台湾の少子化・高齡化問題は長年議論されてきましたが、実際に一般市民に影響が出始める時期が予想よりも近づいています。国家発展委員会が発表した「中華民国人口推計(2024~2070年)」によると、台湾の15~64歳の労働年齢人口の総人口に占める割合は2028年に66.7%を下回り、持続してきた「人口紅利」が終了すると予測されています。2030年には労働年齢人口は約1509万人となり、2024年の1617万人から6年間で約108万人減少する見込みです。
人口紅利の終了は、2028年から突然労働人口がいなくなることを意味するわけではなく、経済が必ず衰退するわけでもありません。真の変化は、生産や労働に投入できる年齢人口の割合が低下し、児童や高齡者の扶養比率が高まることです。
一般のサラリーマンにとって、この人口構造の大きな変化は、企業が人材確保に苦労する、職場の高齡化が進む、家族や社会の高齡者扶養の負担が増えるという3つの点で実感されるでしょう。
人口紅利とは、政府が補助金を支給することではなく、人口構造上の優位性を指します。国発会は15~64歳を「労働年齢人口」と定義し、この層が総人口の66.7%以上を占める場合、生産年齢人口が充足し扶養負担が低い状態を「人口紅利」と称しています。
労働年齢人口は2015年にピークを迎え、以降減少傾向にあります。2024年は約1617万人、2030年には1509万人、2040年には1317万人、2070年には697万人まで減少すると予測されています。特に2028年に労働年齢人口の割合が66.7%を下回るため、2028年を人口紅利終了の重要な節目としています。
人口紅利の終了により、企業は採用が難しくなり、同一の人材がより多くの業務を担うことになるでしょう。ただし、全ての企業が人材不足に陥るわけではなく、賃金や労働環境、産業景気、技術需要、人材供給と需要のミスマッチなども影響します。
労働部の2026年3月の調査によると、工業およびサービス業界で28.9万の職務空席があり、職務空席率は3.3%でした。ただし、職務空席が必ずしも人材不足を意味するわけではなく、採用時間や人員の入れ替わりなども考慮する必要があります。
2030年に人口構造をみると、企業の課題はより顕著になります。国発会の推計によると、2024年の15~24歳人口は約227万人、25~44歳は約667万人で合計894万人ですが、2030年にはそれぞれ204万人と580万人に減少し、合計784万人となります。つまり、45歳以下の労働年齢人口は6年間で約110万人減少する見込みです。
企業は賃金の引き上げによる人材確保のほか、自動化やAIの導入、業務プロセスの見直し、中高齡者や女性、外国人材の労働参加率向上などの対策が必要になるでしょう。国発会は、中高齡者や女性の労働参加率の拡大、グローバル人材の吸引、AIを活用した産業の人材需要の削減を重要な対応策として挙げています。
サラリーマンにとって、将来的に注目すべきは「人材不足が賃金上昇につながるか」ではなく、自分の業務がどれだけ技術によって効率化できるか、企業が新人を確保できるか、人材不足が既存の従業員に業務が再分配される可能性があるかです。
労働人口の減少のもう一つの側面は、職場の高齡化です。国発会のデータによると、2024年の15~64歳人口のうち45~64歳は約724万人で44.8%を占めていますが、2030年には同人口は724万人のまま、若年層の減少により占める割合は48%に上昇します。つまり、2030年には労働年齢人口のほぼ2人に1人が45~64歳になるということです。
従来の「60歳前後で退職し、若手が後を継ぐ」というキャリアモデルは維持しづらくなるでしょう。政策もこの方向に調整されており、勤労部は2026~2028年の「中高齡者および高齡者就業促進計画」を策定し、45~54歳の安定就業、55~64歳の再就職または継続就業、65歳以上の継続就業を支援しています。
現在30~40歳のサラリーマンにとって、将来のキャリア計画は「何歳で退職するか」ではなく、50歳や60歳、さらに高齡になっても自分のスキルが市場価値を持つようにすることが重要になります。
人口紅利の終了が最も深刻な問題を引き起こすのは、労働人口の減少だけではなく、高齡人口の急速な増加です。国発会の推計によると、2024年の65歳以上人口は約449万人ですが、2030年には約556万人に増加し、6年間で約107万人増加します。同期間、労働年齢人口は1617万人から1509万人に減少します。
2024年には平均して3.6人の労働年齢人口に対して1人の高齡者が対応していましたが、2030年には2.7人に1人の高齡者が対応することになります。総扶養比は2024年の44.7から2030年には52に上昇し、100人の労働年齢人口に対して約52人の幼年および老年依存人口が対応することになります。
この数字は「2.7人のサラリーマンが1人の高齡者を養う」という意味ではなく、実際の扶養には就業率、家庭の財務状況、年金、保険、政府制度などが関与します。しかし、人口構造が示す方向性は明確で、今後ますます多くの中年サラリーマンが、自分の仕事、子供の教育費、親の介護、自身の退職準備を同時に管理する必要が出てくるでしょう。
政府にとっても同様です。国発会は、人口構造の変化が納税人口の減少や社会福祉費の増加を引き起こす可能性があると指摘しており、財政、医療、介護、年金制度の維持が今後の政策課題になると考えています。
これは、必ずしも税金が増える、年金が減る、健康保険料が上がることを意味するわけではありません。しかし、「労働人口が減少し、医療や介護を必要とする人が増える」という構造的な圧力は確かに形成されています。
人口紅利の終了は、経済が必ず悪化することを意味するわけではありません。労働者1人あたりの生産性向上、企業によるAIや自動化を通じた付加価値の創出、女性や中高齡者の労働参加率向上、外国人材や技術人材の受け入れなどが、労働年齢人口の減少による影響を部分的に相殺する可能性があります。
重要なのは、「2028年に突然の災難が起こる」ではなく、2028年から台湾の人口構造が重要な節目を迎えることです。企業が新人を確保できない、45歳以上の従業員が職場の主力になる、ますます多くの家庭が仕事と介護の両立に苦労するなど、人口の変化は国発会の統計表だけでなく、各企業、各家庭、各個人のキャリア計画に現れてくるでしょう。
データソース:国家発展委員会「中華民国人口推計(2024~2070年)」、「国発会人口推計照会システム」、勤労部「職務空席概況調査」、勤労部中高齡者および高齡者就業関連資料。
注:この記事で引用しているのは、2026年8月24日時点で最新版の2024~2070年の人口推計です。国発会は2026年8月28日午後3時に新しい人口、出生、死亡推計結果を発表する予定で、その際に一部の数字や人口紅利の時期が更新される可能性があります。
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR Times
- 分類:調査