多くの親が、子が独立する際の住宅購入や生活資金の負担を軽減するために、生前贈与を通じて預貯金や不動産を早期に名義変更する習慣があります。しかし、税制に関する知識が不十分なため、非課税枠の適用方法を誤解し、意図せず税務調査の対象となるケースが後を絶ちません。国税庁によると、毎年多数の納税者が贈与税の適用対象者や申告義務を誤解し、無防備なまま税務署から追徴課税や高額な過少申告加算税を課されています。

### 贈与税の非課税枠244万円は『人頭』ではなく『贈与者』ごと

多くの高齢者が陥る誤解は、「244万円の非課税枠が子一人ひとりに適用される」というものです。しかし、税法上は、この非課税枠は『贈与を行う人』ごとに設定されています。つまり、1人の贈与者が1年間に他の人へ贈与した財産の合計額が244万円を超えると、その超えた分が贈与税の課税対象となります。これは、子が何人いようとも関係ありません。

過去の実例では、老齢の男性が2023年5月3日に、自分の口座から長男と長女にそれぞれ244万円を振り込み、合計488万円を贈与しました。彼は「子一人あたり244万円まで非課税」と誤解し、申告を行いませんでした。しかし、税務当局はこの行為を『贈与者1名による合計488万円の贈与』と判断。244万円の非課税枠を適用したうえで、残り244万円に10%の贈与税(24万4000円)を課し、さらに過少申告加算税を併せて課しました。

### 親が子のために住宅ローンを組むと『贈与』とみなされる?

現金の直接贈与だけでなく、住宅購入のための『名目上の借金』も税務調査の対象です。親が子名義で住宅を購入し、『借金』という形で資金を提供しても、実際の返済記録や資金移動がなければ、税務当局はこれを『実質的な贈与』と判断します。これを「名目貸付・実質贈与」と呼び、全額が贈与税の課税対象となります。

税法上、2親等以内の親族間の不動産取引は、原則として『贈与』とみなされます。これを『売買』として扱うには、買主が実際に代金を支払ったことを示す銀行明細や振込記録を提出する必要があります。さらに、その資金が売主(=親)から貸されたものでも、売主が保証人となって借りたものでもないことを証明しなければなりません。

### 夫婦で488万円贈与するなら、口座を分ける必要がある

夫婦二人で子に合計488万円を贈与する場合、理論上は二人分の非課税枠(244万円×2)を利用できます。しかし、多くの家庭では夫または妻の一方の口座から一括で488万円を送金するケースがあります。この場合、税務当局は『一人の贈与者による488万円の贈与』と判断し、244万円分のみ非課税、残り244万円が課税対象となります。

これを回避するには、夫婦それぞれが自分の名義の口座から244万円ずつ別々に送金する必要があります。これにより、二人分の非課税枠が適用され、合計488万円が非課税となります。

### 不動産の持分贈与も年244万円ルールが適用

現金だけでなく、不動産の名義変更も贈与税の対象です。親が子に土地や建物の一部の持分を贈与する場合、その評価額が年間244万円以内であれば非課税となります。評価額は、土地は『路線価』または『公示価格』、建物は『固定資産税評価額』に基づいて算定されます。市場価格とは異なるため注意が必要です。

また、贈与額が244万円以下でも、不動産の名義変更を行う際には『贈与税非課税証明書』の取得が必要です。そのため、贈与日から30日以内に税務署に申告する義務があります。これを怠ると、本来非課税でも、過少申告加算税(税額の20~40%)や無申告加算税(税額の5~10%)が課される可能性があります。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR Times
  • 分類:ニュース
  • 製品・サービス:贈与税申告サービス / 相続税対策コンサルティング