の漬け方、不器用な外国語)は、あくまで伏線にすぎない。戦争が始まると、物語の感情は急激に変化する。
中国の一部の視聴者は、この映画の最大の違いは「第三の視点」で戦争を見ている点だと指摘する。アメリカ兵の視点でも、現地武装勢力の視点でもなく、そこにいるが、どちらにも属さない中国人という、中立的な立場からの視点だという。
中国映画が「中国人の視点」で世界を見るようになったとき、「中国人の視点」というそれ自体が、政治的・文化的な問題になる。
中国映画が「西洋の視点に頼らずに世界を語る」ことを試みている。その価値が「面白いかどうか」ではなく、「誰が戦争を語る資格があるか」という問題にかかっているのだ。
長きにわたり、国際的な戦争映画の物語の主導権はハリウッドに握られていた。ベトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争、中東紛争……西洋の映画は戦争を描くだけでなく、「誰が物語の主役になれるか」を決定してきた。
『ようこそ龍レストランへ』の面白さは、まさに中国人をその主役の位置に置こうとしている点にある。中国人が中東を「外から見る」のではなく、中東に「実際にいる」中国人の視点を描いているのだ。
文牧野監督は過去、映画制作について語る中で、物語の背景がどれほど壮大でも、最終的には「人間」と「愛」に戻ると強調している。
『ようこそ龍レストランへ』はまだ公開数日だが、4億元の興行収入はすでに市場での魅力を証明している。しかし、それは文化的な議論に結論が出たことを意味しない。
むしろ注目すべきは、この映画が今後、他の華語圏市場、さらには中東や欧米市場に進出したとき、どのように受け止められるかということだ。
中国の夏休み映画シーズンも終盤に差し掛かり、ノーラン監督の『オデュッセイア』が14日に公開される中、本作が口コミによってロングランを実現できることは、市場が「誠実なコンテンツ」を求めていた証でもある。
『ようこそ龍レストランへ』の上映時間は140分(約2時間20分)。戦争シーン(爆発、銃撃戦)、重い暴力描写や死亡描写、子どもが傷つくシーンなどが含まれている。
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