日本の経営コンサルティングのパイオニアである株式会社タナベコンサルティング(本社:東京都千代田区・大阪市淀川区、代表取締役社長:若松 孝彦)は、全国の企業経営者、役員、経営幹部を対象に実施した「2026年度海外事業に関するアンケート」の結果を発表いたします。

1. 調査結果サマリー

(1) 日本企業の海外展開率は全売上規模帯で上昇する一方、売上高300億円以上(82.1%)と50億円未満(38.7%)の間には43%以上の差が出る結果となりました。売上規模による格差は日本企業の海外展開における「二極化」として、今後ますます鮮明になっていくと考えられます。

(2) 海外進出地域の選定において、ASEANが前年並みを維持する一方、アメリカ(29.7%38.9%)とインド(29.7%36.8%)を検討する企業は、双方7ポイント以上上昇する結果となりました。ASEAN一極集中から進出先の多元化が本格化していることがうかがえます。

(3) 現地法人を保有する企業の7割以上が自社の経営管理・ガバナンス構造に問題意識を抱えていることが明らかになりました。最大の課題として「現地の経営・幹部人材の不足や人材育成に不安がある」(61.0%)が挙げられ、管理体制の整備とグローバル人材の育成が課題であることが示唆されます。

2.各データ詳細

(1)海外事業を展開している、今後取り組む意向を持つ企業は約8割に。

海外展開に前向きな企業は約8割に達し、前年度比+16%へと急上昇いたしました。単年でこれだけの意識変化が生じた背景には、いくつかの構造的・環境的要因が重なっていると考えられます。少子高齢化による国内市場の縮小が多くの経営者に対して「現状維持のリスク」を可視化させつつある中、歴史的水準で推移する円安が海外収益の円換算価値を高め、海外進出の財務的インセンティブを強めております。加えて、米国の関税政策をきっかけとしたサプライチェーン再編の機運が、「いつかは海外」という議論を「今すぐ検討」へと押し上げた面もあると考えられます。海外展開は一部の大企業のフロンティア戦略から、幅広い企業に共通する経営課題へと変わりつつあることがうかがえます。

(2)日本企業の海外展開率は全売上規模帯で上昇する一方、売上規模による格差は最大43%を超え、「二極化」が進む結果に。

日本企業の海外展開率は全規模帯で前年度から上昇し、底上げが進んでおります。しかし、「海外事業を展開している」と回答した企業を分析すると、売上高300億円以上(82.1%)と50億円未満(38.7%)の間には43%を超える格差が広がっている状況です。50億円未満の企業の約6割は依然として海外事業の展開およびその検討をしていない状態であり、ノウハウ・人材・資金という三重の制約が「構造的障壁」として存在し続けております。企業全体の海外展開に対する前向きな姿勢が高まるほど、売上規模間の格差は日本企業の海外展開における「二極化」として、今後ますます鮮明になっていくことが考えられます。

(3)海外事業の業績見通しは「増収増益」が最多の一方、「増収減益」が約6倍に急増。

海外事業の見通しについて「増収増益」は43.5%(前年度39.7%)と上昇、「横ばい」は23.2%(前年度34.2%)へと低下しており、一見すると業績見通しは改善しているように見える一方で、「増収減益」が前年度1.4%から8.7%へと約6倍に急増しております。この調査結果から、売上は増加していても、利益が追いついていない企業が増えていることが明らかになりました。要因として、現地の人件費・物流コストの上昇を販売価格へ転嫁できていないことや、現地法人を持つ企業を中心とした円ベースでのコスト構造の変化などが考えられます。「売上拡大」と「収益確保」を両立できるかどうかが、今後の海外事業の評価軸になることが示唆されます。

(4) 自社の海外事業にとっての「機会」は「サプライチェーン構造の変化」との回答が最多に。

自社の海外事業にとって最も「機会」と認識されているのは、「サプライチェーン構造の変化」(29.0%)との回答が最多となりました。地政学的な緊張や脱中国の流れが「脅威」であると同時に、それに伴うサプライチェーン再編が日本企業にとって新たな受注や拠点展開の機会をもたらしていると認識されていることがうかがえます。その一方で「特になし」が24.6%を占めており、外部環境を機会として読み解く視点を持てていない企業も一定数存在しております。環境変化はリスクと機会を同時にもたらすものであり、「何もしない」ことが最大のリスクとなる局面において、この層の戦略的思考の深化が求められます。

(5)海外売上「10%未満」は前年より13.9%減少、「31~50%」の層は3倍以上に拡大。

「海外売上10%未満」が60.3%から46.4%へと、一年間で13.9%低下したことは、日本企業の海外収益依存度が構造的に変化しつつあることを示す注目すべき変化といえます。特に「31~50%」層が4.1%から13.0%へと3倍以上拡大しており、海外事業の位置づけが「補完」から「準基幹」へと変わりつつある企業群の存在が明らかになりました。しかし、依然として全体の約7割は海外売上高比率30%未満に留まっております。前述の「増収減益」企業の増加と合わせて考えると、海外売上高比率が高まる中で、収益管理の高度化が追いついていない企業が一定数存在すると考えられます。海外展開を「量」から「質」へ転換させる経営判断の巧拙が、数年後の企業価値に大きな差を生む分岐点に差し掛かっているといえます。

(6)海外進出地域はASEANが引き続き中心である一方、アメリカ・インドへの進出検討が増加。

海外進出地域の選定において、ASEANが65.3%で前年並みを維持する一方、アメリカ(29.7%38.9%)とインド(29.7%36.8%)が揃って約7~9ポイント上昇する結果となりました。これは「中国リスクの受け皿」の役割をASEAN一極が担っていた構図が変わり、進出先の多元化が本格化していることがうかがえます。アメリカへの関心の高まりの背景として、トランプ関税の影響や輸出コストの上昇に加え、「現地で作り、現地で売る」ニーズが高まっていることが対米進出を加速させる要因になっていると考えられます。インドについては、約14億人の成長市場としての評価に加え、米中対立の受け皿として、製造拠点需要の急増が背景にあることがうかがえます。

(7)クロスボーダーM&Aを「実施したい」企業は2倍に増加するも、「未検討」が依然多数を占める結果に。

クロスボーダーM&Aの実施状況については、「実施したいと考えている」が約2倍13.0%25.6%)に拡大し、「検討していない」が16%81.7%64.8%)減少する結果となり、顕著な変化が示されております。グリーンフィールド投資(自前の拠点設立)と比較し、M&Aには現地の顧客基盤・人材・許認可等を即座に取得できるという「スピードと確実性」の利点があることから、現地パートナーとの協業を経験してその限界

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:調査
  • 製品・サービス:経営コンサルティング / M&Aアドバイザリー